説明

細胞工学用支持体及びその製造方法

【課題】生体組織において吸収される生体吸収性高分子材料から成り、内部に細胞培養に適した大きな空隙率を持ちながら、支持体全体の強度が低下しない細胞工学用支持体とその製造方法を提供する。
【解決手段】細胞工学用支持体を、空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子体の周囲が、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆されている構造にし、その製造方法は生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解した後に乾燥して作製された空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子材料体を、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆することにより細胞工学用支持体を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の代替品として使用される形状安定性に優れ且つ内部に細胞を播種及び/又は培養させることが可能な生体吸収性高分子材料から成る細胞工学用支持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手術,外傷等によって喪失した生体組織を体細胞,幹細胞等によって再構築し、それを患者に移植することにより喪失した生体組織を再生する治療方法が行われている。その治療において生体組織を再生するためには、播種する細胞が生体組織を再建するまでの足場となる支持体(マトリックス)が重要となる。
【0003】
従来の支持体としては、乳酸,グリコール酸,カプロラクトン等から成る生体吸収性高分子材料をジオキサンのような有機溶媒に溶解し、この溶液を凍結乾燥させて作製された孔径が5〜100μm程度のスポンジ状の細胞工学用支持体がある(例えば、特許文献1参照。)。また、このようなスポンジ状の細胞工学用支持体の作製時に溶液中に粒子径が約50〜約500μmの水溶性で無毒性の粒子状物質(例えば、塩化ナトリウム粉末等)を入れ、溶媒を取り除いて粒子状物質入りの生分解性高分子体を作製し、その後水等を用いて粒子状物質を取り除くことで作製される約50〜約500μmの円形開放大孔と20μm以下の円形開放小孔とを持つ多孔質構造の生体吸収性高分子材料を細胞の支持体がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの多孔質構造を持つ生体吸収性高分子から成る支持体はスポンジ状であるため強度が低く、必要とされる形状を生体内で維持できないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−234844号公報
【特許文献2】特表2002−541925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞が十分内部まで行き渡る空隙を持ちながら、支持体の強度も低下しない生体吸収性高分子材料から成る細胞工学用支持体とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、細胞培養に適した空隙率が50〜99%である比較的軟らかい多孔質生体吸収性高分子体の周囲を、体液,培養液及び細胞が通過可能な10〜3000μmの孔を有しその体積が支持体全体の15〜90%となる硬い生体吸収性高分子体で覆うことで細胞を培養し易い空隙率を有しながら細胞工学支持体としての強度を確保することが可能であることを究明して本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子体の周囲が、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆されていることを特徴とする細胞工学用支持体と、この細胞工学用支持体を製造するための一つの方法としての、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解した後に乾燥して作製された空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子体を、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで作製された容器を構成する分割容器構成体から成り支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆し、該分割容器構成体同士を溶着することを特徴とする細胞工学用支持体の製造方法とである。
そしてこの細胞工学用支持体の製造方法においては、生体吸収性高分子体である分割容器構成体同士の溶着は、加熱により行うか、生体吸収性高分子体を構成する生体吸収性高分子材料を溶解させる有機溶媒を介して行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、生体組織において吸収される生体吸収性高分子材料から成り、内部に細胞培養に適した大きな空隙率を持ちながら、支持体全体の強度が低下しない細胞工学用支持体とその製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る細胞工学用支持体は、空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子体の周囲が、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆されていることを特徴とするものであり、その製造方法の一つである、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解した後に乾燥して作製された空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子材料体を、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで作製された容器を構成する分割容器構成体から成り支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆し、該分割容器構成体同士を溶着することを特徴とする細胞工学用支持体の製造方法である。
【0010】
本発明で用いる生体吸収性高分子材料は、生体に安全であり、一定期間体内でその形態を維持できれば特に限定することなく用いることができる。例えば、従来から用いられているポリグリコール酸,ポリ乳酸,乳酸−グリコール酸共重合体,ポリ−ε−カプロラクトン,乳酸−ε−カプロラクトン共重合体,ポリアミノ酸,ポリオルソエステル及びそれらの共重合体中から選択される少なくとも一種を例示することができ、中でもポリグリコール酸,ポリ乳酸,乳酸−グリコール酸共重合体が米国食品医薬庁(FDA)から人体に無害な高分子として承認されていること及びその実績の面から最も好ましい。生体吸収性高分子材料の重量平均分子量は5,000〜2,000,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜500,000である。
【0011】
上記生体吸収性高分子材料を溶解するための有機溶媒は、使用する生体吸収性高分子材料によって適宜選択して使用することになるが、一般的にはクロロホルム,ジクロロメタン,四塩化炭素,アセトン,ジオキサン,テトラハイドロフランから選ばれる少なくとも一種が好ましく使用できる。溶解過程では、熱処理や超音波処理を併用してもよく、生体吸収性高分子の濃度は有機溶媒中に均一に分散できれば特に限定されないが、有機溶媒中に1〜20重量%が好ましい。
【0012】
上記有機溶媒を除去するための乾燥方法は、換気された常温常気圧の条件下で自然に乾燥してもよいし、凍結乾燥のような乾燥方法を用いてもよい。換気された常温常気圧の条件下で自然に乾燥を行う場合には、乾燥後のシート状の生体吸収性高分子材料には孔が少ないのでパンチ等を用いて機械的に0.1〜3mmの孔を付与すればよく、凍結乾燥を行うとシート状の生体吸収性高分子に孔径50μm程度の小孔が形成されるので体液や培養液の行き渡りの観点からも好ましい。
【0013】
本発明に係る細胞工学用支持体において、その内部を構成する多孔質生体吸収性高分子体は、従来から知られている作製方法を用いて作製できるが、その空隙率が50〜99%であることが必要である。本発明で空隙率とは、体積が同じである同じ材料を用いた場合において、孔のあいている材料の重量をW1,孔のあいていない材料の重量をW2としたときに、(1−W1/W2)×100で示される数値を言う。
この多孔質生体吸収性高分子体は、空隙率が50%未満では空隙が少ないため細胞の培養効率が不足するため好ましくなく、99%を超えると生体吸収性高分子材料が少ないため細胞の足場としての機能を低下させることになり細胞の培養効率が不足するため好ましくない。
【0014】
本発明に係る細胞工学用支持体において、その内部を構成する多孔質生体吸収性高分子体としては、例えば、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解し、この溶液を凍結乾燥させることで作製できる孔径が5〜100μm程度のスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体や、溶液中に粒子径が約50〜約500μmの水溶性で無毒性の粒子状物質(例えば、塩化ナトリウム粉末等)を入れ、溶媒を取り除いて粒子状物質入りの生体吸収性高分子体を作製し、その後水等を用いて粒子状物質を溶解させて取り除くことで作製される約50〜約500μmの円形開放大孔と20μm以下の円形開放小孔とを持つ多孔質生体吸収性高分子体や、有機溶媒に生体吸収性高分子材料が溶解された溶液にその有機溶媒には溶解せず且つ生体吸収性高分子材料を溶解しない液で溶解する粒径が100〜2000μmの粒子状物質を略均一に混合し凍結した後に乾燥して有機溶媒を取り除くことによって粒子状物質を含有した孔径が5〜50μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製し、この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから粒子状物質を前記生体吸収性高分子を溶解しない液で溶解して取り除いた後、篩にかけて100〜3000μmの粒径の生体吸収性顆粒状多孔質物質とし、この生体吸収性顆粒状多孔質物質を所定形状の容器内に入れて加圧しながら加熱して作製した多孔質生体吸収性高分子体等を挙げることができる。
【0015】
本発明に係る細胞工学用支持体において、その外郭部を構成する生体吸収性高分子体は厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで且つその体積が支持体全体の15〜90%が必要である。
孔が10μm未満では、孔の大きさが小さいため細胞の培養効率が不足するため好ましくなく、3000μmを超えると生体吸収性高分子材料が細胞の足場としての機能を低下させることになり細胞の培養効率が不足するため好ましくない。
破壊強度が0.05MPa未満では形状に関係なく生体内で必要とされる形を維持することができず、一方、孔を有する生体吸収性高分子で0.15MPaを超える破壊強度のものを作製することは難しい。なお、本願での破壊強度とは直径10mm×高さ2mmの円柱状の試験体をクロスヘッドスピード1mm/分で圧縮させた際の圧縮破壊強度を意味する。
その体積が支持体全体の15%未満では細胞工学用支持体としての強度を確保することができないので好ましくなく、90%を超えると細胞の培養用の内部を構成する多孔質生体吸収性高分子体が少なくなるため細胞の培養効率が不足するため好ましくない。
厚さが0.01mm未満又は5mmを超えると、作製した細胞工学用支持体の強度が不足したり、細胞が増殖する空間が無駄になる。
【0016】
この外郭部を構成する生体吸収性高分子体は、細胞工学用支持体の内部を構成する多孔質生体吸収性高分子体の周囲を被覆できることが必要で、生体吸収性高分子材料を有機溶媒中に溶解し、この生体吸収性高分子材料が溶解された有機溶媒を薄く延ばした後、乾燥させ有機溶媒を除去し、場合によってはプレスすることで作製された厚さが0.01〜5mmのシート状の生体吸収性高分子体や、この方法により作製されたシート状の生体吸収性高分子材料を短冊状に切断し纏め型に入れた後、加圧して加熱成形させて作製した、多孔質生体吸収性高分子体を収納できる容器を構成する分割容器構成体から成る生体吸収性高分子体を挙げることができる。
【0017】
また他の例としては、有機溶媒に生体吸収性高分子材料が溶解された溶液に、その有機溶媒には溶解せず且つその生体吸収性高分子材料を溶解しない液で溶解する粒径が100〜2000μmの粒子状物質を略均一に混合し凍結した後に乾燥して有機溶媒を取り除くことによって粒子状物質を含有した孔径が5〜50μmの小孔構造を有する高分子体を作製し、その高分子体を粉砕してから粒子状物質を前記生体吸収性高分子を溶解しない液で溶解して取り除いた後、篩にかけて100〜3000μmの粒径の生体吸収性顆粒状多孔質物質を作製し、この生体吸収性顆粒状多孔質物質を型に入れた後、加圧して加熱成形させて必要とされる破壊強度を持たせて作製した、多孔質生体吸収性高分子体を収納できる容器を構成する分割容器構成体から成る生体吸収性高分子体であってもよい。
【0018】
本発明に係る細胞工学用支持体において、その内部を構成する多孔質生体吸収性高分子体や外郭部を構成する生体吸収性高分子体を作製する際の加熱の条件は、生体吸収性高分子材料の材質,形状や大きさによって異なるが、60〜200℃の範囲であればよい。60℃未満では生体吸収性高分子同士の結合が弱くなり、外郭部を構成するための形状を維持し難くなる。一方、200℃を超えると生体吸収性高分子が変性してしまう虞がある。
【0019】
本発明に係る細胞工学用支持体を製造する際に外郭部を構成する生体吸収性高分子体がその内部を構成する多孔質生体吸収性高分子体を収納できる容器を構成する分割容器構成体から成る場合にその分割容器同士を溶着するには、分割容器構成体同士の溶着を、加熱により行う方法と、生体吸収性高分子体を構成する生体吸収性高分子材料を溶解させる有機溶媒を介して行う方法との何れかを採用するのが好ましい。有機溶媒としては予め生体吸収性高分子材料を溶解させたものを使用してもよい。
【実施例1】
【0020】
<外郭用の生体吸収性高分子体の作製>
ジオキサン中に乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸=75:25,重量平均分子量約250,000)を12重量%の濃度となるように入れ、攪拌機で攪拌し溶解した。この乳酸−グリコール酸共重合体が溶解されたジオキサン溶液に塩化ナトリウム粉末(粒子径300〜700μm)を濃度が約1.18g/cm3となるように略均一に混合し、型内に入れた。その後、フリーザー(商品名:MDf-0281AT,三洋電機社製)にて−30℃の条件で凍結させ、次いで真空乾燥機(商品名:DP43,ヤマト科学社製)にて減圧下で48時間乾燥させることによってジオキサンを取り除いて塩化ナトリウム粉末を略均一に含有した高分子体を得た。この高分子体を小片に切断し、遊星回転用のポットミルで50分間粉砕した。粉砕した高分子体をフラスコに入れ蒸留水を加え攪拌させて塩化ナトリウムを取り除いた後、シャーレに移して真空乾燥機で48時間乾燥させ、篩にかけて粒子径300〜700μm,平均孔径約5μmの生体吸収性顆粒状多孔質物質を得た。この生体吸収性顆粒状多孔質物質を下底を封した内径10mm、高さ20mmのチタン製の型に0.01g封入し、上部より外径10mm、中心に直径8mmで高さが1mmの突起があるチタン製の棒で1500g/cm2で加圧した状態の体積を保って80℃で10分間加熱して外径10mm、高さ2mmで中心部に直径8mm、深さ1mmの窪みが空いた容器を構成する2個の分割容器構成体から成る生体吸収性高分子体を作製した。
【0021】
また、上記と同様な方法で直径10mm×高さ2mmの円柱状の試験体を作製し、クロスヘッドスピード1mm/分で圧縮させたところ、この外郭用のブロック状生体吸収性高分子体の破壊強度は0.1MPであった。
【0022】
<内部の多孔質生体吸収性高分子体の作製>
ジオキサン中に乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸=75:25,重量平均分子量約250,000)を12重量%の濃度となるように入れ、攪拌機で攪拌し溶解した。この乳酸−グリコール酸共重合体が溶解されたジオキサン溶液に塩化ナトリウム粉末(粒子径300〜700μm)を濃度が約1.18g/cm3となるように略均一に混合し、下底を封した内径8mm×高さ10mmのガラス容器内に高さが約3mmとなるように入れた。その後、フリーザー(商品名:MDf-0281AT,三洋電機社製)にて−30℃の条件で凍結させ、次いで真空乾燥機(商品名:DP43,ヤマト科学社製)にて減圧下で48時間乾燥させることによってジオキサンを取り除いて塩化ナトリウム粉末を略均一に含有した高分子体を得た。この高分子体に蒸留水を加え塩化ナトリウムを取り除いた後、真空乾燥機で48時間乾燥させ平均孔径300〜700μmであって壁面に平均孔径約5μmの小孔構造を有するスポンジ状の直径8mm×高さ約1.8mmの円柱形状をした多孔質生体吸収性高分子体を得た。この多孔質生体吸収性高分子体の空隙率を測定したところ約82%であった。
【0023】
<細胞工学支持体の作製>
前記したスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体を生体吸収性高分子体である前記した2個の分割容器構成体から成る容器内に収納し、その分割容器構成体の端面同士が当接した状態で80℃で1分間加熱して分割容器構成体の端面同士を溶着させて内部のスポンジ状で細胞培養用の多孔質生体吸収性高分子体の周囲が硬質の生体吸収性高分子体で被覆された構造の外径10mm×高さ4mmの細胞工学用支持体を得た。
【実施例2】
【0024】
<外郭用の生体吸収性高分子体の作製>
ジクロロメタン中に乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(重量平均分子量約400,000)を10重量%の濃度となるように入れ、攪拌機で攪拌し溶解した。得られた溶液をガラス板上に0.1g/cm2の条件で流し込み、その後、フリーザー(商品名:MDf-0281AT,三洋電機社製)にて−30℃の条件で凍結させ、次いで真空乾燥機(商品名:DP43,ヤマト科学社製)にて減圧下で48時間乾燥させることによってジクロロメタンを取り除いた。得られた厚さ1mmの生体高分子材料を加圧プレスすることで厚さ0.25mmのシート状の生体高分子材料を得た。この材料を縦×横が約10×5mmの小片に切断し、切断した短冊状の生体高分子材料を下底を封した内径10mm、高さ20mmのチタン製の型内に8枚を不規則に絡まるように充填し、上部より外径10mm、中心に直径8mmで高さが1mmの突起があるチタン製の棒で1500g/cm2で加圧した状態の体積を保って120℃で10分間加熱して外径10mm、高さ2mmで中心部に直径8mm、深さ1mmの窪みが空いた容器を構成する2個の分割容器構成体から成る生体吸収性高分子体を作製した。
【0025】
また、上記と同様な方法で直径10mm×高さ2mmの円柱状の試験体を作製し、クロスヘッドスピード1mm/分で圧縮させたところ、この外郭用のブロック状生体吸収性高分子体の破壊強度は0.08MPであった。
【0026】
<内部の多孔質生体吸収性高分子体の作製>
実施例1と同様な方法で作製したスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体を使用した。
【0027】
<細胞工学支持体の作製>
このスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体を生体吸収性高分子体である前記した2個の分割容器構成体から成る容器内に収納し、その分割容器構成体の端面同士に、ジクロロメタン中に乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(重量平均分子量約400,000)を10重量%の濃度となるように入れ、攪拌機で攪拌し溶解して得られた溶液を塗布して、分割容器構成体の端面同士を溶着させて内部のスポンジ状で細胞培養用の多孔質生体吸収性高分子体の周囲が硬質の生体吸収性高分子体で被覆された構造の外径10mm×高さ4mmの細胞工学用支持体を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子体の周囲が、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆されていることを特徴とする細胞工学用支持体。
【請求項2】
生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解した後に乾燥して作製された空隙率が50〜99%の多孔質生体吸収性高分子体を、厚さが0.01〜5mmで10〜3000μmの孔を有し破壊強度が0.05〜0.15MPaで作製された容器を構成する分割容器構成体から成り支持体全体に対する体積が15〜90%である生体吸収性高分子体で被覆し、該分割容器構成体同士を溶着することを特徴とする細胞工学用支持体の製造方法。
【請求項3】
分割容器構成体同士の溶着を、加熱により行う請求項2に記載の細胞工学用支持体の製造方法。
【請求項4】
分割容器構成体同士の溶着を、生体吸収性高分子体を構成する生体吸収性高分子材料を溶解させる有機溶媒を介して行う請求項2に記載の細胞工学用支持体の製造方法。