説明

紫外線酸化装置及び紫外線酸化方法

【課題】被処理水中のTOC成分の分解除去を効率的に行うことができる紫外線酸化装置を提供する。
【解決手段】紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化装置において、紫外線照射手段と、紫外線を被処理水に照射して有機物の酸化分解を行うための少なくとも1つの反応部と、光触媒フィルタと、被処理水を光触媒フィルタに透過させる流路と、を備えることにより、被処理水中のTOC成分の分解除去を効率的に行うことが可能な紫外線酸化装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造等における有機物除去のための紫外線酸化装置及び紫外線酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工業等において、洗浄水等の用途に有機物、各種イオン等の不純物を極めて低いレベルにまで低下させた純水の利用が盛んになってきており、純水を更に高純度化した超純水も利用されるに至っている。
【0003】
超純水の製造工程においては、ppbレベルの全有機炭素(TOC)での有機物の混入までも問題視されるようになってきており、近年、微量有機分の除去方法についての種々の検討がなされ、その結果として、紫外線酸化処理を利用した有機物の分解除去工程が盛んに導入されている。
【0004】
純水の製造装置は一般的にはイオン交換装置を主体として構成されており、ppbレベルでの有機物の除去効果は期待できない。そこで、イオン交換装置での各種イオンを除去して得られる純水中に含まれる有機物に、紫外線を照射してこれを酸化分解し、R−COO、HCO等の陰イオンに変化させる工程を紫外線酸化装置によって行い、この紫外線酸化処理によって生じたイオンを後段に設けたイオン交換装置で除去することでTOCのppbレベルまでの低下を実現する方法が注目されている。
【0005】
紫外線酸化装置自体の一般的な構造は、図6に示すとおりで、紫外線酸化装置5のステンレス製等の反応槽52中に管状の紫外線ランプ50(例えば、254nmと185nmの各波長を持つ低圧紫外線ランプ、254nmと194nmと185nmの各波長を持つ低圧紫外線ランプ等)が設置されており、被処理水中の微量有機物が紫外線照射により分解される。
【0006】
紫外線酸化装置5で処理された処理水は、紫外線酸化装置5の後段に設置されたイオン交換装置に送り込まれ、有機物の酸化分解で生じた陰イオンがイオン交換樹脂によって除去される。
【0007】
一方、従来、液体中に含まれているTOC成分を除去する技術として紫外線ランプと光触媒とを組み合わせた技術が数多く報告されており、超純水製造装置への適用もいくつか検討されている。例えば、特許文献1には、超純水等の液体中に過酸化水素、オゾンを添加するとともに、アナタース型等の光触媒の存在下において、紫外線ランプ等により紫外線照射を行い、超純水等の液体中のTOC成分を分解する方法が記載されている。また、特許文献2のように、紫外線ランプと内壁に光触媒を保持させた紫外線処理槽とを組み合わせた装置で、紫外線ランプ近傍で空気のバブリングを発生させることにより有機物の酸化を促進するような例も報告されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−151450号公報
【特許文献2】特許第2888185号公報
【特許文献3】特開2005−29866号公報
【特許文献4】特許第3370290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した紫外線酸化装置における紫外線ランプを用いた酸化処理では、一般的に、
a)紫外線ランプの消費電力が大きい(一般的に紫外線酸化装置は紫外線ランプが発する185nm紫外線により有機物を酸化分解するが、185nm紫外線の照射出力は投入電力の3〜5%程度に過ぎず、95%強の電力が無効に消費されている。)。
b)185nm紫外線は水への吸収が大きく、純水中でも10mm程度しか透過しないため、十分な酸化効果を得るためには、紫外線ランプと紫外線酸化装置内壁の距離を短くしなければいけない。
c)紫外線ランプには寿命があり、定期的な交換が必要であるにもかかわらず単価が高い。
d)紫外線照射での酸化効果を十分なものにするためには、ランプ本数が必然的に必要となり、そのためランプの交換に手間がかかる。
e)紫外線照射での酸化効果を十分なものにするためには過酸化水素の混合や、エアやオゾン等のバブリングが必要である等の理由によってランニングコストが高い。
等の問題があった。
【0010】
例えば前述した紫外線ランプによって、超純水に含まれている5〜20ppbのTOC成分を1ppb以下に分解除去するためには、0.3〜3kwh/mの電力量を必要とした。実処理ラインの液体の流量を50m/hrとした場合、その消費電力は13〜23kwと高電力を消費するという問題があった。
【0011】
また、従来の紫外線ランプと光触媒とを組み合わせた処理方法は、工業的な技術として完成されているものが少なく、実装置として運転されているものは、光触媒と処理対象液体の接触面積が小さく、結果として光触媒反応の利用効率が極端に悪いという問題があった。
【0012】
例えば、特許文献2のように紫外線処理槽内壁に光触媒を保持する方法では、必ずしも処理対象とするTOC成分と光触媒が接触することなく、処理水が紫外線処理装置外に出て行ってしまう場合があるため、光触媒によるTOC成分の分解効率が極端に低くなってしまう可能性がある。
【0013】
また、特許文献1のように過酸化水素、オゾンを併用する方法では、ランニングコストが上昇するとともに、紫外線処理装置の後段でさらに過酸化水素、オゾンの除去を行わなければならず、装置が複雑化するという問題があった。
【0014】
本発明は、被処理水中のTOC成分の分解除去を効率的に行うことができる紫外線酸化装置である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化装置であって、紫外線を照射する紫外線照射手段と、前記紫外線を前記被処理水に照射して前記有機物の酸化分解を行うための少なくとも1つの反応部と、光触媒を担持せしめた光触媒フィルタと、前記被処理水を前記光触媒フィルタに透過させる流路と、を備える紫外線酸化装置である。
【0016】
また、前記紫外線酸化装置において、前記反応部の少なくとも1つに迂流部材を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記紫外線酸化装置において、前記光触媒フィルタは膜状であり、少なくともその両面に前記光触媒がコーティングされていることが好ましい。
【0018】
また、前記紫外線酸化装置において、前記光触媒フィルタの前記紫外線照射手段に対する取り付け角度が45度以上135度以下であることが好ましい。
【0019】
また、前記紫外線酸化装置において、前記光触媒フィルタを前記被処理水の流れ方向に少なくとも2段以上に配置し、前記流れ方向の上流側の光触媒フィルタの平均細孔径が下流側の光触媒フィルタの平均細孔径よりも小さいことが好ましい。
【0020】
また、前記紫外線酸化装置において、前記酸化分解処理された処理水を前記光触媒フィルタの流出側から流入側へ通水させて前記光触媒フィルタを洗浄する逆洗手段を備えることが好ましい。
【0021】
また、前記紫外線酸化装置において、前記光触媒が、TiO、ZnO、SrTiO、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO、KNbO、Fe、Ta、WO、SnO、Bi、NiO、CuO、SiC、SiO、MoS、InPb、RuO、CeO、および、これらの光触媒にPt、Rh、RuO、Nb、Cu、Sn、NiOのうち少なくとも1つを担持したものから選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化方法であって、紫外線を前記被処理水に照射して前記有機物の酸化分解を行い、前記被処理水をさらに光触媒を担持せしめた光触媒フィルタを透過させる紫外線酸化方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化装置において、紫外線照射手段と、紫外線を被処理水に照射して有機物の酸化分解を行うための少なくとも1つの反応部と、光触媒フィルタと、被処理水を光触媒フィルタに透過させる流路と、を備えることにより、被処理水中のTOC成分の分解除去を効率的に行うことが可能な紫外線酸化装置を提供することができる。
【0024】
また、本発明では、紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化方法において、紫外線を被処理水に照射して有機物の酸化分解を行い、その被処理水をさらに光触媒フィルタを透過させることにより、被処理水中のTOC成分の分解除去を効率的に行うことが可能な紫外線酸化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0026】
以下に本発明の一実施形態に係る紫外線酸化装置を図面により説明する。図1は本実施形態に係る紫外線酸化装置1の縦断面図、図2(a)は図1のA−A線断面矢視図、図2(b)は図1のB−B線断面矢視図である。
【0027】
本実施形態に係る紫外線酸化装置1は、紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化装置であり、紫外線照射手段である紫外線ランプ10を内蔵した透過筒12と、紫外線を被処理水に照射して有機物の酸化分解を行うための少なくとも1つの反応部20を備える反応槽14と、反応槽14内に配置されて紫外線ランプ10からの紫外線が照射されるように配置した、光触媒を担持せしめた膜状の光触媒フィルタ16とを備える。また、反応槽14内の被処理水の撹拌効率を上げるために迂流部材である迂流板(フィン)18を備えることが好ましい。
【0028】
図1の紫外線酸化装置1において、反応槽14内の中心付近に紫外線ランプ10を内蔵した透過筒12を少なくとも1本(図1の例では3本)配置し、光触媒を担持した光触媒フィルタ16を紫外線ランプ10と略垂直(取り付け角度90度)になるように反応槽14の高さ方向にほぼ等間隔に4枚配置している。また、反応槽14は光触媒フィルタ16により5つの反応部20に分割され、両端部を除いた反応部20のそれぞれには、被処理水の撹拌効率を向上させるためにフィン18を1枚ずつ反応槽14の内側面の周方向に沿って配置している。反応部20は、被処理水を光触媒フィルタ16に透過させる流路ともなっている。なお、紫外線ランプ10の本数、設置位置、光触媒フィルタ16の枚数、設置位置、フィン18の枚数、設置位置等は一例であって、これらに限定するものではなく、適宜設定することができる。
【0029】
このような紫外線酸化装置1に反応槽14下部の入口から上向流で被処理水を流入させると、被処理水はフィン18の影響で充分に撹拌されながら紫外線ランプ10から照射された紫外線による有機物の酸化分解を受けるとともに、さらに光触媒を担持せしめた光触媒フィルタ16を透過する。光触媒フィルタ16には紫外線ランプ10からの紫外線が照射され、光触媒フィルタ16に担持された光触媒が活性化される。被処理水はさらに光触媒フィルタ16を透過するため、この時、光触媒反応による残存したTOC成分の分解も進行する。TOC成分の直接分解に寄与する波長185nm等の紫外線は一般的にランプ表面から10mm程度の地点で光強度が10%未満に減衰してしまうため、必ずしも分解効率が高いとはいえないが、本実施形態に係る紫外線酸化装置1では従来の紫外線酸化装置では無効消費されていた波長254nm等の紫外線が光触媒の励起に寄与し、有効に利用されるため、非常に高効率な紫外線酸化装置となる。
【0030】
なお、図1の例では、被処理水を反応槽14に上向流で通水しているが、被処理水を反応槽に下向流または水平流で通水してもかまわない。通常は上向流で通水する。また、ここでは縦置きの反応槽としたが、横置きの反応槽とすることもできる。
【0031】
紫外線を照射する紫外線照射手段としては紫外線ランプ10等が挙げられ、有機物を分解し、かつ光触媒を光活性化するために必要な波長領域の光を放出するランプであれば特に制限はなく、少なくとも波長100nm〜200nmの真空紫外線を放出するランプであることが好ましい。例えば254nmと185nmの各波長を持つ低圧紫外線ランプ、254nmと194nmと185nmの各波長を持つ低圧紫外線ランプ、中圧ランプ、高圧ランプ等を1本または複数本使用することができる。
【0032】
光触媒フィルタ16としては、保持材に光触媒を担持したものを用いることができる。
【0033】
光触媒としては、TiO、ZnO、SrTiO、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO、KNbO、Fe、Ta、WO、SnO、Bi、NiO、CuO、SiC、SiO、MoS、InPb、RuO、CeO等、および、これらの光触媒にPt、Rh、RuO、Nb、Cu、Sn、NiO等の金属及び金属酸化物のうち少なくとも1つを担持したものから選択される少なくとも1つの他、従来公知のものがすべて適用できる。好ましくはTiOなどである。
【0034】
酸化チタン(TiO)などの金属酸化物系半導体光触媒は、水の直接分解を利用した水素製造をはじめ、脱臭、殺菌、水中微量有機物の分解、排水処理等の応用が提案されている。この光触媒反応の特徴は、非常に強い酸化力を持つこと、選択性に乏しいこと、触媒反応であるため長寿命が期待できること等が挙げられる。
【0035】
光触媒を担持する保持材としては、光触媒を保持し、ハンドリングや耐久性が実用上問題のない機械的特性を持ち、かつ液体が透過する性質を持つものであれば特に制限はない。例えば、ガラス繊維、セラミック、金属、プラスチック等はいずれも使用することができ、多孔質体または金属メッシュ等の透水性の保持材が好ましい。しかしながら、光触媒フィルタは紫外線に直接さらされかつ強い酸化力を持つ光触媒を保持することから、酸化反応により侵されにくいセラミック系材料や耐食性金属材料、好ましくはチタン、アルミニウム、ステンレスなどがよい。
【0036】
光触媒フィルタ16の平均細孔径は被処理水が透過することができれば良く特に制限はないが、1μm以上2000μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。光触媒フィルタ16の平均細孔径が1μm未満であると被処理水の透過性が低下したり、目詰まりを起こしやすくなる場合があり、2000μmを超えると被処理水と触媒の接触効率が悪化し、有機物の除去率が低下する場合がある。
【0037】
光触媒を保持材に担持させる方法としては、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、刷塗り法、CVD法、陽極酸化法など従来公知のものがすべて適用できる。このうち均一な膜厚の光触媒膜が成膜可能で、かつ光触媒剥離の起きにくいディップコート法、CVD法、陽極酸化法等がコーティング法としては好ましい。
【0038】
光触媒フィルタ16は、図1のような膜状のものを少なくとも1枚配置しても良いし、特開2003−175333号公報で記載されているようなコーン型のフィルタを複数個多段に重ねるように配置しても良い。
【0039】
光触媒フィルタ16において、接触面積を増やしTOC成分の分解効率を向上させるために、膜状の保持材の少なくとも両面に光触媒がコーティングされていることが好ましい。細孔の表面全体に光触媒が担持されているとより接触面積が増えるためより好ましい。
【0040】
膜状の光触媒フィルタ16の厚みは、十分な強度を有すれば良く特に制限はないが、例えば、0.05mm〜5mm、好ましくは0.5mm〜3mmの範囲とすればよい。光触媒フィルタ16の厚みが0.05mm未満では強度が足りず、5mmを超えると保持材の内部まで光が照射されない場合がある。
【0041】
膜状の光触媒フィルタ16の紫外線ランプ10に対する取り付け角度は、紫外線ランプ10の本数および配置位置、反応槽14の形状等により最適角度を設定すればよいが、45度以上135度以下であることが好ましく、60度以上120度以下であることがより好ましい。取り付け角度が45度未満あるいは135度を超えると、光触媒フィルタ16自身による光の遮蔽効果により、TOC分解率が低下する傾向にある。ここで、取り付け角度とは紫外線ランプ10の発光面と光触媒フィルタ16の面のなす角度(図1におけるα)であり、図1の例では取り付け角度は90度である。
【0042】
また、接触面積を増やすために、光触媒フィルタ16を反応槽14内の被処理水の流れ方向に少なくとも2段以上に配置することが好ましい。さらに、光触媒フィルタ16の目詰まり防止等のために、被処理水の流れ方向の上流側の光触媒フィルタの平均細孔径が下流側のフィルタの平均細孔径よりも小さいことが好ましい。これにより、被処理水中に懸濁物質が含まれていた場合、上流側の目の細かいフィルタでそれらを捕捉することにより、下流側に懸濁物質が洩れない効果がある。例えば、上流側の光触媒フィルタの平均細孔径を10μm以上20μm以下、下流側の光触媒フィルタの平均細孔径を20μm以上100μm以下とすればよい。
【0043】
反応槽14に設置する迂流部材としては、被処理水の撹拌効率を向上させることができれば良く特に制限はない。例えば、図3のようなドーナツ形状、三日月形状、円形の一部を切り取った形状等の迂流板(フィン)を用いることができる。また、フィン18は、反応槽14の内側面の周方向に沿って配置することが好ましい。フィン18は、被処理水の撹拌を効率良く行うことから、各反応部20に少なくとも1枚設置することが好ましい。
【0044】
反応槽14の材質としては、ステンレス、チタン等の公知の材料を用いることができる。反応槽14の内壁面は紫外線を十分に反射する材料で構成されることが好ましい。また、紫外線の反射性が高い材料でコーティングしても良い。また、反応槽14の内壁面に上記光触媒を塗布しても良い。これらによりさらにTOC成分の分解効率を向上することができる。
【0045】
紫外線酸化装置1内に上述の光触媒フィルタ16を配置することにより、紫外線ランプ10の近傍だけでなく、光触媒フィルタ16表面においてもTOCの酸化分解が効率的に行われるため、処理水質の向上、単位処理流量あたりの紫外線ランプ出力の低減が可能となる。特に紫外線酸化装置で一般的に用いられている低圧紫外線ランプを光源として用いた場合、185nm紫外線のほとんど届かないところに光触媒フィルタ16を配置することにより、従来は無効消費されていた95%強の254nm紫外線を効率的に使用することができるため、処理時間の短縮、紫外線処理槽の容積拡大、処理流量の増加、紫外線ランプ使用本数の低減など紫外線酸化処理におけるランニングコストの総合的な低減が可能となる。紫外線ランプ使用本数が低減できれば、複数の紫外線ランプを使用することにより放出した紫外線が遮蔽される陰の部分が少なくなり、ランプの紫外線利用効率をさらに向上することができる。
【0046】
また、紫外線酸化装置1は、被処理水が光触媒フィルタ16を透過する構造を有するため、光触媒と処理対象とするTOCとが少なくとも1回(望ましくは複数回)は接触することとなる。このため、従来の光触媒装置と比べ格段に光触媒酸化効率が上がる。
【0047】
また、紫外線酸化装置1では、反応槽14に迂流部材であるフィン18を設置することにより、紫外線酸化装置1内の被処理水の撹拌を効率良く行うことが可能であり、光触媒によるTOC成分の分解効率を向上することができる。また、従来型の整流板を配置する必要がない。
【0048】
さらに、紫外線酸化装置1では過酸化水素やオゾンを併用したり、エアバブリング等を別途行ったりする必要はないため、シンプルな装置設計が可能である。
【0049】
また、本実施形態に係る紫外線酸化装置において、酸化分解処理された処理水を光触媒フィルタ16の流出側から流入側へ通水させて光触媒フィルタ16を洗浄する逆洗手段として逆洗配管22、処理水タンク23、逆洗ポンプ24等を図4に示すように備えることが好ましい。これにより、光触媒フィルタ16の付着物を除去することができ、目詰まりを低減することができる。
【0050】
本実施形態では、図5に示すように、紫外線酸化装置1で被処理水中に含まれるTOCを酸化分解した後、その処理水を例えば後段に設けたイオン交換装置26等に通水することにより、TOCが数ppbレベルまで除去が可能となる。
【0051】
以上説明したとおり、本実施形態に係る紫外線酸化装置によれば、超純水または純水等の被処理水中のTOC成分の分解除去を効率的に促進することによって、TOC成分の除去処理時間を短縮して、TOC成分の少ない高品質の超純水または純水等の処理液体を、消費電力等の製造コストを低減して得ることができる。紫外線酸化装置内に光触媒を担持させた光触媒フィルタならびにフィンを配置することにより、TOC成分の分解を紫外線ランプの近傍だけでなく、光触媒フィルタ表面でも進行させることができ、従来法に比較し、単位流量当りの紫外線ランプの出力を減少させることができる。特に本装置は被処理液体が光触媒フィルタを全量透過するという構造を有するため、従来の光触媒酸化装置と比較して、被処理液体と光触媒との接触面積が飛躍的に増大し、その結果として光化学反応処理効率はこれまでになく高まる。本実施形態に係る紫外線酸化装置を超純水の製造ライン等に組み込むことにより、高品質の超純水を、消費電力コストを大幅に削減しながら得ることが可能となる。
【0052】
本実施形態に係る紫外線酸化装置は、半導体製造工業等において、洗浄水等の用途に用いる純水、超純水の製造等に使用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
紫外線酸化装置としては図1に示す装置(ステンレス製、内径=134mm、高さ=1800mm)を用いた。紫外線酸化装置1内のほぼ中心に254nmと185nmの各波長を持つ200W低圧の紫外線ランプ10を内蔵した透過筒12を1本、2本または3本配置し、光触媒(酸化チタン)を基材(多孔質SUSフィルタ(SUS316))の少なくとも両面にCVD法にて担持した透過性の光触媒フィルタ16(平均細孔径=20μm)を、紫外線ランプ10と略垂直(取り付け角度α=90度)になるように、また紫外線酸化装置1の高さ方向に等間隔になるように4枚配置した。また、各光触媒フィルタ16により分割された5つの反応部20の両端部を除いたそれぞれには、ドーナツ形状(幅15mm)のフィン18を反応槽14の内側面の周方向に沿って、高さ方向のほぼ中央付近に1枚配置した。処理対象となる被処理水は2−プロパノールを超純水で希釈し、初期濃度50ppbに設定した。また、処理流量は3m/hrとして、紫外線酸化装置1に通水した。UVランプを点灯後、30分経ってから通水を開始し、通水から1時間後に採水を行って、2−プロパノールの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
実施例1の光触媒フィルタ16の代わりに光触媒を担持せずに多孔質SUSフィルタ(SUS316、孔径20μm)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で実験を行った。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
これらの結果より実施例1の紫外線酸化装置の高い処理性能が確認された。3本の紫外線ランプを使用する従来型の紫外線酸化装置と同程度のTOC分解効率を得るのに、光触媒フィルタを組み込んだ紫外線酸化装置では、紫外線ランプ本数が1本で足りることが判明した。
【0058】
(実施例2)
実施例1の紫外線酸化装置内のフィン18を外した以外は、実施例1と同様の条件で実験を行った。紫外線ランプ10として254nmと185nmの各波長を持つ200W低圧紫外線ランプを内蔵した透過筒12を1本配置した。結果を表1に示す。
【0059】
この結果より紫外線酸化装置内にフィンを設置することにより、反応部での撹拌効率が向上し、TOC分解率が上昇することがわかった。
【0060】
(実施例3)
実施例1の紫外線酸化装置1において、光触媒フィルタ16の取り付け角度αを12度とした以外は、実施例1と同様の条件で実験を行った。紫外線ランプ10として254nmと185nmの各波長を持つ200W低圧紫外線ランプを内蔵した透過筒12を1本配置した。結果を表1に示す。
【0061】
この結果より光触媒フィルタ16の紫外線ランプ10に対する取り付け角度αを小さくしすぎると、光触媒フィルタ16自身による光の遮蔽効果により、TOC分解率が低下することがわかった。
【0062】
(実施例4)
光触媒フィルタとして、光触媒(酸化チタン)を基材(多孔質SUSフィルタ(SUS316))の片面にコーティングした透過性の光触媒フィルタ16(平均細孔径=20μm)を使用した以外は実施例1と同様の条件で実験を行った。紫外線ランプ10として254nmと185nmの各波長を持つ200W低圧紫外線ランプを内蔵した透過筒12を1本配置した。結果を表1に示す。
【0063】
この結果より光触媒を少なくとも両面に担持することにより、TOC分解率が上昇することがわかった。
【0064】
(実施例5)
被処理水の流れ方向の上流側の1枚の光触媒フィルタ16として平均細孔径が10μmのもの、下流側の3枚の光触媒フィルタ16として平均細孔径が20μmのものを使用し、実施例1と同様の条件で実験を行った。紫外線ランプ10として254nmと185nmの各波長を持つ200W低圧紫外線ランプを内蔵した透過筒12を1本配置した。また、図4のように逆洗配管22、処理水タンク23、逆洗ポンプ24を配置し、逆洗を行えるような装置とした。通水は1週間連続で行い、1週間後の処理水TOC、差圧ΔP(入口圧力−出口圧力)の値を測定した。さらにその後、逆洗を実施し、通水再開1時間後の処理水TOC、差圧ΔPの値を測定した。また、光触媒フィルタ16として4枚全て平均細孔径が20μmのものを使用して、同様に実験を行った。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
この結果より被処理水の流れ方向の上流側の光触媒フィルタの平均細孔径を下流側の光触媒フィルタの平均細孔径よりも小さくすることにより、高いTOC分解率を長期間維持できることがわかった。これは被処理水中の懸濁物質を上流側の光触媒フィルタで捕捉することにより、後段の光触媒フィルタに悪影響を及ぼすと考えられる懸濁物質が流れ出ない効果と考えられる。またこの結果より、逆洗を行うことにより光触媒フィルタの付着物が除去可能で、光触媒活性も初期の値まで回復するということがわかった。
【0067】
(実施例6)
実施例1の紫外線酸化装置1において、光触媒を担持した透過性の光触媒フィルタ16として、平均細孔径を10μm、75μm、1000μm、2000μmと変更した以外は、実施例1と同様の条件で実験を行った。紫外線ランプ10として254nmと185nmの各波長を持つ200W低圧紫外線ランプを内蔵した透過筒12を1本配置した。結果を表3に示す。
【0068】
なお、光触媒フィルタの平均細孔径は、10μm、20μm、75μmのものはメーカ公証値であり、1000μm、2000μmのものは目開きを実測した値である。
【0069】
【表3】

【0070】
これらの結果より、紫外線酸化装置で使用する光触媒フィルタの平均細孔径は1μm以上2000μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係る紫外線酸化装置の一例の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】(a)図1におけるA−A線断面矢視図である。(b)図1におけるB−B線断面矢視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る紫外線酸化装置における迂流部材の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る紫外線酸化装置の他の例の概略構成を示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る紫外線酸化装置をイオン交換装置と組み合わせた装置の一例の概略構成を示す図である。
【図6】従来の紫外線酸化装置の一例の概略構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1,3,5 紫外線酸化装置、10,50 紫外線ランプ、12 透過筒、14,52 反応槽、16 光触媒フィルタ、18 迂流板(フィン)、20 反応部、22 逆洗配管、23 処理水タンク、24 逆洗ポンプ、26 イオン交換装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化装置であって、
紫外線を照射する紫外線照射手段と、
前記紫外線を前記被処理水に照射して前記有機物の酸化分解を行うための少なくとも1つの反応部と、
光触媒を担持せしめた光触媒フィルタと、
前記被処理水を前記光触媒フィルタに透過させる流路と、
を備えることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紫外線酸化装置であって、
前記反応部の少なくとも1つに迂流部材を備えることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の紫外線酸化装置であって、
前記光触媒フィルタは膜状であり、少なくともその両面に前記光触媒がコーティングされていることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線酸化装置であって、
前記光触媒フィルタの前記紫外線照射手段に対する取り付け角度が45度以上135度以下であることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線酸化装置であって、
前記光触媒フィルタを前記被処理水の流れ方向に少なくとも2段以上に配置し、前記流れ方向の上流側の光触媒フィルタの平均細孔径が下流側の光触媒フィルタの平均細孔径よりも小さいことを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の紫外線酸化装置であって、
前記酸化分解処理された処理水を前記光触媒フィルタの流出側から流入側へ通水させて前記光触媒フィルタを洗浄する逆洗手段を備えることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の紫外線酸化装置であって、
前記光触媒が、TiO、ZnO、SrTiO、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO、KNbO、Fe、Ta、WO、SnO、Bi、NiO、CuO、SiC、SiO、MoS、InPb、RuO、CeO、および、これらの光触媒にPt、Rh、RuO、Nb、Cu、Sn、NiOのうち少なくとも1つを担持したものから選択される少なくとも1つであることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項8】
紫外線を用いて被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する紫外線酸化方法であって、
紫外線を前記被処理水に照射して前記有機物の酸化分解を行い、前記被処理水をさらに光触媒を担持せしめた光触媒フィルタを透過させることを特徴とする紫外線酸化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18282(P2009−18282A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184384(P2007−184384)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】