説明

紫外線防護シンジオタクチックポリスチレンオーバーレイフィルム

【課題】極限周囲温度及び湿度下でその寸法の安定性を保持することができる紫外線耐候性フィルム(1)構造体を提供すること。
【解決手段】紫外線遮断コーティング(5)と組合せて用いるとき、sPS フィルム(3)は、無防護sPS フィルムまたは紫外線吸収体を配合しただけのsPS 樹指を主成分とするフィルムより実質的に優れた紫外線による変色及び劣化に対する耐性を示す。本発明の sPSカバーフィルムは、標識(1)及び他の屋外用途のオーバーレイフィルムとして有用であり、紫外線遮断または耐性において紫外線吸収体を添加したアクリルフィルムに匹敵し、アクリル、ポリエステル、及びフルオロポリマオーバーレイフィルムに取って代わるコスト面で負けない選択肢を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、紫外線防護フィルム、特に、屋外用途のカバーフィルムとして有用な紫外線防護シンジオタクチックポリスチレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光電池カプセル材料用、標識オーバーレイフィルム、及び同様の屋外用途のための精選の樹脂は、ポリメチルメタクリレート( PMMA )、衝撃改良PMMA、PMMA ブレンド及びポリエチレンテレフタレート(PET)である。これらのフィルムは、高い耐衝撃性など、多くの望ましい機械的性質を有するが、それらはまた、高い吸湿膨張率( CHE )を有する(表1を参照のこと)。従って、これらフィルムはすべて、高温、高湿度環境で寸法の変形が生じやすい。更に、これらのフィルムの多くは湿気による加水分解反応を生じやすい。例えば、『Concise Encyclopedia of Polymer and Science Engineering』(1307〜09ページ、1990年)を参照のこと。このように、 PMMA が標準状態で比較的高い(約105℃)ガラス転移温度( Tg )を有するが、その Tg は水可塑化による高湿度環境において効果的に低下させられる。PETは吸湿のためすでにTgがより低く抑えられ(68℃)、加水分解によって分子量が低下する同様の問題がある。
【0003】
【表1】

【0004】
屋外用途で現在用いられる多くのフィルムは、ほこりなどの天然源及び落書きなどの人工源の両方に由来する汚れを受けやすい。これに対処するために、いろいろな水性の架橋可能なフッ素系の低表面エネルギ塗料系が、重合体界面活性剤及びオキサゾリン重合体架橋剤から作製された。これらの物質は、例えば、米国特許第5,382,639号、5,294,662号、5,006,624号及び4,764,564号に記載されている。
【0005】
屋外用途での重合体フィルムの使用に関して直面する更に別の問題は、紫外線への露光に関係する。紫外(UV)線に長期間露光される重合体フィルムは、光酸化の開始のために長い時間にわたって脆くなり、黄変する傾向がある。紫外線が製造プロセスからの残留する金属触媒及び他の不純物によって吸収されることがあるので、重合体それ自体がスペクトルの紫外線領域で透明であるとしても、これは同様である。例えば、R. ハートら、『SPE Trans』、 Vol.1,1(1961年)を参照のこと。従って、標識及び他の屋外用途で用いられる大部分の重合体フィルムは、前記の原樹脂に紫外線吸収(UVA)添加剤、及び/または励起状態失活剤、ヒドロ過酸化物分解剤、またはフリーラジカルスカベンジャーとして作用する他の化合物を配合することによって紫外線劣化に対して安定させられる。ヒンダードアミン光安定剤(HALS) は、特に良好なラジカルスカベンジャーであることがわかった。UVA添加剤は、スペクトルの紫外線領域の放射線を吸収することによって作用する。他方、HALSは、紫外線への露光中に重合体母材中で生成されたラジカルを急冷することによって作用する。紫外線安定性を改善するために用いられた物質の種類の概観は、R. ガクター、H・マラー 及びP・ クレムチャック編、『Plastics Additives Handbook』、194〜95ページ(第3版、ハンサー出版、ニューヨーク)に見い出される。
【0006】
いくつかの場合には、紫外線感受性の基材もまた、紫外線吸収トップコートで防護されている。例えば、PCT /米国特許第93/05938号には、紫外線感受性の基材上にトップコートとして適用することができる紫外線吸収重合体のラテックス水溶液が開示されている。同様に、H.ラザヴィらの『Paradigm Shift In UV Protection Technology』(SPE 会議で提出された論文、1993年10月12日)には、紫外線吸収体がキャリヤ重合体の骨格鎖に共有結合によって結合した紫外線吸収トップコートが記載されている。
【0007】
紫外線安定剤の研究が進む一方で、特定の立体規則性を有する重合体の開発研究が数多くなされた。例えば、触媒技術の最近の発展により、主にシンジオタクチック構造を有するポリスチレンの立体異性体の合成が可能になった。
本明細書でシンジオタクチックポリスチレン( sPS )と称されるこの物質は、良好な寸法安定性及び/または耐熱または耐湿性を示す種々の物品を製造するために用いられている。このような文献としては、米国特許第5,496,919号(ナカノ)、米国特許第5,188,930号(フナキら)、米国特許第5,476,899号(フナキ ら)、米国特許第5,389,431号(ヤマサキ)、米国特許5,346,950号(ネギら)、米国特許5,318,839号(アライら)、米国特許5,273,830号(ヤグチら)、米国特許5,219,940号(ナカノ)、米国特許5,166,238号(ナカノら)、米国特許5,145,950号(フナキら)、米国特許5,127,158号(ナカノ)及び米国特許5,082,717号(ヤグチら)などが挙げられる。
【0008】
高温度/高湿度環境でのsPS フィルムの高い寸法安定性のため、それらは標識及び他の屋外用途のためのオーバーレイフィルムに望ましい。しかしながら、sPS フィルムは紫外線による分子量低下及び黄変(紫外線吸収触媒残留物、重合体鎖中のペルオキシド基、及び/または高温処理中に形成された酸化生成物の存在にしばしば帰せられる現象)の傾向がある。更に、他のポリスチレンと同様に、sPS は、多数の活性化第3水素による固有の光化学不安定性を有する。これらの水素は、光化学的に引き抜かれる傾向があり、それによってフリーラジカル劣化経路を誘導する。
【0009】
紫外線に対するsPS の耐性を改善する試みがいくつかなされている。例えば、米国特許5,496,919号(ナカノ)には、sPS 原樹脂に酸化防止剤及び紫外線吸収体などの種々の添加剤を配合することによるsPSを主成分とする物品の製造が開示されている。しかしながら、sPS フィルムにおけるUVAs及びHALSの使用は、それらの長期の屋外耐候性をほどほどにしか改善しないことが見い出されている。今日まで、紫外線に対して安定したsPS フィルムを製造できずにいるため、標識及び他の屋外用途のsPSを主成分とする商用オーバーレイフィルムの開発が妨げられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、良好な寸法の安定性を有し、紫外線劣化に対して耐性があり、標識及び他の屋外用途の使用に適したsPSオーバーレイフィルムを提供することが、本発明の目的である。この目的及び他の目的が、以下に記載したように、本発明によって達せられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、極限周囲温度及び湿度下でその寸法の安定性を保持することができる紫外線耐候性フィルム構造体を提供するものである。基礎フィルム重合体、すなわち、シンジオタクチックポリスチレンは、特質として、低吸湿性、すぐれた熱安定性及び高い透明性を有する。紫外線遮断コーティングと組合せて用いるとき、sPS フィルムは、無防護sPS フィルムまたは紫外線吸収体を配合しただけのsPS 樹指を主成分とするsPSフィルムより実質的に優れた紫外線による変色及び劣化に対する耐性を示す。本発明の sPSカバーフィルムは、標識及び他の屋外用途のオーバーレイフィルムとして有用であり、紫外線遮断または耐性において紫外線吸収体を添加したアクリルフィルムに匹敵し、アクリル、ポリエステル、及びフルオロポリマオーバーレイフィルムに取って代わるコスト面で負けない選択肢を提供する。
【0012】
本発明の一実施態様において、前記のsPS カバーフィルムは、少なくとも一つの面にPMMAの層を提供される sPSを含む基材を含有する。PMMA は好ましくは、スチレンと、アクリル酸のエステル及びそれらのアルキル及びアリール誘導体からなる群から選択される第2の単量体との共重合体、好ましくは、ブロック共重合体を含む中間結合層を介して前記sPS基材に結合されている。前記PMMA は、紫外線遮断性物質及び/または着色剤を配合してもよい。この実施態様は、染料をPMMA 層中に入れることができるという点で、着色標識用途に特に都合がよい。これは、染料がsPS層中に入れられるときに観察されることがある色ずれを回避し、それによって既存の標識と色が同一である標識を製造することを可能にする。
【0013】
別の実施態様において、紫外線吸収単量体とフルオロモノマーとの共重合体を含むコーティングを有するsPS 基材が提供される。このコーティングはフィルムに低表面エネルギを付与し、それを容易に洗浄可能にし、耐落書き性のあるものにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、極周囲温度及び湿度下でその寸法安定性を保持することができる紫外線耐候性フィルム構造体に関する。基礎フィルム重合体、すなわち、シンジオタクチックポリスチレンは、高いTg 、固有の低吸湿性、及びPET及びPMMAと比較してフィルムの改善された耐熱/疎水性の次元性能を提供する無極化学構造を有する。更に、 sPSは、汎用ポリスチレン(すなわち、アタクチックポリスチレン、または aPS )と比較して結晶性であり、それを熱収縮及び吸湿に対してより耐性のあるものにする。更に、sPS の高い透明性は、高い視感度が必要とされる標識及び他の用途のカバーフィルムとしての使用にそれは好適である。同様に、 sPSはアタクチックポリスチレンより良好な機械的性質(例えば、より大きな引張り応力及び引張り強度)を有する。
【0015】
本発明によれば、sPS 基材は、スペクトルの紫外領域の光が紫外線遮断層によって吸収され、他方、スペクトルの可視領域の光(またはその望ましい部分)が効率的に透過されるように、紫外線遮断性物質のコーティングを備える。理論に縛られたいとは思わないが、紫外線遮断層がすべての太陽光の紫外線を完全に吸収することによって下にあるフィルムのための防護スクリーンとして役立つと考えられている。それと対照して、 sPS 樹指に紫外線吸収体を配合するだけでは、sPS フィルムの表面はなおかなりの量の紫外線に露光され、フィルムの表面に沿って著しい劣化及び変色を生じる。
【0016】
種々の銘柄のsPS を、フィルムを使用する用途に応じて、本発明で用いてもよい。しかしながら、大部分の用途については、sPS の分子量は、約200,000〜約450,000の範囲である。特定の用途において、sPS は、前記の物質に所望の特性を付与するために、種々の単量体種または重合体種とグラフト、共重合、またはブレンドされてもよい。例えば、若干の実施例においてsPS をいろいろな量のアイソタクチックまたはアタクチックポリスチレンとブレンドしてもよい。sPSはまた、そのフィルムに固有な寸法安定性より大きい寸法安定性が必要とされる場合など、何れの所望の程度にも架橋させることができる。
【0017】
本発明で用いられるsPS は一般に未置換スチレン単量体から得られるが、アルキル、アリール、及び他の置換基を含有するいろいろな量のスチレン単量体も用いてよい。このように、例えば、パラ−メチルスチレン単量体約5〜約10%を使用することにより、得られたフィルムの透明度を改善することが見い出されている。
【0018】
紫外線遮断コーティングは、グラビア、エアナイフ、カーテン、スロット及び他の塗布方法など従来技術に周知の手段によって、または同時押出、積層、化学接着、浸漬及び蒸着または溶剤付着によって付与することができる。Sorbalite(登録商標)及び同様な水性ラテックス紫外線遮断剤の場合、コーティングは好ましくは、グラビアまたはエアナイフ塗布方法によって適用される。若干の用途においては、sPS 樹脂それ自体に紫外線吸収物質を配合することもできる。
【0019】
sPS は固有の低表面エネルギを有するため、紫外線遮断層を適用する前に基材の表面を調整するのがしばしば有利である。水性ラテックス塗膜が sPS 基材に適用されるとき、コロナまたは火炎処理によってこれを行なってもよい。このような処理は、フィルムの表面に沿って反応性ラジカルを生成することによって基材の親水性を改善する。界面活性剤もまた、塗膜の表面張力をsPS 基材の表面張力よりも低減させ、それによって塗膜を基材上に均一に塗布することを可能にするのに有利に用いることもできる。
【0020】
sPS 基材に、sPS と親和性である紫外線吸収塗膜または層を適用することが通常望ましいが、ある場合には、基材と不適合な紫外線吸収層でsPS 基材を塗被または同時押出しすることが必要または望ましいことがある。このような場合、紫外線吸収コーティングまたは層は、基材から剥離する傾向があることがある。この問題は、紫外線遮断層及び基材の両方にしっかりと結合することができる物質を含む中間結合層または継ぎ層を使用することにより同時押出用途において克服することができる。しばしば、このような物質は、スチレンと、紫外線遮断層に対する良好な親和性を有する第2の単量体との共重合体である。このように、例えば、紫外線遮断層が PMMA を含む場合、結合層は、スチレンと、アクリル酸、アクリル酸のエステル、アクリル酸及びそのエステルのアルキル及びアリール誘導体からなる群から選択される第2の単量体との共重合体であってもよい。コーティング用途において、sPS 基材上で下塗剤または下塗層を使用することが都合がよい場合がある。当業者は、特定の用途で望ましい特定の下塗剤または下塗層は、用いられた紫外線遮断性物質の選択など、用途に固有の種々の要因に依存することを理解するであろう。
【0021】
酸化セリウム、酸化チタン、及び従来技術に周知の他のパーティキュレイトまたはコロイド状紫外線吸収体などのいろいろな紫外線遮断性物質を本発明の紫外線遮断層で用いてもよく、被覆されたフィルムを使用する用途に依存する。
【0022】
分子または単量体有機紫外線吸収体もまた、本発明で用いてもよい。しかしながら、有機紫外線吸収体を用いるとき、紫外線遮断性物質は好ましくは、単量体種を重合させるか、またはこのような種を他の単量体、低重合体、または重合体と共重合させることによって形成され、より高分子量の紫外線吸収物質を提供する重合体または共重合体である。このような物質は、紫外線吸収コーティングの表面にブルームする傾向がより少ないという点で、それらの単量体の類似体よりも都合がよい。ブルーミングは一般に、フィルムの変色またはしみを生じ、通常の表面摩耗によって紫外線吸収物質を最終的に除去することがある。
【0023】
本発明で使用する好適な紫外線吸収単量体は、ベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノンのビニル官能化単量体の単独重合体及び共重合体、及びこれらの物質と可塑剤または融合助剤との混合物などである。このような単量体の1つの例は、(2−(2'−)ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシエチル−フェニル)−2H −ベンゾトリアゾール)(ナラムコインク製、Norbloc(登録商標)7966)である。これらの物質及びそれらを作製する方法は従来技術に周知であり、例えば、米国特許第4,927,891号、4,892,915号、4,785,063号、4,576,870号、4,528,311号、3,761,272号、3,745,010号、4,652,656号、4,612,358号、4,455,368号、及び4,443,534号、欧州特許第0,282,294号、 PCT / US93/05938号( ラザヴィ)、特開昭57−45169及び特開昭58−38269号に記載されている。
【0024】
紫外線吸収単量体と共重合させられてもよい好適な単量体(もちろん、紫外線吸収単量体が好適に官能化されていると思われる)は、アクリル酸、そのエステル、及びアクリル酸とそのエステルのアルキル及びアリール誘導体、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、スチレン、ウレタン、及び同様な単量体などである。若干の用途で好適なものとしては、ペルフルオロアルキルアクリレートエステル、例えば、 CH2=CHCOOCH2CH2N(Et) SO2C8F17、またはフルオロアルキルジビニルエーテル、例えば、 CH2=CHOCH2C7F15などのフルオロ脂肪族ラジカル含有エチレン性不飽和単量体も挙げられる。本発明で用いられた単量体は、一つ以上のシリル部分を含有してもよい。紫外線吸収単量体で形成された共重合体は、ブロック、交互、ランダム、またはグラフト鎖共重合体であってもよい。
【0025】
種々の添加剤を、本発明に従ってsPS及び/または紫外線遮断層に添加してもよい。こような添加剤は、架橋剤、酸化防止剤、加工助剤、HALS、紫外線吸収体、潤滑油、染料、顔料及び他の着色剤、充填剤、パーティキュレイト(シリカ及び他の無機酸化物など)、可塑剤、繊維及び他の補強剤、光学光沢剤、及び種々の単量体などである。
【0026】
カバーフィルムの耐磨耗特性を改善するために、最終構造体の一つ以上の層に、コロイドシリカまたは、前記組成物の重合体成分と安定した分散系を形成することができる同様の無機酸化物を添加してもよい。このような無機酸化物、及び耐磨耗性のコーティングを付与するためにそれらを使用する方法は、例えば、米国特許第08/494,157号に記載されている。
【0027】
良好な耐落書き性の特性及び良好な耐引っかき性を有することが必要とされるフィルムにおいて、sPS 基材に紫外線吸収単量体とフルオロ脂肪族ラジカル含有エチレン性不飽和単量体との共重合体を塗布してもよい。後者の単量体は、部分的にフッ素化または過フッ素化されていてもよいが、好ましくは、過フッ素化されている末端部分を有する。このように、例えば、フルオロ脂肪族ラジカル含有エチレン性不飽和単量体は、-CF2CF2CF3 末端基を含有してもよい。
【0028】
画像形成性が重要である用途において、sPS 基材に画像形成可能なUV吸収コーティングをコートしてもよい。このようなコーティングは、例えば、種々のウレタン、アクリル、オキサゾロン及びオキサジン(ozaxine) 樹指から作製することができる。一つの具体例は、Sorbalite(登録商標)OU(屋外用ウレタン)、ミズーリ 州、セントルイスのモンサントカンパニー製の水性紫外線遮断コーティングである。このコーティングのラテックスは、主に高分子量UVA共重合体からなる。他の具体例は、架橋可能なオキサゾリンまたはオキサジンを主成分とするコーティングなどである。このような画像形成可能なコーティングは、従来のコーティング方法(例えば、グラビア、エアナイフ、カーテンなど)によって適用することができる。
【0029】
本発明で用いられた画像形成可能なコーティングは、好ましくは高度に架橋されている。この高度に架橋された物質は、より大きな耐引っかき性、耐溶剤性及び光沢保持率などの多くの利点を付与するが、画像形成を可能にする画像形成剤(例えば、インキ、トーナー、染料、及び顔料)との十分な付着力を有する。それと対照して、多くのフルオロケミカルまたはフルオロポリマ塗料は、良好な耐落書き性を提供する非常に低い表面エネルギを有するが、しかしそれは画像形成には寄与しない。
【0030】
フィルムは、重合体束縛紫外線吸収体をsPS基礎フィルムの少なくとも一つの表面に適用することによって本発明に従って作製することができる。次に、得られたフィルムをスペクトロフォトメータで分析し、加速紫外線露光及び/または長期屋外暴露に対する適合性を調べる。完全に紫外線を吸収するフィルム構造体(すなわち、290〜350 nm の間の光の波長で<0.5%の透過率を有する構造体)は、前記の紫外線遮断剤によって十分に防護されると考えられる。このようなフィルム構造体は、紫外線に屋外暴露されるとき、従来のやり方で防護されたオーバーレイフィルムより紫外線による変色を低減させることにはるかにいっそう効果があることが見出されており、同じく標識基材のへの有害な紫外線の影響を低減させることにはるかにより効果があることが見い出された。実際、キセノンアーク実験室加速露光装置で露光されたSorbalite(登録商標)被覆sPS フィルムは、耐変色性(すなわち、低b*三刺激)、PMMA 被覆と等しい光沢保持を示した。しかしながら、無防護sPS フィルムならびにUVAs及び/またはHALSを配合したsPS フィルムは、1000時間未満の露光においてさえ、ひどく黄変し、光沢を保持できない。
【0031】
本発明のフィルムの紫外線吸収コーティングの厚さは、基材のために必要とされる防護レベル、複合フィルムに必要とされる物理特性、紫外線吸収コモノマーの濃度に応じて、変化することができる。しかしながら、一般に、前記の紫外線吸収コーティングは約2〜約10μ厚、好ましくは約5μ厚である。
【0032】
図1に示した本発明の一実施態様において、標識用途のためのカバーフィルム1は、紫外線吸収コモノマーなどの紫外線吸収物質をかなり添加する PMMAコーティング5をsPS 基材3に塗布することによって提供される。PMMAコーティングは、スチレンとアクリル酸、そのエステル及びアクリル酸及びそのエステルのアルキル及びアリール誘導体からなる群から選択される単量体との共重合体7(好ましくはブロック共重合体)を有するsPS 基材の片側または両側に付着させられる。このように、例えば、前記共重合体は、スチレンとメチルメタクリレートとのブロック共重合体であってもよい。PMMAコーティングはカバーフィルムにすぐれた耐候性を与えるが、他方、sPS 基材はすぐれた寸法安定性を提供する。この実施態様はまた、他のsPS カバーフィルムよりも特定の他の利点がある。多くの標識用途において、工業または政府標準規格は、特定の目的に用いられる標識が特定の背景色を有することを必要とする。一般に、必要とされる色相は、コーティング樹脂に、所望の色を生じる濃度で一つ以上の公認の染料または顔料を配合することによって得られる。しかしながら、sPS に特定の染料または顔料を配合するとき、得られた色は、同じ染料または顔料に別の樹指を配合したときに観察される色とは異なっていることがある。例えば、sPSに青色染料分散青#198(アントロキノン染料)を配合するとき、同じ染料で処理されたPMMA フィルムの色と異なった色相(一般により明るい、またはより強くない)を有する。これは、追加の処理または配合ステップがsPS フィルムの所望の色合せを再現するのに必要とされることがあるので、既存のPMMA被覆標識をsPS カバーフィルムを有する標識と取り替えることが望ましいときには特に面倒になることがある。しかしながら、着色剤が上記の実施例の PMMA 層に添加されるなら、PMMA 用にすでに確定した染料調合物及び濃縮物を用いて同一の色合せを得ることができる。
【0033】
本発明の別の実施態様において、前記のsPS基材は、(a)オキサゾリンまたはオキサジン部分と反応することができる少なくとも一つのアニオン部分を有する水溶性または水分散性重合体または低重合体と、(b)少なくとも一つのオキサゾリンまたはオキサジン部分を有する水溶性または水分散性重合体または低重合体と、(c)紫外線遮断性物質との水溶液、エマルジョン、または分散系を含む水性組成物を塗布される。紫外線遮断性物質に(a)及び/または(b)を配合してもよい。あるいは、紫外線遮断性物質は、(a)及び/または(b)と共重合する単量体であってもよい。耐引っかき性が必要とされる場合、前記の組成物は更に無機酸化物、好ましくはコロイドシリカを含有してもよい。重合体及び低重合体(a)及び(b)の少なくとも一つが少なくとも一つのフルオロ脂肪族部分を有し、重合体または低重合体(a)または(b)(または両方)が更に、少なくとも一つのシリル部分を含有する。
【0034】
特に好ましい実施態様において、前記sPS基材は、(a)少なくとも一つのフルオロ脂肪族ラジカル含有アクリレート、少なくとも一つのカルボキシ含有単量体から誘導される共重合単位と、トリアルコキシシリルアルキルアクリレートまたはメタアクリレートまたはトリアルコキシシリルアルキルメルカプタン(アルキルの炭素原子が1〜約10個、アルコキシの炭素原子が1〜約3個)から誘導される少なくとも一つのシリル部分とを有する水溶性または水分散性重合体または低重合体と、
(b)少なくとも一つのオキサゾリンまたはオキサジン部分を有する水溶性または水分散性重合体または低重合体と、
(c) Norbloc(登録商標)7966などの紫外線吸収体と、
(d)平均粒径が少なくとも約5ナノメーターのコロイドシリカとの水溶液、エマルジョン、または分散系を含む水性組成物を塗布される。
【0035】
硬化によって、前記の組成物は、内部にコロイドシリカを組み込まれた架橋重合体コーティング(例えば、カルボキシル基とオキサゾリンまたはオキサジン部分との反応から得られた少なくとも一つのアミド− エステル架橋部分を含有する)を形成する。このようなコーティングは、 耐磨耗性をsPS 基材に付与する低表面エネルギの硬質被覆を提供し、種々の sPS 複合材料構造体(例えば、sPSの一つ以上の層と、PMMAなどの別の物質の一つ以上の層とを含有する多層複合材料、またはsPS の一つ以上の層と光画像形成基材とを含有する多層複合材料)と有利に用いることもできる。
【0036】
本発明のオーバーレイフィルムを多種多様な基材に適用して風雨から及び紫外線から防護し、及び溶剤及び腐食に対する耐性を提供することができる。一般に、本発明のカバーフィルムでコートすることができる基材の種類は、プラスチック、ガラス、金属及びセラミックスなどの硬質及び可撓性の基材などである。代表的な例は、光学フィルム、眼科眼鏡、サングラス、光学器械、イルミネータ、腕時計水晶などのレンズ、壁紙及びビニル床材などの標識及び装飾表面などである。本発明のカバーフィルムは、風雨及び紫外線から防護することが望ましい標識用途または光電池要素または電気部品の封入など、屋外用途の防護フィルムとしても概して有用である。金属表面は、本発明のカバーフィルムをそれらに適用することによって耐腐食性を付与することができる。このように、例えば、本発明のフィルムで処理された装飾用金属細片及び鏡上の光沢の輝きを維持することができる。更に、本発明のフィルムは染料及び顔料を添加して彩色することができ、装飾用薄板または被覆として表面に適用することができる。
【0037】
本発明のフィルムの特に重要な用途の一つは、グラフィックアート及び画像形成用途の防護オーバーレイフィルムとしての用途である。このように、例えば、本発明のカバーフィルムは、写真、壁画、絵、ドローイングの他、車両、パスポート、運転免許証及び他の身分証明書類の印刷図画を防護するのに有利に用いることができる。特に写真の用途において、たびたび手を触れることから生じ得る基材への損傷を低減させるために本明細書に記載したようにオーバーレイフィルムに耐摩耗性コーティングをコートすることが望ましいことが多い。
【0038】
以下の実施例は、本発明の種々の特徴を説明するが、制限することを意図するものではない。これらの実施例に関して、85℃/85%相対湿度の制御環境に長期間( > 500時間)置くのが、高性能カバーフィルムの条件の望ましい実施である。この種の屋外暴露をして大きな収縮または膨張がないカバーフィルムが、最も厳しい天候条件で信頼できると思われる。
【実施例】
【0039】
実施例1
この実施例は、本発明での使用に適したsPSフィルムの製造について明らかにする。
【0040】
混合スクリューを備えた4.5インチ(11.43cm)押出機を用いた従来のポリエステルフィルム延伸ライン上にシンジオタクチックポリスチレンフィルムを製造した。ミシガン州、ミッドランドのダウケミカルカンパニー製の4%のパラ−メチルスチレン(pMS)コモノマーを含有する分子量275,000の sPS 樹指を、押出機に供給した。領域1−7の押出機温度は580°F(304℃)であり、ゲートは580°F(304℃)であった。押し出し物を濾過し、フィルムダイにギヤポンプ及びネックチューブを用いて入れた。使用温度は、濾過550°F、ギヤポンプ630°F、ネックチューブ610°F、ダイ620°Fであった。ダイから、ポリマーのシートを、静電留めを備えたチルド鋳造ホイール上の流延ウエブ表面に流延した。鋳造ホイールを150°Fに維持した。
【0041】
次に、流延ウエブを一連のアイドラーロール上に長さ方向( MD )に延伸し、240°F(116℃)の延伸温度に赤外線放射加熱で加熱した。長さ延伸比は、約3.0:1であった。次いで、長さ方向に延伸されたウエブを240°F(116℃)の延伸領域で操作されるフィルムテンタを用いて幅方向( TD )に延伸し、470°F(243℃)の温度でヒートセットした。幅延伸比は約3.3:1であった。
【0042】
実施例2
この実施例は、耐紫外線性を付与するために紫外線吸収コーティングをsPSフィルムに適用することについて明らかにする。
【0043】
モンサントコーポレーション製のSorbalite(登録商標)OU水性ラテックス溶液を、固形分15.6%に希釈した。コネチカット州、ダンバリーのユニオンカーバイドコーポレーション製のTriton TX−100界面活性剤の0.1%溶液を前記の溶液に添加し、その表面張力を40.5ダイン/cm に下げた。次に、エアナイフ塗布設備を用いて1J/cm2 のエネルギ密度を用いてエアコロナ処理によって実施例1の sPS フィルムに前記の溶液を適用した。エアナイフは、ライン速度70fpm (21.3m/分)、塗布機ロール速度50rpm、 エアナイフ圧1psi(6.9KPa )に設定した。sPSフィルムは、塗被フィルムの紫外線吸収スペクトルによって調べると、均一な8m厚のSorbalite(登録商標)OU層を有すると推定された。
【0044】
実施例3
以下の実施例は、sPS被覆基材の環境安定性について明らかにする。
【0045】
実施例1のフィルム8の試料が、実施例 2の技術を用いて3M 92/8 IOA /AAアクリレート接着剤9を塗布され、図2に示すように光電池基材11(太陽電池)の同じ試料を封入するために用いられた。同じ光電池基材にsPS の代わりにPMMA 、PET、及び PMMA − PVDFブレンドを塗布する比較試料も作製した。
【0046】
前記の試料を、85℃/85%の相対湿度に維持した環境室に1000時間より長く置き、その後、温度が85℃〜−40℃の間で変化する10回の加熱-凍結サイクルを繰り返した(図3を参照)。次に、試料を寸法の変形の可視徴候について評価した。
【0047】
前記のsPS被覆試料は、すぐれた寸法安定性を示した。それと対照して、PMMA 、PET、またはPMMA − PVDFブレンドフィルムで封入した前記の試料は、高収縮、フィルム割れ、または端部のカールのため試験に不合格となった。
【0048】
実施例4
PMMA 及びPETカバーフィルムと比較したsPS フィルムの寸法安定性を定量化するために、別の一連のsPS フィルムを実施例1と同様に作製し、実施例2の手続に従って被覆した。再び試料を85℃/85%の相対湿度に維持した環境室に置き、時間の関数としての寸法安定性は、 平面内の収縮または膨張を±0.0001インチ(0.00254cm)まで測定することができる光学ミクロメーターを用いて平面内の寸法変化を繰り返し測定して求めた。結果を図4に示す。sPS と対照して、顕著な収縮が二軸延伸PMMA及びPETフィルムについて観察された。
【0049】
実施例5
寸法的に安定した、紫外線(UV)耐候性フィルム構造体の試料を実施例2に従って作製した。このように作製したフィルムを、環境室内で85℃/85%の相対湿度(RH)で寸法安定性について評価した。
【0050】
寸法の変化を、±0.0001インチ(0.00254cm)の平面内の変化を識別することができる光学マイクロウエブを用いて測定した。測定は、0〜1500時間間隔で行なった。
【0051】
吸湿膨張は、ミネソタ州、セントポールのナショナルメディアラボによって5−5−93発行レポート『Hygroscopic Evaporation of Ampex and Sony D-1 Tape』に記載された手続に従って試験された。
【0052】
紫外線安定性は、ASTM G 26−95、タイプBH 方法Aに従って操作されたキセノンアーク露光装置でフィルム試料を露光することによって調べた。放射照度を、340nmで0.35W/m2 を生じるように制御した。色変化は、露光の前後にCIE b*を測定することによって評価した。値はΔb*-b*(CIE 青色−黄色三刺激)として記録した。
【0053】
シート変形は、85℃/85RH 環境に4000時間置いた後にフィルム試料の目視観測結果であった。
【0054】
ノッチ引張り強度を前述のASTM法に従って調べた。
【0055】
破断伸び及び引張り応力をASTM D882−91に従って調べた。
【0056】
加工性は主観的に決定し、「可」はフィルム作製中若干のウエブ破壊があることを示し、「良好」はフィルム加工時に実質的により均一性があるころを示す。
【0057】
150℃でのフィルムの収縮は、前述したように、ASTM D2838 に従って調べた。
【0058】
これらの測定の結果を表2に示す。
【0059】
実施例6
フィルムが遂次方法ではなく、同時方法で二軸延伸されたことを除き、フィルムを実施例5と同様に作製した。延伸に用いた設備は、ドイツ連邦共和国、オーデンヴァルトKompf延伸機、モデル番号KOM.NR.8980 であった。
【0060】
通常の延伸ステップが行なわれた温度は113℃であり、延伸比は MDが3.3、TD が4.1であった。フィルムを240℃でヒートセットした。フィルムの物理特性を表2に記録した。
【0061】
比較例C1
実施例5のフィルムの構造体と同様な構造体を有するフィルムを作製したが、ただし、衝撃改良ポリメチルメタクリレートをsPS の代わりに用いた。フィルムの物理特性を表2に記録する。
【0062】
比較例C2
コーティングを適用されなかったことを除き、実施例 5と同様にフィルムを作製した。フィルムの物理特性を表2に記録する。
【0063】
比較例C3
実施例5のフィルムの構造体と同様な構造体を有するフィルムを作製したが、ただし、ポリビニリデンフルオリド(テキサス州、ヒューストン のソルベイポリマーインク製)とポリメチルメタクリレート樹指(アトハースNAインク製)の40/60ブレンドをsPS の代わりに用いた。
【0064】
実施例7
sPS 樹指が0.5%の量のIngonox 1425酸化防止剤を含んだことを除き、フィルムを実施例6と同様に作製した。
【0065】
実施例8
三菱化学工業製の青色染料 Diaresin Blue 4G を、0.9重量%でsPS に添加したことを除き、実施例6と同様に作製した。フィルムの物理特性を表2に記録する。
【0066】
【表2】

【0067】
表2の結果は、バランスがとれた物理特性を有するフィルムが、sPSを用いて及び前述の工程条件下で作製することができることを示す。
【0068】
上記のフィルムのいくつかの環境暴露特性を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3の結果は、紫外線遮断剤で防護したカバーフィルムが、高温及び極相対湿度で最大の寸法安定性ならびに従来のフィルムと比較するときすぐれた紫外線安定性/耐候性を提供することを示す。
【0071】
上記の被覆されたフィルムの一部のスペクトルの透過率プロットを図5に示す。
【0072】
図5の結果は、被覆しないフィルムと比較するとき本発明の被覆されたフィルムによって極めて減少した紫外線透過率(290<λ<370nm)を示す。
【0073】
実施例9
sPS 樹指が7%のパラ−メチルスチレン(pMS)を含有し、分子量が約325,000であったことを除き、フィルムを実施例1と同様に作製した。実施例2で詳述された手続に従ってフィルムを塗布した。塗布フィルムは実施例1に従って作製された塗布フィルムと比較して透明度を改善したことが分かった。
【0074】
実施例10
以下の実施例は、架橋可能な紫外線吸収コーティングの調製について明らかにする。
【0075】
機械撹拌機、冷却凝縮器及び温度制御装置を備えた1L の3首フラスコに、メチルメタクリレート(25g)、Norbloc(登録商標)7966(40g)、アクリル酸(25g)、メルカプトプロパン酸(5g)( HSCH2CH2COOH )、アゾビス(イソブチルニトリル )(0.75g、 Vazo(登録商標)64)、N−メチルピロリジノン(40g)、テトラヒドロフラン(60g)、イソプロピルアルコール(40g)及びA174(5g)、式:
【0076】
【化1】

【0077】
を有するトリメトキシシラン化合物を添加した。その溶液を、約3分間窒素で浄化し、加熱して重合を開始させた。反応物が発熱したとき、温度制御を75℃に調節し、加熱を約12時間その温度で継続させた。冷却凝縮器を蒸留凝縮器と取り替え、イソプロパノール及びTHFを反応混合物から蒸留した。反応混合物は、アンモニア水及び水を添加して固形分含有量30%に中和され、pH約7.5のほとんど透明な粘着性の溶液を生じた。
【0078】
上記の溶液の一部(固形分6.0g、23.6mm COOH 基)を、 イソプロペニルオキサゾリン/エチルアクリレートメチルメタクリレート(重量比85/5/10、固形分3.0g、23ミリモル、日本シャクバイ製)と混合した。次いで、この溶液をコロイドシリカ分散系混合物(9gのNalco(登録商標)2329、1.0gの水及び3滴の濃縮NH3)に添加し、その後に、(溶液重量に対して)0.05%のTriton(登録商標)X−100及びSurtynol(登録商標)420 、溶液容積に対して、それぞれ0.1%のFC − 129及びFC −170c ( 3M コーポレーション 製のフッ素系の非イオン性界面活性剤)を添加した。最後に、以下の化合物(固形分に対して)約0.5%を添加した。
【0079】
【化2】

【0080】
得られた調合物を、基材に塗布する前に約1〜2日間室温で放置した。
【0081】
実施例 11
以下の実施例は、架橋可能なオキサゾリンコーティングを sPS フィルムに適用することについて明らかにする。この種類の塗布フィルムは、sPSカバーフィルムが 画像形成可能である必要があると共に基材が洗浄剤で洗浄できるように基材に耐溶剤性を付与することが必要とされる用途で有用である。
【0082】
#8メイヤーバーコータを用いて、実施例10のコーティングは3つのミル sPS フィルムに適用された。前記の塗布フィルムを150℃で2分間オーブン内で硬化させた。得られたフィルムは透明であり、被覆しなかったsPSの試料と外観は同様であった。前記のフィルムの紫外線スペクトルは、同スペクトルの紫外線部分の大部分(290〜350nm )にわたり約0.5%より少ない透過率を示した。
【0083】
実施例12
以下の実施例は、本発明の sPSカバーフィルム上で使用するフルオロケミカルコーティングの調製について明らかにする。
【0084】
機械撹拌機、冷却凝縮器及び加熱マントルを備えた5Lの3首フラスコに、平均分子量が約600であるFX − 13(220g、 Norbloc(登録商標)7966(400g)、アクリル酸(240g)、A−174(100g)、 MPA (40g)、2,2,6,6− テトラメチル−4−ピペリジノール(15g)、Vazo(登録商標)64(10g、固形分に対して1.0%)、NMP (400g)、イソプロピルアルコール(700g)及びテトラヒドロフラン(400)を入れた。次に、前記の溶液を70℃で12時間、重合させた。
【0085】
溶液の初期発熱は著しかった。同溶液は初期温度60℃から最大92℃になったが、加熱マントルは約75℃で取り除かれた。初期発熱後、同溶液は約20分間90℃のままであり、次いで、徐々に70℃に冷却したが、それは重合の大部分について残っていた。重合が完了したとき、溶液は透明であり、中程度の粘性であった。
【0086】
テトラヒドロフラン及びイソプロピルアルコールを約57℃で減圧下で前記の溶液から取り除き、溶剤約830gを回収した。次に、取り除かれた重合体を30%のアンモニア水溶液で中和し、固形分30%の溶液を生じた。中和された溶液を約60℃で30分間撹拌し、最終pHが約8.2であった。
【0087】
次に、同溶液にCX−Ws−300架橋剤(10.8%の濃度で固形分436g、全IPO官能基3.34モル)を配合した。最終調合物は、固形分19.5%、pHが8.2であり、やや半透明、適度に粘着性であった。
【0088】
同調合物は、60℃で約1.5時間、老化させた。透明な塗布フィルムが120℃で約10分間硬化させた後に得られた。この塗膜は、すぐれたディウェッティング特性を有し、105℃で2時間加熱後に測定された最終固形分の含有量が20%であった。
【0089】
実施例13
以下の実施例は、 フルオロケミカルコーティングをsPSフィルムに適用することについて明らかにする。この種類の塗布フィルムは、カバーフィルムの耐落書き特性が特に重要であるが画像形成性が必要とされない用途に有用である。
【0090】
グラビア式方法を用いて、実施例12の組成物を3ミルのsPS フィルムに適用した。塗布フィルムを150℃で約3分間オーブン内で硬化させた。得られたフィルムは透明であり、被覆しなかったsPSの試料と外観は同様であった。前記のフィルムの紫外線スペクトルは、同スペクトルの紫外線部分の大部分(290〜350nm )にわたり約0.5%より少ない透過率を示した。
【0091】
実施例14
米国特許第5,294,662号に記載された「ペン試験」を用いて、実施例13のフィルムの耐落書き特性を評価した。同試験に従って、細い線を黒色Sharpie(登録商標)サンフォードカンパニー製細書き耐久性マーカを用いて塗布フィルムの表面に引いた。0〜3の数値を、得られた線の外観に基づいて割り当てる。値は次のように規定する。3:全く非湿潤性、インクがはじき、不連続な線を形成する(最良)。2:インクが部分的にはじき、非常に細い連続した線を形成する。1:若干はじく。0:全く湿潤性、処理しない表面と同じ(不良)。実例として、ポリテトラフルオロエチレン表面上に書かれた線はややはじき、1とされる。
【0092】
実施例13のフィルムをペン試験にかけたとき、その値は3となった。
【0093】
前述の記載内容は、当業者に本発明を理解させるためのものであり、制限しようとするものではない。本発明の範囲内の変更は、当業者にはすぐに明白であろう。それ故に、本発明の範囲は、添付したクレームを参照してのみ解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、継ぎ層及びPMMA 表皮/外層を有するsPS コア層を含む、本発明によるカバーフィルム構造体の略図である。
【図2】図2は、本発明に従って作製されたフィルムで封入された光電池基材の略図である。
【図3】図3は、本発明に従って作製されたフィルムで封入された光電池基材の湿度−凍結循環試験の分布図である。
【図4】図4は、種々の二軸延伸フィルムの時間の関数としての収縮のグラフである。
【図5】図5は、いろいろな厚さの紫外線遮断層で被覆されたsPS フィルムの波長の関数としての透過率のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクチックポリスチレンを含む第1の層と、該第1の層上に配された紫外線遮断性物質を含む第2の層と、を含むフィルム。
【請求項2】
前記紫外線遮断性物質が、紫外線遮断性単量体と第2の単量体との共重合体である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記第2の単量体がスチレンである請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記第2の単量体がウレタンである請求項2に記載のフィルム。
【請求項5】
前記第2の単量体がフルオロケミカルである請求項2に記載のフィルム。
【請求項6】
前記第2の単量体が少なくとも一つのシリル部分を含有する請求項2に記載のフィルム。
【請求項7】
前記第2の単量体が少なくとも一つのトリアルコキシシリル 基を含有する請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記第2の単量体が少なくとも一つのオキサゾリンまたはオキサジン部分を含有する請求項2に記載のフィルム。
【請求項9】
前記第2の層が水性ラテックスである請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
前記第2の層がポリメチルメタクリレートを含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
前記紫外線遮断性物質が前記ポリメチルメタクリレート中に配される請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記シンジオタクチックポリスチレンがスチレンとパラ−メチルスチレンとの共重合体である請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
前記シンジオタクチックポリスチレンが、約90〜約95%のスチレン単量体及び約5〜約10%のパラ−メチルスチレン単量体を含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項14】
標識基材と組合せた請求項1に記載のフィルム。
【請求項15】
前記第2の層を前記第1の層に結合するための結合手段を更に含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項16】
前記結合手段が、スチレンとアクリル酸のエステル及びそれらのアルキル及びアリール誘導体からなる群から選択される単量体との共重合体である請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
前記単量体がメチルメタクリレートである請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記第2の層が更に着色剤を含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項19】
シンジオタクチックポリスチレンを含む第1の層と、該第1の層の第1面に配された(a)ポリメチルメタクリレートと (b) 紫外線遮断性物質とを含む第2の層と、該第1及び第2の層の間に配された、スチレンとアクリル酸のエステル及びそれらのアルキル及びアリール誘導体からなる群から選択される単量体との共重合体を含む第1の結合層と、を含むフィルム。
【請求項20】
前記第1の層の第2面に配された(a)ポリメチルメタクリレートと(b)紫外線遮断性物質とを含む第3の層と、該第1及び第3の層の間に配された第2の結合層と、を更に含む請求項19に記載のフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−45158(P2007−45158A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−242850(P2006−242850)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【分割の表示】特願平10−526610の分割
【原出願日】平成9年4月25日(1997.4.25)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】