説明

細胞懸濁液の処理

油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中に懸濁された細胞培養物(例えば乳酸菌培養物)を含有する粒子を含み、対象細胞の改善された貯蔵安定性を付与する組成物を製造するための新規方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中において懸濁された細胞培養物(例えば乳酸菌培養物)を含有する粒子を含み、対象細胞の改善された貯蔵安定性を付与する組成物を製造するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞、例えば微生物は、多くの産業関連工程に関与する。例えば細菌培養物、特に一般的に乳酸菌として分類される細菌の培養物は、全ての発酵乳製品、チーズ、およびバターを製造する際において必須である。かかる細菌の培養物はスターター培養物と呼ばれ得、そしてそれらは、多くの機能を果たすことによって種々の乳製品に特定の特性を付与する。
【0003】
商用微生物組成物(例えば、LABスターター培養物)の貯蔵安定性は商業上重要であり、そして当技術分野において、このことに対する多くの技術的解決方法が示されている(例えば異なる凍結防止剤の添加)。
【0004】
本明細書の内容において、国際公開第2004/028460号(プロバイオヘルス(Probiohealth)LLC)は関連性があると考えられる。それには、LABプロバイオティクス細菌を含む油性エマルション/懸濁液について記載されている。当該懸濁液は、単純にLAB組成物(例えば凍結乾燥粉末)と油とを混合して懸濁液を得ることによって製造される(例えば実施例1を参照)。
【0005】
国際公開第2004/028460号には、微生物を含む油性懸濁液を製造する「標準的な」方法について記載されており、そしてそれは要するに、微生物と油との単純な混合として説明され得る。本出願の出願日において、本発明者は、かかる油−微生物懸濁液を製造するための、関連性のある他のより「洗練された」方法について記載されている先行技術文献を認識していなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明によって解決すべき課題は、油、脂質、またはワックス中に懸濁された細胞(例えばLAB)を含む組成物を製造するための新規方法の提供に関する。本明細書の実施例において説明されるように、本明細書において記載された当該新規方法によって製造された新規組成物は、対象細胞の改善された貯蔵安定性を付与する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の手段は、例えば細胞−油懸濁液が真空下に置かれる方法に基づく。
【0008】
本明細書において記載された真空処理の関与によって起こると考えられることの説明が、理論に限定されることなく以下において提供される。説明のために、本発明の方法の例を示す本明細書の図1を参照する。LAB細胞であるL.アシドフィルス(acidophilus)の貯蔵安定性が、本明細書において記載された真空ステップを含む方法によって製造された組成物において著しく改善されたことを実証する、本明細書の実施例1を同様に参照する。同様の著しい貯蔵安定性の改善がまた、異なるビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)属の細胞において実証された(本明細書中、実施例5を参照)。
【0009】
商用の微生物培養物は、粉末形態の凍結乾燥培養物であり得る。この粉末は、多くの個々の粒子を含む。当該粉末の各々の粒子は、対象微生物および他の材料、ならびに先の発酵工程に通常由来する化合物を含む多孔質構造である。
【0010】
図1のステップ(a)は、本明細書において記載された方法の例における第一のステップが、(例えば単純に油と微生物粉末とを混合することによる)油−粉末懸濁液の製造であることを示す。上で説明されたように、粉末粒子は多孔質である。当該粒子内に気体の微小ポケットが存在する。
【0011】
図1のステップ(b)において、当該油−粉末懸濁液は真空下に置かれる。この効果は、粒子中の少なくともかなりの部分の気体が除去されることである。本明細書の実施例において説明されるように、これは当該油−粉末懸濁液から抜けた気泡として観測され得る。
【0012】
図1のステップ(c)において、真空が解除される。当該懸濁液内において、個々の粒子は油で覆われている。当該粒子は多くの「空の」ポケットを有し、そしてそれは真空にする前において、気体で「占められて」いた。したがって、真空が解除されるとき、当該油が速やかに侵入し、そしてこれらのポケットを満たすだろう。最終的な結果として、最初に気体で満たされていた微小ポケットは速やかに油で満たされ、したがって各々の微生物含有粒子が気体を著しく含まない懸濁液を得る。
【0013】
本明細書の実施例において示されるように、本明細書に記載された新規懸濁液は、細胞の改善された貯蔵安定性をもたらす。この有益な効果の背景にある理論は、真空ステップが、細胞粉末粒子中の微小ポケットから気体を除去するという事実に関係する。気体が油のカプセル封入工程の間に除去されないならば、湿気、酸素、または油経由の場合と比較して気体経由の場合においてより速やかに輸送される他の成分が、当該気体によって速やかに輸送されるだろう。カプセル封入製品へのこれらの成分の速やかな輸送によって、特に製品質量または体積と比較して製品表面積が大きい時に、安定性が減少するだろう。
【0014】
油は、本発明に記載された通りに使用されるために非常に好適な材料である。しかし、湿気、酸素、または微生物の生存率に直接的もしくは間接的に損害を与え得る他の成分をあまり輸送しない他の材料が同様に使用されてもよい。油のほかに、かかる好適な材料はワックスまたは脂質を含む。
【0015】
したがって本発明は、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含む組成物の製造方法であって、以下のステップ:
(a):細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物と、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物を含む材料とを混合し;
(b):当該懸濁液上で真空を形成し;そして
(c):当該懸濁液上の真空を解除すること
を含む前記方法に関する。
【0016】
第一の態様において本発明は、真空ステップ(b)以前に気体によって占められていた、細胞を含有する多孔質粒子内の相当量の空間が、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物で占められることによって特徴付けられる、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含む組成物を得るために、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含む組成物を製造するための方法であって、以下のステップ:
(a):細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物を、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物を含む材料中に混合して懸濁液を得;
(b):当該多孔質粒子中に存在する、好適な量の気体を当該懸濁液から除去するために、当該懸濁液上で真空を形成し;そして
(c)当該懸濁液上の真空を解除して、当該粒子を覆う油、脂質、ワックス、またはこれらの混合物が、当該多孔質粒子へと入り込み、それにより真空ステップ(b)以前に気体で占められていた当該粒子中の空間の好適な量を占めること;
を含む前記方法に関する。
【0017】
第一の態様の方法によって得られる組成物は、それ自体新規組成物である。同様のもの、例えば先行技術の油−細菌組成物(例えば上で議論された国際公開第2004/028460号を参照)と比較して、本明細書において記載された新規組成物は、真空ステップ(b)以前に気体によって占められていた、細胞を含有する多孔質粒子内の相当量の空間が、油、脂質、ワックスまたはそれらの混合物で占められるという意味において異なる。先行技術に記載された方法が真空ステップを伴わないため、先行技術に記載された組成物は、本発明の組成物と同一視し得ない。本明細書に記載された組成物と、類似の先行技術の組成物に関して「構造的」相違が存在するという事実はまた、真空ステップを含まずに製造される対照組成物と比較して、本発明の組成物が細胞の改善された貯蔵安定性を付与するという事実によって暗に実証される。
【0018】
したがって、本発明の第二の態様は、油、脂質、ワックスまたはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含み、本発明の前記第一の態様の、および本明細書において記載されたその実施形態の方法によって得られ、ならびに前記第一の態様の真空ステップ(b)以前に気体によって占められていた、細胞を含有する多孔質粒子内の相当量の空間が、油、脂質、ワックスまたはそれらの混合物で占められることによって特徴付けられる組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本明細書において説明されたような、油中に懸濁された微生物を含む組成物を製造するための方法を示す。当該方法は真空工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
第一の態様において、本発明は、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含む組成物を製造するための方法であって、以下のステップ:
(a):細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物と、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物を含む材料とを混合し;
(b):当該懸濁液上で真空を形成し;そして
(c):当該懸濁液上の真空を解除すること
を含む前記方法に関する。
【0021】
本発明の方法の実施形態は:
− 細胞が乳酸菌であり、好ましくは、当該乳酸菌がラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)であり、そして細胞培養物を含む組成物が、1gの組成物あたり少なくとも106コロニー形成単位(CFU)の生細胞数を有する方法;
− ステップ(a)の、細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物が、粉末の形態の凍結乾燥培養物である方法;
− 本発明の方法のステップ(a)の細胞培養物と混合されるべき材料が油、好ましくは:ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、サクラソウ油、カボチャ油、米糠油、大豆油、トウモロコシ油、およびヒマワリ油からなる群から選択される植物油である方法;
− 視認できる塊が懸濁液中で検出されなくなるまで、ステップ(a)の混合物が撹拌される方法;
− ステップ(a)の懸濁液が、5〜40%の細胞培養物、および60〜95%の関連材料を含み、そして2つの構成成分である細胞培養物と関連材料との合計が懸濁液の少なくとも95%に達する方法;
− 懸濁液から抜ける気泡がほとんど存在しなくなるまで、ステップ(b)の真空処理が維持される方法;
− 目的の粘度を有する組成物を得るために、真空解除ステップ(c)の後に、増粘剤が当該組成物に添加される方法;
− ステップ(c)の後に得られる細胞培養物を含む組成物が、好適なカプセル中に充填される方法;および/または
− ステップ(c)の後に得られる細胞培養物を含む組成物が、シリアルの表面上に噴霧される方法である。
【0022】
第二の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られる組成物に関する。現時点において興味深い組成物は、ビフィドバクテリウム株、および植物油を含み、すなわち、BB−12(登録商標)、ATCC29682、ATCC27536、DSM13692、DSM15954、およびDSMZ10140からなる群から選択される細菌株、ならびに好ましくは:ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、サクラソウ油、カボチャ油、米糠油、大豆油、トウモロコシ油、およびヒマワリ油からなる群から選択される植物油を含む組成物である。
【0023】
当該態様は、以下のステップ:
(a):(i)細胞、(ii)多孔質粒子、および(iii)油、脂質、またはワックスを含む懸濁液を提供し;
(b):当該懸濁液上に真空を形成し;そして
(c):当該懸濁液上の真空を解除すること
を含む方法によって得られる組成物を含む。
【0024】
本発明の組成物は、例えばゼラチンカプセル中にカプセル封入されてもよい。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、本発明の組成物を含む食品生産物、例えば、シリアル、乳製品、またはジュースに関し、そして本発明の組成物を含む食品添加物または飼料添加物に関する。
【0026】
細胞
細胞は原則、任意の好適な対象細胞、例えば任意の真核または原核細胞であり得る。好ましくは、当該細胞は、糸状真菌細胞および微生物細胞からなる群から選択される細胞である。
【0027】
好ましくは、当該細胞はプロバイオティック細胞である。これは、細胞が乳酸菌であるときに特に好ましい(以下を参照)。
【0028】
表現「プロバイオティック細胞」は、胃腸管系の微生物のバランスを改善することによって、宿主のヒトまたは動物に有利な影響を与える微生物食品または飼料栄養補助食品として定義される、ある種の細胞(例えば微生物)を指す。既知の有益な効果は、プロバイオティック生物の酸素消費および酸産生による、有害なミクロフローラに対する定着抵抗性の改善を含む。潜在的な病原菌の異常増殖および下痢を防止する、プロバイオティック活性を有する生物の有効性の例は、種々のプロバイオティック活性を有する生物を含むカプセルを、エジプトを旅行する旅行者へ投与した結果、旅行者の下痢に対して39.4%の防御率をもたらした、という試験において示される(Black他,1989)。プロバイオティクス、ならびにヒトおよび動物におけるそれらの効果の総説が、Fuller、1989および1994において見られる。
【0029】
糸状菌は、(Hawksworth他,1995,前記により定義される通り)ユーミコタ(Eumycota)およびオーミコタ(Oomycota)亜門の全ての線維状形態を含む。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合多糖類からなる栄養菌糸体によって特徴づけられる。栄養生長は、菌糸伸長によるものであり、そして炭素代謝は偏性好気性である。対照的に、酵母、たとえばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)による栄養生長は、単細胞性葉状体の発芽によるものであり、そして炭素代謝は発酵性であり得る。
【0030】
より好ましい実施形態において、糸状菌細胞は、限定されないが、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、フサリウム(Fusarium)、フミコーラ(Humicola)、ムコール(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、およびトリコデルマ(Trichoderma)または有性世代もしくはその同義語の種の細胞である。
【0031】
本明細書において記載された方法において使用されるために好適である好ましい微生物細胞は、酵母細胞および原核細胞からなる群から選択される微生物細胞である。
【0032】
好ましい酵母細胞は、子嚢菌、担子菌、および不完全菌からなる群から選択される酵母細胞である。好ましくは、子嚢菌からなる群から選択される酵母細胞である。
【0033】
好ましい子嚢菌酵母細胞は、アシュブヤ(Ashbya)、ボトリオアスカス(Botryoascus)、デバリオマイセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリベロマイセス(Kluveromyces)、リポマイセス(Lipomyces)、サッカロマイセス(Saccharomyces)属菌、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア(Pichia)属菌、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属からなる群から選択される。
【0034】
好ましい酵母細胞は、サッカロマイセス種、例えばサッカロマイセス・セレビシエ、およびピキア種からなる群から選択される酵母細胞である。
【0035】
本明細書において記載された方法において、非常に好ましい細胞は原核細胞である。好ましい原核細胞は、バチルス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)、乳酸菌、およびE.コリ(E.coli)細胞からなる群から選択される。
【0036】
好ましいバチルス細胞は、B.サブチリス(subtilis)、B.アミロリケファシエンス(amyloliquefaciens)、またはB.リケニホルミス(licheniformis)である。好ましいストレプトマイセス細胞は、S.セトニイ(setonii)である。好ましいコリネバクテリウム細胞は、C.グルタミクム(glutamicum)である。好ましいシュードモナス細胞は、P.プチダ(putida)、またはP.フルオレセンス(fluorescens)である。
【0037】
市販の酪農スターター培養物は、一般的に、乳酸およびクエン酸を発酵する乳酸菌からなる。したがって非常に好ましい実施形態において、細胞は乳酸菌(LAB)である。
【0038】
本明細書において、表現「乳酸菌」は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、非運動性、微好気性、または嫌気性細菌の一群を示し、(ラクトースを含む)糖を発酵して、(優先的に産生される酸である)乳酸、酢酸、ギ酸、およびプロピオン酸を含む酸の産生を伴う。本明細書において好ましいLABを以下に記載する。
【0039】
産業上最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、リューコノストック(Leuconostoc)種、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種、およびペディオコッカス(Pediococcus)種の間で見られる。したがって、好ましい実施形態においてLABは、これらのLABからなる群から選択されたLABである。
【0040】
好ましい実施形態において、LABは、ラクトコッカス・ラクティス(lactis)亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(cremoris)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)亜種クレモリス、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス次亜種ジアセラクティス(diacetylactis)、ラクトバチルス・カセイ(casei)亜種カセイ、ストレプトコッカス・サーモフィルス(thermophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(faecium)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(animalis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ラクトバチルス・ラクティス、ラクトバチルス・ヘルベティカス(helveticus)、ラクトバチルス・デルブリュッキ(delbrueckii)亜種ブルガリクス(bulgaricus)、およびラクトバチルス・アシドフィルス(acidophilus)からなる群から選択されるLABである。
【0041】
LAB培養物は、「混合乳酸菌(LAB)培養物」、または「純粋乳酸菌(LAB)培養物」であり得る。
【0042】
用語「混合乳酸菌(LAB)培養物」は、2つ以上の異なるLAB種を含む混合培養物を示す。用語「純粋乳酸菌(LAB)培養物」は、単一のLAB種のみを含む純粋培養物を示す。
【0043】
極めて商用の混合培養物は:
ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、およびラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスを含む「O−培養物」;
ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス、およびラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス次亜種ジアセラクティスを含む「D−培養物」;
ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス、およびロイコノストック・メセンテロイデス亜種クレモリスを含む「L−培養物」;
ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス次亜種ジアセラクティス、およびロイコノストック・メセンテロイデス亜種クレモリスを含む「LD−培養物」;
ストレプトコッカス・サーモフィルス、およびラクトバチルス・デルブリュッキ亜種ブルガリクスを含む「ヨーグルト培養物」;ならびに
ストレプトコッカス・サーモフィルス、およびラクトバチルス・ヘルベティカスを含む「高熱性チーズ培養物」を含む。
【0044】
したがって、好ましい実施形態においてLAB培養物は、これらの培養物からなる群から選択されるLAB培養物である。
【0045】
細胞培養物
商業的に、比較的濃縮された培養物生産物を持つことが一般的に有利である。
【0046】
したがって、好ましい実施形態において、本明細書において記載された、油、脂質またはワックス中で懸濁された細胞培養物を含む組成物は、1gの組成物あたり少なくとも104コロニー形成単位(CFU)の生細胞数を、より好ましくは1gの組成物あたり少なくとも106コロニー形成単位(CFU)の生細胞数を、さらにより好ましくは少なくとも108コロニー形成単位(CFU)の生細胞数を、そして最も好ましくは少なくとも1010コロニー形成単位(CFU)の生細胞数を有する。
【0047】
上で言及された量の生細胞数は、当該細胞がLAB細胞であるときに特に好ましい。
【0048】
さらに、特に本明細書において記載されたような、油、脂質またはワックス中で懸濁された細胞培養物を含む組成物は、少なくとも250gの組成物重量を、より好ましくは少なくとも1kgの組成物重量を、そして最も好ましくは少なくとも10kgの組成物重量を有することが好ましい。
【0049】
油、脂質、またはワックスを含む材料
油、脂質またはワックスを含む材料における一般的に好ましい必要条件は、45℃において(固体ではなく)溶解した液体状態で存在することである。一般的に当該材料は、本明細書において記載された方法による処理の間、対象細胞に著しい損傷を与えない温度で、溶解された形態で存在するべきである。
【0050】
当該材料が20℃〜45℃の間の融点を有することは、有利であり得る。
【0051】
さらに、多くの使用において、細胞含有組成物がヒトまたは動物へ投与されなければならないため、当該油、脂質、またはワックスは食用であることが好ましい。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明の第一の態様の方法における、ステップ(a)の細胞培養物と混合されるべき材料は油である。当業者は、自由に使用できる多くの好適な油、脂質、またはワックスを有する。
【0053】
好ましい実施形態において、脂質は脂肪酸脂質である。好ましくは、脂質は:カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸およびラウリン酸からなる群から選択される。
【0054】
好ましい実施形態において、ワックスは:カルナウバワックス、キャンディリラワックス、マイクロクリスタリンワックス、ビーズワックス、および水素添加植物油からなる群から選択されるワックスである。
【0055】
好ましい実施形態において、当該油は植物油、好ましくは:ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、サクラソウ油、カボチャ油、米糠油、大豆油、トウモロコシ油、ヤシ油、落花生油、パラフィン油、およびヒマワリ油からなる群から選択される。当該油はまた:魚油からなる群から選択されてもよい。
【0056】
細胞を含有する多孔質粒子
図1に示されるように、本発明の第一の態様における方法のステップ(a)に従って、例えば油と混合される細胞含有粒子は、多孔質粒子であるものとする。用語「多孔質」は、第一の態様の方法における技術的課題の観点において、当業者がそれを理解するだろう通りに理解されるものとする。
【0057】
図1に示されるように、技術的課題は、気体を当該粒子から抜き出し、そして油を当該粒子中へ入れることであると理解され得る。したがって、気体を当該粒子から抜き出し、そして油を当該粒子へ入れるために、当該粒子が多孔質でなければならないことは明らかである。
【0058】
当業者は、細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物を容易に調製することができる。好ましい例は、粉末、例えば凍結乾燥粉末の形態である培養物である。
【0059】
上で説明されたように、商用微生物培養物は、粉末形態の凍結乾燥培養物であり得る。この粉末は、多くの個別粒子を含む。当該粉末の各々の粒子は、対象微生物、および他の材料、ならびに先の発酵過程から一般的に得られる化合物を含む多孔質構造である。
【0060】
したがって、好ましい実施形態において、細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物は乾燥培養物であり、より好ましくは粉末形態における乾燥培養物である。好ましくは、乾燥培養物は凍結乾燥培養物であり、より好ましくは粉末形態における凍結乾燥培養物である。
【0061】
好ましくは、当該粉末(例えば凍結乾燥粉末)は、所望の粒子サイズを有する粉末粒子を得るために粉砕される。好ましい粒子サイズは10mm未満であり、より好ましくは1mm未満である。幾つかの適用において、粒子サイズは500μm未満、例えば300μm未満であることが好ましいかもしれない。比較的大きな粒子サイズ(例えば1mm超)において、個別粒子は顆粒と呼ばれ得、そして「粉末化する」は顆粒化すると呼ばれ得る。
【0062】
第一の態様のステップ(a)−細胞を含有する多孔質粒子の、例えば油中への混合:
第一の態様の方法におけるステップ(a)の混合は、任意の好適な技術、例えば機械的撹拌によってなされ得る。さらなる詳細のために、例えば本明細書における実施例を参照。
【0063】
当該混合物は、視認できる塊が懸濁液中で検出されなくなるまで撹拌されることが好ましく、なぜならばこれは、細胞を含有する全ての多孔質粒子が関連材料(例えば油)で「湿って」いることの示唆であるからである。言い換えれば、当該粒子の全てが関連材料(例えば油)によって覆われている。
【0064】
ステップ(a)において、さらなる対象化合物を場合により加えてもよい。これは、例えばビタミン(例えばトコフェロール)、または最終化合物中に存在することについて興味のある他の化合物であってもよい。
【0065】
しかし、このステップ(a)において、いわゆる増粘剤(例えば二酸化ケイ素)を添加したいのならば、好ましくは注意を払うべきである。その理由は、懸濁液の粘度が非常に高いために、次の真空ステップ(b)において気体が効果的に除去されないということである。したがって、かかる増粘剤(例えば二酸化ケイ素)は、好ましくは真空の解除の後に(すなわち、ステップ(c)の後に)当該懸濁液へ添加されるべきである。
【0066】
真空ステップ(b)以前に、当該懸濁液が十分な粘度を有することは重要である。しかし、例えば多くの食用油が十分な粘度を有するため、当業者にとって十分な粘度を得ることは容易である。好適な例は、ヒマワリ油、または上で言及された他の油である。
【0067】
本明細書における実施例2において使用される、市販の油(ヒマワリ油、オリーブ油、大豆油、およびトウモロコシ油)の粘度の範囲は、ブルックフィールド・レオメーター(Brookfield rheometer)で測定される、約80〜約120cpの粘度の範囲である。これは、有用な好ましい粘度の範囲を示す。
【0068】
したがって、好ましい実施形態において、ステップ(b)に従って真空が形成される以前に、第一の態様におけるステップ(a)の懸濁液は、レオメーターで測定される1〜1000cpの範囲内の粘度を、より好ましくはレオメーターで測定される25〜200cpの範囲内の粘度を、最も好ましくは50〜150cpの範囲内の粘度を有する。
【0069】
ステップ(a)において、懸濁液は5〜40%の細胞培養物(例えば凍結乾燥粉末の形態)、および60〜95%の関連材料(例えば油)を好ましくは含む。2つの成分である細胞培養物と関連材料との合計は、好ましくは懸濁液の少なくとも90%に、例えば少なくとも95%に達するべきである。好ましい実施形態において、懸濁液は約15〜20%の細胞培養物(例えば凍結乾燥粉末の形態)、および約75〜80%の関連材料(例えば油)を含む。
【0070】
第一の態様のステップ(b)−当該懸濁液上の真空の形成:
ステップ(b)において、多孔質粒子中に存在する好適量の気体を当該懸濁液から除去するために、真空が当該懸濁液上に形成される。
【0071】
これは異なる方法で、例えば真空を形成するために好適である容器中に当該懸濁液を導入することによって形成されてもよい。さらなる詳細のため、本明細書の実施例1を参照する。
【0072】
真空の実際の圧力は、当該系の特定の必要性および要求に関連して調整され、そして最適化されてもよい。一般的に考えられる十分な真空圧は、500mbar未満である。一般的により低い圧力がより好ましく、例えば50mbar未満、またはより好ましくは2mbar未満である。
【0073】
上で議論されたように、この真空処理の効果は、当該粒子中の少なくともかなりの部分の気体が除去されることである。本明細書の実施例において示されるように、これは当該懸濁液から気化する気泡によって観測され得る。
【0074】
真空処理は好適な時間維持される。実際に選択される時間は、一般的に幾つかの要因に依存するだろう。例えば、当該懸濁液が真空下で撹拌されるならば、より速やかに気体が排出され、そして真空圧が比較的低いならば、気体は一般的により早く除去されるだろう。対象の特定の要件にしたがってこれを最適化することは、当業者の知識の範囲内である。
【0075】
しかし一般的に、真空処理の初期と比較して、当該懸濁液から排出される気泡が5%未満となるまで好ましくは真空処理を維持するべきである。より好ましくは、気泡が当該懸濁液からほとんど排出されなくなるまで当該真空処理を維持し得る。
【0076】
真空ステップ(b)において一般的に考えられる好適な時間は、1秒〜1時間である。
【0077】
非常に低い真空圧(例えば好ましくは5mbar未満、またはより好ましくは1mbar未満の圧力)を有するならば、水蒸気が当該懸濁液から抜け出し、そして気泡がかなり長い間当該製造物から形成され続けるだろう。これは細胞を含有する多孔質粒子由来の気体ではもはやなく、当該懸濁液中の粒子からの水の昇華または放出である。
【0078】
実際、これは当該懸濁液の「完全な」乾燥として観測され得るため、本明細書における方法のさらなる有利な可能性として理解される。気体の除去に関して、昇華によって除去された水は、当該多孔質粒子中の過剰な「空の」ポケットをさらに生み出し、そしてそこへステップ(c)に従って真空の解除後において関連材料(例えば油)が入り得る。ステップ(c)の真空の解除後、当該懸濁液は、例えば好適な方法で(例えばカプセル中に−以下参照)充填されるような適切な方法で、一般的には処理される。
【0079】
当該懸濁液が水分と全く接触することなく、これを行うことは困難である。しかし、「水が占有する」場所はまた、関連材料(例えば油)で「占有され」るため、所望ではない非常に多くの水分が当該懸濁液中に組み込まれる危険性は最小化された。
【0080】
したがって、好ましい実施形態において、真空圧は非常に低いため(例えば好ましくは、5mbar未満の、またはより好ましくは1mbar未満の圧力)、気体の他に水が、昇華または放出を通じて当該懸濁液から同様に除去される。
【0081】
第一の態様のステップ(c)−懸濁液上の真空の解除:
ステップ(c)において、真空が当該懸濁液上で解除された結果、当該粒子を覆っている油、脂質、ワックスまたはこれらの混合物が、多孔質粒子へ入り込むことができる適切な圧力を得、そしてそれにより真空ステップ(b)以前において気体で占められていた当該粒子中における空間の好適量を占有することができる。
【0082】
適切な圧力の好適な例は、おおよそ大気圧(約1bar)である。
【0083】
低い真空圧から、例えば大気圧へと比較的短い時間内(例えば、瞬時から30秒以内)で達するという意味において、真空の解除は、好ましくは比較的速やかに行われるべきである。
【0084】
真空が解除されるとき、関連材料(例えば油)が、細胞を含有する多孔質粒子を完全に覆うことが非常に好ましい。これを保証するために、真空の解除の直前に、当該懸濁液の撹拌を停止することが好ましいかもしれない。
【0085】
適切な圧力(例えば1bar)が当該懸濁液上で達成された後に、すなわち真空の解除後またはその間において、当該粒子を覆う関連材料(例えば油)は速やかに、または瞬時に当該多孔質粒子へ入り込む。したがって、真空の解除後速やかにまたは瞬時に、当該懸濁液は最後の次の工程に対する準備が整っている。
【0086】
他の化合物、例えば増粘剤の添加:
本明細書に記載された任意のステップの方法の間、対象化合物をさらに添加してもよい。これは、例えばビタミン(例えばトコフェロール)、または最終組成物中に存在することについて興味を有する他の化合物であってもよい。対象化合物の他の例は、水分捕捉剤、例えばジャガイモデンプンまたはショ糖であり得る。さらに、例えば好適な凍結防止剤を添加することが可能である。
【0087】
上で議論された通り、増粘剤は好ましくは真空ステップ(b)の前に添加されるべきではない。しかし、増粘剤は好ましくはステップ(c)の後に添加され得る。
【0088】
したがって、好ましい実施形態において、目的の粘度を有する組成物を得るために、増粘剤はステップ(c)の後に当該組成物へ添加される。好ましくは、それは、レオメーターで測定される1000〜100,000cpの範囲内である粘度、より好ましくはレオメーターで測定される2000〜25,000cpの範囲内である粘度を有する組成物を与える。
【0089】
増粘剤の好適な例は、グリセロール(例えばグリセリン);グリコール(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール);植物由来ワックス(例えばカルナウバ、ライス、キャンディリラ)、非植物性ワックス(ビーズワックス);レシチン;植物繊維;脂質;およびシリカ(例えば二酸化ケイ素)のような増粘剤を含む。好ましくは、増粘剤は二酸化ケイ素である。
【0090】
好適な方法における細胞組成物の充填:
本明細書において記載された方法のさらに可能なステップは、好適な方法における細胞組成物の充填に関する。
【0091】
用語「充填」は、広範囲に理解されるべきである。それは、細胞含有組成物が得られれば、消費者へ提供されるために充填されるべきであることを示す。それはボトル、テトラパック(登録商標)、カプセルなどに充填されてもよい。好ましくはパッケージ上に、または対応する商業用材料中に、細胞の種類は何か、およびおそらくその関連する産業上用途が示される。
【0092】
好ましくは、本明細書に記載された関連材料(例えば油)中に懸濁された細胞培養物を含む組成物が、好適なカプセル中へ充填される。当該カプセルは、例えば国際公開第2004/028460号の[0055]〜[0059]に記載された「嫌気的カプセル封入システム」に基づいてもよい。
【0093】
本明細書に記載された組成物を含む細胞の使用:
一般的に、本明細書において記載された細胞含有組成物の特定の好ましい産業的使用は、通常は問題となっている細胞の特定の特性に依存するだろう。
【0094】
細胞がLABであるならば、関連する使用は当該組成物を酪農スターター培養物として使用して、例えばチーズ、ヨーグルト、または他の関連する食品を製造することであり得る。
【0095】
好ましい使用は、本明細書において記載されたような組成物を含む細胞を、シリアルの表面上に噴霧することに関する。さらなる詳細のため、本明細書の実施例3を参照。
【0096】
あるいは、健康を改善するも目的で、ヒト、動物または魚へ与えられてもよい。これは、当該細胞がプロバイオティック特性を有するならば一般的には最も関連性があり、そして当該細胞がプロバイオティックLAB細胞である時に特に関連性がある。
【0097】
それ自体新規の組成物−本発明の別の態様
本明細書における実施例において、幾つかの異なる乳酸菌組成物が分析され、そして好ましいものが同定された。これらの好ましい組成物は、異なる成分の、特定の新規組成物を有することによって特徴付けられる。したがって、これらの新規組成物は、本明細書において本発明の別の新規態様を示す。
【0098】
したがって、本発明の別の新規態様は、油中において懸濁された乳酸菌培養物を含み、そして以下の成分:
15〜35%w/wの乳酸菌培養物
60〜85%w/wの植物油
5〜25%w/wのジャガイモデンプン;および
1〜5%w/wの二酸化ケイ素
を含むことによって特徴付けられる組成物に関する。
【0099】
当該成分の好ましい特定の量は:
15〜25%w/wの乳酸菌培養物
70〜80%w/wの植物油
5〜15%w/wのジャガイモデンプン;および
2〜4%w/wの二酸化ケイ素である。
【0100】
一般的に、比較的多量のジャガイモデンプンを含むならば、比較的少量の二酸化ケイ素を有し得る。
【0101】
好ましくは、当該組成物はまた、トコフェロールを好ましくは1〜5%w/w含む。
【0102】
好ましくは、細菌培養物は乾燥培養物であり、より好ましくは粉末形態の乾燥培養物である。最も好ましくは、それは凍結乾燥培養物である。
【0103】
好ましくは、植物油はヒマワリ油である。
【0104】
好ましくは、乳酸菌はラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カセイ亜種カセイ、ビフィドバクテリウム・ラクティスである。
【0105】
本発明を用語「一つの(a)」および「一つの(an)」および「その(the)」および本明細書における(特に以下の特許請求の範囲における)同様の指示語は、本明細書において別に示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を含むものと解釈され得る。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」は、別に記載の無い限り、拡張可能な用語(すなわち、「に限定されないが、含む」を意味)と解釈される。本明細書における数値範囲の記載は、本明細書において別に示されない限り、その範囲内にある各々別個の値を個々に示す簡略化した方法として有用であることを単に意図し、各々別個の値は、それが個々に本明細書に記載されたように本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書において別に示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順番で行われ得る。本明細書において提供される任意の、および全ての例、または例示のための用語(例えば「のような(such as)」)は、本発明をよりよく示すことを単に意図されたものであって、他に記載されない限り、本発明の範囲において限定を課すものではない。本明細書における如何なる用語も、本発明の実施において不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0106】
原料および方法:
製粉:
凍結乾燥された顆粒/培養物を、クアドロ・コーンミル(Quadro Comil)194、スクリーン(Screen)045R 031/37(丸穴、φ1.350mm)、回転速度:1400rpmで製粉した。当該粉末を180μm未満でふるいにかけた。
【0107】
実施例1:真空前処理の効果の試験−細胞はL.アシドフィルス
この例は、本明細書に記載されたような真空前処理ステップを使用することによって得られる安定性の改善を実証する。細胞は、凍結乾燥されたL.アシドフィルス(LA−5(商標))LAK形態(品目番号501082)であった。それは、Chr.Hansen A/S,デンマークから得られる市販のラクトバチルス・アシドフィルス培養物である。LAKを製粉し、そして180μm未満でふるいにかけた。Aw0.040へ凍結乾燥された。
【0108】
【表1】

【0109】
LAVA18を、以下の方法で製造した:
(a):懸濁液を得るために、視認できる塊が検出されなくなるまでLAKおよびヒマワリ油を混合した。
(b):懸濁液を真空ポンプ中に置き、そして1mbar未満の圧力を形成することによって懸濁液上に真空を形成した。当該製造物から発生する気泡が止むまで、真空を維持した。
(c):真空を速やかに解除して、懸濁液上を大気圧(1bar)とした。
(d):最終的にアエロジル200を添加し、所望の粘度を得た。トコフェノールを同様に添加した。
【0110】
LAVA製剤20
これらの成分および量は、LAVA18と同一であった。真空前処理が含まれないことを除き、LAVA18と同様の方法によってそれを製造した。
【0111】
向上した安定性を評価するために、当該製剤を異なる貯蔵条件で、および異なるパッケージ中で貯蔵した。向上した安定性を3週間の貯蔵後に測定し、そして細胞数を5℃で貯蔵された対照標準試料と比較した。結果を以下の表1に示す。
【0112】
表1:前処理を行って製造された基本的製剤であるLAVA18から得られる結果と、前処理を行わずに製造された同質の製剤であるLAVA20から得られる結果との比較。
【0113】
【表2】

【0114】
結論:
これらの結論は、真空処理されたLAVA18組成物が、対照である(真空処理されていない)LAVA20組成物と比較して著しく改善された安定性を有することを明らかに実証する。
【0115】
実施例2:真空処理された組成物における異なる成分の効果
この実験の目的は、異なる成分の安定性効果を分析することであった。LAVA18を対照標準として使用した。したがって、以下で言及される他のLAVA組成物において、LAVA18との違いにのみ言及される。
【0116】
抗酸化剤であるトコフェロールの効果
表2:2%トコフェロールを含むLAVA18、およびトコフェロールを含むLAVA19、および加えてトコフェロールを用いて製造されたが前処理を行わないLAVA20、およびトコフェロールを含まず、前処理を行わないLAVA21において得られた結果の比較
【0117】
【表3】

【0118】
コメント:
表2の結果は、トコフェロールの添加が試験期間内において限定された効果を有することを示す。真空処理によって得られる著しい安定性の改善が確認された。
【0119】
水分捕捉剤の添加の効果
表3:2つの水分捕捉剤;ジャガイモデンプンおよびショ糖を試験した。対照標準としてLAVA18を使用した。LAVA24は50gのジャガイモデンプンおよび14gのアエロジルを含み、LAVA25は50gのショ糖および12gのアエロジルを含み、ならびにLAVA26は25gのジャガイモデンプン、25gのショ糖および13gのアエロジルを含む。
【0120】
【表4】

【0121】
コメント:
表3の結果は、LAVA24およびLAVA26の安定性が、広い表面を有する貯蔵条件(30C/30%RH、ペトリ皿)において著しくすぐれているため、ジャガイモデンプンの効果が存在することを示す。
【0122】
異なる油の試験
表4:LAVA32はエキストラバージンオリーブ油を含み、LAVA33は大豆油を含み、そしてLAVA34はトウモロコシ油を含む。
【0123】
【表5】

【0124】
コメント:表4の結果は、異なる油、例えばオリーブ油、大豆油、およびトウモロコシ油がLAVA製剤の主成分として使用され得ることを示す。
【0125】
結論:
要約すれば、本実施例2の全体の結果は、好ましい油組成物が、以下の成分:
15〜25%w/wの乳酸菌、
70〜80%w/wの植物油、
5〜15%w/wのジャガイモデンプン;および
2〜4%w/wの二酸化ケイ素
を全て含む組成物であることを示す。かかる組成物の非常に好ましい例はLAVA35である。
【0126】
表5:好ましい組成物LAVA35の安定性
【0127】
【表6】

【0128】
コメント:
表5の結果は、多量の水を含有するゼラチンカプセルが添加されたHDPE容器中で貯蔵された時でさえ、LAVA製剤の優れた安定性を示す。
【0129】
実施例3:シリアルへの適用
LAVA製剤が十分にシリアル上で作用するか否かを評価するために、以下の試験を行った。
【0130】
LAVA17を製剤として使用した。それは異なるヒマワリ油(ヒマワリ油BECEL、IRMA、デンマーク製)が使用されたことを除いてLAVA18と同一であった。LAVA17を、真空ステップを含むLAVA18と同様の方法で製造した。LAVA18製剤を、噴霧またはブラッシングによってシリアル表面上の小さい層に適用した。
【0131】
シリアル:
ネスレ(Nestle)・フィットネス・フレークL42860819(13 09:59 賞味期限 12.10.2005)
【0132】
約10gのフレークを、はかりの上に載せたペトリ皿へ量り取った。LAVA17の微小な層を、フレークの表面上へ適用した。フレークおよびLAVAの総重量は、約11グラムであった。
【0133】
フレークの重さおよび総重量を、各々の試料ごとに記録した。
【0134】
LAVAを用いたフレークを、アルミニウムのバッグ中、30℃で3週間貯蔵し、そして同様に、気候室中でバッグを空けたまま30℃/30%RHで3週間貯蔵した。貯蔵による生存率を、5℃で貯蔵されたフレークと比較して計算した。
【0135】
CFU/gを、DK−PIM−ins−034/035/036に従って測定した。
【0136】
【表7】

【0137】
コメント:
これらの結果から、LAVA製剤をシリアル上に適用することは可能であり、そしてプロバイオティック細菌が著しく貯蔵安定性を有することが示された。
【0138】
実施例4:カプセル適用
硬カプセル中におけるLAVA製剤の使用を実証する例。
凍結乾燥L.アシドフィルス(LA−5(商標))LAK製剤(品番501082)を含むLAVA製剤18を、実施例1に記載された通りに製造した。
【0139】
LAVA製剤を、硬ゼラチンカプセルであるコニ−スナップ(Coni−Snap)サイズ3、カプスゲル(Capsugel)、またはHPMCカプセル、サイズ3、シオノギクオリカプス(Shionogi Qualicaps)S.A.中へ満たした。カプセルを異なる貯蔵条件で貯蔵し、そして細胞数を貯蔵3週間後に評価した。
【0140】
【表8】

【0141】
コメント:
表7の結果は、HDPE容器中に貯蔵された時でさえ、表面積が非常に広いカプセル中における、LAVAの優れた安定性を示す。
【0142】
実施例5:真空前処理の効果の試験−細胞はビフィドバクテリウム・ラクティス
真空前処理を含むもの、および真空処理無しの対照という2つの製剤を製造したという点において、本実施例は実施例1に対応する。
【0143】
細胞は、ビフィドバクテリウム・ラクティス(BB−12(登録商標))であった。これは市販の(Chr.Hansen A/S,デンマーク)凍結乾燥培養物である。
【0144】
実質的に実施例1で記載されたようになされた安定性の結果は、真空処理された製剤において、BB−12(登録商標)の著しく改善された安定性を実証した。
【0145】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載されており、そしてそれは当該発明を実施するための、発明者に既知の最良の形態を含む。好ましい実施形態の変形は、先の記載を読んだ場合において、当業者にとって明らかとなり得る。発明者は、熟練した技術者がかかる変形を好適に行うことを期待しており、そして発明者は、当該発明が本明細書において具体的に記載されたものとは別の方法で行われることを意図している。したがって、本発明は、ここに添付された特許請求の範囲中に記載された対象の全ての改良および均等物を、適用法によって許される限り含む。さらに、その全ての可能な変形における、上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書において別に示されない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り含まれる。
【0146】
参考文献
国際公開第2004/028460号(プロバイオヘルス(Probiohealth)LLC)
この特許文献に記載された全ての参考文献は、参照により完全に本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含む組成物を製造するための方法であって、以下のステップ:
(a):細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物と、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物を含む材料とを混合し;
(b):前記懸濁液上で真空を形成し;そして
(c):前記懸濁液上の真空を解除すること
を含む前記方法。
【請求項2】
前記真空ステップ(b)以前に気体によって占められていた、前記細胞を含有する多孔質粒子内の相当量の空間が、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物で占められることによって特徴付けられる、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含む組成物を得るために、以下のステップ:
(a):細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物を、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物を含む材料中に混合して懸濁液を得;
(b):前記多孔質粒子中に存在する、好適な量の気体を前記懸濁液から除去するために、前記懸濁液上で真空を形成し;そして
(c)前記懸濁液上の真空を解除して、前記粒子を覆う油、脂質、ワックス、またはこれらの混合物が、前記多孔質粒子へと入り込み、それにより真空ステップ(b)以前に気体で占められていた前記粒子中の空間の好適な量を占めること;
を含む、油、脂質、ワックス、またはそれらの混合物中で懸濁された細胞培養物を含む組成物を製造するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が乳酸菌(LAB)であり、好ましくは、前記乳酸菌がラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)であり、そして細胞培養物を含む前記組成物が、1gの組成物あたり少なくとも106コロニー形成単位(CFU)の生細胞数を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)の、細胞を含有する多孔質粒子を含む細胞培養物が、粉末形態の凍結乾燥培養物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)の細胞培養物と混合されるべき材料が、油、好ましくは:ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、サクラソウ油、カボチャ油、米糠油、大豆油、トウモロコシ油、およびヒマワリ油からなる群から選択される植物油である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
視認できる塊が前記懸濁液中で検出されなくなるまで、前記ステップ(a)の混合物が撹拌される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)の懸濁液が、5〜40%の前記細胞培養物、および60〜95%の前記関連材料を含み、そして2つの構成成分である細胞培養物と関連材料の合計が前記懸濁液の少なくとも95%に達する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁液から抜ける気泡がほとんど存在しなくなるまで、前記ステップ(b)の真空処理が維持される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
目的の粘度を有する組成物を得るために、前記真空解除ステップ(c)の後に増粘剤が前記組成物に添加される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)の後に得られる細胞培養物を含む組成物が、好適なカプセル中に充填される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(c)の後に得られる細胞培養物を含む組成物が、シリアルの表面上に噴霧される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物。
【請求項13】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)株、および植物油を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
BB−12(登録商標)株、ならびに:ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、サクラソウ油、カボチャ油、米糠油、大豆油、トウモロコシ油、およびヒマワリ油からなる群から選択される植物油を含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
以下のステップ:
(a):(i)細胞、(ii)多孔質粒子、および(iii)油、脂質またはワックスを含む懸濁液を提供し;
(b):前記懸濁液上で真空を形成し;そして
(c):前記懸濁液上の真空を解除すること
を含む方法によって得られる組成物。
【請求項16】
カプセル封入される、請求項12〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物を含む食品生産物。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれか一項に記載の組成物を含む食品添加物、または飼料添加物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−531149(P2010−531149A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513945(P2010−513945)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058322
【国際公開番号】WO2009/000924
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(503260310)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (23)
【Fターム(参考)】