説明

細胞増殖を阻害する組成物および方法

本発明は、癌細胞とZNFN3A1 siRNA組成物を接触させることによって癌細胞の増殖を阻害する方法を特徴とする。癌を治療する方法も本発明の範囲内である。本発明はまた、提供される方法において有用な、核酸配列およびベクターなどの生成物ならびにこれらを含む組成物を特徴とする。本発明はまた、腫瘍細胞(例えば、肝臓癌細胞または大腸癌細胞、特にHCCまたは結腸直腸腺癌)を阻害する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は生物科学の分野に関し、より詳細には癌研究の分野に関する。特に本発明は、ZNFN3A1低分子干渉RNA(siRNA)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
肝細胞癌(HCC)は最もよく見られる5つの癌の部類に入り、世界で4番目に主要な癌死因である。最近の医学の進歩は疾患の診断を大幅に向上させたが、多くのHCC患者は依然として進行した段階で診断される。患者の大部分は、重篤な肝機能不全、広範および/もしくは複数の腫瘍、または高い再発率のために外科的切除では治癒しない。従って、きわめて有効な化学療法薬および予防法の開発が、差し迫った懸案事項である。
【発明の開示】
【0003】
発明の開示
本発明は、ZNFN3A1に選択的な低分子干渉RNA(siRNA)が様々な癌細胞(HCCに関与する癌細胞を含む)の細胞増殖の阻害に有効であるという驚くべき発見に基づいている。
【0004】
本発明は、細胞増殖を阻害する方法を提供する。提供される方法の中には、細胞とZNFN3A1低分子干渉RNA(siRNA)を含む組成物を接触させる段階を含む方法がある。本発明はまた、被験体における腫瘍細胞増殖を阻害する方法を提供する。このような方法は、ZNFN3A1低分子干渉RNA(siRNA)を含む組成物を被験体に投与する段階を含む。本発明の別の局面は、生物学的試料の細胞におけるZNFN3A1遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。遺伝子の発現は、ZNFN3A1遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の二本鎖リボ核酸(RNA)分子を細胞に導入することによって阻害されてもよい。本発明の別の局面は、例えば、提供される方法において有用な、核酸配列およびベクターを含む生成物ならびにこれらを含む組成物に関する。提供される生成物の中には、ZNFN3A1遺伝子を発現している細胞に導入されるとZNFN3A1遺伝子の発現を阻害する特性を有するsiRNA分子がある。このような分子の中には、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖がZNFN3A1標的配列に対応するリボヌクレオチド配列を含み、かつアンチセンス鎖がセンス鎖に相補的なリボヌクレオチド配列を含む分子がある。分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖は互いにハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。
【0005】
本明細書で使用する用語「生物」は、少なくとも1つの細胞からなる任意の生き物を意味する。生物は、例えば、真核単細胞のような単純なものでもよく、ヒトを含む哺乳動物のような複雑なものでもよい。
【0006】
本明細書で使用する用語「生物学的試料」は、生物全体、またはその組織、細胞、もしくは構成部分のサブセット(例えば、体液(血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、臍帯血(amniotic cord blood)、尿、膣液、および精液が挙げられるが、これに限定されない))を意味する。「生物学的試料」は、さらに、生物全体またはその細胞、組織、もしくは構成部分のサブセットから調製されたホモジネート、溶解産物、抽出物、細胞培養物、または組織培養物、あるいはその画分または一部を意味する。最後に、「生物学的試料」は、タンパク質またはポリヌクレオチドなどの細胞成分を含む、生物を増殖させた栄養培地またはゲルなどの培地を意味する。
【0007】
本発明は、細胞増殖を阻害する方法を特徴とする。細胞増殖は、細胞とZNFN3A1低分子干渉RNA(siRNA)の組成物を接触させることによって阻害される。ZNFN3A1は、肝細胞癌または結腸直腸腺癌などの腫瘍において過剰発現されるジンクフィンガータンパク質である。ZNFN3A1を発現する細胞の増殖は本発明によって阻害することができる。さらに、細胞はトランスフェクション促進剤と接触させられる。細胞は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで提供される。被験体は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシ)である。細胞は肝細胞または大腸細胞である。または、細胞は、結腸直腸癌細胞または肝臓癌細胞などの腫瘍細胞(すなわち、癌細胞)である。例えば、細胞は、結腸直腸腺癌細胞または肝細胞癌細胞である。細胞増殖の阻害とは、処置された細胞が未処置細胞より低速で増殖するか、または生存度が低下することを意味する。細胞増殖は、当技術分野において周知の増殖アッセイによって測定される。
【0008】
用語「siRNA」は、標的mRNAの翻訳を阻止する二本鎖RNA分子を意味する。RNAを転写する鋳型がDNAである技法を含め、細胞にsiRNAを導入する標準的な技法が用いられる。siRNAは、ZNFN3A1センス核酸配列、ZNFN3A1アンチセンス核酸配列、またはその両方を含む。siRNAは、1つの転写物が、標的遺伝子に由来するセンス配列および相補的アンチセンス配列の両方を有するように構築される(例えば、ヘアピン)。
【0009】
前記方法は、例えば、細胞の悪性形質転換の結果として、ZNFN3A1の発現がアップレギュレートされている細胞の遺伝子発現を変化させるために用いられる。標的細胞においてsiRNAとZNFN3A1転写物が結合すると、細胞によるZNFN3A1産生が低下する。オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチドであり、天然のZNFN3A1転写物と同じくらいの長さでもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドの長さは19〜25ヌクレオチドである。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドの長さは75ヌクレオチド未満、50ヌクレオチド未満、または25ヌクレオチド未満である。哺乳動物細胞のZNFN3A1発現を阻害するZNFN3A1 siRNAオリゴヌクレオチドの例として、標的配列(例えば、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278)を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0010】
標的細胞における遺伝子発現を阻害する能力を有する二本鎖RNAを設計する方法は周知である。(例えば、全体が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,506,559号を参照のこと)。例えば、siRNAを設計するコンピュータプログラムをAmbionのウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手することができる。このコンピュータプログラムは、以下のプロトコールに基づいてsiRNA合成のためのヌクレオチド配列を選択する。
【0011】
siRNA標的部位の選択
1.転写物のAUG開始コドンから開始して、下流にあるAAジヌクレオチド配列をスキャンする。潜在的なsiRNA標的部位として、AAおよび3'側隣接19ヌクレオチドの各々の出現を記録する。Tuschlらは、5'および3'非翻訳領域(UTR)ならびに開始コドン付近の(75塩基以内の)領域は調節タンパク質結合部位を多く含んでいる可能性があるので、これらに対するsiRNAを設計しないように勧めている。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある。
【0012】
2.潜在的な標的部位と適切なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラットなど)を比較し、他のコード配列と有意な相同性を有する全ての標的配列を検討から除外する。本発明者らは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/のNCBIサーバーに見出されるBLASTを使用することを提唱する。
【0013】
3.合成に適した標的配列を選択する。遺伝子の長さに応じていくつかの標的配列を選択して評価することが典型的である。
【0014】
標的配列 (例えば、配列番号:1のヌクレオチド451〜471(配列番号:58)、532〜552(配列番号:60)、623〜643(配列番号:61)、625〜645(配列番号:62)、636〜656(配列番号:63)、726〜746(配列番号:64)、923〜943(配列番号:66)、1065〜1085(配列番号:68)、および1258〜1278(配列番号:69) の核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド、または配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278の核酸配列に相補的なポリヌクレオチドも本発明に含まれる。本明細書で使用する「単離された核酸」は、元々の環境(例えば、天然のものであれば自然環境)から取り出された核酸、従って、その天然の状態から人工的に変化させられた核酸である。本発明において、単離された核酸は、DNA、RNA、およびその誘導体を含む。単離された核酸がRNAまたはその誘導体である場合、ヌクレオチド配列内の塩基「t」は「u」に置換されなければならない。本明細書で使用する用語「相補的な」は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド単位間のワトソン-クリック型塩基対またはフーグスティーン型塩基対を意味し、用語「結合する」は、2つのポリペプチドもしくは化合物、または関連するポリペプチドもしくは化合物、またはその組み合わせの間の物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。相補的な核酸配列は適切な条件下でハイブリダイズして、ミスマッチをほとんどまたは全く含まない、安定した二重鎖を形成する。さらに、本発明の単離されたヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、ハイブリダイゼーションによって二本鎖ヌクレオチドまたはヘアピンループ構造を形成することができる。好ましい態様において、このような二重鎖は10マッチあたり1以下のミスマッチを含む。特に好ましい態様において、二重鎖の鎖が完全に相補的な場合、このような二重鎖はミスマッチを含まない。ポリヌクレオチドは長さが1622ヌクレオチド未満である。例えば、ポリヌクレオチドは長さが500ヌクレオチド未満、200ヌクレオチド未満、または75ヌクレオチド未満である。本明細書に記載の核酸の1つまたは複数を含むベクターおよびベクターを含む細胞も本発明に含まれる。本発明の単離された核酸は、ZNFN3A1に対するsiRNAまたはsiRNAをコードするDNAに有用である。核酸がsiRNAまたはそのコードDNAに用いられる場合、センス鎖は、好ましくは19ヌクレオチドより長く、より好ましくは21ヌクレオチドより長い。
【0015】
本発明は、ジンクフィンガータンパク質ZNFN3A1をコードする遺伝子が、非癌性肝臓組織と比較して肝細胞癌(HCC)において過剰発現しているという発見に一部基づいている。ZNFN3A1 cDNAは長さが1622ヌクレオチドである。1284 ORFが、ジンクフィンガーモチーフを含む428アミノ酸タンパク質をコードする。ZNFN3A1の核酸配列およびポリペプチド配列を表1および表2に示す。表1では、5'非翻訳領域および3'非翻訳領域をイタリック体で示し、開始コドンおよび停止コドンを太字で示した。ZNFN3A1タンパク質の細胞内局在は、細胞周期進行中に、および培養細胞の密度によって変化する。細胞がS期中期から後期にあるか、低密度条件下で培養されている時には、ZNFN3A1タンパク質は核に蓄積する。ところが、細胞が他の細胞周期にあるか、または高密度条件下で増殖している時には、ZNFN3A1タンパク質は核だけでなく細胞質にも局在する。ZNFN3A1は、インビボではKIAA0054タンパク質およびRNAポリメラーゼIIと三元複合体を形成する。この複合体は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を含む下流遺伝子の転写を、5'隣接領域の「5'-CCCTCC-3'」エレメントに直接結合することによって活性化する。
【0016】
(表1)ZNFN3A1核酸配列(配列番号:1)

【0017】
(表2)ZNFN3A1ポリペプチド配列(配列番号:2)


【0018】
NIH3T3細胞においてZNFN3A1を外因的に発現させると、細胞増殖が増大した。対照的に、アンチセンスS-オリゴヌクレオチドによってZNFN3A1の発現を抑制すると、肝癌細胞の増殖が阻害された。
【0019】
細胞増殖を阻害する方法
本発明は、ZNFN3A1発現を阻害することによって細胞増殖(すなわち、癌細胞増殖)を阻害することに関する。ZNFN3A1発現は、ZNFN3A1遺伝子を特異的標的とする低分子干渉RNA(siRNA)によって阻害される。ZNFN3A1標的としては、例えば配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278が挙げられる。
【0020】
非哺乳動物細胞では、二本鎖RNA(dsRNA)は遺伝子発現に対して強力かつ特異的なサイレンシング効果を及ぼすことが示されており、これはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる(3)。dsRNAは、RNaseIIIモチーフを含む酵素によって、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる20〜30ヌクレオチドのdsRNAに処理される。siRNAは、多成分ヌクレアーゼ複合体と共に相補的mRNAを特異的に標的とする(4,5)。哺乳動物細胞において、19個の相補的ヌクレオチドとチミジンまたはウリジンの3'末端非相補的二量体を有する、20または21量体のdsRNAで構成されるsiRNAは、遺伝子発現の全体的な変化を誘導することなく、遺伝子特異的ノックダウン効果を有することが示されている(6)。さらに、核内低分子RNA(snRNA)U6またはポリメラーゼIII H1-RNAプロモーターを含むプラスミドは、RNAポリメラーゼIIIのIII型クラスを動員してこのような短いRNAを効果的に生成し、従って、その標的mRNAを構成的に抑制することができる(7,8)。
【0021】
ヘアピンループを有するZNFN3A1-siRNAを発現するために、13種類の発現プラスミドを構築した(実施例2を参照のこと)。細胞増殖を阻害する能力について、これらのプラスミドを試験した。4種類のプラスミド(psiU6BX-ZNFN3A1-4、-8、-12、および-13)は内因性ZNFN3A1の発現を著しく抑制し、5種類のプラスミド(psiU6BX-ZNFN3A1-2、-5、-6、-7、および-10)は中程度に抑制したのに対して、残りの4種類のプラスミド(psiU6BX-ZNFN3A1-1、-3、-9、および-11)は発現に対してほとんどまたは全く影響を示さなかった。(図1)。psiU6BX-siZNFN3A1-12をトランスフェクトした様々なヒト肝癌細胞および結腸直腸癌細胞は、対照プラスミドと比較して生存細胞数の減少を示した。FACS分析によって、細胞死はアポトーシスによるものであったことが判明した。
【0022】
細胞増殖は、細胞と、ZNFN3A1 siRNAを含む組成物を接触させることによって阻害される。細胞は、さらに、トランスフェクション剤と接触させられる。適切なトランスフェクション剤は当技術分野において周知である。細胞増殖の阻害とは、組成物に曝露されていない細胞と比較して、細胞が低速で増殖するか、または生存度が低下することを意味する。細胞増殖は、当技術分野において周知の方法(例えば、MTT細胞増殖アッセイ)によって測定される。
【0023】
ZNFN3A1-siRNAは、単一の標的ZNFN3A1遺伝子配列に向けられる。または、siRNAは、複数の標的ZNFN3A1遺伝子配列に向けられる。例えば、組成物は、2、3、4、もしくは5種類、またはそれ以上のZNFN3A1標的配列に対するZNFN3A1-siRNAを含む。ZNFN3A1標的配列とは、ZNFN3A1遺伝子の一部と同一のヌクレオチド配列を意味する。標的配列は、ヒトZNFN3A1遺伝子の5'非翻訳(UT)領域、オープンリーディングフレーム(ORF)、または3'非翻訳領域を含んでもよい。または、siRNAは、ZNFN3A1遺伝子発現の上流モジュレーターまたは下流モジュレーターに相補的な核酸配列である。上流モジュレーターまたは下流モジュレーターの例として、ZNFN3A1遺伝子プロモーターに結合する転写因子、ZNFN3A1ポリペプチドと相互作用するキナーゼまたはホスファターゼ、ZNFN3A1プロモーターまたはエンハンサーが挙げられる。
【0024】
標的mRNAにハイブリダイズするZNFN3A1-siRNAは通常、一本鎖mRNA転写物に結合し、それによってタンパク質の翻訳(従って、発現)を妨げることによって、ZNFN3A1遺伝子によりコードされるZNFN3A1ポリペプチド生成物の産生を減少または阻害する。siRNAは、長さが500ヌクレオチド未満、200ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満、50ヌクレオチド未満、または25ヌクレオチド未満である。好ましくは、siRNAは長さが19〜25ヌクレオチドである。ZNFN3A1-siRNAを生成するための核酸配列の例は、標的配列である配列番号:1のヌクレオチド451〜471(配列番号:58)、532〜552(配列番号:60)、623〜643(配列番号:61)、625〜645(配列番号:62)、636〜656(配列番号:63)、726〜746(配列番号:64)、923〜943(配列番号:66)、1065〜1085(配列番号:68)、または1258〜1278(配列番号:69)の配列を含む。さらに、siRNAの阻害活性を増強するために、標的配列のアンチセンス鎖の3'末端にヌクレオチド「u」を付加することができる。付加される「u」の数は少なくとも2個であり、一般的に2個から10個であり、好ましくは2個から5個である。付加された「u」は、siRNAのアンチセンス鎖の3'末端で一本鎖を形成する。
【0025】
細胞は、ZNFN3A1を発現または過剰発現する任意の細胞である。細胞は肝細胞または上皮細胞(例えば、大腸細胞)である。または、細胞は、癌腫、腺癌、芽腫、白血病、骨髄腫、または肉腫などの腫瘍細胞である。細胞は肝細胞癌または結腸直腸腺癌細胞である。
【0026】
ZNFN3A1-siRNAは、mRNA転写物に結合可能な形で細胞に直接導入される。または、ZNFN3A1-siRNAをコードするDNAはベクターの中にある。
【0027】
ベクターは、例えば、両方の鎖の(DNA分子の転写による)発現が可能なように、作動可能に連結された調節配列にZNFN3A1配列が隣接するように発現ベクターにZNFN3A1標的配列をクローニングすることによって作成される(Lee,N.S.,Dohjima,T.,Bauer,G.,Li,H.,Li,M.-J.,Ehsani,A.,Salvaterra,P.,and Rossi,J.(2002)Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells. Nature Biotechnology 20:500-505.)。ZNFN3A1 mRNAに対するアンチセンスであるRNA分子は第1のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3'側にあるプロモーター配列)によって転写され、ZNFN3A1 mRNAのセンス鎖であるRNA分子は第2のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5'側にあるプロモーター配列)によって転写される。センス鎖およびアンチセンス鎖はインビボでハイブリダイズして、ZNFN3A1遺伝子サイレンシングのためのsiRNA構築物を生じる。または、siRNA構築物のセンス鎖およびアンチセンス鎖を生成するために、2種類の構築物が用いられる。クローニングされたZNFN3A1は、二次構造(例えば、ヘアピン)を有する構築物をコードしてもよい。この場合、1つの転写物が、標的遺伝子からのセンス配列と相補的アンチセンス配列の両方を有する。
【0028】
ヘアピンループ構造を形成するために、任意のヌクレオチド配列からなるループ配列をセンス配列とアンチセンス配列の間に配置してもよい。従って、本発明はまた、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有するsiRNAも提供する。式中、[A]は、配列番号:1のヌクレオチド451〜471(配列番号:58)、532〜552(配列番号:60)、623〜643(配列番号:61)、625〜645(配列番号:62)、636〜656(配列番号:63)、726〜746(配列番号:64)、923〜943(配列番号:66)、1065〜1085(配列番号:68)、および1258〜1278(配列番号:69)からなる群より選択される配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、
[B]は、3個から23個のヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、
[A']は、[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である。
【0029】
領域[A]は[A']にハイブリダイズし、次いで、領域[B]からなるループが形成される。ループ配列は、好ましくは、長さが3個から23個のヌクレオチドであってよい。ループ配列は、例えば、以下の配列からなる群より選択することができる(http://www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)。さらに、23個のヌクレオチドからなるループ配列から活性型siRNAが得られる(Jacque,J.-M., Triques,K., and Stevenson,M.(2002) Modulation of HIV-1 replication by RNA interference.Nature 418:435-438)。
【0030】
AUG:Sui,G., Soohoo,C., Affar,E.B., Gay,F., Shi,Y., Forrester,W.C., and Shi,Y.(2002) A DNA vector-based RNAi technology to suppress gene expression in mammalian cells. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(8):5515-5520.
【0031】
CCC、CCACC、またはCCACACC:Paul,C.P., Good,P.D., Winer,I., and Engelke,D.R.(2002) Effective expression of small interfering RNA in human cells. Nature Biotechnology 20:505-508.
【0032】
UUCG:Lee,N.S., Dohjima,T., Bauer,G., Li,H., Li,M.-J., Ehsani,A., Salvaterra,P., and Rossi,J.(2002) Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells. Nature Biotechnology 20:500-505.
【0033】
CTCGAGまたはAAGCUU:Editors of Nature Cell Biology(2003) Whither RNAi? Nat Cell Biol.5:489-490.
【0034】
UUCAAGAGA:Yu,J.-Y., DeRuiter,S.L., and Turner,D.L.(2002) RNA interference by expression of short-interfering RNAs and hairpin RNAs in mammalian cells.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(9):6047-6052.
【0035】
例えば、本発明のヘアピンループ構造を有する好ましいsiRNAを以下に示す。以下の構造において、ループ配列は、AUG、CCC、UUCG、CCACC、CTCGAG、AAGCUU、CCACACC、およびUUCAAGAGAからなる群より選択することができる。好ましいループ構造はUUCAAGAGA(DNAでは「ttcaagaga」)である。
aaucagagaagcuuuacucau-[B]-augaguaaagcuucucugauu (配列番号:58の標的配列の場合)
aacucguaaugacauuucaac-[B]-guugaaaugucauuacgaguu (配列番号:60の標的配列の場合)
aaaagugaucugcaacucuuu-[B]-aaagaguugcagaucacuuuu (配列番号:61の標的配列の場合)
aagugaucugcaacucuuuca-[B]-ugaaagaguugcagaucacuu (配列番号:62の標的配列の場合)
aacucuuucaccaucuguaau-[B]-auuacagauggugaaagaguu (配列番号:63の標的配列の場合)
aacuguucgauuguguucaau-[B]-auugaacacaaucgaacaguu (配列番号:64の標的配列の場合)
aacuggugaugagcaaguaug-[B]-cauacuugcucaucaccaguu (配列番号:66の標的配列の場合)
aacaucuaccagcugaaggug-[B]-caccuucagcugguagauguu (配列番号:68の標的配列の場合)
aagcaaugaagaaucugagac-[B]-gucucagauucuucauugcuu (配列番号:69の標的配列の場合)
【0036】
ZNFN3A1の発現を独立して調節できるように、または時間的もしくは空間的に調節できるように、ZNFN3A1配列に隣接する調節配列は同一であるか、または異なる。siRNAは、ZNFN3A1遺伝子の鋳型をベクター(例えば、核内低分子RNA(snRNA)U6に由来するRNA polIII転写単位またはヒトH1 RNAプロモーターを含む)にクローニングすることによって細胞内で転写される。ベクターを細胞に導入するために、トランスフェクション促進剤を使用することができる。FuGENE6(Roche diagnostics)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、およびNucleofector(和光純薬工業)がトランスフェクション促進剤として有用である。
【0037】
オリゴヌクレオチド、およびZNFN3A1 mRNAの様々な部分に相補的なオリゴヌクレオチドを、腫瘍細胞(例えば、AlexanderおよびHepG2肝細胞癌(HCC)細胞株、ならびにHCT116およびSW948結腸直腸癌細胞株を使用する)のZNFN3A1産生を減少させる能力について、標準的な方法に従ってインビトロで試験した。候補組成物の非存在下で培養した細胞と比較して、候補siRNA組成物と接触させた細胞ではZNFN3A1遺伝子産物が減少することを、ZNFN3A1特異的抗体または他の検出法を用いて検出する。次いで、インビトロ細胞アッセイまたは無細胞アッセイにおいてZNFN3A1の産生を減少させる配列を、細胞増殖に対する阻害作用について試験する。悪性新生物を有する動物におけるZNFN3A1産生の減少および腫瘍細胞増殖の低下を確かめるために、インビトロ細胞アッセイにおいて細胞増殖を阻害する配列をラットまたはマウスにおいてインビボで試験する。
【0038】
悪性腫瘍を治療する方法
ZNFN3A1の過剰発現を特徴とする腫瘍を有する患者は、ZNFN3A1-siRNAの投与によって治療される。siRNA療法は、例えば、肝細胞癌もしくは結腸直腸癌を罹患しているか、または発症する危険性のある患者におけるZNFN3A1の発現を阻害するために用いられる。このような患者は、特定の腫瘍型の標準的な方法によって特定される。肝細胞癌は、例えば、肝臓の拡大、断層撮影、超音波、または生検によって診断される。結腸直腸癌は、例えば、糞便中の血液、結腸鏡検査、可撓性S状結腸鏡検査、CEAアッセイ、バリウム注腸二重撮像CTスキャン、断層撮影、または生検によって診断される。
【0039】
被験体におけるZNFN3A1発現の低下、または腫瘍のサイズ、罹患率、もしくは転移可能性の減少などの臨床上の利益につながれば、治療は有効である。治療が予防目的で用いられる場合、「有効な」は、治療が腫瘍の形成を遅延もしくは阻止するか、または腫瘍の臨床症状を阻止もしくは緩和することを意味する。有効性は、特定の腫瘍型を診断または治療する任意の既知の方法と共同して確かめられる。
【0040】
siRNA療法は、標準的なベクターおよび/または遺伝子送達システムによって患者にsiRNAを投与することで行われる。適切な遺伝子送達システムとして、リポソーム、受容体媒介送達システム、またはウイルスベクター(例えば、特に、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を挙げることができる。ZNFN3A1の産生が低下すると、KIAA0054タンパク質およびRNAポリメラーゼIIとのZNFN3A1複合体形成が減少するか、またはZNFN3A1タンパク質の発現が減少する。治療用核酸組成物は薬学的に許容される担体中に製剤化される。治療用組成物は前記の遺伝子送達システムを含んでも良い。薬学的に許容される担体は、動物への投与に適した生物学的に適合する賦形剤(vehicle)(例えば、生理食塩水)である。化合物の治療有効量は、医学的に望ましい結果(例えば、治療された動物におけるZNFN3A1遺伝子産物の産生の低下、細胞成長(例えば、増殖の低下、または腫瘍増殖の低下)を生じることが可能な量である。
【0041】
ZNFN3A1-siRNA組成物を送達するために、静脈内送達経路、皮下送達経路、筋肉内送達経路、および腹腔内送達経路などの非経口投与を使用することができる。肝臓腫瘍の治療には、門脈への直接注入が有用である。
【0042】
任意の患者への投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与しようとする特定の核酸、性別、投与時間および経路、身体全体の健康、ならびに同時に投与されている他の薬物などの多くの要因に左右される。核酸を静脈内投与する場合の投与量は、約106コピーから1022コピーのポリヌクレオチドである。
【0043】
ポリヌクレオチドは、標準的な方法(例えば、筋肉もしくは皮膚などの組織の間隙への注射、循環もしくは体腔への導入、または吸入もしくは吹送(insufflation))によって投与される。ポリヌクレオチドは、薬学的に許容される液体担体(例えば、水溶性または部分的に水溶性の液体担体)と共に動物に注射されるか、または別の方法で送達される。ポリヌクレオチドは、リポソーム(例えば、カチオン性リポソームまたはアニオン性リポソーム)と結合される。ポリヌクレオチドは、標的細胞による発現に必要な遺伝情報(例えば、プロモーター)を含む。
【0044】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料を以下で説明する。本明細書で述べた全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。抵触する場合、定義を含め、本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を目的としない。
【0045】
発明を実施するための最良の形態
本発明を以下の実施例においてさらに説明する。以下の実施例は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない。
【0046】
[実施例1] 一般的方法
細胞株および組織標本
ヒト肝癌細胞株AlexanderおよびHepG2、ヒト大腸癌細胞株HCT116およびSW948、ならびにサル線維芽細胞株COS7は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。ヒト肝癌細胞株Huh7は、Japanese Collection of Research Bioresources(JCRB)から入手した。ヒト肝癌細胞株SNU398、SNU423、SNU449、およびSNU475は、韓国細胞バンク(Korea cell-line bank)から入手した。これらの細胞は全て公的に入手することができる。
【0047】
細胞株は全て以下の適切な培地において単層で増殖させた:ダルベッコ改変イーグル培地(Alexander、Huh7、HepG2、およびCOS7の場合);マッコイ(McCoy's)5A(HCT116の場合);レイボビッツ(Leibovitz's)L-15(SW948の場合);RPMI1640(SNU398、SNU423、SNU449、およびSNU475の場合)(10%胎児ウシ血清および1%抗生物質/抗真菌剤溶液(Sigma)を添加した)。全ての細胞を、5%CO2を含む(Alexander、Huh7、HepG2、SNU398、SNU423、SNU449、SNU475、HCT116、およびCOS7)または含まない(SW948)加湿空気下で、37℃で維持した。
【0048】
ZNFN3A1のクローニング
ZNFN3A1のクローニングは、KOD-plus(TOYOBO)を用いてPCRによって行った。大腸菌発現のために、ZNFN3A1のコード領域を、pET21aのEcoRI-KpnI部位にクローニングした。哺乳動物細胞発現のために、ZNFN3A1のコード領域を、pcDNA3.1(+)および(-)(Invitrogen)のEcoRI-KpnI部位、pFLAGのEcoRI-KpnI部位、ならびにpEGFP(Clontech)のEcoRI-KpnI部位にクローニングした。KIAA0054のコード領域をpCMV-HA(Clontech)のEcoRI-XhoI部位にクローニングした。
【0049】
ZNFN3A1ポリクローナル抗体の作成
ウサギ抗ZNFN3A1ポリクローナル抗体を作成した。ZNFN3A1の全コード配列を、鋳型として精巣cDNAを使用したPCR反応によって増幅し、pET21a(Novagen)にクローニングした。クローニングされたベクターを、BL21-Codon Plus(登録商標)コンピテント細胞(Stratagene)にトランスフェクトした。組換えZNFN3A1タンパク質を1.0mM IPTGによって30℃で6時間誘導した。His-ZNFN3A1融合タンパク質を、Pro Bond(商標)樹脂(Invitrogen)を用いて精製した。精製His-ZNFN3A1を用いてウサギを10回免疫した。このポリクローナル抗体を用いたイムノブロットはFLAGで標識されたZNFN3A1の50kDの単一バンドを示した。これは、抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma)を用いて検出されたものと同一のパターンであった(データは示さず)。
【0050】
RNA調製およびRT-PCR
全RNAを、Trizol試薬(Life technologies)を用いて製造業者のプロトコールに従って抽出した。全RNAの10μgのアリコートを、ポリdT12-18プライマー(Amersham Biosciences)とSuperscript II逆転写酵素(Life technologies)を用いて一本鎖cDNAに逆転写した。後のPCR増幅のために、それぞれの一本鎖cDNAを希釈した。標準的なRT-PCRを、Gene Amp PCR system 9700(Perkin-Elmer)において、20μl体積のPCR緩衝液(TAKARA)中で行い、94℃で4分の変性に続く、94℃30秒、56℃30秒、72℃30秒の20サイクル(GAPDHの場合)または30サイクル(ZNFN3A1の場合)により増幅した。プライマー配列は以下の通りであった。
GAPDHの場合
フォワード; 5'-ACAACAGCCTCAAGATCATCAG-3' (配列番号:29) および
リバース; 5'-GGTCCACCACTGACACGTTG-3' (配列番号:30)
ZNFN3A1の場合
フォワード; 5'-TTCCCGATATCAACATCTACCAG-3' (配列番号:31) および
リバース; 5'-AGTGTGTGACCTCAATAAGGCAT-3' (配列番号:32)
【0051】
psiU6BXプラスミドの構築
siRNAをコードするDNA断片を、以下のプラスミド配列(配列番号:33)の(-)で示されたヌクレオチド485〜490のギャップに挿入した。



【0052】
snRNA U6遺伝子はRNAポリメラーゼIIIによって転写され、3'末端にウリジンを有する短い転写物を生じることが報告されている。プロモーター領域を含むsnRNA U6遺伝子のゲノム断片を、一組のプライマー:
5'-GGGGATCAGCGTTTGAGTAA-3' (配列番号:34)、および
5'-TAGGCCCCACCTCCTTCTAT-3' (配列番号:35)
ならびに鋳型としてヒト胎盤DNAを用いてPCR増幅した。産物を精製し、TAクローニングキットを供給業者(Invitrogen)のプロトコールに従って使用し、pCRプラスミドベクターにクローニングした。一組のプライマー:
5'-TGCGGATCCAGAGCAGATTGTACTGAGAGT-3' (配列番号:36)および
5'-CTCTATCTCGAGTGAGGCGGAAAGAACCA-3' (配列番号:37)
を用いてPCR増幅したsnRNA U6遺伝子を含むBamHI,XhoI断片を精製し、pcDNA3.1(+)プラスミドのヌクレオチド1257位から56位の断片にクローニングした。連結されたDNAを、プライマー:
5'-TTTAAGCTTGAAGACTATTTTTACATCAGGTTGTTTTTCT-3' (配列番号:38)および
5'-TTTAAGCTTGAAGACACGGTGTTTCGTCCTTTCCACA-3' (配列番号:39)
を使用するPCRの鋳型として使用した。産物をHindIIIで消化し、その後に自己連結させて、psiU6BXベクタープラスミドを生成した。対照として、
5'-CACCGAAGCAGCACGACTTCTTCTTCAAGAGAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3'(配列番号:40)および
5'-AAAAGAAGCAGCACGACTTCTTCTCTCTTGAAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3'(配列番号:41)
からなる二本鎖オリゴヌクレオチドをpsiU6BXベクターのBbsI部位にクローニングすることによって、psiU6BX-EGFPを調製した。
【0053】
イムノブロッティング
Hisタグで標識された組換えZNFN3A1タンパク質を用いて免疫したウサギの血清から、ZNFN3A1に対するポリクローナル抗体を前もって精製した。タンパク質を10%SDS-PAGEによって分離し、抗ZNFN3A1抗体を用いてイムノブロットした。HRP結合ヤギ抗ウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)を、ECL検出システム(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)用の二次抗体として使用した。抗ZNFN3A1抗体を用いたイムノブロッティングはFLAGで標識されたZNFN3A1の50kDの単一バンドを示した。これは、抗FLAG抗体を用いて検出されたものと同一のパターンであった。
【0054】
3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ
細胞にpsiU6BX-siZNFN3A1または対照プラスミドをトランスフェクトし、最適濃度のジェネティシンを添加した培地中で維持した。トランスフェクションの6日から12日後に、培地を500μg/mlのMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(Sigma)を含む新鮮な培地と交換し、プレートを37℃で4時間インキュベートした。その後、0.01N HCl/10%SDSを1ml添加することによって細胞を溶解し、溶解物の吸光度を、ELISAプレートリーダーを用いて試験波長570nm(参照波長,630nm)で測定した。細胞の生存度を吸光度で表し、対照細胞の生存度と比較した。
【0055】
フローサイトメトリー
細胞周期進行におけるZNFN3A1の影響をフローサイトメトリーによって確かめた。細胞を1×105細胞/100mmディッシュの密度でプレートした。細胞を所定の時間経過でトリプシン処理し、PBS中に回収し、70%冷エタノールで固定した。RNase処理の後、細胞を、PBSに溶解したヨウ化プロピジウム(50μg/ml)で染色した。フローサイトメトリーはBecton Dickinson FACScanで行い、CellQuestおよびModFitソフトウェア(Verity Software House)によって解析した。細胞周期のG0/G1期、S期、およびG2/M期にある核の割合ならびに任意のsub-G1集団の割合を少なくとも20,000個のゲーティングされていない(ungated)細胞から求めた。
【0056】
細胞周期におけるZNFN3A1-siRNAの役割を調べるために、psiU6BX-ZNFN3A1または対照プラスミドをトランスフェクトした1×105個のSNU475細胞を、トランスフェクションの5日後にトリプシン処理によって回収した。70%冷エタノールで固定した後、細胞をRNaseおよびPBSに溶解したヨウ化プロピジウム(50μg/ml)で処理し、FACScan(Becton Dickinson、San Jose、CA)で解析した。細胞周期のG0/G1期、S期、およびG2/M期にある細胞の割合ならびに任意のsub-G1集団の割合を、少なくとも20,000個のゲーティングされていない細胞から、ModFitソフトウェア(Verity Software House)を用いて求めた。
【0057】
[実施例2] ZNFN3A1 siRNA発現プラスミドの生成および特徴付け
ZNFN3A1の全コード配列を、一組のプライマー:
5'-GGGGTACCAGGATGGAGCCGCTGAAGGTGG-3' (配列番号:42)、および5'-GGGAATTCTTAGGATGCTCTGATGTTGGCGTCG-3' (配列番号:43)
を用いて増幅し、pcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen)の適切なクローニング部位にクローニングした(pcDNA-ZNFN3A1)。二本鎖オリゴヌクレオチドをpsiU6BXベクターにクローニングすることによって、ZNFN3A1-siRNA発現プラスミドを調製した。
【0058】
siRNAのヌクレオチド配列は、Ambionのウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手可能なsiRNA設計コンピュータプログラムを用いて設計した。簡単に述べると、siRNA合成用のヌクレオチド配列は、以下のプロトコールを用いて選択される。
【0059】
siRNA標的部位の選択:
1.ZNFN3A1転写物のAUG開始コドンから開始して、下流にあるAAジヌクレオチド配列をスキャンする。潜在的なsiRNA標的部位として、AAおよび3'側隣接19ヌクレオチドの各々の出現を記録する。Tuschlらは、5'および3'非翻訳領域(UTR)ならびに開始コドン付近の(75塩基以内の)領域は調節タンパク質結合部位を多く含んでいる可能性があるので、これらに対するsiRNAを設計しないように勧めている。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体はsiRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある。
【0060】
2.潜在的な標的部位と適切なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラットなど)を比較して、他のコード配列と有意な相同性を有する標的配列を除く。
【0061】
3.合成に適した標的配列を選択する。遺伝子の長さに応じていくつかの標的配列を評価のために選択する。
【0062】
ZNFN3A1 siRNAに用いられるオリゴヌクレオチドを以下に示す。psiU6BX-ZNFN3A1 1〜13(siRNA 1〜13)は、以下の二本鎖オリゴヌクレオチドをpsiU6ベクターのBbsl部位にクローニングすることによって調製した。それぞれのオリゴヌクレオチド配列には、配列番号:1のZNFN3A1核酸配列に対応するヌクレオチド位置を示した。それぞれのオリゴヌクレオチドは、このZNFN3A1標的配列のセンスヌクレオチド配列とアンチセンスヌクレオチド配列との組み合わせである。siRNA1から13のヘアピンループ構造および標的配列のヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号:44から配列番号:56、および配列番号:57から配列番号:69に示した(それぞれのヘアピンループ構造配列からエンドヌクレアーゼ認識部位を除いた)。
【0063】
psiU6BX-ZNFN3A1-1 /siRNA1: (配列番号:1のヌクレオチド番号426〜446)
5'-CACCAAACTTATGGATGGAGCACCTTTCAAGAGAAGGTGCTCCATCCATAAGTTT-3' (配列番号:3)および
5'-AAAAAAACTTATGGATGGAGCACCTTCTCTTGAAAGGTGCTCCATCCATAAGTTT-3' (配列番号:4)

psiU6BX-ZNFN3A1-2 /siRNA2: (配列番号:1のヌクレオチド番号451〜471)
5'-CACCAATCAGAGAAGCTTTACTCATTTCAAGAGAATGAGTAAAGCTTCTCTGATT-3' (配列番号:5)および
5'-AAAAAATCAGAGAAGCTTTACTCATTCTCTTGAAATGAGTAAAGCTTCTCTGATT-3' (配列番号:6)

psiU6BX-ZNFN3A1-3 /siRNA3 : (配列番号:1のヌクレオチド番号495〜515)
siRNA2; 5'-CACCAACAAACTGACTGAAGATAAGTTCAAGAGACTTATCTTCAGTCAGTTTGTT-3' (配列番号:7)および
5'-AAAAAACAAACTGACTGAAGATAAGTCTCTTGAACTTATCTTCAGTCAGTTTGTT-3' (配列番号:8)

psiU6BX-ZNFN3A1-4 /siRNA4: (配列番号:1のヌクレオチド番号532〜552)
5'-CACCAACTCGTAATGACATTTCAACTTCAAGAGAGTTGAAATGTCATTACGAGTT-3' (配列番号:9)および
5'-AAAAAACTCGTAATGACATTTCAACTCTCTTGAAGTTGAAATGTCATTACGAGTT-3' (配列番号:10)

psiU6BX-ZNFN3A1-5 /siRNA5: (配列番号:1のヌクレオチド番号623〜643)
5'-CACCAAAAGTGATCTGCAACTCTTTTTCAAGAGAAAAGAGTTGCAGATCACTTTT-3' (配列番号:11)および
5'-AAAAAAAAGTGATCTGCAACTCTTTTCTCTTGAAAAAGAGTTGCAGATCACTTTT-3' (配列番号:12)

psiU6BX-ZNFN3A1-6 /siRNA6: (配列番号:1のヌクレオチド番号625〜645)
5'-CACCAAGTGATCTGCAACTCTTTCATTCAAGAGATGAAAGAGTTGCAGATCACTT-3' (配列番号:13)および
5'-AAAAAAGTGATCTGCAACTCTTTCATCTCTTGAATGAAAGAGTTGCAGATCACTT-3' (配列番号:14)

psiU6BX-ZNFN3A1-7 /siRNA7: (配列番号:1のヌクレオチド番号636〜656)
5'-CACCAACTCTTTCACCATCTGTAATTTCAAGAGAATTACAGATGGTGAAAGAGTT-3' (配列番号:15)および
5'-AAAAAACTCTTTCACCATCTGTAATTCTCTTGAAATTACAGATGGTGAAAGAGTT-3' (配列番号:16)

psiU6BX-ZNFN3A1-8 /siRNA8: (配列番号:1のヌクレオチド番号726〜746)
5'-CACCAACTGTTCGATTGTGTTCAATTTCAAGAGAATTGAACACAATCGAACAGTT-3' (配列番号:17)および
5'-AAAAAACTGTTCGATTGTGTTCAATTCTCTTGAAATTGAACACAATCGAACAGTT-3' (配列番号:18)

psiU6BX-ZNFN3A1-9 /siRNA9: (配列番号:1のヌクレオチド番号906〜926)
5'-CACCAAGGATGCTGATATGCTAACTTTCAAGAGAAGTTAGCATATCAGCATCCTT-3' (配列番号:19)および
5'-AAAAAAGGATGCTGATATGCTAACTTCTCTTGAAAGTTAGCATATCAGCATCCTT-3' (配列番号:20)

psiU6BX-ZNFN3A1-10 /siRNA10: (配列番号:1のヌクレオチド番号923〜943)
5'-CACCAACTGGTGATGAGCAAGTATGTTCAAGAGACATACTTGCTCATCACCAGTT-3' (配列番号:21)および
5'-AAAAAACTGGTGATGAGCAAGTATGTCTCTTGAACATACTTGCTCATCACCAGTT-3' (配列番号:22)

psiU6BX-ZNFN3A1-11 /siRNA11: (配列番号:1のヌクレオチド番号937〜957)
5'-CACCAAGTATGGAAGGAAGTTCAAGTTCAAGAGACTTGAACTTCCTTCCATACTT-3' (配列番号:23)および
5'-AAAAAAGTATGGAAGGAAGTTCAAGTCTCTTGAACTTGAACTTCCTTCCATACTT-3' (配列番号:24)

psiU6BX-ZNFN3A1-12 /siRNA12: (配列番号:1のヌクレオチド番号1065〜1085)
5'-CACCAACATCTACCAGCTGAAGGTGTTCAAGAGACACCTTCAGCTGGTAGATGTT-3' (配列番号:25)および
5'-AAAAAACATCTACCAGCTGAAGGTGTCTCTTGAACACCTTCAGCTGGTAGATGTT-3' (配列番号:26)

psiU6BX-ZNFN3A1-13 /siRNA13: (配列番号:1のヌクレオチド番号1258〜1278)
5'-CACCAAGCAATGAAGAATCTGAGACTTCAAGAGAGTCTCAGATTCTTCATTGCTT-3' (配列番号:27)および
5'-AAAAAAGCAATGAAGAATCTGAGACTCTCTTGAAGTCTCAGATTCTTCATTGCTT-3' (配列番号:28)
【0064】
FuGENE6試薬を供給業者(Roche)の推奨に従って使用し、psiU6BX-siZNFN3A1またはpsiU6BX-疑似プラスミドをpcDNA-ZNFN3A1と共にCOS7細胞にトランスフェクトした。多量の内因性ZNFN3A1を発現するSNU479細胞には、これらのプラスミドを単独でトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後に、細胞の全抽出物を溶解し、イムノブロット分析に使用した。
【0065】
ZNFN3A1 siRNAを発現する13の異なる発現プラスミドのうち、psiU6BX-ZNFN3A1-8、-12、および-13は、pcDNA-ZNFN3A1と共にCOS7細胞にトランスフェクトした場合に外因性ZNFN3A1発現を最も著しく低下させた(ウェスタンブロットによる)。他のプラスミドのうち、psiU6BX-ZNFN3A1-4は著しい低下を示し、psiU6BX-ZNFN3A1-2、-5、-6、-7、および-10は中程度の抑制を示したが、psiU6BX-ZNFN3A1-1、-3、-9、および-11は発現に対してほとんどまたは全く影響を示さなかった(図1)。ZNFN3A1 siRNAのRNAi活性をさらに調べるために、本発明者らは、psiU6BX-ZNFN3A1-1、-4、-12またはpsiU6BX-疑似を、多量のZNFN3A1を発現するSNU475細胞にトランスフェクトした(図2)。トランスフェクト細胞の抽出物を用いたウェスタンブロット分析から、psiU6BX-疑似をトランスフェクトした細胞と比較して、psiU6BX-ZNFN3A1-12は内因性ZNFN3A1を著しく低下させ、psiU6BX-ZNFN3A1-4は中程度に抑制することが証明された。一方、psiU6BX-ZNFN3A1-1のトランスフェクションは、ZNFN3A1の発現に影響を与えなかった(図3)。
【0066】
[実施例3] ZNFN3A1 siRNAによる肝癌細胞および大腸癌細胞の増殖抑制
ZNFN3A1の抑制が肝癌細胞の増殖抑制をもたらす可能性があるかどうか試験するために、SNU475細胞に、psiU6BX-ZNFN3A1-12(ZNFN3A1発現に対して最大のノックダウン効果を示したベクター)、psiU6BX-ZNFN3A1-4(中程度のサイレンシング効果を示したベクター)、psiU6BX-ZNFN3A1-1(サイレンシング効果を示さなかったベクター)、またはpsiU6BX-疑似のいずれかをトランスフェクトした。トランスフェクションの6日後および9日後のMTTアッセイから、psiU6BX-疑似をトランスフェクトした細胞と比較して、psiU6BX-ZNFN3A1-12は最大の増殖阻害効果を有し、psiU6BX-ZNFN3A1-1は生存細胞数を変化させなかったことが示された(図4)。これらのプラスミドの増殖阻害効果は、その遺伝子サイレンシング活性と相関があった。ZNFN3A1-siRNAの増殖阻害効果をさらに証明するために、psiU6BX-ZNFN3A1-12、対照としてpsiU6BX-EGFP(psiU6BX-EGFPは、以下の二本鎖オリゴヌクレオチド:
5'-CACCGAAGCAGCACGACTTCTTCTTCAAGAGAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3' (配列番号:40)および
5'-AAAAGAAGCAGCACGACTTCTTCTCTCTTGAAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3' (配列番号:41)
をpsiU6BXベクターのBbsI部位にクローニングすることによって調製した)、またはpsiU6BX-疑似を、様々な肝癌細胞株(SNU398、SNU423、SNU449、Huh7、Alexander、およびHepG2)ならびに2種類の大腸癌細胞株(SW948およびHCT116)にトランスフェクトした。psiU6BX-ZNFN3A1-12のトランスフェクションは、psiU6BX-EGFPまたはpsiU6BX-疑似のトランスフェクションと比較して、生存細胞数を著しく減少させた(図5)。さらに、FACS分析によって、psiU6BX-ZNFN3A1-12のトランスフェクションはsub-G1期の細胞数を増加させることが証明された(図6)。これらの結果は、ZNFN3A1が広範囲のヒト癌細胞の異常な細胞増殖および/または生存に寄与することを示す。
【0067】
産業上の利用可能性
本発明者らは、ZNFN3A1遺伝子を特異的標的とする低分子干渉RNA(siRNA)によって細胞増殖が抑制されることを示した。従って、この新規siRNAは抗癌剤を開発するための有用な標的である。例えば、ZNFN3A1の発現を遮断するか、またはZNFN3A1の活性を阻止する薬剤は、抗癌剤として、特に、肝臓癌または大腸癌(例えば、HCCまたは結腸直腸腺癌)を治療するための抗癌剤として治療上有用性を見出しうる。
【0068】
本発明を、詳細にかつ本発明の特定の態様を参照して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更および改変を加えることができることは当業者に明らかであろう。
【0069】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】COS7細胞における外因性ZNFN3A1発現に及ぼすZNFN3A1 siRNAの影響を示すイムノブロット写真である。
【図2】肝癌細胞株および大腸癌細胞株におけるZNFN3A1タンパク質の発現を示すイムノブロットの写真である。
【図3】psiU6BX-ZNFN3A1-1、-4、-12プラスミドまたはpsiU6BX-疑似プラスミドをトランスフェクトしたSNU475細胞における内因性ZNFN3A1発現に及ぼすZNFN3A1-siRNAの影響を示すイムノブロット写真である。
【図4】A〜Bは、SNU475細胞における細胞増殖に及ぼすZNFN3A1-siRNAの影響を示す棒グラフである。トランスフェクト細胞の生存度を、トランスフェクションの6日後(パネルA)および9日後(パネルB)にMTTアッセイによって測定した。
【図5】様々なヒト肝癌細胞および大腸癌細胞におけるZNFN3A1-siRNAの増殖抑制効果を示す棒グラフである。トランスフェクト細胞の生存度を、トランスフェクションの9日後から12日後にMTTアッセイによって測定した。
【図6】FACS分析により検出された、SNU475細胞におけるZNFN3A1-siRNAに反応した細胞死を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって:
ZNFN3A1低分子干渉RNA(siRNA)を含む組成物を該被験体に投与する段階
を含む方法。
【請求項2】
siRNAがZNFN3A1センス核酸およびZNFN3A1アンチセンス核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
腫瘍細胞が結腸直腸癌細胞または肝臓癌細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
結腸直腸癌細胞が腺癌細胞である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
肝臓癌細胞が肝細胞癌細胞である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
siRNAが、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278からなる群より選択されるZNFN3A1標的に特異的である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
siRNAが一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、
式中、[A]が、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278からなる群より選択される配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、
[B]が、3〜23個のヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、かつ
[A']が、[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
組成物がトランスフェクション促進剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
センス鎖核酸とアンチセンス鎖核酸の組み合わせを含む単離されたポリヌクレオチドであって、それぞれ、該センス鎖核酸は、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含み、該アンチセンス鎖核酸はその相補配列からなる、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
センス鎖核酸およびアンチセンス鎖核酸が同じ鎖にある、請求項9記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
センス鎖核酸が約100ヌクレオチドより短いヌクレオチド配列からなる、請求項9記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
センス鎖核酸が約75ヌクレオチドより短い、請求項11記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
センス鎖核酸が約50ヌクレオチドより短い、請求項12記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
センス鎖核酸が約25ヌクレオチドより短い、請求項13記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
センス鎖核酸の長さが約19ヌクレオチドから約25ヌクレオチドである、請求項14記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
センス鎖核酸とアンチセンス鎖核酸の組み合わせを含むポリヌクレオチドを含むベクターであって、それぞれ、該センス鎖核酸が、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含み、かつ該アンチセンス鎖核酸がその相補配列からなる、ベクター。
【請求項17】
ポリヌクレオチドが一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、
式中、[A]が、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278からなる群より選択されるヌクレオチド配列であり、
[B]が、3〜23個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり、かつ
[A']が、[A]の相補配列からなるヌクレオチド配列である、請求項16記載のベクター。
【請求項18】
センス鎖核酸とアンチセンス鎖核酸の組み合わせを含む少なくとも1つのsiRNAを含む組成物であって、それぞれ、該センス鎖核酸が、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278からなる群より選択される配列に対応するリボヌクレオチド配列を含み、かつ該アンチセンス鎖配列がその相補配列からなる、組成物。
【請求項19】
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖分子であって、センス鎖がZNFN3A1標的配列に対応するリボヌクレオチド配列を含み、アンチセンス鎖が該センス鎖に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、該センス鎖および該アンチセンス鎖が互いにハイブリダイズして該二本鎖分子を形成し、該二本鎖分子が、ZNFN3A1遺伝子を発現する細胞に導入されると該遺伝子の発現を阻害する、二本鎖分子。
【請求項20】
ZNFN3A1標的配列が配列番号:1に由来する少なくとも約10個の連続したヌクレオチドを含む、請求項19記載の二本鎖分子。
【請求項21】
ZNFN3A1標的配列が配列番号:1に由来する約19個から約25個の連続したヌクレオチドを含む、請求項20記載の二本鎖分子。
【請求項22】
ZNFN3A1標的配列が、配列番号:1のヌクレオチド451〜471、532〜552、623〜643、625〜645、636〜656、726〜746、923〜943、1065〜1085、および1258〜1278からなる群より選択される、請求項21記載の二本鎖分子。
【請求項23】
単一のリボヌクレオチド転写物がセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、二本鎖分子が、該センス鎖および該アンチセンス鎖に結合する一本鎖リボヌクレオチド配列をさらに含む、請求項19記載の二本鎖分子。
【請求項24】
長さが約100ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドである、請求項19記載の二本鎖分子。
【請求項25】
長さが約75ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドである、請求項24記載の二本鎖分子。
【請求項26】
長さが約50ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドである、請求項25記載の二本鎖分子。
【請求項27】
長さが約25ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドである、請求項26記載の二本鎖分子。
【請求項28】
長さが約19ヌクレオチドから約25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドである、請求項27記載の二本鎖ポリヌクレオチド。
【請求項29】
請求項19記載の二本鎖分子をコードするベクター。
【請求項30】
ベクターが二次構造を有する転写物をコードし、転写物がセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、請求項29記載のベクター。
【請求項31】
転写物が、センス鎖およびアンチセンス鎖を結合する一本鎖リボヌクレオチド配列をさらに含む、請求項30記載のベクター。
【請求項32】
ZNFN3A1遺伝子の発現を阻害するのに十分な量のリボ核酸(RNA)を細胞に導入する段階を含む、生物学的試料の細胞におけるZNFN3A1遺伝子の発現を阻害する方法であって:
RNAがセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖分子であり、センス鎖がZNFN3A1標的配列に対応するリボヌクレオチド配列を含み、アンチセンス鎖が該センス配列に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、センスリボヌクレオチド鎖およびアンチセンスリボヌクレオチド鎖が互いにハイブリダイズして該二本鎖分子を形成し、該二本鎖分子が、ZNFN3A1遺伝子を発現する細胞に導入されると該遺伝子の発現を阻害する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−519009(P2006−519009A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502685(P2006−502685)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002446
【国際公開番号】WO2004/076623
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(504445356)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (22)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】