説明

細胞の化学感受性を定量する方法

本発明は、治療剤に対する細胞感受性を決定する方法を提供する。この方法は、細胞、またはその細胞成分(例えば、ミトコンドリア)を、BH3ドメインペプチドと接触させ、アポトーシスを検出することを含む。アポトーシスの存在は、該細胞が、その治療剤に対して感受性を有することを示す。それとは別に、治療剤に対する細胞の感受性は、癌細胞のBH3プロフィールを提供し、コントロールプロフィールとこのBH3プロフィールを比較することによって判定される。コントロールプロフィールと比べた場合の、癌細胞のBH3プロフィールの類似性は、治療剤に対する感受性を有することを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、一組のBH3ドメインペプチドに対する細胞の感受性パターンを決定することによって、細胞の化学感受性を定量する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死は、全ての多細胞生物における組織ホメオスターシスの発達および維持に不可欠の役割を果たしている(非特許文献1)。線虫からヒトに至る、遺伝学的、分子的分析から、細胞自殺のアポトーシス経路は、高度に保存されることが示された(非特許文献2)。アポトーシスは、正常な発達および維持に不可欠であるばかりでなく、ウィルス感染に対する防衛、および癌発生の予防にも重要である。
【0003】
複数の細胞内局所から発せられる、種々の内在性細胞死シグナルは、全て、ミトコンドリアからシトクロムcの放出を誘発し、Apaf−1を活性化し、エフェクターカスパーゼ活性をもたらす。BCL−2ファミリーのタンパクは、ミトコンドリアにおけるプログラム細胞死施行の主要調節因子であるばかりでなく、細胞死シグナルの実行因子でもある。このファミリーのメンバーは、プロおよびアンチ・アポトーシスタンパクを含むが、これらは、BCL−2ホモロジー(BH)1−4ドメインと呼ばれる、最大4個の保存領域において相同性を共有する(Adams and Cory,1998)。このファミリーは、主に三つのサブクラスに分割することが可能である。BCL−2およびBCL−Xを含む、アンチ・アポトーシスタンパクは皆、四つ全てのBHドメインにおいて相同性を共有する「マルチドメイン体」である。一方、プロ・アポトーシスタンパクはさらに分割することが可能であり、BAXおよびBAKなどのマルチドメインタンパクを含み、これらは、BH1−3ドメインにおいて配列相同性を有する。比較的関連の薄い「BH3単独」タンパクは、これまでのところ全てアポトーシス刺激性(プロ・アポトーシス)であり、そのアポトーシス機能に必要とされる、両親媒性のα−螺旋BH3領域内において配列相同性を共有する(Chittendenら、1995;O’Connerら、1998;Wangら、1996;Zhaら、1997)。
【0004】
BAXおよびBAKなどのマルチドメインプロ・アポトーシスタンパクは、細胞死シグナルを受容すると、ミトコンドリアの機能障害の実行に参加する。生細胞では、これらのタンパクはモノマーとして存在する。しかしながら、種々の細胞死刺激に反応すると、細胞質ゾルに局在するか、または膜にゆるく付着する不活性BAXは、ホモ・オリゴマー化マルチマーとして、ミトコンドリアの外膜の中に深く浸透する(Eskesら、2000;Grossら、1998;Wolterら、1997)。不活性BAKはミトコンドリアに滞在し、ここでも、細胞死シグナルに反応してホモ・オリゴマー化を含む立体配座変化を受ける(Griffithsら、1999;Weiら、2000)。BAXおよびBAKの両方を欠く細胞は、細胞内の複数部位から発せられる、種々の細胞死シグナルに対して耐性を有する(Weiら、2001)。
【0005】
BH3単独分子は、このファミリーの第3サブセットを構成し、BID、NOXA、PUMA、BIK、BIM、およびBADを含む(Kelekar and Thompson,1998)。これらのタンパクは、両親媒性α−螺旋BH3領域においてのみ配列相同性を共有し、この領域は、突然変異分析から、プロ・アポトーシスメンバーとして細胞死活性のために必要であることが示されている。さらに、BH−3単独タンパクは、このドメインが、「マルチドメイン」のBCL−2ファミリーのメンバーに対する結合を示すことを要求する。複数結合アッセイ、例えば、酵母2ハイブリッド、界面活性剤可溶化細胞溶解物の共時免疫沈降、およびインビトロプルダウン実験を含むアッセイによって、個々のBH3単独分子は、マルチドメインBCL−2メンバーに対しある種の選択性を示すことが明らかにされている(Boydら、1995;O’Connerら、1998;Odaら、2000;Wangら、1996;Yangら、1995)。BIDタンパクは、プロ・アポトーシス性BAXおよびBAKに結合するばかりでなく、アンチ・アポトーシス性BCL−2およびBCL−Xに対しても結合する(Boydら、1995;O’Connerら、1998;Odaら、2000;Yangら、1995)。
【非特許文献1】Raff,Nature(1992)356:397−400
【非特許文献2】Hengartner and Horvitz,Cell(1994)76:1107−1114
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
種々の局面において、本発明は、治療剤に対する細胞の感受性を予測する方法であって、該細胞、またはその細胞成分(例えば、ミトコンドリア)を、BH3ドメインペプチドと接触させ、アポトーシスを検出することによる方法を提供する。アポトーシスの存在は、該細胞が、その治療剤に対して感受性を有することを示す。それとは別に、治療剤に対する細胞の感受性は、癌細胞のBH3プロフィールを提供し、コントロールプロフィールとこのBH3プロフィールを比較することによって判定される。コントロールプロフィールと比べた場合の、癌細胞のBH3プロフィールの類似性は、治療剤に対する感受性を有することを示す。
【0007】
さらに提供されるものは、対象に対して治療的である薬剤を選択する方法であって、癌細胞、またはその細胞成分を提供すること、該細胞または細胞成分を、BH3ドメインペプチド、またはその模倣物と接触させること、および、該BH3ドメインペプチド、またはその模倣物が、前記癌細胞、またはその細胞成分においてアポトーシスを誘発するか否かを判定し、試験BH3プロフィールを作成することによる方法である。この試験BH3プロフィールは、治療剤のBH3プロフィールと比較される。治療剤BH3プロフィールと比較される試験BH3プロフィールの類似性は、該治療剤が、該対象に対し治療的であることを示す。
【0008】
アポトーシスは、例えば、ミトコンドリアからのシトクロムCの放出を検出することによって検出される。治療剤は、化学療法剤、BH3ドメイン模倣物、または、アンチ・アポトーシスタンパクの拮抗剤である。BH3ドメインペプチドは、BID、BIM、BAD、BIK、NOXA、PUMA、BMF、またはHRKポリペプチドのBH3ドメインから得られる。例示のBH3ドメインペプチドとして、配列番号1−14および15が挙げられる。このBH3ドメインは、アポトーシスの活性化因子または感作物質である。BH3ドメインペプチドは、感作物質であることが好ましい。
【0009】
癌を有する一つ以上の対象から得られたBH3ペプチドに対するミトコンドリア感受性パターンを含むプロフィールも、本発明によって提供される。
【0010】
別様に定義しない限り、本明細書で用いる技術および科学用語は、全て、本発明の所属する従来技術において当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を持つ。本明細書に記載されるものと近似するか、または等価の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することが可能であるが、適切な方法および材料が下記に記載される。本明細書に言及される、公刊物、特許出願、特許、および他の参考文献は、全て、引用によりその全体が本明細書に含まれる。不一致の場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみであって、限定的であることを意図しない。本発明の他の特質および利点は、下記の詳細な説明および特許請求の範囲から明白であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一部は、プログラム細胞死に関する第3の細胞状態の発見に基づく。この状態は、従来から、「死への準備(primed for death)」と名づけられている。この発見までは、プログラム細胞死に関しては二つの状態しか特定されていなかった。死の準備をする細胞は、生存のために持続性の、アンチ・アポトーシス機能を必要とする。
【0012】
個々のBCL−2ファミリーメンバー、BCL−2、BCL−XL、BCL−w、MCL−1、およびBVL−1に選択的に拮抗する、BH3単独タンパクのBH3ドメインから得られる、一組のペプチドを用いると、個々のアンチ・アポトーシスタンパクに対する細胞の「嗜好」が、これらのペプチドに対するミトコンドリアの反応に基づいて診断することが可能であることが示された。この一組のペプチドを表1に示すが、これらを、本明細書ではBH3ドメインペプチドと呼ぶ。アンチ・アポトーシスタンパクBCL−2、BCL−XL、MCL−1、BFL−1、およびBCL−wは、それぞれ、この一組のタンパクと独自の相互作用パターンを持つ。細胞は、生存のために、アンチ・アポトーシスタンパクに依存するが、その依存性は、このペプチド組に対するミトコンドリアの感受性パターンに基づいて解読される。この戦略をBH3プロファイリングと呼ぶ
【0013】
【表1】

本発明の一組の感作物質BH3ペプチド、すなわち、アンチ・アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーの選択的拮抗因子を用いて細胞状態を判断するために、ミトコンドリアを探査した。死への準備を整えたミトコンドリアは、MOMPを阻止するためにアンチアポトーシスタンパク機能に依存し、そのため、ミトコンドリアは、感作物質BH3ペプチドに暴露されると、シトクロムcを放出する(図1、図4A、図5C、および図6B参照)。一方、死への準備をしていない細胞は、感作物質BH3ペプチドに暴露されてもシトクロムcを放出しない。したがって、ミトコンドリアを単離することが可能であれば、いずれの細胞であれ、それを試験し、準備細胞または未準備細胞として分類することが可能である。ミトコンドリアの直接試験は、生細胞に対する、ペプチド、タンパク、または発現ベクターによるトランスフェクションによって引き起こされることが予想される、転写、翻訳、または翻訳後修飾事象による寄与が仮にあったとしても、それら全てが除去されるという利点を有する。ある任意の時点におけるアポトーシス状態の「スナップショット」が、既存のアポトーシス機序をほとんど全く撹乱せずに撮影される。以上まとめると、本発明の方法は、細胞生理学の基本的局面に関する情報の捕捉を可能とする。
【0014】
重要なことに、いくつかのモデルにおいて、ミトコンドリアの振る舞いは、全細胞の振る舞いと相関した。細胞が生理的変化に耐えている間、ミトコンドリアは準備を整えるが、BH3プロファイリングが、アンチ・アポトーシスタンパクに対する依存性を明らかにするのは、細胞依存性も証明された時だけであった。下記の実施例に示すように、FL5.12細胞およびミトコンドリアは、IL−3が撤去されて始めて細胞死への準備を整えた。2B4細胞について言えば、細胞およびミトコンドリアは、デキサメタゾン処理後始めて死への準備を整えた。BCL−2依存性一次白血病細胞の場合、さらに外部からの介入を要することなく、癌表現型に内在的な、ゲノム不安定、myc癌遺伝子の活性化、およびチェックポイント違反が、ミトコンドリア準備態勢を誘起するのに十分であった。SCLC細胞系統、H164およびH1693は、BH3プロファイリングに対し、BCL−2感受性パターンを示したが、BCL−2拮抗剤ABT−737に対しても同様に感受性を示す。いずれの場合においても、ミトコンドリア試験によって、アンチ・アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーに対する細胞依存性が適正に診断された。さらに、個々のファミリーメンバーの名前を、我々のペプチド組に対するミトコンドリアの感受性パターンに基づいて解読することが可能となった。これらの結果から、ある細胞、例えば、IL−3充満FL5.12−BCL−2細胞では、BCL−2の過剰発現は、余分なアンチ・アポトーシス備蓄を供給することが示された。別の細胞、例えば、げっ歯類白血病細胞では、高レベルのBCL−2が存在するが、このBCL−2は、活性化因子BH3タンパクによって大部分占拠されるために、細胞は、アンチ・アポトーシス備蓄をほとんど持たず、実際には細胞死への準備が整えられる。
【0015】
必ずしも全ての細胞が、アンチ・アポトーシスタンパクの拮抗作用に対して感受性を持つわけではない。感受性細胞は、BCL−2ファミリーの、ある選択された一組のプロ・アポトーシスタンパクによって運ばれる細胞死シグナルを通じて「死への準備を整える」。ある癌細胞は、持続的に死の準備態勢にあり、感作物質BH3単独ドメインを刺激するか、または該ドメインを模倣する介在因子に対して選択的に感受性を持つ。従来、アポトーシスの抑制が、癌発生の要件であることが仮定されている(Green and Evan,2002;Hanahan and Weinberg,2000)。あたかもこの要件を満たす試みであるかのように、多くの種類の癌細胞が、アンチ・アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーを過剰発現する。したがって、これらのタンパクがどのように機能するかを理解することは、癌細胞がどのようにして生存を維持するかを理解するための鍵となる。本発明の方法は、アンチ・アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーが、ミトコンドリア外膜の高浸透化(MOMP)およびアポトーシスへの傾斜を調節するために、どのようにBH3単独メンバーと相互作用を持つかという問題に対する系統的調査を可能とする。アンチ・アポトーシスタンパクは、BH3単独タンパク由来のBH3ペプチドに対し選択的結合親和性を示す。さらに、アンチ・アポトーシスファミリーメンバーの拮抗作用は、該アンチ・アポトーシスタンパクが、活性化因子BH3タンパクによって「準備された」時にのみ、MOMPをもたらす。これは、活性化BAX/BAKにおける活性因子BH3ドメインの決定的役割を確かなものとする。細胞培養モデルでは、活性化因子の「準備起動」は、実験的に誘発された細胞死シグナル伝達を追跡すること、および、このような準備起動によって、アンチ・アポトーシスファミリーメンバーに依存性が付与されることから、観察することが可能である。注目すべきことに、アンチ・アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーに対する依存性は、感作物質BH3ドメインに対するミトコンドリア感受性パターンによって機能的に捕捉することが可能である。したがって、本発明は、治療剤に対する細胞の感受性を定量する方法であって、BH3ドメインペプチドに対するミトコンドリアの感受性パターンを決定することによって、該細胞が細胞死に対し準備を整えているかどうかを特定することによる方法を提供する。
【0016】
BH3プロファイリング
種々の方法において、薬剤に対する細胞の感受性が定量される。細胞の感受性は、細胞、または細胞成分(例えば、ミトコンドリア)を、BH3ドメインペプチドと接触させることによって定量される。細胞は、アポトーシスが検出されると、薬剤に対し感受性を持つ。それとは別に、細胞の感受性は、細胞の試験BH3プロフィールを提供し、該プロフィールを、癌細胞のBH3プロフィールと比較することによって定量される。試験プロフィールとコントロールプロフィールの類似性は、該細胞が薬剤に対して感受性を持つことを示す。BH3プロフィールとは、BH3ペプチドに対する、細胞の感受性パターンである。感受性は、アポトーシスによって示される。癌細胞のBH3プロフィールは、ある特定の薬剤に対するその反応度、または反応欠如が既知である、癌細胞におけるBH3ペプチドに対する感受性パターンである。試験BH3プロフィールは、任意に、一つを超える癌細胞のBH3プロフィールと比較される。このように、試験BH3プロフィールをコントロールBH3プロフィールと比較することによって、薬剤に対する感受性が定量される。
【0017】
細胞または細胞成分は、癌細胞、または、癌が疑われる細胞である。細胞は、BH3ペプチドのミトコンドリアに対する接触を可能とするため、高浸透化される。例えば、細胞は、該細胞をジギトニンに接触させることによって高浸透化される。細胞が高浸透化された後、該細胞は、電位差測定用染料(potentiometric dye)によって処理される。電位差測定用染料の例としては、緑色蛍光JC−1プローブ(5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンジミダゾリルカルボシアニンヨウ化物)、またはジヒドロローダミン123が挙げられる。
【0018】
JC−1は、膜電位に比例してミトコンドリアに進入する、親油性、陽イオン染料である。JC−1は、低い膜電位(M)における水中ではモノマーとして存在する。しかしながら、比較的高い電位では、JC−1は、赤色蛍光の、「J−凝集体」を形成する。モノマー時、該染料は、527nmの、吸光/発光最大値を有するが、一方、高い膜電位では、発光最大値は590nmである。したがって、このシアニン染料の発光測定値比を、ミトコンドリア膜電位の感受性尺度として使用することが可能である。この染料は、染料濃度の二重測定を可能とし、しかも、染料濃度は、核または細胞質の参照値の測定を必要としない。単離ミトコンドリア使用の実験によって、JC−1モノマー体からの527nm発光は、46から182mV範囲の膜M電位と共にほぼ直線的に増加するが、一方、590nmのJ−凝集体の発光は、140mVよりも陰性度の低いM値では、感受性が比較的低いが、140から182mVの範囲では電位値に対し高度の感受性を有することが示された(Di Lisaら、1995)。蛍光およびテトラメチルローダミンのために設計された光学フィルターを用いて、モノマー形、およびJ−凝集形をそれぞれ別々に可視化することが可能である。それとは別に、標準型蛍光長帯域光学フィルターセットを用いて、両形を同時に観察することも可能である。
【0019】
ジヒドロローダミン123は、非荷電、非蛍光剤であるが、酸化によって、蛍光性レーザー染料ローダミン123(R123)に転換される。
【0020】
細胞は、癌を有することが知られるか、または疑われる対象から得られる。この対象は、哺乳動物であることが好ましい。この哺乳動物は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシである。この対象は、以前に癌を有すると診断され、恐らく既に癌の治療を受けている。それとは別に、対象は、以前に癌を有すると診断されていない。
【0021】
薬剤は、化学療法剤などの治療剤である。例えば、薬剤は、感作物質BH3ドメインの模倣物、または、アンチ・アポトーシスタンパクの拮抗剤である。アポトーシス、すなわち、細胞死は、既知の方法によって特定される。例えば、アポトーシスの特徴として、細胞の縮小、表面における泡状の小気泡の発生、分解した核におけるクロマチン(DNAおよびタンパク)の存在、および、シトクロムcの放出と共に起こるミトコンドリアの分解、ミトコンドリア膜電位の消失、正常時原形質膜の内部に隠されていた、小さな、膜に包まれた断片、すなわちフォスファチジルセリンの、分解による細胞表面への露出が挙げられる。
【0022】
BH3ペプチドに接触されたことがない細胞と比較した場合の、BH3ペプチドに接触させた細胞のアポトーシスレベルの差は、統計的に有意である。統計的に有意とは、その変化は、偶然のみによって起こると予想される頻度よりも大きいことを意味する。統計的有意性は、従来技術で既知の方法によって決められる。例えば、統計的有意性は、p−値によって決められる。p−値とは、実験時における群間の差が偶然によって起こる確率を表す尺度である。(P(z≧z観察)。例えば、0.01のp−値は、その結果が偶然によって起こるのは、100回の機会に1回であることを意味する。このp−値が低ければ低いほど、群間の差は、処理によって引き起こされることがより確からしくなる。このp−値が0.05以下である場合、変化は統計的に有意である。p−値は、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001以下であることが好ましい。
【0023】
本発明はさらに、癌を有する一つ以上の対象から取得されたBH3感作物質ペプチドに対するミトコンドリア感受性パターンのプロフィールを含む。
【0024】
BH3ドメインペプチド
BH3ドメインペプチドは、長さが195アミノ酸未満、例えば、長さが、150、100、75、50、35、25、または15アミノ酸以下である。例えば、BH3ペプチドは、表1に示す配列番号1−13の配列を含む。
【0025】
BH3ドメインは、配列NH−XXXXXXIAXXLXXXGDXXXX−COOH(配列番号14)、またはNH−XXXXXXXXXXLXXXXDXXXX−COOH(配列番号15)を含む(全体、または一部)ペプチドを含む。本明細書で用いるXは、任意のアミノ酸であってよい。それとは別に、BH3ドメインペプチドは、配列番号14または15の、少なくとも5、6、7、8、9、15以上のアミノ酸を含む。
【0026】
BH3ドメインペプチドは、シグナル伝達ドメインに任意に付着される。伝達ドメイン化合物は、それの存在するペプチドを、所望の細胞内目的地へ向かうように指令する。したがって、伝達ドメインは、該ペプチドを、原形質膜を横切って、例えば、細胞外から、原形質膜を通り、原形質の中に方向づけることが可能である。それとは別に、またはそれに加えてさらに、伝達ドメインは、ペプチドを、細胞内の所望の部位に、例えば、核、リボソーム、ER、ミトコンドリア、リソソーム、またはペルオキシソームに向けることも可能である。
【0027】
ある実施態様では、伝達ドメインは、既知の膜転位配列から得られる。それとは別に、伝達ドメインは、膜摂取を促進することが知られる化合物、例えば、ポリエチレングリコール、コレステロール成分、オクタン酸、およびデカン酸である。
【0028】
例えば、この輸送ペプチドは、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)1TATタンパク由来の配列を含んでもよい。このタンパクは、米国特許第5,804,604および5,674,980号に記載される。それぞれ引用により本明細書に含める。BH3ドメインペプチドは、TATタンパクを構成する、全86アミノ酸の内のいくつか、または全てに対して連結される。例えば、86よりも少数のアミノ酸を有するが、細胞への摂取を示す、TATタンパクの、機能的に有効な断片または部分は、使用することが可能である。例えば、Vivesら、J.Biol.Chem.,272(25):16010−17(1997)を参照されたい。なお、引用によりこの全体を本明細書に含める。さらに、細胞への進入および摂取を仲介する領域を含むTATペプチドも、既知の技術を用いて定めることが可能である。例えば、Frankedら、Proc.Natl.Acad.Sci,USA 86:7397−7401(1989)を参照されたい。転位配列の他の供給源としては、例えば、VP22(国際公開第97/05265号;Elliott and O’Hare,Cell 88:223−233(1997))、ショウジョウバエアンテナペディア(Antp)ホメオティック転写因子、ポリ−アルギニン、ポリリシン、または非ウィルス性タンパクが挙げられる(Jackson et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10691−10695(1992))。
【0029】
伝達ドメインは、BH3ドメインペプチドのN−末端またはC−末端のいずれかに連結されてよい。完全融合ペプチドを創出するために、伝達ドメインとBH3ドメインの間に、2プロリン残基のヒンジを加えてもよい。伝達ドメインは、細胞または細胞成分への進入時に、該伝達ドメインがBH3ドメインペプチドから放出されるようなやり方で、BH3ドメインに対して任意に連結される。
【0030】
伝達ドメインは、転位タンパク中に存在する、単一(すなわち、連続的)アミノ酸配列であることが可能である。それとは別に、伝達ドメインは、タンパク中に存在はするが、天然のタンパクでは、他のアミノ酸配列によって隔てられる、二つ以上のアミノ酸配列であることが可能である。
【0031】
天然の転位タンパクのアミノ酸配列は、例えば、該天然タンパク中に存在する少なくとも一つのアミノ酸の付加、欠失、および/または置換によって修飾し、修飾タンパクを生成することが可能である。安定性を増大または減少させた修飾転位タンパクは、既知の技術を用いて生産することが可能である。ある実施態様では、転位タンパクまたはペプチドは、天然のタンパク、またはその部分のものと、同一ではないが、実質的には同じアミノ酸配列を含む。さらに、膜可溶性を増大させた修飾タンパクを生産するために、コレステロールまたはその脂質誘導体を、転位タンパクに加えることが可能である。
【0032】
BH3ドメインペプチドおよび伝達ドメインは、適切であれば、従来技術における任意の方法による化学結合によって連結することが可能である。多くの、既知の化学的架橋結合法は、非特異的である、すなわち、それらの方法は、結合点を、輸送ポリペプチドまたは荷役高分子の特定部位に指定することをしない。そのため、非特異的架橋結合剤の使用は、機能的部位を攻撃したり、または、活性部位を立体配置的に阻害して、接合体タンパクを生物学的に不活性にする場合がある。
【0033】
結合特異性を上げる一つの方法は、架橋結合されるポリペプチドの一方、または両方に、たった一箇所、または数箇所見出される官能基に対し直接化学結合することである。例えば、多くのタンパクでは、チオール基を含む唯一のアミノ酸であるシテインは、数箇所しか現れない。さらに、例えば、ポリペプチドがリシン残基を含まない場合、一次アミンに対して特異的な架橋試薬は、そのポリペプチドのアミノ末端に対して選択的となる。結合特異性を増すための上記方法を上手く利用するには、該ポリペプチドが、該分子の生物活性を失わずに、変えることが可能な分子の区域に、適当に稀で、かつ反応性を有する残基を持つことが必要となる。
【0034】
システイン残基は、それらが架橋反応に参加した場合、その反応以外の点で生物活性に干渉する可能性が高いと思われる、ポリペプチド配列の複数部分に出現する場合、置換してもよい。システイン残基を置換した場合、ポリペプチドのフォールド形成に生じる変化を最小化することが通常望ましい。ポリペプチドのフォールド形成変化は、置換基が、システインに対し化学的にも、立体配置的にも近似する場合に最小化される。これらの理由のため、システインに対する置換基としてセリンが好まれる。下記の実施例において実証されるように、システイン残基を、架橋結合目的のために、ポリペプチドのアミノ酸配列の中に導入してもよい。システイン残基を導入する場合、アミノ末端またはカルボキシ末端、またはその近傍における導入が好ましい。このようなアミノ酸配列修飾のためには、対象ポリペプチドが、化学的合成によって生産されたものであろうと、または、組み換えDNAの発現によるものであろうと、従来法の利用が可能である。
【0035】
二つの構成成分の結合は、結合または接合剤を介して実現することが可能である。利用が可能な、分子間架橋試薬はいくつかある。例えば、Means and Feeney,CHEMICAL MODIFICATION OF PROTEINS,Holden−Day,1974,pp.39−43を参照されたい。これらの試薬の中でも、特に、例えば、J−スクシニミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、またはN,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド(いずれも、スルフヒドリル基に対して高度の特異性を有し、不可逆結合を形成する);N,N’−エチレン−ビス−(ヨードアセトアミド)、または、6から11個の炭素メチレン架橋を有する、他の同様の試薬(スルフヒドリル基に対し比較的高い特異性を有する);および、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(アミノおよびチロシン基と不可逆結合を形成する)が挙げられる。この目的のために有用な、その他の架橋試薬としては:p,p’−ジフルオロ−m,m’−ジニトロジフェニルスルフォン(アミノおよびフェノール基と共に不可逆結合を形成する;ジメチルアジプイミデート(アミノ基に対して特異的である);フェノール−1,4−ジスルフォニルクロリド(主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネート、またはジイソチオシアネート、またはアゾフェニル−p−ジイソシアネート(主にアミノ基と反応する);グルタールアルデヒド(いくつかの異なる側鎖と反応する);および、ジスジアゾベンジジン(主にチロシンおよびヒスチジンと反応する)が挙げられる。
【0036】
架橋試薬は、ホモ二官能性であってもよい、すなわち、同じ反応を経過する二つの官能基を有していてもよい。好ましい、ホモ二官能性架橋結合試薬は、ビスマレイミドヘキサン(“BMH”)である。BMHは、二つのマレイミド官能基を含み、これらの官能基は、穏やかな条件(pH6.5−7.7)下で、スルフヒドリル含有化合物と特異的に反応する。この二つのマレイミド基は、炭化水素鎖によって接続される。したがって、BMHは、システイン残基を含むポリペプチド同志の、不可逆性架橋結合のために有用である。
【0037】
さらに、架橋結合試薬は、ヘテロ二官能性であってもよい。ヘテロ二官能性架橋結合剤は、二つの異なる官能基、例えば、アミン反応基およびチオール反応基を有し、これらの反応基は、それぞれ、遊離アミンおよびチオールを有する二つのタンパクを架橋結合する。ヘテロ二官能性架橋剤の例としては、スクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(“SMCC”)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(“MBS”)、および、MBSの長鎖模倣物である、スクシニミド4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(“SMPB”)がある。これらの架橋剤のスクシニミジル基は、一次アミンと反応し、チオール反応性マレイミドは、システイン残基のチオールと共有結合を形成する。
【0038】
架橋結合試薬は、多くの場合、水に対して低溶である。水溶性を向上させるために、スルフォン酸基などの親水性成分をこの架橋結合試薬に加えてもよい。スルフォ−MBSおよびスルフォ−SMCCは、水溶性のために修飾された架橋結合試薬の例である。
【0039】
多くの架橋結合試薬は、細胞条件下では事実上切断不能な接合体を生成する。しかしながら、ある架橋結合試薬は、細胞条件下で切断が可能な共有結合、例えば、ジスルフィドを含む。例えば、トラウト試薬、ジチオビス(スクシニミジルプロピオネート)(“DSP”)、およびN−スクシニミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(“SPDP”)は、周知の、切断可能な架橋結合剤である。切断可能な架橋結合試薬の使用は、標的細胞内部への搬送後、荷役成分が輸送ポリペプチドから分離されることを可能とする。直接的ジスルフィド結合も有用である場合がある。
【0040】
前述のものを含め、多くの架橋結合試薬が市販されている。それらの使用に関する詳細な案内は、供給業者から簡単に入手することが可能である。タンパク架橋結合体および接合体調製に関する一般的参考文献は:Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING,CRC Press(1991)である。
【0041】
化学的架橋結合は、スペーサーアームの使用を含んでもよい。スペーサーアームは、接合される成分の間に分子間屈曲性を実現したり、または、分子間距離を調整し、そうすることによって生物活性の保存を助ける。スペーサーアームは、スペーサーアミノ酸、例えば、プロリンを含む、ポリペプチド成分の形状を取ってもよい。それとは別に、スペーサーアームは、架橋結合試薬、例えば、「長鎖SPDP」(Pierce Chem.Co.,Rockford,IL.,cat.No.21651H)の一部となってもよい。
【0042】
BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、またはそれらの組み合わせから成るポリマーであることが可能である。例えば、各種実施態様において、ペプチドは、Dレトロ−インベルソ(retro−inverso)ペプチドである。この「レトロ−インベルソ異性体」という用語は、その異性体では、配列の方向が逆転し、かつ、各アミノ酸残基のキラリティが翻転する直線的ペプチド異性体を指す。例えば、Jamesonら、Nature,368,744−746(1994);Bradyら、Nature,368,692−693(1994)を参照されたい。D−エナンチオマーと逆転合成を組み合わせて得られる最終結果は、各アミド結合におけるカルボニル基およびアミノ基の位置は交換されるが、一方、各アルファ炭素における側鎖基の位置は保存される、ことになる。特に指定して別様に言明しない限り、本発明の任意のL−アミノ酸配列は、対応する天然のL−アミノ酸配列の配列逆転を合成することによって、Dレトロ−インベルソペプチドに変換してもよいことが想定される。
【0043】
それとは別に、BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドは、環状ペプチドである。環状ペプチドは、従来技術で既知の方法によって調製される。例えば、巨視的環形成は、多くの場合、ペプチドのN−末端とC−末端の間、側鎖とN−末端、またはC−末端と間[例えば、pH8.5においてKFe(CN)によって](Samsonら、Endocrinology,137:5182−5185(1996))、または、二つのアミノ酸側鎖の間、にアミド結合を形成することによって実現される。例えば、DeGrado,Adv Protein Chem,39:51−124(1988)を参照されたい。
【0044】
BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドは、近代的クローン技術を用いて簡単に調製されるが、あるいは、固体法、または部位指向性突然変異発生法によって合成してもよい。ドメインBH3ペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドは、ポリペプチドの、優勢ネガティブ形を含んでもよい。一実施態様では、天然BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドは、標準的タンパク精製技術を用いる、適切な精製スキームによって、細胞、または組織供給源から単離することが可能である。別の実施態様では、BH3ドメインポリペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドは、組み換えDNA技術によって生産される。組み換え発現に代わるものとして、BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドは、標準的ペプチド合成技術を用い化学的に合成することが可能である。
【0045】
「単離された」、または「精製された」タンパク、または、生物学的活性を有する、その部分は、細胞物質、または、それから該BH3ドメインペプチドが得られた、細胞または組織供給源由来の、他の汚染性タンパクを事実上含まないか、または、化学的に合成される場合は、化学的前駆体、または他の化学薬品を事実上含まない。「細胞物質を事実上含まない」という言語は、それから単離されるか、または組み換え的に生産される細胞の細胞内成分から分離される、BH3ペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドの調製品を含む。一実施態様では、「細胞物質を事実上含まない」という言語は、約30%(乾燥重量による)未満の、非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチド(本明細書では、「汚染性タンパク」とも呼ぶ)、より好ましくは、約20%未満の、非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチド、さらに好ましくは、約10%未満の、非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチド、もっとも好ましくは、約5%未満の、非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチドを有する、BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドの調製品を含む。BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチド、または生物学的活性を有するその部分が組み換え的に生産される場合、それは、培養媒体を事実上含まないこと、すなわち、培養媒体の量が、タンパク標本の容量の約20%未満であることが好ましく、より好ましくは約10%未満、もっとも好ましくは約5%未満である。
【0046】
「化学的前駆体または他の化学薬品を事実上含まない」という言語は、BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドの調製品において、該タンパクが、化学的前駆体、または、該タンパクの合成に与る他の化学薬品から分離されている調製品を含む。一実施態様では、「化学的前駆体または他の化学薬品を事実上含まない」という言語は、約30%(乾燥重量による)未満の、化学的前駆体、または非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチド化学薬品、より好ましくは、約20%未満の、化学的前駆体、または非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチド化学薬品、さらに好ましくは、約10%未満の化学的前駆体、または非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチド化学薬品、もっとも好ましくは、約5%未満の化学的前駆体、または非BH3ドメインペプチドおよび/または非伝達ドメインペプチド化学薬品を有する、BH3ドメインペプチドおよび/または伝達ドメインペプチドの調製品を含む。
【0047】
「生物学的に等価」という用語は、ヒト、ラット、またはマウス供給源のcDNAライブラリー、または、組み換え発現システムから生産されるcDNAライブラリーにおいて特定される配列から導かれるBH3ドメインポリペプチドと、必ずしも同程度である必要はないが、同じアポトーシス修飾作用、すなわち、シトクロムCの放出、またはBAKオリゴマー形成作用の内のいくつか、またはそれらの全てを示すことが可能な本発明の組成物を意味することが意図される。
【0048】
保存率パーセントは、二つの残基が保存的置換を表す位置(PAM250残基重み表において0.3以上の対数オッズ値を持つものと定義される)のパーセントに対し、同一残基のパーセントを加えることによって、前述の整列から計算される。保存は、同一性比較のために上に示した配列に対して参照される。この要件を満たす、保存的アミノ酸変化は:R−K;E−D,Y−F,L−M;V−I,Q−Hである。
【0049】
BH3ドメインペプチドは、BH3ドメインペプチドのハイブリッドおよび修飾形を含むことが意図される、BH3ドメインペプチドの誘導体を含むことが可能である。この誘導体は、融合タンパク、およびBH3ドメインペプチドの断片、および、ハイブリッドまたは修飾形がBH3ドメインペプチドの生物活性を保持する限り、ハイブリッド、および、いくつかのアミノ酸が欠失または置換される修飾形、および、一つ以上のアミノ酸が、修飾アミノ酸または異常アミノ酸に変えられる修飾形、およびグルコシル化などの修飾形を含む。生物活性を保持するとは、例えば、組み換え的に生産することが可能な、ヒトまたはマウスにおいて特定される天然のBH3ドメインポリペプチドのものと、必ずしも同レベルの強度をもって誘発されなくともよいが、細胞死が、そのBH3ポリペプチドによって誘発されることを意味する。誘発、および刺激という用語は、本明細書を通じて相互交換的に使用される。
【0050】
好ましい変異体とは、一つ以上の、必須ではないと予測されるアミノ酸残基において、保存的アミノ酸置換を実行させたものである。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基によって置換される置換である。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、既に従来技術において定義済みである。そのようなファミリーとして、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このようにして、BH3ドメインポリペプチドの、必須ではないと予測されるアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基によって置換される。それとは別に、別実施態様では、例えば、飽和突然変異発生法によって、BH3コード配列の全てか、または一部に、突然変異を導入することが可能であり、得られた突然変異体をスクリーニングし、活性を保持する変異体を特定することが可能である。
【0051】
さらに、事実上相同の意味の中に含まれるものは、本明細書に記載されるBH3ドメインペプチドに対する抗体との交差反応性に基づいて単離される、任意のBH3ドメインペプチドか、または、ゲノムDNA、mRNA、またはcDNAを含む、そのコードヌクレオチド配列が、本明細書に記載されるBH3ドメインペプチド、またはその断片の、ゲノム、またはサブゲノムヌクレオチド配列、またはcDNAの、相補配列によるハイブリダイゼーションによって単離される、任意のBH3ドメインペプチドである。
【0052】
下記の非限定的実施例において、本発明はさらに具体的に説明される。
【実施例】
【0053】
実施例1
一般的方法
試薬
ABT−737、および、BCL−2ファミリーメンバーに対してより低い親和性を持つ、その陰性コントロールエナンチオマーを、Abbott Laboratories(Oletersdorf T,2005)より入手した。
【0054】
GST−プルダウン
10ugのGST−BCL−w(または、BH3結合欠陥性R96P点突然変異体)を、結合バッファー(140mM NaCl、10mM Tris、pH7.4)において、4℃で1時間グルタチオンアガロースビーズと共にインキュベートした。ビーズを洗浄し、4℃で1時間0.2ugのtBIDとインキュベートした。再びビーズを洗浄し、4℃で1時間ペプチドとインキュベートした。tBIDタンパクを、50mMグルタチオンによってビーズから溶出し、変性NuPAGEゲルに負荷した。
【0055】
シトクロムcの放出
ミトコンドリアは、肝臓およびFL5.12細胞から前述のように精製した(Letaiら、2002)。ミトコンドリアは、FL5.12細胞について前述したように白血病細胞および2B4細胞から精製した。ミトコンドリアは、処理物と、45分(マウス肝臓ミトコンドリア)、および35分(FL5.12、2B4、および白血病ミトコンドリア)インキュベートした。シトクロムcの放出は、処理後、ELISA(R&D systems)によって定量した、ペレットおよび上清におけるシトクロムcの比較によって定量した。複数実験の結果を平均する場合、溶媒のみ(DMSO)処理による結果の値を、各結果から差し引き、0放出は、溶媒単独処理において観察される値を反映するようにした。
【0056】
それとは別に、ミトコンドリアは、以前に記載したように(Letaiら、2002)、単離されたばかりのCLL細胞および細胞系統から、機械的破壊、次いで差動遠心によって精製した。ミトコンドリア縣濁液は、0.1mg/mlを用いた、ABT−737および陰性コントロールエナンチオマー処理の場合を除き、0.5mgタンパク/mlに調製した。シトクロムcの放出は、ELISA(R&D systems)によって定量した、ペレットおよび上清におけるシトクロムcの比較によって定量した。
【0057】
ペプチド
ペプチドは、Tufts University Core Facilityが合成し、HPLCで精製した。その構造は、質量分析によって確認した。保存液は、DMSO液として作製した。蛍光偏光のために使用されるペプチドは、N−末端蛍光タグ、および6−アミノヘキサン酸リンカーを備えるように合成された。配列は、げっ歯類BAD(LWAAQRYGRELRRMSDEFEGSFKGL(配列番号4))(Kelekarら、1997)、BADmu(LWAAQRYGREARRMSDEFEGSFKGL(配列番号13)、BCL−2に対する結合を中絶する点突然変異L−>Aに注意)(Zhaら、1997)、NOXA A(AELPPEFAAQLRKIGDKVYC(配列番号6))(Odaら、2000)、BMF(HQAEVQIARKLQLIADQFHR(配列番号11))(Puthalakathら、2001)、およびヒトBID(EDIIRNIARHLAQVGDSMDR(配列番号1))(Wangら、1996),BIM(MRPEIWIAQELRRIGDEFNA(配列番号2))(O’Connorら、1998)、BIK(MEGSDALALRLACIGDEMDV(配列番号5))(Boydら、1995)、BNIP3−α(VVEGEKEVEALKKSADWVSD(配列番号9))(Yasudaら、1999),hari−kiri(HRK)(SSAAQLTAARLKALGDELHQ(配列番号8))(Inoharaら、1997)およびPUMA(EQWAREIGAQLRRMADDLNA(配列番号10))(Nakano and Vousden,2001)の公刊配列から採用した。
【0058】
組み換えタンパク
アンチ・アポトーシスタンパクは、細菌で発現させ、以前に記載したように(Letaiら、2002)グルタチオンアガロース(GST結合タンパクのために)を用いるか、または、メーカー(Qiagen)のプロトコールにしたがってニッケルNTAアガロースビーズ(His−タグ付きMCL−1のために)によってアフィニティー精製した。選ばれたサンプルは、さらに、陰イオン交換FPLCによって精製し、変性ゲルのクーマシーブルー染色によって判断する限り十分な純度を得た。いずれの場合も、水溶液における可溶性を維持するために、C−末端膜貫通ドメインを切断短縮した。結合アッセイのために、GST−結合タンパクを、BCL−2、BCL−XL、BCL−w、およびBFL−1のために用い、HisタグMCL−1を用いた。ミトコンドリアアッセイでは、MCL−1を除いては同じタンパクを用い、MCL−1の場合は、GST−結合タンパクを用いた。GST−MCL−1、GST−BFL−1、およびGST−BCL−wを発現する構築体は、Tilman Oltersdorfの恵与によるものであり、HisタグMCL−1構築体は、Ruth Craigの恵与によるものであった。それぞれについて、ヒトの配列を用いた。組み換えtBIDは、以前に記載したようにして作製した。この組み換え体は、二重の、システイン−>セリン置換を含むが、これは、シトクロムc放出を誘発する野生型の能力を維持する(Ohら、2005)。
【0059】
蛍光偏光結合アッセイ
結合アッセイは、以前に記載した通りに(Letaiら、2002)蛍光偏光を用いて行った。最低3回の独立実験を用いて各解離定数を決定した。BIM BH3転移アッセイでは、結合バッファーに溶解した0.5uM GST−BCL−2、または0.1uM GST−MCL−1に対し、25nMフルオレセイン結合BIM BH3ペプチドを結合させた。次に、NOXAまたはBAD BH3ペプチドを滴定し、BIM BH3の転移を、蛍光偏光の消失で監視した。
【0060】
免疫沈降
細胞溶解物を、1%CHAPSバッファー(5mMリン酸ナトリウム、pH7.4;2.5mM EDTA;100mM塩化ナトリウム;1%w/vCHAPSに、プロテアーゼ阻害剤添加(完全錠剤;Roche))において、6C8ハムスター抗ヒトBCL−2抗体(3ug)と共に、室温で少なくとも1時間インキュベートした。プロテインA−セファローズビーズ(Sigma)を加え、BCL−2を含む複合体を沈殿させた。このビーズを、上清をゲルに負荷させる前に、負荷バッファーと混合した。FLAG−MCL−1免疫沈降のために、2B4細胞を、100nMデキサメタゾンによって24時間処理し、1%CHAPSバッファーにおいて分解させた。250ugのタンパク溶解物を、抗FLAG抗体接合アガロースビーズ(Sigma)と4℃で1時間インキュベートした。タンパクを、洗浄されたビーズから、2.5ugのFLAGペプチドによって溶出した。溶出液を変性ゲルに負荷し、電気泳動に備えた。
【0061】
それとは別に、細胞溶解物(250μg)を、0.1%Triton−X100バッファーにおいて、6C8ハムスター抗ヒトBCL−2抗体(3μg)と4℃で少なくとも1時間インキュベートした。ビーズを負荷バッファーと混合し、次いで、上清を、10%ビス−トリスポリアクリルアミドゲルに負荷し、分析した。転移反応のために、50μgの溶解物を、0.1%Triton−X100バッファーまたはCHAPSバッファーにおいて、3μgの6C8 BCL−2抗体と4℃において少なくとも1時間インキュベートした。プロテインA−セファローズビーズを加え、1時間インキュベートした。次に、ビーズをペレットとし、3回洗浄し、HEバッファー(1mM EDTA、および10mM HEPES、pH7.4、(Chipuk et al.2004)の記載の通り)に再縣濁した。この試験管に、1μM ABT−737、1μM陰性コントロールエナンチオマー、またはDMSOを加え、一晩インキュベートした。上清を、10%ビス−トリスポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)に負荷し、分析した。
【0062】
イムノブロット
タンパク溶解物を、1%CHAPSバッファーにおける細胞分解によって得た。タンパクサンプルを、10%ビス−トリスポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)によるNuPAGEにおいて分画した。膜上の下記のタンパクを検出するために抗体を用いた:BIM(Calbiochem,22−40);BCL−2(Pharmingen,/100);PUMA(Prosci,NT);ウサギポリクロナール抗げっ歯類BID(Wangら、1996);BAK(Santa Cruz,N−20);アクチン(Chemicon,MAB1501);CD−40(Pharmingen,HM40−3);MCL−1(Rockland)。BAXオリゴマー形成は、以前に記載した通りに行った(Letaiら、2002)。
【0063】
それとは別に、タンパク溶解物は、Triton−X100(142.5mM NaCl、5mM MgCl2、10mM HEPES、1mM EGTA、0.1%Triton−X100(Sigma))、RIPA(150mM NaCl、2mM EDTA、0.1M Na2HPO4pH7.2、0.2mM NaVO4、50mM NaF、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、および%NP−40(Sigma))、またはCHAPS(100mM NaCl、5mM NaPO4、2.5mM EDTA、1%CHAPS(Sigma))バッファーで、完全プロテアーゼ阻害剤混合錠剤(Roche)添加バッファーにおける細胞分解によって得た。タンパクサンプルは、10%ビス−トリスポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)によるNuPAGEにおいて電気泳動的に分離した。膜上の下記のタンパクを検出するために抗体を用いた:BIM(Calbiochem,22−40、またはAbgent BH3ドメイン);BCL−2(Pharmingen,/100);MCL−1(Chemicon,RC−13)。
【0064】
アネキシン−Vアッセイ
細胞を、アネキシンV(BioVision)およびヨウ化プロピジウムから成る蛍光接合体によって染色し、FACSCalibur機(Becton−Dickinson)において分析した。
【0065】
ヒト細胞の単離および短期培養
ヘパリン処理試験管に納めた15mlの血液を、各CLL匿名患者から得、凍結することなく処理した。等量の培養液(RPMI培養液、10%ヒトウシ血清、10μg/mlインスリンおよび10mg/mlトランスフェリン添加)を、各サンプルと混ぜ合わせ、CLL細胞を、Ficoll−PAQUE Plus(Amersham)の遠心によって単離した。細胞を培養液にて2回洗浄し、2.0×106細胞/mlの密度となるように最大48時間培養した。図11Aのサンプルは、WBC>50,000/μlの、24名の連続患者から得た。IRBプロトコール#99−224(Dana−Faber Cancer Institute)にしたがって、全てのガイドラインおよび規制に従った。正常PBMCを、匿名の正常ドナーによる血小板献血後に捨てられた管から得、インスリンおよびトランスフェリン無添加で培養したことを除いては、前述の通りに処理した。
【0066】
CLL臨床基準
FISH分析は、多色プローブセットから成るCLLパネル(Vysis,Inc.)(Dohnerら、2000)を用い、Brigham and Women‘s Hospital cytogenetics laboratoryが行った。CLL細胞を処理し、IgVHおよびZAP70状態は、以前に確立された方法(Rassenti et al.2004)を用い、CLL Research Consortium Tissue coreが判定した。IgVH座位における体性超突然変異は、生殖系統に対し>98%相同性が測定された場合、不在に分類された。患者サンプルは、>20%細胞が陽性の場合、ZAP70陽性と分類され、>30%細胞が陽性の場合、CD38陽性と分類された。複数骨髄腫細胞培養体LP1およびL363細胞(Ruben Carrascoの恵与による)を、10%ウシ胎児血清添加Iscove改変Dulbecco培養液において培養した。
【0067】
細胞培養
FL5.12細胞は、10%WEHI−3Bサプリメント(IL−3分泌性WEHI−3B細胞の上清)によって供給されるIL−3添加、または無添加の、Iscove改変Dulbecco培養液、10%ウシ胎児血清、1000ug/mlG418において、以前に記載した通りに培養した。FL5.12細胞に、ネオマイシン耐性構築体、およびヒトのBCL−2 cDNA(FL5.12−BCL−2)、または、挿入体無し(wt)のいずれかを含むベクターを安定にトランスフェクトした。2B4細胞を、10%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン、100ug/mlストレプトマイシン、10uM非必須アミノ酸、および8ul/Lのベータメルカプトエタノールを添加した、RPMI1640において培養した。pLZR−GFPレトロウィルスベクター、またはFlag−Mcl−1含有ベクター(Joe Opfermanの恵与による)によるトランスフェクション後、安定にトランスフェクトされた2B4細胞を単離した。
【0068】
カスパーゼ抑制実験
10細胞/mLのNeoまたはBCL−2FL5.12細胞を、IL−3を含む培地の上にプレートするか、または、2.0×10細胞/mLの細胞を、1XPBSで2回洗浄し、IL−3無添加培地にプレートし、24時間インキュベートした。カスパーゼ阻害剤を投与された細胞は、全ての追加の処理前に、200μMのZVAD.fmk(Calbiochem)と共に1時間インキュベートした。細胞を、1μM ABT−737またはNCEで、指示にしたがって、30分、1、2、3、または4時間処理し、次に、アネキシン−V/PIで染色し、アポトーシス状態を評価した。タンパク分析のために、細胞を収集し、1X PBSで洗浄し、1%CHAPSバッファーにおいて溶解物を調製した。10ugを、10%ビス−トリスタンパクゲルに負荷した。得られた免疫ブロットを、切断および未切断PARPタンパクの両方を認識する、抗PARP抗体(BioVision)によって探査した。
【0069】
BAXオリゴマー形成
10の、単離されたばかりのCLL細胞を、DMSO、10nM、100nM、または1μMのABT−737、または、陰性コントロールエナンチオマーと4時間インキュベートし、%細胞死をアネキシンV染色およびFACS分析によって評価し、次いで、0.3%サポニンおよび10μM BMHによって氷上で30分処理した。次に、細胞を分解し、10%ビストリスポリアクリルアミドゲルに負荷し、展開し、BAXを求めて免疫ブロットした。
【0070】
マウス
白血病傾向マウスを、以前に記載した通りに生成した(Letai,2004)。マウスの実験プロトコールは、関連規制基準に合致しており、Dana−Farber Cancer Institute Animal Care and Use Committeeの承認を得た。
【0071】
統計学的分析
異なるCLLサンプルから得られた溶解物またはミトコンドリアを用いて、複製実験を実行した。P値が与えられる主要データ体では、スチューデントの両側t−検定によってP値を得、P<0.05を統計的に有意と見なした。非線形用量−反応曲線適合によってEC50値を決めるために、かつ、表5におけるMann−Whitneyのノンパラメトリック検定を実行するために、GraphPad Prismソフトウェアを用いた。
【0072】
(実施例2)
アンチ・アポトーシスタンパクは、感作物質BH3ペプチドに対する結合について差別的プロフィールを示す
アンチ・アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーと、BH3単独タンパクのBH3ドメインとの間の相互作用における選択性を決めるために、蛍光偏光結合アッセイ(FPA)を用いた。アンチ・アポトーシスタンパクBCL−2、BCL−XL、MCL−1、BCL−w、およびBFL−1を、トランスフェクト細菌から、GST融合タンパクとして精製した。BH3ドメインは、表2aに示すように、20−25マーとして合成した。FPAのために用いられるオリゴペプチドは、N−末端FITC成分によって標識された。表2bは、解離定数によって結合を定量する。
【0073】
【表2】

アンチ・アポトーシスファミリーメンバーは、個々のBH3ドメインに対する親和度に基づいて相互に区別することが可能であることが直ちに注目される。例えば、BCL−XLは、HRK BH3に対するはるかに大きい親和度によって、BCL−2およびBCL−wから区別される。それ以外の点では、BCL−2、BCL−XL、およびBCL−wの結合パターンの間には定量的違いがあるが、その定性的結合パターンはまったく類似する。これは、これら三つの分子の疎水性結合ポケットの類似性を示唆する。
【0074】
この群とは対照的に、MCL−1は、BAD BH3に結合しない。これは、プルダウン(Opfermanら、2003)、酵母2ハイブリッド(Leoら、1999);および、表面プラズモン共鳴(Chenら、2005)アッセイによって生成されるデータと一致する。げっ歯類NOXAは、二つの、5推定BH3ドメイン(Odaら、2000)を有するという点で、既知のBH3単独タンパクの中で特異である。他の四つのタンパクが、試験したNOXA BH3ドメインのいずれとも相互作用を持たないのに、MCL−1は、その両方と相互作用を持つのが注目される。このことは、NOXAとMCL−1の間の相互作用が、実際に生物学的に有意味であることを示唆する。BH3の両ドメインと結合可能であることは、MCL−1とげっ歯類NOXAの間に新規の、マルチマー相互作用のある可能性か、または、それとは別に、NOXAにおける二つのBH3ドメインの暴露に対し差別的調節のあることを示唆する。
【0075】
さらに異なるのはBFL−1である。このものはBIDおよびBIMには結合するが、試験した感作物質の中ではPUMAのみに結合する。さらに、活性化因子BIDおよびBIM BH3は、試験したアンチ・アポトーシス因子全てによって結合されることが注目される。これは、PUMAを除いて、比較的選択的な結合パターンを示す感作物質と異なる。さらに注目されるのは、BNIP−3αから得られたBH3ドメインが、試験したタンパクのどれとも結合せず、BAXまたはBAKも活性化しないことである。BNIP BH3が、未試験の、複数ドメインのプロ、またはアンチ・アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーと相互作用を持つ可能性を排除することはできないが、BNIP−3αが、BH3−ファミリーメンバーとしては全く機能しないこともあり得る(Rayら、2000)。
【0076】
(実施例3)
個々のアンチ・アポトーシスタンパクに対する依存性は、感作物質BH3ペプチドに対する感受性パターンから導くことが可能である;アンチ・アポトーシスタンパクの抑制は、活性化因子tBIDが存在しない場合、MOMPには不十分である。
【0077】
以前の結果から、BIDおよびBIMのBH3ドメインは、精製ミトコンドリアシステムにおいて、BAXおよびBAKオリゴマー形成およびシトクロムcの放出を誘発する能力を持つことが示された(Letaiら、2002)。このクラスをBH3ドメイン「活性化因子」と呼ぶ。BADおよびBIKのBH3ドメイン(「感作物質」と名づける)は、それ自体では、シトクロムcの放出を誘発できなかった。しかしながら、活性化因子が、BCL−2によって結合、隔離され、そのため、活性化因子と、BAXまたはBAKとの相互作用が阻止されると、感作物質は、活性化因子のBCL2結合を競合的に抑制することによって活性化因子を遊離させ、ミトコンドリアアポトーシスを刺激して、BAXまたはBAKオリゴマー形成をさせ、シトクロムcの放出を誘発する。このようにして、二つの増感性BH3ドメインは、BCL−2アンチ・アポトーシス機能に対する拮抗因子であることが示された。BCL−2機能に拮抗する能力は、BCL−2に対する高親和性結合と相関した。
【0078】
上の表1bでは、本実験で試験したBH3ドメインの拡張範囲は、アンチ・アポトーシスタンパクに対しはっきりと異なる結合パターンを示す。選択的結合が、個々のBH3ドメインの有する、アンチ・アポトーシス機能に選択的に拮抗する能力に対応するかどうかを試験するために、アポトーシス決定臨界分子機構が再構成される、精製ミトコンドリアシステムを構築した。活性化因子機能のために、カスパーゼ8切断BIDタンパク、tBIDを用いた。tBIDは、精製ミトコンドリア(Weiら、2000)、および合成リポソーム(Kuwanaら、2005;Kuwanaら、2002)において、BAX/BAKオリゴマー形成およびシトクロムc放出を誘発することが可能な原型活性タンパクである。tBIDによる、シトクロムc放出、およびアポトーシスの誘発には、BAXまたはBAKが必要である(Chengら、2001;Weiら、2001)。複数ドメインプロ・アポトーシス機能は、マウス肝臓のミトコンドリアに貯留するBAKによって実現される;マウス肝臓のミトコンドリアは、検出可能なBAXタンパクを含まない(Letaiら、2002)。優勢アンチ・アポトーシス機能は、結合アッセイで使用された、6通り、5種の異なる組み換えアンチ・アポトーシスタンパクの内の一つによって実現した。BH3ペプチドは、増感機能を実現した。
【0079】
シトクロムcの放出は、システムの読み取り値であるので、ペプチドがそれ自体で、活性化因子BIDまたはBIM BH3のように、マウス肝臓のミトコンドリアにおいてシトクロムcを放出するかどうかを試験することが重要である(Letaiら、2002)。図1Aは、感作物質のBH3ペプチドのいずれも、図1B−Fで使用されるものよりも10倍以上高い濃度においても、それ自体ではシトクロムcの放出を、背景レベルを顕著に超えて誘発することができないことを示す、確認アッセイである。このことは、BAD、BIK、NOXA AおよびNOXA BのBH3については、以前に示されていたが、HRK、BNIP、PUMA、およびBMF BH3ドメインについては新規所見である。
【0080】
後続パネルのそれぞれにおいて、tBIDによるシトクロムcの放出が示され、次いで、BCL−2(b)、BCL−XL(c)、BCL−w(d)、MCL−1(e)、またはBFL−1(f)のいずれかの添加によってシトクロムcの放出は抑制された。アンチ・アポトーシス保護に拮抗する、一連のBH3ドメインの能力を、シトクロムcの放出測定で定量した。注目すべきことに、いずれの場合も、アンチ・アポトーシス機能に拮抗する能力は、表1bの結合特異性にそのまま対応する。これは、表1bに明らかにされた結合パターンが生物機能に対応することの重要な確証である。
【0081】
増感ペプチドのみによる処理は、仮にそれが、試験したアンチ・アポトーシスタンパク全てに結合、拮抗するもの、例えば、PUMA、BH3、または、NOXAおよびBAD BH3の組み合わせによるものであっても、シトクロムcの放出をもたらすには不十分である(図1A)ことを強調することは重要である。さらに、一連の増感BH3ペプチドを、アンチアポトーシスタンパクBCL−XLの存在下に試験した場合、依然としてシトクロムcの回復は見られなかった。これは、BH3ペプチドが、何らかの形でアンチ・アポトーシスタンパクを直接プロ・アポトーシス機能に変換するという可能性を形式的に排除する。MOMPおよびシトクロムcの放出を誘発するためには、活性化因子機能、この場合はtBIDによって供給される機能が絶対必要条件であるようである。
【0082】
これらのデータは、これら一連のペプチドは、ミトコンドリアが、その完全性を維持するためにアンチ・アポトーシスタンパクに依存するかどうかを決定することが可能であることを決定的に証明する。さらに、決定的アンチ・アポトーシスタンパクの名前は、この一連の感作物質BH3ペプチドに対する感受性パターンに基づいて導くことが可能である。この戦略をBH3プロファイリングと名づける。
【0083】
(実施例4)
感作物質は、アンチ・アポトーシスタンパクから活性化因子を転移させる
感作物質BH3ペプチドは、それ自体はシトクロムcの放出を誘発できないが、活性化因子と、アンチ・アポトーシスタンパクとが、感作物質の、アンチ・アポトーシスタンパクに対する結合を模倣するパターンで存在する場合、シトクロムcの放出を誘発することが可能となることから、これらの感作物質は、アンチ・アポトーシスタンパクから活性化因子を転移することが仮定された。この仮説の一試験として、アンチ・アポトーシスBcl−wからtBIDを転移させる、増感ペプチドの能力を、GST−プルダウンアッセイを用いて調べた。グルタチオンアガロースビーズに結合したタンパクを、グルタチオンで溶出し、ウェスタンブロットで分析した。図3Aでは、tBIDは、BCl−wから、増感BH3ペプチドによって、図1Dのパターンそのままのパターンで転移させられる。補則試験として、BADおよびNOXA BH3ペプチドによる、活性化因子BIM BH3ペプチドの、BCL−2およびMCL−1からの転移を定量した。図3Bでは、表1bと一致して、BAD BH3は、BIM BH3を、BCL−2から効率的に転移させるが、MCL−1からはそうではなく、他方、NOXA A BH3 7は、BIMを、MCL−1から効率的に転移させるが、BCL−2からはそうではない。これらの実験は、感作物質BH3ペプチドが、活性化因子を、アンチ・アポトーシス結合間隙から転移させる能力を有することを支持する。
【0084】
(実施例5)
BCL−2に対する細胞内要求は、感作物質BH3パネルに対するミトコンドリア感受性の「BCL−2パターン」に一致する。
【0085】
個々のアンチ・アポトーシスタンパク機能に対するミトコンドリアの依存性が、細胞行動と相関するかどうかを試験するために、定義されたアンチ・アポトーシス依存性の細胞モデルを調べた。先ず、細胞生存のための、BCL−2に対する細胞要求が、図1Bに見られた増感BH3ドメインに対するミトコンドリア感受性の、BCL−2プロフィールと相関するかどうかを求めた。げっ歯類リンパ球前駆体のFL5.12細胞系統は、生存維持のためにIL−3を必要とする。IL−3排除によって誘発されるアポトーシスは、BCL−2の過剰発現によって抑制される(図4A)。したがって、IL−3を奪われて、BCL−2を過剰発現するFL5.12(FL5.12−BCL−2)細胞は、BCL−2依存性生存のモデルとなる。IL−3の存在下に増殖するFL5.12−BCL−2細胞は、BCL−2独立細胞の例となる。
【0086】
IL−3枯渇FL5.12細胞の、BCL−2に対する依存性は、図4Aにおいて遺伝学的に実証されるが、この依存性は、細胞浸透性BCL−2拮抗因子を用いて確かめられた。ABT−737は、BCL−2(および、BCL−XLおよびBCL−w)に対して拮抗することが示されている(Oltersdorfら、2005)。以前の報告と一致して、ABT−737は、IL−3枯渇細胞においては細胞死を誘発したが、IL−3充満BCL−2保護細胞では細胞死を誘発しなかった(図4B)。さらに、ABT−737は、ストレスを与えない、IL−3充満wtFL5.12細胞に対しては無毒であった。この細胞死はカスパーゼ依存性であり、これは、細胞死が、アポトーシス経路を通じて起こっていることを示す(図4C)。IL−3細胞は、化合物による処理の開始前24時間IL−3不在下に増殖させた。全ての細胞は、収集前24時間化合物で処理した。
【0087】
BCL−2依存性細胞システムの信頼性を確かめた後、次に、BCL−2依存性が、ミトコンドリアレベルで単離することが可能かどうかを決めた。IL−3の除去は、ミトコンドリア上のBCL−2に活性化因子BH3タンパクを「負荷する」であろうと仮定した。さらに、「負荷」BCL−2を担持するミトコンドリアは、BCL−2結合間隙を求めてBCL−2と競合する感作物質BH3ペプチドで処理した場合、シトクロムcを放出するであろうと仮定した。IL−3除去によって下ごしらえされたFL5.12−BCL−2細胞における、ABT−737によるBCL−2抑制は、カスパーゼ依存性で、きわめて速やかであった(図5)。IL−3枯渇FL5.12−BCL−2細胞は、死への「準備を整えている」とする解釈は、ABT−737処理後の、それらの細胞の速やかな死によって支持される(図5)。
【0088】
ミトコンドリアを、IL−3存在下のwtFL5.12細胞およびFL5.12−BCL−2細胞、および、IL−3枯渇24時間後のFL5.12−BCL−2細胞から単離した。IL−3枯渇後、アポトーシスが進行したため、wtFL5.12細胞からは、ミトコンドリアを十分量単離することができなかった。図6Aは、活性化因子BIDおよびBIMは、wtFL5.12細胞から単離されたミトコンドリアからシトクロムcの放出を強力に誘発するのに、残余の増感ペプチドは、そのような誘発を見せない(青色バー)ことを示す。したがって、アンチ・アポトーシスファミリーメンバーの抑制は、それ自体では、MOMPを誘発するのに十分ではない。次に、BCL−2の過剰発現は、以前に示した用量−反応曲線(赤色バー)(Letaiら、2002)と一致して、10μMのBID BH3によって誘発される放出は抑制するが、10μM BIM BH3によるものに対してはそうしない。しかしながら、IL−3を枯渇させたFL5.12−BCL−2細胞からのミトコンドリアを試験すると、いくつかの増感ペプチドは、シトクロムc放出誘発能力を示し(褐色バー)、かつ、10μM BID BH3に対する感受性も回復する。BCL−2に対して高い親和性を持つ増感ペプチドのみが、MOMPを引き起こすことはもっとも注目すべきことである。BIK BH3は、この背景ではシトクロムcの放出を誘発しないが、このものは、BCL−2に対し、その親和度が、BAD、PUMA、またはBMF BH3のものよりも約10倍低いことに注意しなければならない。したがって、細胞のBCL−2依存性は、この一連の増感BH3ペプチドに対するミトコンドリアの感受性パターンから「診断する」ことが可能であることが見て取れる。この依存性によって、関与する活性化因子が、図1の場合のように組み換えタンパクであるか、あるいは、恐らくIL−3除去後の場合がそうであろうと思われるが、一つを超える分子を含む、より複雑な混合物であるかを「診断する」ことが可能である。増感ペプチドの必ずしも全てがIL−3充満FL5.12−BCL−2ミトコンドリアにおいて放出を誘発することができるわけではないことからみ見て取れるように(図6A)、BCL−2の抑制だけでは、シトクロムc放出を誘発するのに十分ではないことに注意すべきである。事実、広範囲のアンチ・アポトーシスタンパク結合を実現するペプチド同士、BADおよびNOXA BH3の組み合わせは、活性化分子の不在下では、シトクロムc放出を誘発することができない(図6B)。MOMPを誘発するためには、先ず、IL−3除去によって生成される、細胞死シグナルを通信する分子によって、BCL−2の「準備を整えさせ」なければならない。IL−3不在下に24時間育成したFL5.12−BCL−2細胞から単離されたミトコンドリアを、NOXAまたはBADペプチド(30uM)、または10uMのコントロールエナンチオマーで35分処理した。ミトコンドリアペレットに対し、以前に記載したように(Letaiら、2002)化学的架橋結合を行った。BCL−2は、BAXオリゴマー形成の上流ではアポトーシスを阻止し、IL−3枯渇ミトコンドリアに対するBCL−2作用の、BAD BH3およびABT−737による抑制は、BAXオリゴマー形成をもたらす(図6C)。したがって、この細胞死シグナルは、活性化因子BH3タンパクである可能性のあることが仮定された。
【0089】
BIMは、以前に、FL5.12細胞において、IL−3除去後の細胞死に関与することが示された(Haradaら、2004)。図6Dは、細胞内の全体BIMレベルだけでなく、BCL−2と複合体形成するBIMのレベルも、IL−3除去後急激に増加することを示す。BCL−2、BAX、およびBAKのレベルが、同じ期間ほぼ定常であることに注意すべきである。これらの結果から、活性化因子BIM(および、恐らくPUMAも)は、FL5.12細胞においてIL−3除去後、細胞死反応の動的介在因子となること、および、該活性化因子は、アポトーシス阻止のために隔離されることが示唆される。次に、「負荷」BCL−2を担持する細胞およびミトコンドリアは、BCL−2に「耽溺依存」し、BCL−2機能が拮抗されると死を遂げる。さらに、細胞のBCL−2依存は、感作物質BH3ドメインに対するミトコンドリアの感受性パターンによって診断することが可能である。IL−3枯渇FL5.12−BCL−XL細胞の分解産物に対する、抗ヒトBCL−2抗体による免疫沈降の陰性コントロールは、図示のように、バンドを全く生成しなかった。
【0090】
このモデルから、BCL−2は、活性化因子BH3分子を遮断することによって、BAX活性化の上流において作用すると予測される。この予測を試験するために、図6Eにおいて、N−末端エピトープを露出するBAXの活性形(Desagherら、1999;Hsu and Youle,1997)のみを認識する抗体による免疫沈降を実行した。wtまたはBCL−2発現FL5.12細胞を、表示のようにIL−3除去に暴露した。IL−3除去は、wt FL5.12細胞ではBAX活性化を誘発したが、一方、全体BAXレベルを定常なままであった。しかしながら、IL−3除去による細胞死に対してBCL−2保護される場合、BCL−2はさらに、BAXの立体配座変化も阻止した。これは、BCL−2が、BIMのような活性化因子を、それら因子がBAXと相関作用を持つ前に、隔離するという所見と一致する(第4および第8レーンを比較せよ)。さらに、ABT−737による処理は、シトクロムc放出およびBAX活性化を回復した。これは、ABT−737は、活性化因子をBCL−2から転移することによって機能するとする所見と一致する。以上まとめると、これらの結果は、BCL−2は、BAX活性化の上流でアポトーシスを阻止することを示す。
【0091】
(実施例6)
BH3プロファイリングは、MCL−1細胞依存性を、BCL−2細胞依存性から区別することを可能とする。
【0092】
このアンチ・アポトーシス「準備」モデルが、BCL−2以外の、他のアンチ・アポトーシスタンパクにも拡張が可能であるかどうかを試験するために、BCL−2によって保護される細胞の振る舞いを、MCL−2によって保護されるものと比較した。Flag−MCL−1、BCL−2、または空のベクター構築体によってトランスフェクトした2B4細胞を、表示濃度のデキサメタゾンの存在下に24時間培養した。このげっ歯類ハイブリドーマ2B4細胞系統は、デキサメタゾン処理に対し感受性を有する。FLAG標識MCL−1またはBCL−2の過剰発現は、デキサメタゾン誘発性アポトーシスに対し耐性を付与する(図7A)。したがって、FLAG−MCL−1発現細胞は、細胞のMCL−1依存性のモデルとなり、一方、デキサメタゾン処理の、BCL−2発現細胞は、細胞のBCL−2依存性のモデルとなる。2B4細胞を、デキサメタゾン、および、ABT−737またはエナンチオマーのいずれかと、24時間インキュベートした。MCL−1保護、デキサメタゾン処理細胞の、ABT−737による処理は、何の作用も示さなかった。これは、該細胞が、生存のためにBCL−2には依存しないことを示す。これと全く対照的に、BCL−2によってデキサメタゾン誘発性アポトーシスから保護される2B4細胞は、ABT−737に対し極めて高い感受性を有する(図7B)。
【0093】
細胞データから、デキサメタゾンで処理された、2B4−MCL−1細胞から単離されたミトコンドリアは、NOXA BH3に対しては感受性を持つが、BAD BH3に対しては感受性を持たないと考えられ、IL−3枯渇FL5.12−BCL−2細胞では、反対パターンが観察されると考えられるという予測が喚起される。デキサメタゾン処理、ベクターまたはFLAG−MCL−1トランスフェクト2B4細胞、未処理でベクタートランスフェクトまたはFLAG−MCL−1トランスフェクト細胞からミトコンドリアを単離した。デキサメタゾン処理ベクタートランスフェクト細胞からは、アポトーシスが進行しすぎてミトコンドリアの単離ができなかった。図7Cにおいて見て取れるように、MCL−1依存性細胞から単離されたミトコンドリアのみが、感作物質BH3ペプチドに対する感受性の「MCL−1パターン」を再現する。FL5.12細胞の場合と同様、感作物質BH3ペプチドは、未処理細胞ではシトクロムc放出をほとんど引き起こさないので、感作物質BH3ペプチドによる、MCL−1(および、そこに存在する可能性のある他のアンチ・アポトーシスタンパク)の抑制は、それ自体は、アポトーシスを誘発するのに十分ではないことは明らかである。MCL−1の「準備を整え」、それによって、感作物質によるMCL−1拮抗作用が、ミトコンドリアの可浸透性を招くことが可能となるためには、さらに、細胞死シグナル(この場合は、デキサメタゾン処理によって起動される)が必要とされる。この戦略の実効性を明らかにするために、デキサメタゾンで処理し、この度はBCL−2で保護した、2B4細胞に対し、BH3プロファイリングを実行した。この準備モデルと一致して、BCL−2パターンが明らかにされた(図7D)。したがって、BCL−2依存性と同様、MCL−1依存性も、感作物質BH3パネルに対するミトコンドリアの感受性によって「診断する」ことが可能である。
【0094】
FL5.12細胞の場合と同様、デキサメタゾン処理が、MCL−1およびBCL−2による、活性化因子BH3タンパクの隔離の増大をもたらすかどうかを求めた。ベクターまたはFLAG−MCL−1トランスフェクト2B4細胞を、0または100nMのデキサメタゾンで処理して、分解させた。図7Eから、FLAG−MCL−1は、BCL−2と同様(図7F)、デキサメタゾン処理によって誘発された細胞死シグナル伝達後、増加量のBIMを隔離することが示された。この処理の間、BAXおよびBAKのレベルは定常を維持していることに注意されたい。さらに、デキサメタゾンによる処理前に、細胞に結合していた少量のBAXが、処理後減少することにも注意されたい。一つの解釈は、BAXが、BCL−2に結合するBIMのレベルの増大によって転移させられたということである。これは重要である。なぜなら、このことは、MCL−1からのBAXの転移は、MOMPおよび細胞死を誘発するには不十分であることを示唆するからである。
【0095】
このミトコンドリアアッセイが、真の細胞依存性を反映することをさらに明らかにするため、あらかじめデキサメタゾンで処理した、FLAG−MCL−1トランフエクト2B4細胞に対し、電気穿孔によってペプチドをトランスフェクトした。これは、少なくとも一部はBIMによって輸送される細胞死シグナルによってMCL−1の準備を整えると想定される。殺作用パーセントを、アネキシンV染色によって確認した。NOXA Aのトランスフェクションによる殺作用は、BADによるものよりも有意に大きいことに注意されたい。この結果は、同じ細胞系統の単離ミトコンドリアにおいて観察された同じMCL−1パターンを再現する(図7G、表1b、図1e、図7Cと比較せよ)。N=3であり、誤差バーは標準偏差を表す。これらの結果は、ミトコンドリアBH3プロファイリンアッセイに対する細胞関与を支持する。
【0096】
(実施例7)
白血病におけるBCL−2への依存性は、「BCL−2パターン」およびBIM隔離において、感作物質に対するミトコンドリア感受性と一致する。
【0097】
アンチ・アポトーシスタンパクに対する依存性は、アンチ・アポトーシスBCL−2ファミリータンパクが、治療標的として徹底的調査の対象とされる癌関係分野において、恐らくもっとも重要であろう。発癌遺伝子依存の概念が、最近注目を集めているが(Jonkers and Berns,2004;Weinstein,2002)、特定の発癌遺伝子に対する依存の分子的詳細は、十分には理解されていない。発癌遺伝子依存の実証モデルである、BCL−2依存性げっ歯類白血病を用いて、BCL−2「依存」の分子的基礎を調べた。
【0098】
従来の結果は、c−mycは構成的に発現されるが、BCL−2の発現は抑えられる、マウス急性リンパ球白血病モデルを記載した。このモデルでは、BCL−2導入遺伝子の発現がドキシサクリンの投与によって除去されると、白血病細胞はアポトーシスを経過し、白血病の急速な寛解をもたらす(Letai,2004)。これは、BCL−2依存性癌の、理想的なインビボモデルを提供する。BCL−2に対する依存性は、IL−3枯渇FL5.12−BCL−2細胞のものと同じ機構によること、すなわち、細胞死シグナルは、活性化因子BH3分子によって起動され、運ばれるが、BCL−2が、該シグナルに結合し、該シグナルと、複数ドメインのプロ・アポトーシスタンパクとの相互作用を阻止することが仮定された。
【0099】
ミトコンドリアを、白血病細胞から単離し、感作物質BH3ペプチドに暴露した。次いで、シトクロムcの放出を測定した。それと平行して、内部コントロールとして、白血病マウスの肝臓からミトコンドリアを単離した(図8A)。増感BH3ペプチドは、正常マウスの非悪性肝臓(図1a)のミトコンドリア、および非悪性の、FL5.12細胞(図6A)または2B4細胞(図7C)のミトコンドリアからシトクロムcの放出を誘発することができなかったのと同様に、白血病マウスの非悪性肝細胞ミトコンドリアからシトクロムcの放出を誘発することができなかった。混乱的ではあるが、いくつかの増感BH3ペプチドは、白血病ミトコンドリアから全体に近いシトクロムcの放出を誘発することができた(図8B)。重要なことは、放出を誘発したペプチドのパターンが、BCL−2に高い親和度において結合したペプチド(表1b)と、すなわち、BAD、BIK、PUMA、およびBMFと正確に一致したことである。BCL−2に対するBAD BH3の親和度よりも、親和度が約10倍低いことと一致して、BIK BH3は、シトクロムc放出を発揮するために10倍高い濃度を要求することに注意されたい。NOXA Aペプチド濃度の10倍増加は、何の作用も示さなかった。これも、NOXA Aは、BCL−2に対しきわめて低い親和度しか持たないという所見と一致する。
【0100】
これらの結果から、細胞死シグナルは絶えず起動されるが、活性化因子BH3分子を隔離しアポトーシスを阻止するために、BCL−2が必要とされることが示唆される。上で試験した非悪性システムとは対照的に、白血病細胞BCL−2は、増殖因子除去またはデキサメタゾン処理などの介入をこれ以上要することなく、あたかも活性化タンパク(単複)によってすでに「準備が整えられている」かのように振舞う。図8Cは、BIMが、白血病細胞に発現されること、かつ、それがBCL−2によって結合されることを示す。このモデルにおいて、細胞死シグナル伝達におけるBIMシグナルの重要性を支持して、BIDも溶解物の中に存在するが、BCL−2によって結合されない。PUMAも、BCL−2によって結合されることが判明しており、これは、PUMA欠乏は、myc−誘発リンパ腫の発達を加速する可能性のあることを示す報告(Hemannら、2004)と一致することに注意されたい。PUMA BH3は、BAXまたはBAKを直接活性化する能力を欠くので、PUMAは、この状況では感作物質として作用し、結果的に、BIMとの結合に利用可能なBCL−2の量と、恐らくBAXまたはBAKの量を下げることが仮定された。
【0101】
もしもBCL−2が、主にBIMを隔離することによって、この白血病細胞の生存を維持するのであるなら、BIMの機能消失は、BCL−2の過剰発現の代りとなって、白血病発生においてc−mycと協力することが可能であろうと予測することができる。事実、この実験は既に行われた。BIM欠乏は、実際に、c−mycと協力して、BCL−2過剰発現がc−mycと協力することによって本実験でもたらされたものと同様の、Bリンパ球白血病の前駆状態をもたらすことが見出された(Egleら、2004)。これらの結果は、BCL−2が白血病の生存に必要とされる理由は主に、BCL−2がBIMを隔離し、そうすることによってBAX/BAKの、次いでMOMPの活性化を阻止するのに必要であるというモデルを支持する。したがって、この白血病細胞は、正常でも健康でもないが、死んでいるわけでもなく、むしろ死への準備を整えたものである。
【0102】
(実施例8)
BH3プロファイリングの、インビボにおけるBCL−2依存性を検出する能力を調べる別の試験として、二種類の小細胞型肺癌(SCLC)細胞系統を調べた。二つのSCLC細胞系統、H146およびH1963からミトコンドリアを単離し、一連のBH3ペプチドに暴露した。シトクロムcの放出をELISAによって定量した。いずれも、インビボにおけるABT−737処理、および、インビボのげっ歯類異種移植モデル(Oltersdorf T,2005)に感受性を持っていた。H146およびH1963のいずれも、BCL−2感受性の診断となる感受性パターンを示す(図8D)。この結果は、図4Bおよび7Eの結果に加えてさらに、ミトコンドリアのBH3プロファイリングが、どの細胞が、インビトロおよびインビボにおいてBH3様薬剤に対し感受性を持つかを示す強力な予測機構となることを支持する。
【0103】
(実施例9)
ABT−737細胞は、低ナノモル範囲においてCLL細胞を殺す。
【0104】
ABT−737は、BCL−2、BCL−XL、およびBCL−wに対し、ナノモル未満の範囲の親和度を持つ、細胞浸透性小型分子である。陰性コントロールエナンチオマー(enant)は、BCL−2に対しより低い親和度で結合する、ABT−737の立体異性体であり、機能欠損コントロールとして使用されてきた(Oltersdorfら、2005)。CLL細胞は、ABT−737に対して感受性を持つことが示されているので、BCL−2依存性の、可能な癌初発モデルとして選ばれた(Oltersdorfら、2005)。単離したばかりの一次CLL細胞を、ABT−737、または陰性コントロールエナンチオマーとインキュベートした。48時間後、死亡率を、アネキシンV染色によって評価した。試験した24個のCLLサンプル全てにおいて、ABT−737によって48時間以内にアポトーシスが誘発され、EC50は、4.5+2.2nMであった(図12A)(1.9−9.4nMの範囲、表3参照)。アポトーシス機構を直接標的することができるならば、それは、急速にアポトーシスを誘発することが期待される。4時間処理した5サンプルの反応は、48時間処理と比べ近似していた(図12B)。正常なドナーから得た、非悪性抹消血単球(PBMC)は、ABT−737に対して耐性を示し、EC50>1000nMであった(図12C)。
【0105】
【表3】

(実施例10)
BCL−2およびBIMレベルは、細胞サンプルの間で一定である。
【0106】
ABT−737に対する反応が一定なのであるから、BCL−2タンパクの発現も、CLL細胞において均一であると仮定された。さらに、プロ・アポトーシスBIMは、リンパ球においてアポトーシス採択の重要な決定因子であることが示されている(Bouilletら、1999;Opfermanら、2003)。15個のCLLサンプルにおいて、アンチ・アポトーシスBCL−2およびプロ・アポトーシスBIMのレベルは、著しく均一であった(図13A);PBMCにおけるBCL−2およびBIMのレベルは一貫して低かった(図13B)。短期培養は、BCL−2またはBIMレベルに影響を及ぼさないが、ABT−737に対する反応を変えるであろうという予想を確かめるために、タンパク溶解物を、単離の時点、および48時間の培養後に得たCLLサンプルから調製した。BCL−2レベルも、BIMレベルも、培養中変化しなかった(図13C)。CLL細胞におけるBCL−2レベルを、濾胞性リンパ腫、すなわち、t(14;18)転座のためにBCL−2が過剰発現される癌におけるレベルと比較した(図13D)。BCL−2レベルは、この二つの疾患において際立って近似していた。
【0107】
表4は、図12Aのサンプル提供患者の臨床特徴を要約する。EC50値を、CLLの予後判定に有用であると以前に特定された要因によって二分割された群の間で比較した。この分析から、いずれの場合においても、平均EC50の、2群間の差は、2nMを超えないことが明らかになった。2群間のノンパラメトリックな統計的比較から、白血球数によって二分割された群を除いて、いずれも統計的有意差を持たないことが示された(表5)。したがって、ABT−737に対する生物反応は、従来の予後判定要因からは、ほとんど独立しているようである。
【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

(実施例11)
CLLミトコンドリアは、外膜の完全性維持のためBCL−2機能への持続的依存性を示す。
【0110】
BCL−2は、内在的アポトーシス経路、すなわち、ミトコンドリアアポトーシス経路に反対するのであるから、ABTT−737の毒性は、CLLにおけるBCL−2機能に対するミトコンドリアの要求に基づくものであると仮定した。いくつかの遺伝学的に定められたモデルシステム(Letaiら、2002)(および、MC,VDM,Nishino M,Wei G,Korsmeyer S,Armstrong S,AL,公刊準備中)において、BCL−2機能の選択的拮抗因子として振舞う、BH3単独タンパクのBH3ドメインから得られた、一連のペプチドの特徴を解明した。例えば、BAD、PUMA、BMF、および、強度は低いが、BIKから得られたBH3ペプチドは、BCL−2に結合し、その機能を抑制するが、一方、NOXA、HRK、およびBNIP−3AからのBH3ドメインは、BCL−2と相互作用を持たない。このペプチド配列(パネル)は、他のアンチ・アポトーシスファミリーメンバーに対しても確認され、かつ、この相互作用パターンは、各アンチ・アポトーシスタンパクについて異なるので、各タンパクの機能は、この「BH3プロファイリング」によって特異的に検出される。したがって、その外膜の完全性の維持のためにBCL−2機能に依存するミトコンドリアは、BAD、PUMA、およびBMFで処理されると、外膜浸透の誘発を示すが、NOXA、HRK、およびBNIP−3Aペプチドで処理されてもそうはならない。
【0111】
CLLミトコンドリアを、BH3ペプチド、および、ABT−737および陰性コントロールエナンチオマーとインキュベートした(図14)。活性化因子BIDおよびBIM BH3ペプチドは、試験した全てのアンチ・アポトーシスタンパクと相互作用を持ち、さらに、BAXおよびBAKを直接活性化することが可能である(Letaiら、2002)ことに注意されたい。そのため、これらのペプチドは、シトクロムc放出アッセイにおいて陽性コントロールとして活動する。BAD、PUMA、およびBMFは、シトクロムcの放出を誘発するが、一方、NOXA、HRK、およびBNIP−3Aペプチド、および、BADの無効点突然変異のBH3は誘発しない。このパターンは、ミトコンドリアのBCL−2依存性を診断する。ABT−737もシトクロムcの放出を誘発する。これは、その標的が、CLL細胞のミトコンドリアにあり、かつ、ミトコンドリア外膜の完全性の維持に必要とされることを裏づける。したがって、これらの「BH3プロファイリング」実験は、CLLミトコンドリアは、ミトコンドリア外膜の完全性を維持するためにBCL−2機能に依存することを証明し、ABT−737処理に対するCLL細胞の繊細な感受性の機序を解明する。感作物質パネルのBH3ペプチドは、BAXおよびBAKを直接活性化する能力を欠くので、これらの実験はさらに、CLLにおいてBCL−2によって構成的に隔離される活性化分子の存在をも示唆した。
【0112】
(実施例12)
BCL−2に結合したBIMは、ABT−737による殺作用に対し、CLL細胞の死への準備を整える。
【0113】
以前の実験によって、ABT−737および感作物質BH3ペプチドは、アンチ・アポトーシス性BCL−2の拮抗因子として活動するが、BAXおよびBAKを直接活性化する能力を欠くことが示された。MOMPを誘発するために、感作物質は、BIMまたはBIDなどの活性化因子の存在を要求する(Letaiら、2002;Oltersdorfら、2005)。したがって、上の結果は、活性化因子が、BCL−2に結合し、次いで、ABT−737、またはBCL−2結合性BH3ペプチドによって転移されることを示唆する。転移後、遊離活性化因子は、BAXおよびBAKとの相互作用を介してMOMPを誘発することが可能となることが仮定された。
【0114】
図13は、CLLサンプルにおけるBIMの存在を示した。他方の確立された活性化因子BH3単独タンパクであるBIDのレベルは、イムノブロットでは極めて貧弱で、切断され、活性化されたBIDは、ほとんど完全に検出不能であった(図示せず)。BIMは実際にBCL−2によって結合されることが仮定された。図15Aは、BIMが、一次CLL細胞ではBCL−2によって隔離されることを示す。さらに、ABT−737によって処理すると、より程度は低いが、比較的活性の低い陰性コントロールエナンチオマーが、BCL−2に結合するBIMの量において急激な低下をもたらす(図15B)。興味深いことに、転移されたBIMはより不安定となるらしく、ABT−737処理後、BCL−2はそうはならないのに、BIMの全細胞レベルは低下した。汎カスパーゼ抑制因子ZVAD−fmkとの共時処理は、ABT−737誘発による細胞死から保護するが、これはさらに、アポトーシス細胞死の関与を示唆する。ZVAD−fmkも、BIM細胞レベルを保存するが、これは、転移BIMが、以前に報告されたように(Chen and Zhou,2004)カスパーゼによって切断される可能性のあることを示唆する。溶解物中の界面活性因子が、感作物質の、BCL−2疎水性間隙に対する結合を妨げる可能性がある(図示せず)。そこで、ABT−737およびZVAD−fmk処理後において、BCL−2に対するBIMの、観察される持続的結合は、BCL−2に対する、ABT−737の結合を抑制する、溶解物中の界面活性因子によるアーチファクトである可能性のあることが仮定された。ABT−737の作用機構に関して二つの競合仮説が生成された。第1では、ABT−737は、BCL−2からBIMを転移させ、BAXのオリゴマー形成およびカスパーゼ活性化を誘発し、最後に、この転移されたBIMのカスパーゼ切断を誘発する。第2では、BIM分解は、単にMOMPの結果であり、カスパーゼ活性化は、BIM転移とは独立した機構によって起動される。
【0115】
これらの競合仮説を試験するため、全細胞溶解物を、ABT−737の存在または不在下に、BCL−2:BIM複合体のレベルについて調べた。界面活性因子非含有条件下では、ABT−737は、BCL−2からBIMを転移し上清に追いやるが、陰性コントロールエナンチオマーはそうしなかった(図15C)。BIMは、BAXを活性化し、そのオリゴマー形成を誘発することが示されている(Letaiら、2002;Marani,et al.,2002;Yamaguchi and Wang,2002)。この機序と一致して、CLL細胞は、ABT−737による処理後4時間以内にBAXのオリゴマー形成を示す(図15D)。
【0116】
もしも第2仮説が正しく、BCL−2拮抗作用後MOMPを誘発するのにBIMが必要とされるのであれば、BIMの選択的隔離は、CLLミトコンドリアに対するBCL−2の拮抗作用後、シトクロムc放出の低下を招くはずである。図15Eにおいて、BCL−2機能は、感作物質BAD BH3ペプチドによって拮抗される。図12で示したように、BAD BH3は、それだけでシトクロムcの放出を誘発した。一方、BIMのBH3ドメインに結合する抗体の添加は、シトクロムcの放出に著明な低下をもたらした。無関係な抗体は作用しなかった。BIMを隠蔽することによってシトクロムcの放出を阻止することは、第1仮説、すなわち、ABT−737の拮抗作用は、BIMの、BCL−2:BIM複合体からの転移のために(図15C)CLL細胞に対して有毒であるという仮説を支持する。転移されたBIMは次に、BAXのオリゴマー形成(図15D)、MOMP、およびプログラム細胞死の採択を誘発する。これらの結果の意味する重要内容は、BCL−2発現は必要ではあるが、ABT−737、または感作物質BH3ペプチドによるBCL−2の拮抗作用に対する反応を指令するには十分ではないということである。細胞が、BCL−2の拮抗作用に感受性を持つためには、活性化因子BH3単独タンパクは、BIM同様、BCL−2によって隔離されなければならない。
【0117】
(実施例14)
BH3プロファイリングによる薬剤反応の予測
BH3プロファイリングは、抗癌治療剤に対する癌細胞の反応の予測を可能とする。本出願の目的のため、治療剤は、アンチ・アポトーシスBCL−2タンパクを標的とするもの、および、従来の薬剤に分割することが可能である。モデル試験システムとして、四つのリンパ腫細胞系統SU−DHL4、SU−DHL6、SU−DHL8、およびSU−DHL10を用いた。BH3プロファイリングを実行するため、一連の増感ペプチドについて、これらのリンパ腫細胞から単離されたミトコンドリアにおいてミトコンドリア外膜浸透化(MOMP)を誘発する能力を試験した。参照を簡単にするために、図18Aは、BH3ペプチドと、アンチ・アポトーシスタンパクとの間の相互作用パターンを示す。MOMPは、シトクロムcの放出をELISAによって定量することによって測定した。
【0118】
図18に示すように、BH3プロファイリングは、四つのリンパ腫細胞系統から成る我々のサンプルにおいて、これら三つのブロッククラスを区別することができることを証明した。SU−DHL4およびSU−DHL6は、感作物質BH3ペプチドに対する感受性に基づくと「準備済み」表現型である。アンチ・アポトーシスタンパクの全てと相互作用を持つPUMA BH3ペプチドに対する強い反応は、ミトコンドリアが準備済みであるかどうかを見るための有力な指示計を提供する。この感受性パターン(PUMA、BMF、BAD、+/−BIK)は、SU−DHL−4では、BCL−2に対する依存性を示した。SU−DHL6も、強いPUMA BH3およびBMF BH3シグナルによって示されるように、準備済みであった。比較的選択性の高いBH3ペプチド、BAD BH3およびNOXA A BH3の両方に対し、より弱いが、はっきりした反応が見られたことは、BCL−2とMCL−1の両方への依存性を示す。PUMA BH3および他の感作物質に対する少ない反応を見ると、SU−DHL−8の準備態勢は劣っているように見えるが、それでも、活性化因子BIM BH3およびBID BH3に対し強く反応することによって、エフェクターアームは無傷であることを示した。SU−DHL−10は、増感および活性化の両ペプチドに対しその反応が劣っており、エフェクターアームの欠如を示した。
【0119】
生存のためにBCL−2に依存する細胞のみが、ABT−737のようなBCL−2拮抗因子に対して反応することが予測される。したがって、BH3プロファイリングは、SU−DHL4およびSU−DHL6は、ABT−737に反応するはずであると予測する。この仮説は試験され、BH3プロファイリングは、ABT−737に対する反応を正確に予測することが確認された(図19A)。さらに、BH3プロファイリングは、SU−DHL4およびSU−DHL6は、死への「準備済み」なのであるから、他の化学療法剤に対してもより高い感受性を持つ可能性があるが、SUDHL8とSUDHL−10はそうはならないであろうと予測した。このことを試験するために、細胞をビンクリスチンで処理した。BH3プロファイリングによって予測されたように、SU−DHL4およびSU−DHL6が、もっとも感受性の高い細胞系統であった(図19B)。
【0120】
(実施例15)
細胞系BH3プロファイリング
ミトコンドリア系BH3プロファイリングを細胞系アッセイに転換する方法が開発された。このアッセイでは、細胞をジギトニンによって浸透可として、ペプチドのミトコンドリア到達を可能とした。細胞を、蛍光染料JC−1で処理し、ミトコンドリアの膜横断電気化学電位の、ペプチド処理による損失を評価した。アポトーシスによるミトコンドリアの完全性の損失は、590nmから520nmへの蛍光ピークのシフトによって観察することが可能である。TECAN Safire2蛍光計測計を用い、96−、または384ウェルプレートにおいて複数のアッセイを平行に読み取ってもよい。このシステムを試験するために、このシステムを、BCL−2依存性が知られる、いくつかの細胞系統に適用したところ、ミトコンドリアBH3プロファイリングと、細胞BH3プロファイリングとの間に優れた相関が得られた。図20に二つの例が見て取れる。
【0121】
(その他の実施例)
本発明が、その詳細な説明と関連して記載されたわけであるが、前述の記載は、付属の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲を具体的に示すことを意図するもので、限定することを意図するものではない。他の局面、利点、および改変は、付属の特許請求の範囲の中にある。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1A】マウス肝臓ミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、感作物質BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。ペプチド濃度は、別様に示さない限り、10uMであるが、tBID濃度は13nMであった。各アンチ・アポトーシスタンパクについて実行した少なくとも3回の独立アッセイの平均および標準偏差を示す。
【図1B】ミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、tBID(第1バー)およびBCL−2(1.2uM、第2バー)の作用を示す棒グラフである。さらに、シトクロムcの放出回復に及ぼす感作物質BH3ペプチドの作用が示される。各場合において、シトクロムcの放出回復は、表1bの高親和性相互作用に一致することに注意されたい。
【図1C】ミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、tBID(第1バー)およびBCL−XL(0.25uM、第2バー)の作用を示す棒グラフである。さらに、シトクロムcの放出回復に及ぼす感作物質BH3ペプチドの作用が示される。
【図1D】ミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、tBID(第1バー;この実験ではtBIDの濃度が43nMであることに注意)およびBCL−XL(6.3uM、第2バー)の作用を示す棒グラフである。さらに、シトクロムcの放出回復に及ぼす感作物質BH3ペプチドの作用が示される。
【図1E】ミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、tBID(第1バー)およびMCL−1(1.1uM、第2バー)の作用を示す棒グラフである。さらに、シトクロムcの放出回復に及ぼす感作物質BH3ペプチドの作用が示される。
【図1F】ミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、tBID(第1バー)およびBFL−1(2.4uM、第2バー)の作用を示す棒グラフである。さらに、シトクロムcの放出回復に及ぼす感作物質BH3ペプチドの作用が示される。
【図2】シトクロムc放出に対する、BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。MLMは、0.2uMのBCL−XLタンパクの存在下、または不在下に、10uMの表示のペプチドによって処理した。
【図3】図3Aは、GST−BCL−w(または、点突然変異R96P)を、tBIDタンパクおよび表示のBH3ペプチド(10μM)と組み合わせた、GST−プルダウンアッセイの結果を示すウェスタンブロットの写真である。BCL−wのBH1ドメインR96P突然変異体は、BH3ドメインに結合する能力を欠く。便利のために、BCL−w結合パターンを表1bから抽出して下に示した。図3Bは、蛍光偏光で見た、BCL−2およびMCL−1タンパクからの、フルオレセイン標識BIM BH3ペプチドの転移に対する、BADおよびNOXA BH3ペプチドの作用を示す線グラフである。図示は、各組み合わせについて3回の独立実験から得られた代表的プロットである。
【図4A】wtFL5.12およびFL5.12−BCL−2細胞の生存率に及ぼす、IL−3除去の作用を示す線グラフである。アネキシンVによって染色されない細胞をFACS分析において生存とした。図示は、3回の独立実験の平均および標準偏差である。
【図4B】IL−3充満およびIL−3枯渇FL5.12−BCL−2細胞の生存率に及ぼす、BCL−2の拮抗因子であるABT−737の作用を示す線グラフである。アネキシンVによって染色されない細胞をFACS分析において生存とした。図示は、3回の独立実験の平均および標準偏差である。
【図4C】FL5.12細胞の生存率に対する、ABT−737およびZVAD.fmkの作用を示す棒グラフである。さらに、イムノブロットの写真は、PARP切断に対するABT−437の作用を示す(最下段)。
【図5】FL5.12の生存率に対する、ABT−737およびZVAD.fmkの作用を示す棒グラフである。FL5.12は、IL−3の存在下、または不在下に24時間育成し、次いで、表示のように、30分、1、2、または3時間処理した。細胞死は、FACS分析においてアネキシンV染色によって測定した。
【図6A】下記の細胞の単離ミトコンドリアからのシトクロムc放出に及ぼすBH3ペプチド(10uM)の作用を示す棒グラフであり、24時間IL−3の存在下に育成したwtFL5.12細胞(青色バー);24時間IL−3の存在下(赤色バー)、または不在下(褐色バー)に育成したFL5.12−BCL−2細胞である。図示は、3回の独立実験の平均および標準偏差である。便利のために、BCL−2結合パターンを表1bから抽出して下に示した。
【図6B】IL−3の存在下に育成したwtおよびBCL−2FL5.12細胞から単離したミトコンドリアからの、シトクロムc放出に及ぼす、NOXAおよびBAD BH3の作用を示す棒グラフである。図示は、3回の独立実験の平均および標準偏差である。
【図6C】IL−3不在下に24時間育成されたFL5.12細胞からのシトクロムc放出に及ぼす、NOXA A、BAD、ABT−737、またはコントロールエナンチオマーの作用を示すウェスタンブロットの写真である。
【図6D】FL5.12−BCL−2全細胞溶解物のBIMレベルに及ぼすIL−3除去の作用(左側)、および、ヒトBCL−2導入遺伝子産物を指向する抗体によって免疫沈降されるサンプル(右側)を示すウェスタンブロットの写真である。最上段の数字は、IL−3除去後の時間を指す。右のコントロールレーンは、プルダウンにおいて抗ヒトBCL−2抗体無しで実施したものである。
【図6E】免疫沈降アッセイの結果を示すウェスタンブロットの写真である。BAXの全ての立体配座を認識する抗体(Δ21)、または、N−末端露出体を持つ活性立体配座のみを認識する抗体(NT)を用いて、BAXを免疫沈降した。細胞において誘発された死亡率を下に示す。右では、IL−3枯渇細胞から単離されたミトコンドリアに対し、ABT−737、またはコントロールエナンチオマーで処理し、表示のようにNTによる免疫沈降を実行した。CD56は、CD56を認識する、無関係の抗体によるコントロール免疫沈降反応を示す。
【図7A】2B4細胞において、デキサメタゾンによって誘発される細胞死に及ぼす、MCL−1およびBCL−2の作用を示す線グラフである。生存率は、FACS分析においてアネキシンV染色の不在によって定量した。図示は、3回の独立実験の平均および標準偏差である。
【図7B】MCL−1依存性2B4細胞、およびBCL−2依存性2B4細胞に対する、BCL−2拮抗因子ABT−737の作用を示すセングラフである。図示は、3回の独立実験の平均および標準偏差である。
【図7C】表示のように処理されたMCL−1発現2B4細胞から単離されたミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。図示は、3回の独立実験の平均および標準偏差である。便利のために、MCL−1結合パターンを表1bから抽出して下に示した。
【図7D】表示のように処理されたBCL−2発現2B4細胞から単離されたミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。便利のために、BCL−2結合パターンを表1bから抽出して下に示した。
【図7E】FLAG−MCL−1トランスフェクト2B4細胞に対するデキサメタゾンの作用を示すイムノブロットの写真である。アガロースビーズに結合したFLAG抗体は、FLAG−MCL−1と複合体を形成するタンパクを免疫沈降させた。MCL−1によるBIM隔離の増加は、MCL−1依存性と相関する。
【図7F】FLAG−BCL−2トランスフェクト2B4細胞に対するデキサメタゾンの作用を示すイムノブロットの写真である。
【図7G】デキサメタゾン処理FLAG−MCL−1 2B4細胞に対するBH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。BH3ペプチドでトランスフェクトされた準備FLAG−MCL−1 2B4細胞はMCL−1パターンを示す。
【図8−1】図8Aは、肝臓から単離したミトコンドリアからのシトクロムc放出に及ぼす、BH3ペプチド(別様に指示しない限り、10μM)の作用を示す棒グラフである。図8Bは、BCL−2依存性白血病から単離したミトコンドリアからのシトクロムc放出に及ぼす、BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。便利のために、BCL−2結合パターンを表1bから抽出して下に示した。図示は、1回しか行わなかった30および100μM処理を除き、3回の独立実験の平均および標準偏差である。
【図8−2】図8Cは、BCL−2依存性白血病から得られたサンプルのイムノブロットのチャートである。第1レーンは、25ug負荷全細胞溶解物;第2レーンは、ヒトのBCL−2導入遺伝子産物に対する抗体による免疫ブロット産物;第3レーンは、プロテインAビーズのみによるコントロール;第4レーンは、げっ歯類CD−40を認識する、無関係のハムスターモノクロナール抗体によるコントロールイムノブロットである。図8Dは、二つのSCLC細胞系統、H146およびH1963から単離されたミトコンドリアからのシトクロムc放出に及ぼす、BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。それぞれについてN=3であり、誤差バーは、標準偏差を表す。
【図9】増感BH3作用剤処理に対する選択的癌感受性のモデルである。生存未準備細胞(I)は、細胞死刺激(II)後、死への準備を整える。白血病細胞は、外部からの介入(II)無しに、絶えず死への準備を促される。準備状態の細胞は、アンチ・アポトーシス拮抗因子(III)に反応してアポトーシスの経過をたどるが、未準備状態の細胞はそうしない。A)FL%.12−BCL−2。B)2B4−MCL−1。C)myc/BCL−2白血病細胞。
【図10】プログラム細胞死に対するBCL−2ファミリー調節モデルを描く模式図である。細胞死シグナルは、BH−3単独タンパクの、誘発性または翻訳後活性化を引き起こす。BIDおよびBIMを含む活性化因子BH3単独タンパクは、BAXおよび/またはBAKのオリゴマー形成を誘発し、MOMP、シトクロムcの放出、およびカスパーゼの活性化を引き起こし、細胞死をもたらす。アンチ・アポトーシスタンパクは、活性化因子BH3単独タンパクおよびBAX/BAKを、BAX/BAKオリゴマー形成の上流において隔離することによってアポトーシスを阻止する。感作物質BH3単独タンパクは、アンチ・アポトーシスタンパクに結合すること、活性化因子BH3単独タンパクを転移し、BAX/BAKオリゴマー形成を誘起することによって細胞死を促進する。
【図11】内在的、またはミトコンドリア系プログラム細胞死経路を示す模式図である。細胞死シグナル伝達に反応して、活性化因子BH3単独タンパクが起動されて、BAXおよびBAKと相互作用を持ち、BAXおよびBAKオリゴマー形成を誘発する。このオリゴマー形成に続いて、ミトコンドリア外膜の浸透化が起こり、これによって、シトクロムcのようなプロ・アポトーシス因子が細胞質ゾルに放出される。細胞質ゾルのシトクロムcは、APAF−1およびカスパーゼ9と複合体を形成し、アポプトソームと呼ばれるホロ酵素を造り、これが、次に、エフェクターカスパーゼ3を活性化し、広範なタンパク分解をもたらす。この経路は、BCL−2のようなアンチ・アポトーシスメンバーによって遮断され、かつ、これらのメンバーは、活性化因子BH3単独タンパクに結合し、該タンパクの、BAXおよびBAKとの相互作用を阻止する。この抑制作用そのものは、感作物質BH3単独ドメインによって拮抗される。すなわち、該ドメインは、BCL−2における結合部位を求めて競合し、BCL−2によって結合される活性化因子を転移させる。
【図12A】CLL細胞の生存率に対するABT−737の作用を示す線グラフである。24名の患者から得たCLL細胞を、種々の濃度の化合物と共に48時間培養した。死亡率は、アネキシンV染色によって定量し、溶媒(DMSO)処理コントロールに対して正規化された。
【図12B】CLL細胞の生存率に対するABT−737の作用を示す線グラフである。5名の患者から得たCLL細胞を、種々の濃度の化合物と共に48時間培養した。死亡率は、(A)と同様に定量した。
【図12C】正常なPBMCの生存率に対するABT−737の作用を示す線グラフである。PBMCは、表示の濃度の化合物の存在下に24時間培養した。
【図13】図13Aは、CLLサンプルから得られた全細胞溶解物におけるBCL−2およびBIMタンパクレベルを示すイムノブロットの写真である(数字は、図12Aの患者番号に一致する)。BIMの三つの異性形(BIMextra long−BIMEL、BIMlong−BIML、およびBIMshort−BIMS)が示される。図13Bは、PBMCから得られた全細胞溶解物におけるBCL−2およびBIMタンパクレベルを示すイムノブロットの写真である。三つの正常PBMC溶解物は左に、CLL溶解物は右に示す。図13Cは、細胞採取時(前)および培養後48時間(後)に作製した二つの独立CLL一次サンプルから得られた全細胞溶解物におけるBCL−2およびBIMタンパクレベルを示すイムノブロットの写真である。図13Dは、一次CLL細胞(A−F)、および一次濾胞性リンパ腫細胞(FL)におけるBCL−2タンパクレベルを示すイムノブロットの写真である。イムノブロットの配置は、t(14;18)含有H2ヒトリンパ腫細胞系統からの溶解物に対して合わせられる。
【図14】一次CLL患者の独立サンプルから単離したミトコンドリアからのシトクロムc放出(ELISAによって測定)に及ぼす、BH3単独ドメインペプチド(100μM)または化合物(100μM)の作用を示す棒グラフである。BADmu=BAD BH3単独ドメインの点突然変異体、陰性コントロールとして使用。N=7、ただし、BADmuではN=5、陰性コントロールエナンチオマーではN=3。誤差バーは、標準偏差を表す。
【図15A】7個の独立CLLサンプルの全細胞溶解物における、BCL−2およびBIMタンパクのイムノブロットの写真である。
【図15B】一次CLL細胞の全細胞溶解物における、BCL−2およびBIMタンパクのイムノブロットの写真である。一次CLL細胞は、100nM ABT−737、100nM陰性コントロールエナンチオマー、またはベヒクル(DMSO)+200μM ZVAD.fmkと共に24時間培養した。死亡率は、アネキシンV染色によって定量した。各処理群からの溶解物使用の免疫沈降(i.p.)を、抗BCL−2抗体を用いて実行した。図示の結果は、3回の独立実験を表す。
【図15C】イムノブロットの写真である。4個の独立患者サンプルから得られたCLL溶解物においてBCL−2を免疫沈降させるためにBCL−2抗体を用いた。界面活性因子を濯ぎ除去した後、ビーズに結合した複合体を、DMSO、1μM陰性コントロールエナンチオマー、または1μM ABT−737とインキュベートした。図示は、このようにして得られた、上清に転移した分画の、BIM探査イムノブロットである。
【図15D】イムノブロットの写真である。単離したばかりのCLL細胞を、DMSO、10nM、100nM、または1μMのABT−737、または陰性コントロールエナンチオマーと4時間インキュベートした。死滅%は、アネキシンV染色によって評価した。BAXのオリゴマー形成は、化学的に架橋結合された全細胞溶解物の抗BAXイムノブロットによって評価した。
【図15E】CLLサンプルから単離されたミトコンドリアに対する、1%DMSO、または100μM BAD BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。サンプルは、表示のように、ヒトのBIM BH3ドメイン(Agent)を指向する抗体、または、無関係抗原(CD56)を指向する抗体と共にあらかじめインキュベートした。N=5、バーは、+標準偏差を示す。
【図16A】LP1細胞から単離されたミトコンドリアからのシトクロムc放出に対する、100μM BH3ペプチドの作用を示す棒グラフである。
【図16B】MCL−1、BCL−2、およびBIMのレベルを比較する、LP1およびL363細胞系統のイムノブロットの写真である。
【図16C】L363細胞およびLP1細胞の生存率に及ぼす、ABT−737による48時間処理の作用を示す線グラフである。N=3、バーは、+標準偏差を示す。
【図17】ミトコンドリアにおけるABT−737誘発細胞死のモデルを示す模式図である。ミトコンドリアBCL−2は、CLL細胞においてBIMを隔離する。ABT−737を添加すると、BIMは転移され、BCL−2はABT−737によって占拠される。次に、解放されたBIMは、BAXまたはBAKと相互作用を持ち、オリゴマー形成を誘発し、シトクロムcの放出、および、プログラム細胞死の不可逆性採択をもたらす。活性化BH3単独タンパクによって準備されたBCL−2は、癌細胞に、ABT−737の外、恐らく他の化学療法剤による処理に対しても感受性を持つようにさせる。
【図18A】BH3ペプチドと、アンチ・アポトーシスタンパクの間の相互作用パターンを示すチャートである。
【図18B】リンパ腫細胞系統Su−DHL4のBH3プロフィールを示す棒グラフである。
【図18C】リンパ腫細胞系統Su−DHL6のBH3プロフィールを示す棒グラフである。
【図18D】リンパ腫細胞系統Su−DHL8のBH3プロフィールを示す棒グラフである。
【図18E】リンパ腫細胞系統Su−DHL10のBH3プロフィールを示す棒グラフである。
【図19】図19Aは、ABT−737に対する細胞感受性を示す線グラフである。図19Bは、ビンクリスチンに対する細胞感受性を示す線グラフである。
【図20A】ミトコンドリア系および細胞系BH3プロファイリングの比較を示す、一連の棒グラフである。
【図20B】ミトコンドリア系および細胞系BH3プロファイリングの比較を示す、一連の棒グラフである。
【図20C】ミトコンドリア系および細胞系BH3プロファイリングの比較を示す、一連の棒グラフである。
【図20D】ミトコンドリア系および細胞系BH3プロファイリングの比較を示す、一連の棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤に対する癌細胞の感受性を予測する方法であって、該細胞、またはその細胞成分を、BH3ドメインペプチドと接触させること、および、該細胞のアポトーシスを検出することを含み、アポトーシスの存在は、該細胞が、治療剤に対して感受性を有することを示す、方法。
【請求項2】
治療剤に対する癌細胞の感受性を予測する方法であって、該細胞から得られたミトコンドリアを、BH3ドメインペプチド、またはその模倣物と接触させること、および、該ミトコンドリアからシトクロムcの放出を検出することを含み、該シトクロムcの放出は、該細胞が、治療剤に対して感受性を有することを示す、方法。
【請求項3】
対象に対して治療的である薬剤を選択する方法であって:
a)該対象から、癌細胞、またはその細胞成分を提供すること;
b)該癌細胞を、BH3ドメインペプチド、またはその模倣物と接触させること;
b)該BH3ドメインペプチド、またはその模倣物が、該癌細胞においてアポトーシスを誘発するか否かを判定し、試験BH3プロフィールを作成すること;および、
c)該試験BH3プロフィールを、治療剤BH3プロフィールと比較すること、を含み、
該治療剤BH3プロフィールと比べた場合の、該試験BH3プロフィールの類似性が、該薬剤が、該対象に対し治療的であることを示す、方法。
【請求項4】
治療剤に対する癌細胞の感受性を予測する方法であって、該癌細胞のBH3プロフィールを提供すること、および、該BH3プロフィールをコントロールプロフィールと比較することを含み、該コントロールプロフィールと比べた場合の、該癌細胞の該BH3プロフィールの類似性は、該癌細胞が、該治療剤に対して感受性を有することを示す、方法。
【請求項5】
前記細胞が、前記BH3ドメインペプチド、またはその模倣物に接触する前に、浸透化される、請求項1、3、または4に記載の方法。
【請求項6】
前記浸透化細胞を、電位差測定用染料に接触させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電位差測定用染料が、JC−1またはジヒドロローダミン123である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アポトーシスが、前記電位差測定用染料の発光変化を検出することによって測定されるによって測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記BH3ドメインペプチドが、BID、BIM、BAD、BIK、NOXA、PUMA、BMF、またはHRKポリペプチドのBH3ドメインから得られる、請求項1−4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記BH3ドメインペプチドが、配列番号1−14および15からなる群より選択される、請求項1−4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記治療剤が、化学療法剤、BH3ドメイン模倣物、または、アンチ・アポトーシスタンパクの拮抗剤である、請求項1−4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
癌を有する一つ以上の対象から取得された、配列番号1−12および13からなる群より選択されるBH3ペプチドに対するミトコンドリア感受性パターンを含むプロフィール。
【請求項13】
浸透化標識細胞、および、BH3ペプチドまたはその模倣物を含む細胞系アッセイシステム。
【請求項14】
前記標識が、電位差測定用染料を含む、請求項13に記載のアッセイシステム。
【請求項15】
前記電位差測定用染料が、JC−1またはジヒドロローダミン123である、請求項14に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図6E】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図7E】
image rotate

【図7F】
image rotate

【図7G】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図15D】
image rotate

【図15E】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図18C】
image rotate

【図18D】
image rotate

【図18E】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20A】
image rotate

【図20B】
image rotate

【図20C】
image rotate

【図20D】
image rotate


【公表番号】特表2009−532033(P2009−532033A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503058(P2009−503058)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/008055
【国際公開番号】WO2007/123791
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(592090692)ダナ ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】