説明

細胞および血清タンパク質アンカー並びに接合体

【課題】生理学的活性物質の延長された生体内寿命を提供するのに有用な新規二価性試薬の提供。
【解決手段】哺乳動物宿主に投与することによりかかる宿主を処置する方法に利用するための、安定な共有結合を形成するようにタンパク質と反応することができる反応性官能基を含んで成る標的結合メンバーを含んで成る医薬組成物であって、前記反応性官能基はアルブミン上のアミン、チオール又はカルボキシル基とin vivoで反応して、当該反応性官能基と当該アルブミンとの間でin vivoで共有結合を形成せしめ、当該標的結合メンバーのin vivo寿命を延長することができるものである、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、宿主中の生理学的活性物質の寿命の延長である。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の血流中に存在する物質の生物作用を制限することがしばしば所望される。例えば毒素/毒物に暴露される場合には、毒素/毒物の作用の急速な緩和が指示されることがある。あるいは、該物質は感染した宿主細胞、自己反応性、同種反応性、異種反応性もしくは腫瘍性宿主細胞または感染性生物のような細胞性のものかもしれない。
【0003】
現在の血液療法は、例えば、血漿瀉血もしくは活性炭吸着、例えば抗生物質もしくは酵素を使った物質の破壊、または例えば抗体を使った標的の選択的結合により、血液から該物質を除去することを含んでいる。これらの療法は、通常は、毒素/毒物または細胞の有害作用に患者が暴露され、その結果宿主に相当な損傷が既に起こってしまった後で用いられる。多くの状況では、血流中の治療レベルを維持するために薬剤の長期投与が必要である。薬剤の経口投与または静脈内注射は、長期間に及ぶ準治療的投薬に次いで、治療レベルを越え且つ深刻な副作用を伴う投薬となり得る。また、血流中に或る物質を長期間維持したいような状況、例えば強力な免疫応答を獲得したい場合、免疫原が免疫系の継続的刺激に備える形で連続して存在する場合がある。
【0004】
従って、血流中の物質の連続維持に備える改良方法を提供することができることに相当な関心があり、ここで、該物質の機能は血液由来物質の毒性もしくは病原性の制限、生理学的活性物質の長期維持、または活性物質の長期供給のためであることができる。
【発明の開示】
【0005】
アンカーと生理学的活性存在物とを含んで成る二価性試薬または接合体が提供される。ここで前記試薬は、宿主中の生理学的活性存在物の長期維持に備えるように、細胞性または移動性血液タンパク質のいずれかの長命血液関連成分にアンカーによって結合される。それらの試薬は、予防的および治療的用途、抗体の生産、内因性または外因性血液成分の生物学的有効濃度または活性の減少、および生理学的活性化合物の長期投与が重要であるような他の状況において、広範な用途を見出す。
【0006】
標的は宿主由来であっても外来であってもよい。宿主標的としては、望ましくない濃度で存在する細胞および血液化合物、例えば自己、同種または異種反応性白血球、即ちマクロファージを含む白血球、感染細胞、血小板、腫瘍細胞、並びに過剰発現されたサイトカインおよびホルモンが挙げられる。外来標的としては、毒素、毒物、乱用薬物、病原性感染性微生物などが挙げられる。
【0007】
長命血液関連成分としては、長命血清タンパク質、赤血球、血小板または内皮細胞が挙げられ、ここでアンカーは主に特定細胞に関連する1もしくは複数の表面膜タンパク質にまたは可溶性タンパク質に特異的もしくは非特異的に結合する。赤血球、血小板およびタンパク質の場合、接合体を生体内または生体外に投与することができる。内皮細胞の場合、接合体を生体内に投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
生理学的活性物質である標的結合メンバーの哺乳類宿主中での寿命を延長するための方法と組成物であって、前記標的結合メンバーを長命血液関連存在物(通常はタンパク質)に結合することによる方法と組成物が提供される。少なくとも次の2つの活性成分を有するであろう試薬または接合体が使われる:(1)試薬を長命血液関連存在物に結合するためのアンカー;および(2)前記アンカーによって長命血液関連存在物に直接的または間接的に結合される標的結合メンバー。長命血液関連存在物は、細胞性のもの、例えば移動性細胞、例えば赤血球もしくは血小板、即ち無核細胞、または固定細胞、例えば内皮細胞;または長期間に渡り血液中に存在し且つ少なくとも約0.1 μg/mlの最低濃度で存在する可溶性もしくは移動性タンパク質であることができる。この濃度条件を満たすタンパク質としては、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチンおよび免疫グロブリン、特にIgMとIgGが挙げられる。該タンパク質の半減期は少なくとも約12時間でなければならない。
【0009】
標的結合メンバーまたは生理学的活性物質は様々な機能に備えることができる。それは、診断薬または治療薬として関心が持たれる抗血清またはモノクローナル抗体の製造のため、ワクチンの製造のため、あるいは有害な血液由来標的、例えば病原体、有害物質または内因性因子に対する保護、予防または治療のための免疫原として働くことができる。生理学的活性物質は、有害な血液由来物質と直接反応することができ、単独でまたは内因性の系と協同して、例えば病原体または有害な内因性細胞(例えばT細胞)または毒素に対する抗体と協同して、増殖抑制活性、特に細胞毒性活性を有することができ、膜表面レセプターにより変換されるシグナルを減少または抑制するためにそのようなレセプターとの特異的結合活性を有することができ、溢出または漏出を抑制するために回帰性受容体インテグリンまたはアドレッシンに結合させることができ、あるいは宿主による標的の排出を増大させるかまたは体内の別の区画に比べて体内の一区画の標的濃度を減少させることを含む、標的の分布を変更することができる。
【0010】
生理学的活性物質は生物学的有効濃度で提供され、この場合生理学的活性物質は前記試薬の一部として結合形態で作用してもよく、または長命血液関連存在物とは無関係に、長命血液成分から遊離後に可溶性物質として作用してもよい。長命血液成分は生理学的活性の一部であることができ、例えば、標的に結合する赤血球は該標的の排出作用を増大させることができる。
【0011】
生理学的活性物質の「生物学的有効濃度」とは、手順の進行中に標的にとって生物学的に利用可能である(bioavailable)物質濃度を意味する。標的の生物学的有効濃度は、標的の生体内の作用部位における該標的の即座の生物学的利用可能濃度を意味するだろう。大部分については、標的は少なくとも一部分は血流中に分散され、溶液状態にあるかまたは血流の成分と会合し得る。よって、標的の拡散、移動または遊走などを制限することによって標的が分離される部位に関して該標的の分布容積を制限することにより、標的の有効濃度を減らすことができる。生理学的活性物質は所望の結果を与えるように血流中の成分と相互作用するであろう。この相互作用は、所望の結果を達成するのに直接的であっても間接的であってもよく、また特異的相互作用であっても非特異的相互作用であってもよい。大部分については、非特異的相互作用は、生理学的物質が相互作用する存在物のサブセットと一緒になって特異的な結果に備えるであろう。
【0012】
開示される治療方法は、血液中に存在し且つ不適当な高い有効濃度のためにまたは腫瘍性細胞の場合のようにどんな量で存在しても有害な生理学的作用を有する場合がある、宿主由来のものと外来のもの(外因性または非宿主を意味する)の両方の広範囲の標的に適用することができる。宿主由来の細胞性標的としては、(臨床上の適応症と共に):T細胞またはサブセット、例えばαIFN+, CD4+, CD8+, LFA1+ 等の細胞(自己免疫病、同種反応性、異種反応性および炎症)、B細胞またはサブセット、例えば前駆B細胞、CD5+,IgE+, IgM+等(B細胞リンパ腫、異種移植、自己免疫、アナフィラキシー)、白血球、例えばマクロファージおよび単球(炎症、骨髄性白血病)、他の白血球、例えば好中球、好塩基球、NK細胞、好酸球、または同種もしくは異種反応性白血球等(炎症、アナフィラキシー、移植拒絶)、幹細胞、例えばCD34+ 細胞(赤血球増加症)、胎児赤血球、例えばRh+ 赤血球(Rh- 母体中での妊娠後の抗Rh免疫の予防)、悪性細胞(悪性;CALLA)または感染細胞、特にレトロウイルス、例えばHIVに感染した宿主細胞等が挙げられる。
【0013】
宿主由来の非細胞性標的としては、クラスIおよびクラスIIの可溶性HLA、並びに非古典クラスIのHLA(E,FおよびG)(免疫調節の変更)、可溶性TもしくはB細胞表面タンパク質、サイトカイン、インターロイキンおよび増殖因子、例えばIL1,2,3,4,6,10,13,14および15、可溶性IL2レセプター、M-CSF, G-CSF, GM-CSF、血小板増殖因子、α,βおよびγ−インターフェロン、TNF、NGF、アラキドン酸代謝産物、例えばプロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンおよびプロスタシクリン(心血管性疾患)、免疫グロブリン、例えば全IgE(アナフィラキシー)、特異的抗アレルゲンIgE、自己または同種抗体(自己免疫または同種もしくは異種免疫)、Ig Fc レセプターまたはFcレセプター結合因子、炭水化物(gal)、同種または異種拒絶に関係する自然抗体、エリトロポイエチン、脈管形成因子、接着分子、MIF、MAF、補体因子(調節因子を含む、古典経路および別経路)、PAF、カルシウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄等のイオン、酵素、例えばプロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、DNアーゼ、RNアーゼ、リパーゼおよびコレステロールや他の脂質代謝に影響を与える他の酵素、エステラーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼ、スルファターゼ、シクラーゼ、トランスフェラーゼ、トランスアミナーゼ、アトリオペプチダーゼ、カルボキシラーゼおよびデカルボキシラーゼ並びにそれらの天然の基質または類似体、スーパーオキシドジスムターゼ、ホルモン、例えばTSH、FSH、LH、チロキシン(T4とT3)、レニン、インスリン、アポリポタンパク質、LDL、VLDL、コルチゾール、アルドステロン、エストリオール、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびそれの硫酸塩(DHEA−S)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、バソプレッシンおよび抗利尿ホルモン(ADH)、プロラクチン、ACTH、LHRH、THRH、VIP、カテコールアミン(アドレナリン、バニリルマンデリン酸等)、ブラジキニンおよび対応するそれらのプロホルモン、代謝産物、リガンドまたは天然の細胞レセプターもしくは可溶性レセプター、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)を含む補因子、ビタミンA,B,C,D,EおよびK、セロトニン、凝固因子、例えばプロトロンビン、トロンビン、フィブリン、フィブリノーゲン、第VIII因子、第XI因子、ビルブラント因子、プラスミノーゲン因子、例えばプラスミン、補体活性化因子、LDLおよびそれのリガンド、尿酸等が挙げられる。ある態様では、DAF、CD59のような阻害因子、凝固を調節する化合物、例えばヒルジン、ヒルログ、ヘメンチン、TPA等、または他の化合物、例えば組織因子、遺伝子療法のための核酸等、酵素拮抗剤である化合物、リガンドを結合する化合物、例えばサイトカイン、ホルモン、炎症因子(PAF、補完因子)を有することにより、補体に関連する特定の効果を提供することができる。
【0014】
外来標的としては、薬物、特に乱用されやすい薬物、例えばヘロインおよび他のアヘン剤、PCP、バルビツレート、コカインおよびその誘導体、ベンゾジアゼピン、精神興奮薬等、毒物、毒素、例えば水銀や鉛のような重金属、化学療法剤、パラセタモール、ジゴキシン、ラジカル、砒素、細菌毒素、例えばLPSおよび他のグラム陰性毒素、肺炎球菌毒素、毒素A、破傷風毒素、ジフテリア毒素および百日咳毒素、植物および海洋毒素、へび毒および他の毒液、毒性因子、例えばアエロバクチン、放射性化合物もしくは病原性微生物またはそれらの断片、例えば感染性ウイルス、例えばA,B,C,Eおよびδ型肝炎ウイルス、CMV、HSV(1,2および6型)、EBV、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HIV−1,−2および他のレトロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、リノウイルス、パルボウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、レオウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルスおよびピコルナウイルス、プリオン、マラリア原虫組織因子、原生生物、例えばトキソプラスマ、フィラリア、カラアザール、住血吸虫、赤痢アメーバおよびジアルジア、並びに細菌、特に敗血症や院内感染の原因であるグラム陰性菌、例えば大腸菌、アシネトバクター属、シュードモナス属、プロテウス属およびクレブシエラ属、更にはグラム陽性菌、例えばブドウ球菌および連鎖球菌等、髄膜炎菌およびマイコバクテリア属、クラミジア属、レジュネラ属並びに嫌気性菌、真菌、例えばカンジダ菌、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carini)、アスペルギルス、マイコプラズマ、例えばマイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、およびウレアプラズマ・ウレアリティカム(Ureaplasma urealyticum)が挙げられる。
【0015】
既に指摘したように、本発明は抗体の産生に利用することができ、抗体が収集されるかまたは脾細胞もしくは別のB細胞が不死化とモノクローナル抗体の産生に使われる。ここで、該抗体は上記に指摘した多数の標的に向けられてもよく、あるいは治療的投薬の監視のためまたは薬物もしくは乱用薬物の過投薬の処置等のために、様々な薬物に向けられてもよい。また、本発明は、病原体または他の有害な存在物に対して予防接種するために使うこともできる。その例として様々な単核細胞微生物とウイルスが上記に記載されている。加えて、本発明は、抗原提示細胞の適当な標的に備え、次いでそれをT細胞に差し出すことによりまたはT細胞の直接活性化に備えることにより、特定の標的に対してT細胞を活性化するのに利用することができる。
【0016】
長命血液成分の選択は、標的への結合の目的によって左右されるだろう。長命血液成分の選択に依存して、標的は迅速に分離されそして体外に排泄されるか、生物学的に不活性な形で分離されてゆっくり排除されるか、または時と共に分解される。長命血液成分は固定されていても移動性であってもよく、即ち、内皮細胞の場合のように所定の場所に実質的に固定されているか、または脈管系中で移動性であり、脈管系中で実質的に均一のもしくは異なる分布を有し、そこで長命血液成分は固形組織を含む特定の区画に優性的に存在することができる。長命血液成分の選択は一部は標的の性質にも依存するだろう。例えば、細胞性病原物質の効率的クリアランスには赤血球が好ましく、一方で可溶性毒素を分離するには血清タンパク質成分、例えばアルブミンまたは免疫グロブリンが特に有用であり、そして再狭窄または血栓症には内皮細胞が特に有用である。
【0017】
長命血液成分は少なくとも約12時間、通常少なくとも約48時間、好ましくは少なくとも約5日、望ましくは少なくとも約10日の半減期を有する。一般に、半減期は、化合物を同位体(例えば 131I,125I,Tc,51Cr,3H等)または蛍光色素で標識し、そして既知量の標識化合物をI.V.(静脈内)注射した後で、該化合物の全血、血漿または血清濃度を連続測定することにより決定される。赤血球(半減期約60日)、血小板(半減期約4〜7日)、血管系に沿って並んだ内皮細胞、および長命血清タンパク質、例えばアルブミン、ステロイド結合タンパク質、フェリチン、α−2−マクログロブリン、トランスフェリン、チロキシン結合タンパク質、免疫グロブリン、特にIgG等が含まれる。好ましい半減期に加えて、当該成分は、好ましくは、治療的有効量の接合体の結合を許容するのに十分な細胞数または濃度で存在する。細胞性長命血液成分の場合、少なくとも2,000 /μlの細胞数と、少なくとも1μg/ml、普通は少なくとも約0.01mg/ml、より普通には少なくとも約1mg/mlの血清タンパク質濃度が好ましい。
【0018】
選択された細胞性長命血液成分は脈管系中に多数で存在する。血小板は約1〜4×105 /μlで存在し、赤血球は約4〜6×106 /μlで存在する。それらの細胞は長い半減期を有し、且つ表面膜タンパク質の結合部位、例えば抗体結合のためのエピトープ、の適切な選択によりエンドサイトーシスが回避される。赤血球と血小板は核が無く、細胞分裂能力を持たない。好ましい細胞は毛細管と組織中に広い分布を有し、且つそれらの特異的な分化と関連して細胞表面上に特異的な結合部位を発現する。当該接合体の生体内投与に加えて、赤血球や血小板の場合、それらの細胞を迅速に回収し、接合体と一緒にし、次いで宿主に投与することができる。細胞は自己由来であっても同種異系であってもよい。
【0019】
長命血液成分の選択は、標的の毒性/病原性を制限する所望の経路にも依存する。例えば、毒性、感染等を制限するために、中枢神経系、間隙等への標的の出入りを調節することがしばしば望ましい。場所、分布、特定の表面マーカー、または長命血液成分に関連する他の識別できる特徴に基づいて長命血液成分を選択することにより、標的の最終部位および分布容積を調節することができる。例えば、細胞の活性化が表面膜タンパク質のアップレギュレーションをもたらす場合がある。内皮細胞については、炎症の場合にアドレッシン、例えばELAM-1またはインテグリン、例えばVLA-4 がアップレギュレーションされ得る。こうして、該物質を炎症の部位またはリンパ系器官(例えば脾臓)に分離して、食作用性白血球を含む集中した免疫応答への該物質の暴露を強化することができる。別の例では、補体結合抗体の免疫複合体は細胞または微生物の補体依存性細胞溶解に備えることができる。別の例は、区画間(例えばCNSと血液間)の内因性または外因性物質の分布の変更である。該物質の高親和性レセプターを血液中に用意することにより、該物質に対する血液の結合能に比例してCNS中の該物質の濃度を減少させることができる。こうして、例えば薬物に対する抗体を使って、血液脳関門を通って血液中に該薬物を引き出すように、薬物に対する血液の結合能を高めることにより、脳内の薬物濃度を減少させることができる。接合体は、補体特異的結合部位によって特異的にまたは非特異的に、通常は共有結合を伴って、長命血液成分に結合することができる。特異的結合部位を指して言う時、相互的なコンホメーションと電荷分布を有する相補的分子に対して高親和性を有する、特定の立体的コンホメーションと電荷分布が意図される。よって、長命血液成分とアンカーまたは標的と標的結合成分の場合、脈管系と関連する遭遇し得る無数の他の分子に比較して、それの相補的結合メンバーに結合するように接合体が選択されるだろう。
【0020】
結合部位の例としては、免疫学的エピトープ(抗体またはTCRが結合するエピトープ)、糖成分(レクチンが結合する結合部位)、ペプチド特異的結合部位(リガンドや細胞表面膜レセプター中にあるような、ペプチドが結合する結合部位)、合成または天然有機化合物特異的結合部位(天然のリガンドに対する有機作用剤もしくは拮抗剤または抗体に結合するハプテン)等が挙げられる。
【0021】
適当な赤血球結合部位含有分子としては、グリコフォリンA,BおよびC、バンド3並びにRh式血液型抗原が挙げられる。好ましい赤血球結合部位は、細胞あたり少なくとも1,000 、好ましくは少なくとも10,000、より好ましくは少なくとも100,000 のコピー数で赤血球上に豊富に発現され、望ましくは二重層表面の少なくとも約0.5 nm上、好ましくは少なくとも約1nm上につなぎ留められ、そして接合体が細胞に結合された時にそれ自体が細胞変形を促進しない(例えば、結合が細胞骨格の重要な成分でないように選択されるだろう)。赤血球表面糖タンパク質であるグリコフォリンAの結合部位と、シアル酸を含んで成る赤血球結合部位が、好ましい結合部位の例である。好ましい血小板結合部位としては、GPIIa,GPIIb,GPIIIaおよびGPIVが挙げられる。標的への結合により、長命血液成分(例えば赤血球または血小板)の変形が起こらないのが望ましい。
【0022】
長命血液成分への結合は特異的であっても非特異的であってもよく、共有結合であっても非共有結合であってもよい。「〜に特異的」とは、全体的な利用可能性を基準にして、結合部位が一定の標的または長命血液成分上にあり、接合体成分の親和力で接合体の存在中ずっと存在する血液関連成分には実質的に欠けていることを意味する。長命血液成分への非共有結合的特異結合の場合、ある一定の結合部位の存在は、結合部位特異的相互結合メンバーの結合によって一般に決定される。長命血液成分特異的結合部位または標的特異的結合部位は、長命血液成分特異的結合部位または標的特異的結合部位を含む血液関連成分または標的と、処置の時点で宿主中に存在する血液関連成分とを識別することのできる結合部位特異的相互結合メンバーの能力を利用することにより、実験的に容易に同定される。例えば免疫蛍光顕微鏡検査、フローサイトメトリー、細胞選別、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、アフィニティークロマトグラフィー、ビーズ分離、NMR、結晶学、等を使って、細胞標的および分子(タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、有機物、分子毒素等)標的それぞれの結合部位の特異性をアッセイすることができる。標識された長命血液成分または標的を用いる競合アッセイにおいて長命血液成分または標的を含まない血液を使用することにより、血液の不在下での結合レベルと比較した血液の存在下での長命血液成分または標的の結合レベルの減少は、長命血液成分または標的それぞれと血液成分との交差反応性を表す。相補的特異的結合メンバー(長命血液成分または標的に相補的である)を宿主中に導入した場合、通常、相補的結合メンバー(これは投与後に長命血液成分または標的の結合部位に結合する)の約50%以上、好ましくは約75%以上が長命血液成分または標的に結合するだろう。結合アッセイを最適化した場合、特異的レセプター−エピトープ結合は少なくとも約10-6M、好ましくは少なくとも約10-7Mの結合親和力を有するだろうが、普通は生理的条件下で約10-8M〜10-12 Mの範囲で異なるだろう。
【0023】
接合体の相補的結合部位メンバーは、生体内使用に適合できる必要な長命血液成分または標的結合特異性を提供することができる任意の分子から誘導することができる。接合体の2つの結合部位は、通常は異なる標的上の、異なる相補的結合メンバーに向けられるだろう。接合体の結合メンバーは、長命血液成分または標的の天然のレセプターもしくはリガンドから誘導することができる。その例としては、酵素と基質または補因子;レクチンと糖;抗体またはT細胞抗原レセプターと免疫学的エピトープ;サイトカイン(例えばインターロイキン)、ホルモン(例えばLH)、薬物(例えばオピエート)、ウイルス(例えばHIV)または免疫グロブリン(例えばIgE)とそれら各々のレセプター(例えばCD4 、Fcレセプターなど)等;または前記分子の先端が切り取られた変異体もしくは断片が挙げられる。重金属のような或る種の毒素を標的とするためには、EDTAまたはEGTAのようなキレート化剤が有用なレセプターを提供する。
【0024】
あるいは、接合体結合メンバーは、相補的結合メンバーを特異的に結合するように特別に選択または合成することができる。例えば、有用なペプチド、炭水化物、核酸、多および単複素環式天然有機化合物並びに合成分子は、天然または合成ライブラリーを必要な結合特異性についてスクリーニングすることにより単離される。典型的には、上述したように、EIA、RIA、蛍光、発光、化学発光、直接結合アッセイまたは標識拮抗剤の置換による競合アッセイにより特異的結合分子が分析される。
【0025】
接合体は、1つまたは2つのメンバーから構成される様々な形態をとることができる。単一メンバー接合体では、アンカーと標的結合成分の両方が投与時に一緒に結合されるだろう。2つの成分は共有結合により接合されるだろうが、場合によっては、2つの成分の間に非共有結合を有することが十分であったりまたは望ましかったりするだろう。別の状況では、接合体は2つのメンバーを有する。宿主中に第一メンバー−長命血液成分の集団を提供するように、最初に第一メンバーが長命血液成分に添加されそして長命血液成分に結合する。次いで、第二メンバーが添加され、それが第一メンバーに特異的に結合して第二メンバーを長命血液成分に結合させる。アンカーは特異的でも非特異的でもよい。指摘したように、長命血液成分上に存在するエピトープに結合させるのに特異的結合メンバーを使うことができる。あるいは、長命血液成分だけでなく宿主血流中に存在する別の分子上の活性官能基とも非特異的に反応するであろう反応性化合物を使ってもよい。この状況では、大部分の他の成分に比べて血流中に非常に高濃度にあり、アンカーと反応性であり且つ長い寿命のために、短期間、普通7日以内、より普通には5日以内では、第一結合メンバーが主として宿主中の所望の長命血液成分と結合するであろう条件下に存在する長命血液成分が選択される。
【0026】
長命血液成分および標的への非共有結合については、1つのアプローチとして、接合体の結合メンバーとして1〜2つのモノクローナル抗体またはそれの断片が挙げられる。抗体またはそれの断片はサブタイプまたはイソタイプのいずれか1つであることができるが、補体依存性細胞障害作用を含めたくない場合には、補体依存性細胞溶解に参加しないものだけである。補体依存性細胞障害作用を回避するためには、完全抗体はIgA,IgD,IgG1もしくはIgG4または他の種の対応するイソタイプであることができ、一方で断片は任意のイソタイプからのものであることができる。通常、抗体は同種異系のものであろうが、例えば宿主が免疫無防備状態であるか、または抗体もしくはその断片が異種であるにもかかわらず非抗原性であるような状況では、異種抗体を使ってもよい。非ヒト抗体を使うことの便利さを維持しながら免疫応答を最少にするために、キメラ抗体を作製することがしばしば望ましい。完全抗体を使う必要は無く、断片、例えばFv、Fab 、F(ab')2 、重鎖、一本鎖抗原結合タンパク質、抗体結合部位を模倣したペプチドコンホーマー等がしばしば有用である。よって、通常は重鎖と軽鎖の可変領域を含んで成る抗体の結合部位のみを使ってもよく、場合によっては、重鎖または軽鎖サブユニット可変領域だけでも十分なことがある。使用する断片は元の抗体の親和性の少なくとも実質的部分、好ましくは少なくとも約10%を保持しているべきであり;または特異的突然変異後に、より高い親和性を示してもよい。
【0027】
モノクローナル抗体は常法に従って得ることができる。赤血球に特異的なモノクローナル抗体の場合には、陽性直接クームズ試験を使って、個体からリンパ球、特に溶血の徴候がない(補体なし)IgG型のリンパ球を収集する。次いで該リンパ球を任意の便利な手段、例えばエプスタイン−バーウイルス形質転換、細胞融合、細胞移入等を使って不死化した後、所望の特異性と親和性並びに所望のイソタイプを有する抗体についてスクリーニングする。次いで様々な方法で、例えばパパイン、キモトリプシン、ペプシン、トリプシンを使った断片を与える酵素的開裂、分子内ジスルフィド結合の開裂を伴う還元などにより、該抗体を修飾することができる。抗体は任意の源、例えば霊長類、特にヒト、ネズミ、ウサギ、ネコ、ウシ、ブタ、ヤギ等から得てもよく、または該抗体の少なくとも1領域をコードする遺伝子をクローニングしそして原核または真核発現系中で発現させてもよい。
【0028】
赤血球に結合する接合体結合メンバーは、O Rh-赤血球にまたは既知の表現型の赤血球のパネルに結合させることにより更に特徴づけることができる。パネルのうちの実質的に全ての(少なくとも80%の)細胞と反応し、更に、抗補体グロブリンを使った直接クームズ試験において陰性結果を示すような接合体結合メンバーを選択する。Stratton, F.; Rawlinson, Vi; Merry, A.H.; Thomson, E.E.;Clin. Lab. Haematol., 1983, 5: 17-21を参照のこと。加えて、血液関連成分、特にリンパ球、骨髄単球、血小板等のような細胞、および血清タンパク質との交差反応について、抗体をスクリーニングする。同様に、長命血清タンパク質、血小板または内皮細胞を含んで成る長命血液成分に特異的な抗体については、そのようなタンパク質/細胞に特異的であり且つ宿主中で出会う可能性がある他のタンパク質/細胞には特異的でない抗体を選択する。大部分については、赤血球の場合、細胞1個あたりに結合した接合体の数は(血液由来の標的には結合しない時)、溶血を引き起こすレベルよりも低いであろう。
【0029】
所望であれば、様々な方法で抗体を調製または修飾することができる。定常領域がイソタイプまたは種に関して修飾されているキメラ抗体を調製することができる。例えば、マウスモノクローナル抗体を調製し、重鎖と軽鎖をコードする遺伝子を単離し、そして重鎖と軽鎖の定常領域をヒト定常領域の適当な定常領域により置換し、マウス定常領域の抗原性を欠いているキメラ抗体に備えることができる。あるいは、宿主から得られた可変領域をクローニングし、突然変異せしめ、次いでスクリーニングして特異的結合親和性を同定することができる。更なる選択肢は、抗体の抗原性を更に減少させるために、重鎖および軽鎖の定常領域を交換するだけでなく、可変領域のフレームワーク領域も交換することである。多数の技術が文献中に記載されている。例えば、 “The synthesis and in vivo assembly of functional antibodies in yeast," Wood, C.R.,Boss, M.A., Kenten, J.H., Calvert, J.E., Roberts, N.A.,Emtage, J.S., Nature, 1985年4月4〜10日, 314 (6010):446-9 ;“Construction of chimaeric processed immunoglobulin genescontaining mouse variable and human constant region sequences"Takeda, S., Naito, T., Hama, K., Noma, T., Honjo, T., Nature, 1985年4月4〜10日, 314 (6010):452-4 ; “A recombinant immuno- toxin consisting of two antibody variable domains fused toPseudomonas exotoxin," Chaudhary, V.K., Queen, C., Junghns, R.P., Waldmann, T.A., FitzGerald, D.J., Pastan, I., Laborato- ry of Molecular Biology, DCBD, National Cancer Institute,Bethesda, Maryland 20892, Nature, 1989年6月1日, 339 (6223): 394-7 ; “Binding activities of a repertoire of single immuno- globulin variable domains secreted from Escherichia coli [see comments]," Ward, E.S., Gussow, D., Griffiths, A.D., Jones, P.T., Winter, G., MRC Laboratory of Molecular Biology,Cambridge, UK, Nature(英国),1989年10月12日, 341 (6242): 544-6, ISSN 0028-0836, Nature, 1989年10月12日, 341 (6242): 484-5 中のコメント。
【0030】
抗体の代わりに、長命血液成分に特異的である別の結合性分子を使用してもよい。アンカーは天然もしくは合成分子であることができ、または修飾された、例えば先端が切り取られたもしくは変異されたそれの誘導体であることができる。化合物、例えば薬剤、例えばペニシリン、T2 、T4 、コルチゾール、コレステロール等、ホルモン、微生物、例えばウイルス、例えばレオウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス、HIV、CMVからの糖タンパク質、レクチン等は、赤血球、血清アルブミン、チロキシン結合タンパク質、ステロイド結合タンパク質等のような長命血液成分に特異的である結合部位を有する。ある場合には、別の生物学的活性を減らしながらそれの結合親和性を維持するように結合分子を変更することが望ましいだろう。これは、しばしば、アンカーを標的結合メンバーに連結するための部位の選択によって達成されるだろう。場合によっては、第一化合物と第二化合物の連続付加を考慮にいれることが望ましいだろう。この場合、第一化合物がアンカーを有しそして第二化合物が標的結合メンバーを有する。第一および第二化合物は特異的結合ペアの相補的結合メンバーも有し、その結果、第一化合物への第二化合物の付加によって、2つの化合物が非共有結合により結合して接合体を提供するだろう。第一化合物は活性官能基、連結基、および第一の結合存在物を含んで成るだろう。タンパク質上の利用可能である官能基は、主としてアミノ基、カルボキシル基およびチオール基である。それらのうちのいずれも反応性官能基の標的として利用できるが、大部分は、アミノ基への結合、特にアミド結合の形成が使われるだろう。アミド結合を作るために、要求されるレベルでヒドロキシル成分が生理学的に許容される、多種多様な活性カルボキシル基、特にエステルを使用することができる。多数の異なるヒドロキシル基を使うことができるが、最も便利であるのはN−ヒドロキシスクシンイミドとN−ヒドロキシスルホスクシンイミドであろう。しかし、血液のような水性媒体中で機能的である別のアルコールを使ってもよい。場合によっては、アミド、エステル、イミン、チオエーテル、ジスルフィド、置換アミン等を形成させるために、アジド、ジアゾ、カルボジイミド無水物、ヒドラジン、ジアルデヒド、チオール基またはアミンのような特殊な試薬が利用される。通常、形成される共有結合は、それを薬剤放出部位とするつもりでない限りは、標的結合メンバーの寿命の間ずっと維持できなければならない。
【0031】
存在物を結合させるために多数の二価性化合物が利用できる。例示的な化合物としては、アジドベンゾイルヒドラジド、N−〔4−(p−アジドサリチルアミノ)ブチル〕−3′−(2′−ピリジルジチオ)プロピオンアミド、ビス−スルホスクシンイミジルスベレート、ジメチルアジピミデート、ジスクシンイミジルタートレート、N−γ−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル−4−アジドベンゾエート、N−スクシンイミジル(4−アジドフェニル)−1,3′−ジチオプロピオネート、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、グルタルアルデヒド、およびスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレートが挙げられる。
【0032】
連結基のうちの一方または両方が永久である時、連結基は本発明にとって重要でなく、好都合であり、使用量において生理学的に許容され、且つ分子の必要条件、例えば血流中で安定であること、標的結合メンバーまたは第一の結合存在物を効率的に提示すること、化学的変更の容易さを考慮に入れていること、等を満たしている任意の連結基を使用することができる。連結基は脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式またはそれらの組合せであることができ、その選択は主に便宜上のことであろう。大部分については、いずれのヘテロ原子も窒素、酸素、硫黄またはリンを含むだろう。使用することができる基としては、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、シクロアルキレン等が挙げられる。一般に連結基は、鎖中に0〜30、普通は0〜10、より普通には約0〜6個の原子を含むだろう。ここで前記鎖は炭素と上記に示したようなヘテロ原子のいずれかを含むだろう。大部分については、通常は側基からの恩恵が全くないだろうから、連結基は直鎖状または環状であろう。連結基の長さは、特に標的結合メンバーと第一結合存在物の性質によって、いろいろ異なるだろう。何故なら、場合によっては、標的結合メンバーまたは第一結合存在物は本来それに関連する鎖または官能基を有することがあるからだ。ある場合、特にアミノ酸のカルボキシル基が反応性官能基である場合には、アミノ酸、通常1〜3個のアミノ酸が連結鎖として働き得る。かくして、アミノ基は標的結合メンバーまたは第一結合存在物に結合させる働きをすることができる。
【0033】
柔軟性、剛性、多機能性、配向性または改良された分子機能のための他の特徴に備えるのに、アームの長さを使ってもよい。共有結合連結基は、異なる血液タンパク質に対して同等でない親和性を有する官能基であるか、または一定のタンパク質エピトープもしくは配列、例えばIgGもしくはアルブミンエピトープに対して高い親和性を有する官能基であることができる。
【0034】
第一結合存在物は、一般に、いずれかの免疫応答を模倣するのに適当である小分子であろう。好都合な相補的結合メンバーが存在するいずれの生理学的に許容される分子も使うことができる。特に着目されるのは、アビジンが相補的結合メンバーとなり得るビオチンであるが、他の分子、例えば金属キレート、天然のエピトープもしくはレセプターまたは抗体結合部位を模倣した分子も利用することができ、この場合には相補的結合メンバーは抗体またはその断片、特にFab 断片、酵素、天然のレセプター等である。よって、第一結合存在物は天然レセプターのリガンド、酵素基質、または相補的レセプターを有するハプテンであることができる。
【0035】
第一化合物を製造する方法は、第一化合物を含有する様々な要素の性質に依存して広範囲に異なるだろう。単純であり、高収率に備え、且つ高度に精製された生成物を考慮に入れるようにして合成的手法が選択されるだろう。通常は、最終段階として標的結合メンバーまたは第一結合存在物の或る官能基を脱保護しようと思わない限り、反応性官能基は最終段階として作られ、例えば、カルボキシル基では、活性エステルを形成させるためのエステル化が合成の最終段階であろう。
【0036】
一般に、第一化合物が第一結合物質を含んで成る時の第一化合物は、少なくとも約200 D で且つ多くても約2.5 kD、通常は多くても約1.5 kD、しばしば約1 kD未満の分子量を有するだろう。
【0037】
模範的な化合物としては、N−ヒドロキシスクシンイミジルビオチンエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルビオチンエステル、N−ビオチニル−6−アミノヘキサン酸のN−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、N−ビオチニル−4−ブチリル−3−アミノプロピルジスルフィドのN−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル等が挙げられる。タンパク質を官能化するための多数の水溶性ビオチン誘導体が利用可能であり、そしてそのような化合物が生理学的に許容されるリンカーを有する限り、それらの化合物は本発明において用途を見出すことができる。
【0038】
第一化合物は通常はボーラスとして投与されるだろうが、計量流液を使った点滴注入などにより時間をかけてゆっくり投与してもよい。あるいは、あまり好ましくないけれども、宿主から血液を取り、生体外で処置し、そして宿主に戻してもよい。第一化合物は生理学的に許容される媒体、例えば脱イオン水、リン酸塩緩衝化塩類溶液、塩類溶液、マンニトール、水性グルコース、アルコール、植物油等の中で投与されるだろう。通常は1回の注射が使われるが、所望により複数回の注射を使ってもよい。第一化合物は、シリンジ、トロカール、カテーテル等を含む任意の便利な手段により投与することができる。特定の投与方法は、投与すべき量、単一ボーラスか連続投与か、などによって異なるだろう。大部分については、投与は脈管内であり、ここで投与部位は本発明にとって重要でなく、好ましくは速い血流がある部位であり、例えば静脈内、末梢または中心静脈内であろう。投与が徐放技術または保護マトリックスと結び付けられた別の経路を利用してもよい。第一化合物が血液成分と反応できるように血液中に効率的に分配されることが重要である。
【0039】
大部分は、反応は血液中の移動性成分、特に血液タンパク質および血液細胞、特に血液タンパク質および赤血球とであろう。「移動性」とは、該成分がいずれかの長期間の間、通常5分以下、より普通には1分とも固定した位置にいないことを意味する。大部分は、反応は血漿タンパク質、例えば免疫グロブリン、特にIgMとIgG、アルブミン、フェリチンとであり、そして小程度には実質的に少量で存在する別のタンパク質とであろう。血小板、内皮細胞および白血球との反応もあり得る。従って、最初は、機能化されたタンパク質や細胞の比較的不均一の集団が存在するだろう。しかしながら、大部分については、該集団は、血流中の機能化されたタンパク質の半減期に依存して、2〜3日のうちに初期集団から相当変化するだろう。従って、通常は約3日またはそれ以上のうちに、IgGが血流中の主な機能化されたタンパク質となるだろう。このことは、数日後に、標的結合メンバーがIgGに接合されるか、または大抵は第二化合物がIgGと接合されそれに結合された状態になるだろうことを意味する。
【0040】
多くの場合、一度宿主中で(特にヒト宿主中で)徹底的に試験されれば、該化合物の生理学が十分に確立され、それの薬物動態学が確立され、そして長期間に渡るそれの安全性も確立されるだろうから、第一結合存在物を含んで成る単一の第一化合物を使用することができる。ある場合には、第一化合物は生理学的および/または療法的に活性であり、その場合にはそれを第二化合物の付加と無関係に利用することができる。しかしながら、特異体質の個体がいるかもしれないし、または第一化合物の慢性投与が何らかの免疫反応を引き起こし得るという点では、投与に使用できる複数の第一化合物がある方が望ましいかもしれない。しかし、第一化合物の役割は第二化合物と併用すると幾らか制限されることがあるので、同じ目的に有用である無数の代替物があるだろうが、多数の代替物を発明する必要はない。
【0041】
大部分は、第一化合物の半減期は少なくとも約5日、より普通には少なくとも約10日、好ましくは20日以上であろう。2または3半減期の後であっても血流中に有効量の第一化合物がまだ存在するように実質的過剰量の第一化合物を導入するので、有効濃度を提供する期間はもっと長いかもしれない。
【0042】
一般に、第一化合物の一部分として標的結合メンバーを有することが十分であろう。しかし、第一化合物と第二化合物の組合せを使うことが望ましいような状況があるだろう。例えば、標的結合メンバーを担持している成分の比較的均一な集団を得たいと思うならば、第二化合物を添加する前に、短命血液成分が消失してしまうまで待つことができる。特に、第一化合物の初期濃度が高い場合、様々な血液成分と反応するよりも主として第一化合物に結合するであろう第二化合物を続いて添加することが望ましいかもしれない。場合によっては、着目の物質の高度に機能化された性質のため、標的結合メンバーを有する第一化合物の合成が困難なことがある。これは、合成されそして合成の終わりに保護基の除去を必要とするオリゴペプチドに特に当てはまる。また、標的結合メンバーを血液成分から放出させようとする場合、第一化合物の連結基に依存するよりもむしろ、効率的な放出を考慮に入れた第一化合物と第二化合物の組合せをデザインする方が容易かもしれない。
【0043】
第一化合物の用量決定は、それが標的結合メンバーを含むかどうかに依存し、従って標的結合メンバーの副作用、血液成分に結合した時のそれの活性、標的結合メンバーを含む第一化合物の遊離濃度を減少させるのに必要な時間、治療活性に必要な用量、治療しようとする適応症、血液酵素に対する剤の感受性、投与の経路および形態、等に依存するだろう。必要なら、最初は通常投与される治療量の小倍数を使って、そして多くの経験が得られたら用量を増やして、用量を経験的に決定することができる。免疫応答を惹起せしめるために標的結合メンバーを使う場合、標的結合メンバーは抗原であり、免疫応答を増強するのに血液成分への接合を当てにしないだろう。この場合、生成物として抗体を生産することに関心があり、治療される宿主が通常家畜または実験動物であるような場合、比較的多量を使うことができる。標的結合メンバーがワクチンとして作用する場合、用量は少なくてよく、それは経験的に決定することができる。大抵は、ワクチンとしての用量は一般に約10 ng 〜100 μg の範囲内であろう。通常、初回量の少なくとも50%、通常少なくとも90%を削除した任意の追加量が初回量の後に投与されるだろう。
【0044】
第一化合物と比較した時、ある意味では、第二化合物はずっと精巧であるかもしれない。この化合物は、第一の結合存在物の性質によって決定される第二の結合存在物を有するだろう。既に指摘したように、この存在物は多数の形態を取ることができ、特に結合タンパク質、例えば免疫グロブリンおよびその断片、特にFab, Fc 等、特に一価の断片、天然に存在するレセプター、例えば膜表面タンパク質、酵素、レクチン、他の結合タンパク質、例えばアビジンまたはストレプトアビジン等の形態である。
【0045】
特に第一の結合存在物が第二化合物と併用される場合、第一の結合存在物は本来は血流中にあるとしても低濃度で見つかるので、第二の結合存在物を目当てにした第一の結合存在物と天然化合物との間の競争はあるとしてもごくわずかであろう。第二の結合存在物、それが血液中または関連細胞中で遭遇し得る化合物には結合すべきでない。従って、使用される酵素は一般に、血液中に現れない基質に対して活性であるだろう。使われるレクチンは普通、血液中に現れず且つ脈管系に沿って並ぶ内皮細胞または他の細胞上に存在しないような糖に結合するだろう。
【0046】
大部分については、第二の結合存在物はタンパク質であるだろうが、比較的高い特異性と親和性に備えることができる他の分子を使ってもよい。組合せライブラリーは、必要な結合特性を有するであろうタンパク質以外の化合物を提供する。一般に、親和性は少なくとも約10-6、より普通には約10-8M、例えば特異的モノクローナル抗体を使って通常観察される結合親和性であろう。特に着目されるのはアビジンまたはストレプトアビジンであるが、特に着目される別のレセプターとしては、ステロイド、TSH、LH、FSHまたはそれらの作用剤、並びにシアル酸およびウイルス血球凝集素、並びに超抗原のためのレセプターが挙げられる。第二の結合存在物は、普通は少なくとも約5 kD、より普通には少なくとも約10 kD で、且つ普通は約160 kD未満、好ましくは約80 kD 未満の巨大分子であろう。これは結合部位が一価であっても二価であってもよく、通常は一価であろう。
【0047】
第一化合物または第二化合物中に1または複数の着目の剤が存在し、通常は第一または第二の連結基を通して中心コアに結合されている複数の着目の剤、例えばタンパク質、核酸、多糖、または他の多機能性存在物が存在し得る。連結基は標的結合メンバーを共有結合的に結合する働きをするだけでなく、それは標的結合メンバーが血液成分に結合したままであるかどうかを決定し、または遊離されたなら遊離の形式と速度を決定するためにも働く。従って、連結基の性質はその役割に応じて広く異なるだろう。
【0048】
標的結合メンバーを血液成分に結合したままにしようとする場合、多種多様な好都合な連結基(結合を含む)のいずれを使ってもよい。例えば、第一化合物に使われるのと同じ型の連結基が第二化合物にも認容されるだろう。しかしながら、連結基を開裂させて標的結合メンバーを遊離させようとする場合、連結基は標的結合メンバーの性質、所望の遊離速度、遊離させようとする標的結合メンバー上の原子価または官能価、等に依存して異なるだろう。従って、血液の環境、血液の成分、特に酵素、肝臓中の活性、または他の因子が、ほどよい速度での標的結合メンバーの遊離を伴う連結基の開裂を引き起こし得るような、様々な基を使用することができる。
【0049】
利用できる官能基としては、エステル、有機酸または無機酸のいずれか、特にカルボキシル基またはリン酸基、ジスルフィド、ペプチドまたはヌクレオチド結合、特にトリプシン、トロンビン、ヌクレアーゼ、エステラーゼ等に感受性であるペプチドまたはヌクレオチド結合、アセタール、エーテル、特に糖質エーテルなどが挙げられる。一般に、開裂用の連結基は、鎖中に少なくとも2つの原子を必要とし(例えばジスルフィド)、そして鎖中に50原子、通常多くても約30原子、好ましくは多くても約20原子を必要とすることがある。よって、鎖はオリゴペプチド、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、ジスルフィド、脂肪族、芳香族、脂環式、複素環式またはそれらの組合せである有機二価基、例えばエステル、アミド、エーテル、アミン等を含んで成ることができる。特定の連結基は、生理学的認容、所望の開裂速度、合成上の便宜性などに従って選択されるだろう。
【0050】
接合体は、該接合体の結合メンバー成分の性質、結合メンバーの結合能を維持する必要性、および接合体の生体内使用に関連するような他の考慮すべき事柄に従って、任意の便利な方法で調製することができる。接合体の性質に応じて、接合体の2つの結合メンバーの間の結合比は、1から結合メンバーの一方または両方が複数を有するまで異なることができる。普通は接合体中に結合メンバーのいずれかが平均して多くても6つ、より普通には多くても3つ存在するだろう。一般にアンカーは1つであるが、長命血液成分に対する親和性の増強を所望する場合には複数であってもよい。
【0051】
前に指摘したように、アンカーと標的結合メンバーとの会合には次の3形態が存在し得る:(1)多数の様々な形態をとることができる適当な鎖によって前記2つが共有結合的に連結される;(2)非共有結合的に連結されるように各鎖が特異的結合ペアの相互相補的メンバーで終わっている鎖の組合せにより、前記2つが連結される;または(3)アンカーを最初に長命血液成分に付加し、次いで、非共有結合的に連結されるように各メンバーが特異的結合ペアの相互相補的メンバーで終わっている鎖を有する標的結合メンバーを付加することにより、前記2つが連続的に付加される。
【0052】
接合体の結合メンバー間の結合の性質は、結合メンバーの化学組成、標的結合メンバーの末端、標的の性質、などによって大きく異なるだろう。一般に、安定な結合が使われ、共有結合が一般に適用される。「安定な」とは、分子中の他の結合に比べてその結合が優先的に開裂されないことを意味する。「不安定な」とは優先的開裂を意味する。しかしながら、時には結合の限定的経時分解を許容したいと望む場合がある。例えば、接合体の結合メンバーの親和性が非常に高い場合には、接合体と標的の複合体の制御放出を所望することがある。接合体の開裂または分解に備えることにより、複合体からの標的の分離速度よりもむしろ接合体の開裂または分解の速度に従って標的が放出されるだろう。様々な結合は生理的条件下で不安定であり、この不安定性は酵素的または非酵素的反応の結果として生じてもよい。例えば、比較的不安定でありそして血流中で時間が経つにつれて開裂されるようなエステル結合を提供することができる。立体障害の程度を変えることにより、異なる程度の不安定さを達成することができる。あるいは、多種多様な酵素(例えばプロテアーゼ)により認識される配列を提供することができる。例えば、一連のアルギニン−リジン二量体単位はトリプシンに感受性であろう。プロテアーゼを血流中に見つけることができる場合、別のプロテアーゼ不安定結合を使ってもよい。あるいは、還元的開裂を受けるであろうジスルフィド結合を使ってもよい。利用することができる別の官能価としては、オリゴ糖、チオールエステル、核酸等が挙げられる。あるいは、長命血液成分からの標的の遊離に備える結合メンバーの一方または両方の性質、例えばプロテアーゼに感受性である抗体のペプチド性質に頼ってもよい。
【0053】
異なる官能基を有する接合体を調製するために多種多様な化合物を共有結合により連結するための方法の文献中に多数の報告がある。接合体結合メンバーの性質によって様々な合成スキームを心に描くことができる。例えば、スルフヒドリル基が存在する場合には、スルフヒドリル基への結合に備えてそれらを容易に活性化してジスルフィド基を提供することができ、またはマレイミド基を使って、チオールがマレイミドに結合してチオールエーテルに備えることができる。カルボキシル基は、様々なヒドロキシル化合物またはカルボジイミドを使って容易に活性化することができ、得られたエステルまたは無水物をヒドロキシルまたはアミノ基と反応させてエステルまたはアミドを提供することができる。同様に、糖質成分を過ヨウ素酸塩を使って活性化することができる。イミン、ヒドラジン等の別の結合も利用できる。あるいは、非共有結合、例えばビオチン−アビジン結合、二重抗体結合、レクチン−糖質結合などを使ってもよい。接合体結合メンバーが両方ともタンパク質、例えば抗体または断片である場合、様々なベクターと宿主細胞を使って、接合体を単一構成物として遺伝子操作し、クローニングし、そして発現させてもよい。あるいは、特にカップリングに利用できるユニークな官能基を提供することにより、2つの接合体結合メンバーを組換え的にまたは化学的に合成し、続いてカップリングすることができる。化学合成は液相または固相合成を利用した市販の合成装置を使うことができる。この場合、合成は接合体の全部であっても一部であってもよい。主題の組成物は様々な細胞の疾患、毒性および環境暴露の予防的または治療的処置に使うことができ、指示に応じて様々な方法で投与することができる。所望であれば、最初に接合体を適当な比率で長命血液成分に結合し、次いで投与することができる。あるいは、長命血液成分細胞またはタンパク質へ結合させるために接合体を宿主に投与することができる。投与される接合体の量は、接合体の性質、接合体の目的、治療量、接合体として存在する時や細胞に結合した時の化合物の生理学的活性などに依存して、広く異なるだろう。従って、宿主に投与される接合体の量は1μg〜50mg/kg宿主に及ぶことができる。
【0054】
本発明の組成物は、大部分については、非経口に、例えば静脈内(IV)、動脈内、筋肉内(IM)、皮下(SC)等に投与されるだろう。投与は通常、接合体が細胞に結合されているならば輸液による投与であろう。接合体が未結合ならば、投与は通常IV, IMまたはSCであろう。組成物が低分子量(約10 kD 未満)のものであるかまたは消化酵素に耐性であるならば、接合体の投与は経口、鼻内、直腸、経皮またはエーロゾル投与であり、接合体の性質は脈管系への輸送を考慮したものである。生理学的に許容される担体、例えば水、塩類溶液、リン酸塩緩衝化塩類溶液、水性エタノール、血漿、タンパク様溶液、グルコースまたはマンニトール溶液などが一般に使われるだろう。接合体の濃度は広く異なるが、通常は約1pg/ml〜50mg/mlの範囲であろう。含めることができる他の添加剤としては、緩衝剤(溶媒が通常約5〜10の範囲のpHに緩衝化され、緩衝剤は通常約50〜250 mMの濃度であろう)、塩(塩の濃度は通常約5〜500 mMの範囲であろう)、生理学的に許容される安定剤、などが挙げられる。好都合な貯蔵と輸送のために組成物を凍結乾燥してもよい。
【0055】
長命血液成分の選択は、標的の生物活性を変更する方法に影響を及ぼすだろう。標的の性質に依存して、異なる長命血液成分が使われるだろう。標的が分子、例えば小さな有機分子またはペプチドである場合、血清タンパク質が好都合な長命血液成分であり、標的の排除は血清タンパク質の排除を伴うだろう。特に標的が細胞毒性作用を有する場合、標的を接合体に結合させる一方で実質的に不活性化しなければならない。標的がウイルス粒子または細胞である場合、長命血液成分は一般に細胞であり、細胞の選択は標的細胞を迅速に排除したいのかまたは特定の細胞区画に分離して宿主中に維持したいのかに依存するだろう。例えば、ウイルス感染細胞または新生物性細胞を排除したいならば、長命血液成分は赤血球または血小板であり、標的細胞が赤血球または血小板に結合された状態になって標的細胞が小さな脈管に入るのを防ぎ、そして複合体が脾臓によって排除と認識されるだろう。赤血球の場合、標的細胞への結合による赤血球の変形が複合体の排除との認識を助ける。同様なメカニズムが血小板にも有効である。
【0056】
本発明は慢性または急性状態において、予防的にまたは治療的にのいずれかで用いることができる。急性状態には、接合体は急性状態を見越して標準的に投与されるだろう。例えば薬物常用者では、特に患者がメタドンプログラム中である場合、特定の乱用薬物の使用を防ぎたいと思うだろう。数週間または数カ月の有効結合能を発揮することができる主題の接合体を投与することにより、乱用薬物の捕獲がそれの不活性化を引き起こし、陶酔作用を阻害するだろう。同様に、院内感染が心配される場合、感染すると毒素または腫瘍壊死因子が結合された形態になってそれの有効濃度を病原性水準より下に下げるように、感染を見越して接合体が投与されるだろう。
【0057】
治療的用途には、転移細胞または増殖因子過剰について血液をモニタリングするために、癌患者に接合体を投与することができる。この場合、迅速な排除に備える長命血液成分、例えば赤血球が使われる。乳房細胞(mammary cell)のように、正常では脈管系中に細胞が見られない場合、脈管系中のいずれの乳房細胞も検出でき且つ排除できるように、接合体は標的タンパク質として乳房細胞表面タンパク質を有するだろう。自己免疫病に関与するT細胞の場合、そのような細胞が共通エピトープを有する時、接合体はそのような細胞に向かう血液を管理し、そして上記に指摘したメカニズムによりそのような細胞に結合し且つ該細胞を排除することができるだろう。
【0058】
本発明は、有害な生理学的作用を有し得る1もしくは複数の出来事、例えば薬物摂取、または外傷もしくは手術に対する宿主の不利な生理学的応答を見越して、あるいは難治性感染の結果として毒素、ウイルス粒子等の連続生産を長命血液成分に結合された接合体によって継続的にモニタリングする慢性状態に、利用することができる。本発明は、標的の結合と同時に標的の有害な生物学的作用が迅速に削減され、そして変性したまたは欠陥のある赤血球と血小板の分解、化学的変性、排除に関係する様々な天然のメカニズムにより、宿主からゆっくりとまたは迅速に標的が排除される、長命の結合能力源を提供する。
【0059】
主題の剤の延長された供給時間または利用可能性のため、本発明は多種多様の状況に利用することができる。標的結合メンバーは、病院での院内感染または病気が広がり得る別の状況が心配される場合、毒素に対する抗体であることができる。本発明は、患者の障害を回避しながら、反復投与を必要とせずに手術中と手術後の薬剤濃度を確実に維持するために手術前に使用することができる。例えば、手術および適応の性質が血餅を形成しやすい場合、抗凝固剤を使用することができる。灌流障害を防ぐために白血球回帰性の阻害剤を使用することもできる。患者が長期間に渡り特に心筋梗塞になりやすい場合、心血管薬を使って本発明を利用してもよい。薬剤の長期利用可能性から有益であろう別の治療としては、ホルモン療法、不妊療法、免疫抑制療法、神経弛緩療法、乱用薬物予防、感染性物質により引き起こされる病気の治療、血友病の治療などが挙げられる。
【0060】
生物学的に活性な標的結合メンバーを哺乳類宿主の血液中のIgGに結合させることにより、多数の利点の結果として、免疫グロブリンの多数の望ましい特徴を維持しながら、延長された寿命に加えて、免疫グロブリンに新たな活性を提供する。例えば、免疫グロブリンはFc エフェクター機能、例えば補体結合におけるそれの役割、または抗体依存性細胞障害作用、不活性化および分泌に対する作用などをまだ有することができる。同様に、血清アルブミンまたは他の長命血清タンパク質は、標的存在物を不活性化しそしてそれらの迅速な排除を手伝う働きをすることができる。よって、標的結合メンバーが結合されている血液成分は、標的結合メンバーの活性にそれらの生理学的活性を加える。こうして、免疫グロブリンを細胞性標的もしくは可溶性標的に差し向けることにより、または細胞性もしくは可溶性標的を血液タンパク質で被覆することにより、細胞性標的を不活性化または排除することができる。
【0061】
次の実施例は例示のつもりで与えるのであって限定のつもりではない。
【実施例】
【0062】
実験
実施例1:コカインの分布容積の変更
BALB/cマウスとSP20ミエローマを使ってコカイン−BSA接合体(モル比10:1)に対して惹起せしめたモノクローナル抗体を、コカイン−BSAおよび対照抗原としての無関係のペプチド−BSAに対して固相マイクロタイタープレートELISA によりスクリーニングする。選択された抗体特異性を、抗体の結合が遊離のコカインにより用量依存形式で阻害されるコカイン−BSAに対する競合アッセイにより確認する。選択された抗体は、1:64のELISA による上清力価を有するIgG1である。腹水中でMab を生産させ、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製する。
【0063】
抗RBC Mab はヒトのグリコフォリンAに特異的であり且つ血液型抗原M(Hospital Saint-Louis, Paris から入手)と反応するIgG1Mab である。このMab はチンパンジーとアカゲザルの赤血球と交差反応する。
【0064】
抗RBC Mab と抗コカインMab の両者からのFab 断片(SDS-PAGEによりモニタリングしたパパイン消化により製造)をナカネ法を使って接合する。まず、接合体の第一メンバーを過ヨウ素酸ナトリウムにより活性化した後、接合体の第二メンバーを付加し、炭水化物−NH2 基共有結合を形成させる。カップリング反応中はpHをモニタリングし、両メンバーの比率を最適化して1:1に近い平均モル比を与える。接合体をゲル濾過により精製する。80 KD 〜120 KDの分子量(SDS-PAGEにより決定)に相当する写真を選択する。抗マウスκ鎖特異的ペルオキシダーゼ接合体と、対照としての抗マウスFc特異的ペルオキシダーゼ接合体(コカイン結合型Fab と反応しない)とを使って、上述したようなELISA により接合体とコカインの反応性を確認する。抗マウスFab FITC接合体と対照としての抗マウスFc特異的FITC接合体(コカイン結合型Fab と反応しない)とを使って、フローサイトメトリーによりヒトRBC と接合体の反応性を試験する。該接合体は、新鮮なウサギ補体を添加したヒトおよびマウス血漿中でインキュベートした時にRBC を凝集させず且つ溶血を誘導しない(100ng/ml〜10μg/mlで)ことがわかった。
【0065】
125I標識コカインの生体分布を、抗RBC コカイン特異的接合体で動物を前処理をしたものとしないものを使って評価する。ゆっくりした注射(5分間)により1%ヒト血清アルブミンを含む5%グルコース中に希釈した50μg/kgの接合体を動物(n=3)にIV投与する。注射の1日後、動物に10μCiの 125I標識コカイン(動物あたり100 μg )をIV投与する。コカイン注射の1時間後、動物を犠牲にし、脳標本(前頭皮質と後頭皮質)を含む様々な組織および血液標本を収集する。
【0066】
対照動物(n=3)には 125I標識コカインのみを投与し接合体は投与しない。γカウンターを使って比放射能を測定し、血液1mlあたりのcpm または組織1グラムあたりのcpm として表す。接合体前処理を受けた動物は、対照動物の平均脳 125I比活性の 2.2%(±0.7 %)の平均脳 125I比活性と、対照動物の25(±4)倍の平均全血比活性を有する(赤血球:血漿の 125I比活性の比は接合体処理グループでは20:1で、対照グループでは0.2 である)。
【0067】
これらの結果は、コカインに特異的な接合体に結合させた赤血球での前処理がコカイン分布容積を変更し、中枢神経系へのコカインの拡散を減少させ、そして血漿:赤血球のコカイン濃度の比を減少させる(血中濃度の正味の減少を伴う)。
【0068】
実施例2:抗T細胞サブセット接合体
ラット抗マウスRBC 特異的Fab 断片を精製組換えHIV1 gp120に接合させる(モル比1:2)。SCID Hu マウスへのRBC/gp120 長命血液成分のIV投与(マウスあたり10μg )後、48時間にわたり定期的に全血標本を収集し、そして蛍光顕微鏡検査とフローサイトメトリーにより分析する。最初の6時間は、アンカーで前処理した動物では赤血球とCD3+, CD4+, CD8-T細胞のロゼットが観察され、対照動物では観察されなかった。
【0069】
実施例3:抗ウイルスタンパク質アンカー
ラット抗マウスRBC 特異的Fab 断片を精製組換えCD4 に接合させる(モル比1:3)。BALB/cマウスにRBC/CD4 接合体をIV投与(マウスあたり10μg )した48時間後に、 125I標識組換えHIV1 gp120を接合体前処理動物または対照動物にIV注射する。その後の24時間と8日間に渡りgp120 の半減期(全血、赤血球および血漿)濃度を測定する。処理動物ではgp120 の血漿半減期が大きく減少し、一方で赤血球と全血半減期は増加する。
【0070】
実施例4:寿命延長免疫原の2段階付加
I.第0日に2羽のウサギにN−スクシンイミジルビオチンエステル(NHS−ビオチン)の溶液(200μlまたは1mlのDMSO中、5mgまたは50mg)をIV注射した。最初は1時間間隔で、次に1日間隔で血液試料を採取し、60μg の試料を使ってゲル電気泳動(SDS-PAGE)によりビオチンの存在について該試料を分析し、発光基質(ECL キット、Amersham)を使って、アビジン−ペルオキシダーゼ接合体によりビオチンが結合されているタンパク質を検出した。赤血球に結合したビオチンについては、該細胞を遠心分離により単離し、洗浄し、低張溶解により溶解し、そして血漿タンパク質と同じ方法でSDS-PAGEによりタンパク質を分離した。血漿タンパク質については、還元条件下と非還元条件下で電気泳動を行い、還元条件下ではIgMとIgGはサブユニットに還元された。
【0071】
1羽のウサギの血漿タンパク質のゲルは、ビオチンがIgM,IgG,p90, p75(トランスフェリン)、血清アルブミンおよびp38 に結合していることを示した。還元条件下でのゲル電気泳動における検出期間は血清アルブミンで9〜12日間、そしてIgMとIgGで33日までであり、非還元条件下では、暴露時間が実質的に短かった場合、血清アルブミンで2日間そしてIgGで9日間の間バンドを観察できた。赤血球を使うと、多数のタンパク質を12日間観察することができ、次の時点はバンドが全く観察できなくなった33日であった。主な標識成分はバンド3を示唆する電気泳動パターンを有した。
【0072】
II.本発明が異種タンパク質に対する免疫応答を増強するのに利用できることを証明するために、上述したようなビオチン接合体の投与後に、250 μg または1mgの卵白アビジンを2羽のウサギの各々に静注した。約2日以内に力価が迅速に上昇しはじめ、そしてマイクロプレートにコーティングされたアビジンを使ったELISA により、約600 のOD値により証明されるように、高い抗アビジン力価が10日まで観察された。対比して、予めビオチン接合体を投与しなかったウサギに上述したようにアビジンを投与した時、6日目に50μg のアビジンの静脈内ブースター注射を行うまでは実質的に全く抗体の産生が観察されなかった。注射を行った6日目の時点で、ビオチン接合体変性ウサギにおいて12日目までに観察された力価に近い、抗アビジン力価の急速な増加が観察された。
【0073】
実施例5:RBC および血漿タンパク質へのビオチン−NHS の結合
DMSO中に可溶化された5mg(〜1.5 mg/kg)と50mg(〜15mg/kg)の NHS−ビオチンをそれぞれウサギ3またはAと8に注射した。次いで注射後同日の0.5, 1, 2 および4 時間目と、注射後1, 2, 3, 6, 9, 13, 20, 27, 34, 41, 48 および55日目に血液試料を採取した。
【0074】
注射の30分後、フィコエリトリン接合アビジンを使って実施したフローサイトメトリーにより示されるように、全てのRBC がビオチン化された。平均蛍光はウサギ3の方がウサギ8よりもずっと低く(それぞれ26と320)、RBC の標識とNHS−ビオチンの用量との間に直接関係があることを示した。ウサギ3または8において観察された曲線からそれぞれ17日および15日の半減期が計算された。ウサギ3では55日の寿命が得られた。49日後、ウサギ8ではビオチン化されたRBCの6%が残存していた。常法により測定すると、ウサギRBC の寿命は45〜70日である。
【0075】
ウサギ3とウサギ8の血漿タンパク質をイムノブロット法により分析した。血漿タンパク質を還元条件下(10 mM DTT)で10%ポリアクリルアミドゲル中で分離した(クーマシーブルー染色)。主な成分はp180, p90, p75, アルブミン並びに免疫グロブリンの重鎖および軽鎖と同定された。ポンソー赤で染色された全ての血漿タンパク質はアビジン−フィコエリトリンを捕捉することができ、これはそれらのタンパク質がビオチン化されていることを証明する。ウサギ3については、第20日には血清アルブミンだけが検出できた。ウサギ8からの試料を使った染色はずっと強力であり、これは高分子量成分(〜200 kDa)と免疫グロブリンの軽鎖のビオチン化を示す。第19日には全く染色が観察されなかった。
【0076】
8%ポリアクリルアミドゲル中で非還元条件下で分離された血漿タンパク質のパターン(クーマシーブルー染色)は、主成分としてIgM,IgG,p90 ,p75 および血清アルブミンを示した。イムノブロット上では、アルブミン(60 kDa)、トランスフェリン、p90 、IgG(160 kDa)およびIgMに一部対応する高分子量成分が検出された。アルブミンはウサギ8から第12日に採取した試料から検出できなかったので、高分子量成分とIgGの半減期はアルブミンのものより長いらしかった。
【0077】
実施例6:ビオチン化血漿成分に結合させたアビジンを使った抗アビジンの生産
第0日に1mlのDMSO中の50mgのNHS−ビオチンをウサギに注射し、次いで30分後にペルオキシダーゼ標識アビジン(1ml/250 μg )を注射した。7日後、ウサギに125I−アビジン(1×107cpm:50μg)を注射した。その後定期的に血液試料を採り、 125Iの存在と抗アビジン抗血清の存在について分析した。第53日に、600 μlのDMSO中の50mgのNHS−ビオチンを注射し、その30分後に1mg/500 μlのアビジンを注射し、そしてその後定期的に血液試料を採り抗アビジン力価を測定した。抗アビジンは第2日ほどの早期に出現し、その力価は第12日付近で最大になり、その後ゆっくり減少した。抗体の力価は33日後は有意でなかった。 NHS−ビオチンとアビジンでのブースター注射後、高力価抗体が得られた。アビジンがコーティングされたELISA プレートを使って測定したOD値に基づくと、第70日に、力価は第12日よりも約8倍大きかった(606 対4790)。
【0078】
NHS−ビオチンを投与しなかった対照ウサギでは、500μg のペルオキシダーゼ標識アビジンの注射後7日以内に有意なレベルの抗体が観察されなかった。しかしながら、 125I−アビジン(15μg)の追加注射は5日後に免疫応答を引き起こした。
【0079】
本発明は、様々な目的で哺乳類宿主の血流中の剤の寿命を延長することに備える。本発明は、哺乳類の血流中に存在する剤の病原性または毒性作用を限定するための改良方法を提供する。その上、本発明は、サーヴェイラントとして働くことができる分子を提供するか、または生理学的活性物質の反復投与を避けるために長期間に渡り治療様式を維持する、抗原の継続提示を考慮に入れる。
【0080】
本発明の方法は、血流中の生理学的に有害な物質の存在についてサーヴェイランス(免疫学的監視)が所望される場合に用途を見出す。そのような物質に特異的に結合し、且つ血液中の接合体の寿命を延ばす長命血液関連成分に結合されている接合体を提供することにより、該接合体はそのような物質に結合しそして不活性化する働きをすることができ、また長命血液関連成分の適当な選択により、通常の生理学的排除機構を使って、そのような物質をゆっくりとまたは迅速に宿主から排除することができる。
【0081】
本明細書中に言及される全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する当業者の技術水準を示すものである。全ての刊行物および特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が具体的に且つ個別的に参考として組み込まれると指摘されたかのように参考として本明細書中に組み込まれる。
【0082】
今まで本発明を十分記載してきたが、添付の請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなくそれに多数の変更と改良を加え得ることは当業者にとって明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物宿主に投与することによりかかる宿主を処置する方法に利用するための、安定な共有結合を形成するようにタンパク質と反応することができる反応性官能基を含んで成る標的結合メンバーを含んで成る医薬組成物であって、前記反応性官能基はアルブミン上のアミン、チオール又はカルボキシル基とin vivoで反応して、当該反応性官能基と当該アルブミンとの間でin vivoで共有結合を形成せしめ、当該標的結合メンバーのin vivo寿命を延長することができるものである、組成物。
【請求項2】
前記標的結合メンバーがペプチドを含んで成る、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
in vivoで治療剤の寿命を延長することのできる治療剤組成物であって、アルブミンと反応することのできる反応性官能基をその上に含んで成るように修飾されることで、アルブミンとの間で安定な共有結合を形成できる治療剤を含んで成る治療剤組成物。
【請求項4】
治療剤の寿命を延長するための方法であって、ヒトを除く哺乳動物の血管系にアルブミンとの間で安定な共有結合を形成するようにアルブミンと反応することのできる反応性官能基を含んで成る化合物を投与することを含んで成り、ここで当該安定な共有結合はアミド、エステル、イミン、チオエーテル、ジスルフィド及び置換化アミンから成る群から選ばれ、当該反応性官能基は前記治療剤に連結されており、これにより当該反応性官能基は当該血管系のアルブミンと反応して修飾アルブミンを生成し、ここで当該治療剤は長期間にわたりその治療的機能が奏されるのに有効な量で投与される、方法。

【公開番号】特開2007−197464(P2007−197464A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122882(P2007−122882)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【分割の表示】特願平7−511062の分割
【原出願日】平成6年9月16日(1994.9.16)
【出願人】(506272840)コンジュシェム バイオテクノロジーズ インコーポレイティド (3)
【Fターム(参考)】