説明

累積的運転中断時間の計算方法

本発明は、車両運転者の身元(10)に割り当てられた累積的運転中断時間の計算方法に関するものであり、ここでは所定の運転者の累積的運転中断時間(Σti)が、それぞれの運転中断時間(ti2,ti4,ti5)の累積時間として計算される。この頻繁な過程は非常に面倒であり、時間が掛かる。とりわけデータカード担体を新生代のデジタルタコグラフに挿入することによってこのプロセスが初期化される場合には非常に面倒であり、時間が掛かる。計算時間を短縮するために本発明は、これまでの記録に常時更新される時間的基準マーク(tRef)をセットし、ここから正の時間系列でEG規則第1360/2002号による累積的運転中断時間(Σti)を計算することを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、累積的運転中断時間をコントロール機器によって計算する方法に関するものであり、このコントロール機器は車両運転者の活動を記録する。ここでは所定の運転者の累積的運転中断時間は次のように計算される。すなわち、最後に計算された、少なくとも45分持続する累積的運転中断時間の終了時点から、少なくとも15分持続する運転中断時間をそれぞれの累積した時間が累積的運転中断時間として計算される。
【0002】
新世代のドライブレコーダは車両運転者の活動、すなわち操舵、待機、中断ないし休息または作業を、従来のドライブレコーダのように紙製ダイアグラムディスクを用いて記録するのではなく、活動および所属の時間間隔をデジタルでデータ担体に記憶する。このために各車両運転者にはデータカードが配属される。このデータカードは内部メモリを有し、内部メモリには運転者に関連するデータおよび記録されたデータがファイルされる。欧州委員会のEG規則第1360/2002号によれば、この文書でコントロール機器と称されるデジタルドライブレコーダは、そこに同様に規定された累積的運転中断時間を計算できなければならず、これにより休息時間および操舵時間に対して所定の最小値および最高値を維持することができる。この時間、とりわけ累積的運転中断時間の計算に所要の高精度を達成するには非常に大きな計算コストが必要であり、従って集積計算機構に高い要求が課せられる。電圧故障の可能性は、計算に時間の掛かる活動性計算のために使用可能な時間窓の大きさを厳しく制限する。従って一方では計算の所要の高精度が、他方では所要のデータ確実性がほぼ相互に相容れない周辺条件を有する。
【0003】
本発明の課題は、コントロール機器によって累積的運転中断時間を計算する方法を提供することであり、この方法は計算時間が短く、同時に高い安全性要求を満たすようにする。
【0004】
この課題を解決するために本発明では、
計算方法の第1ステップで、これまでの記録を、現在の時点から遡る時間系列で少なくとも45分持続する切れ目のない運転中断時間が最後に存在するか否かについて検査し、このような時間が最後に存在する場合にはこの時間の終了時点を時間的基準マークとしてセットし、
第2ステップで、累積的運転中断時間を0にセットし、
第3ステップで、この時間的基準マークから正の時間系列で、少なくとも15分持続する運転中断時間を、時間の和が少なくとも45分に達するまで累積し、
第4ステップで、第3ステップの最後の加数時間を正の時間系列で区切る終了時点を新たな基準マークとしてセットし、
第2,第3,第4ステップを、現在時点に達するまで順次繰り返す、ことが提案される。計算コストをできるだけ小さく維持するために、本発明の方法は過去の所定の時点に、評価すべき時間間隔の開始時点を指示する基準マークをセットする。このようにして本発明は、累積的運転中断時間の計算の際に、これまでの活動性の記録時間全体を評価する本来の必要性を回避する。
【0005】
このことにより初めて、許容可能なアクセス時間と実現可能な電力故障コンセプトが可能である。本発明の方法の利点は、これまでの活動性記録の時間が長ければ長いほど大きい。基準マークを常時移動することにより、評価する時間インターバルの長さが最小になる。これにより短い計算時間を実現することができる。同時にEG規則の要求全体が妥協なしで満たされる。
【0006】
本発明の有利な改善形態では、方法の第1ステップで計算開始時点を現在時点としてセットする。この現在時点は、計算機構における相応のプログラム経過の安定性に有利な本発明の方法の変形では、計算の持続中に一定の値を取ることができる。
【0007】
別の手段では、計算持続時間を表す平均時定数を、プログラム経過中であってプログラム終了に達する前に現在時点に加算し、評価全体が計算方法の実行時間も含むようにする。もっとも正確な変形実施例では、現在時点を計算方法の実行中も連続時間により常時変化して規定し、これにより常にもっとも正確な評価結果が達成されるようにする。
【0008】
少なくとも45分持続する切れ目のない運転中断時間が最後に存在しない場合、第1ステップで基準マークをまず活動性記録の開始時点にセットすると有利である。本発明のこの構成は、有利には稀なケースを考慮する。すなわちコントロール機器の動作中に場合により車両運転者の身元への割り当てにおいて、45分持続する運転中断時間がまだ発生していないケースを考慮する。現実的な動作状況では、このようなケースも受容できる計算時間により対処すべきである。
【0009】
コントロール機器が第1メモリを有し、この第1メモリに1つの身元にそれぞれ割り当てられた基準マークが記憶され、コントロール機器が計算方法の第1ステップの前、または第1ステップと第2ステップの間で、まず計算を実行すべき身元に割り当てられた基準マークが存在するかを検査し、割り当てられた基準マークが存在する場合には、割り当てられ、記憶されたこの基準マークを計算の基礎として使用する。実際的な実現ではこのことは、運送業に従事し、コントロール機器に自分のデータカードで身元申請する車両運転者が、この種の計算を自分のデータカードによって初期化するときに過度に長時間掛からず、自分の累積的運転中断時間の計算時間を短くすることができることを意味する。基本的に、車両運転者が計算を自分に割り当てられたデータカードによって初期化するのではなく、別の外部データメモリによって初期化することも考えられる。このデータメモリはデータ伝送のためにコントロール機器と適切に接続されている。
【0010】
車両の動作関連データを正確に記録するためには、コントロール機器が測定値発生器と接続されており、この測定値発生器が車両の速度によりコントロールされるパラメータをコントロール機器に記録のために通知すると有利である。
【0011】
車両運転者の身元証明ないしは身元の以降の記録への割り当てを行うために、コントロール機器が外部インタフェース、とりわけデータ伝送のための接点エレメントを備えるデータカード収容部を有すると有利であり、この外部インタフェースに第2メモリを備える外部データ担体、とりわけデータカードを接続することができる。まず第一にここでは、データカードが車両運転者の身元証明に用いられるだけではなく、車両運転者の身元に割り当てられたこれまでの活動性の記録を通知するためにも用いられる。このために外部データ担体が第2メモリに、車両運転者の身元に関するデータを含むと有利である。
【0012】
本発明の有利な改善形態では、コントロール機器が操作エレメントを有し、この操作エレメントによって車両運転者は記録すべき活動性に付いてのデータをコントロール機器に入力することができる。同時に標準デフォルトを規定し、この標準デフォルトが、記録すべき活動性に対して入力が予期されるが、実行されない場合にコントロール機器を設定すると有利である。
【0013】
以下では本発明を特別な実施例に基づき、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、車両運転者の身元に配属された、本発明のコントロール機器によって記録される記録を簡素化して概略的に示す図である。
図2は、累積的運転中断時間の計算の流れを示す概略図である。
【0014】
図1は、活動性1の間欠した経過を示す線図によって記録経過の例を示す。縦軸2にプロットされた活動性は、運転(操舵)3,可用性(待機)4,休息(休憩)5および仕事(作業)6である。
【0015】
車両運転者7はコントロール機器8にデータカード9によって自分の身元10を通知し、この行動に基づきとりわけ累積的運転中断時間Σtの計算を初期化する。コントロール機器8は測定値発生器11と接続しており、この測定値発生器11はコントロール機器8に、速度コントロールのための測定値f(v)を通知する。
【0016】
線図に示された記録の時間経過では、活動性1が「作業」の比較的長い持続後に73分の活動性「睡眠」(ti1)に切り替わる。この活動性はこの時点ないし時間的基準マークtRef1で終了する。これに続いて「操舵」と「待機」のシーケンスが交互に現れる。tRef1から出発して時点tRef2までに累積的運転中断時間Σtは(ti2+ti4+ti5)79分となる。最後のti5=35分の中断により、Σt>45分となり、本発明の方法により新たな基準マークtRef2が最後の累積的時間区間の終了時点にセットされる。
【0017】
図2には本発明の方法が5つのステップに分割されており、0.により開始し、4.により終了する。
【0018】
0.により示された方法ステップでは、コントロール機器8が、身元10について過去に基準マークtRef(ID)の検出がすでに行われているか否かを検査する。このためにコントロール機器8は内部第1メモリ20にアクセスする。この内部第1メモリ20には身元IDと基準マークtRefとの対応関係21がファイルされている。この検査で、身元IDには基準マークtRefが存在していないことが判明すると、本発明の方法は実施例によれば1.により示されたステップに移行する。身元IDについてすでに以前に、対応関係21のエレメントである基準マークtRefが検出されていれば、方法は2.により示されたステップにより継続される。0.により示されたステップは基本的に、本発明による累積的運転中断時間Σtの計算に対する前提ではない。この種の計算は、身元IDを参照しなくても実行することができ、従ってこの方法の有利な実施例は1.により示されたステップから開始することもできる。これはとりわけ、例えば車両の運転者が、前もってデータカード9を機器に挿入せずに車両を運転する場合である。
【0019】
1.により示された方法ステップでは、現在の時点tから遡る時間系列−1でこれまでの記録内に、45分より長く持続した切れ目のない運転中断時間tixが存在するか否かを検査する。このような45分またはそれ以上の時間が存在すれば、本発明の方法は実施例では時間的基準マークtRef1を、この運転中断時間を正の時間系列で区切る終了時点tixeにセットする。これまでの記録に少なくとも45分持続する切れ目のない運転中断時間が存在しなければ、基準マークtRef1は記録の開始時点tにセットされる。
【0020】
2.により示された方法ステップでは、累積的運転中断時間Σtがまず0に設定され、引き続き3.により示された方法ステップに入る。
【0021】
時間的基準マークtRefから正の時間系列で少なくとも15分持続する運転中断時間tixが、和Σtが45分の持続時間に達するかまたは越えるまで累積される。これに基づき最後の加数の、正の時間系列で存在する終了時点が新たな基準マークtRefi+1としてセットされる。この方法は3.により示されたステップを、現在時点tに達するまで繰り返す。この時点でプログラム経過は中断され(STOP)、累積的運転中断時間および基準マークの現在の割り当てがコントロール機器8のさらなる記録および計算の基礎として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、車両運転者の身元に配属された、本発明のコントロール機器によって記録される記録を簡素化して概略的に示す図である。
【図2】図2は、累積的運転中断時間の計算の流れを示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
累積的運転中断時間をコントロール機器(8)によって計算する方法であって、該コントロール機器は車両運転者(7)の活動性をデータメモリにより記録し、
前記累積的運転中断時間Σtは、最後に計算された、少なくとも45分持続する累積的運転中断時間の終了時点から、少なくとも15分持続する運転中断時間(ti2,ti4,ti5)をそれぞれの累積した時間として計算され形式の方法において、
・第1ステップで、これまでの記録(t)を、現在の時点(t)から遡る時間系列(−t)で少なくとも45分持続する切れ目のない運転中断時間(Σt)が最後に存在するか否かについて検査し、
・このような時間が最後に存在する場合には、この時間の終了時点を時間的基準マーク(tRef)としてセットし、
・第2ステップで、累積的運転中断時間Σtを0にセットし、
・第3ステップで、前記時間的基準マークtRefから正の時間系列で、少なくとも15分持続する運転中断時間を、時間の和(Σt)が少なくとも45分に達するまで累積し、
・第4ステップで、前記第3ステップの最後の加数時間を正の時間系列(t)で区切る終了時点を新たな基準マーク(tRef)としてセットし、
・前記第2,第3,第4ステップを、現在時点に達するまで順次繰り返す、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
第1ステップで、計算の開始時点を現在時点tとしてセットする、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
少なくとも45分持続する切れ目のない運転中断時間(Σt)が最後に存在しない場合、第1ステップで基準マークtRefをまず活動性(1)の記録の開始時点にセットする、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、
コントロール機器(8)が第1メモリ(20)を有し、該第1メモリには身元(10)にそれぞれ割り当てられた基準マーク(tRef)が記憶され、
コントロール機器(8)が計算方法の第1ステップの前、または第1ステップと第2ステップの間で、まず計算を実行すべき身元(10)に割り当てられた基準マーク(tRef)が存在するかを検査し、割り当てられた基準マーク(tRef)が存在する場合には、割り当てられ、記憶されたこの基準マーク(tRef)を計算の基礎として使用する、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、
コントロール機器(8)は測定値発生器(11)と接続されており、
該測定値発生器は、車両の速度によりコントロールされるパラメータをコントロール機器(8)に記録(t)のために通知する、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、
コントロール機器(8)は外部インタフェース、とりわけデータ伝送のための接点エレメントを備えるデータカード収容部を有し、該外部インタフェースに第2メモリを備える外部データ担体、とりわけデータカード(9)が接続される、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
外部データ担体は第2メモリに、車両運転者(7)の身元(10)についての情報を含み、
コントロール機器(8)は、記録(t0)をデータカード(9)に指示された身元(10)に割り当てる、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、
コントロール機器(8)は操作エレメントを有し、該操作エレメントによって車両運転者(7)は記録すべき活動性(1)についてのデータをコントロール機器(8)に入力することができる、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、
累積的運転中断時間の計算中に、当該累積的運転中断時間は車両運転者(7)の身元(10)に割り当てられる、ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−503815(P2008−503815A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517271(P2007−517271)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052515
【国際公開番号】WO2006/000513
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】