説明

細幅織物とその織成方法

【課題】2種類の糸の位置関係を変化させて縦糸に織り込むことにより、表面の色合いの変化を均一にした細幅織物を提供する。
【解決手段】供給手段から2種類の横糸11,12が供給され、前記横糸11,12を合わせて誘導孔に挿通させたニードルを縦糸の間で往復させることにより、前記横糸11,12を縦糸に織り込んで細幅織物1を織成するに際し、変位横糸12は、供給手段からニードルの誘導孔に至る間に供給経路変位手段を介在させ、前記供給経路変位手段によりニードルの誘導孔に至る供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込む織成方法を用いて織成される細幅織物1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の横糸(緯糸)を縦糸(経糸)に織り込んだ細幅織物とその織成方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
畳縁地等の細幅織物は、例えば特許文献1に見られるように、2種類の横糸を縦糸に織り込み、各横糸が断続的に表れることにより色合いの変化を有する表面を形成するものがある。ここで、「2種類の横糸」とは、特に色の異なる横糸を意味するが、このほか素材の種類、フィラメントの多寡、太さ(デニール又はテックス)の大小が異なってもよい。特許文献1の細幅織物は、通常の横糸と、金銀等の輝色を施した扁平な飾り糸とを、縦糸に織り込んで織成されている。また、特許文献2に見られるように、少なくとも1本が縦糸と異なる色の2本のモノフィラメント糸や、モノフィラメント糸とマルチフィラメント糸とを縦糸に織り込む細幅織物もある。
【0003】
2種類の横糸を縦糸に織り込んだ細幅織物は、例えば特許文献3に見られる細幅織機により織成される。特許文献3の細幅織機は、前進及び後進するニードル(14)に2種類の横糸(a,b)を交互に係止させて縦糸(c)に織り込む。特許文献3は、各横糸が縦糸に対して斜行することを防止する技術に関するもので、2種類の横糸(a,b)を交互にニードル(14)に係止させる手段は詳述されていないが、横糸(a,b)の位置関係を反転させて入れ替えることにより、同一軌道上を往復するニードル(14)に交互に係止させるものと推測される。現在の主流は、2種類の横糸をまとめてニードルの誘導孔に挿通させ、前記ニードルを縦糸の間で往復させて横糸を縦糸に織り込む織成方法である。
【0004】
【特許文献1】実公昭38-021683号公報
【特許文献2】登録実用新案第3131055号公報
【特許文献3】特開昭51-001758号公報(第3頁左上欄4行〜8行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2にも記載されるように、2種類の横糸を縦糸に織り込んだ細幅織物は、2種類の横糸が断続的に表れることにより色合いが変化する表面を形成する。しかし、2種類の横糸をまとめてニードルの誘導孔に挿通させ、前記ニードルを縦糸の間で往復させて横糸を縦糸に織り込む織成方法では、各横糸の表れ方が単調になりやすく、各横糸の表れ方が偏って、色合いの変化が不均一になる問題がある。特にパステルカラー等の淡い色調を有する横糸を用いた場合、色合いの変化が不均一であることが強調されやすく、規則正しい色合いの変化が織りムラとして認識され、細幅織物の商品価値を低下させてしまう。これから、2種類の横糸を縦糸に織り込む細幅織物は、各横糸の表れ方を不規則ながら均等にして、表面の色合いの変化を均一にすることが望まれる。
【0006】
2種類の横糸を縦糸に織り込んだときに、表面の色合いの変化が不均一になる原因は、ニードルの誘導孔に挿通させた2種類の横糸が常に一定の位置関係で織り込まれることにある。この点、特許文献3の細幅織機に見られるように、2種類の横糸を独立して個別に縦糸に織り込んでいけば、相対的に2種類の横糸の位置関係が変化すると考えられ、表面の色合いの変化を不均一にする細幅織物を織成しやすい。しかし、2種類の横糸を交互にニードルに係止させることは難しく、ニードルが横糸を係止できない不具合の発生することが避けられず、細幅織物の生産性を高めることができない。そこで、2種類の横糸を縦糸に織り込む細幅織物を織成する際、生産性を高めつつ、2種類の糸の位置関係を変化させて縦糸に織り込むことにより、表面の色合いの変化を均一にする織成方法を開発すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果開発したものが、2種類の横糸を縦糸に織り込んで織成される細幅織物において、横糸の一方又は双方は、縦糸に至る供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込んだ細幅織物である。ここで、「縦糸に至る供給経路を位置変化させ」るとは、供給手段から縦糸に至って織り込まれるまでの横糸の供給経路が少なくとも2以上ある又は連続的に変化し、横糸が縦糸に織り込まれるに際して各供給経路を切り換える又は連続的に変化させることを意味する。この場合、複数の供給経路は、始端が横糸の供給手段で共通し、また終端が織り込まれる縦糸と面一で共通してそれぞれ位置変化しないことから、前記始端から終端までの経路途中が位置変化する態様で切り換えられる。また、後述する「縦糸に至る供給経路を位置固定」するとは、前記経路途中が位置変化しないことを意味する。
【0008】
本発明の細幅織物は、2種類の横糸を縦糸に織り込む際、横糸の一方又は双方の供給経路を位置変化させることにより、縦糸に織り込む横糸の相対的な位置関係を変化させ、前記各横糸それぞれの表面における表れ方を不規則ながら均等にして、表面の色合いの変化が不均一になることを避ける。横糸の表面における表れ方は、横糸相互の位置関係がどれほど相対的に変化するかによって異なり、前記横糸の表面における表れ方に応じて表面の色合いの均一性も変わる。例えば織りムラと評価されない程度に表面の色合いを均一にするには、縦糸に織り込む横糸の位置関係が規則正しくならなければよいので、2種類の横糸の供給経路が相対的に位置変化させれば足りる。
【0009】
表面の色合いの変化を均一にするには、横糸の一方は、縦糸に至る供給経路を固定して縦糸に織り込み、横糸の他方は、供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む範囲で供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込むとよい。上述したように、2種類の横糸の供給経路は相対的に位置変化すればよいため、横糸の一方の供給経路を基準として、横糸の他方の供給経路を位置変化させることが最も簡易である。また、供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む範囲で、横糸の他方の供給経路を位置変化させることにより、縦糸に織り込まれた際の横糸の位置関係が切り換わり、横糸の表面における表れ方を不規則ながら均等にし、表面の色合いの変化を均一にできる。ここで、「供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む範囲」とは、前記横糸を含む平面内で、かつ前記横糸を挟む範囲を意味する。
【0010】
より好ましくは、横糸の一方は、縦糸に至る供給経路を固定して縦糸に織り込み、横糸の他方は、供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む上下方向の範囲で供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込むとよい。2種類の横糸を合わせて縦糸に織り込むと、前記横糸は概ね上下段の位置関係になる。これから、供給経路が位置固定された横糸の一方に対し、横糸の他方の供給経路は前記横糸の一方を挟む上下方向の範囲で位置変化させることにより、縦糸に織り込まれた際の横糸の位置関係が上下方向に切り換わり、横糸の表面における表れ方を不規則ながら均等にし、表面の色合いの変化を均一にできる。ここで、「供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む上下方向の範囲」とは、上述した横糸を含む平面が上下方向に向いている場合を意味する。
【0011】
現在の細幅織機は、ニードルを用いて横糸を縦糸に織り込むことから、本発明の細幅織物の織成方法は、次のようになる。すなわち、供給手段から2種類の横糸が供給され、前記横糸を合わせて誘導孔に挿通させたニードルを縦糸の間で往復させることにより、前記横糸を縦糸に織り込んで細幅織物を織成するに際し、横糸の一方又は双方は、供給手段からニードルの誘導孔に至る間に供給経路変位手段を介在させ、前記供給経路変位手段によりニードルの誘導孔に至る供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込む細幅織物の織成方法である。
【0012】
供給手段やニードルは、従来公知の細幅織機における供給手段やニードルと同じでよいが、ニードルの誘導孔は横糸の供給経路を位置変化させる方向に平行な開口面を有することが望ましい。供給経路変位手段は、ニードルの誘導孔にまで供給する横糸を係合又は挿通させる部位を有し、前記係合又は挿通させる部位を位置変化させることにより、横糸の供給経路を位置変化させるものであれば足りる。ここで、係合又は挿通させる部位の位置変化は単純な反復運動でもよいため、供給経路変位手段は、例えば細幅織機の反復運動する部位に連動アームを設け、前記連動アームに横糸を係合又は挿通させる部位を設けることにより構成できる。
【0013】
ニードルを用いて横糸を縦糸に織り込む細幅織機は、ニードルが縦糸の間に進入すると、横糸が供給経路から縦糸に向けて折り曲げられる。ニードルによる供給経路の折り曲げの起点は、横糸を掛け回す保持ガイドが用いられる。これから、本発明の細幅織物の織成方法は、横糸の一方又は双方が、供給手段から保持ガイドに掛け回してニードルの誘導孔に挿通され、前記供給手段から保持ガイドに至る間に供給経路変位手段を介在させ、前記供給経路変位手段により保持ガイドとニードルの誘導孔とを結ぶ供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込む織成方法となる。ここで、保持ガイドは、既述したように、ニードルによる供給経路の折り曲げの起点となればよく、横糸の挿通孔を構成する閉じた枠体や、折れ曲がる横糸の内側に宛てがわれる棒体から構成される開いた枠体を例示できる。
【0014】
本発明の織成方法においても、既述したように、横糸の一方の供給経路を位置固定し、横糸の他方の供給経路を位置変化させるとよい。すなわち、供給経路変位手段は、前記供給経路変位手段を介在させない横糸の一方を挟む範囲で横糸の他方の供給経路を位置変化させるとよい。更に具体的には、供給経路変位手段は、前記供給経路変位手段を介在させない横糸の一方を挟む上下方向の範囲で横糸の他方の供給経路を位置変化させるとよい。この場合、細幅織機の上下方向に反復運動する部位に連動アームを設け、前記連動アームに横糸を係合又は挿通する部位を設けることにより、供給経路変位手段を構成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の細幅織物は、表面の色合いの変化を均一にすることで、織りムラと評価されず、むしろ全体的に均一な色合いに整えられた表面として、商品価値を高めることができる。特にパステルカラー等の淡い色調を有する横糸を用いた場合、表面全体が淡い色合いに整えられ、例えば前記横糸を用いた畳縁地の商品価値を高めることができる。これは、横糸の一方又は双方の縦糸に至る供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込んだことによる効果である。前記効果は、横糸の一方の縦糸に至る供給経路を位置固定し、横糸の他方を供給経路を、位置固定した横糸の一方を挟む範囲で供給経路を位置変化させながら、好ましくは横糸の他方を供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む上下方向の範囲で供給経路を位置変化させながら、それぞれ縦糸に織り込むことで、よりよく達成される。
【0016】
本発明の織成方法は、ニードルを用いて横糸を縦糸に織り込むに際し、横糸の一方又は双方の供給経路に供給経路変位手段を介在させて前記横糸の供給経路を変化させることにより、表面の色合いの変化が均一となる本発明の細幅織物を織成できるようにする。このとき、本発明は、ニードルの誘導孔に横糸を挿通したまま合わせて縦糸に織り込むので、特許文献3のように、ニードルが横糸を係止できない不具合を発生させることがなく、細幅織物の生産性を高めやすい。また、供給経路変位手段は、例えば細幅織機の反復運動する部位に連動アームに横糸を係合又は挿通させる部位を設けて構成できることから、既存の細幅織機を改造して供給経路変位手段を追加し、本発明の細幅織物を容易に織成できるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の細幅織物1を表す部分斜視図、図2〜図7は供給経路を位置変化させる横糸12(以下、変位横糸12と呼ぶ)が供給経路を位置固定した横糸11(以下、固定横糸11)より上方に供給経路を位置させた状態を表す細幅織機の部分平面図、部分正面図又は部分側面図であり、図2は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む前の段階の部分平面図、図3は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む前の段階の部分正面図、図4は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む前の段階の部分側面図、図5は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む途中の段階の部分平面図、図6は横糸11,12を縦糸13の間に織り込みを終えた段階の部分平面図、図7は横糸11,12を縦糸13の間に織り込みを終えた段階の部分側面図を表し、また図8〜図13は変位横糸12が固定横糸11より下方に供給経路を位置させた状態を表す細幅織機の部分平面図、部分正面図又は部分側面図であり、図8は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む前の段階の部分平面図、図9は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む前の段階の部分正面図、図10は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む前の段階の部分側面図、図11は横糸11,12を縦糸13の間に織り込む途中の段階の部分平面図、図12は横糸11,12を縦糸13の間に織り込みを終えた段階の部分平面図、図13は横糸11,12を縦糸13の間に織り込みを終えた段階の部分側面図である。
【0018】
本発明に基づく細幅織物1は、図1に見られるように、固定横糸11と変位横糸12とが表面において均等に表れ、前記表面の色合いの変化を均一にする。これは、固定横糸11の色と変位横糸12の色とが均等に混ざり合うことを意味する。これから、例えば固定横糸11と変位横糸12とがいずれもパステルカラー等の淡い色調を有する場合、両者は不規則ながら表面において均等に表れるので、前記表面全体が淡い色合いに整えられ、非常に外観に優れた細幅織物1とすることができる。細幅織物1として色合いが重視される商品として畳縁地があり、本発明は畳縁地の商品価値を高める効果を発揮する。
【0019】
本例の細幅織物1は、例えば既製の細幅織機に、変位横糸12の供給経路を切り換える変位ガイド(供給経路変位手段)2を追加し、従来同様の織成手順で織成する。本例の細幅織機の主要部分を説明する。本例の細幅織機は、図2〜図4に見られるように、基本部分は従来の細幅織機と同じである。固定横糸11及び変位横糸12は、それぞれの供給手段(図示略)から個別に供給され、それぞれの保持ガイド32,33に掛け回されてから合わせてニードル31の誘導孔311に挿通させる。そして、ニードル31が縦糸13の間で往復して縦糸13の間に固定横糸11及び変位横糸12を送り込まれ、筬3で打ち付けて織り込む。また、固定横糸11及び変位横糸12を縦糸13の間に送り込む際、横糸11,12を一時的に保持する保持針(ベラ針)35を有する点も、従来同様である。
【0020】
本発明の織成方法は、変位横糸12の供給手段から保持ガイド33に至る間に変位ガイド2(供給経路変位手段)を介在させている点に特徴を有する。これにより、固定横糸11の供給経路は変化しないが、変位横糸12の供給経路は、上下方向に変位する変位ガイド2に従い、保持ガイド33とニードル31の誘導孔311とを結ぶ範囲で、固定横糸11を挟む上下方向に位置変化する。固定横糸11の保持ガイド32は、正面から見て左側にあり、ニードル31の旋回面に一致した高さで配置されたリング状であるが、変位横糸12の保持ガイド32は、正面から見て右側にあり、ニードル31の旋回面を挟んで上下に延びた長孔状である。また、変位横糸12の供給経路が位置変化を円滑にするため、ニードル31の誘導孔311は、変位横糸12の供給経路が位置変化する上下方向(垂直方向)に平行な開口面を有する。
【0021】
変位ガイド2は、下端に取付ループを設けた取付部の上端から斜め前方に降ろした傾斜係合部21を形成し、更に傾斜係合部21の下端から前記取付部に向けて折り返した針金部材で、綜絖枠(図示略)に連動して上下する揺動バー222に、前記揺動バー222が上方へ変位した状態で取付部が垂直となる直立姿勢で、前記取付部の取付ループをボルト止めしている。揺動バー222は、細幅織機のフレーム(図示略)に支持させた揺動軸221に軸着した左右一対の連動アーム22に架設されており、前記連動アーム22が綜絖枠(図示略)とリンクアーム223により連結されているため、綜絖枠の上下動に応じて上下方向及び前後方向に揺動する。このため、変位ガイド2は、前記直立姿勢の状態から揺動バー222が下がると、前方に向けて傾倒しながら下方に変位することになる。
【0022】
変位ガイド2は、上述のように、前方に向けて傾倒しながら下方に変位することから、上方に変位した状態では、保持ガイド33に最も近くなる傾斜係合部21の下端角部212に変位横糸12を掛け回しながら(図4参照)、逆に下方向に変位した状態では、前記下端角部212に代わって保持ガイド33に最も近くなる傾斜係合部21の上端角部211に変位横糸12を掛け回す(図10参照)。このように、変位ガイド2が上下に変位すると、変位ガイド2に変位横糸12を掛け回す部位が変り(図4及び図10比較対照)、これにより変位横糸12の供給経路を円滑に変化させることができるほか、掛け回す変位横糸12の張力変化を抑制することができる。
【0023】
固定横糸11に対して変位横糸12の供給経路が上下に切り換わる態様について、変位ガイド2が上方に変位した状態、そして変位ガイド2が下方に変位した状態の順に説明する。変位ガイド2が上方に変位した状態では、図2〜図4に見られるように、固定横糸11は供給手段から保持ガイド32に水平に掛け回され、前記保持ガイド32からニードル31の誘導孔311に前記ニードル31の旋回面内で挿通される。これに対し、変位横糸12は供給手段から変位ガイド2の下端角部212に掛け回され、前方に向けて下り勾配を保ちながら保持ガイド33に掛け回され、ニードル31の誘導孔311にニードル31の旋回面より上から挿通される。すなわち、変位ガイド2の下端角部212は保持ガイド32より上方に位置しているため、固定横糸11に対して変位横糸12の供給経路は上方となる(図4参照)。変位ガイド2は、ニードル31が縦糸13の間に固定横糸11及び変位横糸12を送り込む間は変位しないので、固定横糸11に対する変位横糸12の供給経路は上方の位置関係が維持される。
【0024】
ニードル31が旋回し始めると、図5に見られるように、ニードル31の旋回面内で誘導孔311に挿通された固定横糸11は、誘導孔311から延びる誘導溝312に沿ってニードル31に掛け回すように縦糸13の間に送り込まれる。これに対し、ニードル31の旋回面より上から誘導孔311に挿通された変位横糸12は、誘導溝312に沿わず、前記固定横糸11の供給経路と完全に分かれる。そして、固定横糸11及び変位横糸12が保持針3から外れて送り込みを終えると、図6及び図7に見られるように、固定横糸11はニードル31の旋回面内で縦糸13の間に送り込まれるが、変位横糸12は前記固定横糸11より上方から縦糸13の間に送り込まれることになる。この後、ニードル31が元位置に復帰し、筬34が固定横糸11及び変位横糸12を打ち付けると、変位横糸12が上段、固定横糸11が下段に織り込まれる。
【0025】
こうして固定糸11及び変位横糸12の送り込みを終え、筬3を打ち付けた後、綜絖枠が上下動し、上下に分かれた縦糸13が入れ替わると、図8〜図10に見られるように、変位ガイド2が下方に変位した状態となる。固定横糸11は、上述同様、供給手段から保持ガイド32に水平に掛け回され、前記保持ガイド32からニードル31の誘導孔311に前記ニードル31の旋回面内で挿通される。これに対し、変位横糸12は、供給手段から変位ガイド2の上端角部211に掛け回され、前方に向けて上り勾配を保ちながら保持ガイド33に掛け回され、ニードル31の誘導孔311にニードル31の旋回面より下から挿通される。すなわち、変位ガイド2の上端角部211は保持ガイド32より下方に位置しているため、固定横糸11に対して変位横糸12の供給経路は下方となる(図10参照)。変位ガイド2は、ニードル31が縦糸13の間に固定横糸11及び変位横糸12を送り込む間は変位しないので、固定横糸11に対する変位横糸12の供給経路は下方の位置関係が維持される。
【0026】
ニードル31が旋回し始めると、図11に見られるように、ニードル31の旋回面内で誘導孔311に挿通された固定横糸11は、上述同様、誘導孔311から延びる誘導溝312に沿ってニードル31に掛け回すように縦糸13の間に送り込まれる。これに対し、ニードル31の旋回面より下から誘導孔311に挿通された変位横糸12は、誘導溝312を胯いで保持ガイド33から誘導孔311に至るため、前記固定横糸11の供給経路と完全に分かれる。そして、固定横糸11及び変位横糸12が保持針3から外れて送り込みを終えると、図12及び図13に見られるように、固定横糸11はニードル31の旋回面内で縦糸13の間に送り込まれるが、変位横糸12は前記固定横糸11より下方から縦糸13の間に送り込まれることになる。この後、ニードル31が元位置に復帰し、筬34が固定横糸11及び変位横糸12を打ち付けると、固定横糸11が上段、変位横糸12が下段に織り込まれる。
【0027】
このように、本例の細幅織機は、綜絖枠の上下動により上下に分かれた縦糸13が入れ替わる度、固定横糸11を挟む上下方向の範囲で変位横糸12の供給経路を上下に入れ替えて縦糸13に織り込み、細幅織物1(図1参照)の表面に表れる固定横糸11及び変位横糸12の割合を均等にし、表面の色合いの変化を均一にする。上述では、固定横糸11及び変位横糸12が上下段で明確に入れ替わるように説明したが、実際には固定横糸11及び変位横糸12が上下段で明確に入れ替わるのではなく、互いの位置関係が複雑に入れ替わり、不規則ながら表面に均等な割合で表れる、こうして、不規則ながら固定横糸11及び変位横糸12が均等に表面に表れることにより、本発明の細幅織物1は表面の色合いの変化を均一にし、商品価値を高めるわけである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の細幅織物を表す部分斜視図である。
【図2】変位横糸が固定横糸より上方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む前の段階にある細幅織機の部分平面図である。
【図3】変位横糸が固定横糸より上方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む前の段階にある細幅織機の部分正面図である。
【図4】変位横糸が固定横糸より上方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む前の段階にある細幅織機の部分側面図である。
【図5】変位横糸が固定横糸より上方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む途中の段階にある細幅織機の部分平面図である。
【図6】変位横糸が固定横糸より上方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込みを終えた段階にある細幅織機の部分平面図である。
【図7】変位横糸が固定横糸より上方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込みを終えた段階にある細幅織機の部分側面図である。
【図8】変位横糸が固定横糸より下方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む前の段階にある細幅織機の部分平面図である。
【図9】変位横糸が固定横糸より下方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む前の段階にある細幅織機の部分正面図である。
【図10】変位横糸が固定横糸より下方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む前の段階にある細幅織機の部分側面図である。
【図11】変位横糸が固定横糸より下方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込む途中の段階にある細幅織機の部分平面図である。
【図12】変位横糸が固定横糸より下方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込みを終えた段階にある細幅織機の部分平面図である。
【図13】変位横糸が固定横糸より下方に供給経路を位置させた状態で、横糸を縦糸の間に織り込みを終えた段階にある細幅織機の部分側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 細幅織物
11 固定横糸
12 変位横糸
13 縦糸
2 変位ガイド
21 傾斜係合部
22 連動アーム
31 ニードル
32 固定横糸の保持ガイド
33 変位横糸の保持ガイド
34 筬
35 保持針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の横糸を縦糸に織り込んで織成される細幅織物において、横糸の一方又は双方は、縦糸に至る供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込んだことを特徴とする細幅織物。
【請求項2】
横糸の一方は、縦糸に至る供給経路を位置固定して縦糸に織り込み、横糸の他方は、供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む範囲で供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込んだ請求項1記載の細幅織物。
【請求項3】
横糸の一方は、縦糸に至る供給経路を位置固定して縦糸に織り込み、横糸の他方は、供給経路を位置固定した横糸の一方を挟む上下方向の範囲で供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込んだ請求項1記載の細幅織物。
【請求項4】
供給手段から2種類の横糸が供給され、前記横糸を合わせて誘導孔に挿通させたニードルを縦糸の間で往復させることにより、前記横糸を縦糸に織り込んで細幅織物を織成するに際し、横糸の一方又は双方は、供給手段からニードルの誘導孔に至る間に供給経路変位手段を介在させ、前記供給経路変位手段によりニードルの誘導孔に至る供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込むことを特徴とする細幅織物の織成方法。
【請求項5】
横糸の一方又は双方は、供給手段から保持ガイドに掛け回してニードルの誘導孔に挿通され、前記供給手段から保持ガイドに至る間に供給経路変位手段を介在させ、前記供給経路変位手段により保持ガイドとニードルの誘導孔とを結ぶ供給経路を位置変化させながら縦糸に織り込む請求項4記載の細幅織物の織成方法。
【請求項6】
供給経路変位手段は、前記供給経路変位手段を介在させない横糸の一方を挟む範囲で横糸の他方の供給経路を位置変化させる請求項4又は5いずれか記載の細幅織物の織成方法。
【請求項7】
供給経路変位手段は、前記供給経路変位手段を介在させない横糸の一方を挟む上下方向の範囲で横糸の他方の供給経路を位置変化させる請求項4又は5いずれか記載の細幅織物の織成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−291373(P2008−291373A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135536(P2007−135536)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(397054565)モーリ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】