説明

細胞接着性を増強する方法および組成物

本発明は、修飾されていない細胞の接着性と比較して高められた接着性を有する修飾された細胞であって、a)インテグリンβ3サブユニットをコードする組換え核酸、b)インテグリンαvサブユニットをコードする組換え核酸、c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする組換え核酸、および/またはd)(a)、(b)および(c)のいずれかの組合せを含む細胞を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は35U.S.C.119(e)の下、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、2004年4月29日に出願された米国仮特許出願第60/566,613号の利益を主張する。
【0002】
政府支援の明示
本発明に関連する研究は、NIH/NHLBIによって与えられた米国政府補助金番号HL51818によって少なくとも一部は支援されていた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、細胞培養環境において接着性が増強された修飾された細胞ならびにこれらの細胞を作製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ヒト胚性腎(HEK)293細胞は、主にその増殖の容易さと外来DNAにより効率的にトランスフェクトされるその能力のために、商業ベースと研究においての双方で広く用いられている多種多様な細胞のうちの一例である。しかし、293細胞の誘導体および種々のその他の細胞に関する1つの問題として、それらが組織培養容器に接着しにくいことが多いということがある。このことはこれらの細胞の操作を困難にする。この問題を克服するための1つの方法として細胞培養容器をビトロネクチンまたはポリリジンでコーティングすることがあるが、費用とこのような細胞培養物の取り扱いの容易さの双方に影響が生じ、このためこのアプローチは細胞の大規模製造には望ましくないものとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞がインテグリンを細胞表面に発現し、組織培養基材への接着を増強するよう修飾できる方法および組成物を提供することによって当分野におけるこれまでの欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはd)(a)、(b)および(c)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を含む、前記組換え核酸からなる、または本質的に前記組換え核酸からなる、修飾されていない細胞の接着性と比較して接着性が少なくとも3倍高められた修飾された細胞を提供する。
【0007】
本明細書では、a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはd)(a)および(b)および(c)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を含む、からなる、および/または本質的にそれからなる293.01細胞をさらに提供する。
【0008】
本発明は、a)i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはiv)(i)、(ii)および(iii)のいずれかの組合せであり得る核酸を細胞に導入することと、b)細胞が培養容器の表面と接着できる条件下で(a)の細胞を培養容器の表面と接触させることとを含む、からなる、または本質的にそれらからなる細胞を、培養容器の表面に接着させる方法をさらに提供する。
【0009】
いっそうさらなる実施形態では、本発明は、a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはd)(a)、(b)および(c)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を細胞に導入することを含む、からなる、または本質的にそれらからなる、修飾されていない細胞の接着性と比較して接着性が少なくとも3倍高められた修飾された細胞を製造する方法を提供する。
【0010】
本明細書ではまた、a)i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、iv)(i)および(ii)および(iii)のいずれかの組合せとからなる群から選択される組換え核酸を細胞に導入することと、b)(a)の細胞を培養容器に入れることと、c)ウイルス粒子が産生される条件下で、感染性ウイルス粒子を(b)の培養容器に入れることとを含む、からなる、または本質的にそれらからなる、培養容器中の細胞においてウイルス粒子を製造する方法を提供する。
【0011】
さらに、a)i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはiv)(i)および(ii)および(iii)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を293.101細胞に導入することと、b)培養容器に(a)の細胞を入れることと、c)I)レンチウイルスgagおよびレンチウイルスpolをコードするレンチウイルス核酸配列を含む、からなる、または本質的にそれからなる第1のベクターであって、(1)レンチウイルス構造タンパク質をコードする少なくとも一の遺伝子に少なくとも1つ欠陥を含み、(2)欠陥パッケージングシグナルを含む第1のベクターと、II)ベクターゲノムの逆転写に必要なシス作用配列エレメントを含むレンチウイルス核酸配列を含む、からなる、または本質的にそれからなる第2のベクターであって、(1)能力のあるパッケージングシグナルを含み、(2)異種遺伝子を含む第2のベクターと、III)ウイルスの核酸配列を含む、からなる、または本質的にそれらからなる第3のベクターであって、(1)ウイルスエンベロープタンパク質を発現し、(2)欠陥のあるパッケージングシグナルを含む前記の第3のベクターとを、組換えレンチウイルス粒子が産生される条件下で(b)の細胞に導入することとを含む、からなる、または本質的にそれらからなる、培養容器中の293.101細胞において組換えレンチウイルス粒子を製造する方法を提供する。
【0012】
本明細書では、本発明の修飾された細胞を、レンチウイルス核酸配列を含む、からなる、または本質的にそれからなるベクターであって、欠陥のあるパッケージングシグナルを含むベクターによりトランスフェクトすることを含む、からなる、または本質的にそれからなる、パッケージング細胞を作製する方法をさらに提供する。
【0013】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明の修飾された細胞であって、パッケージングシグナルに欠陥がある、少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質をコードしているレンチウイルス核酸配列を含み、その結果、細胞自体が少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質を産生するが、複製能力のある感染性ウイルスは産生しない細胞を含むパッケージング細胞を提供する。
【0014】
本発明の種々のその他の目的および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書において、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「その又は前記(the)」は1以上を意味する場合がある。例えば、「一の」細胞は単一の細胞を意味する場合もあるし、多数の細胞を意味する場合がある。
【0016】
また、本明細書において、「および/または」とは、1以上の関連記載事項のありとあらゆる可能性のある組合せを指し、包含し、ならびに代わりに(「または」)で解釈される場合には組合せの欠如を指し、包含する。
【0017】
本発明は、細胞がインテグリンを発現するよう修飾することによって、修飾されていない細胞よりもはるかに強力に組織培養基材に接着される細胞が得られるという予期しない発見に基づいている。
【0018】
したがって、一実施形態では、本発明は、a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはd)(a)、(b)および(c)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を含む、修飾されていない細胞の接着性と比較して接着性が高められた修飾された細胞を提供する。本細胞は、細胞においてインテグリンサブユニットコード配列が発現されるおよび/または過剰発現される条件下で維持する。いくつかの実施形態では、本発明のインテグリンサブユニットをコードする核酸の発現のタイミングおよび/または量を制御できるよう、核酸発現を調節するための当分野で周知の方法にしたがってインテグリンサブユニットコード配列を細胞で一過性に発現させる。
【0019】
接着性の増加量は、修飾されていない細胞の接着性と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍または少なくとも10倍であり得る。接着性の増加は、本明細書に記載される修飾された細胞か、修飾されていない細胞のいずれかを、組織培養基材[例えば、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリソルベートなど)、ガラス、寒天、コラーゲン、フィブロネクチン、セラミック、金属、生分解性または非生分解性ポリエステルスキャフォールド、管類など]と、細胞が基材と接着するのを可能にするのに十分な期間接触させることと、本明細書に記載された方法、ならびに細胞を定量するためのいずれかの技術分野で公知の方法にしたがって、基材に接着されている細胞量を求めることとによって測定する。修飾されていない細胞よりもより多数が組織培養基材に接着する修飾された細胞は、接着性が高められた細胞である。接着性の増加は、接着された細胞の増加数と相関があり、X倍増加(例えば、2倍、3倍など)として、パーセンテージ(例えば、修飾されていない細胞と比較して、基材に接着された10%多くの修飾された細胞に基づく、接着性の10%増加)として、および/またはベースライン測定値に対する増加を同定するいずれかの他の技術分野で公知の値にしたがって表すことができる。
【0020】
本発明の細胞は、培養条件下で増殖できる、かつ/または維持できる、かつ、インテグリンをコードする組換え核酸を受け入れ、発現できる細胞種であればいずれでもあり得る。例えば、本発明の細胞は、それだけには限らないが、BiG−45細胞、293.101細胞、B−241細胞、293T細胞、HEK293細胞、Dami細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ハイブリドーマ細胞、HUVEC細胞およびMS−5細胞であり得る。
【0021】
本発明の細胞は単一で存在する細胞である場合もあるし、細胞集団で存在する場合もあり、本発明の細胞は組織培養容器に含めることができ、これらは、フラスコ、ボトル、ローラーボトル、バイアル、チューブ、チャンバー、フラスコ、ディッシュ、スライド、プレート、単一ウェルとして存在する場合もマルチプルウェルプレート中に存在する場合も、および/またはそれらの組合せである場合もある組織培養ウェルであり得るが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の細胞は、ヒトインテグリンであってもよく、インテグリンβ3サブユニット、インテグリンαvサブユニット、インテグリンαIIbサブユニット、および/または任意の順序のこれらのインテグリンサブユニットのいずれかの組合せであり得るが、これらに限定されないインテグリンをコードする組換え核酸の導入によって修飾される。本発明は、その上で細胞が増殖する基材上にコーティングされ得るか、細胞によって分泌され得る細胞外マトリックス分子と結合するインテグリンのいずれかの組合せをさらに提供する。いくつかの例として、コラーゲン受容体α2−β1、ラミニン受容体α6−β4、いくつかのビトロネクチン受容体αV−β5およびβ1が挙げられ、これらはフィブロネクチンなどの受容体細胞外マトリックス分子の種々のαサブユニットと組合せることができるが、これらに限定されない。本発明のインテグリンは、例として、ニワトリ、イヌ、マウスおよびラットのような、いずれの種由来のものであり得る。これらのインテグリンをコードする核酸は、一以上の核酸構築物で細胞に導入でき、それから核酸が発現されて細胞内でインテグリンタンパク質が産生され得る。
【0023】
本明細書において、「核酸」とは、ヌクレオチド塩基A、T、CおよびGからなるDNA、または塩基A、U(Tの代わり)、CおよびGからなるRNAであり得る一本鎖または二本鎖分子を指す。本発明の核酸はコード鎖またはその相補物に相当し得る。本発明の核酸は、天然に存在する配列と順序どおり同一であり得るか、十分に特性決定された核酸コードの縮重のために、天然に存在する配列中に見られるものと同一のアミノ酸をコードする別のコドンを含み得るヌクレオチド配列を含み得る。さらに、本発明の核酸は、得られるポリペプチドの生物活性が保持されるような、当分野で周知であるようなアミノ酸の保存的置換に相当するコドンを含み得るヌクレオチド配列を含み得る。本発明の核酸は、核酸を単離するための当分野で周知の方法にしたがって細胞から単離できる。あるいは、本発明の核酸は、核酸の合成のための、文献に十分に記載されている標準プロトコールにしたがって合成できる。また、本発明の核酸によってコードされるポリペプチドの必須の構造および/または機能(すなわち、生物活性)は維持されるという条件で、この核酸への修飾が検討される。
【0024】
「組換え」核酸とは、当分野で周知の遺伝子工学技術を用いて作製されたものである。
【0025】
核酸配列の、用語「発現する」または「発現」(およびその文法上の同等物)とは、配列が転写され、場合によっては翻訳されることを意味する。
【0026】
本発明のインテグリンをコードする核酸は、細胞内でのインテグリンの発現に向かわせるプロモーターをさらに含み得る。したがって、特定の実施形態では、プロモーターを機能し得る形で、インテグリンをコードしている組換え核酸に連結できる。プロモーターは、細胞におけるインテグリン核酸の構成的発現をもたらす、構成的プロモーターであり得、プロモーターは、プロモーターを活性化する誘導可能エレメントの存在下でのみ細胞におけるインテグリン核酸の発現をもたらし、それによって組換え核酸からのインテグリンタンパク質の産生が制御されるのを可能にする、誘導可能プロモーターであり得る。
【0027】
本発明のプロモーターの例としては、それだけには限らないが、CMV最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、伸長因子1α、βアクチン、真核細胞の開始因子4A1、複合性CMVエンハンサー/βアクチンプロモーター(CAG)、複合性伸長因子1αプロモーター/HTLV5’非翻訳領域、複合性SV40エンハンサー/ヒトフェリチン重鎖伸長因子1αプロモーター、複合性CMVエンハンサー/ヒトフェリチン軽鎖伸長因子1αプロモーターおよび複合性CMVプロモーター/テトラサイクリンオペレーターが挙げられる。本発明のプロモーターは、本発明の組換え核酸にいずれかの組合せおよび/または順序で存在し得る。
【0028】
本発明の核酸は、それだけには限らないが、形質導入(例えば、ウイルスベクターによる感染)、トランスフェクション(エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクションなど)を含む当分野で周知の方法にしたがって細胞に導入できる。
【0029】
特定の実施形態では、本発明は、a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはd)(a)および(b)および(c)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を含む293.01細胞を提供する。本明細書に記載したように、インテグリンをコードする核酸は、同一または異なる構築物に、いずれかの順序および/または組合せで存在し得、細胞に同時におよび/または順次導入できる。本核酸はまた、同時におよび/またはいずれかの順序および/または組合せで発現させることができる。
【0030】
特定の実施形態では、本発明は、インテグリンβ3サブユニットをコードする組換え核酸とインテグリンαvサブユニットをコードする組換え核酸とを含む293.101細胞を提供する。これらの組換え核酸は、同一または異なる構築物に存在し得、細胞に、いずれかの組合せおよび/または順序で同時におよび/または逐次導入することができ、同時におよび/またはいずれかの順序で発現させることができる。
【0031】
本明細書では、本発明の細胞を製造するための種々の方法をさらに提供する。したがって、一実施形態では、本発明は細胞を培養容器の表面に接着させる方法であって、a)i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはiv)(i)、(ii)および(iii)のいずれかの組合せであり得る核酸を細胞に導入することと、b)細胞が培養容器の表面に接着できる条件下で(a)の細胞を培養容器の表面と接触させることとを含む方法を提供する。
【0032】
細胞が培養容器の表面と接着できる条件は、本明細書に記載されており、いずれかの所与の細胞種について当分野で周知であり、培養容器に含まれる培地、ならびに培養容器が維持される環境(例えば、温度、湿度、二酸化炭素含量など)に基づいている。本発明の細胞種の培地処方および培養条件は、当分野では十分に確立されている。一例として、HEK293細胞は以下の条件下の培養で増殖され、維持される。HEK293細胞は、10%ウシ胎児血清を含有する「ダルベッコ改変イーグル培地」(DMEMカタログ番号11995−065、Invitrogen Corp)で、5%CO2インキュベーター中、37℃で培養される。細胞が90%コンフルエントになると、維持のために1:6希釈で継代される。
【0033】
本明細書では、a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、d)(a)、(b)および(c)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を細胞に導入することを含む、修飾されていない細胞の接着性と比較して接着性が少なくとも2倍、少なくとも3倍および/または少なくとも4倍高められた修飾された細胞を製造する方法がさらに提供される。
【0034】
本発明の細胞は、核酸取り込みを増加させるために一過性のトランスフェクションプロトコールにおいて通常用いられる処理(例えば、グリセロールショックまたはDMSOショック)に、より良好に抵抗することが本明細書に示される。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、トランスフェクションプロトコールに使用される処理に抵抗するための増強された能力を提供する本明細書に記載される修飾を用いて、核酸を取り込む能力が増強された本発明の細胞を提供し、本明細書に記載されるプロトコールにしたがってこのような細胞を作製する方法、ならびにウイルス粒子の製造のためにこのような細胞を使用する方法をさらに提供する。
【0035】
本発明の細胞は、細胞内での種々の材料(例えば、タンパク質、ウイルスなど)の製造をはじめ、種々の商業適用および研究適用に使用でき、接着性の増加による製造に利用できる培養容器中の細胞数の増加によってその収率が改善される。したがって、特定の実施形態では、本発明は、a)i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはiv)(i)、(ii)および(iii)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を細胞に導入することと、b)(a)の細胞を培養容器に入れることと、c)ウイルス粒子が産生される条件下で、(b)の培養容器に感染性ウイルス粒子を入れることを含む、培養容器中の細胞におけるウイルス粒子の製造方法を提供する。
【0036】
本発明のウイルスは細胞培養で産生され得るウイルスであればいずれでもよく、それだけには限らないが、レンチウイルス、レトロウイルス、パラミクソウイルス、オルソミクソウイルス、フラビウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ラブドウイルス、ピコルナウイルス、アルファウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、ブニアウイルス、オルビウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ヘパドナウイルスおよびフィロウイルス、ならびに細胞培養で産生され得る現在公知のまたは後に同定されるいずれかのその他のウイルスが挙げられる。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、ウイルスはレンチウイルスであり得、これは霊長類レンチウイルス(例えば、HIV−1、HIV−2、SIV)、非霊長類レンチウイルス(例えば、FIV、BLV、EIAV、CEVおよびビスナウイルス)、ならびに/または現在公知のまたは後に同定されるいずれかのその他のレンチウイルスであり得る。
【0038】
したがって、本発明は、a)i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸、ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸、iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸、および/またはiv)(i)、(ii)および(iii)のいずれかの組合せであり得る組換え核酸を細胞に導入することと、b)培養容器に(a)の細胞を入れることと、c)I)一以上のレンチウイルス構造タンパク質をコードするレンチウイルス核酸配列を含む第1のベクターであって、(1)レンチウイルス構造タンパク質をコードする少なくとも一の遺伝子に少なくとも1つの欠陥を含む、(2)欠陥パッケージングシグナルを含む前記ベクターと、II)ベクターゲノムの逆転写に必要なシス作用配列エレメントを含むレンチウイルス核酸配列を含む第2のベクターであって、能力のあるパッケージングシグナルを含む前記ベクターと、III)ウイルスの核酸配列を含む第3のベクターであって、(1)ウイルスエンベロープタンパク質を発現し、(2)欠陥パッケージングシグナルを含む前記の第3のベクターとを、組換えレンチウイルス粒子が産生される条件下で(b)の細胞に導入することとを含む、培養容器中の細胞において組換えレンチウイルス粒子を製造する方法をさらに提供する。
【0039】
特定の実施形態では、前記方法の第2のベクターが、少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質(例えば、gag、polまたはenv)の発現に欠陥のあるものであり得る。もう1つの実施形態では、第1のベクターは、env遺伝子を有さないか、第1のベクターから発現され得ないようにする欠陥を含むenv遺伝子を有する、gag−pol発現ベクターであり得る。env遺伝子の欠陥は、遺伝子を第1のベクターから発現され得なくさせる欠失、置換および/または付加突然変異であり得る。
【0040】
その他の実施形態では、第1および第2のベクターは双方ともenv遺伝子を欠いているものである場合もあり、または双方とも、遺伝子を第1のベクターから発現され得なくさせる欠失、置換および/または付加突然変異であり得る欠陥を含むenv遺伝子を含むものである場合もある。
【0041】
前記方法の第3のベクターは、レンチウイルスenv遺伝子であり得る、ウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含む場合があり、および/または、第3のベクターは、レンチウイルスエンベロープタンパク質ではないウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含む場合もある。例えば、第3のベクターの核酸によってコードされるエンベロープタンパク質は水泡性口内炎ウイルスG(VSV−G)糖タンパク質であり得る。
【0042】
前記方法の第2のベクターは、異種核酸配列が挿入され得るマルチプルクローニングサイトおよび/または一以上の異種核酸を含み得る。本発明の異種核酸は、異種核酸が導入されている細胞において産生された場合に抗原性、免疫原性および/または治療的であり得るタンパク質またはペプチドをコードし得る。
【0043】
用語「異種核酸」とは、周知の専門用語であり、当業者には、導入されている細胞内には通常は存在しない核酸である、および/または細胞内には通常は存在しない調節エレメントの制御下で発現される核酸であると容易に理解される。本発明の異種核酸はまた、核酸が導入されている細胞において通常は存在しない量で存在するか、核酸が導入されている細胞において通常は存在しない量で発現される核酸であり得る。「異種核酸」は、通常、細胞中に天然には存在しない配列である。あるいは、異種ヌクレオチド配列とは、(例えば、天然には結合していないプロモーターとの結合によって)非天然環境に置かれている配列を指す場合もある。
【0044】
本発明の第1のベクター、第2のベクターおよび第3のベクターは、ベクター構築物を製造するための標準的な核酸配列の操作方法にしたがって製造でき、特定の実施形態では、本発明の第1、第2および/または第3のベクターをレンチウイルスゲノムのcDNAクローンから得ることができる。
【0045】
いくつかの例として、本発明の第1のベクターはプラスミドpEV53、プラスミドpEV53Aおよび/またはプラスミドpEV53Bであり得、本発明の第2のベクターはプラスミドpEC−lacZ、プラスミドpEC−puro、プラスミドpESIN6.1CpuroW、プラスミドpESIN6.1G3W、プラスミドpE11.1G3Wおよび/またはプラスミドpESIN11.1G3Wであり得、本発明の第3のベクターはプラスミドpCI−VSV−Gであり得る。
【0046】
pEV53Bは、主要スプライス供与部位の3nt上流までの全てのEIAVリーダー配列が除去されている点を除いてpEV53と同様である。pEV53Bを構築するために、以下のプライマーを用いるPCRによってgag遺伝子およびpolの一部をpEV53から増幅した。
【0047】
【化1】

【0048】
AscI制限部位(下線が引かれている)をクローニング目的で順方向プライマーに含めた。順方向プライマーについては順方向プライマー中のgagのATG翻訳開始部位が太字で示されており、EIAV配列がイタリック体で示されている。得られた1.4kbのPCR産物をAscIおよびBsrGIで消化し、AscI−BsrGI消化したpEV53Aにクローニングした。これによってpEV53Bが得られた。配列解析を用いてPCRによって増幅されたgag−pol配列が正しいことを確認した。
【0049】
本発明の第2のベクターの一実施例として、プラスミドpESIN6.1CpuroW、ストレプトマイセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)ピューロマイシンリポーター遺伝子を発現するEIAV由来の6866bpのプラスミドがある。このプラスミドは、2つのCMV最初期エンハンサー/プロモーター領域(bp1〜734および1863〜2384に位置する)、EIAVロングターミナルリピート配列(LTR)由来のR−U5配列ドメイン(bp735〜857)、EIAV RNAキャプシド形成シグナルを含有するリーダー配列(約bp870〜1200)、突然変異したtat翻訳開始部位(bp909〜911のCTGからTAG)、bp996〜997のスプライス供与部位、突然変異したgag翻訳開始部位(bp1000〜1003のATGからTAG、部分EIAV gag配列(bp1004〜1200)、EIAVセントラルポリプリントラクト(bp1314〜1330)およびセントラル終結シグナル配列(bp1422〜1448)を含有する「DNAフラップ」配列、ピューロマイシンコード配列(bp2480〜3105)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(bp3110〜3996)、EIAVエンハンサー/プロモーター配列のEIAV自己不活化(SIN)LTR配列欠失(bp4037〜4183)、ファージf1領域(bp4280〜4735)、アンピシリン耐性コード領域(bp5174〜6034)およびDNA複製のColEl開始点(bp5554〜6228)を含む。
【0050】
第2のベクターのもう1つの実施例として、pE6.1CpuroWがあり、これはSIN LTRが野生型EIAV LTRで置き換わっている以外pESIN6.1CpuroWと同様である。その他の実施例として、pESIN6.1CWおよびpE6.1CWが挙げられ、これらはピューロマイシン耐性遺伝子が、それ以外の注目する遺伝子または配列の好都合な挿入のために拡張されたマルチプルクローニングサイトによって置き換わっている以外は、それぞれpESIN6.1CpuroWおよびpESIN6.1CpuroWと同様である。第2のベクターのさらなる改良が可能である。例えば、pESIN11.1CWおよびpE11.1CWが、高い力価を提供するようリーダー領域が再構成され、最適化されたベクターの実施例である。
【0051】
本発明の方法にしたがって製造されたレンチウイルス粒子は、細胞に感染し、異種核酸を標的細胞に送達するプロセスにおいて単一ラウンドの複製を実施することができる。この技術の一態様は、ウイルス遺伝子の標的細胞への移動を排除する核酸送達システムである。これはウイルス構造タンパク質を、異種核酸をコードするベクターから物理的に分離することによって達成される。分離されたベクターを許容細胞(「パッケージング細胞」)に導入する。ウイルス構造タンパク質は、ウイルス粒子の製造に必須であるが、これらのタンパク質をコードする遺伝子は、欠陥パッケージングシグナルを含むか、パッケージングシグナルを含まないベクターに存在し、その結果、構造タンパク質遺伝子はパッケージング細胞において産生されるウイルス粒子にパッケージングされない。得られたレンチウイルス粒子は、パッケージングされたベクターが粒子組立てに必要なウイルス構造タンパク質の全てをコードする核酸を含まないという点で「複製に欠陥がある」。
【0052】
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本発明の修飾された細胞を、レンチウイルス核酸配列を含むベクターであって、欠陥パッケージングシグナルを含むベクターによりトランスフェクトすることを含む、パッケージング細胞を作製する方法を提供する。このベクターはgag−pol発現ベクターであり得、特定の実施形態では、ベクターはプラスミドpEV53Bであり得る。
【0053】
本明細書では、少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質をコードするレンチウイルス核酸配列であって、パッケージングシグナルに欠陥がある核酸配列を含む、本発明の修飾された細胞を含むパッケージング細胞であって、その結果、細胞自体が少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質を産生するが、複製可能な感染性ウイルスを産生しないパッケージング細胞をさらに提供する。
【0054】
特に、本発明のレンチウイルスベクターに関しては、特定の実施形態では、ベクターはEIAV由来のものである。天然EIAV核酸はウイルスに感染した細胞から単離でき、それからベクターを調製する。EIAVベクターを調製するための例示的方法は、Perry et al.,J Virol.66:4085〜4097頁(1992)に提供されている。例えば、当分野で公知の方法を用い、リバーストランスクリプターゼによってcDNAをEIAV RNAから製造できる。次いで、二本鎖EIAV cDNAを製造でき、クローニングベクター、例えば、細菌クローニングベクターにクローニングできる。当業者に公知のおよび当業者に使用されるいずれのクローニングベクター、例えば、細菌、酵母または真核生物のベクターも使用できる。いくつかの実施形態では、本発明のベクターは、EIAVゲノムの少なくとも一部と相補的であり、かつ、ゲノムの複製に必要なRNAゲノムの一部を含む一以上の核酸配列を含み得るcDNA分子を含み得、cDNA分子は標的細胞において機能的であるプロモーターの転写制御下に置かれている。
【0055】
本発明のプロモーターは、細胞において遠位の配列(すなわち、プロモーター配列の5’末端に結合している配列)の転写に向けるのに十分な真核生物のおよび/または原核生物のプロモーターを含み得る。プロモーター領域はまた、転写の増強または抑制のための制御エレメントを含み得る。適したプロモーターの例としては、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(pCMV)、ラウス肉腫ウイルスロングターミナルリピートプロモーター(pRSV)およびSP6、T3またはT7プロモーターがある。発現を容易にするために、プロモーターの上流のエンハンサー配列またはコード領域の下流のターミネーター配列を、本発明のベクターに場合によって含めてもよい。本発明のベクターはまた、さらなる核酸配列、例えば、細胞が効率的かつ効果的にベクターの異種核酸を発現するのを可能にするのに十分なポリアデニル化配列、局在化配列および/またはシグナル配列を含み得る。可能性あるポリアデニル化配列の例としては、SV40初期領域ポリアデニル化部位(Hall et al.,J.Molec.App.Genet.2:101(1983))およびSV40後期領域ポリアデニル化部位(CarswellおよびAlwine、Mol.Cell Biol.9:4248(1989))がある。このようなさらなる配列は、転写が求められる場合にはそれらが機能し得る形でプロモーター配列と連結され、または翻訳およびプロセッシングが求められる場合にはさらに開始およびプロセッシング配列と連結されるようベクターに挿入する。あるいは、挿入された配列は、ベクター中のいずれの位置に位置してもよい。用語「機能し得る形で連結された」とは、機能し得る形で連結されたプロモーター配列によって核酸配列の転写が導かれ、配列の翻訳が機能し得る形で連結された翻訳調節配列によって導かれ、配列の翻訳後プロセシングが機能し得る形で連結されたプロセシング配列によって導かれるような、核酸配列とプロモーターおよび/またはその他の調節またはプロセシング配列間の結合を説明するために用いる。
【0056】
本発明のベクターの構築のための標準的な技術は、当業者には周知であり、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,NY,1989)などの参照文献に見い出すことができる。DNAの断片を連結するためには種々の戦略が利用でき、その選択はDNA断片の末端の性質に応じて変わるが、当業者であればその選択は容易に行うことができる。
【0057】
本発明の一実施形態では、組換えレンチウイルス発現系は3種のべクターを含む。第1のベクターはEIAVゲノムの少なくとも一部の核酸配列を含み、このベクターは(i)EIAV構造タンパク質をコードする少なくとも一の遺伝子中に少なくとも1つの欠陥を含み、(ii)欠陥パッケージングシグナルを含む。第2のベクターはEIAVゲノムの少なくとも一部の核酸配列を含み、このベクターは(i)能力のあるパッケージングシグナルを含み、(ii)異種遺伝子を挿入できるマルチプルクローニングサイトを含む。第3のベクターはウイルスの核酸配列を含み、このベクターは(i)ウイルスエンベロープタンパク質を発現し、(ii)欠陥パッケージングシグナルを含む。
【0058】
本発明のもう1つの実施形態では、第1のベクターはgag/pol発現ベクターである。Gag/pol発現ベクターは、細胞からのウイルス粒子の組立ておよび放出に必要なEIAVタンパク質を発現し、ウイルスポリタンパク質GagおよびGag−Polをコードする遺伝子を含む。第1のベクターはまた、アクセサリータンパク質RevおよびTatをコードする遺伝子も発現できる。オープンリーディングフレームS2は、その機能が未知であるタンパク質をコードしているが、これをさらに第1のベクターに含めることができる。第1のベクターは、ウイルス遺伝子のレトロウイルス媒介性移動を排除する突然変異を含むよう構築される。このような突然変異は、ウイルスenv遺伝子中の配列の欠失、したがって、複製可能なEIAVの作製を可能にすることを排除する形である場合もあり、またはウイルス逆転写および組込みに必要なゲノムの3’末端の特定のシス作用配列エレメントの欠失である場合もある。したがって、この構築物由来のウイルス遺伝子がウイルス粒子にパッケージングされる場合でさえ、それらは複製されず、複製可能な野生型ウイルスは生じない。
【0059】
さらなる実施形態では、この発現系の第1のベクターは11874bpのプラスミドであるプラスミドpEV53Bおよび塩基対209〜863に、EIAV主要スプライス供与部位(bp915〜916)、gagコード領域(bp920〜2380)、polコード領域(bp2137〜5578)およびORF S2コード領域(bp5741〜5938)の上流に位置するCMV最初期エンハンサー/プロモーター領域を含むcDNAクローンである。このベクターはまた、部分envコード領域(bp5767〜7437)およびrevコード領域(bp5892〜5992および6954〜7358)を含む。revの第1コード領域内に公知のRev応答配列(RRE)が含まれている(bp5892〜5992)。このベクターはtatの第1のエキソンの欠失のために機能的tat遺伝子を発現しないが、tatの第2のエキソンはbp5590〜5730に存在する。ファージf1領域(bp7741〜8154)、SV40初期プロモーター領域および複製起点(bp8218〜8543)、ネオマイシン耐性コード領域(bp9389〜9628)、SV40ポリアデニル化シグナル(bp9389〜9628)、ColEl複製起点(bp10060〜10733)およびβラクタマーゼ(アンピシリン耐性)コード領域(bp10878〜11739)と同様に、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナルが提供されている。
【0060】
本発明の発現系の第2のベクターは、核酸導入のためのベクターとして働くよう設計されており、キャプシド形成およびベクター核酸の逆転写(複製)を支持するのに必要な全てのシス作用配列エレメント、ならびに異種核酸をコードするcDNAの挿入のためのマルチプルクローニングサイトを含む。本発明では、異種核酸を含むベクターは、標的細胞に形質導入される遺伝情報、ならびにウイルスゲノムのパッケージングおよび組込みに必要なシス作用配列エレメントを保持する組換えEIAV由来ベクターである。第2のベクターは、gag配列の特定の部分がEIAVゲノムのパッケージングにおいて役割を果たすと考えられているので、gagコード配列のいくつかの部分を含み得る。第2のベクターはまた、レンチウイルスDNA由来のシス作用配列であり、逆転写に関与するセントラルポリプリントラクト(cPPT)およびセントラル終結部位(CTS)配列を含む、いわゆるレンチウイルス「DNAフラップ」領域を含み得る。さらに、第2のベクターは、新しく合成されたRNAの核から細胞質への効率的な搬出を促進するシス作用エレメントを含み得る。RNA搬出シグナルの例としては、Revに呼応して作用する、相同レンチウイルスRev応答配列(RRE)、RNA安定化またはその他の手段によって遺伝子発現も高め得る異種ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)が挙げられる。さらに、LTRに含まれる5’スプライス供与部位は、例えば、Tan et al.,J Virol.70:3645〜3658頁(1996)に記載されるように、産生されたウイルスの力価を高める突然変異を含み得る。
【0061】
本発明の第2のベクターの一例として、ストレプトマイセス・アルボニガーピューロマイシンリポーター遺伝子を発現する、プラスミドpESIN6.1CpuroW、EIAV由来の6866bpのプラスミドがある。このプラスミドは、2つのCMV最初期エンハンサープロモーター領域(bp1〜734および1863〜2384に位置する)、EIAVロングターミナルリピート(LTR)(bp735〜857)由来のR−U5配列ドメイン、EIAV RNAキャプシド形成シグナルを含有するリーダー配列(約bp870〜1200)、突然変異したtat翻訳開始部位(bp909〜911のCTGからTAG)、bp996〜997のスプライス供与部位、突然変異したgag翻訳開始部位(bp1000〜1003のATGからTAG、部分EIAV gag配列(bp1004〜1200)、EIAVセントラルポリプリントラクト(cPPT、bp1314〜1330)およびセントラル終結部位(CTS)配列(bp1422〜1448)を含有する「DNAフラップ」配列、ウイルススプライス受容配列(bp1753〜1754)、Rev応答配列(RRE、bp1755〜1857)、ピューロマイシンコード配列(bp2480〜3105)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(bp3110〜3996)、EIAVエンハンサー/プロモーター配列のEIAV自己不活化(SIN)LTR配列欠失(bp4037〜4183)、ファージf1領域(bp4280〜4735)、アンピシリン耐性コード領域(bp5174〜6034)および複製のColE1開始点(bp5554〜6228)を含む。
【0062】
当業者には当然であろうが、異種核酸のヌクレオチド配列はいずれのヌクレオチド配列であり得る。例えば、異種核酸はリポーター遺伝子配列または選択マーカー遺伝子配列であり得る。本明細書において、リポーター遺伝子配列は、発現されるとその存在または活性をモニターできるタンパク質の製造をもたらす、いずれかの遺伝子配列である。適したレポーター遺伝子の例としては、ガラクトキナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼなどの遺伝子が挙げられる。あるいは、リポーター遺伝子配列は、その発現によって、何らかの検出可能な方法で細胞生理学に影響を及ぼす遺伝子産物が生じるいずれかの遺伝子配列であり得る。
【0063】
選択マーカー遺伝子配列は、発現されてタンパク質が生じ得、その存在によってそれを含む細胞を選択的に増殖させることを可能にする、いずれかの遺伝子配列である。選択マーカー遺伝子の例としては、抗生物質(例えば、ピューロマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシンなど)に対する宿主耐性を付与できる、アミノ酸類似体に対する宿主耐性を付与できる、および/またはさらなる炭素源での、あるいは許容されない培養条件下での細菌の増殖を可能にできる遺伝子配列が挙げられる。遺伝子配列はリポーター遺伝子および選択マーカー遺伝子配列の双方であり得る。本発明のリポーター遺伝子の例としては、大腸菌(E.Coli)のβ−ガラクトシダーゼ活性をコードするlacZ遺伝子およびピューロマイシン耐性をコードする遺伝子がある。
【0064】
本発明のリポーターまたは選択マーカー遺伝子配列は、通常細胞におけるベクターの認識または選択を可能にするのに十分であるものである。本発明の一実施形態では、リポーター遺伝子配列は、哺乳類細胞には通常存在せず、したがって、そのような細胞におけるその存在によってベクターの存在を決定的に証明することができる酵素またはその他のタンパク質をコードする。
【0065】
本発明の異種核酸はまた、所望の生成物、例えば、適した生物活性タンパク質またはポリペプチド、免疫原性もしくは抗原性タンパク質もしくはポリペプチド、または治療上活性なタンパク質もしくはポリペプチドのコード配列を含み得る。あるいは、異種核酸は、RNA配列に相補的な配列、例えば、アンチセンスRNA配列を含み得、被験体の細胞における相補ポリヌクレオチドの発現を阻害するためにこのアンチセンス配列を被験体に投与できる。
【0066】
異種核酸の発現によって、免疫原性および/または抗原性タンパク質および/またはポリペプチドを提供し、免疫応答を達成できるが、これとしては、抗体応答が挙げられる。このような抗体は、被験体においてワクチン接種との関連で治療効果を付与するのに効果的であり得、かつ/または抗体は、血液、血清または腹水などの体液において動物から集めることができる。
【0067】
本発明のさらなる実施形態では、第3のベクターはウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含む。したがって、このようなベクターは、適したプロモーターの制御下にウイルスタンパク質をコードする核酸配列を含む。ウイルスエンベロープタンパク質はレンチウイルスエンベロープタンパク質であり得る。しかし、別のウイルスのエンベロープ遺伝子を利用することによって、本発明のウイルスベクターが感染できる細胞の宿主域を変更することが可能である。つまり、特定のウイルスのエンベロープタンパク質の、その他のウイルスのキャプシド形成に参加する能力をうまく利用することによって本発明のEIAVベクターの宿主域を拡大することが可能である。水泡性口内炎ウイルスのGタンパク質(VSV−G、例えば、RoseおよびGillione、J. Virol.39:519〜528頁(1981)、RoseおよびBergmann、Cell 30:753〜762頁(1982)参照)は、他のウイルスのゲノムおよびマトリックス成分を含むシュードビリオンを効率的に形成する。これらのVSV−Gシュードベクターは極めて広い宿主域を有し、限外濾過によって高力価に濃縮できる。本明細書において、用語「シュード」とは、一のウイルスの核酸を含むが、別のウイルスのエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を指す。
【0068】
本発明の第3のベクターの一例としては、プラスミドおよびcDNAクローンpCI−VSV−G、エンベロープ糖タンパク質VSV−Gの発現ベクターがある。このプラスミドは5679塩基対を含み、CMV最初期エンハンサープロモーター領域(bp1〜795)、キメライントロン領域(bp857〜989)、VSV−Gコード領域(bp1088〜2633)、ファージf1領域(3093〜3548)、SV40後期ポリアデニル化シグナル(bp2782〜3003)、DNA複製のColE1開始点(bp4992〜5666)およびアンピシリン耐性コード領域(bp3987〜4847)を含む。
【0069】
本発明の一方法では、複製に欠陥のある感染性EIAV粒子を、本明細書に開示した方法にしたがい、当業者に公知の技術と組合せて調製できる。本方法は、レンチウイルス許容細胞を、本発明のベクターを用いてトランスフェクトすることと、トランスフェクトされた細胞においてEIAV由来粒子を製造することと、細胞からウイルス粒子を回収することとを含む。レンチウイルス許容細胞をトランスフェクトするステップは、当業者に公知のいずれかの適した手段にしたがって実施できる。例えば、本発明の一方法では、本明細書に記載した3種のプラスミド発現系を用い、一過性のトランスフェクションによってEIAV由来のレトロウイルスベクター粒子を作製する。もう1つの実施例として、ベクターの細胞への取り込みは、例えば、細胞をDEAEデキストランで処理すること、ベクター由来DNAまたはRNAを細胞に添加する前にLIPOFECTIN(登録商標)で処理することなどのいずれかの適した手段によって、またはエレクトロポレーションによって達成できる。これらの技術は当分野では周知である。
【0070】
細胞における感染性ウイルス粒子の製造を容易にするステップは、従来技術を用いて、例えば、当分野で周知の標準的な細胞培養増殖技術によって実施する。
【0071】
感染性ウイルス粒子を回収するステップもまた、従来技術を用いて実施する。例えば、当分野では公知のように、感染性粒子は細胞溶解または細胞培養物の上清の回収によって回収できる。場合によって、回収したウイルス粒子を所望であれば精製してもよい。適した精製技術は当業者には周知である。
【0072】
当業者により所望であれば、本発明のベクターおよび方法を用いてレンチウイルス保存溶液を調製してもよい。ウイルス保存溶液を調製する方法は当分野では公知であり、例えば、Soneoka et al.,Nucl.Acids Res.23:628〜633頁(1995)およびLandau et al.,J. Virol.66:5110〜5113頁(1992)によって示されている。本発明において保存溶液を製造する方法では、本発明のレンチウイルス許容細胞を、本発明のベクターによりトランスフェクトする。次いで、細胞を適した細胞培養条件下で増殖させ、レンチウイルス粒子を前記のように細胞自体か細胞培地のいずれかから回収する。
【0073】
本発明述べクターはまた、パッケージング細胞(すなわち、EIAVウイルスタンパク質を発現する細胞であって、この細胞はそれ自体では感染性ウイルス粒子を作製できない)の調製において有用である。レトロウイルスタンパク質を発現するパッケージング細胞を調製する方法は当分野出は公知であり、例えば、Teminらの米国特許第4,650,764号に示された方法によって例示されており、この参照文献はこれらの方法の教示のためにその全体が本明細書に組込まれる。本発明のパッケージング細胞は、少なくとも一のEIAV構造タンパク質をコードするEIAV核酸を含み、核酸がパッケージングシグナルに欠陥があり、したがって、細胞自体を少なくとも一のEIAV構造タンパク質を産生できるが、複製可能な感染性ウイルスは産生できないようにする、本発明のレンチウイルス許容細胞を含み得る。次いで、パッケージング細胞は、導入されたその他の核酸配列(例えば、pESIN61.CpuroWおよび/またはpCI−VSV−G)を有し、これは異種核酸と適当なパッケージングシグナルとを含み得る。さらなる一の配列または複数の配列によりトランスフェクトされると、異種核酸を含むが、そのウイルス自体は複製可能でないEIAVウイルスのストックを製造するためにパッケージング細胞が用いられる。
【0074】
本発明を以下の実施例でより詳しく説明するが、その多数の改変および変法が当業者には明らかであるので、これは例示としてのみ意図されるものである。
【実施例1】
【0075】
細胞
HEK293細胞はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手した。これらの細胞のクローンのライブラリーは制限希釈によって調製し、レトロウイルスおよびレンチウイルスベクターを産生する最大の能力を示した細胞株をスクリーニングした(Johnson et al.,「Effect of host modification and age on airway epithelial gene transfer mediated by a murine leukemia virus−derived vector」J.Virol.72:8861〜72頁(1998))。これらのクローンのうちの1つ、293.101をEIAVヘルパー細胞株およびEIAVベクターパッケージング細胞を構築するために選択した。B−241細胞株はEIAVベクターヘルパー細胞株である。これらの細胞は293.101細胞から、EIAVgag、pol、S2およびCMVプロモーター由来のrev遺伝子を発現する発現ベクター(EV53B)での安定なトランスフェクションによって得られた。BiG−45細胞株はEIAVパッケージング細胞株である。これらの細胞は、テトラサイクリン調節可能VSV−GエンベロープcDNAおよびCMVプロモーター駆動テトラサイクリンレプレッサー遺伝子をコードするプラスミド発現ベクターでの安定なトランスフェクションによってB−241細胞から導いた。BiG−45/8Z−20細胞は、pONY8Z、細菌lacZリポーター遺伝子をコードするEIAV遺伝子導入ベクターでのBiG−45細胞の安定なトランスフェクションにより得られた(Rohll et al.,「Design,production,safety,evaluation,and clinical applications of nonprimate lentiviral vectors」Methods Enzymol 346:466−500(2002))。
【0076】
インテグリン発現プラスミド
ヒトαIIbまたはαvインテグリンサブユニットを発現させるためにはpCXIH発現ベクターを用いた。野生型または突然変異したヒトβ3インテグリンサブユニットを発現させるためにはpCXIP発現ベクターを用いた。これらのベクターは、挿入されたcDNAを発現させるためにCMVプロモーターを用い、動物細胞における選抜のためのハイグロマイシン耐性遺伝子(pCXIH)またはピューロマイシン耐性遺伝子(pCXIP)のいずれかに結合しているIRES配列を含む。
【0077】
pCXIPプラスミドは5562bpの長さであり、標的遺伝子ならびにピューロマイシン選択マーカーを発現するよう設計されたバイシストロニック発現ベクターである。このベクターはCMV最初期エンハンサー/プロモーター領域(bp1〜532)、発現されようとする配列を挿入するためのマルチプルクローニングサイト領域(bp639〜687)、配列内リボソーム進入部位配列(bp689〜1261)、ピューロマイシン耐性遺伝子(bp1298〜1894)、ネズミ白血病ウイルス由来ポリA付加シグナル(bp2268〜2693)、DNA複製のSV40開始点(bp2973〜3259)、DNA複製領域のCol E1開始点(bp3580〜4200)およびアンピシリン耐性遺伝子(bp4340〜5200)を含む。
【0078】
pCXIHプラスミドは6161bpの長さであり、標的遺伝子ならびにハイグロマイシン選択マーカーを発現するよう設計されたバイシストロニック発現ベクターである。このベクターはCMV最初期エンハンサー/プロモーター領域(bp1〜532)、発現されようとする配列を挿入するためのマルチプルクローニングサイト領域(bp640〜680)、配列内リボソーム進入部位配列(bp689〜1263)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(bp1287〜2321)、ネズミ白血病ウイルス由来ポリA付加シグナル(bp2867〜3292)、DNA複製のSV40開始点(bp3572〜3858)、DNA複製領域のCol E1開始点(bp4179〜4799)およびアンピシリン耐性遺伝子(bp4939〜5799)を含む。
【0079】
BiG−45細胞におけるαvおよびβ3インテグリンサブユニットの双方の発現のために、pVITR02−mcs発現ベクター(InvivoGen,San Diego)を用いた。このベクターは、ヒトαvインテグリンを発現させるために複合性ヒトフェリチン重鎖プロモーター/SV40エンハンサー配列を用い、ヒトβ3インテグリンを発現させるために複合性ヒトフェリチン軽鎖プロモーター/CMVエンハンサー配列を用いる。
【0080】
293ベースのEIAV産生細胞におけるインテグリンサブユニットの発現
αIIb、αvおよびβ3サブユニットをコードするインテグリンcDNAを、CMVプロモーターを用いて発現ベクターにサブクローニングし、種々の組合せをB−241 EIAVヘルパー細胞株に安定にトランスフェクトして一連の細胞株を作製した。12日の薬物選抜後、各トランスフェクションから得られた細胞コロニーをプールし、個々のインテグリンサブユニットαIIb、αvおよびβ3の細胞表面発現について、またはフローサイトメトリーによる生細胞の免疫蛍光によってインテグリン受容体αIIbβ3、もしくはαvβ3として分析した(図1)。各インテグリンがB−241細胞の細胞表面に発現されていることがわかった。αおよびβサブユニット双方の発現が一緒になって、個々のサブユニットを発現することと比較して、細胞表面での全体的な発現を増強した。免疫蛍光研究によって、各インテグリンの発現が、内因性インテグリン発現と比べて大きく増強されることが確認された。
【0081】
インテグリン修飾した293細胞の組織培養基材への接着
細胞接着アッセイを用いてβ3インテグリンサブユニット単独またはそのαIIbもしくはαv結合パートナーとの発現が組織培養基材への接着の増加をもたらすかどうかを調べた。このアッセイは、緑色蛍光タンパク質を発現する293ベースのBiG−45EIAVパッケージング細胞においてインテグリンサブユニットを一過性に発現させることを含んでいた。この細胞を12ウェルプレート中のウェルあたり3×105個細胞でプレーティングした。プレーティングの1時間後、細胞の洗浄前後の細胞の蛍光を測定することによって細胞のコロニー形成率を求めた。β3インテグリンサブユニット単独の過剰発現は、修飾していない細胞と比較して、293細胞の未処理組織培養プレートへの接着の有意な増加をもたらした(図2)。αvとの同時発現は、293細胞接着をさらに増加させた。β3サブユニットの突然変異型も調べたが、血小板でαIIbと結合すると、αIIbβ3受容体を恒久的に活性化させる。突然変異β3サブユニットは、野生型β3サブユニットと比較して、単独でまたはαIIbもしくはαvと共同しても細胞接着において何の増加も提供しなかった(図2)。したがって、293由来細胞における野生型ヒトαvβ3インテグリン受容体の発現は、標準組織培養プレートに接着するその能力を有意に高めた。
【0082】
293細胞のローラーボトル培養の際のインテグリン修飾の効果
レンチウイルスベクターを製造するために必要な時間と労力を低減するために、インテグリン修飾した細胞のローラーボトル培養において接着し増殖する能力を調べた。最初の実験では、インテグリンβ3修飾されたB−241細胞または修飾されていないB−241細胞をローラーボトルに播種した。翌日、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、写真を撮った(図3)。β3修飾された細胞は、修飾されていない細胞よりも有意に良好に接着したが、細胞の凝集がいくらか現れた。そのαv結合パートナーとのβ3発現の作用を調べるために、EIAV−lacZベクターを産生するBiG−45パッケージング細胞(BiG−45/8Z−20)を、両インテグリンを発現するpVITRO2mcsベクターにより安定にトランスフェクトし、ローラーボトルに播種した。播種の翌日、X−Galを用いて細胞をlacZ遺伝子の発現について染色した。図3に示されるように、細胞はより均一な接着を示し、細胞凝集はβ3単独で修飾された細胞よりも少なかった。続く実験では、ローラーボトルに播種した24時間後に、インテグリン修飾された、および修飾されていないB−241細胞のコロニー形成率を求めた。β3およびαvβ3修飾されたB−241細胞の双方について、コロニー形成率は98.3%±1.5%(n=6)であった。一方、修飾されていないB−241細胞については、コロニー形成率はほんの45.7%±15.3%(n=3)であった。
【0083】
レンチウイルスベクター産生に対するインテグリン発現の効果
ピューロマイシン遺伝子をコードするEIAVベクター(ESIN6.1CpuroW)ならびにVSV−GエンベロープをコードするベクターをB−241ヘルパー細胞株に同時トランスフェクションすることによって、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクションを用いる一過性のベクター産生系におけるEIAVベクター産生に対するインテグリン発現の効果を調べた。αIIbまたはαvインテグリンサブユニットの発現は、単独ではベクター力価に対して全く効果がなかった(表1)。β3とのαIIbの同時発現は、一貫して、ベクター力価の4〜5倍の低下をもたらした。対照的に、β3の単独またはαvインテグリンと組合せた発現は、ベクター産生の30〜60%の増加をもたらした。
【0084】
B−241細胞、またはその他の293ベースの細胞株のαvβ3インテグリンでの修飾は、細胞の平坦化をもたらし、その結果、インテグリン修飾された細胞は修飾されていない細胞よりも大きな表面積を占めた。最適化したトランスフェクションプロトコールは、通常、80〜90%コンフルエントである培養物を用いるので、これによりトランスフェクション実験に修飾されていない細胞よりも少ない数のインテグリン修飾された細胞がもたらされた。インテグリン修飾された細胞からのEIAVベクター産生をさらに特性決定するために、細胞あたりの感染性ベクターの収量を求め、修飾されていない細胞と比較した。さらに、DNA取り込みの効率を高めるために用いられる薬剤(グリセロールまたはDMSO)の効果を調べた(Lopata et al. 1984.「High level transient expression of a chloramphenicol acetyl transferase gene by DEAE−dextran mediated DNA transfection coupled with a dimethyl sulfoxide or glycerol shock treatment」Nucleic Acids Res 12:5707〜17頁)。表2に示されるように、細胞あたりの産生されたベクターの収量は、αvβ3インテグリンで修飾された細胞を用いると3.6倍増加した。さらに、インテグリン修飾された細胞におけるベクターの収量は、DNA取り込みを増強するためにプロトコールにグリセロールまたはDMSOショック処理を組込むことによって約3倍さらに高めることができる(表2)。対照的に、修飾されていない培養物からのベクター産生は、グリセロールまたはDMSO処理によって増強されなかった。1つには、これは修飾されていない培養物による接着性が弱いことによる細胞の損失に起因していた。30秒までのグリセロールまたはDMSO処理期間の減少によって、修飾されていない培養物の細胞損失の低減がもたらされたが、ベクター収量は高まらなかった。
【実施例2】
【0085】
HEK293細胞インテグリン発現プロフィールの修飾によって、レンチウイルスベクターの好都合な大規模ローラーボトル製造が可能になる。
ローラーボトルを用いるEIAVおよびHIVに基づくレンチウイルスベクター製造
インテグリン修飾された293細胞のローラーボトル培養を用いて大規模高力価ベクター製造が達成される可能性を調べた。これらの研究では、ローラーボトルを用いてレンチウイルスベクターを製造するための種々の方法を試験した。いくつかの実施例を表3に示す。一実施例では、EIAVgag−pol遺伝子を安定に発現する、αvβ3修飾されたB−241ヘルパー細胞のローラーボトル培養物を、ピューロマイシン耐性遺伝子をコードするEIAVベクター(ESIN6.1CpuroW)とVSV−Gエンベロープ遺伝子を用いて同時トランスフェクションした。1000倍濃縮した後、力価が1.2×109感染単位/mlのベクター調製物が得られた。このレベルのベクター製造は、組織培養プレートで増殖させた修飾されていない細胞によって産生されたベクター製造のレベルに匹敵することが好都合である(表1)。
【0086】
第2の実施例では、EIAV lacZ遺伝子により安定にトランスフェクトされたBiG−45 EIAVパッケージング細胞株を誘導して、濃縮後に2×109という力価を有するウイルスを製造した。第3の実施例は、手順をスケールアップして、動物研究に適した多量のベクターを製造できることを示す。この場合には、目的はイヌ造血幹細胞へのエクスビボ遺伝子導入に必要なベクター量(>3×109総感染単位)を製造することであった。αvβ3修飾された293T細胞を含む12本のローラーボトルの3プラスミドトランスフェクションを実施しHIV−1ベクターを製造した。トランスフェクションの48時間後に始まる3連日でベクター(90ml/ローラーボトル)を回収した。合計3240mlを回収し、約550倍に濃縮して6mlとした。全収量は、動物研究を実施するのに十分なものより多い1.4×1010感染ベクター粒子であった。
【0087】
ヒト胚性腎細胞(HEK293)はウイルス遺伝子導入ベクターの製造のために最も広く用いられている細胞種である。それらは、組換えウイルスを一過性に発現させるためのいくつかのトランスフェクション試薬およびプロトコールを用いて、ウイルスタンパク質をコードするプラスミドDNAにより高効率にトランスフェクションすることが可能である。ウイルス製造のための種々の安定な293ベースのパッケージング細胞株も作製した。非霊長類レンチウイルスウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)をベースにした遺伝子導入系を開発したが、これは高力価ウイルス製造のために、安定な293細胞ベースの誘導可能パッケージング細胞株(BiG45)を利用している。293細胞を用いるベクターの大規模製造は、それらが容易に標準組織培養プレートから離れるために困難であることが多い。これは、細胞に懸濁培養での増殖を適用することによって克服できるが、これによってウイルス力価の有意な損失がもたらされ得る。あるいは、フィブロネクチンまたはポリリジンなどの細胞接着基材で処理した容器で培養物を増殖させることができる。しかし、両戦略とも大規模ベクター製造の費用を有意に増大させる。
【0088】
本研究では、293細胞のインテグリン発現プロフィールを修飾することによってその接着性を高める新規戦略を試験した。第1に試験したのは、インテグリンβ3サブユニットの単独またはその公知の結合パートナーαvもしくはαIIbと組合せた過剰発現の効果であった。細胞接着アッセイは、緑色蛍光タンパク質を発現する293ベースのEIAVパッケージング細胞における、一過性に発現するインテグリンサブユニットに関連していた。この細胞を2〜4×105個細胞/ウェルという密度で未処理のマルチウェルプレートにプレーティングした。プレーティングの1時間後に、細胞の洗浄の前後に細胞の蛍光を測定することによって細胞のコロニー形成率を調べた。293細胞におけるβ3インテグリンサブユニットの過剰発現は、細胞の未処理の組織培養プレートへの接着において、修飾されていない細胞と比較して有意な増大をもたらした。αvの同時発現は293細胞接着をさらに高めたが、αIIbは高めなかった。インテグリン修飾された293細胞からのHIVおよびEIAVベースのレンチウイルスベクター双方の製造も調べた。この修飾の結果として標的細胞におけるベクター力価およびレポーター遺伝子発現が損なわれることはなく、これはインビボ実験のためのベクターを作製するためのローラーボトルにおけるベクター製造のスケールアップを導いた。
【0089】
つまり、293細胞におけるαvおよびβ3の過剰発現は、ウイルスベクター産生を損なうことなく標準の未処理組織培養ディッシュへの接着を増大させる。
【0090】
上記は本発明の原理の例示としてのみ考慮される。さらに、当業者には多数の改変および変法が容易に思い浮かぶので、本発明を本明細書に示され、記載された正確な構築物および操作に制限しようとは望まない。したがって、それに応じて、全ての適した改変および等価物は本発明の範囲内に含まれる。
【0091】
本明細書に引用された、全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参照文献は、参照文献が示される文および/または段落に関連する教示のために、参照によりその全体が組込まれる。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A−F】B−241細胞におけるヒトインテグリンcDNAの細胞表面発現。種々のヒトインテグリンcDNAにより安定にトランスフェクトされたB−241細胞株を組織培養プレートからトリプシン処理した。無傷の生細胞を、αサブユニットの検出のためのフルオレセイン(FITC)か、β3サブユニットの検出のためのフィコエリテリン(phycoerytherin)(PE)のいずれかに結合しているマウスモノクローナル抗体で染色した。用いた抗体は、ヒトβ3インテグリン(BD Biosciences、カタログ番号555754)、ヒトαvインテグリン(Chemicon International,Inc.、カタログ番号CBL490F)およびインテグリンαIIbインテグリンサブユニットとしても知られているヒト血小板糖タンパク質(GP)IIb(Chemicon International,Inc.、カタログ番号CBL589F)に特異的なものであった。パネルは種々のB−241細胞株誘導体の蛍光プロフィールを示す。パネルA:修飾されていないB−241細胞。パネルB:β3インテグリンサブユニットとしても知られているヒト血小板GPIIIaを発現するよう修飾された細胞。パネルC:ヒトαIIbインテグリンサブユニットを発現するよう修飾された細胞。パネルD:フィブリノゲン、フォンウィルブランド因子、フィブロネクチンおよびビトロネクチンを含むいくつかの細胞外マトリックス分子のαIIbβ3インテグリン受容体を発現するよう修飾された細胞。パネルE:αvインテグリンサブユニットを発現するよう修飾された細胞。パネルF:ビトロネクチンのαvβ3受容体を発現するよう修飾された細胞。
【図2】ヒトインテグリンを用いるトランスフェクション後のBiG−45パッケージング細胞の接着の増加。ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)−緑色蛍光タンパク質(GFP)ベクターを含有する、BiG−45EIAVパッケージング細胞を、種々のヒトインテグリンcDNAによりトランスフェクトした。細胞を標準組織培養プレートのウェルに播種した。播種の1時間後、各ウェルのGFP蛍光を、穏やかな洗浄の前後に測定し、プレートに接着している細胞のパーセンテージを求めた。Cytofluorプレートリーダーを用いて蛍光を測定した。
【図3】ヒトインテグリンcDNAを用いる修飾を含むか含まないEIAVベクター産生細胞株のローラーボトル培養。各ボトルに7.75×107個細胞を播種した。
【図4】プラスミドpEV53B。
【図5】プラスミドpESIN6.1CpuroW。
【図6】プラスミドpCXIPおよびpCXIH。
【図7】プラスミドpEV53。
【図8】プラスミドpEV53A。
【図9】プラスミドpEC−lacZ。
【図10】プラスミドpEC−puro。
【図11】プラスミドpCI−VSV−G。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾されていない細胞の接着性と比較して、接着性が少なくとも3倍高められた修飾された細胞であって、
a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、
b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、
c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、
d)(a)、(b)および(c)のいずれかの組合せと
からなる群から選択される組換え核酸を含む、修飾された細胞。
【請求項2】
a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、
b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、
c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、
d)(a)および(b)および(c)のいずれかの組合せと
からなる群から選択される組換え核酸を含む、293.01細胞。
【請求項3】
インテグリンβ3サブユニットをコードする組換え核酸と、インテグリンαvサブユニットをコードする組換え核酸とを含む、293.101細胞。
【請求項4】
請求項1、2または3の細胞を含む細胞集団。
【請求項5】
請求項4の集団を含む培養容器。
【請求項6】
フラスコ、ボトル、ローラーボトル、ディッシュ、スライド、チューブ、カバースリップ、プレートおよびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の培養容器。
【請求項7】
BiG−45細胞、293.101細胞、B−241細胞、293T細胞、HEK293細胞、Dami細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ハイブリドーマ細胞、HUVEC細胞およびMS−5細胞からなる群から選択される、請求項2に記載の細胞。
【請求項8】
前記組換え核酸に機能し得る形で連結されたプロモーターをさらに含み、前記プロモーターがCMV最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、伸長因子1α、β−アクチン、真核細胞の開始因子4A1、複合性CMVエンハンサー/β−アクチンプロモーター(CAG)、複合性伸長因子1αプロモーター/HTLV5’非翻訳領域、複合性SV40エンハンサー/ヒトフェリチン重鎖伸長因子1αプロモーター、複合性CMVエンハンサー/ヒトフェリチン軽鎖伸長因子1αプロモーターおよび複合性CMVプロモーター/テトラサイクリンオペレーターからなる群から選択される、請求項1、2または3に記載の細胞。
【請求項9】
細胞を培養容器の表面に接着させる方法であって、
i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、
ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、
iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、
iv)(i)および(ii)および(iii)のいずれかの組合せと
からなる群から選択される組換え核酸を含む細胞を、細胞が培養容器の表面に接着できる条件下で培養容器の表面に接触させることを含む、方法。
【請求項10】
修飾されていない細胞の接着性と比較して、接着性が少なくとも3倍高められた修飾された細胞を製造する方法であって、
a)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、
b)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、
c)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、
d)(a)、(b)および(c)のいずれかの組合せと
からなる群から選択される組換え核酸を細胞に導入することを含む、方法。
【請求項11】
培養容器中の細胞においてウイルス粒子を製造する方法であって、培養容器中の、
i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、
ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、
iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、
iv)(i)および(ii)および(iii)のいずれかの組合せと
からなる群から選択される組換え核酸を含む細胞に、ウイルス粒子が産生される条件下で感染性ウイルス粒子を導入することを含む、方法。
【請求項12】
ウイルス粒子が、レンチウイルス、レトロウイルス、パラミクソウイルス、オルソミクソウイルス、フラビウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ラブドウイルス、ピコルナウイルス、アルファウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルスおよびフィロウイルスからなる群から選択されるウイルスの粒子である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞が、BiG−45細胞、293.101細胞、B−241細胞、293T細胞、HEK293細胞、Dami細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ハイブリドーマ細胞、HUVEC細胞およびMS−5細胞からなる群から選択される、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項14】
容器が、フラスコ、ボトル、ローラーボトル、ディッシュ、スライド、チューブ、カバースリップ、プレートおよびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項9または11に記載の方法。
【請求項15】
培養容器中の細胞において組換えレンチウイルス粒子を製造する方法であって、培養容器中の、
i)インテグリンβ3サブユニットをコードする核酸と、
ii)インテグリンαvサブユニットをコードする核酸と、
iii)インテグリンαIIbサブユニットをコードする核酸と、
iv)(i)および(ii)および(iii)のいずれかの組合せと
からなる群から選択される組換え核酸を含む細胞に、
組換えレンチウイルス粒子が産生される条件下で、
I)少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質をコードするレンチウイルス核酸配列を含む第1のベクターであって、(1)レンチウイルス構造タンパク質をコードする少なくとも一の遺伝子に少なくとも1つの欠陥を含み、(2)欠陥パッケージングシグナルを含む前記ベクターと、
II)ベクターゲノムの逆転写に必要なシス作用配列エレメントを含む、レンチウイルス核酸配列を含む第2のベクターであって、能力のあるパッケージングシグナルを含む前記ベクターと、
III)ウイルスの核酸配列を含む第3のベクターであって、(1)ウイルスエンベロープタンパク質を発現し、(2)欠陥パッケージングシグナルを含む前記第3のベクターと
を導入することを含む、方法。
【請求項16】
第2のベクターが、少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質の発現に欠陥がある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細胞が293.101細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第1のベクターがgag−pol発現ベクターであって、ベクターがenv遺伝子に欠陥を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
env遺伝子の欠陥が欠失突然変異である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1のベクターおよび第2のベクターが各々、env遺伝子に欠陥を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
第3のベクターが、レンチウイルスエンベロープタンパク質ではないウイルスエンベロープタンパク質をコードする、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
第3のベクターが水泡性口内炎ウイルスG糖タンパク質をコードする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第2のベクターが異種核酸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
レンチウイルスが非霊長類レンチウイルスである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
非霊長類レンチウイルスがウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1のベクターがプラスミドpEV53Bであり、第2のベクターがプラスミドpESIN6.1CpuroWであり、第3のベクターがプラスミドpCI−VSV−Gである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
容器が、フラスコ、ボトル、ローラーボトル、ディッシュ、スライド、チューブ、カバースリップ、プレートおよびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
請求項1、2または3の細胞を、レンチウイルス核酸配列を含むベクターであって欠陥パッケージングシグナルを含むベクターによりトランスフェクトすることを含む、パッケージング細胞を作製する方法。
【請求項29】
ベクターがgag−pol発現ベクターである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ベクターがプラスミドpEV53Bである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項1、2または3の細胞を含むパッケージング細胞であって、パッケージングシグナルに欠陥がある、少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質をコードしているレンチウイルス核酸配列を含み、その結果、細胞自体が少なくとも一のレンチウイルス構造タンパク質を産生するが、複製能力のある感染性ウイルスは産生しない、細胞。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−535329(P2007−535329A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511078(P2007−511078)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/015120
【国際公開番号】WO2005/118809
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(500093834)ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル (14)
【出願人】(506364503)メディカル・カレッジ・オヴ・ウィスコンシン (1)
【Fターム(参考)】