説明

細胞の選択的溶解および/または最適化溶解に代表される粒子の選択および/または処理のための方法ならびに装置

【解決手段】外部刺激に対して高感度な粒子の選択または処理のための方法ならびに装置であり、外部刺激を印加することによって、少なくとも1つの選択された粒子の破裂/溶解または第1および第2の選択粒子の融合が生じる。これは、粒子と同程度または粒子より小さい寸法を有する選択可能電極のアレイの電極(EL)を選択的に通電して、これらの電極に第1の構成(PMAN)の応力を印加することによって、第1の力の場(FMAN)を使用して粒子(CELL)を編成することと、電極に第2の構成(PZAP)の応力を印加することによって、溶解されるべき少なくとも1つの選択された粒子(CELL)または融合されるべき第1の粒子と第2の粒子との対の十分近くに位置しなおかつそれらの溶解または融合を生じるのに適した刺激の印加を生じるような第2の力の場(FZAP)を形成することと、によってなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば細胞の選択的溶解および/または最適化溶解など、細胞で構成される粒子もしくは細胞および/もしくは細胞物質を含む粒子に代表される粒子の選択および/または処理のための、方法ならびに装置に関し、主に、個々の細胞に対する解像力を有する手順の実施に応用される。以下において、細胞の「処理」という用語は、個々の粒子もしくは細胞またはそれらのグループに対して行うことができるあらゆるタイプの動作を意味する。
【背景技術】
【0002】
G. Medoroに属する特許PCT/WO 00/69565は、誘電泳動電位をともなう閉じられたケージと、可能性として考えられる集積センサと、を利用した粒子の操作および識別/認識のための、装置ならびに方法を記載している。記載された方法は、二次元空間において各粒子の位置をその他の全ての粒子と無関係にどのように制御するかについて教示している。流体媒質中に懸濁している粒子を捕捉するために使用される力は、負の遊動泳動である。操作する動作の個々の制御は、電極アレイの各素子に関連付けられたメモリ素子および回路と、同じ基層内に集積されたセンサと、のプログラミングによって達成される。デバイスは、細胞の分離を可能にするが、それらの細胞を第1のマイクロチャンバから流体的に分離された第2のマイクロチャンバに向かって移動させることを必要とする。さらに、細胞を形質転換するための方法は想定外である。
【0003】
Becker et al.に属する米国特許6,294,063は、プログラム可能な力の分布による固形、液状、または気体の生物学的物質のパッケージの操作のための、方法ならびに装置を記載している。該特許は、センサの使用についても言及している。この場合も、細胞の分離は、細胞をデバイス全体を経て物理的に移動させることによってのみ生じうる。
【0004】
粒子の操作のためのさらなる力は、電熱流動(ETF)またはAC電気浸透などの、電気流体力学的流動(EHD)によって生成される粘性摩擦の力である。NG. Green, A. Ramos and H. Morgan, J. Phys. D: Appl. Phys. 33 (2000)では、EHDが、粒子をシフトさせるために使用されている。例えば、PCT WO 2004/071668 A1は、上記の電気流体力学的流動を利用した、粒子を電極上に集めるための装置を記載している。
【0005】
Medoro et al.のイタリア特許出願BO2005A000481は、電極アレイによって粒子を操作するためのいくつかの方法と、それらを識別するためのいくつかの方法および装置と、を列挙している。
【0006】
代わりに、国際特許出願PCT/IT02/00524は、第1の生物学的実体を第2の生物学的実体(例えばDNAを含有するリポソーム、すなわちマイクロビーズ)に接触させて形質変換しうる方法を記載しており、ここで、第1の生物学的実体は、第1の電極のマトリックスによって画定された表面上に固定化され、これらの第1の電極は、少なくとも一部を選択的に通電および方向付けされてよく、少なくとも1つの第2の電極に面するように配され、誘電泳動ケージによってシフトされた第2の生物学的実体に接触される。
【0007】
同じ出願人の名義の特許出願PCT IB 2006000636は、不均一で時間変化する力の場と、集積型の光学式またはインピーダンス計式のセンサと、による粒子の特徴付けおよび/またはカウントのための、方法ならびに装置に関する。力の場は、粒子(固形、液状、もしくは気体)についての安定平衡点のセットによって特徴付けられる正もしくは負の誘電泳動、電気泳動、または電気流体力学的運動を有してよく、同じ方法は、誘電体上のエレクトロウェッティングなどの既知の効果を用いた液滴(液体粒子)の操作に適しており、試料中に存在する粒子を決定論的にまたは統計的にシフトさせられるようにそれらの各粒子の位置の制御に作用すること、それらの存在を集積型の光学式もしくはインピーダンス計式のセンサによって検出すること、および/またはそれらを効率的にカウントするもしくは操作するためにそれらのタイプを特徴付けること、を意図している。
【0008】
同じ出願人の名義の2006年3月27日付けのイタリア出願第TO2006A000226号では、粒子の処理(例えば洗浄や培養など等)のための方法および装置が記載されている。すなわち、第1の流体中に懸濁している粒子は、層流条件下において、少なくとも1つの、第1のマイクロチャンバまたは同マイクロチャンバの第1の領域に導入され、第2の流体は、層流条件下において、第1の流体と混じらない方式で、少なくとも1つの、上記マイクロチャンバの第2の領域または第2のマイクロチャンバに導入され、上記マイクロチャンバ内では、所定の方向へのみ粒子のシフトを誘発して同粒子を懸濁状態で第2の流体内へと移らせるために、粒子に作用する少なくとも1つの力の場(F)が発生され、装置は、一方向に一列に並べられた少なくとも3つのマイクロチャンバを含むものが使用されると好ましく、各マイクロチャンバは、その直前および直後のマイクロチャンバと、マイクロチャンバの列の方向に垂直な方向に互いに偏移した2つのオリフィスによってつながれる。
【0009】
最近では、論文:A single cell electroporation chip, Lab on a Chip, 2005, 5 (1), 38 - 43, Michelle Khine, Adrian Lau, Cristian Ionescu-Zanetti, Jeonggi Seo and Luke P. Leeにおいて、個々の細胞に対して実施されるエレクトロポレーションによって細胞膜の透過性をどのように増大させるかが記載されている。こうすれば、そうでなければ原形質膜を透過することができないであろう極性物質(色素、薬、DNA、たんぱく質、ペプチド、およびアミノ酸など)を細胞内に導入することができる。
【0010】
論文:Flow-through micro-electroporation chip for high efficiency single-cell genetic manipulation, Sensors and Actuators A: Physical. Volume 104, Issue 3, 15 May 2003, Pages 205-212, Yong Huang, Boris Rubinskyは、とりわけ、生物学やバイオテクノロジーなどの分野で大きな関心を持たれている個々の細胞の遺伝子操作について記載している。これは、個々の細胞を正確に操作するためにマイクロ流体チャネルを利用するエレクトロポレーションチップによって得られる。知られているように、エレクトロポレーションは、強い電場を使用して細胞膜の中に構造的な再配列を導入する技術である。したがって、膜電位が膜の誘電穿孔電圧(0.2〜1.5V)を超えると、膜に孔が形成され、そうして、外部の物質が膜を通り抜けて、膜内に含有される細胞質に達することが可能になる。
【0011】
個々の細胞のエレクトロポレーションは、細胞集団内で細胞ごとに生じる変動に関する研究と、例えば特定の個々のたんぱく質の表現を活性化するまたは抑制することによって個々の細胞に特定の表現型を提供する細胞内化学に関する研究と、を可能にすることもあって、興味を持たれている技術である。したがって、チップ上に実装されたマトリックスの使用に基づく技術を使用すれば、DNAおよびたんぱく質の表現型と、特定の細胞標的(例えば受容体)に方向付けられた化合物(例えば薬)と、の両方に関係付けられたHTSテスト(ハイスループットスクリーニング)のための装置を作成することが可能である。
【0012】
個々の細胞のエレクトロポレーションは、通常使用されているバルク式のエレクトロポレーションの手順と比較して有利な技術でもある。このようなエレクトロポレーションの手順は、非常に高い電圧(>103V)を必要とし、個々の細胞の浸透性を有効に制御することができないので、例えば、事前に空けられた孔を閉じなおすのが困難である。
【0013】
個々の細胞のエレクトロポレーションを達成するためにこれまで成されてきた試みは、炭素繊維のマイクロ電極(Lundqvist et al., 1998)の使用から、電解質を充填されたキャピラリー、マイクロピペット、およびマイクロ製造されたチップなどのその他の技術まで多岐にわたる。
【0014】
マイクロ製造されたデバイスは、個々の細胞を分離するにも電場の焦点を合わせるにも理想的である。
【0015】
最後に、論文:“Controlling cell destruction using dielectrophoretic forces”, A. Menachery and R. Pethig, IEE Proc.-Nanobiotechnol., Vol. 152, No. 4, August 2005は、溝付き構造のすなわちポリノミアルな電極における、様々なタイプの細胞についての細胞の溶解に関する研究を報告し、混合中に存在する様々なタイプの細胞の差別的溶解(あるタイプの細胞は溶解させるが別のタイプの細胞は維持するような周波数および振幅を選択する)を提起している。
【0016】
しかしながら、電極は、細胞より大幅に大きいので、このアプローチを使用することは勧められず、個々の細胞をそれらのタイプによらずに選択的に破壊するためにこのアプローチを使用することは、恐らくは不可能である。事実、比較的大きな電極に対する位置(したがってそれらが受ける場の強度)は、かなり変動するので、この方法は、各種の細胞に対して均一的に働くことができない。
【0017】
溶解は、クロスオーバー周波数(それを越えると細胞が負の誘電泳動(nDEP)から正の誘電泳動(pDEP)に移るような周波数)と、それを超えると膜の緩和定数の超過ゆえに膜の電位が減衰されるような周波数と、の間の周波数間隔の場を使用して導入されることが好ましい。
【発明の開示】
【0018】
本発明の狙いは、細胞に代表される粒子を含有する流体サンプルに働きかけて、個々の細胞の生成および/もしくは分離、ならびに/または1つもしくは複数の細胞の形質転換を行うための、方法であって、先行技術について説明された制限および/または不都合をともなわないような、方法を提供することにある。
【0019】
とりわけ、本発明の狙いは、サンプル中に存在する各粒子の位置の制御に作用することによって、上記粒子を決定論的にシフトさせること、各細胞に選択的に働きかけること、および/または溶解や融合などの動作をより有効的に実施すること、にある。
【0020】
以下において、「複数の粒子」または「粒子」という用語は、細胞、細胞成分、ウィルス、リポソーム、ニオソームなど、天然または人工の、マイクロメートル規模またはナノメートル規模の実体を示すために使用される。ときには、細胞という用語も使用されるが、これは、別段の定めのない限り、粒子の、より詳しく上述された意味での非限定的な使用例として理解されなければならない。
【0021】
したがって、本発明は、請求項1,11,12,13、15に記載の方法に関するものである。
【0022】
本発明は、また、請求項17に記載の装置に関するものである。
【0023】
とりわけ、不均一で時間変化する力の場と、集積型の光学式センサと、が使用される。力の場は、粒子についての安定平衡点のセットによって特徴付けられる正もしくは負の誘電泳動、電気泳動、または電気流体力学的運動を有してよい。
【0024】
このように、先行技術の限界は、本発明によって克服される。
【0025】
本発明にしたがった方法の実施は、低率で存在する汚染物質からも細胞のサンプルを正確に精製することを可能にする。また、遺伝物質の導入によって有効的にかつ選択的に細胞を形質転換することも可能にする。最後に、対象となる数個の細胞を不均一なサンプルから迅速に分離することを可能にする。
【0026】
添付の図面の図を参照にした、本発明のいくつかの非限定的な実施形態に関する以下の説明から、本発明のさらなる特徴および利点が明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の狙いは、粒子の操作および/または分離および/または解析のための、方法ならびに装置を成すことにある。
【0028】
本発明の方法は、個々の粒子または複数粒子のグループ(CELL)を安定平衡位置(CAGE)に向けて引き付ける不均一な力の場(F)の使用に基づく(図1)。この場は、例えば、負(NDEP)もしくは正(PDEDP)の誘電泳動の場(DEP)、または電気流体力学的運動の場(EHD)であってよい。
【0029】
細胞に施される処理は、細胞膜の恒久的破裂または2つの粒子の融合を誘発することができる局在的電場の印加に基づくものである。
【0030】
方法は、また、例えば特定の電極の近くにある粒子のタイプをチェックする必要がある全てのステップにおいて、好ましくは光学式および/またはインピーダンス計量式のタイプの集積型センサを活用してもよい。あるいは、同様の情報は、本発明の方法を実施されているマイクロチャンバの中身を検査することを可能にする顕微鏡に結合された非集積型の光学式センサによって取得可能であってもよい。
【0031】
力の生成
先行技術にしたがうと、基層上に形成された電極(EL)アレイによって、粒子をシフトさせるための場を生成するための、様々な方法がある。通常は、本願出願人の先行特許(図1)にしたがって、カバー(LID)が使用される。カバーは、電極であってもよく、通常は液体からなる流体中に懸濁されている粒子(CELL)を中に含むマイクロチャンバを画定する。誘電泳動(DEP)の場合、印加される電圧は、プラス符号(+)で示される周期的な同位相電圧(Vphip)およびマイナス符号(−)で示される逆位相電圧(Vphin)である。「逆位相電圧」という用語は、180度ずれた電圧を意味する。場は、空間領域(CAGE)の粒子に作用する力を生成し、それらを平衡点(PEQ)に向けて引き付ける。負のDEP(NDEP)の場合は、もしカバー(LID)が導電性の電極であれば、先行技術にしたがって、閉じられた力のケージを生成することが可能である。この場合、平衡点(MPEQ)は、もし隣接する電極が逆位相のVphip(+)につながれなおかつカバー(LID)が位相Vphin(−)につながれていれば、Vphin(−)につながれた各電極に対応する。この平衡点(MPEQ)は、液体中において、電極に対して一定の距離にあるのが普通であるので、粒子(CELL)は、定常状態で浮揚している。
【0032】
正のDEP(PDEP)の場合、平衡点(ZPEQ)は、電極を上に実現された表面にあるのが普通であり、粒子(CELL)は、定常状態でそれに接触している。PDEPの場合、その平衡点は電場の最大に対応するので、カバー内においてさらに電極を有する必要はない。電気流体力学的運動(EHD)の場合、電極の構成は、粒子を流動の最小点に向かって押すような流動を生成する。
【0033】
便宜上、以下では、本発明の方法および装置(電極として機能するカバーの使用が必要である)の説明において、粒子を移動させるステップのための作動力として、負の誘電泳動をともなう閉じられたケージを使用する態様を例にとって説明するが、本発明の目的を何ら限定するものではない。当業者ならば、以下で説明される方法および装置を、異なる作動力の使用および異なるタイプの粒子に合わせて一般化可能であることが明らかである。
【0034】
粒子の選択的溶解のための方法
溶解されるべき粒子は、電極に第1の振幅(MA)および第1の周波数(MF)の正弦波電圧を印加する上記の作動力の1つによって、2つの電極間のギャップの近くに配置される。ギャップは、10μm未満であることが好ましく、通常は、1〜3μmの付近であるので、集積回路の供給電圧(例えば2.5V、3.3V、または5V)に適合する低電圧の刺激は、粒子の不可逆的な破裂を引き起こすのに足る膜電位を決定するのに十分である。
【0035】
この刺激は、第2の振幅(ZA)および第2の周波数(ZF)の正弦波インパルスの列で構成されることが好ましい。
【0036】
電気インパルスは、細胞の溶解を誘発するために、選択された2つの電極間に印加される。
【0037】
図1は、本発明の好ましい実施形態にしたがって、力の場、および電極に印加される電圧の「パターン」(電極の(+)状態または(−)状態の構成の複合体である)の、経時変化を断面図で示している。図1(a)において、細胞(CELL)は、nDEPにあり、第1の平衡点(MPEQ)において液体中に懸濁している。図1(b)では、電極(EL)に印加される電圧のパターンが変化するので、印加される電圧の周波数、随意には振幅、そして細胞が受ける力はpDEP(FZAP)に変化する。しかしながら、電圧のパターンの変化のおかげで、溶解されるべき細胞(CELLZ)のみが大きな力を受け、したがって、新しい安定平衡点(ZPEQ)に向けて引き付けられる。電場は、その点の近くにおいて最大であり、周波数は、細胞を溶解させるのに足る膜電位が誘発されるような大きさである。
【0038】
図2は、図1と同じステップ(a)〜(d)について電極の構成をレイアウトで示している。図中、蓋に印加された電圧と同位相および逆位相の電極のパターンは、色で(同位相は灰色で、逆位相は白色で)示されている。
【0039】
溶解中、近隣領域にあるその他の細胞は、カバーと電極とがともに同位相であるゆえに、ほぼゼロの電場を受ける。したがって、この一連のパターンは、とりわけ好ましいものである。カバーに印加された電圧の振幅が、電極に印加された電圧の振幅に等しい場合、これらの細胞にかかる電場はゼロである。
【0040】
あるいは、図3(a)〜3(d)に示された一連のパターンが採用されてもよい。この場合は、灰色および白色によって表される同位相および逆位相の電極の数によって示されるように、毎回プログラムしなおす必要がある電極の数が少ないことに利点がある。これは、作動されるべき電極のパターンを得るためにメモリセルに書き込むプロセスが低速である場合に、とりわけ有利であると考えられる。そうでなければ、通常は、図2に示された先の解決方法を採用することが好ましい。
【0041】
マイクロチャンバの底面を画定する電極アレイの中に、例えば光学式のセンサが集積された場合は、溶解された細胞に対応するケージが依然として満であるかもしくは空であるかを調べるために、本願出願人の上記国際特許出願第PCT IB 2006000636号に記載された方法を使用して、いつ溶解が生じたかを容易にチェックすること、あるいは、溶解の結果として発生する細胞片の存在を、より良くチェックすること、が可能である。
【0042】
実質上、上述された方法を用いれば、外部刺激を印加することによって少なくとも1つの選択された粒子の破裂または溶解を生じさせるステップを概して含む方法を使用して、上記外部刺激の印加に対して高感度な粒子を選択または処理することが可能であり、
a)粒子(CELL)を、上記粒子と同程度または上記粒子より小さい寸法を有する選択可能電極のアレイの電極(EL)に近接させるステップと、上記電極(EL)を選択的に通電することによって第1の力の場(FMAN)によって上記粒子(CELL)を必要に応じて随意に編成するために、前記電極に対して第1のパターン(PMAN)の張力が印加され得ることと、
b)溶解されるべき少なくとも1つの選択された粒子(CELL)の十分近くに位置し、上記少なくとも1つの選択された粒子にその破裂または溶解を生じさせるのに適した刺激を印加するような、第2の力の場(FZAP)を形成するために、上記電極に第2のパターン(PZAP)の電圧を印加するステップと、
もまた、考えられる。
【0043】
前述のように、溶解を得るためにnDEPからpDEPへの移行を使用したい場合は、粒子は、比較的低い電気伝導性を呈するように選ばれた流体中に懸濁している。
【0044】
第1の力の場(FMAN)を生成するための第1のパターン(PMAN)の電圧は、第1の振幅(MA)および第1の周波数(MF)を示し、第2の力の場(FZAP)を生成するための第2のパターン(PZAP)の電圧は、第2の振幅(ZA)および第2の周波数(ZF)を示し、その少なくとも1つは、上記第1の振幅(MA)および第1の周波数(MF)と異なる。この場合、溶解を得るために印加される刺激は、第2の力の場(FZAP)によって少なくとも1つの選択された粒子に印加することができる力から成り、第1および第2のパターンの電圧は、ともに、AC(交流電流)の中で生成される。具体的に言うと、少なくとも1つの選択された粒子は、溶解可能な膜をともなう生物学的実体であり、説明されているこれらの例では細胞であり、印加される刺激は、少なくとも1つの選択された粒子の膜電位を膜の破裂を生じさせるような値にすることから成る。
【0045】
図2(b)に示されたものと見なすことができる、本発明の方法の考えられる変形例にしたがうと、選択された粒子を溶解させるためにその粒子に印加される刺激は、溶解されるべき選択された粒子を中に懸濁させた流体中における切り替え式の加熱である。
【0046】
高い電気伝導性を呈する流体(液体)(例えば生理溶液)中に粒子が懸濁している場合にとりわけ有利であるこの考えられる変形例にしたがうと、第2のパターン(PZAP)の電圧は、電極のアレイの中の選択された電極をジュール効果によって選択的に加熱し、それによって第2の力の場(FZAP)を生成するようなパターンの電圧であり、図2(b)において、その電極は白色で示され、その上に、例示のデバイスに供給された全電流が事実上集中している。
【0047】
この場合は、少なくとも第2のパターンの電圧が、ACまたはDC(直流電流)のいずれかの中で生成されうることが明らかである。
【0048】
いずれにせよ、本発明にしたがった上述の方法は、少なくとも1つの選択された粒子の溶解をチェックするステップを含み、これは、既に言及されている、単一チップの電極アレイと一体化されたセンサによって実施される。
【0049】
最後に、説明された方法の、考えられるさらなる変形例にしたがうと、もし溶解によって産出される細胞片を選択的に回復させることに関心がある場合は、上述されたステップb)の後に、以下の、
c)上記第1のパターン(PMAN)の電圧を再び電極に印加するステップと、
d)少なくとも1つの選択された粒子の選択された溶解産物を回復させるために、ステップc)が進行している間に低速にかつ可制御式に流体をシフトさせるステップと、
が実施されてよい。
【0050】
事実、当業者に周知のとおり、誘電泳動によって粒子の移動を生じさせる場合は、場の印加によって粒子に作用する力が粒子の半径の3乗に比例する一方で、流体力学的粘性摩擦は粒子の半径にのみ比例する。したがって、最小の粒子(この特殊なケースでは溶解の細胞片)が、粒子を懸濁させている流体の適度な洗い流しによって運ばれうるのに対し、最大の粒子(非溶解細胞)は、定常モードに配されなおかつ内部に細胞を捕捉したnDEPケージによって、(粘性による洗い流しに抵抗して)定常位置に維持される。
【0051】
説明された方法、とりわけ図1および図2にしたがった方法の有効性が、図4に示されている。280mM(ミリモル)のマンニトールと6.25mMのKClとをともなう水溶液中に懸濁された2つのRaji細胞は、アレイ中の電極が頂点間振幅3.3Vの正弦波を、そして導電性のカバー(LID)が6.6Vの振幅を有し、両者の周波数がともに50kHzであるような、電場(MF)の印加(MA)によって編成される。図4(a)を参照せよ。細胞は、逆位相の(180度ずれた)電極に取り囲まれた蓋によって、同位相の電極上に載せられる。
【0052】
その後、電極に印加される電圧のパターンは変化し、右下にある維持されるべき細胞上の電極も逆位相にする。ケージはないものの、細胞は、慣性によって同じ位置にとどまる。印加された電場は、正の誘電泳動(FZAP)を発生させるように瞬時に変化し、電場(ZF)の周波数を400kHzにする。なおもケージ内に存在している粒子(CELLZ)は、場によって今生成された正の誘電泳動の力ゆえに、電極間のギャップ上にある新しい安定平衡点に入る。図4(b)を参照せよ。その領域は、上記周波数において膜の溶解を誘発するのに足るような、電場の最大点に対応している。図4(c)を参照せよ。
【0053】
当該分野の当業者ならば、具体的には振幅も(または振幅のみを)変えるなど異なる形で電場を変化させてよいこと、あるいは例えば図5のように、操作および溶解のための初期の電極パターンを別に選択してよいことが、明らかであろう。
【0054】
この場合は、図5(a)のnDEPパターンからスタートされる。当該パターンは、次の電極パターン用のpDEP(ZPEQ)の平衡点に対して垂直に位置する平衡点(MPEQ)に粒子を配置する。このようにすると、選択された細胞はその垂直線から移動せず、細胞が溶解を生じる最大電場領域に到達するのにかかる時間は短縮されるので、溶解プロセスは加速される。
【0055】
誘電泳動操作によって補助される粒子融合のための方法
この場合は、2つの粒子が、電極(EL)によって生成される力(F)によって、同じ安定平衡点(MPEQ)の中で接触される。接触しているこの細胞対に次に印加される刺激は、2つの細胞膜を単一体に融合させるような振幅および周波数を有するように選ばれる(図6)。
【0056】
電極アレイを保持するチップに集積された、例えば光学式のセンサを用いれば、外部の顕微鏡を必要とせずに、その融合が生じたかどうかをチェックすることが可能である。
【0057】
融合の応用は、例えば、真核細胞と細菌とのハイブリッドまたは植物のハイブリッドの生成を含む。
【0058】
例えば、分化した細胞を除核された幹細胞と統合するなど、分化した細胞を幹細胞に向かわせるように再プログラムするために同様の方法を使用する可能性を、検討することができる。
【0059】
したがって、この方法にしたがえば、第1の粒子と第2の粒子との融合が生じ、第1および第2の粒子は、例えば細胞または微生物など、溶解可能な膜をともなう生物学的実体であり、粒子の膜は、外部刺激の印加に対して高感度であり、方法は、
a)上記第1および第2の粒子(CELL)を、上記粒子と同程度または上記粒子より小さい寸法を有する選択可能電極のアレイの電極(EL)に近接させるステップと、上記電極(EL)を選択的に通電することによって第1の力の場(FMAN)によって上記第1および第2の粒子(CELL)を必要に応じて随意に編成するために、前記電極に対して第1のパターン(PMAN)の張力が印加され得ることと、
b)融合されるべき少なくとも1つずつの第1および第2の選択された粒子(CELL)の十分近くに位置し、第1および第2の選択された粒子の膜を融合させるのに適した刺激をそれらの粒子に印加する第2の力の場(FZAP)を形成するために、電極に第2のパターン(PZAP)の電圧を印加するステップと、
を実施する。
【0060】
残存による細胞分離の方法
電極のアレイをともなうマイクロチャンバ内において、多数の細胞が、懸濁した状態で洗い流される。集積型のセンサ(例えば光学式および/もしくはインピーダンス計量式のもの)ならびに/または外部センサ(例えば蛍光顕微鏡もしくはそれ以外の顕微鏡に結合された光学式センサ)を使用して、各平衡点(PEQ)に見られるタイプまたは細胞が識別される。次いで、非対象の全ての細胞に、溶解のための刺激が印加され、そうして、隣接する対象細胞の活力が維持される。
【0061】
サンプルは、次いで、洗い流され、対象生細胞と、非対象細胞の溶解物とが回復される。
【0062】
このため、説明にしたがうと、対象粒子を含む粒子集団から対象粒子を分離するための方法が実施され、方法は、
a)流体中に懸濁している粒子集団を、選択可能電極のアレイを備えたマイクロチャンバに導入するステップと、
b)対象粒子を除く集団の全ての粒子を選択的に溶解させるために、上述された選択的溶解の方法を上記粒子集団に適用するステップと、
c)対象粒子を回復させるステップと、
を含むことを特徴とする。
ステップb)は、特に、電極アレイに対する対象粒子の位置が事前に知られておらず、対象粒子が所定の強度および/またはタイプの刺激(やはり事前には知られていない)に対してのみ高感度であるような特性を持っている場合は、対象粒子を除く粒子集団中の全ての粒子の選択的溶解をそうして生じるような強度および/またはタイプの刺激を上記粒子に印加するのに適した複数の電圧パターンを上記電極に印加することによって、粒子集団の全ての粒子に対して同時的におよび/または繰り返し適用される。
【0063】
異なるタイプは、例えば、対象粒子の溶解には効果的でないがそれ以外の粒子の溶解には効果的であることが知られている所定の周波数のAC電圧を印加することを含んでよい。異なる強度は、例えば、増大する強度であってよい。
【0064】
対象細胞を回復のために第2のマイクロチャンバに移動させることに基づく分離に対して、上述された方法は、以下の利点を示す。
【0065】
1. 実行の速度
細胞は、説明された作動の力(DEP、ETF、EHD)の下でゆっくり移動するので、回復のために細胞をマイクロチャンバに移動させることに基づく選別は、比較的低速である。これに対して、残存に基づいて選別動作を完了するための時間は、1つの細胞を最も近い安定平衡点(PEQ)に到達させる時間と、その細胞を溶解させる時間(約1秒)のみを必要とし、その細胞を選択マイクロチャンバ全体を経て移動させる必要がない。
【0066】
2. 冷却システムが不要
排除されるべき細胞は、マイクロチャンバの小区域毎に順番に溶解させることができる。このようにすると、発生する熱の量は、通電される面積に比例し、当該面積は、好きなだけ小さくすることができるので、たとえ導電性を有するバッファをともなう非常に大規模なチップを扱う場合でも、冷却システムは不要である。
【0067】
3. チップが非常に大規模でありうる
チップ全体を同時に通電する必要がないので、刺激をそれぞれの電極に運ぶトラック上における抵抗降下の問題も、相応して軽減される。なかでも特に、電極のアレイ全体が通電される場合は、導電性を有するバッファおよび低い電極間ピッチゆえに、(作動のためにNDEPケージが使用される際の)チップ内部におけるトラック上における抵抗降下および/または蓋の導電層上における降下は無視できない。層の一部のみが通電される場合は、管理されるべき負荷抵抗が限られ、トラック上における電圧降下は低減される。
【0068】
4. 力の場では操作することができない細胞に対する動作
細胞を事前に選択してなくても細胞に対する選択的溶解を実施することができるよう、電極マトリックスが十分に密である(細胞と同程度または細胞より小さい寸法を有する)場合でも、特に、非対象細胞と異なる特性を示すような保存されるべき細胞が、様々な周波数の電圧を電極に印加することによる刺激に対して高感度であれば、本発明の方法は、やはり完了することができる。
【0069】
5. 簡略化されたマイクロ流体パッケージ
二室のマイクロチャンバを有する必要はなく、単一の区画で十分であり、回復は、選択性である必要はないので、汚染は、回復流動の特性に関係しない。
【0070】
チップに集積されたどのセンサも、
1. 対象粒子を決定するために、そして
2. 所望でない細胞の溶解をチェックするために、使用される。
【0071】
細胞の超精製方法
濃縮技術を用いれば、対象の細胞の数倍の割合で存在する細胞を、(例えば密度勾配遠心法または磁気球による濃縮等などによって、)しばしば容易に排除することができる。しかしながら、(例えば0.1〜10%の割合で)残る少ない汚染細胞を排除して100%純粋なサンプルを得ることは、ときに困難である。これは、例えば、対象細胞を培養したいが、これらの細胞は非対象細胞よりも低速で増殖するので、たとえ非対象細胞が低率で存在する場合でも、増殖より下流ではこれらの非対象細胞が優勢になるであろう場合に、必要とされる。
【0072】
先に説明された選択方法と同様に、細胞は、マイクロチャンバに導入される。これらの細胞は、随意に、電極近くの安定平衡点(PEQ)において整列する。汚染細胞は、明らかに、適切な集積型もしくは外部のセンサを使用して、または電極に印加された溶解発生電圧の周波数などの本質的相違に基づいて、それらの細胞が識別された後に、電極を用いて溶解することによって排除される。
【0073】
この場合も、やはり、もし集積型センサが存在するならば、それらは、
1. 対象粒子を決定するために、そして
2. 所望でない細胞の溶解をチェックするために、随意に使用することができる。
100%純粋な細胞は、次いで、サンプルを洗い流すことによって回復される。
【0074】
本発明のこの態様に基づくと、ともに粒子集合内に含有される、対象粒子を汚染粒子から超(ウルトラ)精製するための方法が作動され、この方法は、上述された分離方法を、ステップb)が汚染粒子にのみ適用されるように適用することを特徴とする。
【0075】
細胞解析の方法
個々の細胞中におけるDNAおよび/またはたんぱく質の二分子レベルでの研究は、ますます関心を持たれている。本発明の態様にしたがうと、恐らくは複数の細胞から細胞を選択し、それらの選択された細胞を第1の複数の点から第2のミクロメートル寸法の複数の解析点へとシフトさせるための方法が提起される。各解析点は、最大で1つの個々の細胞を含む。細胞は、溶解され、その内容は、例えばPCRおよび/またはオンチップキャピラリー電気泳動などの既知の技術にしたがって、チップ上において解析される。
【0076】
したがって、本発明に基づいて、粒子の解析のための方法が提供され、この方法は、
a)流体中に懸濁している上記粒子をマイクロチャンバに導入するステップと、
b)上記マイクロチャンバとは別であるが上記マイクロチャンバに水圧が接続されている所定の解析点に、上記粒子の各自を選択的にシフトさせるステップと、
c)上記所定の解析点に存在する上記粒子に、上述のような選択的溶解の方法を適用するステップと、
d)上記粒子の溶解のそれぞれの細胞片に、定義済みの解析手順をその場で適用するステップと、
を含み、上記定義済みの解析プロトコルは、PCR、オンチップキャピラリー電気泳動、およびこれらの組み合わせを含む群から選ばれることを特徴とする。
【0077】
細胞解析装置
とりわけ先の解析方法などの、説明された方法を実施するために、図7、図8、および図9に示されるような装置が優先的に使用される。装置(図7)は、先行技術と同様に電極のアレイを含むが、主要マイクロチャンバ(CHM)と、複数の二次的マイクロチャンバ(CHJ)とによって特徴付けられる。主要マイクロチャンバは、入口(IM1)および出口(OM1)の各々を通して、少なくとも1つの細胞を含むサンプルで満たされてよい。各二次的マイクロチャンバ(CHJ)は、図7に示されるように、細胞の寸法より大きく、好ましくは細胞に実質的と同程度の寸法である。好ましくは、各二次的マイクロチャンバは、解析に必要な時間中にサンプルがその他のマイクロチャンバへの拡散および汚染によって分散することを阻止する(回避するまたは少なくとも制限する)のに十分である構成(長さおよび/または形状)を有したチャネル(LCHG)を通して主要マイクロチャンバにつながれる。考えられる変形例(図8)にしたがうと、溶解のための複数の二次的マイクロチャンバ(CHLJ)は、例えば十字接合(TJ)によって、オンチップキャピラリー電気泳動のためのチャネルにつながれている。あるいは、先行技術にしたがって、キャピラリー電気泳動のための一連のチャネルを、二重T字接合をともなうように作成してもよい。随意には、キャピラリー電気泳動のためのチャネルの端には、解析された化合物が接合(十字または二重T字)からセンサそれ自体へと移動する時間に基づいて電気泳動図を作成することができるインピーダンス計量式および/または光学式の集積型センサ(SENS_J)がある。図9には、さらなる変形例が示されており、上記複数の各マイクロチャンバは、各二次的マイクロチャンバの流体出口(OJ)を通じて電気泳動のためのキャピラリー(CAPJ)につながれている。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】操作装置において実施される本発明にしたがった第1の方法のステップの立断面を概略的に示す図である。
【図2】図1と同じ装置によって実施される図1の方法のステップを、上からの視点のレイアウトで示す図である。
【図3】考えられる図1および図2の方法の変形例を、図2と同じ視点で示す図である。
【図4】図1の方法の作動の順序を写真で示す図である。
【図5】図1の方法のさらなる変形例を、図2と同じ視点で示す図である。
【図6】本発明にしたがったさらなる粒子操作方法を、図2と同じ視点で示す図である。
【図7】本発明の方法を特に有利に作動させるための装置の各種の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の方法を特に有利に作動させるための装置の各種の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の方法を特に有利に作動させるための装置の各種の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部刺激を印加することによって少なくとも1つの選択された粒子の破裂/溶解を生じさせるステップを備え、外部刺激の印加に対して高感度な粒子の選択または処理のための方法であって、
a)前記粒子(CELL)を、前記粒子と同程度または前記粒子より小さい寸法を有する選択可能電極のアレイの電極(EL)に近接させるステップと、前記電極(EL)を選択的に通電することによって、第1の力の場(FMAN)によって前記粒子(CELL)を必要に応じて随意に編成するために、前記電極には第1のパターン(PMAN)の張力が印加され得ることと、
b)溶解されるべき少なくとも1つの選択された粒子(CELL)の十分近くに位置し、前記少なくとも1つの選択された粒子にその破裂または溶解を生じさせるのに適した刺激を印加するような、第2の力の場(FZAP)を形成するために、前記電極に第2のパターン(PZAP)の電圧を印加するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記刺激は、溶解されるべき前記少なくとも1つの選択された粒子が浸漬されている流体の局所的加熱であること、を特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記第2のパターン(PZAP)の電圧は、前記電極のアレイ中の選択された電極をジュール効果によって選択的に加熱し、それによって前記第2の力の場(FZAP)を生成するようなパターンの電圧であること、を特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法であって、
前記第2のパターンの電圧は、ACまたはDCのいずれにおいても生成されること、を特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の力の場(FMAN)を生成するための前記第1のパターン(PMAN)の電圧は、第1の振幅(MA)および第1の周波数(MF)を示し、前記第2の力の場(FZAP)を生成するための前記第2のパターン(PZAP)の電圧は、第2の振幅(ZA)および第2の周波数(ZF)を示す、その少なくとも一方は、前記第1の振幅(MA)および前記第1の周波数(MF)とは異なること、を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記刺激は、前記第2の力の場(FZAP)によって前記少なくとも1つの選択された粒子に印加可能な力であり、前記第2のパターンの電圧は、AC中に生成されること、を特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの選択された粒子は、例えば細胞など、溶解可能な膜をともなう生物学的実体であり、前記刺激は、前記少なくとも1つの選択された粒子の膜電位を膜の破裂を生じさせるような値にすることから成ること、を特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法であって、
前記方法は、単一チップの前記電極のアレイと一体化されたセンサによって実施されることが好ましい、前記少なくとも1つの選択された粒子の溶解をチェックするステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の方法であって、
前記粒子は、流体中に懸濁されており、
前記方法は、ステップb)の後に、
c)前記第1のパターン(PMAN)の電圧を前記電極に印加するステップと、
d)前記少なくとも1つの選択された粒子の選択された溶解産物を回復させるために、ステップc)が進行している間に低速にかつ制御式に前記流体をシフトさせるステップと、
を備えること、を特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の方法であって、
前記粒子は、流体中に懸濁されており、前記流体は、比較的低い電気伝導性を示すように選ばれること、を特徴とする方法。
【請求項11】
対象粒子を、前記対象粒子を含む粒子集団から分離するための方法であって、
a)流体中に懸濁された前記粒子集団をマイクロチャンバに導入し、前記粒子(CELL)を、前記マイクロチャンバ内に提供され粒子と同程度または粒子より小さい寸法を有する選択可能電極のアレイの電極(EL)に近接させるステップと、前記電極(EL)を選択的に通電することによって、第1の力の場(FMAN)によって前記粒子(CELL)を必要に応じて随意に編成するために、前記電極に対して第1のパターン(PMAN)の張力が印加され得ることと、
b)対象粒子を除く前記粒子集団の全ての粒子の十分近くに位置し、前記対象粒子を除く全ての粒子を選択的に溶解させるのに適した刺激をそれらの粒子に印加するような、第2の力の場(FZAP)を形成するために、前記電極に第2のパターン(PZAP)の電圧を印加するステップと、
c)対象粒子を回復させるステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記ステップb)は、対象粒子を除く粒子集団中の全ての粒子を選択的に溶解させるような強度および/またはタイプの刺激を前記粒子に印加するのに適した複数の電圧パターンを前記電極に印加することによって、粒子集団の全ての粒子に同時的におよび/または繰り返し適用されること、を特徴とする方法。
【請求項13】
対象粒子を汚染粒子から超精製するための方法であって、前記汚染粒子および前記対象粒子は、ともに、粒子集団中に含まれ、前記方法は、請求項11または12に記載の分離方法が、ステップb)が前記汚染粒子にのみ適用されるように適用されること、を特徴とする方法。
【請求項14】
粒子の解析のための方法であって、
a)流体中に懸濁している前記粒子をマイクロチャンバに導入するステップと、
b)前記マイクロチャンバとは別であるが前記マイクロチャンバに水圧で接続されている所定の解析点に、前記粒子の各々を選択的にシフトさせるステップと、
c)前記所定の解析点に存在する前記粒子に、請求項1ないし8のいずれかに記載の方法を適用するステップと、
d)前記粒子の溶解のそれぞれの細胞片に、定義済みの解析手順をその場で適用するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記定義済みの解析プロトコルは、PCR、オンチップキャピラリー電気泳動、およびこれらの組み合わせを含む群から選ばれる、方法。
【請求項16】
細胞または微生物など、溶解可能で外部刺激の印加に対して高感度な膜をともなう生物学的実体である、第1の粒子を第2の粒子と融合させるための方法であって、
a)前記粒子(CELL)を、前記粒子と同程度または前記粒子より小さい寸法を有する選択可能電極のアレイの電極(EL)に近接させるステップと、前記電極(EL)を選択的に通電することによって、第1の力の場(FMAN)によって前記粒子(CELL)を必要に応じて随意に編成するために、前記電極に対して第1のパターン(PMAN)の張力が印加されてよい、ステップと
b)融合されるべき少なくとも1つずつの第1および第2の選択された粒子の十分近くに位置し、前記第1および第2の選択された粒子の膜を融合させるのに適した刺激をそれらの粒子に印加するような、第2の力の場(FZAP)を形成するために、前記電極に第2のパターン(PZAP)の電圧を印加するステップと、
を備える方法。
【請求項17】
流体中に懸濁された粒子を含有するように適応され、選択可能でアドレス可能な電極のアレイを備えている、少なくとも1つの第1のマイクロチャンバを備え、前記電極は、前記粒子と同程度または前記粒子より小さい寸法を有し、前記電極に対する第1のパターン(PMAN)の電圧の印加に対応して第1の力の場(FMAN)を生成するように適応されている、粒子の選択および処理のための装置であって、
複数の第2のマイクロチャンバを更に備えることを特徴とし、前記第2のマイクロチャンバの各々は、前記粒子と同程度が前記粒子よりも大きい寸法を有し、少なくとも1つの電極を備え、前記電極は、選択的に作動および選択されてよく、第2のマイクロチャンバの前記少なくとも1つの電極の十分近くに位置し前記少なくとも1つの電極に対する第2のパターン(PZAP)の電圧の印加に対応する第2の力の場(FZAP)を生成するように適応され、前記第2のマイクロチャンバは、前記流体中に懸濁している少なくとも1つの選択された前記粒子を、前記少なくとも1つの第1のマイクロチャンバと前記第2のマイクロチャンバとの間および前記第2のマイクロチャンバそれら自体の間におけるあらゆる拡散性の現象を阻止するまたは少なくとも実質的に減速させるような構成を有するそれぞれのチャネルを通じて受け取るように適応された形で、前記少なくとも1つのマイクロチャンバに水圧で接続されている、装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、
前記第2のマイクロチャンバの少なくともいくつかは、好ましくは交差接合によって、オンチップキャピラリー電気泳動のためのチャネルにつながれること、を特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置であって、
前記オンチップキャピラリー電気泳動のためのチャネルの端には、少なくとも1つの光学式またはインピーダンス計量式のセンサが配置されていること、を特徴とする装置。
【請求項20】
請求項17に記載の装置であって、
前記第2のマイクロチャンバの少なくともいくつかは、第2のマイクロチャンバのそれぞれの流体出口を通じて電気泳動のためのキャピラリーにつながれていること、を特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−533044(P2009−533044A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504847(P2009−504847)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000963
【国際公開番号】WO2007/116312
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508127694)シリコン・バイオシステムズ・エス.ピー.エー. (6)
【氏名又は名称原語表記】SILICON BIOSYSTEMS S.P.A.
【Fターム(参考)】