細胞培養用基膜、細胞培養用基材、及び細胞培養用基材の製造方法
【課題】 生体由来の材料を使用せず、工業的な量産が容易でかつ長期保管性、耐薬品性に優れ、良好な細胞接着性、長期培養性を持ち、さらに一般的な細胞培養に用いられる生体由来のコラーゲンと類似の細胞接着形態が再現可能な細胞培養用基膜、細胞培養用基材及び細胞培養基材の製造方法を提供する。
【解決手段】 細胞接着層として下記式(I)で表される重合体膜を膜厚0.2μm以上となるように細胞培養用基材の基体上に形成する。
【化1】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【解決手段】 細胞接着層として下記式(I)で表される重合体膜を膜厚0.2μm以上となるように細胞培養用基材の基体上に形成する。
【化1】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養用基膜、細胞培養用基材、及び細胞培養用基材の製造方法に関し、より詳細には、生物学、医学、薬学、免疫学などの分野で用いられる細胞類の増殖、培養に好適に用いられる基材、株化されている一般的な細胞種に加え、マウスやラットなどの齧歯類やサル、ヒトなどの霊長類の胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell: ES cell)や、人工皮膚、人工骨、人工臓器などに用いられる機能性組織細胞などの培養に好適な細胞培養用基膜、細胞培養用基材、及びその細胞培養用基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物や植物の細胞は、従来から種々のものが培養されており、培養技術も様々な態様のものが検討されている。細胞培養技術は、生物を対象とする様々な分野で用いられる基本技術である。特に、生命科学の分野では、医薬品の開発や病態メカニズムの解明などには欠くことのできない技術となっている。近年では、研究目的の細胞培養技術のみならず、生物学、医学、薬学、免疫学などの分野での利用を目的とした工業生産的培養方法も種々検討されている。また、医療などの分野においては、組織細胞を培養し、これを人工臓器、人工歯骨、人工皮膚などの代替組織として利用する研究も行われている。
【0003】
このような細胞培養は、通常一定の容器の中で栄養成分である培養液とともに培養が行われる。細胞培養は、その性状から、培養液の中で浮遊した状態で培養されるものと容器の底面に付着した状態で培養されるものに大きく2分される。動物細胞の多くは、物質に付着して育成される接着依存性を有しており、一般に生体外の浮遊状態では長期間生存することができない。このため、このような接着依存性を有する細胞の培養には、細胞が付着するための基材が必要とされる。
【0004】
細胞培養用基材として、シャーレ、フラスコ、マルチプレートなどが研究室レベルでは一般的である。このような器具は、主としてポリスチレン成形品の表面に低温プラズマ処理、コロナ放電処理などを施し、親水性を付与したものが市販されている。これらの器具は、足場依存性の細胞では、株化細胞、初代細胞を問わず、線維芽細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、角膜細胞などの培養に広く用いられている。また、血液系細胞として、株化したリンパ球であるいわゆる足場非依存性の浮遊細胞などにも広く使用されている。
【0005】
しかしながら、細胞の種類によっては、これらの細胞培養器具上では細胞の増殖は認められるものの、その増殖が不十分であったり、細胞の増殖形態が悪かったりする。特に、初代培養においてはそれが顕著である。そこで、コラーゲン、ゼラチンといった細胞外マトリックスやファイブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンといった接着因子などを培養面にコートし、細胞の接着性、増殖性を高めることにより対処されることが多い。
【0006】
例えば、下記の非特許文献1,2,3,4及び特許文献1,2,3などに記載のように、細胞培養基材として、シャーレにコートしたコラーゲン、コラーゲンゲル、コラーゲンスポンジ、分子架橋した三次元構造のコラーゲンシート、貫通孔を設けたコラーゲンスポンジなどを用い、これにヒト線維芽細胞やヒト角化細胞を播種、培養し、培養上皮・表皮を製造したり、ヒト線維芽細胞の上面にヒト角化細胞層を形成したりすることで、培養粘膜・皮膚を製造することが知られている。
【0007】
コラーゲンコート膜を調製するために用いるコラーゲンは、動物の結合組織などから酸や酵素で可溶化したタイプIコラーゲンである。このコラーゲンを培養皿などにコーティングし、乾燥すればコラーゲンコート膜が得られる。このような細胞培養用基材となるコラーゲンとしては、例えばウシあるいはブタの結合組織から可溶化し、抽出されたコラーゲンが使用されている。しかしながら、近年BSE(牛海綿状脳症)や口蹄疫などの問題により、医療応用などを考慮する場合にその使用が困難になってきている。また、これら生体由来の材料は、アルコールなどの薬品によって容易に変性してしまい、またすぐに腐敗が進み長期に亘って保管することが困難であるという欠点を有する。さらに、これら従来の細胞培養用基材を使用した細胞培養方法よりも、さらに細胞増殖効率の改善された細胞培養方法が求められている。
【0008】
また、神経系の細胞の培養においては、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジンといったポリリジンを培養面にコートして使用されることが多い。ポリリジンをコートすると、神経系細胞の接着がよく、株化神経系細胞では増殖形態が良好であり、神経突起の伸長度合もよい。また、ラット胎児の脳細胞の初代培養では、神経突起の伸長が良好であり、細胞の安定化度が高く、長期の培養が可能となる。
【0009】
このように、ポリリジンは神経系細胞の培養に良好な特性を有しているが、難点として不安定なことが挙げられる。すなわち、上述したような一般の培養器具にコートした場合、ポリリジンの効果は、室温保存で2週間、4℃では1ヶ月で失活する。また、この不安定さのため、コート後滅菌を施すこともできない。そのため、ポリリジンをコートした培養器具を使用するためには、予め滅菌してある培養器具に無菌的操作を行うという面倒な方法で、使用時にポリリジンをコートする必要があり、冷蔵庫で保存しても1ヶ月程度しか使用できないという欠点がある。
【0010】
このように、ポリリジンを培養器具にコートしようとした場合には、ポリリジンの安定性と操作性に欠点があり、ポリリジンを予めコートした細胞培養器具を市販する場合には、無菌環境下での多数の作業とコート後の保存管理の困難さなどにより、コストが高くつくことになる。
【0011】
これらに鑑み、本発明者らは、上述した欠点を改善するため、特許文献4に記載のように、ポリホルミルパラキシリレンのモノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基を含む重合体を反応させて得られたアミノ基を有する重合体を含有する構成の細胞培養用基材を提案している。
【0012】
しかしながら、この手法によって製造された細胞培養用基材は、ポリホルミルパラキシリレンにシッフ塩基を反応させる条件によって、細胞接着の再現性が得られにくい場合があるという欠点がある。さらに、ポリパラキシリレンコート後にシッフ塩基を反応させる工程を含むことから、工程数が増え、コストが高くつくことになる。
【0013】
なお、ポリパラキシリレンの応用例に関して、特許文献5、6には、ポリパラキシリレンのコーティングを含む表面を有する物品に蛋白質などの巨大分子を吸着させ反応容器として利用することや、その生体適合性を利用して糖尿病患者にインシュリンを送達するための生体内装置の一部に使用することが開示されている。さらに、特許文献7、8に記載のように、表面にアミノ基やアミノメチル基を有するポリパラキシリレン誘導体膜をDNAチップ用結合剤として利用することも知られている。
【0014】
しかしながら、細胞培養用途における基材の役割としては、細胞を接着させ、さらに培養させる特性が必要となる。そのため、特許文献6に記載の技術では実際の成長培地にはコラーゲンが使用されている。また、特許文献5及び6に記載されているポリパラキシリレンやポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレンといったような一般的なポリパラキシリレン誘導体については、細胞に対する接着性がまったく無いに等しく、細胞培養用途には向かない。
【0015】
このように、ポリパラキシリレン膜そのものに何ら化学的処理を施すことなく細胞培養用基材に利用した事例は無く、特許文献7、8においても、このような細胞培養用途に適することについての記載も示唆もまったくない。さらに付け加えるならば、上述したように細胞培養用途としては、基材に対する細胞の接着性が高く、また細胞を好ましい接着形態で接着させて増殖させることが重要となり、特許文献7、8に記載されているようにDNAプローブとの結合を良好にして剥がれ落ちを抑制することとは、その要求される性能がまったく異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−292568号公報
【特許文献2】特開平8−243156号公報
【特許文献3】特開平9−47503号公報
【特許文献4】特開2008−35806号公報
【特許文献5】特開2001−233977号公報
【特許文献6】特表2000−507202号公報
【特許文献7】特開2002−340916号公報
【特許文献8】特開2003−212974号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】臨床科学34巻9号 白方裕司・橋本公二:再生医学、 X。皮膚 表皮の再生機構と培養表皮シートを用いた熱傷,水ほう症治療 P1283〜1290
【非特許文献2】名古屋大学出版会1999/10/10発行「ティッシュ・エンジニアリング繊維工学の基礎と応用」上田実編 松崎恭一・熊谷憲夫:培養皮膚P107〜117
【非特許文献3】畠堅一郎・上田実:皮膚・粘膜 Pharma Media Vol.18 No.1 2000 P25〜P29 2000
【非特許文献4】名古屋大学出版会1999/10/10発行「ティッシュ・エンジニアリング繊維工学の基礎と応用」上田実編 畠堅一郎・上田実:口腔粘膜 P118〜P127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、生体由来の材料を使用せず、工業的な量産が容易でかつ長期保管性、耐薬品性に優れ、良好な細胞接着性、長期培養性を持ち、さらに一般的な細胞培養用基材として知られている生体由来のコラーゲンと類似の細胞培養形態が再現可能な細胞培養用基膜、細胞培養用基材、及びその細胞培養用基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アミノアルキル基を有するポリパラキシリレン膜をある一定以上の膜厚でコーティングすることで特徴的な細胞接着特性を発現させることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
すなわち、本発明に係る細胞培養用基膜は、基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成される重合体膜からなり、0.2μm以上の膜厚を有する。
【0021】
【化1】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【0022】
また、本発明に係る細胞培養用基材は、基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成され、膜厚が0.2μm以上である重合体膜を有する。
【0023】
【化2】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【0024】
また、本発明に係る細胞培養用基材の製造方法は、細胞接着層として下記式(I)で表される重合体膜を膜厚0.2μm以上となるように基体上に形成する。
【0025】
【化3】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【0026】
ここで、上記細胞培養用基材の製造方法において、上記重合体膜は、下記構造式(II)で表される原料を用い、化学蒸着法により基体上に重合させ形成させることができる。
【0027】
【化4】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。)
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、コラーゲンなどの生体由来の材料を使用することなく、良好な細胞接着性を有するとともに長期培養性を有し、生体由来の材料と類似の良好な細胞接着形態で細胞を培養することができる。また、生体由来の材料を使用しないので、耐薬品性を有するとともに長期保管性を有し、取り扱いも容易で簡易な方法で培養作業を行うことができ、冷却などすることなく培養した細胞を長期に亘って安定的に保管することができる。
【0029】
また、蒸着法などの処理のみによって基材上に細胞接着層を形成することができるので、無菌環境下での処理やコーティング後の処理を行う必要がなく、容易な処理で工業的な量産が可能であり、低価格で細胞培養用基材を提供することができる。さらに、例えば3次元形状を有するような様々な形状を持つ基体や種々の材質の基体にも細胞接着層を形成することができるため応用範囲も広い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】細胞培養用基材を製造するための装置の概略構成の一例を示したブロック図である。
【図2】実施例1の3日後の培養状態を示す顕微鏡写真である。
【図3】比較例1のポリモノクロロパラキシリレンについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図4】比較例1のポリパラキシリレンについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図5】比較例1のポリテトラフルオロパラキシリレンについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図6】比較例1のモノアミノパラキシレンとパラキシリレンの共重合物について3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図7】比較例1のモノホルミルパラキシレンとパラキシリレンの共重合物について3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図8】比較例2の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図9】参考例1の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図10】実施例2の膜厚0.1μmのサンプルについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図11】実施例2の膜厚0.2μmのサンプルについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図12】実施例2の膜厚0.3μmのサンプルについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図13】実施例3の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図14】実施例4の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図15】実施例5の11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図16】比較例3のTC処理品について11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図17】比較例3のコラーゲンコート品について11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図18】比較例3の市販品について11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図19】実施例6の膜厚0.2μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図20】実施例6の膜厚0.3μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図21】実施例7の膜厚0.2μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図22】実施例7の膜厚0.3μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図23】実施例8の膜厚0.2μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図24】実施例8の膜厚0.3μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図25】実施例9の膜厚0.7μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図26】比較例4のTC処理品に対してHUVEC細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図27】比較例4のTC処理品に対してHEK293細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図28】比較例4のTC処理品に対してMCF-7細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図29】比較例4のTC処理品に対してCaco-2細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図30】比較例4のコラーゲンコート品に対してHUVEC細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図31】比較例4のコラーゲンコート品に対してHEK293細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図32】比較例4のコラーゲンコート品に対してMCF-7細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図33】比較例4のコラーゲンコート品に対してCaco-2細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図34】比較例4の市販品に対してHUVEC細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図35】比較例4の市販品に対してHEK293細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図36】比較例4の市販品に対してMCF-7細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図37】比較例4の市販品に対してCaco-2細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図38】実施例10、比較例5のマイクロアレイ解析の結果を表したクラスタ解析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。なお、本発明は、その要旨を変更しない限りにおいて、適宜変更することができる。
【0032】
本実施の形態に係る細胞培養用基材は、基体上に細胞接着層を有するものであり、この細胞接着層は下記式(I)で表される構造単位から構成される重合体膜(細胞培養用基膜)を有している。そして、細胞培養用基材は、この下記式(I)で表される重合体膜を0.2μm以上の膜厚で基体上に形成(成膜)してなっている。
【0033】
【化5】
【0034】
ここで、上記式(I)中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はH(水素)を表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは、重合度を表す正の整数である。
【0035】
この細胞培養用基材は、特に限定されるものではないが、例えば化学蒸着法、好ましくはCVD法などにより、上記式(I)で表される重合体膜を基体上に形成することによって製造することができる。
【0036】
例えば、細胞培養用基材は、原料化合物を用意し、その原料化合物を所定の減圧環境下で蒸発、分解させ、これを基体上に重合・堆積させることによって重合体膜を成膜して製造することができる。
【0037】
原料化合物としては、例えば下記式(II)で表される化合物を用いることができる。
【0038】
【化6】
【0039】
上記式(II)中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。
【0040】
上記式(II)で表される化合物は、合成効率や経済合理性などの観点から、n=1〜10、好ましくはn=1〜3の化合物を使用することができる。特に、それらの中でも、合成のし易さから、R1がn=1であり、R2がHのモノアミノメチル(2,2)パラシクロファンを用いることがより好ましい。
【0041】
なお、原料化合物として用いられる上記式(II)の化合物は、公知の方法又は公知の方法に準じた方法により合成することができる。例えば、特開2003−212974号公報などに記載されている方法を用いて合成することができる。また、商品名diX AM(第三化成(株)製)として市販されているものをそのまま用いることもできる。
【0042】
ここで、より具体的に、本実施の形態に係る細胞培養用基材の製造方法について、化学蒸着法により製造する方法について説明する。
【0043】
化学蒸着は、例えば図1に示すような蒸着装置1を用いて行うことができる。この蒸着装置1は、蒸発部11と、分解部12と、蒸着部13とを備えている。蒸発部11には、蒸発材料(原料化合物)を導入する蒸着原料投入口11aが備えられ、さらに蒸着部13には、トラップ14を介して真空ポンプ15が接続されている。
【0044】
この蒸着装置1を用いた化学蒸着は、先ず蒸発部11に、例えば上記式(II)で表されるような固体状の蒸発材料を導入する。この蒸発部11では、蒸発部11内の温度を蒸発材料が気化する温度、例えば80〜200℃、好ましくは100〜180℃に加熱することによって、蒸発材料の化合物を気化させて原料ガスを生成させる。
【0045】
次いで、生成した原料ガスを分解部12に導入する。この分解部12では、導入された原料ガスをその分解温度、例えば500〜800℃、好ましくは600〜750℃に加熱することによって、原料ガスを熱分解させてモノマーガスとする。
【0046】
次に、得られた原料モノマーガスを蒸着部13内に導入する。また、蒸着部13には、細胞培養用プレートなどの基体を導入する。蒸着部13内は、所定の真空度、例えば1〜20Pa、好ましくは2〜10Paに保持されている。そして、蒸着部13では、導入した原料モノマーガスを基体に接触させ、その基体表面で重合させることによって、上記式(I)で表される重合体膜を所定以上の膜厚となるように基体上に形成させる。
【0047】
これにより、基体上に上記(I)で表される重合体膜が細胞接着層として形成された細胞培養用基材を製造することができる。
【0048】
なお、細胞培養用基材の基体上に細胞接着層としての上記式(I)で表される重合体膜を形成させることに先立って、例えばクロロ置換(2,2)パラシクロファン、好ましくはジクロロ(2,2)パラシクロファンなどの化学蒸着物を下地として形成するようにしてもよい。これにより、細胞接着層の強度を向上させることができ、また基体との密着性を向上させることができる。
【0049】
このように、上記式(I)で表される重合体膜を化学蒸着法によって基体上に形成させて細胞培養用基材を製造する方法によれば、原料を蒸発して熱分解させて得られたモノマーガスが細胞培養用基材を構成する基体表面上に接触することで重合体膜の形成が行われるため、基体上に均一でかつ所望とする膜厚の重合体膜を形成させることが可能となり、例えば三次元立体構造物などの複雑な構造を持つ基体への応用も可能となる。
【0050】
なお、基体としては、特に限定されないが、透明なガラス、シリコン又はポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAなどのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどのポリマーであることが好ましい。また、その他、紙や金属、あるいは繊維などを基体として用いることもできる。また、体内に挿入したり、三次元構造を構築したりするための基体としては、組織適合性や生分解性などの特質を備えたものが望ましい。なお、用意した基体は、公知の手法にてシランカップ処理を行ってもよく、酸素プラズマ処理などの公知の表面処理を施すこともできる。これにより、細胞接着層との密着性を向上させることができる。
【0051】
ここで、上述したように、細胞培養用基材の基体上に形成させる重合体膜は、その膜厚を約0.2μm以上とし、より好ましくは約0.3μm以上とする。このように、上記式(I)で表される重合体膜を約0.2μm以上の膜厚で基体上に形成させることにより、培養した細胞の接着形態を間葉細胞様に発現させることができる。すなわち、間葉系細胞に適した培養環境を形成することができる。
【0052】
間葉細胞様に接着した細胞は、細胞外マトリックスである重合体膜との接着性が高い。したがって、このように細胞を間葉細胞様の形態により接着させることができる細胞培養用基材によれば、より一層に細胞の接着強度を高めることができ、安定的に細胞を増殖させることができる。また、間葉細胞様に細胞を接着させることができることにより、接着した細胞の遊走能を高めることが可能となり、限られたスペースでも多量の細胞を増殖させて培養することができる。また、特に、胚性幹細胞(ES細胞)や、人工皮膚、人工骨、人工臓器などに用いられる機能性組織細胞などの培養においては、間葉細胞様に細胞を接着させることによって分化の進行を制御できるため、これらの細胞の培養に好適に用いることができる。
【0053】
なお、基体上の形成する重合体膜の膜厚の上限は、上述した効果を奏することができれば特に限定されるものではない。ただし、経済合理性などの観点からすれば、10μm以下とするのがよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態に係る細胞培養用基材は、基体上に細胞接着層として上記式(I)で表される構造単位から構成され、膜厚が約0.2μm以上である重合体膜を有している。このような細胞培養用基材によれば、良好な接着強度で安定的に細胞を接着させることができ、細胞が剥がれることなく長期に亘って再現性よく培養することができる。また、間葉細胞様の接着形態で細胞を接着させることができるので、細胞を効果的に増殖させることができる。
【0055】
また、従来のようなコラーゲンなどの生体由来の材料を使用していないことから、耐薬品性を有するとともに長期保管性を有する。すなわち、従来、細胞培養用基材に用いられてきたコラーゲンなど生体由来の材料は、アルコールなどの薬品により容易に変性、失活してしまうという欠点があった。また、生体由来の材料であることにより、すぐに腐敗が進み、保存に際しては所定の温度以下まで冷却することを要し、冷却環境下でも長期の保存は困難であった。これに対し、本実施の形態に係る細胞培養用基材では、生体由来の材料を使用していないことから、アルコールなどによっても変性や失活が生じず、したがってアルコールなどの薬品を用いた簡易的な殺菌、洗浄処理などの前処理のみによって培養に供することができる。また、冷却などすることなく培養した細胞を長期に亘って安定的に保管することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態に係る細胞培養用基材は、化学蒸着法などの処理のみによって基体上に上述した重合体膜を形成させて製造できるので、無菌環境下での処理やその細胞接着層をコーティングした後に別途化学的処理を行う必要がなく、簡易な処理で容易に工業的な量産を行うことができる。
【0057】
なお、上述のようなアルコールなどによる簡易な殺菌、洗浄処理ではなく、培養に供するに先立ち、当然に、製造された細胞培養用基材を滅菌処理することもできる。滅菌方法については、特に限定されるものではなく、オートクレーブ、ガンマ線、電子線、EOG(エチレンオキサイドガス)などにより行うことができ、好ましくは電子線による滅菌、より好ましくは無酸素環境下での電子滅菌を用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
<細胞接着層を有する基材の作製・ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養>
[実施例1]
(細胞接着層を有する基材の作製)
(1)基体の準備
基体として市販されているポリスチレン製の24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC(Tissue Culture)処理品,BECTON DICKINSON社製)を準備し、細胞接着層の原材料として、下記構造式(II)で表される化合物であってR1が−CH2NH2、R2がHを表す化合物であるモノアミノメチル(2,2)パラシクロファン(diX AM 第三化成(株)製)を準備した。
【0060】
【化7】
【0061】
(2)重合体膜の形成
次いで、図1に示したような蒸着装置1において、蒸発部11に、準備した固体状の蒸着原料であるモノアミノメチル(2,2)パラシクロファン8gを蒸着原料投入口11aから導入した。また、蒸着部13に、基体であるポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートを導入した。その後、真空ポンプ15を使用し、装置系内を1.7Paの真空度に保ち、110℃〜115℃に徐々に加熱した。すると、蒸着原料が気化してダイマーガスとなり、原料ガスが生成した。
【0062】
次いで、生成した原料ガスを600℃に加熱した分解部12に導入した。この分解部12においては、下記反応スキームに示されるように、導入した原料ガスを熱分解によってモノマーガス(III)とした。
【0063】
次に、得られたモノマーガス(III)を蒸着部13に導入した。蒸着部13内は、最大6Paの真空度に保持した。そして、導入したモノマーガス(III)を、蒸着部13内に設置されたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの表面で重合させ、下記反応スキームに示されるように上記式(I)で示される重合体の膜を形成させて、細胞培養用基材を作製した。このとき、形成された重合体膜の平均膜厚は1.1μmであった。
【0064】
【化8】
【0065】
(ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養)
上述のようにして得られた細胞培養用基材について、70%エタノールを24WELLプレートの各ウェルにつき2mlを入れ、15分間クリーンベンチ内に静置した。その後、滅菌水にてウェルを洗浄し、乾燥させることでアルコール殺菌した後、ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。培養条件としては、24WELLプレートに、1WELLにつき8.0×104の細胞を播種し、10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−アムホテリシンB懸濁液、1%非必須アミノ酸を添加したDMEM(低グルコース)を培地として、5%CO2大気下にて培養を行った。
【0066】
図2に、実施例1において実施した3日後の培養状態を示す。
【0067】
[比較例1]
(他のポリパラキシリレン誘導体での細胞培養用基材の作製・HepG2 細胞の培養)
比較例1では、蒸着原料として、ジクロロ(2,2)パラシクロファン(商品名 diX C 第三化成(株)製)、(2,2)パラシクロファン(商品名 diX N 第三化成(株)製)、オクタフルオロ(2,2)パラシクロファン(商品名 diX SF 第三化成(株)製)、モノアミノ(2,2)パラシクロファン(商品名 diX A 第三化成(株)製)、モノホルミル(2,2)パラシクロファン(商品名 diX H 第三化成(株)製)の5種類を準備し、実施例1と同様の手法にて重合体膜の形成を行い、細胞培養用基材を作製した。
【0068】
次いで、得られた5種類の試験サンプル(細胞培養用基材)を用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養試験を実施した。
【0069】
図3〜図7に、それぞれ、比較例1のポリモノクロロパラキシリレン、ポリパラキシリレン、ポリテトラフルオロパラキシリレン、モノアミノパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物、モノホルミルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0070】
[比較例2]
(一般的に用いられている細胞培養用基材でのHepG2 細胞の培養)
比較例2では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC(Tissue Culture)処理品)を用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養試験を実施した。
【0071】
図8に、比較例2において実施した3日後の培養状態を示す。
【0072】
[参考例1]
(コラーゲンコートされた細胞培養用基材でのHepG2 細胞の培養)
参考例1として、一般的に細胞培養に使用されているコラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートを用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養試験を実施した。
【0073】
図9に、参考例1において実施した3日後の培養状態を示す。
【0074】
表1に、実施例1、比較例1、2、及び参考例1にて実施したヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養結果を示す。なお、表1の細胞接着能の評価において、「◎」、「○」、「△」、「×」は接着強度を示し、その接着強度としては◎>〇>△>×である。ただし、「×」については細胞接着能を有しないことを示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示した培養結果から明らかなように、ポリパラキシリレン誘導体膜の中で、実施例1のモノアミノメチルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物以外は、細胞接着性が無く、又は接着してもその接着強度が非常に弱く、細胞培養用基材としては適当でないことが分かる。それに対して、実施例1のモノアミノメチルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物では、良好な細胞接着性を有し、またその接着強度も非常に強かった。また、実施例1のモノアミノメチルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物では、良好な細胞接着性を有していたとともに、参考例1に示したコラーゲンコートと同様に、間葉細胞様の細胞接着形態を示した。
【0077】
<細胞接着層の膜厚を変化させた場合のHepG2 細胞の培養>
[実施例2]
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから、それぞれ膜厚0.1μm、0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。
【0078】
図10〜図12に、それぞれ、実施例2の膜厚0.1μm、0.2μm、0.3μmとしたときの3日後の培養状態を示す。
【0079】
表2に、各膜厚の重合体膜を形成させた細胞培養用基材を用いて実施した培養結果を示す。なお、この表2には、上記実施例1及び比較例2の培養結果も併せて示す。表2の細胞接着能の評価において、「◎」、「○」は上記表1と同じく細胞接着能を有することを示し、その接着強度は◎>〇である。
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示した培養結果から明らかなように、いずれの膜厚においても、細胞接着能を有していた。しかしながら、細胞接着層の膜厚が0.1μmの場合では、比較例2のTC処理品での培養と差異はなく、接着形態としても上皮細胞様となった。
【0082】
一方で、細胞接着層の膜厚が0.2μm以上の場合には、良好な細胞接着能を有するとともにその接着強度も非常に強く、また接着形態も間葉細胞様が確認され、培養させた細胞が良好に増殖し得る細胞形態で接着しており、細胞接着層の効果が十分に発揮されていた。
【0083】
<無酸素環境下での電子線滅菌によるHepG2 細胞の培養>
[実施例3]
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.6μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、無酸素環境下で12kGyの電子線を照射することによって滅菌を行って、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。
【0084】
その結果、実施例1の結果と同様に、良好な細胞接着能を有し、また間葉細胞様の接着形態を示し、細胞接着層の効果が十分に発揮されていた。なお、図13に、実施例3において実施した3日後の培養状態を示す。
【0085】
<ポリパラキシリレン誘導体の積層によるHepG2 細胞の培養>
[実施例4]
ポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの表面に膜厚2.4μmのポリモノクロロパラキシリレンの重合体膜を形成した後に、実施例1と同様の手法に従ってモノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚1.1μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製した。すなわち、ポリモノクロロパラキシリレンを下地として形成した後に、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンにより重合体膜を形成した。
【0086】
そして、得られた細胞培養用基材を用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。
【0087】
その結果、実施例1の結果と同様に、良好な細胞接着能を有し、また間葉細胞様の接着形態を示し、細胞接着層の効果が十分に発揮されていた。なお、図14に、実施例4において実施した3日後の培養状態を示す。
【0088】
<HepG2 細胞の長期培養>
[実施例5]
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚1.0μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の最長11日間の長期培養試験を行った。
【0089】
培養条件としては、重合体膜を形成した24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの各ウェルに1mlの細胞培養用液体培地を入れ、HepG2細胞を播種し、37℃、5%CO2大気下において11日間細胞培養を行った。なお、細胞培養用液体培地は、一般的に使用されているDMEM(低グルコース)を使用し、10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−アムホテリシンB懸濁液、1%非必須アミノ酸を添加したものを用いた。なお、本試験は長期培養のため、1日おきに培地交換を実施した。
【0090】
図15に、実施例5において実施した11日後の培養状態を示す。
【0091】
[比較例3]
(一般的に使用されている細胞培養用基材でのHepG2 細胞の長期培養)
比較例3では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC処理品)、コラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート、及び市販品(BD社製 PureCoat Amine)を用いて、実施例5と同様の培養条件にてヒト肝癌由来 HepG2 細胞の長期培養試験を実施した。
【0092】
図16〜図18に、それぞれ、比較例3のTC処理品、コラーゲンコート品、市販品を用いて実施した11日後の培養状態を示す。
【0093】
表3に、実施例5及び比較例3にて実施したヒト肝癌由来 HepG2 細胞の長期培養結果を示す。なお、表3の細胞接着能の評価において、「◎」及び「○」については共に細胞接着能を有することを示し、その接着強度としては◎>○である。
【0094】
【表3】
【0095】
表3に示した培養結果から明らかなように、比較例3のTC処理品では細胞接着能は有していたものの、その接着強度は弱く完全には接着していない細胞も存在していた。また、TC処理品では、細胞の接着形態として上皮細胞様に接着しており、培養した細胞が十分に増殖し得る形態ではなかった。また、BD社製PureCoat Amineでは、短期的には十分な強度で細胞を接着させ、また各プレートにおいて各々の形態を保持しつつ増殖したが、細胞が剥がれてしまい、長期培養を行うことができなかった。
【0096】
これらに対し、実施例5では、細胞接着能を有し、その接着強度も非常に強く良好であった。また、接着した細胞の形態も間葉細胞様であり、培養した細胞が十分に増殖し得る形態であった。さらに、増殖した細胞が剥がれてしまうことなく長期間に亘って細胞を保持しつつ増殖し、長期培養を行うことができた。
【0097】
<その他の細胞の培養>
[実施例6]
(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞HUVECの培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞HUVECの培養を行った。
【0098】
培養条件としては、重合体膜を形成した24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの各ウェルに1mlの細胞培養用液体培地を入れ、HUVECを播種し、37℃、5%CO2大気下において11日間細胞培養を行った。なお、細胞培養用液体培地は、HUVEC培養時に一般的に使用されているEGM−2を使用した。
【0099】
図19に、実施例6において膜厚0.2μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。また、図20に、実施例6において膜厚0.3μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0100】
[実施例7]
(ヒト胎児腎由来HEK293細胞の培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト胎児腎由来HEK293細胞の培養を行った。培養条件、培養手法は、実施例6の手法に従って同様に行った。
【0101】
図21に、実施例7において膜厚0.2μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。また、図22に、実施例7において膜厚0.3μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0102】
[実施例8]
(ヒト乳癌由来MCF-7細胞の培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト乳癌由来MCF-7細胞の培養を行った。培養条件、培養手法は、実施例6の手法に従って同様に行った。
【0103】
図23に、実施例8において膜厚0.2μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。また、図24に、実施例8において膜厚0.3μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0104】
[実施例9]
(ヒト結腸癌由来Caco-2細胞の培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.7μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト結腸癌由来Caco-2細胞の培養を行った。培養条件、培養手法は、実施例6の手法に従って同様に行った。
【0105】
図25に、実施例9において膜厚0.7μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0106】
[比較例4]
(一般的に用いられている細胞培養用基材での細胞培養)
比較例4では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC処理品)、コラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート、及び市販品(BD社製 PureCoat Amine)を用いて、上述した実施例6〜9と同様の手法にてヒト臍帯静脈血管内皮細胞HUVEC、ヒト胎児腎由来HEK293細胞、ヒト乳癌由来MCF-7細胞、及びヒト結腸癌由来Caco-2細胞の培養を実施した。
【0107】
図26〜図29に、それぞれ、比較例4のTC処理品を用いて実施したHUVEC細胞、HEK293細胞、MCF-7細胞、Caco-2細胞の3日後の培養状態を示す。また、図30〜図33に、それぞれ、比較例4のコラーゲンコート品を用いて実施したHUVEC細胞、HEK293細胞、MCF-7細胞、Caco-2細胞の3日後の培養状態を示す。また、図34〜図37に、それぞれ、市販品を用いて実施したHUVEC細胞、HEK293細胞、MCF-7細胞、Caco-2細胞の3日後の培養状態を示す。
【0108】
表4に、実施例6〜9にて実施した各種細胞の培養結果を示し、表5に、比較例4にて実施した各種細胞の培養結果を示す。なお、表4及び表5に示す接着性の検討結果は、培養5日目における結果であり、「○」は細胞接着能を有することを示し、「×」は細胞接着能を有しないことを示す。「−」は試験を実施していない条件であることを示す。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
表4及び表5の培養結果から明らかなように、HUVEC及びCaco-2細胞は、どのプレートにおいても接着していたが、HEK293細胞及びMCF-7細胞は、比較例4で使用したBD社製PureCoat Amineには接着していなかった。これに対し、実施例6〜9で使用した細胞培養用基材では、全ての細胞が接着し、良好な細胞接着能を有した。このことから、実施例6〜9で使用した細胞培養用基材には、細胞種依存性がないことが分かった。
【0112】
<培養したヒト肝癌由来 HepG2 細胞のマイクロアレイ解析>
[実施例10]
実施例1と同様の手法に従ってモノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.5μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、実施例5と同様の手法に従ってHepG2細胞の培養を行った。次いで、培養したHepG2細胞から、RNeasy Mini Kit (QIAGEN)を用いて全RNAの抽出・精製を行い、全RNAをタカラバイオ社に送付し、マイクロアレイ解析を委託した。その後、得られた解析データの品質管理を行い、通常のTC処理プレートでの培養時に比べて2倍以上上昇した遺伝子を抽出し、Cluster 3を用いてクラスタ解析を行った。また、可視化にはJava TreeViewを使用した。
【0113】
[比較例5]
(一般的に用いられている細胞培養用基材でヒト肝癌由来 HepG2 細胞を培養した場合のマイクロアレイ解析)
比較例5では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC処理品)、コラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート、及び市販品(BD社製 PureCoat Amine)を用いて、上述した実施例10と同様の手法にて培養したHepG2細胞のマイクロアレイ解析を実施した。
【0114】
図38に、実施例10及び比較例5にて培養したヒト肝癌由来 HepG2 細胞のマイクロアレイ解析結果を示す。
【0115】
図38から明らかなように、クラスタ解析の結果、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから得られた重合体膜で培養した場合と、コラーゲンコートプレートで培養した場合とで、発現上昇してくる遺伝子のパターンが似ていることが分かる。一方、PureCoat Amineで培養した場合では、全体的にあまり遺伝子の変動がなく、コラーゲンコートプレートにおける培養とは異なっていることが見て取れる。
【符号の説明】
【0116】
11蒸発部、11a 蒸着原料投入口、12 分解部、13 蒸着部、14 トラップ、15 真空ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養用基膜、細胞培養用基材、及び細胞培養用基材の製造方法に関し、より詳細には、生物学、医学、薬学、免疫学などの分野で用いられる細胞類の増殖、培養に好適に用いられる基材、株化されている一般的な細胞種に加え、マウスやラットなどの齧歯類やサル、ヒトなどの霊長類の胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell: ES cell)や、人工皮膚、人工骨、人工臓器などに用いられる機能性組織細胞などの培養に好適な細胞培養用基膜、細胞培養用基材、及びその細胞培養用基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物や植物の細胞は、従来から種々のものが培養されており、培養技術も様々な態様のものが検討されている。細胞培養技術は、生物を対象とする様々な分野で用いられる基本技術である。特に、生命科学の分野では、医薬品の開発や病態メカニズムの解明などには欠くことのできない技術となっている。近年では、研究目的の細胞培養技術のみならず、生物学、医学、薬学、免疫学などの分野での利用を目的とした工業生産的培養方法も種々検討されている。また、医療などの分野においては、組織細胞を培養し、これを人工臓器、人工歯骨、人工皮膚などの代替組織として利用する研究も行われている。
【0003】
このような細胞培養は、通常一定の容器の中で栄養成分である培養液とともに培養が行われる。細胞培養は、その性状から、培養液の中で浮遊した状態で培養されるものと容器の底面に付着した状態で培養されるものに大きく2分される。動物細胞の多くは、物質に付着して育成される接着依存性を有しており、一般に生体外の浮遊状態では長期間生存することができない。このため、このような接着依存性を有する細胞の培養には、細胞が付着するための基材が必要とされる。
【0004】
細胞培養用基材として、シャーレ、フラスコ、マルチプレートなどが研究室レベルでは一般的である。このような器具は、主としてポリスチレン成形品の表面に低温プラズマ処理、コロナ放電処理などを施し、親水性を付与したものが市販されている。これらの器具は、足場依存性の細胞では、株化細胞、初代細胞を問わず、線維芽細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、角膜細胞などの培養に広く用いられている。また、血液系細胞として、株化したリンパ球であるいわゆる足場非依存性の浮遊細胞などにも広く使用されている。
【0005】
しかしながら、細胞の種類によっては、これらの細胞培養器具上では細胞の増殖は認められるものの、その増殖が不十分であったり、細胞の増殖形態が悪かったりする。特に、初代培養においてはそれが顕著である。そこで、コラーゲン、ゼラチンといった細胞外マトリックスやファイブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンといった接着因子などを培養面にコートし、細胞の接着性、増殖性を高めることにより対処されることが多い。
【0006】
例えば、下記の非特許文献1,2,3,4及び特許文献1,2,3などに記載のように、細胞培養基材として、シャーレにコートしたコラーゲン、コラーゲンゲル、コラーゲンスポンジ、分子架橋した三次元構造のコラーゲンシート、貫通孔を設けたコラーゲンスポンジなどを用い、これにヒト線維芽細胞やヒト角化細胞を播種、培養し、培養上皮・表皮を製造したり、ヒト線維芽細胞の上面にヒト角化細胞層を形成したりすることで、培養粘膜・皮膚を製造することが知られている。
【0007】
コラーゲンコート膜を調製するために用いるコラーゲンは、動物の結合組織などから酸や酵素で可溶化したタイプIコラーゲンである。このコラーゲンを培養皿などにコーティングし、乾燥すればコラーゲンコート膜が得られる。このような細胞培養用基材となるコラーゲンとしては、例えばウシあるいはブタの結合組織から可溶化し、抽出されたコラーゲンが使用されている。しかしながら、近年BSE(牛海綿状脳症)や口蹄疫などの問題により、医療応用などを考慮する場合にその使用が困難になってきている。また、これら生体由来の材料は、アルコールなどの薬品によって容易に変性してしまい、またすぐに腐敗が進み長期に亘って保管することが困難であるという欠点を有する。さらに、これら従来の細胞培養用基材を使用した細胞培養方法よりも、さらに細胞増殖効率の改善された細胞培養方法が求められている。
【0008】
また、神経系の細胞の培養においては、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジンといったポリリジンを培養面にコートして使用されることが多い。ポリリジンをコートすると、神経系細胞の接着がよく、株化神経系細胞では増殖形態が良好であり、神経突起の伸長度合もよい。また、ラット胎児の脳細胞の初代培養では、神経突起の伸長が良好であり、細胞の安定化度が高く、長期の培養が可能となる。
【0009】
このように、ポリリジンは神経系細胞の培養に良好な特性を有しているが、難点として不安定なことが挙げられる。すなわち、上述したような一般の培養器具にコートした場合、ポリリジンの効果は、室温保存で2週間、4℃では1ヶ月で失活する。また、この不安定さのため、コート後滅菌を施すこともできない。そのため、ポリリジンをコートした培養器具を使用するためには、予め滅菌してある培養器具に無菌的操作を行うという面倒な方法で、使用時にポリリジンをコートする必要があり、冷蔵庫で保存しても1ヶ月程度しか使用できないという欠点がある。
【0010】
このように、ポリリジンを培養器具にコートしようとした場合には、ポリリジンの安定性と操作性に欠点があり、ポリリジンを予めコートした細胞培養器具を市販する場合には、無菌環境下での多数の作業とコート後の保存管理の困難さなどにより、コストが高くつくことになる。
【0011】
これらに鑑み、本発明者らは、上述した欠点を改善するため、特許文献4に記載のように、ポリホルミルパラキシリレンのモノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基を含む重合体を反応させて得られたアミノ基を有する重合体を含有する構成の細胞培養用基材を提案している。
【0012】
しかしながら、この手法によって製造された細胞培養用基材は、ポリホルミルパラキシリレンにシッフ塩基を反応させる条件によって、細胞接着の再現性が得られにくい場合があるという欠点がある。さらに、ポリパラキシリレンコート後にシッフ塩基を反応させる工程を含むことから、工程数が増え、コストが高くつくことになる。
【0013】
なお、ポリパラキシリレンの応用例に関して、特許文献5、6には、ポリパラキシリレンのコーティングを含む表面を有する物品に蛋白質などの巨大分子を吸着させ反応容器として利用することや、その生体適合性を利用して糖尿病患者にインシュリンを送達するための生体内装置の一部に使用することが開示されている。さらに、特許文献7、8に記載のように、表面にアミノ基やアミノメチル基を有するポリパラキシリレン誘導体膜をDNAチップ用結合剤として利用することも知られている。
【0014】
しかしながら、細胞培養用途における基材の役割としては、細胞を接着させ、さらに培養させる特性が必要となる。そのため、特許文献6に記載の技術では実際の成長培地にはコラーゲンが使用されている。また、特許文献5及び6に記載されているポリパラキシリレンやポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレンといったような一般的なポリパラキシリレン誘導体については、細胞に対する接着性がまったく無いに等しく、細胞培養用途には向かない。
【0015】
このように、ポリパラキシリレン膜そのものに何ら化学的処理を施すことなく細胞培養用基材に利用した事例は無く、特許文献7、8においても、このような細胞培養用途に適することについての記載も示唆もまったくない。さらに付け加えるならば、上述したように細胞培養用途としては、基材に対する細胞の接着性が高く、また細胞を好ましい接着形態で接着させて増殖させることが重要となり、特許文献7、8に記載されているようにDNAプローブとの結合を良好にして剥がれ落ちを抑制することとは、その要求される性能がまったく異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−292568号公報
【特許文献2】特開平8−243156号公報
【特許文献3】特開平9−47503号公報
【特許文献4】特開2008−35806号公報
【特許文献5】特開2001−233977号公報
【特許文献6】特表2000−507202号公報
【特許文献7】特開2002−340916号公報
【特許文献8】特開2003−212974号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】臨床科学34巻9号 白方裕司・橋本公二:再生医学、 X。皮膚 表皮の再生機構と培養表皮シートを用いた熱傷,水ほう症治療 P1283〜1290
【非特許文献2】名古屋大学出版会1999/10/10発行「ティッシュ・エンジニアリング繊維工学の基礎と応用」上田実編 松崎恭一・熊谷憲夫:培養皮膚P107〜117
【非特許文献3】畠堅一郎・上田実:皮膚・粘膜 Pharma Media Vol.18 No.1 2000 P25〜P29 2000
【非特許文献4】名古屋大学出版会1999/10/10発行「ティッシュ・エンジニアリング繊維工学の基礎と応用」上田実編 畠堅一郎・上田実:口腔粘膜 P118〜P127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、生体由来の材料を使用せず、工業的な量産が容易でかつ長期保管性、耐薬品性に優れ、良好な細胞接着性、長期培養性を持ち、さらに一般的な細胞培養用基材として知られている生体由来のコラーゲンと類似の細胞培養形態が再現可能な細胞培養用基膜、細胞培養用基材、及びその細胞培養用基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アミノアルキル基を有するポリパラキシリレン膜をある一定以上の膜厚でコーティングすることで特徴的な細胞接着特性を発現させることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
すなわち、本発明に係る細胞培養用基膜は、基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成される重合体膜からなり、0.2μm以上の膜厚を有する。
【0021】
【化1】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【0022】
また、本発明に係る細胞培養用基材は、基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成され、膜厚が0.2μm以上である重合体膜を有する。
【0023】
【化2】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【0024】
また、本発明に係る細胞培養用基材の製造方法は、細胞接着層として下記式(I)で表される重合体膜を膜厚0.2μm以上となるように基体上に形成する。
【0025】
【化3】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【0026】
ここで、上記細胞培養用基材の製造方法において、上記重合体膜は、下記構造式(II)で表される原料を用い、化学蒸着法により基体上に重合させ形成させることができる。
【0027】
【化4】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。)
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、コラーゲンなどの生体由来の材料を使用することなく、良好な細胞接着性を有するとともに長期培養性を有し、生体由来の材料と類似の良好な細胞接着形態で細胞を培養することができる。また、生体由来の材料を使用しないので、耐薬品性を有するとともに長期保管性を有し、取り扱いも容易で簡易な方法で培養作業を行うことができ、冷却などすることなく培養した細胞を長期に亘って安定的に保管することができる。
【0029】
また、蒸着法などの処理のみによって基材上に細胞接着層を形成することができるので、無菌環境下での処理やコーティング後の処理を行う必要がなく、容易な処理で工業的な量産が可能であり、低価格で細胞培養用基材を提供することができる。さらに、例えば3次元形状を有するような様々な形状を持つ基体や種々の材質の基体にも細胞接着層を形成することができるため応用範囲も広い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】細胞培養用基材を製造するための装置の概略構成の一例を示したブロック図である。
【図2】実施例1の3日後の培養状態を示す顕微鏡写真である。
【図3】比較例1のポリモノクロロパラキシリレンについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図4】比較例1のポリパラキシリレンについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図5】比較例1のポリテトラフルオロパラキシリレンについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図6】比較例1のモノアミノパラキシレンとパラキシリレンの共重合物について3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図7】比較例1のモノホルミルパラキシレンとパラキシリレンの共重合物について3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図8】比較例2の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図9】参考例1の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図10】実施例2の膜厚0.1μmのサンプルについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図11】実施例2の膜厚0.2μmのサンプルについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図12】実施例2の膜厚0.3μmのサンプルについて3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図13】実施例3の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図14】実施例4の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図15】実施例5の11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図16】比較例3のTC処理品について11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図17】比較例3のコラーゲンコート品について11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図18】比較例3の市販品について11日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図19】実施例6の膜厚0.2μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図20】実施例6の膜厚0.3μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図21】実施例7の膜厚0.2μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図22】実施例7の膜厚0.3μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図23】実施例8の膜厚0.2μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図24】実施例8の膜厚0.3μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図25】実施例9の膜厚0.7μmのサンプルに対して3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図26】比較例4のTC処理品に対してHUVEC細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図27】比較例4のTC処理品に対してHEK293細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図28】比較例4のTC処理品に対してMCF-7細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図29】比較例4のTC処理品に対してCaco-2細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図30】比較例4のコラーゲンコート品に対してHUVEC細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図31】比較例4のコラーゲンコート品に対してHEK293細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図32】比較例4のコラーゲンコート品に対してMCF-7細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図33】比較例4のコラーゲンコート品に対してCaco-2細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図34】比較例4の市販品に対してHUVEC細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図35】比較例4の市販品に対してHEK293細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図36】比較例4の市販品に対してMCF-7細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図37】比較例4の市販品に対してCaco-2細胞の3日後の培養状態を示す倍率100倍の顕微鏡写真である。
【図38】実施例10、比較例5のマイクロアレイ解析の結果を表したクラスタ解析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。なお、本発明は、その要旨を変更しない限りにおいて、適宜変更することができる。
【0032】
本実施の形態に係る細胞培養用基材は、基体上に細胞接着層を有するものであり、この細胞接着層は下記式(I)で表される構造単位から構成される重合体膜(細胞培養用基膜)を有している。そして、細胞培養用基材は、この下記式(I)で表される重合体膜を0.2μm以上の膜厚で基体上に形成(成膜)してなっている。
【0033】
【化5】
【0034】
ここで、上記式(I)中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はH(水素)を表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは、重合度を表す正の整数である。
【0035】
この細胞培養用基材は、特に限定されるものではないが、例えば化学蒸着法、好ましくはCVD法などにより、上記式(I)で表される重合体膜を基体上に形成することによって製造することができる。
【0036】
例えば、細胞培養用基材は、原料化合物を用意し、その原料化合物を所定の減圧環境下で蒸発、分解させ、これを基体上に重合・堆積させることによって重合体膜を成膜して製造することができる。
【0037】
原料化合物としては、例えば下記式(II)で表される化合物を用いることができる。
【0038】
【化6】
【0039】
上記式(II)中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。
【0040】
上記式(II)で表される化合物は、合成効率や経済合理性などの観点から、n=1〜10、好ましくはn=1〜3の化合物を使用することができる。特に、それらの中でも、合成のし易さから、R1がn=1であり、R2がHのモノアミノメチル(2,2)パラシクロファンを用いることがより好ましい。
【0041】
なお、原料化合物として用いられる上記式(II)の化合物は、公知の方法又は公知の方法に準じた方法により合成することができる。例えば、特開2003−212974号公報などに記載されている方法を用いて合成することができる。また、商品名diX AM(第三化成(株)製)として市販されているものをそのまま用いることもできる。
【0042】
ここで、より具体的に、本実施の形態に係る細胞培養用基材の製造方法について、化学蒸着法により製造する方法について説明する。
【0043】
化学蒸着は、例えば図1に示すような蒸着装置1を用いて行うことができる。この蒸着装置1は、蒸発部11と、分解部12と、蒸着部13とを備えている。蒸発部11には、蒸発材料(原料化合物)を導入する蒸着原料投入口11aが備えられ、さらに蒸着部13には、トラップ14を介して真空ポンプ15が接続されている。
【0044】
この蒸着装置1を用いた化学蒸着は、先ず蒸発部11に、例えば上記式(II)で表されるような固体状の蒸発材料を導入する。この蒸発部11では、蒸発部11内の温度を蒸発材料が気化する温度、例えば80〜200℃、好ましくは100〜180℃に加熱することによって、蒸発材料の化合物を気化させて原料ガスを生成させる。
【0045】
次いで、生成した原料ガスを分解部12に導入する。この分解部12では、導入された原料ガスをその分解温度、例えば500〜800℃、好ましくは600〜750℃に加熱することによって、原料ガスを熱分解させてモノマーガスとする。
【0046】
次に、得られた原料モノマーガスを蒸着部13内に導入する。また、蒸着部13には、細胞培養用プレートなどの基体を導入する。蒸着部13内は、所定の真空度、例えば1〜20Pa、好ましくは2〜10Paに保持されている。そして、蒸着部13では、導入した原料モノマーガスを基体に接触させ、その基体表面で重合させることによって、上記式(I)で表される重合体膜を所定以上の膜厚となるように基体上に形成させる。
【0047】
これにより、基体上に上記(I)で表される重合体膜が細胞接着層として形成された細胞培養用基材を製造することができる。
【0048】
なお、細胞培養用基材の基体上に細胞接着層としての上記式(I)で表される重合体膜を形成させることに先立って、例えばクロロ置換(2,2)パラシクロファン、好ましくはジクロロ(2,2)パラシクロファンなどの化学蒸着物を下地として形成するようにしてもよい。これにより、細胞接着層の強度を向上させることができ、また基体との密着性を向上させることができる。
【0049】
このように、上記式(I)で表される重合体膜を化学蒸着法によって基体上に形成させて細胞培養用基材を製造する方法によれば、原料を蒸発して熱分解させて得られたモノマーガスが細胞培養用基材を構成する基体表面上に接触することで重合体膜の形成が行われるため、基体上に均一でかつ所望とする膜厚の重合体膜を形成させることが可能となり、例えば三次元立体構造物などの複雑な構造を持つ基体への応用も可能となる。
【0050】
なお、基体としては、特に限定されないが、透明なガラス、シリコン又はポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAなどのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどのポリマーであることが好ましい。また、その他、紙や金属、あるいは繊維などを基体として用いることもできる。また、体内に挿入したり、三次元構造を構築したりするための基体としては、組織適合性や生分解性などの特質を備えたものが望ましい。なお、用意した基体は、公知の手法にてシランカップ処理を行ってもよく、酸素プラズマ処理などの公知の表面処理を施すこともできる。これにより、細胞接着層との密着性を向上させることができる。
【0051】
ここで、上述したように、細胞培養用基材の基体上に形成させる重合体膜は、その膜厚を約0.2μm以上とし、より好ましくは約0.3μm以上とする。このように、上記式(I)で表される重合体膜を約0.2μm以上の膜厚で基体上に形成させることにより、培養した細胞の接着形態を間葉細胞様に発現させることができる。すなわち、間葉系細胞に適した培養環境を形成することができる。
【0052】
間葉細胞様に接着した細胞は、細胞外マトリックスである重合体膜との接着性が高い。したがって、このように細胞を間葉細胞様の形態により接着させることができる細胞培養用基材によれば、より一層に細胞の接着強度を高めることができ、安定的に細胞を増殖させることができる。また、間葉細胞様に細胞を接着させることができることにより、接着した細胞の遊走能を高めることが可能となり、限られたスペースでも多量の細胞を増殖させて培養することができる。また、特に、胚性幹細胞(ES細胞)や、人工皮膚、人工骨、人工臓器などに用いられる機能性組織細胞などの培養においては、間葉細胞様に細胞を接着させることによって分化の進行を制御できるため、これらの細胞の培養に好適に用いることができる。
【0053】
なお、基体上の形成する重合体膜の膜厚の上限は、上述した効果を奏することができれば特に限定されるものではない。ただし、経済合理性などの観点からすれば、10μm以下とするのがよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態に係る細胞培養用基材は、基体上に細胞接着層として上記式(I)で表される構造単位から構成され、膜厚が約0.2μm以上である重合体膜を有している。このような細胞培養用基材によれば、良好な接着強度で安定的に細胞を接着させることができ、細胞が剥がれることなく長期に亘って再現性よく培養することができる。また、間葉細胞様の接着形態で細胞を接着させることができるので、細胞を効果的に増殖させることができる。
【0055】
また、従来のようなコラーゲンなどの生体由来の材料を使用していないことから、耐薬品性を有するとともに長期保管性を有する。すなわち、従来、細胞培養用基材に用いられてきたコラーゲンなど生体由来の材料は、アルコールなどの薬品により容易に変性、失活してしまうという欠点があった。また、生体由来の材料であることにより、すぐに腐敗が進み、保存に際しては所定の温度以下まで冷却することを要し、冷却環境下でも長期の保存は困難であった。これに対し、本実施の形態に係る細胞培養用基材では、生体由来の材料を使用していないことから、アルコールなどによっても変性や失活が生じず、したがってアルコールなどの薬品を用いた簡易的な殺菌、洗浄処理などの前処理のみによって培養に供することができる。また、冷却などすることなく培養した細胞を長期に亘って安定的に保管することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態に係る細胞培養用基材は、化学蒸着法などの処理のみによって基体上に上述した重合体膜を形成させて製造できるので、無菌環境下での処理やその細胞接着層をコーティングした後に別途化学的処理を行う必要がなく、簡易な処理で容易に工業的な量産を行うことができる。
【0057】
なお、上述のようなアルコールなどによる簡易な殺菌、洗浄処理ではなく、培養に供するに先立ち、当然に、製造された細胞培養用基材を滅菌処理することもできる。滅菌方法については、特に限定されるものではなく、オートクレーブ、ガンマ線、電子線、EOG(エチレンオキサイドガス)などにより行うことができ、好ましくは電子線による滅菌、より好ましくは無酸素環境下での電子滅菌を用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
<細胞接着層を有する基材の作製・ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養>
[実施例1]
(細胞接着層を有する基材の作製)
(1)基体の準備
基体として市販されているポリスチレン製の24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC(Tissue Culture)処理品,BECTON DICKINSON社製)を準備し、細胞接着層の原材料として、下記構造式(II)で表される化合物であってR1が−CH2NH2、R2がHを表す化合物であるモノアミノメチル(2,2)パラシクロファン(diX AM 第三化成(株)製)を準備した。
【0060】
【化7】
【0061】
(2)重合体膜の形成
次いで、図1に示したような蒸着装置1において、蒸発部11に、準備した固体状の蒸着原料であるモノアミノメチル(2,2)パラシクロファン8gを蒸着原料投入口11aから導入した。また、蒸着部13に、基体であるポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートを導入した。その後、真空ポンプ15を使用し、装置系内を1.7Paの真空度に保ち、110℃〜115℃に徐々に加熱した。すると、蒸着原料が気化してダイマーガスとなり、原料ガスが生成した。
【0062】
次いで、生成した原料ガスを600℃に加熱した分解部12に導入した。この分解部12においては、下記反応スキームに示されるように、導入した原料ガスを熱分解によってモノマーガス(III)とした。
【0063】
次に、得られたモノマーガス(III)を蒸着部13に導入した。蒸着部13内は、最大6Paの真空度に保持した。そして、導入したモノマーガス(III)を、蒸着部13内に設置されたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの表面で重合させ、下記反応スキームに示されるように上記式(I)で示される重合体の膜を形成させて、細胞培養用基材を作製した。このとき、形成された重合体膜の平均膜厚は1.1μmであった。
【0064】
【化8】
【0065】
(ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養)
上述のようにして得られた細胞培養用基材について、70%エタノールを24WELLプレートの各ウェルにつき2mlを入れ、15分間クリーンベンチ内に静置した。その後、滅菌水にてウェルを洗浄し、乾燥させることでアルコール殺菌した後、ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。培養条件としては、24WELLプレートに、1WELLにつき8.0×104の細胞を播種し、10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−アムホテリシンB懸濁液、1%非必須アミノ酸を添加したDMEM(低グルコース)を培地として、5%CO2大気下にて培養を行った。
【0066】
図2に、実施例1において実施した3日後の培養状態を示す。
【0067】
[比較例1]
(他のポリパラキシリレン誘導体での細胞培養用基材の作製・HepG2 細胞の培養)
比較例1では、蒸着原料として、ジクロロ(2,2)パラシクロファン(商品名 diX C 第三化成(株)製)、(2,2)パラシクロファン(商品名 diX N 第三化成(株)製)、オクタフルオロ(2,2)パラシクロファン(商品名 diX SF 第三化成(株)製)、モノアミノ(2,2)パラシクロファン(商品名 diX A 第三化成(株)製)、モノホルミル(2,2)パラシクロファン(商品名 diX H 第三化成(株)製)の5種類を準備し、実施例1と同様の手法にて重合体膜の形成を行い、細胞培養用基材を作製した。
【0068】
次いで、得られた5種類の試験サンプル(細胞培養用基材)を用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養試験を実施した。
【0069】
図3〜図7に、それぞれ、比較例1のポリモノクロロパラキシリレン、ポリパラキシリレン、ポリテトラフルオロパラキシリレン、モノアミノパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物、モノホルミルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0070】
[比較例2]
(一般的に用いられている細胞培養用基材でのHepG2 細胞の培養)
比較例2では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC(Tissue Culture)処理品)を用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養試験を実施した。
【0071】
図8に、比較例2において実施した3日後の培養状態を示す。
【0072】
[参考例1]
(コラーゲンコートされた細胞培養用基材でのHepG2 細胞の培養)
参考例1として、一般的に細胞培養に使用されているコラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートを用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養試験を実施した。
【0073】
図9に、参考例1において実施した3日後の培養状態を示す。
【0074】
表1に、実施例1、比較例1、2、及び参考例1にて実施したヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養結果を示す。なお、表1の細胞接着能の評価において、「◎」、「○」、「△」、「×」は接着強度を示し、その接着強度としては◎>〇>△>×である。ただし、「×」については細胞接着能を有しないことを示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示した培養結果から明らかなように、ポリパラキシリレン誘導体膜の中で、実施例1のモノアミノメチルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物以外は、細胞接着性が無く、又は接着してもその接着強度が非常に弱く、細胞培養用基材としては適当でないことが分かる。それに対して、実施例1のモノアミノメチルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物では、良好な細胞接着性を有し、またその接着強度も非常に強かった。また、実施例1のモノアミノメチルパラキシリレンとパラキシリレンの共重合物では、良好な細胞接着性を有していたとともに、参考例1に示したコラーゲンコートと同様に、間葉細胞様の細胞接着形態を示した。
【0077】
<細胞接着層の膜厚を変化させた場合のHepG2 細胞の培養>
[実施例2]
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから、それぞれ膜厚0.1μm、0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。
【0078】
図10〜図12に、それぞれ、実施例2の膜厚0.1μm、0.2μm、0.3μmとしたときの3日後の培養状態を示す。
【0079】
表2に、各膜厚の重合体膜を形成させた細胞培養用基材を用いて実施した培養結果を示す。なお、この表2には、上記実施例1及び比較例2の培養結果も併せて示す。表2の細胞接着能の評価において、「◎」、「○」は上記表1と同じく細胞接着能を有することを示し、その接着強度は◎>〇である。
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示した培養結果から明らかなように、いずれの膜厚においても、細胞接着能を有していた。しかしながら、細胞接着層の膜厚が0.1μmの場合では、比較例2のTC処理品での培養と差異はなく、接着形態としても上皮細胞様となった。
【0082】
一方で、細胞接着層の膜厚が0.2μm以上の場合には、良好な細胞接着能を有するとともにその接着強度も非常に強く、また接着形態も間葉細胞様が確認され、培養させた細胞が良好に増殖し得る細胞形態で接着しており、細胞接着層の効果が十分に発揮されていた。
【0083】
<無酸素環境下での電子線滅菌によるHepG2 細胞の培養>
[実施例3]
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.6μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、無酸素環境下で12kGyの電子線を照射することによって滅菌を行って、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。
【0084】
その結果、実施例1の結果と同様に、良好な細胞接着能を有し、また間葉細胞様の接着形態を示し、細胞接着層の効果が十分に発揮されていた。なお、図13に、実施例3において実施した3日後の培養状態を示す。
【0085】
<ポリパラキシリレン誘導体の積層によるHepG2 細胞の培養>
[実施例4]
ポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの表面に膜厚2.4μmのポリモノクロロパラキシリレンの重合体膜を形成した後に、実施例1と同様の手法に従ってモノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚1.1μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製した。すなわち、ポリモノクロロパラキシリレンを下地として形成した後に、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンにより重合体膜を形成した。
【0086】
そして、得られた細胞培養用基材を用いて、実施例1と同様の培養条件でヒト肝癌由来 HepG2 細胞の培養を実施した。
【0087】
その結果、実施例1の結果と同様に、良好な細胞接着能を有し、また間葉細胞様の接着形態を示し、細胞接着層の効果が十分に発揮されていた。なお、図14に、実施例4において実施した3日後の培養状態を示す。
【0088】
<HepG2 細胞の長期培養>
[実施例5]
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚1.0μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト肝癌由来 HepG2 細胞の最長11日間の長期培養試験を行った。
【0089】
培養条件としては、重合体膜を形成した24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの各ウェルに1mlの細胞培養用液体培地を入れ、HepG2細胞を播種し、37℃、5%CO2大気下において11日間細胞培養を行った。なお、細胞培養用液体培地は、一般的に使用されているDMEM(低グルコース)を使用し、10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−アムホテリシンB懸濁液、1%非必須アミノ酸を添加したものを用いた。なお、本試験は長期培養のため、1日おきに培地交換を実施した。
【0090】
図15に、実施例5において実施した11日後の培養状態を示す。
【0091】
[比較例3]
(一般的に使用されている細胞培養用基材でのHepG2 細胞の長期培養)
比較例3では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC処理品)、コラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート、及び市販品(BD社製 PureCoat Amine)を用いて、実施例5と同様の培養条件にてヒト肝癌由来 HepG2 細胞の長期培養試験を実施した。
【0092】
図16〜図18に、それぞれ、比較例3のTC処理品、コラーゲンコート品、市販品を用いて実施した11日後の培養状態を示す。
【0093】
表3に、実施例5及び比較例3にて実施したヒト肝癌由来 HepG2 細胞の長期培養結果を示す。なお、表3の細胞接着能の評価において、「◎」及び「○」については共に細胞接着能を有することを示し、その接着強度としては◎>○である。
【0094】
【表3】
【0095】
表3に示した培養結果から明らかなように、比較例3のTC処理品では細胞接着能は有していたものの、その接着強度は弱く完全には接着していない細胞も存在していた。また、TC処理品では、細胞の接着形態として上皮細胞様に接着しており、培養した細胞が十分に増殖し得る形態ではなかった。また、BD社製PureCoat Amineでは、短期的には十分な強度で細胞を接着させ、また各プレートにおいて各々の形態を保持しつつ増殖したが、細胞が剥がれてしまい、長期培養を行うことができなかった。
【0096】
これらに対し、実施例5では、細胞接着能を有し、その接着強度も非常に強く良好であった。また、接着した細胞の形態も間葉細胞様であり、培養した細胞が十分に増殖し得る形態であった。さらに、増殖した細胞が剥がれてしまうことなく長期間に亘って細胞を保持しつつ増殖し、長期培養を行うことができた。
【0097】
<その他の細胞の培養>
[実施例6]
(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞HUVECの培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞HUVECの培養を行った。
【0098】
培養条件としては、重合体膜を形成した24WELL細胞培養用マルチウェルプレートの各ウェルに1mlの細胞培養用液体培地を入れ、HUVECを播種し、37℃、5%CO2大気下において11日間細胞培養を行った。なお、細胞培養用液体培地は、HUVEC培養時に一般的に使用されているEGM−2を使用した。
【0099】
図19に、実施例6において膜厚0.2μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。また、図20に、実施例6において膜厚0.3μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0100】
[実施例7]
(ヒト胎児腎由来HEK293細胞の培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト胎児腎由来HEK293細胞の培養を行った。培養条件、培養手法は、実施例6の手法に従って同様に行った。
【0101】
図21に、実施例7において膜厚0.2μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。また、図22に、実施例7において膜厚0.3μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0102】
[実施例8]
(ヒト乳癌由来MCF-7細胞の培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.2μm、0.3μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト乳癌由来MCF-7細胞の培養を行った。培養条件、培養手法は、実施例6の手法に従って同様に行った。
【0103】
図23に、実施例8において膜厚0.2μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。また、図24に、実施例8において膜厚0.3μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0104】
[実施例9]
(ヒト結腸癌由来Caco-2細胞の培養)
実施例1と同様の手法に従って、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.7μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、ヒト結腸癌由来Caco-2細胞の培養を行った。培養条件、培養手法は、実施例6の手法に従って同様に行った。
【0105】
図25に、実施例9において膜厚0.7μmの重合体膜を用いて実施した3日後の培養状態を示す。
【0106】
[比較例4]
(一般的に用いられている細胞培養用基材での細胞培養)
比較例4では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC処理品)、コラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート、及び市販品(BD社製 PureCoat Amine)を用いて、上述した実施例6〜9と同様の手法にてヒト臍帯静脈血管内皮細胞HUVEC、ヒト胎児腎由来HEK293細胞、ヒト乳癌由来MCF-7細胞、及びヒト結腸癌由来Caco-2細胞の培養を実施した。
【0107】
図26〜図29に、それぞれ、比較例4のTC処理品を用いて実施したHUVEC細胞、HEK293細胞、MCF-7細胞、Caco-2細胞の3日後の培養状態を示す。また、図30〜図33に、それぞれ、比較例4のコラーゲンコート品を用いて実施したHUVEC細胞、HEK293細胞、MCF-7細胞、Caco-2細胞の3日後の培養状態を示す。また、図34〜図37に、それぞれ、市販品を用いて実施したHUVEC細胞、HEK293細胞、MCF-7細胞、Caco-2細胞の3日後の培養状態を示す。
【0108】
表4に、実施例6〜9にて実施した各種細胞の培養結果を示し、表5に、比較例4にて実施した各種細胞の培養結果を示す。なお、表4及び表5に示す接着性の検討結果は、培養5日目における結果であり、「○」は細胞接着能を有することを示し、「×」は細胞接着能を有しないことを示す。「−」は試験を実施していない条件であることを示す。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
表4及び表5の培養結果から明らかなように、HUVEC及びCaco-2細胞は、どのプレートにおいても接着していたが、HEK293細胞及びMCF-7細胞は、比較例4で使用したBD社製PureCoat Amineには接着していなかった。これに対し、実施例6〜9で使用した細胞培養用基材では、全ての細胞が接着し、良好な細胞接着能を有した。このことから、実施例6〜9で使用した細胞培養用基材には、細胞種依存性がないことが分かった。
【0112】
<培養したヒト肝癌由来 HepG2 細胞のマイクロアレイ解析>
[実施例10]
実施例1と同様の手法に従ってモノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから膜厚0.5μmの重合体膜を形成して細胞培養用基材を作製し、実施例5と同様の手法に従ってHepG2細胞の培養を行った。次いで、培養したHepG2細胞から、RNeasy Mini Kit (QIAGEN)を用いて全RNAの抽出・精製を行い、全RNAをタカラバイオ社に送付し、マイクロアレイ解析を委託した。その後、得られた解析データの品質管理を行い、通常のTC処理プレートでの培養時に比べて2倍以上上昇した遺伝子を抽出し、Cluster 3を用いてクラスタ解析を行った。また、可視化にはJava TreeViewを使用した。
【0113】
[比較例5]
(一般的に用いられている細胞培養用基材でヒト肝癌由来 HepG2 細胞を培養した場合のマイクロアレイ解析)
比較例5では、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート(TC処理品)、コラーゲンコートされたポリスチレン製24WELL細胞培養用マルチウェルプレート、及び市販品(BD社製 PureCoat Amine)を用いて、上述した実施例10と同様の手法にて培養したHepG2細胞のマイクロアレイ解析を実施した。
【0114】
図38に、実施例10及び比較例5にて培養したヒト肝癌由来 HepG2 細胞のマイクロアレイ解析結果を示す。
【0115】
図38から明らかなように、クラスタ解析の結果、モノアミノメチル(2,2)パラシクロファンから得られた重合体膜で培養した場合と、コラーゲンコートプレートで培養した場合とで、発現上昇してくる遺伝子のパターンが似ていることが分かる。一方、PureCoat Amineで培養した場合では、全体的にあまり遺伝子の変動がなく、コラーゲンコートプレートにおける培養とは異なっていることが見て取れる。
【符号の説明】
【0116】
11蒸発部、11a 蒸着原料投入口、12 分解部、13 蒸着部、14 トラップ、15 真空ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成される重合体膜からなり、0.2μm以上の膜厚を有する細胞培養用基膜。
【化1】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【請求項2】
基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成され、膜厚が0.2μm以上である重合体膜を有する細胞培養用基材。
【化2】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【請求項3】
細胞接着層として下記式(I)で表される重合体膜を膜厚0.2μm以上となるように基体上に形成する細胞培養用基材の製造方法。
【化3】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【請求項4】
上記重合体膜は、下記構造式(II)で表される原料を用い、化学蒸着法により基体上に重合させ形成させる請求項3記載の細胞培養用基材の製造方法。
【化4】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。)
【請求項1】
基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成される重合体膜からなり、0.2μm以上の膜厚を有する細胞培養用基膜。
【化1】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【請求項2】
基体上に下記式(I)で表される構造単位から構成され、膜厚が0.2μm以上である重合体膜を有する細胞培養用基材。
【化2】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【請求項3】
細胞接着層として下記式(I)で表される重合体膜を膜厚0.2μm以上となるように基体上に形成する細胞培養用基材の製造方法。
【化3】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。また、l、mは重合度を表す正の整数である。)
【請求項4】
上記重合体膜は、下記構造式(II)で表される原料を用い、化学蒸着法により基体上に重合させ形成させる請求項3記載の細胞培養用基材の製造方法。
【化4】
(但し、式中、R1、R2は、−(CH2)n−NH2基(nは1以上10以下の整数を表す。)又はHを表し、少なくともR1、R2のいずれかは−(CH2)n−NH2基である。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2013−5761(P2013−5761A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140961(P2011−140961)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(000157887)KISCO株式会社 (30)
【出願人】(591228340)第三化成株式会社 (7)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(000157887)KISCO株式会社 (30)
【出願人】(591228340)第三化成株式会社 (7)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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