説明

細胞培養用容器及び培地の保存方法

【課題】
炭酸塩を含有する培地の長期保存を可能にし、培養中における培地への酸素供給を可能にした細胞培養用容器が求められている。
【解決手段】
少なくとも炭酸塩を含有する培地成分を収容し、非通気性材料からなり、細胞導入口を設けた第1の容器と、該炭酸塩以外の培地成分を含有し、通気性材料からなる第2の容器と、該第1の容器と該第2の容器とを連通する連通手段からなる細胞培養用容器を提供する。本発明は、炭酸塩を含有する培地の長期保存を可能にし、培養中における培地への酸素供給を可能にするだけではなく、第1の容器に細胞導入口を設けており、培地の調製を行わないと細胞を培養することができないために、使用者の操作ミスを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸塩を含有する培地の長期保存に優れた細胞培養用容器に関する。好ましくは培養中における培地への通気が十分である細胞培養用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能障害や機能不全に陥った生体組織および臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかることを目的とした再生医療の分野が発展してきた。哺乳動物から健常な細胞を取り出し、該細胞を生体外で培養した後、再び生体に戻す技術もこの一環である。このような細胞の培養に用いる培地は、エネルギー源、栄養素、補酵素、無機イオン、pH緩衝液を培養すべき細胞に応じてそれぞれの配合量で調製する。必要に応じて、血清や細胞成長因子も添加する。エネルギー源としては、グルコースなどが用いられ、細胞の生理活動に必要な燃料となる。栄養素は核酸、アミノ酸などの細胞の構成原料が選択される。補酵素は、ビタミン類や微量金属などの細胞内酵素活性の増強と安定化する役割のものが選択される。無機イオンはナトリウムイオン、カリウムイオンなどの生体内に存在するイオンであり、培地の浸透圧の調整を行う役割を果たす。そして、pH緩衝剤液は以上の成分を配合した培地のpHを調整する役割を果たし、リン酸緩衝液、重曹、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)などから適切なものが使用される。
【0003】
従来、哺乳動物の懸濁細胞を生体外で行う培養は、ポリスチレン製のシャーレの中で行われてきた。しかし、このような容器はガス透過性が低いため、細胞増殖に必要な酸素や二酸化炭素の交換を十分行うために、培養液の液厚を3mm程度とし、容器中に空気層を設けなくては、十分な細胞増殖が得られなかった。従って、細胞を大量に培養するときには、無駄な空間があるため、多くのスペースを必要としていた。
【0004】
かかる問題を解決すべく、酸素透過性を有するアイオノマー樹脂からなる容器が細胞培養用容器として開示されている(特許文献1)。また、気体透過性材料で作製された第1の容器の内部に、液体透過性材料で作製された第2の容器で形成された細胞培養用容器が開示されており、外部と第1の容器との間で、十分な酸素付加を可能にし、内部の第2の容器にて高密度で細胞を培養することを可能にした細胞培養用培養容器が開示されている(特許文献2、3)。さらに、容器の一面が気体透過性であるシリコン誘導スチレンポリマーで形成され、強度に優れた培養容器が開示されている(特許文献4)。加えて、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂とポリ−4−メチルペンテン−1樹脂以外のポリオレフィン樹脂からなる組成物で形成され、酸素透過性および光透過性に優れ、植物細胞の培養に適した細胞培養用容器が開示されている(特許文献5)。
【0005】
しかし、これらの細胞培養用容器は、培養時における培地への通気性は十分であるが、緩衝液として炭酸塩を含有する培地を用いた場合、二酸化炭素の拡散による培地のpHが変化し、細胞培養用培地の長期保存が困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−160881号公報
【特許文献2】特開平3−10675号公報
【特許文献3】特開平3−10676号公報
【特許文献4】特開平11−28083号公報
【特許文献5】特開2001−190267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、炭酸塩を含有する培地の長期保存を可能にし、好ましくは培養中における培地への通気が十分である細胞培養用容器を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1) 少なくとも炭酸塩を含有する培地成分を収容し、非通気性材料からなり、細胞導入口を設けた第1の容器と、該炭酸塩以外の培地成分を含有し、通気性材料からなる第2の容器と、該第1の容器と該第2の容器とを連通する連通手段からなる細胞培養用容器、
(2) 非通気性材料の二酸化炭素透過係数が約1000cm/m・24hr・atm以下である(1)に記載の細胞培養用容器、
(3) 非通気性材料の水蒸気透過係数が約1000g/m・24hr・atm以下である(1)に記載の細胞培養用容器、
(4) 通気性材料の酸素透過係数が約100〜5000cm/m・24hr・atmである(1)に記載の細胞培養用容器、
(5) 通気性材料の二酸化炭素透過係数が約1001〜20000cm/m・24hr・atmである(1)に記載の細胞培養用容器、
(6) 炭酸塩が炭酸水素ナトリウムである(1)に記載の細胞培養用容器、
および(7) 少なくとも炭酸塩を含有する培地成分を収容し、非通気性材料からなり、細胞導入口を設けた第1の容器と、該炭酸塩以外の培地成分を含有し、通気性材料からなる第2の容器と、該第1の容器と該第2の容器とを連通する連通手段からなる細胞培養用容器を用い、以下の行程よりなる細胞培養方法;
(i) 第1の容器に収容した、少なくとも炭酸塩を含有する培地成分を、連通手段を通じて第2の容器に移動し、少なくとも炭酸塩を含有する培地成分と、該炭酸塩以外の培地成分とを混合する培地調製工程:
(ii) 細胞導入口から、第1の容器、連通手段を経て、第2の容器へ細胞を導入する細胞導入工程:
(iii) 細胞を培養する細胞培養工程に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の細胞培養用容器は、炭酸塩を含有する培地の長期保存、および十分に通気される雰囲気下での培養を可能にする。さらに、細胞導入口を連通ピース等で閉鎖された第1の容器に設けているため、培地の調製を行ってからではないと培養することができないため、使用者の誤った操作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における細胞培養用容器は、培地成分として、少なくとも炭酸塩を含有する培地成分(以下、培地成分Aともいう)を収容し、非通気性材料からなり、細胞導入口を設けた第1の容器と、該炭酸塩以外の培地成分(以下、培地成分Bともいう)を含有し、通気性材料からなる第2の容器と、該第1の容器と該第2の容器とを連通する連通手段からなることを特徴としている。第1の容器及び第2の容器の形状は特に限定することはなく、バッグ、ボトルなどが挙げられるが、量産が容易であり、軽量である可撓性のシートで形成された袋状であることが好ましい。
【0011】
本発明の第1の容器は、非通気性材料であることを特徴としている。非通気性材料は、二酸化炭素が透過しにくい材料を意味し、具体的には、温度25℃、湿度50%、大気圧下における二酸化炭素透過係数が約1000cm/m・24hr・atm以下、好ましくは約100cm/m・24hr・atm以下であり、さらに好ましくは約1cm/m・24hr・atm以下であり、水蒸気透過係数が約1000g/m・24hr・atm以下、好ましくは約100g/m・24hr・atm以下であり、さらに好ましくは約10g/m・24hr・atm以下である。さらに工業的に成形加工性に優れたものであり、ガンマ線滅菌に耐えうるものであることがより好ましい。選択すべき適切な材料としては、延伸ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン、ポリ塩化ビニリデンコートポリエステル、ポリ塩化ビニルコートポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン−ビニルアルコール)コポリマー、アルミ蒸着ポリエステル、シリカコートポリエステルなどが挙げられる。
【0012】
また、第2の容器の材料は、通気性材料であることを特徴としている。通気性材料は、温度25℃における酸素の透過係数が約100〜5000cm/m・24hr・atm、好ましくは約1100〜3000cm/m・24hr・atm、さらに好ましくは約1250〜2750cm/m・24hr・atmであり、二酸化炭素透過係数が約1001〜20000cm/m・24hr・atm、好ましくは約3000〜11500cm/m・24hr・atmであり、さらに好ましくは約5000〜9000cm/m・24hr・atmである。さらに工業的に成形加工性に優れたものが好ましく、ガンマ線滅菌に耐えうるものであり、かつ内部の培地の様子を観察することができる透明性の高い材料であることが好ましい。選択すべき適切な材料としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン−ビニルアセテート)コポリマー、ポリ(エチレン−エチルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン−メタアクリレート)コポリマーなどが挙げられる。
【0013】
本発明における培地は基本的に、エネルギー源、栄養素、補酵素、無機イオン、血清およびpH緩衝液から構成される汎用のものを意味する。これらの培地成分は、培養する細胞に応じてそれぞれの配合量で調製する。エネルギー源は細胞の生理活動に必要な燃料となり、グルコースなどが挙げられる。栄養素として核酸、アミノ酸などが添加され、細胞構成原料となる。アミノ酸はバリン、ロイシン、リジンなどの必須アミノ酸だけでなく、非必須アミノ酸なども添加される。補酵素は、ビタミン類や微量金属などの細胞内酵素活性の増強と安定化させる役割がある。無機イオンは生体内に存在するイオンであり、培地の浸透圧の調整を行う役割を果たす。例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンおよびカルシウムイオンなどが挙げられる。また必要に応じて、血清や細胞成長因子も添加する。そして、pH緩衝液は以上の成分を配合した培地のpHを調整する役割を果たし、リン酸緩衝液、炭酸塩(重曹)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)などが挙げられる。
【0014】
また、これらの培地には上記成分以外の組成物または天然物を適時加えてもよい。これらの添加物としては、インスリン、ホルボールエステル、ヒドロコルチゾンおよび動物由来脳下垂体抽出物などが挙げられる。
【0015】
本発明の炭酸塩を含有する培地とは、上記培地における培地成分の一つであるpH緩衝液として炭酸塩を選択した培地を意味する。これ以外の培地成分は、特に限定することはなく、培養すべき細胞に対して適時選択される。
【0016】
本発明における炭酸塩とは、溶媒に溶解したときに二酸化炭素を発生するものであり、炭酸イオンとして遊離しうるもの全てを含む。炭酸塩の例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられるが、炭酸水素ナトリウムが一般に使用される。
【0017】
本発明における少なくとも炭酸塩を含有する培地成分(培地成分A)とは、炭酸塩を含有する培地を構成している培地成分のうち少なくとも炭酸塩を含有していればよく、炭酸塩のみ、炭酸塩と補酵素、炭酸塩と無機イオンなどその組み合わせにとらわれるものではなく、炭酸塩を含有する培地自体である場合も含まれる。
【0018】
この際、第2の容器には培地成分A以外の培地成分(培地成分B)を収容する。培地成分Bは、炭酸塩を含まなければ特に限定することはないが、第1の容器に収容した培地成分Aと、第2の容器に収容した培地成分Bを混合した時に、目的の培地が調製されるようにすることが好ましい。例えば、第1の容器に培地成分Aとして炭酸塩を収容した場合、第2の容器には培地成分Bとしてエネルギー源、栄養素、補酵素、無機イオンが収容され、第1の容器に培地成分Aとして炭酸塩及びエネルギー源を収容した場合、第2の容器には培地成分Bとして栄養素、補酵素、無機イオンが収容される。
【0019】
また、上記のような無機イオン、栄養素などのカテゴリーによって分ける必要はなく、例えば、培地成分Aとして炭酸塩、カルシウムイオン、グルコースおよびグルタミン酸などを第1の容器に収容し、培地成分Bとしてそれ以外の培地成分を第2の容器に収容することもできる。
【0020】
さらに、第1の容器に培地成分Aとして炭酸塩を含有した培地そのものを収容し、培地成分Bに相当するものは何もなく、第2の容器は空の状態も含むが、第1の容器の容量が大きくなるだけではなく、第2の容器への培地の移動作業に時間を要するため、通常はなんらかの形で2成分に分けることが好ましい。
【0021】
本発明の第1の容器と、第2の容器には連通手段を設ける。該連通手段はチューブなどが一般的であるが、第1の容器と第2の容器を組み合わせた2室型の形態も含む。該チューブは、塩化ビニルまたはシリコンなどの汎用の材料を使用することができる。
【0022】
また、搬送時または保存時などにおいて、培地成分Aと培地成分Bとが混合しないように、連通手段には再度開通を可能にする閉鎖手段を設けることが好ましい。再度開通を可能にする閉鎖手段としては、クリップなどの狭持体、連通ピース(折れ棒)または2室型の場合は弱シールなどが挙げられる。これらの再度開通を可能にする閉鎖手段は、除去または連通させることにより、培地成分Aと培地成分Bとを混合することができる。
【0023】
さらに、第1の容器には細胞導入口を設ける。該細胞導入口はある程度可撓性を有する材料であり、第1の容器の材料(非通気性材料)と熱溶着性のよいものを使用することが好ましく、例えば超低密度ポリエチレンなどで作製したものが挙げられる。また、細胞導入口を取り付ける位置は特に限定されるものではないが、取り扱いの上で連通手段と対向する位置に配置することが好ましい。
【0024】
本発明の細胞培養用容器を用いて細胞を培養方法とは、本発明の第1の容器に収容された培地成分Aと第2の容器に収容された培地成分Bとを混合して調製された炭酸塩を含有する培地を用いて、十分に通気された雰囲気下で細胞を培養することができる。十分に通気された雰囲気下とは、一般的には約5%二酸化炭素含有気体での雰囲気下を意味する。
【0025】
図1は、本発明の細胞培養用容器の一実施形態である。非通気性材料で形成した第1の容器1には、細胞導入口3が設けられており、培地成分として重曹(炭酸水素ナトリウム水溶液)41が収容されている。第2の容器2には、重曹以外の培地成分42が収容されている。第1の容器と第2の容器は組み合わせることによって連通されており(連通手段5)、該連通手段には、再度開通を可能にする閉鎖手段として弱シール部6を形成している。弱シール部は、第1の容器または第2の容器を押圧することにより連通が可能となる。
【0026】
さらに図2は、本発明の他の一実施形態である。非通気性材料で形成した第1の容器1には、細胞導入口3が設けられており、培地成分として重曹41が収容されている。第2の容器2には、重曹以外の培地成分42が収容されている。第1の容器と第2の容器とを塩化ビニル製チューブ5で接続し、該チューブには再度開通を可能にする閉鎖手段として連通ピース(折れ棒)6を設けている。連通ピース(折れ棒)は、内部の部材を折ることにより再連通が可能となる。
【実施例】
【0027】
以下に本発明を、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例1:図1の細胞培養用容器の作製
第1の容器は、内層が低密度ポリエチレン、中間層がポリ(エチレン−ビニルアルコール)コポリマー、外層に低密度ポリエチレンの2枚のシートを用意し、2枚のシートの間にポリエチレン−ポリプロピレン高分子ブレンド(混合比3:7)製の弱シール形成用シートを所定長分埋没するように配置した。次いで、2枚のシートの側縁および弱シール用シートを含んだ3枚のシートが重なる部分を通る帯状部分を熱溶着して、口部を有する袋状の容器を作製した。この袋状の容器に、炭酸水素ナトリウム水溶液30mlを収容し、袋状の容器の口部に、低密度ポリエチレン製の細胞導入口を設け、熱溶着して作製した。
【0029】
さらに別途で、線状低密度ポリエチレンをインフレーション法によりチューブ状のフィルムを作製した後、片方の口部に弱シール形成用シートが所定長突出するように配置し、弱シール用シートを含んだ3枚のシートが重なる部分を通る帯状部分を溶着して、口部を有する袋状の容器を作製した。この袋状の容器に、炭酸水素ナトリウム水溶液以外の培地成分すべてを収容し、袋状の容器の口部を熱溶着し、第2の容器(容量100ml)2を作製した。
【0030】
次に第1の容器と第2の容器を接続した。このとき第2の容器において突出している弱シール形成用シール及び第2の容器の作製過程において形成した弱シール部を含む線状低密度ポリエチレン部の一部も第1の容器の熱溶着していない部分に挿入した。次に、第2の容器において突出していた弱シール形成用シートと第1の容器の熱溶着していない部分が重なっている箇所(3枚のシートが重なる部分)及び第2の容器の作製過程において形成した弱シール部を含む線状低密度ポリエチレンの一部と第1の容器の熱溶着していない部分が重なっている箇所(5枚のシートが重なる部分)を通る帯状部分を溶着して接続することで、図1に示す細胞培養用容器を作製した。
【0031】
実施例2:図2の細胞培養用容器の作製
内層が低密度ポリエチレン、中間層がポリ(エチレン−ビニルアルコール)コポリマー、外層に低密度ポリエチレンの2枚のシートを用意し、2枚のシートを重ね合わせ、細胞導入口と、チューブを接続するポートを設置したうえで、シートの側縁を熱溶着して、第1の容器1を作成した。さらに、上記ポートから炭酸水素ナトリウム水溶液30mlを収容した。
【0032】
さらに別途で、線状低密度ポリエチレンをインフレーション法によりチューブ状のフィルムを作成した後、一方の口部にチューブを接続するポートを配置し、両方の口部を熱溶着して第2の容器1を作製した。さらに、上記ポートから炭酸水素ナトリウム水溶液以外の培地成分を収容した。
次に第1の容器と第2の容器を接続する。第1の容器及び第2の容器に設けたそれぞれチューブを接続するポートに、連通ピース(折れ棒)を設けたポリ塩化ビニル製チューブを接続して、図2に示す細胞培養用容器を作製した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の細胞培養用容器によれば、炭酸塩を含有する培地における二酸化炭素の拡散を抑制し、培地のpH変化を抑制するため、培地の長期保存が可能である。さらに、通気された雰囲気下で細胞を培養することが可能である。また、細胞導入口を連通ピース等で閉鎖された非通気性の容器に設けているために、培地の混合をしないと細胞を培養することができない。そのため、培地の混合を忘れたまま培養するなどの使用者の操作ミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態である。
【図2】本発明の一実施形態である。
【符号の説明】
【0035】
1 第1の容器
2 第2の容器
3 細胞導入口
41 培地成分として少なくとも炭酸塩を含有する培地成分(培地成分A)
42 少なくとも炭酸塩を含有する培地成分以外の培地成分(培地成分B)
5 連通手段
6 再度開通を可能にする閉鎖手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭酸塩を含有する培地成分を収容し、非通気性材料からなり、細胞導入口を設けた第1の容器と、該炭酸塩以外の培地成分を含有し、通気性材料からなる第2の容器と、該第1の容器と該第2の容器とを連通する連通手段からなる細胞培養用容器。
【請求項2】
非通気性材料の二酸化炭素透過係数が約1000cm/m・24hr・atm以下である請求項1に記載の細胞培養用容器。
【請求項3】
非通気性材料の水蒸気透過係数が約1000g/m・24hr・atm以下である請求項1に記載の細胞培養用容器。
【請求項4】
通気性材料の酸素透過係数が約100〜5000cm/m・24hr・atmである請求項1に記載の細胞培養用容器。
【請求項5】
通気性材料の二酸化炭素透過係数が約1001〜20000cm/m・24hr・atmである請求項1に記載の細胞培養用容器。
【請求項6】
炭酸塩が炭酸水素ナトリウムである請求項1に記載の細胞培養用容器。
【請求項7】
少なくとも炭酸塩を含有する培地成分を収容し、非通気性材料からなり、細胞導入口を設けた第1の容器と、該炭酸塩以外の培地成分を含有し、通気性材料からなる第2の容器と、該第1の容器と該第2の容器とを連通する連通手段からなる細胞培養用容器を用い、以下の行程よりなる細胞培養方法;
(i) 第1の容器に収容した、少なくとも炭酸塩を含有する培地成分を、連通手段を通じて第2の容器に移動し、少なくとも炭酸塩を含有する培地成分と、該炭酸塩以外の培地成分とを混合する培地調製工程:
(ii) 細胞導入口から、第1の容器、連通手段を経て、第2の容器へ細胞を導入する細胞導入工程:
(iii) 細胞を培養する細胞培養工程。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−101797(P2006−101797A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294822(P2004−294822)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】