説明

細胞核移入

本発明は、例えば、卵母細胞の透明帯の改変、および/または卵母細胞のいくつかの部分への区分化を含む細胞核移入のための方法を開示する。本発明はまた、遺伝子操作された非ヒト哺乳動物を生成するための方法を開示する。開示される方法によって獲得できる遺伝子操作された非ヒト哺乳動物も、本発明の範囲内である。細胞の凍結保存のための方法も開示される。本発明はまた、細胞核移入の方法に関しており、この方法は、a)操作された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、少なくとも1つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物における細胞核移入の方法に、そしてこの方法によって得られた遺伝子操作された動物か、またはこの方法によって得ることができる遺伝子操作された動物に関する。さらに、本発明は、卵母細胞、接合体、胚盤胞を含む胚を透化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ドナー細胞を遺伝子操作して、それらを核移入に用いる能力によって、重篤なヒト疾患および薬物試験の研究のための疾患モデルとして例えば用いられ得る遺伝子操作動物の生成のためのツールが得られる。
【0003】
伝統的な細胞核移入技術は、2工程のマイクロマニピュレーション(顕微操作)を包含する。第一工程は、成熟卵母細胞の除核を包含し、そして第二工程は、ドナー核の移入を包含する。しかし、マイクロマニピュレーションは、例えば、高価な装備の必要性、熟練した技術者の必要性および時間のかかる作業といういくつかの不利な点を有することが証明されている。
【0004】
ドナー細胞として体細胞を使用する核移入の改良法は近年発達しており、透明帯なしの卵母細胞の使用を包含するハンドメイドクローニング(Hand−Made Cloning)(HMC)として公知の方法である。この方法は、マイクロマニピュレーションがもはや必要ないとおり、伝統的な核移入と比較して単純化されている。この方法は、ウシで用いられている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;Tecirlioglu,et al.,2004)。また、1工程のマイクロマニピュレーションを用いる、帯なし(zona−free)の核移入の使用は、ウシ(非特許文献4;非特許文献5)およびブタ(非特許文献6)について記載されている。この方法には技術的難度が少なく時間を浪費しないという事実によって、研究者らに対して他の種に対するHMC技術の適用を示唆することが促された。しかし、多数の技術的問題によって、ブタでのHMC適用は、もともと提案されたよりも困難になっている。行き当たる問題の1つは、ブタの卵母細胞、すなわち帯インタクト(Zona intact)(ZI)および特に帯なし(zona−free)(ZF)のブタ卵母細胞の両方の低浮遊密度に関する。結果として、ブタ卵母細胞は、皿の底に定着しない。さらに、卵母細胞の表面は、粘着性であって、帯(zona)が除去されるとき、お互いに対する接着を回避することが難しい。さらに、ZFブタ卵母細胞は極めて脆弱であって、ブタ卵母細胞について記載される方法でそれらを分割することは困難である。
【0005】
近年では、しかし、HMC技術は、効率性が低く、ブタ核移入に適用され、ドナー細胞として、遺伝子操作された体細胞、線維芽細胞を用いて、遺伝子操作されたクローニング胚盤胞の生成を生じる(非特許文献7)。
【0006】
本発明は、HMCを通じた体細胞核移入の技術を改善して、胚再構成頻度の増大を生じ、結果として、得られた遺伝子操作動物の選択が有意に増大される。
【0007】
大規模の核移入方法によって遺伝子操作動物を生成する障害は、他の種に供された方法を用いてブタ卵母細胞および胚を凍結保存することができないということである。これは、ブタの卵母細胞および胚の高い脂質含量に起因する。クローニングされたブタ胚の凍結保存は、論理的な問題を軽減することによって体細胞クローニングのアウトプットをかなり改善し得る。しかし、近年では、非侵襲的な手順がブタの胚の脱脂について公表されており、ここでは遠心分離を用いるが、引き続くマイクロマニピュレーションはない(非特許文献8)。
【非特許文献1】Vajtaら、2001 Cloning 3,89−95
【非特許文献2】Vajtaら、2003 Biol.Reprod.68,571−578
【非特許文献3】Vajtaら、2005 Reprod.Fertil.Dev.17,1−16
【非特許文献4】Boothら、2001 Cloning Stem Cells 3,139−150
【非特許文献5】Obackら、Cloning Stem Cells 5,3−12
【非特許文献6】Boothら、2001 Cloning Stem Cells 3,191−197
【非特許文献7】Kraghら、2004 Reproduction,Fertility and Development 16,315−318
【非特許文献8】Esakiら、2004 Biol Reprod.71,432−6
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、1局面では、細胞核移入の方法に関しており、この方法は、a)操作された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、少なくとも1つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、を包含する。
【0009】
本発明の第二の局面は、細胞核移入の方法に関しており、この方法は、a)少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも3つの部分に分けて、少なくとも2つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、を包含する。
【0010】
本発明の第三の局面は、遺伝子操作されるか、またはトランスジェニックの非ヒト哺乳動物を生成するための方法に関連しており、この方法は、a)操作された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、f)この再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と、g)この胚を培養する工程と;h)この培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果その胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、を包含する。
【0011】
本発明の第四の局面は、遺伝子操作されるか、またはトランスジェニックの非ヒト哺乳動物を生成するための方法に関しており、この方法は、a)少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも3つの部分に分けて、少なくとも1つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、f)この再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と、g)この胚を培養する工程と、h)この培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果その胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、を包含する。
【0012】
第五の局面では、本発明は、ブタの胚の凍結保存のための方法であって、a)少なくとも1つのブタ卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を脱脂する工程と、c)この再構成された胚を活性化して胚を形成する工程と、d)この胚を培養する工程と、e)この胚を透化させる工程と、を包含する方法に関する。
【0013】
第六の局面では、本発明は、非ヒト哺乳動物をクローニングするための方法であって、a)本発明に従う手順によって得られるような胚を樹立して、必要に応じて胚を解凍する工程と、b)この培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果この胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、を包含する方法に関する。
【0014】
第七の局面では、本発明は、本明細書に規定されるような方法によって獲得可能である遺伝子操作された非ヒト哺乳動物に関する。
【0015】
さらに別の局面では、本発明は、本明細書に規定されるような方法によって獲得可能である遺伝子操作された非ヒト胚に関する。
【0016】
なおさらなる局面では、本発明は、本明細書に規定されるような方法によって獲得可能な遺伝子操作された非ヒト胚であって、その組織細胞中に、少なくとも3つの異なる母体供給源由来のミトコンドリアを有する、非ヒト胚に関する。
【0017】
最終局面では、本発明は、再構成された胚(胚)を培養する方法であって、a)透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)この再構成された胚を得る工程と、f)この再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と、e)この胚を培養する工程と、を包含する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、核DNAの全補完物を1つの細胞から除核された細胞へ導入することを指す核移入による哺乳動物のクローニングのための改良手順を提供する。
【0019】
(体細胞核移入)
クローニングでは、それ自体の核が除去(脱核または除核)された卵細胞(卵母細胞)への体(身体の)細胞の核または体細胞の移入は、体細胞核移入と呼ばれる。新規な個体はこの再構成された胚から発達して、体細胞のドナーと遺伝的に同一である。本発明では、体細胞核移入の方法は、細胞核移入の方法であって、この方法は、a)操作された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、少なくとも1つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、を包含する。しかし、本発明はまた、細胞核移入の方法に関しており、この方法は、a)少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも3つの部分に分けて、少なくとも2つの細胞質体を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、を包含する。
【0020】
この列挙された工程のパラメーターは、所定の動物種のための最も効率的な核移入を得るために改変され得る。この種々のパラメーターは、下に詳細に記載される。
【0021】
(卵母細胞)
「卵母細胞(oocyte)」という用語は、本明細書によれば、未成熟な雌性生殖細胞であって、成熟過程を終わらせておらず、卵細胞(配偶子)を形成する細胞をいう。本発明では、除核卵母細胞とは、核移入プロセスにおけるレシピエント細胞である。
【0022】
本発明による卵母細胞は、哺乳動物の卵管および/または卵巣から単離される。通常、卵母細胞は、死んだ動物から取り出されるが、それらは、生きた動物の卵管および/または卵巣のいずれかから単離されてもよい。1実施形態では、卵母細胞は、卵管回収手順または経膣回収手順によって単離される。好ましい実施形態では、この卵母細胞は、吸引によって単離される。卵母細胞は代表的には、除核の前に当業者に公知の種々の培地中で成熟される。卵母細胞はまた、最近屠殺された動物か、卵巣が凍結されるか、そして/または解凍されている動物の卵巣から単離されてもよい。好ましくは、卵母細胞は卵管から新鮮に単離される。
【0023】
卵母細胞または細胞質体はまた、使用前に凍結保存されてもよい。新鮮に単離されて成熟された卵母細胞が好ましいことが当業者には明白であるが、回収の後、または成熟の後に卵母細胞を凍結保存することが可能であることも理解される。凍結保存卵母細胞が利用されるならば、これらは、成熟培地に卵母細胞を置く前に最初に解凍されなければならない。凍結保存物質を、それらが解凍過程後に活性であるように解凍する方法は、当業者に周知である。しかし、一般には、卵母細胞および細胞質体の凍結保存は、極めて困難な手順であって、ブタでは特に難しい。その理由は、ブタの卵母細胞および細胞質体の上述の一般的な脆弱性、ならびに低温傷害(すなわち、冷却および加温の手順の間に+15〜+5℃の間で生じる傷害)に対してそれらを極めて過敏にさせる高い脂質含量である。
【0024】
別の実施形態では、インビボで成熟されている成熟(中期II)卵母細胞は、回収されて、本明細書に開示される核移入方法で用いられてもよい。
【0025】
本質的に、成熟中期II卵母細胞は、発情期の発現の後、またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hcG)または類似のホルモンの注射の後35〜48時間経過した非過剰排卵または過剰排卵のいずれかの哺乳動物から外科的に回収される。
【0026】
卵母細胞がインビトロで培養される場合、インビボで卵母細胞を囲んでいる卵丘細胞が集積し得これを取り出して、除核のさらに適切な段階の成熟である卵母細胞を得てもよい。卵丘細胞は、例えば、0.1〜5%のヒアルロニダーゼの範囲、例えば、0.2〜5%のヒアルロニダーゼの範囲、例えば、0.5〜5%のヒアルロニダーゼの範囲、例えば、0.2〜3%のヒアルロニダーゼの範囲、例えば、0.5〜3%のヒルロニダーゼの範囲、例えば、0.5〜2%のヒアルロニダーゼの範囲、例えば、0.5〜1%のヒアルロニダーゼの範囲、例えば、0.5%のヒアルロニダーゼの存在下で、ピペッティングまたはボルテックスによって取り出されてもよい。
【0027】
好ましい方法における第一の工程は、適切な動物からのレシピエント卵母細胞の単離を包含する。これに関して、卵母細胞は、任意の動物供給源から、そして任意の段階の成熟で得てもよい。
【0028】
卵母細胞の成熟の段階は、除核および核移入で、核移入方法の成功について有意であることが報告されている。哺乳動物の卵巣由来の未成熟(中期I)卵母細胞はしばしば、吸引によって回収される。遺伝子操作、核移入およびクローニングのような技術を使用するために、このような回収された卵母細胞は好ましくは、インビトロで成熟されて、その後に、その卵母細胞は、核移入のためのレシピエント細胞として用いられ得る。
【0029】
好ましくは、首尾よい哺乳動物の胚クローニングは、レシピエント卵母細胞として中期II段階の卵母細胞を用いる。なぜなら、この段階の成熟では、卵母細胞は、導入された核をそれがあたかも受精精子であるかのように処理するために十分に活性化され得るかまたは十分に活性であると考えられているからである。しかし、本発明は、体細胞核移入を行うために適切な任意の成熟段階の卵母細胞、本発明の体細胞核移入の方法によって獲得可能な胚、胚盤胞、および/または動物に関する。
【0030】
卵母細胞のインビトロ成熟は通常、卵母細胞が中期II段階に達して第一の極体を押し出すまで、成熟培地中で生じる。未成熟な卵母細胞が成熟に達する時間は、成熟期間と呼ばれる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、卵母細胞は、成体メスブタ(sow)または仔メスブタ(gilt)、好ましくは成体メスブタ(sow)由来である。
【0032】
(動物)
本発明による細胞核移入方法に関与するドナー(体細胞または体細胞の核)およびレシピエント(細胞質体)は、非ヒト哺乳動物である。同様に、再構成された胚が本発明によって移植され得る動物は非ヒト哺乳動物である。哺乳動物は、ウシ科(vovidae)、ウシ亜科(ovids)、シカ類(cervids)、イノシシ類(suids)、ウマ類(equids)、およびラクダ類(camelids)の家畜または野生の代表物からなる郡より選択される有蹄動物であってもよい。特定の実施形態では、この哺乳動物は、雌ウシまたは雄ウシ、バイソン、バッファロー、ヒツジ、オオツノヒツジ、ウマ、ポニー、ロバ、ラバ、シカ、エルク、カリブー、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、アルパカまたはブタである。本発明の特定の実施形態では、哺乳動物はブタである。1実施形態では、ブタは、野ブタである。別の実施形態では、このブタは、家畜のブタ、Sus scrofa、またはS.domesticusである。さらに別の実施形態では、本発明は、ミニブタに関するが、また近交系のブタにも関する。
【0033】
特定の実施形態では、ブタは、ランドレース(Landrace)、ヨークシャー(Yorkshire)、ハンプシャー(Hampshire)、デュロック(Duroc)、チャイニーズ・メイシャン(Chinese Meishan)、バークシャー(Berkshire)およびピエトレン(Pieatrain)からなる群より選択され得る。さらに別の実施形態では、本発明は、ランドレース、ヨークシャー、ハンプシャー、およびデュロックからなる群に関する。しかし、本発明はまた、ランドレース、デュロック、およびチャイニーズ・メイシャンからなる群に関する。同様に、バークシャー(Berkshire)、ピエトレン(Pieatrain)、ランドレース(Landrace)、およびチャイニーズ・メイシャン(Chinese Meishan)からなる群が、本発明の目的であり得る。しかし、ランドレース(Landrace)およびチャイニーズ・メイシャン(Chinese Meishan)からなる群も本発明の目的である。
【0034】
特定の実施形態では、ブタはランドレースブタ、またはヨークシャーブタである。特定の実施形態では、本発明は、ハンプシャー種のブタに関するが、またデュロックにも関する。別の好ましい実施形態では、このブタは、チャイニーズ・メイシャン種のブタである。しかし、またバークシャーも、本発明によって包含され、特定の実施形態では、ピエトレンが、本発明によって包含される。
【0035】
本発明の別の実施形態は、ゲッチンゲン(Goettingen)、ユカタン(Yucatan)、バマ・シャン・チュー(Bama Xiang Zhu)、ウージーシャン(Wuzhishan)、シー・ショワン・バンナ(Xi Shuang Banna)からなる群より選択されるミニブタに関する。
【0036】
他の実施形態では、本発明は、ゲッチンゲン、ユカタンからなる群に関する。あるいは、本発明は、バマ・シャン・チュー(Bama Xiang Zhu)、ウージーシャン(Wuzhishan)、シー・ショワン・バンナ(Xi Shuang Banna)からなる群に関する。詳細には、本発明は、ゲッチンゲンに関する。しかし、またユカタンも本発明に関連する。同様に、バマ・シャン・チュー(Bama Xiang Zhu)は、本発明に包含され、またウージーシャン(Wuzhishan)も、そして詳細には、シー・ショワン・バンナ(Xi Shuang Banna)も包含される。
【0037】
本発明によるドナー哺乳動物は雌性であってもまたは雄性であってもよい。哺乳動物の年齢は、任意の年齢、例えば、成体、または例えば、胎児であってもよい。
【0038】
(胚)
本発明によれば、再構築された胚(すなわち、単一細胞胚)は、ドナー細胞の遺伝物質を含む。引き続き、この再構築された胚は、有糸分裂の発生後に多細胞の胚に徐々に分裂する。インビトロでは有糸分裂の発生は代表的には、本明細書に記載されるような活性化によって誘導される。
【0039】
本発明では、胚という用語はまた、活性化による有糸分裂の発生後の核移入のプロセス後に形成される胚である、再構成された胚を指す。再構成された胚は、インビトロで培養される。
【0040】
胚が約12〜16個の細胞を含む場合、これは「桑実胚(morula)」と呼ばれる。引き続き、この胚は、さらに分裂して、多くの細胞が形成され、そしてその中心の胞胚腔内に液体充填された嚢胞性の腔がある。この段階では、この胚は、「胚盤胞(blastocyst)」と呼ばれる。この時点で「受精された(fertilized)」卵母細胞の発達段階は、すぐ移植できる状態であり;桑実胚から形成され、そして内部細胞塊、内部腔および栄養外胚葉細胞と呼ばれる細胞の外層からなる。
【0041】
本発明による胚盤胞は、宿主哺乳動物の子宮に移植されてもよく、そして継続して胎児へ、次いで動物へ増殖する。遺伝子操作された哺乳動物またはトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成するための本明細書に提供される方法では、非ヒト哺乳動物をクローニングするため、再構築された胚を培養するため、および/またはブタ胚の凍結保存のため、胚をインビトロで培養してもよい。この胚は、例えば、連続培養で培養され得る。胚は、正常な胚であっても、または本明細書のいずれかに規定されるような再構成された胚であってもよいことが理解される。
【0042】
(細胞質体)
核が取り除かれている、卵母細胞または卵母細胞の一部。
【0043】
(ドナー細胞)
本発明の「ドナー細胞(donor cell)」という用語は、体細胞および/または生殖系列由来の細胞を意味する。
【0044】
本発明の「体細胞(somatic cell)」という用語は、発生の任意の段階の動物由来の任意の(身体の)細胞を意味する。例えば、体細胞は、胎児の組織由来であっても、または成体の組織由来であってもよい。特に好ましい体細胞は、胎児由来である。しかし、生殖細胞由来の細胞も用いられてもよい。本発明によれば、ドナー細胞は体細胞である。本発明の別の実施形態では、ドナー細胞は、生殖細胞系列由来の細胞である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、ドナー細胞は、所望の遺伝的特性を保有する。しかし、ドナー細胞は、本明細書にいずれかに記載されるような遺伝子操作によって得られた所望の遺伝的特性を保有し得る。
【0046】
体細胞は、上皮細胞、神経細胞、表皮細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラニン形成細胞、軟骨細胞、リンパ球(Bリンパ球およびTリンパ球)、赤血球、マクロファージ、単球、単核球、線維芽細胞、心筋細胞および他の筋細胞からなる群より選択される。
【0047】
これらは、種々の器官、例えば、皮膚、肺、膵臓、肝臓、胃、腸、心臓、生殖器官、膀胱、腎臓、尿道および他の泌尿器から得ることができる。
【0048】
体細胞が由来し得る動物は、本明細書のいずれかに記載される。本発明の好ましい実施形態は、レシピエントの卵母細胞(細胞質体)と同じ種に由来する体細胞の使用である。
【0049】
好ましくは、この体細胞は、発達中の胎児および成体の動物の両方から大量に得ることができるような線維芽細胞である。線維芽細胞は、さらに、インビトロで容易に増殖され得る。最も好ましくは、この体細胞は、胎児由来のインビトロ培養された線維芽細胞である。
【0050】
好ましい実施形態では、この体細胞は遺伝子操作される。本発明のさらに好ましい実施形態では、この体細胞はブタ細胞であり、そして好ましくは、胎児由来の細胞、または、例えば、成体由来である。
【0051】
(除核)
卵母細胞の除核の方法は、吸引、物理的除去、DNA特異的蛍光色素の使用、紫外光に対する曝露および/または化学補助除核(chemically assisted enucleation)からなる方法の群より選択され得る。1実施形態では、本発明は、DNA特異的な蛍光色素の使用に関する。しかし、除核は、紫外光での曝露によって行われてもよい。特定の実施形態では、除核は、核の物理的除去の前に化学的に補助される。例えば、抗悪性腫瘍薬、例えば、デメコルチン(N−デアセチル−N−メチル1コルヒチン)、および/または例えば、エトポシド、もしくは関連の因子を用いる化学補助除核は、透明帯の酵素的改変の前に行われ得る。化学補助除核は、特定の期間にわたって、デメコルチンを補充された、本明細書のいずれかに記載されたような成熟培地において成熟COCを培養する工程を包含する。0.1μg/ml〜10μg/mlのデメコルチンの範囲、例えば0.2μg/ml〜10μg/ml、例えば0.3μg/ml〜10μg/ml、例えば0.25μg/ml〜5μg/ml、例えば0.3μg/ml〜1μg/ml、例えば0.25μg/ml〜0.5μg/ml、例えば0.4μg/mlのデメコルチンが、成熟培地に補充されてもよい。同様に、成熟培地は、例えば、0.1μg/ml〜10μg/mlのエトポシドの範囲、例えば0.2μg/ml〜10μg/ml、例えば0.3μg/ml〜10μg/ml、例えば0.25μg/ml〜5μg/ml、例えば0.3μg/ml〜1μg/ml、例えば0.25μg/ml〜0.5μg/mlのエトポシドを補充されてもよく、例えば0.4μg/mlのエトポシドが成熟培地に補充されてもよい。抗悪性腫瘍薬の存在下でCOCを培養するための時間は、10分〜5時間、例えば30分〜5時間、例えば10分〜2時間、例えば30分〜2時間、例えば10分〜1.5時間、例えば20分〜3時間、例えば10分〜3時間、例えば30分〜1.5時間、例えば45分におよぶ。特定の実施形態では、化学補助除核は、成熟培地に添加した0.45μg/mlのデメコルチンおよび/またはエトポシドを用いて、45分間行った。
【0052】
詳細な実施形態では、除核は、核の物理的な除去によることが好ましい。物理的除去は、例えば、一方が核を含み、半分が細胞質体として公知の除核された卵母細胞である、卵母細胞の1/2(2部分)への2分割による分離、卵母細胞の除核された半分を除去すること、および本発明のさらなる手順のためにこの得られた細胞質体を選択することによってもよい。あるいは、分離は三等分により、これによって、3つの部分が得られ、その2つの部分が細胞質体である。別の実施形態では、この卵母細胞は、4つの部分に分けられてもよく、その結果3つの細胞質体の生成が生じる。この卵母細胞は、物理的除去によって5つの部分に均一に分けられてもよく、それによって、4つの細胞質体が得られる。同様に、この卵母細胞は、6つの部分に、例えば、7つの部分に、例えば、8つの部分に、例えば、9つの部分に、例えば、10以上の部分に分けられてもよい。
【0053】
卵母細胞の物理的分離および卵母細胞の核保有部分の引き続く除去は、顕微鏡手術的なブレードの使用によって達成され得る。この卵母細胞は、どの卵母細胞が首尾よく除核されているかを特定するようにスクリーニングされ得る。核DNAを保有する卵母細胞部分は、Hoechst蛍光色素での染色によって特定され得るが、その染色手順は、当業者に公知である。核DNAを保有する卵母細胞部分を廃棄して、その除核された卵母細胞(細胞質体)をさらなる手順のために選択する。
【0054】
(透明帯)
透明帯(zona pellucida)は、卵母細胞を囲む均一な厚みの薄く、透明で、細胞のない層またはエンベロープである。
【0055】
一般には、インタクトな透明帯は、多数のパラメーターに起因して細胞核移入に重要であると考えられる。1つのパラメーターは、除核のために適切な部位を示すように卵母細胞の中期板に近く極体を保持することである。別のパラメーターは、融合の前および間に卵母細胞の細胞質体に近くドナー細胞を維持することに関する。この帯(zona)はまた、融合の間にドナー細胞および細胞質体の防御を付与すると考えられる。最終的に再構成および活性化後の胚発達は、透明帯によって支持されると考えられる。
【0056】
透明帯の少なくとも一部の改変は、多数の方法によって行われ得る。例えば、物理的な操作が帯を改変するために用いられてもよい。しかしまた、酸性溶液(酸性Tyrode)のような因子での化学的処理が使用されてもよい。本発明で使用され得る化学的因子の1例は酸性溶液、例えば、Tyrodeである。本発明の詳細な実施形態では、透明帯は、酵素消化によって改変される。このような酵素的な消化は、例えば、トリプシンを含む酵素によって行われ得る。あるいは、特定のプロテアーゼ、例えば、プロナーゼが用いられてもよい。
【0057】
好ましい実施形態では、酵素消化は、透明帯の一部の少なくとも部分的な消化を生じ、本発明の好ましい実施形態では、少なくとも一部の透明帯が除去されていること、または透明帯が部分的に除去されていることを意味する。本発明の状況では、透明帯は完全には除去されない。
【0058】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、透明帯の部分的に消化された部分は、この透明帯が依然として可視であることによって、および卵母細胞が奇形にならないという事実によって特徴付けられる。
【0059】
この部分的消化は、プロテアーゼに対する曝露によって達成され得る。本発明の別の実施形態では、この部分的消化は、プロナーゼの使用によって達成され得る。さらに別の実施形態では、この部分的消化は、プロテアーゼおよびプロナーゼの組み合わせによって達成され得る。
【0060】
好ましい実施形態では、プロナーゼの濃度は、0.1mg/ml〜10mg/mlの範囲、例えば0.5mg/ml〜10mg/ml、例えば1mg/ml〜10mg/ml、例えば1.5mg/ml〜10mg/ml、例えば2mg/ml〜10mg/ml、例えば2.5mg/ml〜10mg/ml、例えば2.75mg/ml〜10mg/ml、例えば3mg/ml〜10mg/ml、例えば3.25mg/ml〜10mg/ml、例えば3.3mg/ml〜10mg/ml、例えば3.5mg/ml〜10mg/mlである。
【0061】
好ましい実施形態は、プロナーゼ濃度が、2mg/ml〜5mg/mlの範囲、例えば2.25mg/ml〜5mg/ml、例えば2.5mg/ml〜5mg/ml、例えば2.75mg/ml〜5mg/ml、例えば2.8mg/ml〜5mg/ml、例えば2.9mg/ml〜5mg/ml、例えば3mg/ml〜5mg/ml、例えば3.1mg/ml〜5mg/ml、例えば3.2mg/ml〜5mg/ml、例えば3.3mg/ml〜5mg/mlである。
【0062】
本発明の特別な実施形態は、プロナーゼ濃度が、1mg/ml〜4mg/mlの範囲、例えば1mg/ml〜3.9mg/ml、例えば1mg/ml〜3.8mg/ml、例えば1mg/ml〜3.7mg/ml、例えば1mg/ml〜3.6mg/ml、例えば1mg/ml〜3.5mg/ml、例えば、1mg/ml〜3.4mg/ml、例えば1mg/ml〜3.3mg/mlである。好ましい実施形態では、プロナーゼ濃度は、2.5mg/ml〜3.5mg/mlの範囲、例えば2.75mg/ml〜3.5mg/ml、例えば3mg/ml〜3.5mg/mlである。特定の実施形態では、プロナーゼ濃度は3.3mg/mlである。
【0063】
プロナーゼは、適切な培地中に溶解されるべきであることが当業者に明白であり、本発明による好ましい培地は、T33(33%ウシ血清を含有するHepes緩衝化TCM199培地(初期に記載されたとおり−Vajta,ら、2003)である。
【0064】
プロナーゼ溶液中の卵母細胞のインキュベーションの時間は、1〜30秒の範囲、例えば2秒〜30秒、例えば3秒〜30秒、例えば4秒〜30秒、例えば5秒〜30秒である。
【0065】
本発明の別の実施形態では、このインキュベーション時間は、2秒〜15秒の範囲、例えば2秒〜14秒、例えば2秒〜13秒、例えば2秒〜12秒、例えば2秒〜11秒、例えば2秒〜10秒、例えば2秒〜9秒、例えば2秒〜8秒、例えば2秒〜7秒、例えば2秒〜6秒、例えば2秒〜5秒である。
【0066】
本発明の特定の実施形態では、このインキュベーション時間は、3秒〜10秒の範囲、例えば3秒〜9秒、例えば4秒〜10秒、例えば3秒〜8秒、例えば4秒〜9秒、例えば3秒〜7秒、例えば4秒〜8秒、例えば3秒〜6秒、例えば4秒〜7秒、例えば3秒〜5秒、例えば4秒〜6秒、例えば4秒〜5秒である。特に好ましいインキュベーション時間は5秒である。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、この卵母細胞は、39℃で3.3mg/mlのプロナーゼ溶液中で5秒間処理される。
【0068】
(再構成された胚)
「再構成された胚(reconstructed embryo)」という用語は、接合体(正常な受精)に相当する除核卵母細胞へのドナー細胞またはドナー細胞の核の挿入によって形成される細胞を意味する。しかし、「再構成された胚」という用語はまた、「再構成された胚(reconstructed embryo)」とも呼ばれる。本発明では、ドナー細胞は、体細胞である。しかし、ドナー細胞はまた、生殖系列細胞に由来してもよい。
【0069】
(融合)
ドナー細胞またはドナー細胞由来の膜に囲まれた核の少なくとも細胞質体への移入は、本発明に従って融合によって行われる。下に記載されるシナリオでは、「ドナー細胞(donor cell)」という用語はまた、ドナー細胞由来の膜に囲まれた核をいう。融合は、多数の方法によって達成され得る。
【0070】
融合は、ドナー細胞と少なくとも1つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも2つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも2つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも3つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも4つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも5つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも6つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも7つの細胞質体との間、例えば、ドナー細胞と少なくとも8つの細胞質体との間であってもよい。
【0071】
融合は、同時または連続して上記に列挙された組み合わせに従って行われ得る。本発明の1実施形態では、融合は、同時に行われる。別の実施形態では、少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞との融合は連続して行なわれる。
【0072】
例えば、融合は、化学的融合によって達成され得、ここではドナー細胞および少なくとも1つの細胞質体が、例えば、タンパク質、糖タンパク質もしくは炭水化物、またはその組み合わせのような融合促進剤に曝される。種々の融合促進剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、トリプシン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、レクチン、凝集素(agglutinin)、ウイルスおよびセンダイウイルスが、公知である。好ましい植物性血球凝集素(PHA)が用いられる。しかし、マンニトール、ポリビニルアルコールが用いられてもよい。
【0073】
あるいは、融合は、融合面にまたがる直流(DC)での誘導によって達成されてもよい。しばしば、ドナーおよびレシピエント細胞を整列させるように交流(AC)が使用される。電気融合によって、有意に高いパルスの電気が生じ、これは一過性に、細胞質体およびドナー細胞の膜を破壊し、かつ引き続き膜を再形成し得る。結果として小チャネルがドナー細胞とレシピエント細胞との間で開く。ドナー細胞およびレシピエント細胞の膜が接続する場合、小さいチャネルが徐々に大きくなって、最終的に2つの細胞が1つの細胞に融合する。
【0074】
少なくとも1つの細胞質体およびドナー細胞の整列は、0.06〜0.5KV/cmの範囲、例えば0.1〜0.4KV/cm、例えば0.15〜0.3KV/cmの交流を用いて行われてもよい。好ましい実施形態では、少なくとも1つの細胞質体およびドナー細胞の整列は、0.2KV/cmの交流を用いて行われてもよい。
【0075】
融合は、少なくとも1つの細胞質体およびドナー細胞の融合面にまたがる直流の適用によって誘導され得る。直流は、0.5〜5KV/cmの範囲、例えば0.75〜5KV/cm、例えば1〜5KV/cm、例えば1.5〜5KV/cm、例えば2〜5KV/cmである。本発明の別の好ましい実施形態は、0.5〜2KV/cmの範囲の直流の適用である。さらに好ましい実施形態では、この直流は、2KV/cmであってもよい。
【0076】
この直流は、好ましくは、1〜15マイクロ秒、例えば5〜15マイクロ秒、例えば5〜10マイクロ秒の範囲で適用され得る。特定の実施形態は、9マイクロ秒であってもよい。
【0077】
特に好ましい実施形態では、直流での融合は、2KV/cmの直流を用いて9マイクロ秒であってもよい。
【0078】
しかし、電気融合および化学融合はまた組み合わされてもよい。
【0079】
代表的には、電気融合は、当業者に公知のような融合チャンバで行われる。
【0080】
融合は、少なくとも1つの工程で、例えば、2工程で、例えば3工程で、例えば4工程で、例えば5工程で、例えば6工程で、例えば7工程で、例えば、8工程で行われてもよい。
【0081】
融合は、例えば、第一の工程で行われてもよく、ここでは少なくとも1つの細胞質体が、ドナー細胞に融合される。融合の第二の工程は、少なくとも1つの細胞質体、例えば、少なくとも2つの細胞質体、例えば、3つの細胞質体、例えば、4つの細胞質体、例えば、5つの細胞質体、例えば、6つの細胞質体、例えば、7つの細胞質体、例えば、8つの細胞質体との融合された対(細胞質体−ドナー細胞、再構築された胚)の融合を含んでもよい。少なくとも1つの細胞質体および融合された対の融合による融合の第二の工程は、連続して行われても、または同時に行われてもよい。1実施形態では、この少なくとも2つの細胞質体は、同時に融合対に融合される。別の実施形態では、この少なくとも2つの細胞質体は、連続して、融合された対に融合される。
【0082】
本発明の1実施形態では、融合の第二の工程はまた、活性化工程であってもよく、ここでは、この再構成された胚は、有糸分裂に入るように活性化される。本明細書のいずれかに記載されるとおり。
【0083】
(活性化)
好ましい実施形態では、この再構築された胚は、ドナー細胞の核がそのゲノムをリセットして、除核された細胞質体の新規な周囲での分化全能性を得ることができるように、活性化の前に一定期間休止させられてもよい。この再構成された胚は、例えば、活性化の前に1時間休止し得る。
【0084】
好ましくは、この再構築された胚は、有糸分裂を誘導するように活性化され得る。活性化の方法は好ましくは、電気パルス、化学誘導ショック、二価陽イオンの細胞内レベルの増大、またはリン酸化の減少からなる群より選択され得る。活性化のためには方法の組み合わせが好ましいかもしれない。
【0085】
本発明の1実施形態では、活性化および融合の第二工程は、同時に行われてもよい。しかし、再構成された胚の活性化、およびこの再構成された胚と少なくとも細胞質体との間の融合の少なくとも1つのさらなる工程は、連続して行われてもよい。
【0086】
例えば、キナーゼインヒビターの添加によるような公知の方法による、再構成された胚での細胞タンパク質のリン酸化の減少は、再構成された胚を活性化し得る。好ましい実施形態は、タンパク質合成を阻害する因子、例えば、シクロヘキシミドの使用を包含し得る。さらなる好ましい実施形態は、紡錘体形成を阻害する因子、例えば、サイトカラシンBを用いてもよい。
【0087】
本発明の1実施形態では、二価陽イオンの細胞内レベルが増大され得る。例えば、カルシウムのような二価陽イオンが、活性化培地に含まれてもよい。好ましくは、この陽イオンは、再構成された胚に、特に、電気パルスに対して再構成された胚を供する際に、進入し得る。好ましい実施形態では、この電気パルスは、再構成された胚へのカルシウムの進入を生じ得る。
【0088】
直流を用いる電気パルスの適用は、活性化工程であり得る。しかし、好ましい実施形態では、活性化に適用される電気パルスはまた、さらなる融合工程として機能し得る。
【0089】
直流を用いる電気パルスを適用する前に、少なくとも1つの細胞質体および少なくとも1つの再構築された胚を、交流の適用によって整列させてもよい。この交流は、0.06〜0.5KV/cmの範囲、例えば0.1〜0.4KV/cm、例えば0.15〜0.3KV/cmであってもよい。好ましい実施形態では、少なくとも1つの細胞質体およびドナー細胞の整列は、交流を0.2KV/cmで用いて行ってもよい。
【0090】
活性化は、少なくとも1つの細胞質体およびドナー細胞の融合面にまたがった直流の適用によって誘導され得る。直流は、0.2〜5KV/cmの範囲、例えば0.4〜5KV/cm、例えば0.5〜5KV/cmである。本発明の別の好ましい実施形態は、0.5〜2KV/cmの範囲の直流の適用である。さらに好ましい実施形態では、この直流は、0.7KV/cmであってもよい。
【0091】
この直流は好ましくは、10〜200マイクロ秒の範囲、例えば25〜150マイクロ秒、例えば50〜100マイクロ秒で適用され得る。特定の実施形態では、80マイクロ秒であってもよい。
【0092】
特に好ましい実施形態では、直流での融合は、80マイクロ秒で0.7KV/cmの直流を用いてであってもよい。
【0093】
本発明による活性化の特に好ましい実施形態は、タンパク質合成、紡錘体形成および二価陽イオンを阻害する因子に対して再構成された胚を供することと組み合わせた、電気パルスの使用であってもよい。
【0094】
活性化は、上記の方法の任意の組み合わせによって行われてもよい。
【0095】
(遺伝子操作のタイプ)
ドナー細胞は、当該分野で公知の任意の標準的な方法によって遺伝子操作され得る。この遺伝子操作は、欠失、挿入、複製、および/または、ポイントミューテーションを含む他の形態の変異による、ゲノムDNAの改変であってもよい。この改変は、コード配列および/または非コード配列で行われ得る。挿入のためのDNA構築物は、目的の遺伝子および/または制御配列、例えば、プロモーター、インシュレイター、エンハンサー、リプレッサーまたはリボソーム進入部位を保有し得る。いくつかの実施形態では、遺伝子改変が1つだけゲノムに導入される。しかし、他の実施形態では、ゲノムは、2つ以上の部位で改変されてもよい。哺乳動物細胞、例えば、線維芽細胞の遺伝子操作に適切な技術としては、非相同組み換えによる遺伝子付加、相同組み換えによる遺伝子置換、および遺伝子編集のような技術が挙げられる。これは、レトロウイルス挿入、トランスポゾン移入および/または人工的染色体技術の使用を挙げることができる。非相同的なDNA組み換えは、例えば、Kraghら(2004)Reprod.Fert.Dev.16:290、またはKraghら、(2004)Reprod.Fert.Dev.16:315に記載されるとおり行われてもよく、トランスポゾンベースの遺伝子移入は、Izsvakら、(1997)Cell 91:501に記載されるように行われてもよい。相同組み換えによる遺伝子置換は、例えば、Urnowら、(2005)Nature 435:646に記載される技術を包含し得る。遺伝子編集の技術は、Andersenら、(2002)J.Mol.Med.80:770、Liuら、(2002)Gene Ther.9:118、およびSoerensenら、(2005)J.MoI.Med.83:39に記載されている。
【0096】
(胚のインビトロ培養)
本発明の1局面は、胚盤胞の割合が25.3%に増大した胚をインビトロで培養する方法に関する。従って、再構築された胚を培養する方法は、本発明の範囲内であって、この方法は、a)透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、f)この再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と、e)この胚を培養する工程とを包含する。
【0097】
本発明の別の局面は、胚を培養する工程が含まれる細胞核移入の方法に関する。
【0098】
本明細書に記載される方法に関する好ましい実施形態では、胚は、培地の連続的なセットで培養される。好ましくは、この胚盤胞は、例えば、NCSU37、またはグルコースが除かれて他の因子で置換されている、当業者に公知の等価な培地のような伝統的な培地で増殖される。1つの因子は、ピルビン酸塩であってもよい。別の因子は、乳酸塩であってもよい。この因子はまた、合わされて、伝統的な培地におけるグルコースを置き換えてもよい。
【0099】
胚は、0日〜3日目、例えば、0日〜2日目に上記されるような置換培地中で培養されてもよい。
【0100】
ピルビン酸塩濃度は、0.05〜1mM、例えば0.1〜1mM、例えば0.125〜1mM、例えば0.15〜1mMにおよんでもよい。しかし、ピルビン酸ナトリウムの濃度はまた、0.05mM〜0.9mM、例えば0.05〜0.8mM、例えば0.05〜0.7mM、例えば0.05〜0.6mM、例えば0.05〜0.5mM、例えば0.05〜0.4mM、例えば0.05〜0.3mM、例えば0.05〜0.2mMにおよんでもよい。好ましくは、この濃度は、0.05〜0.17mMにおよぶ。ピルビン酸ナトリウムの好ましい濃度は、0.17mMである。
【0101】
乳酸塩濃度は、0.5〜10mM、例えば0.75〜10mM、例えば1〜10mM、例えば1.5〜10mM、例えば1.75〜10mM、例えば2〜10mM、例えば2.5〜10mMにおよんでもよい。しかし、乳酸ナトリウムの濃度はまた、0.5mM〜9mM、例えば0.5〜8mM、例えば0.5〜7mM、例えば0.5〜6mM、例えば0.5〜5mM、例えば0.5〜4mM、例えば0.5〜03mMにおよんでもよい。このましくは、この濃度は、1〜5mM、例えば2〜4mM、例えば2〜3mMにおよぶ。乳酸ナトリウムの好ましい濃度は、2.73mMである。
【0102】
最初のグルコースなしのインキュベーション後、培地グルコースを再度、ピルビン酸塩および乳酸塩で置換する。この胚を、グルコース含有培地中で、4日〜3日、好ましくは3日〜7日培養してもよい。このグルコース濃度は、1〜10mM、例えば2〜10mM、例えば3〜10mM、例えば4〜10mM、例えば5〜10mMにわたってもよい。しかし、このグルコース濃度はまた、1〜9mM、例えば2〜8mM、例えば3〜7mM、例えば4〜6mMにおよんでもよい。本発明によるグルコースの好ましい濃度は、5.5mMのグルコースである。
【0103】
別の好ましい実施形態では、この胚はブタ胚である。
【0104】
(遺伝子操作動物)
本発明の1実施形態によれば、所望の遺伝子型を有する遺伝子操作動物またはトランスジェニック動物が提供される。
【0105】
本発明は、動物の遺伝的同一性を改変するためのプロセスであって、ヒトもしくは動物に対する実質的な医学的利益を受けることなくそれらの動物を生じる可能性が高いプロセスも、このようなプロセスから生じる動物も含まないことが理解される。
【0106】
本発明は、遺伝子操作されるかまたはトランスジェニックの非ヒト動物を生じる方法に関しており、この方法は、a)改変された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、f)この再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と、g)この胚を培養する工程と、h)この培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果その胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、を包含する。
【0107】
しかし、遺伝子操作されるかまたはトランスジェニックの非ヒト哺乳動物はまた、a)少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を少なくとも3つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る工程と、c)所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、d)少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、e)再構成された胚を得る工程と、f)この再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と、g)この胚を培養する工程と、h)この培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果その胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、を包含する方法によって生成されてもよい。
【0108】
(器官または組織の贈与)
1実施形態では、本発明の動物は、ヒトまたは他の動物、同じ種の動物または他の種の動物のいずれかの動物のための器官または組織贈与のための供給源として用いられてもよい。種の間の移入は通常、異種移植と呼ばれる。移植され得る全体的な器官としては、心臓、腎臓、肝臓、膵臓または肺が挙げられる。あるいは、器官の一部、例えば、特異的な器官組織は、ヒトまたは他の動物に移植されても、または移入されてもよい。なおさらなる実施形態では、本発明の動物の個体細胞または個体細胞の集団は、治療目的のためにヒトにまたは別の動物に移入されてもよい。
【0109】
(疾患モデル)
本発明はまた、本発明の方法による非ヒト哺乳動物をクローニングするための方法に関する。従って、本発明の1局面は、非ヒト哺乳動物をクローニングするための方法に関しており、この方法は、a)本発明に記載されるような胚盤胞を樹立して、必要に応じて胚を解凍する工程と、b)この培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果この胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、を包含する。遺伝子操作された胎児は、非ヒト哺乳動物に発達され得る。
【0110】
本発明はまた、本明細書に規定されるような方法によって獲得可能である疾患モデルとして、遺伝子操作された動物を包含する。従って、本発明の第二の局面は、本明細書に記載される方法によって獲得可能な遺伝子操作された非ヒト哺乳動物である。別の局面は、本明細書に記載される方法によって獲得可能な遺伝子操作された非ヒト胚に関する。
【0111】
本明細書に記載される方法は、非ヒトの身体で行われる外科的工程を含まない。
【0112】
本発明の細胞核移入のための方法は、任意の関連の疾患についてのモデル動物の生成のためのツールを提供し、当業者は、疾患の発達、見込みのある処置レジメン、薬物検定および予防を研究するように設計することを望み得る。選り抜きの疾患は、任意の特定の群の疾患には限定されない。遺伝子操作された動物疾患モデルを開発するための本発明の使用の例は下に示される。しかし、本発明は、下に列挙される実施例に限定されない。
【0113】
遺伝的操作は、HMC技術によってSCNTの前の体細胞に導入される。しかし、遺伝子操作は、別の実施形態では、ハンドメイドクローニング(hand made cloning)(HMC)の間、例えば、HMC手順の種々の工程での導入遺伝子の添加によって導入され得、次にこの手順は胚のゲノムへのそれらの方法を見出す。
【0114】
この遺伝子操作は、体細胞のゲノムへの疾患発生遺伝子、変異遺伝子のランダムな組み込みを含む。特異的な組織でまたは特定の発現レベルで発現される場合に疾患を生じる正常な非変異遺伝子のランダムな組み込みも可能である。
【0115】
この導入された遺伝子または導入遺伝子は、細菌、ブタ、ヒト、マウス、ラット、酵母、無脊椎動物、または植物を含む任意の種に由来し得る。導入遺伝子の制御配列は、偏在性または誘導性または組織特異的および/または時間特異的な発現を駆動し得、そしてまたブタ、ヒト、マウス、ラット、酵母、脊椎動物または植物を含む任意の種に由来してもよい。
【0116】
重要なことに、体細胞での遺伝子改変は、標的構築物の相同組み換えによって、または遺伝子編集手順によって、ブタのゲノムにおける特異的な領域に標的化され得る。これは、疾患または表現型を生じる特異的な遺伝子の不活性化(例えば、ノックアウト)であってもよいし、または次に疾患を生じる特異的な遺伝子への特異的な変異体の組み込み(ノックイン)であってもよい。また、疾患を生じる導入遺伝子は、相同組み換え方法によって、ブタゲノムの特異的な制御領域に組み込まれてもよい。
【0117】
HMC手順の前または間にブタのゲノムに導入される遺伝子改変はまた、体細胞、卵母細胞または再構築されたHMC胚と、化学的な成分、例えば、Tricostatinまたは同様の効果を有する化合物とをインキュベートすることによる、後成的修飾(例えば、DNAのメチル化、またはヒストンのメチル化もしくはアセチル化/脱アセチル化)であってもよい。
【0118】
本発明は、疾患モデル、例えば、変性疾患、ミトコンドリア関連タンパク質折り畳み障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、または硬化症のためのモデルとしての遺伝子操作された動物に関する。しかし、また、遺伝性アルツハイマー病のモデルは、本発明の実施形態である。
【0119】
さらなる他の実施形態では、この疾患モデルは、全ての種類のガン疾患、例えば、乳癌を含んでもよい。しかし、結腸癌または肺癌のような全てのガン疾患が研究され得る。
【0120】
他の実施形態は、治療上活性な分子、または可塑性のリポソームの皮膚浸透の分析のための遺伝子的なセンサーシステムを有するモデルに関する。さらなる別の実施形態は、創傷治癒または潰瘍処置のための疾患モデルに関する。例えば、再構成手技による形成異常の処置のためのさらなる疾患モデルは、本発明の範囲内である。また、細胞移植、組織移植、器官移植のような組織操作に関する疾患モデルも本発明の範囲内である。
【0121】
さらに他の疾患モデルは、乾癬疾患モデル、および/または表皮溶解性障害、例えば、単純型表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa Simplex)の疾患モデルである。
【0122】
アテローム動脈硬化症によって生じる疾患、虚血性心疾患の処置および予防のためのモデルも本発明の実施形態である。
【0123】
モデルはまた、例えば、糖尿病または肥満のようなある範囲の一般的な疾患をもたらす代謝障害のモデルを包含する。しかし、また、アテローム性動脈硬化症および心血管系疾患も最初に、代謝障害によって生じ得る。腎不全は、代謝機能不全によって生じ得る疾患の別の例である。同様に、高い血圧(高血圧)も、最初は代謝機能不全に起因し得、そして代謝障害についての遺伝子操作動物モデルで研究され得る。また、ミトコンドリアタンパク質での変異によって生じる疾患、例えば、短鎖アシル−coAデヒドロゲナーゼ欠損症、神経筋脱力、オルニチントランスカルバミラーゼの欠失改変体の発現による変性も。
【0124】
(透化(透化)(vitrification))
凍結保存という用語は、生きている細胞の凍結、保存および解凍のプロセスに関与する種々の細胞凍結技術に用いられる。透化は、凍結保存の形態であって、生きている細胞は急速に冷却されて、その結果細胞の液体は、氷を形成しない。従って、透化とは、細胞または組織全体が、低い0℃未満の温度、例えば、(代表的には)−80℃または−196℃(液体窒素の沸点)まで冷却されることによって保存される冷却のプロセスに関する。これらの低温では、細胞死をもたらす生化学的反応を含む任意の生物学的活性が効率的に停止される。しかし、透化とは、氷形成が培地中で、そしてこの保存された細胞または組織において行われない特別なアプローチをいう。この氷なしの冷却は、高濃度の凍結保護物質溶液および極めて高速の冷却速度の適用によって達成され得る。加温はまた、温度の急速な増大で行われるべきである。
【0125】
本発明の1局面は、卵母細胞、細胞質体、細胞、胚または胚盤胞を透化(凍結保存)する能力に関する。従って、本発明は、ブタ胚の凍結保存のための方法を開示しており、この方法は、a)少なくとも1つのブタ卵母細胞を樹立する工程と、b)この卵母細胞を脱脂する工程と、c)この再構成された胚を活性化して胚を形成する工程と、d)この胚を培養する工程と、e)この胚を透化させる工程と、を包含する。さらに、この脱脂された卵母細胞を、本明細書のいずれかに記載されるような少なくとも2つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得てもよい。
【0126】
詳細には、本発明は、卵母細胞の透化に関するが、本発明はまた、胚の、好ましくは胚盤胞段階の胚の透化に関する。1実施形態では、胚は、透化の前に胚盤胞段階まで培養される。特にブタ胚が、本発明によって包含される。また、透化細胞質体も、細胞と同様に、本発明によって包含される。
【0127】
さらに本発明の別の局面は、ブタ胚を透化する工程を含む、本明細書に記載されるような細胞核移入のための方法によって誘導されるブタ胚の凍結保存に関する。本発明のさらなる局面は、本明細書に提供される方法によって得られたか、または獲得可能であるブタ胚に関する。
【0128】
「凍結保存(cryopreserving)」という用語は、本明細書において用いる場合、本発明の卵母細胞、細胞質体、細胞、胚または動物の透化を指し得る。凍結保存に使用される温度は好ましくは、−80℃未満であり、そしてさらに好ましくは、−196℃未満の温度である。本発明の卵母細胞、細胞および胚は、不明確な時間凍結保存され得る。生物学的な物質は、50年より長く凍結保存できることが公知である。
【0129】
遺伝子操作されるかまたはトランスジェニック非ヒト動物を生成するための方法を使用する場合、胚は、宿主哺乳動物に対する移入の前に凍結保存され得るということは本発明の範囲内である。移入の前のこのような凍結保存は、胚発達の胚盤胞段階であってもよい。
【0130】
本発明の1局面は、酵素的な因子、例えば、プロナーゼでの温和な処理による卵母細胞の非侵襲的な脱脂に関する。好ましい実施形態では、プロナーゼ濃度は好ましくは、0.5〜5mg/mlの範囲、例えば0.5mg/ml〜3mg/ml、例えば0.5mg/ml〜2mg/mlである。好ましくは、このプロナーゼは、1mg/mlの濃度を有する。本発明の別の実施形態では、卵母細胞の非侵襲性の脱脂は、3.3mg/mlの濃度のプロナーゼでの処理によって得られる。
【0131】
卵母細胞の脱脂は、適切な培地、例えば、50%のウシ血清を含む培地の存在下で行われる。
【0132】
この脱脂プロセスは、好ましくは1〜5分の範囲で、詳細には3分間進行される。しかし、プロナーゼ濃度が2.5mg/ml〜5mg/mlの範囲である場合、この脱脂プロセスが進行させられる期間は、5秒〜15秒、例えば5秒〜10秒、例えば10〜15秒におよぶ。本発明の1実施形態は、3.3mg/mlのプロナーゼを用いる10秒間の卵母細胞の脱脂である。
【0133】
好ましくは、この卵母細胞を、引き続き、適切な培地、例えば、Hepes−緩衝化TCM−199培地であって、ウシ血清、例えば、20%のウシ血清を補充した培地中で洗浄する。プロナーゼ消化および洗浄した卵母細胞を好ましくは、8.000〜15.000×gの範囲で、例えば9.000〜14.000×gの遠心分離に供する。特に好ましい実施形態では、この卵母細胞を、12000×gで遠心分離する。この遠心分離は、10〜30分の範囲で、例えば20分間続けてもよい。
【0134】
本発明の特に好ましい実施形態では、卵母細胞を、1mg/mlの濃度で3分間、プロナーゼによって脱脂して、その後に卵母細胞を洗浄し、そして引き続いて、12.000×gの遠心分離に20分間供してもよい。
【0135】
本発明の好ましい実施形態では、この脱脂された卵母細胞を透化してもよい。本発明の1実施形態によれば、脱脂卵母細胞を透化し、引き続き本発明による手順のために使用されるように温める。別の実施形態では、この脱脂された卵母細胞は、例えば、胚を生成するために本明細書に記載されるような方法で用いられ得、詳細には胚盤胞段階の胚が好ましくは透化され得る。透化された卵母細胞、細胞質体、細胞、胚または胚盤胞段階の胚はこのように透化され得る。本発明の透化プロセスによって生成される透化胚盤胞は、貯蔵されてもよく、そして加温の際に、細胞核移入のための本発明の方法に従って遺伝子操作された哺乳動物を生成するために適切な非ヒト哺乳動物に移植されてもよい。
【0136】
(ミトコンドリア)
本発明の方法によって獲得可能である、遺伝子操作された非ヒト哺乳動物の組織の細胞および/または非ヒト胚は、種々の母体由来のミトコンドリアを保有し得る。好ましい実施形態では、この非ヒト哺乳動物および/または非ヒト胚は、唯一の母体由来のミトコンドリアを保有してもよいが、別の好ましい実施形態では、この非ヒト哺乳動物および/または非ヒト胚は、少なくとも2つの母体供由来、例えば、3つの哺乳動物由来、例えば、4つの哺乳動物由来、例えば、5つの哺乳動物由来、例えば、6つの哺乳動物由来、例えば、7つの哺乳動物由来、例えば、8つの哺乳動物由来、例えば、9つの哺乳動物由来、例えば、10の哺乳動物由来のミトコンドリアを保有してもよい。特定の数の哺乳動物起源を有する可能性は、観察されたタイプのミトコンドリアに基づいて算出され得る。
【実施例】
【0137】
他に示す場合を除いて、全ての化合物は、Sigma Chemical Co.(St Louis,MO,USA)から入手した。
【0138】
卵母細胞のコレクションおよびインビトロ成熟(in vitro maturation)(IVM)
卵丘・卵母細胞複合体(cumulus−oocyte complexes)(COC)を、食肉処理場由来のメスブタ(sowまたはgilt)の卵巣由来の2〜6mmの濾胞から吸引した。COCは、50の群で、10%(v/v)のウシ血清(CS)、10%(v/v)ブタ卵胞液、10IU/mlのeCG、5IU/mlのhCG(Suigonan Vet;Skovlunde,Denmark)を補充した、400μlの炭酸水素塩緩衝化TCM−199(GIBCO BRL)中で、38.5℃において、「Submarine Incubation System」(SIS;Vajtaら、1997)中で、5%のCOで加湿空気中において、41〜44時間成熟させた。
【0139】
(体外受精(in vitro fertilization)(IVF))
IVF実験は、インビトロ成熟させた卵母細胞を用いて3つの同一の複製で行った。成熟後、COCを、2mMのカフェインを含有するmTBM(mTBMfert)を用いて2回洗浄して、50の群で400μlのmTBMfertに移した。新しく射精された精液を以前に記載されたとおり(Boothら、印刷中)処理した。38.5℃での受精能獲得および5%COにおいて加湿空気中で2時間後、精液を卵母細胞に加えて1mlあたり1×10個の精子という最終濃度に調節した。受精は、38.5℃で、そして5%COにおいて加湿空気中でSIS中で3時間行った。媒精後、推定の接合体をmTBMfertにボルテックスして、卵丘細胞を取り除き、その後に、IVC培地中で洗浄して、培養皿に置いた(Embryo culture and evaluationを参照のこと)。
【0140】
(ハンドメイド・クローニング(handmade cloning)(HMC))
適用されたHMC方法は、ウシおよびブタでの本発明者らの以前の研究に基づいた(Kraghら、2004;Peura and Vajta,2003;Vajtaら、2003)が、大きな改変をともなっていた。
【0141】
要するに、成熟の開始の41時間後、COCの卵丘外皮を、1mg/mlのヒアルロニダーゼ含有Hepes−緩衝化TCM199での反復ピペッティングによって取り除いた。このポイントから(他に示す場合を除き)、全ての操作は、39℃に調節した加熱ステージで行い、そして卵母細胞を取り扱うために用いる全ての液滴は、鉱油でカバーされた20μlの容積であった。卵母細胞はT33(Hepes−緩衝化TCM199培地のTであって;この数は、CS補充の割合(v/v)を意味し、ここでは33%)に溶解された3.3mg/mlのプロナーゼ中で短く、5秒間インキュベートした。卵母細胞が、プロナーゼ溶液中で不恰好になり始める前に、それらを拾い上げて、T2およびT20の液滴中で迅速に洗浄した。卵母細胞は部分的に消化されるが、依然として可視の帯(zona)は、3mg/mlのポリビニルアルコールを補充されたT2(TPVA)および2.5μg/mlのサイトカラシンBの液滴中に位置していた。二分割ではなく三分割を、Ultra Sharp Splitting Blades(AB Technology,Pullman,WA,USA;図1a)での立体顕微鏡的な制御のもとで手動で行った。三分割した卵母細胞の断片を収集して、5μg/mlのHoechst 33342蛍光色素含有TPVA液滴を用いて5分間染色し、次いで、オイルでカバーした60mmのFalcon Petri皿の底の上で1μlの液滴のTPVA培地中に置いた(1滴あたり3〜4の断片)。倒立顕微鏡およびUV光を用いて、クロマチン染色なしのフラグメントの位置(細胞質体)を記録して、後に、融合の開始までT10の液滴中に立体顕微鏡下で集めた。
【0142】
胎性線維芽細胞を、前に記載のとおり調製した(Kraghら、印刷中)。融合は、2工程で行い、ここで第二工程は、同様に活性化の開始を含んだ。第一工程については、選択された細胞質体の1/3(好ましくは、小さい方の部分)を用いた。微細吸引かつ先端熱加工したガラスピペットを用いて、10の細胞質体を、1群として1mg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA;ICN Pharmaceuticals,Australia)に3秒間移し、次いでT2液滴に堆積した2〜3の線維芽細胞のうちの1つに個々に迅速に滴下した。接着後、10個の細胞質体−線維芽細胞対を融合培地(0.3Mのマンニトールおよび0.01%のPVA)中で10秒間、平衡にした。0.6KV/cmおよび700KHzの交流(AC)を用いて、細胞対を、ドナー細胞がワイアから最も遠位であるように(図1b)、融合チャンバ(BTXマイクロスライド0.5mm融合チャンバ,モデル450;BTX,SanDiego,CA,USA)のワイアに整列させ、次いで2.0KV/cmの直流(DC)で9μsの間融合させた。電気パルスの後、細胞対をワイアから注意深く取り除いて、T10の液滴に移して、融合が生じたかどうかを観察するためにインキュベートした。
【0143】
最初の融合の約1時間後、細胞質体の残りの2/3と一緒に融合された対を、別々に活性化培地の液滴中で平衡化した(0.3Mのマンニトール、0.1mMのMgSO、0.1mMのCaClおよび0.01%のポリビニルアルコール(PVA))。0.6KV/cmのACの下で、細胞質体−融合対−細胞質体の三つ組みを10の群でワイアに連続的に整列させて、融合した対を真ん中にした(図1c)。0.7KV/cmの単一のDCパルスを80μs間、第二の融合および活性化の開始のために用いた。次いで、その三つ組みをワイアから外して、融合を確認するためにT10の液滴に注意深く移した(図1d)。再構築された胚を、5μg/mlのサイトカラシンBおよび10μg/mlのシクロヘキシミドを補充した培養培地中(Embryo culture and evaluationを参照のこと)中で、4時間、38.5℃で、5%のCO、5%のOおよび90%のN中において最大湿度でインキュベートし、次いで、培養前にIVC培地中で3回、徹底的に洗浄した。
【0144】
(単為生殖的活性化(parthenogenetic activation (PA))
単為生殖的に活性化した卵母細胞を、HMCを用いて別々にまたは平行して生成した。卵母細胞を、プロナーゼ中のより長いインキュベーションを用いて、完全に透明帯を除去したこと以外は、上記と同じ方法で裸出させた。次いで、帯なし(zona free)(ZF)の卵母細胞を活性化培地(0.3Mのマンニトール、0.1mMのMgSO、0.1mMのCaClおよび0.01%のPVA)中で10秒間平衡化して、融合チャンバ(BTXマイクロスライド0.5mm融合チャンバ,モデル450;BTX,SanDiego,CA,USA)に移した。80μs間の0.85KV/cmの単一のDCパルスを、BLS CF−150/B細胞融合マシン(BLS,Budapest,Hungary)で生成して、ZF卵母細胞に加えた。帯のインタクトな(zona intact)(ZI)卵母細胞については、1.25KV/cmの単一のDCパルスを80μs間用いて(本発明者らの未公開の予備実験によれば、これらのパラメーターは、最高の活性、ならびにそれぞれZIおよびZF卵母細胞について引き続くインビトロの発達を生じた)。電気的パルス後の手順は、HMC再構築胚と同じであった。
【0145】
(胚培養および評価)
上記の処置によって生成される全てのブタ胚は、4mg/mlのBSAを含有する改変NCSU37培地(Kikuchiら、2002)中で、38.5℃で、5%のO、5%のCOおよび90%のNの中で、最大湿度で培養した。この培養培地には、0日目(受精および活性化の日)から2日目まで0.17mmのピルビン酸ナトリウムおよび2.73mmの乳酸ナトリウムを供給し、次いで、乳酸ナトリウムおよびピルビン酸ナトリウムを2日目〜7日目に5.5mmのグルコースで置換した。全てのZF胚をWOW系(Vajtaら、2000)において、上記と同じ培養培地およびガス混合物中で培養し、2日目に、WOWから胚を取り外すことなく注意深く培地を交換した。胚盤胞の率は、7日目に記録した。総細胞数を決定するために、胚盤胞を固定して、20μg/μlのHoechst33342蛍光色素を含有するグリセロール中でガラス顕微鏡スライドにマウントした。24時間の染色後、胚を落射蛍光アタッチメントおよびUV−2Aフィルターを装着したDiaphot 200倒立顕微鏡(Nikon,Tokyo,Japan)下で観察した。
【0146】
(実施例1)
成体メスブタ(sow)(2.5歳、体重170Kg)由来の卵母細胞と、仔メスブタ(gilt)(5.5〜6ヶ月、体重75Kg)由来の卵母細胞の間の発育能力における相違を、44時間のインビトロの成熟後に、ZFおよびZIのPAを通じて検討した。4つの合わせた群を3つの同一の複製中で検討した:(1)メスブタ(sow)由来のZF卵母細胞、(2)メスブタ(sow)由来のZI卵母細胞、(3)メスブタ(gilt)由来のZF卵母細胞、(4)メスブタ(gilt)由来のZI卵母細胞。ZF活性化のために、80μs間の0.85KV/cmの単一のDCパルスを加え、一方では、単一の1.25KV/cmパルスを用いてZI卵母細胞を活性化した。上記のような7日の培養後、活性化された1つの胚あたりの胚盤胞の割合を決定した。
【0147】
成体のメスブタ(sow)または仔メスブタ(gilt)のいずれかに由来する単為生殖的に活性化された卵母細胞のインビトロの発達能力を検討した。表1に示されるとおり、成体メスブタ(sow)由来の単為生殖的に活性化された卵母細胞の胚盤胞の割合は、ZFまたはZI PAのいずれの後も、仔メスブタ(gilt)由来のものより有意に高かった。
【0148】
【表1】

a,b異なる添え字は有意差を意味する(p<0.05)。
c,d異なる添え字は有意差を意味する(p<0.05)。
胚盤胞に発達した胚の割合(平均±S.E.M.)
成体メスブタ(sow)と仔メスブタ(gilt)との間の卵母細胞発達能力の相違は、インビトロ生成(in vitro production)(IVP)および体細胞核移入(somatic cell nuclear transfer)(SCNT)胚で別々に検査しており、他の研究グループの初期の公開(Sherrerら、2004;Hyun,ら、2003)と同様の結果が得られており、すなわち、成体メスブタ由来の卵母細胞由来の胚は、胚盤胞発達を支持するのにおいて仔メスブタ由来の卵母細胞由来の胚よりも優れている。本発明者らの研究で用いられる仔メスブタ(gilt)は、成熟の境界線にあるが、PA後の7日目の胚盤胞の率の間の相違は有意であって、成体メスブタ(sow)卵母細胞の優れた発達能力を示している。
【0149】
(実施例2)
改変ブタHMCの実現可能性は、6つの同一複製で検討し、ここでIVFおよび平行にZF PAをコントロールとして用いた。よりコンピテントな成体メスブタ(sow)の卵母細胞(実施例1に従う)を実施例2に用いた。再構築および/または活性化の7日後、再構成された胚1つあたりの胚盤胞の数および無作為に選択された胚盤胞の総細胞数を決定した。
【0150】
形態学的にインタクトな卵母細胞由来の卵母細胞フラグメントのうち90%より多くを、三等分後にHMCのために回収してもよい。平均して、100個の成熟卵母細胞のうち37個の胚が再構築され得る。ブタ胚の全ての供給源の発達能力を表2に示す。7日目に、胚盤胞段階に対する再構築された胚の発達は、17±4%であって、46±5の平均細胞数であり、IVFおよびZF PAについての胚盤胞の割合は、それぞれ、30±6%および47±4%であった(n=243,170,97)。
【0151】
【表2】

a,b,c異なる添え字は有意差を意味する(p<0.05)。
【0152】
d,e異なる添え字は有意差を意味する(p<0.05)。
【0153】
理論的な最大効率はまだアプローチされていないが、帯の部分的消化の組み込みおよび卵母細胞の三分割によって、再構成された胚の数は、本発明者らの初期のシステムと比較してほとんど2倍になった(Kraghら、2004 Reprod.Fertil.Dev 16,315〜318)。再構成効率におけるこの増大は、ブタのクローニングにおいて特別な利点を有し得る。なぜならば、吸引後の卵母細胞回収は、ウシにおいてよりも困難、かつ時間を浪費するからである。さらにより重要なポイントは、ブタ核移入後の妊娠の達成に多くの胚数が必要であるということである。ブタでのIVCはまた、困難かつ非効率的な手順とみなされる(Reed,ら、1992 Theriogeneology 37,95〜109)。ZFシステムの不利な点は、胚が少なくとも収縮桑実胚または初期胚盤胞段階にインビトロで達して、透明帯の防御層なしに卵管中での崩壊を回避しなければならないということである。他方では、一旦胚盤胞段階になれば、帯なしの胚は、胚性のまたは体細胞の核移入のいずれかの後に生まれる仔ウシによって(Peuraら、1998;Tecirliogluら、2004;Obackら、2003;Vajtaら、2004)、そしてまた卵母細胞の帯なしIVP後に生まれる仔ブタによっても(Wu,ら、2004)証明されるとおり首尾よく移入され得る。NCSU37培地は、ブタ胚の培養のために最も広範にかつ首尾よく用いられている培地である。しかし、他の培地と比較して改善された胚発達にもかかわらず、IVPブタ胚の生存度は、IVC後にやはり損なわれる。いくつかの報告によって、グルコースは、8細胞段階の前に初期ブタ胚によっては容易に代謝されないが、収縮桑実胚と胚盤胞段階との間の胚で大量に用いられることが示唆された(Flood,ら、1988)。最初の2日間の培養のためのNCSU37中におけるピルビン酸および乳酸塩でのグルコースの置換によって、キクチの研究(Kukuchiら、2002)でのIVPブタ胚について25.3%という胚盤胞の割合が生じ、これは、本発明者らの研究でIVP胚盤胞の割合が平均で30%であることによってさらに裏付けられた。さらに、ブタHMCおよびZF PA胚での、この連続的な培養システムの第一の評価によって、それぞれ17%および47%という胚盤胞の割合が得られた。時には、ZI PAの胚盤胞の割合は、90%程度の高いレベルにさえ達し得る(Du,未公開)。
【0154】
(統計学的な分析)
ANOVA分析は、SPSS 11.0を用いて行った。P<0.05という確率を統計学的に有意とみなした。
【0155】
(実施例3)
脱脂したインビトロ成熟の卵母細胞から生成した、ハンド・メイドクローニングしたブタ胚盤胞の透化。
【0156】
近年では、非侵襲的手順がブタ胚の脱脂について公開されており、ここでは遠心分離を用いているが、引き続くマイクロマニピュレーションは用いていない(Esakiら、2004 Biol Reprod.71,432〜6)。
【0157】
胚/胚盤胞の凍結保存は、前に記載されたとおり(Kuwayamaら、2005a;2005b)、Cryotop(株式会社北里サプライ、富士宮、日本)を用いる透化によって行った。透化の時点で、胚/胚盤胞を、7.5%(V/V)のエチレングリコール(EG)および7.5%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する、20%の合成血清代用品(synthetic serum substitute)(SSS)を補充された、TCM 199から構成される、平衡溶液(equilibration solution)(ES)に、39℃で5〜15分間、移した。最初の収縮後、胚はその最初の容積を回復した。1つの胚盤胞あたり4〜6個の胚を、20%のSSSを補充された、TCM199に溶解された、15%(V/V)のEGおよび15%の(DMSO)および0.5Mのスクロースをからなる、20μlの透化溶液(VS)の液滴中に移した。20秒のインキュベーション後、胚をCryotopにロードして、液体窒素に押込んだ。VSへの曝露から押込みまでのプロセスは1分以内で完了した。
【0158】
胚/胚盤胞は、1.0Mのスクロース含有TCM199プラス20%のSSSからなる解凍溶液(thawing solution)(TS)中に1分間Cryotopを直接浸漬することによって解凍し、次いで0.5Mスクロース含有TCM199プラス20%SSSからなる希釈溶液(DS)に3分間移した。凍結保護物質を除去するために、胚/胚盤胞を、洗浄溶液(WS;TCM199プラス20%のSSS)中で2回、各々5分間、維持した。透化胚盤胞の生存は、10%のウシ血清(CS)を補充した培養培地中で24時間の回復後の再増殖速度に従って決定した。
【0159】
非侵襲性の脱脂方法を、インビトロ成熟ブタ卵母細胞に行って、単為生殖活性化後の脱脂卵母細胞のさらなる発達を4つの同一の複製で検討した。卵母細胞は、脱脂群およびコントロール群へ無作為に分けた。
【0160】
脱脂のために、卵母細胞を50%のウシ血清(CS)の存在下で3分間、1mg/mlのプロナーゼで消化して、20%のCSを補充したHepes−緩衝化TCM−199培地中で洗浄して、これによって部分的な透明帯消化を得る(図2a)。引き続き、40〜50個の卵母細胞を、2%のCS、3mg/mlのPVAおよび7.5μg/mlのサイトカラシンB(CB)を補充されたHepes−緩衝化TCM−199培地中で、室温で遠心分離(12000×g,20分)した(図2b)。遠心分離した卵母細胞およびインタクトな卵母細胞の両方の透明帯を、2mg/mlのプロナーゼ溶液中でのさらなる消化によって完全に除去した。活性化のために、85Kv/cmという単一の直流を80μs間、両方の群に与えて、続いて5μg/mlのCBおよび10μg/mlのシクロヘキサミン(CHX)を用いて4時間処理した。次いで、全ての胚を改変NCSU37培地中で培養させた。7日目に胚盤胞を透化して、Cryotop技術(Kuwayamaら、RBM Online,印刷中)を用いることによって38.5℃で加温した。透化胚盤胞の生存は、10%CSを補充した培養培地中での24時間の回復後に、再増殖速度に従って決定した。両方の群由来の再増殖された胚盤胞の細胞数は、Hoechst染色の後に決定した。結果は、ANOVA分析によって比較した。部分的な帯の消化および遠心分離によって、卵母細胞の173/192(90%)の首尾よい脱脂が生じた。胚盤胞の発達は、脱脂された卵母細胞とインタクトな卵母細胞との間で異なった(それぞれ、28±7%対28±5%;P>0.05)。しかし、脱脂卵母細胞由来の胚盤胞の生存率は、インタクトな卵母細胞から発達した胚盤胞の生存率よりも有意に高かった(それぞれ、85±6%対32±7%;P<0.01)。脱脂卵母細胞またはインタクトな卵母細胞のいずれかに由来する再増殖した胚盤胞の平均細胞数には相違はない(それぞれ、36±7対38±9;P>0.05)。この結果によって、単純な脱脂技術は、活性化ブタ卵母細胞のインビトロの発達能力を妨害せず、細胞数の有意な損失なしにその由来する胚盤胞の凍結生存を改善するということが実証される。
【0161】
脱脂後、両方の群由来の卵母細胞の透明帯は完全に除去された。電気的な活性化について上記されたのと同じパラメーターを、両方の群にあてはめた。活性化の7日後、胚盤胞の率および胚盤胞の細胞数を決定した。
【0162】
インビトロ成熟ブタ卵母細胞へ非侵襲性脱脂技術を適用する実現可能性を検討した。90%(173/192)の卵母細胞を、首尾よく脱脂し得る。表3に示されるとおり、胚盤胞への発達は、脱脂された卵母細胞とインタクトな卵母細胞との間で異なることはなかった(それぞれ、28±7%対28±5%;P>0.05)。しかし、脱脂された卵母細胞由来の胚盤胞の生存率は、インタクトな卵母細胞から発達する胚盤胞の生存率よりも有意に高かった(それぞれ、85±6%対32±7%;P<0.01)。脱脂された卵母細胞またはインタクトな卵母細胞のいずれかに由来する最拡張した胚盤胞の平均細胞数には相違はない(それぞれ、36±7対38±9;P>0.05)。
【0163】
表3.脱脂卵母細胞およびインタクトな活性化卵母細胞由来の透化された解凍胚の発達の能力および凍結生存。
【0164】
【表3】

(脱脂された卵母細胞のハンドメイドクローニング)
脱脂された卵母細胞を、HMCのために5つの複製で用いた。HMCのために非脱脂卵母細胞の4つの同一の複製物をコントロールの系として用いた。再構成の7日後、両方の群から生成した胚盤胞を、Cryotopで透化した。再増殖した胚盤胞の生存率および細胞数は、PAによって生成された胚盤胞について記載されたとおり決定した。
【0165】
他に示される場合を除いて、全てのマニピュレーションは、39℃に調節した加熱段階で行って、卵母細胞を取り扱うために用いた全ての液滴は、鉱油でカバーされた20μlの容積であった。体細胞核移入のためには、本発明者らの以前の研究(Duら、2005)で記載されたハンドメイドクローニング(HMC)に、単一の改変を加えた:脱脂卵母細胞およびコントロールの卵母細胞の両方の除核のために、三分割ではなく二分割を適用した。
【0166】
要するに、卵丘外皮の除去後、コントロールの卵母細胞を、3.3mg/mlのプロナーゼを溶解したT33中で10秒間インキュベートした。卵母細胞がプロナーゼ溶液中で変形しはじめる前に、それらを拾い上げて、T2およびT20の液滴で迅速に洗浄した。遠心分離後の脱脂卵母細胞を、3.3mg/mlのプロナーゼ溶液中でさらに5秒間消化した。
【0167】
透明帯が部分的に消化され、膨張され、そして軟化されたコントロールの卵母細胞および脱脂卵母細胞の両方を、2.5μg/mlのサイトカラシンBを補充したT2の液滴中に位置させた。二分割を、Ultra Sharp Splitting Blades(AB Technology,Pullman,WA,USA)での立体顕微鏡的な制御のもとで手動で行った(図2c)。半分を収集して、5μg/mlのHoechst 33342蛍光色素含有T2液滴を用いて5分間染色し、次いで、オイルでカバーした60mmのFalcon Petri皿の底の上で1μlの液滴のT2培地中に置いた(1滴あたり3〜4の半分)。倒立顕微鏡およびUV光を用いて、クロマチン染色なしの半分の位置(細胞質体)を、記録した。細胞質体を後に、立体顕微鏡下で収集して、T10の液滴中に保存した。
【0168】
ブタ胎性線維芽細胞を、前に記載されたように(Kragh,ら、2005)単層からのトリプシン消化で調製した。融合は、2工程で行い、ここで第二工程は、同様に活性化の開始を含んだ。第一工程については、利用可能な細胞質体の50%を、T0に溶解された1mg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA;ICN Pharmaceuticals,Australia)に3秒間移し、次いで単一の線維芽細胞の上に迅速に滴下した。接着後、細胞質体−線維芽細胞対を融合培地(0.3Mのマンニトールおよび0.01%のPVA)中で10秒間、平衡にし、そして融合チャンバに移した。0.6KV/cmおよび700KHzの交流(AC)を用いて、細胞対を、体細胞がワイアから最も遠位であるように(図2d)、融合チャンバのワイアに整列させ、次いで2.0KV/cmの直流で9μsの間融合させた。電気パルスの後、細胞対をワイアから注意深く取り除いて、T10の液滴に移して、融合が生じたかどうかを観察するためにインキュベートした。
【0169】
最初の融合の約1時間後、各々の対を、別の細胞質体と、活性化培地中で融合させた。AC電流および0.7KV/cmの単一のDCを、80μs間、上記のように与えた。融合を、T10液滴中で検出し、次いで、再構成された胚を、5μg/mlのサイトカラシンBおよび10μg/mlのシクロヘキシミドを補充した、IVC0−2培養培地(Embryo culture and evaluationを参照のこと)中に移した。4時間、38.5℃で、5%のCO、5%のOおよび90%のN中において最大湿度での4時間のインキュベート後、胚を培養前にIVC0−2培地中で3回洗浄した。
【0170】
【表4】

異なる添え字は有意差を意味する(p<0.05)。
【0171】
:平均±S.E.M.。
【0172】
インビトロの発達能力は、7日目の胚盤胞率をコントロールのHMC群と比較した場合、脱脂卵母細胞を用いてHMCで観察した(それぞれ、21±6%対23±6%;P>0.05;表4)。脱脂された卵母細胞由来のクローニングされた胚盤胞の透化後の凍結生存率は、インタクトな卵母細胞由来のものよりも有意に高かった(それぞれ、79±6%対32±8;P<0.01)。
【0173】
(実施例4)
化学補助ハンドメイド除核(chemically assisted handmade enucleation)(CAHE)および既存の方法との比較
インビトロでの41〜42時間の成熟後、COCを、0.4μg/mlのデメコルチンを補充した同じ溶液中でさらに45分間培養した。次いで、卵丘細胞をHepes−緩衝化TCM−199に溶解された1mg/mlのヒアルロニダーゼ中におけるピペッティングによって取り出した。このポイントから(他に示す場合を除き)、全ての操作は、39℃に調節した加熱ステージ上で行った。卵母細胞を取り扱うために用いた全ての液滴は、20μlの容積であって、鉱油でカバーした。
【0174】
HMC手順の基本的な工程を本明細書のいずれかに記載している。要するに、卵丘細胞なしの卵母細胞を、T33(Hepes−緩衝化TCM199培地のTであって;この数は、CS補充の割合(v/v)を意味し、ここでは33%)に溶解された3.3mg/mlのプロナーゼ中で20秒間インキュベートした。透明帯の部分的溶解および卵母細胞のわずかな変形が生じたとき、それらを拾い上げて、T2およびT20の液滴中で迅速に洗浄した。9つの卵母細胞を、2.5μg/mlのサイトカラシンB(CB)を補充された1つのT2液滴に位置させた。微細吸引かつ先端熱加工したガラスピペットを用いることによって、卵母細胞を回転させて、光押出錐体(light extrusion cone)および/または表面上に強力に結合された極体を見出し、そして指向性の二分割をマイクロブレード(AB Technology,Pullman,WA,USA)を用いる立体顕微鏡的な制御下で手技的に行った。細胞質の半分未満(押出しまたはPBの近く)を残りの部分から分離した(図3)。液滴中の全ての9つの卵母細胞の二分割後、大きい方の部分および小さい方の部分(押出または結合PBを有する)を収集して、それぞれT2別々の液滴に入れた。
【0175】
(デメコルチン処理なしの指向性のハンドメイド除核(oriented handmade enucleation)(OHE))
全ての工程は、前に記載の手順と同様であったが、デメコルチンのプレインキュベーションは適用しなかった。
【0176】
(除核のためのランダム・ハンドメイド二分割(random handmade bisection for enucleation)(RHE))
デメコルチンのプレインキュベーションは、同様に、この群の前処理から省いた。卵丘細胞の除去後、透明帯を上記のようにプロナーゼで部分的に消化した。ランダムハンドメイドの等分二分法を、2.5μg/mlのCBを補充されたT2の液滴に適用した。全ての半卵母細胞(demi−oocytes)を選択して、10μg/mlのHoechst33342が含有されるT2液滴で10分間染色し、次いで、鉱油でカバーされたT2培地の1μlの液滴(各々の液滴に3つの半卵母細胞)に入れた。倒立顕微鏡およびUV光を用いて、クロマチンなしの半卵母細胞、すなわち細胞質体の位置を記録した。これらの細胞質体は後に、立体顕微鏡下で収集して、さらなる操作の前にT2液中で保管した。
【0177】
(融合および活性化の開始)
ブタ胎性線維芽細胞は、以前に記載のとおり調製した(Kraghら、2005,Duら、2005)。融合は、2工程で行い、この第二工程は、同様に活性化の開始を含んだ。第一工程については、微細吸引かつ先端熱加工したガラスピペットを用いて、約100個の体細胞を、T2液滴に入れ、そして20〜30個の細胞質体を、T10液滴に入れた。短時間の平衡化後、3つの細胞質体の群を、1mg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA)に2〜3秒間移し、次いで単一の線維芽細胞の上に迅速に滴下した。接着後、細胞質体−線維芽細胞の対を再度拾い上げて、融合培地(0.01%のPVAを補充した0.3Mのマンニトール)中に移した。0.6KV/cmおよび700KHzの交流(AC)を用いることによって、平衡化した対を、体細胞がワイアから最も遠位であるように、融合チャンバ(BTX microslide 0.5mm融合チャンバ,モデル450;BTX1 San Diego,CA)の1ワイアに整列させ、次いで2.0KV/cmの単一直流(DC)インパルスで9μsの間融合させた。次いで、対をワイアからT10液滴中に注意深く取り除いて、インキュベートして、さらに融合が生じたかどうかを観察した。
【0178】
融合の約1時間後、融合した対および残りの細胞質体を、活性化培地(0.01%[w/v]のPVAを補充した0.3Mのマンニトール,0.1mMのMgSO、0.1mMのCaCl)中で別々に平衡化させた。0.6KV/cmのACを用いることによって、1つの対および1つの細胞質体を、融合チャンバの1つのワイアに整列させて、ここで融合対をワイアと接触させた。第二の融合および活性化の開始のために、0.6KV/cmの単一のDCパルスを80μ秒用いた。融合は、T10液滴中でインキュベーション後にチエックした。
【0179】
(伝統的なクローニング(traditional Cloning)(TC))
マイクロマニピュレーションは、前に記載のように(Chen ら、1999;Zhangら,2005)、Diaphot 200倒立顕微鏡(Nikon,Tokyo,Japan)を用いて行った。要するに、42〜44時間のインビトロ成熟後、卵丘細胞を上記で記載のとおり取り出した。全ての操作は、39℃に調節した加熱ステージで行った。単一の50μlのマイクロマニピュレーション溶液の液滴を、60mmの培養皿のフタ上の中央領域に作成して、鉱油でカバーした。20〜30個の卵母細胞および胎性線維芽細胞の群を、同じ液滴に入れた。15〜30分のインキュベーション後、卵母細胞を保持ピペット(内径=25〜35μmそして外径=80〜100μm)で確保した。5〜6時の位置に置いた後、最初の極体および中期板をおそらく含む隣接細胞質(卵母細胞の総容積の約10%)を吸引して、勾配注入ピペット(beveled injection pipette)(内径=20μm)で取り出した。次いで、胚性線維芽細胞を同じスリットを通じて空間に注入した。核移入(NT)後、再構成された対を、融合および活性化が行われるまで1〜1.5時間回復のために鉱油でカバーした培地の液滴に移した。この回復培地は、4mg/mLのBSAおよび7.5μg/mLのCBを補充したNCSU−23であった。再構成された対を、融合培地中で4分間インキュベートした。対を、繊細に吸引かつ研磨したガラスキャピラリーを用いて、手技的に配列して、電極に平行な接触面を作成した。次いで、2.0kV/cmの単一の30μ秒の直流パルスを加えた。7.5μg/mLのCBを補充したIVC0−2(「Embryo culture and evaluation」で特定される)の液滴中での30〜60分間の培養後、融合の結果を立体顕微鏡下で検査した。融合した対を活性化溶液中で第二のパルスに供した。T10中での30分のインキュベーション後、それらをIVC0−2に移して、インビトロの発達を評価した。
【0180】
(活性化のさらなる工程)
活性化インパルスの後、全ての再構成された胚を5μg/mlのCBおよび10μg/mlのシクロヘキシミドを補充したIVC0−2中で、38.5℃で、5%のCO、5%のOおよび90%のNの中で、最大湿度でインキュベートした。
【0181】
(胚培養および評価)
4時間後、全ての再構成されたおよび活性化された胚を、洗浄して、Nunc4ウェル皿において、鉱油でカバーされた400μlのIVCO−2中で、38.5℃で、5%のCO、5%のOおよび90%のNの中で、最大湿度で培養した。IVCO−2は、4mg/mlのBSA、0.17mMのピルビン酸ナトリウム、および2.73mMの乳酸ナトリウムを含有する改変NCSU37培地(Kikuchiら、1999)で、0日目(活性化の日)〜2日までであった。ピルビン酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムを、2日目から7日目まで5.5mMのグルコースで置き換えた(IVC2−7)。全ての帯なし胚を、ウェル−ウェル(Well of the Well)(WOW)システム(Vajtaら、2000)において、同じ培養培地中で培養して、ガス混合物を上記のように用い、WOWから胚を外すことなく2日目に注意深く培地交換した。TC胚を、同じ培地量および組成物を用いることによって、4ウェル皿のウェル中で15〜30の群で培養した。分割および胚盤胞の率をそれぞれ2日目および7日目に記録した。総細胞数を決定するために、胚盤胞を固定して、10μg/mlのHoechst33342を含有する少量(<2μl)のグリセロール中でガラス顕微鏡スライドにマウントした。室温で数時間後、落射蛍光アタッチメントおよびUV−2Aフィルターを装備したDiaphot 200倒立顕微鏡(Nikon,Tokyo,Japan)下で胚を観察した。
【0182】
(CAHE対OHEの効率の比較)
CAHEの効率および信頼度は、全部で620個の卵母細胞を用いることによって12の同一の複製で試験した。41〜42時間の成熟後、卵母細胞を、デメコルチンインキュベーションに供した。指向性の二分割を卵母細胞で行い、押出錐体および/または強力に結合したPBを、部分的なプロナーゼ消化の後に検出した。二分割卵母細胞対総卵母細胞および生存している卵母細胞対二分割された卵母細胞の割合を記録した。引き続き推定の細胞質体および核質の両方を別々に収集して、Hoechst 33342(10μg/mlをT2に含有、10分間)で染色した。クロマチンの有無を倒立蛍光顕微鏡で検出した(図4)。
【0183】
OHEの効率および信頼度は、全部で414個の卵母細胞を用いることによって9つの同一の複製で試験した。42〜43時間のインビトロの成熟後、指向性の二分割を、成熟した卵母細胞で行い、ここでは押出錐体および/またはPBを、部分的なプロナーゼ消化の後に検出した。結果は、前の段落に記載のとおり評価した。
【0184】
結果を表5に示す。
【0185】
【表5】

:平均±A.D.(絶対偏差)
異なる添え字は有意差を意味する(p<0.05)。
【0186】
指向性の二分割を可能にすること、または溶解率において、押出錐体および/または結合極体に関して群の間に相違は検出されず、そして二分割の卵母細胞あたり首尾よい除核の比も同様であった。しかし、総卵母細胞数あたりの細胞質体によって測定された手順の全体的な効率は、OHE群よりもCAHEで高かった。
【0187】
(CAHE、RHEおよびTCで生成した胚のインビトロ発達の比較)
8つの複製で、全部で468個のインビトロ成熟卵母細胞を無作為に分布させて、上記の除核手順の3つに供した。細胞質体とドナー線維芽細胞との間の融合率を記録した。再構成された胚を前に記載のとおり活性化して培養した。分割および胚盤胞の率をそれぞれ、2日目および7日目に決定した。発達した胚盤胞の立体顕微鏡的な特徴を群間で比較した。
【0188】
【表6】

:平均±A.D.(絶対偏差)
異なる添え字は有意差を意味する(p<0.05)。
【0189】
除核後の融合率は、それぞれCAHE1、RHEおよびTCで同様であった。第二の融合および活性化によって、最初の2群で無視できる(<1%)の損失が生じた。TCは、他の2群よりも再構成された胚1つあたり低い分割を生じたが、その相違は、再構築された胚あたりの胚盤胞の率にはなかった。
【0190】
立体顕微鏡的な特徴(サイズ;内部細胞塊の推定の割合および外観)は群間で異なることがなかった。CAHE、RHEおよびTCから生成された胚盤胞の細胞数(57±6対49±7対53±6)を表6、図5および図6に示す。
【0191】
(統計学的分析)
AVEDEVは、Microsoft XP Excelソフトウェアによって行い、そしてANOVAは、SASシステムによって行った。P<0.05の確率を有意差とみなした。
【0192】
(実施例5)
(仔ブタの産生)
(ハンドメイドクローニング(handmade cloning)(HMC))
インビトロ成熟の開始の41時間後、COCの卵丘外皮を、1mg/mlのヒアルロニダーゼを含有するHepes−緩衝化TCM199中での反復ピペッティングによって除去した。このポイントから(他に示す場合を除き)、全ての操作は、39℃に調節した加熱ステージ上で行い、そして卵母細胞を処理するために用いた全ての液滴は、鉱油でカバーした20μlの容積であった。卵母細胞を、短時間、T33(Hepes−緩衝化TCM199培地のTであって;この数は、仔ウシ血清(CS)補充の割合(v/v)を意味し、ここでは33%)に溶解された3.3mg/mlのプロナーゼ中で20秒間インキュベートし、次いで、T2およびT20の液滴中で迅速に洗浄した。卵母細胞は部分的に消化されたが、依然として可視の帯が、2.5μg/mlのサイトカラシンB(CB)を補充されたT2液滴に位置した。微細吸引かつ先端熱加工したガラスピペットを用いて、卵母細胞を回転させて、表面上に極体(PB)を見出し、そして指向性の二分割をマイクロブレード(AB Technology,Pullman,WA,USA)を用いる立体顕微鏡的な制御下で手技的に行った。これによって、卵母細胞の細胞質の半分未満(押出しまたはPBの近く)を残りの推定の細胞質体から除いた。細胞質体をT2液滴中で2回洗浄して、T10液滴中に収集した。
【0193】
胎性線維芽細胞は、前に記載の通り調製した(Kragh,P.Mら、Theriogenology 64,1536〜1545(2005)。
【0194】
融合は、2工程で行い、この第二工程は、同様に活性化の開始を含んだ。第一工程については、推定の細胞質体の半分を用いた。微細吸引かつ先端熱加工したガラスピペットを用いて、10個の細胞質体を、1群として、1mg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA;ICN Pharmaceuticals,Australia)に3秒間移し、次いでT2液滴に沈降させた2〜3の線維芽細胞のうちの1つに個々に迅速に滴下した。接着後10個の細胞質体−線維芽細胞の対を融合培地(0.3Mのマンニトールおよび0.01%のPVA)中で10秒間平衡化した。0.6KV/cmおよび700KHzの交流(AC)を用いて、細胞対を、体細胞がワイアから最も遠位であるように、融合チャンバ(BTX microslide 0.5mm融合チャンバ,モデル450;BTX1 San Diego,CA)のワイアに整列させ、次いで2.0KV/cmの単一直流(DC)で9μsの間融合させた。電気的パルス後、細胞対をワイアから注意深く取り除いて、T10液滴に移して、インキュベートし、融合が生じたかどうかを観察した。
【0195】
融合の約1時間後、融合した対と残りの細胞質体とを一緒に、活性化培地(0.3Mのマンニトール、0.1mMのMgSO、0.1mMのCaClおよび0.01%のPVA)の液滴中で別々に平衡化させた。0.6KV/cmのACのもとで、細胞質体−融合対を、融合対をワイアから遠く、10の群でワイアに連続して整列させた。0.7KV/cmの単一のDCパルスを80μ秒、第二の融合および活性化の開始のために用いた。次いで、その対をワイアから外して、注意深くT10液滴に移して、融合をチエックした。再構築した胚を、5μg/mlのCBおよび10μg/mlのシクロヘキシミドを補充したPZM−3培地中で4時間、38.5℃で、5%のCO、5%のOおよび90%のNの中で、最大湿度でインキュベートし、次いで、培養前に徹底的に洗浄した。
【0196】
(伝統的なクローニング(traditional Cloning)(TC))
マイクロマニピュレーションは、Diaphot 200倒立顕微鏡(Nikon,Tokyo,Japan)を用いて行った。上記のように42〜44時間の成熟後卵丘細胞を取り出した。全ての操作は、39℃に調節した加熱ステージ上で行った。単一の50μlのマイクロマニピュレーション溶液の液滴(4mg/mLのBSAおよび7.5μg/mLのCBを補充したNCSU−23)を、60mmの培養皿のフタ上の中央領域に作成して、鉱油でカバーした。20〜30個の卵母細胞および胎性線維芽細胞の群を、同じ液滴に入れた。15〜30分のインキュベーション後、1つの卵母細胞を保持ピペット(内径=25〜35μmそして外径=80〜100μm)で確保した。5〜6時の位置に置いた後、最初の極体および中期板をおそらく含む隣接細胞質(卵母細胞の総容積の約10%)を吸引して、勾配注入ピペット(beveled injection pipette)(内径=20μm)で取り出した。次いで、胚性線維芽細胞を同じスロットを通じて空間に注入した。核移入(NT)後、再構成された対を、融合および活性化が行われるまで1〜1.5時間回復のために鉱油でカバーした培地の液滴に移した。再構成された対を、融合培地中で4分間インキュベートした。対を、繊細に吸引かつ研磨したガラスキャピラリーを用いて、手技的に配列して、電極に平行な接触面を作成した。次に、2.0kV/cmの単一の30μ秒の直流パルスを加えた。7.5μg/mLのCBを補充したPZM−3培地の液滴中での30〜60分間の培養後、融合の結果を立体顕微鏡下で検査した。融合した対を活性化溶液中で第二のパルスに供した。T10中での30分のインキュベーション後、それらをPZM−3培地に移して、インビトロの発達を評価した。
【0197】
(胚の培養および移入)
再構築された胚を、4mg/mlのBSAを補充したPZM−3培地(Dobrinsky,J.Tら、Biol Reprod 55,1069〜1074(1996)中で培養した。HMCから生成した帯なしの胚を、改変WOWシステム(Feltrin,C.ら、Reprod Fertil Dev 18,126(2006)中で培養した。2つの異なる細胞株(HMCについてはLW1−2、TCについてはLW2)をHMCおよびTCについての核ドナー細胞として用いて、2つの手順に由来する子孫の同定を可能にした。LW1−2およびLW2は、それぞれ、交雑(Durocと)、および純粋なDanish landrace由来の胎児に由来する。
【0198】
7日間のインビトロ培養後の再構成された胚あたりの平均胚盤胞の率は、50.1±2.8%(平均±S.E.M)であって、これは、HMCについて、本発明者らの実験室で平行して行ったTCの値よりも有意に高く(p<0.01)(表7)、そしてまた、ブタクローニングにおいてかつて報告されている最高の値である。
【0199】
【表7】

a,b欄内の種々の添え字の値は、有意に異なる(p<0.05)。
:平均±S.E.M.
HMCおよびTCの両方から生成された混合胚盤胞を、発情周期の4日目または5日目に11頭の自然に同調した成体メスブタ(sow)に外科手術的に移した。6つ(55%)のレシピエントを超音波検査によって妊娠診断して、2つを流産させて、記載の時点までに2匹がそれぞれ3匹および10匹の仔ブタを出産した。10匹のクローニングされた仔ブタの産子数は、本発明者らの知識によれば、ブタのクローニングでこれまでに達成された最大産子数である。それらの全てが健康であって、1つの前肢の遠位関節の硬直屈曲を示す以外は正常に挙動する。%)。
【0200】
同様の段階の胚を移した場合、発情周期の4日目のレシピエントは、5日目よりも優れた妊娠樹立を支持したことが予備的な結果によって示唆される(表8)。
【0201】
【表8】

(マイクロサテライト分析)
10の異なるブタマイクロサテライトマーカーを用いる親の分析によって、核移入に用いたクローニングされた仔ブタおよびドナー細胞の同一の遺伝子型が確認された。識別は、新生仔ブタ、代理メスブタ、ならびにそれぞれDanish landraceおよびDurocを示す2匹の胎児に由来するドナー皮膚線維芽細胞LW1−2およびLW2の各々に由来するゲノムDNAのマイクロサテライト分析によって行った。異なるブタの染色体に位置する10の多形性のマイクロサテライト遺伝子座(SW886、SW58、SW2116、SW1989、SW152、SW378、KS139、SO167、SW1987、SW957)を、3色マルチプレックス(multiplex)PCRによって増幅して、生成物を、プログラムGene Mapper 3.7を用いるGenetic Analyzer 3130 X1(Applied Biosystems)で分析した。
【0202】
第二のレシピエントについて、1胚あたりの子孫の割合(22%)は、今までブタのクローニングで報告された最高の割合であった(Walker,S.Cら、Cloning Stem Cells 7,105〜112(2005);Hoshino,Yら、Cloning Stem Cells 7,17〜26(2005))。得られた移入された胚1つあたりの生存出生の効率は、HMC(17%)およびTC(15%)で匹敵していた。
【0203】
(統計学的分析)
実験群の間の相違を、SPSS11.5による独立サンプルt検定を用いて評価した。P<0.05を有意とみなした。
【0204】
(実施例6)
単純型表皮水疱症の疾患モデルとしてトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成するために用いられ得る導入遺伝子の1例は、下に太字で示されるような変異を含むヒトケラチン14遺伝子である。
【0205】
ブタ胎児線維芽細胞(ドナー細胞)に組み込まれた導入遺伝子の配列は、ヒトケラチン14プロモーターおよびケラチン14のcDNAを含み、これは、開始コドンおよび終止コドン(太字)および疾患原因の変異(太字かつ下線)を、Soerensenら、J Invest Dermatol.1999 Feb;112(2):184〜90に記載のとおり含む。このフラグメントを、遺伝子発現のためのポリAシグナル、および組み込まれた導入遺伝子での細胞クローンの選択のためのネオマイシン選択遺伝子を含むpN1−EGFP(clontech)にクローニングする。
【0206】
【化1】

【0207】
【化2】

【0208】
【化3】

【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】(a)卵母細胞三等分;(b)第一の融合のための線維芽細胞−卵母細胞フラグメントの対;(c)三つ組みで再構成された胚(AC電流下での伸長に注意のこと);(d)三つ組み融合。スケールバー=50m。
【図2】(a)部分的な透明帯(zona)消化後のインビトロ成熟した卵母細胞。(b)遠心分離後の脱脂卵母細胞。(c)脱脂卵母細胞の二分割。(d)第一の融合のための線維芽細胞−卵母細胞フラグメントの対。(e)脱脂された卵母細胞から発達した4細胞段階の再構成された胚。(f)インタクトな卵母細胞から発達した4細胞段階の再構成された胚。(g)温めた後に脱脂した胚からの再拡張した胚盤胞。(h)温めた後に脱脂した胚からの再拡張した胚盤胞のHoechst染色およびUV照射。バーは100μmに相当する。
【図3】化学補助除核での二分割。押出錐体(extrusion cone)または極体がさらに小さい部分(推定の核質)に接続されていることに注意のこと。立体顕微鏡写真。バーは50μmに相当する。
【図4】クロマチンの有無によるHoechst染色およびUV照射。UV光、倒立蛍光顕微鏡写真。バーは50μmに相当する。(a)推定の細胞質体におけるクロマチンの非存在、推定の核質におけるクロマチンの存在。
【図5】化学補助ハンドメイド除核(chemically assisted handmade enucleation)(CAHE)で生成した7日の胚盤胞の立体顕微鏡写真。バーは50μmに相当する。
【図6】化学補助ハンドメイド除核(chemically assisted handmade enucleation)(CAHE)後に発達した胚盤胞のHoechst染色およびUV照射。バーは50μmに相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞核移入の方法であって、以下の工程
a.操作された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、
b.該卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、少なくとも1つの細胞質体を得る工程と、
c.所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、
d.少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、
e.再構成された胚を得る工程と、
を包含する、方法。
【請求項2】
細胞核移入の方法であって、以下の工程
a.少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、
b.該卵母細胞を少なくとも3つの部分に分けて、少なくとも2つの細胞質体を得る工程と、
c.所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、
d.少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、
e.再構成された胚を得る工程と、
を包含する、方法。
【請求項3】
透明帯の少なくとも一部が部分的に除去される、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記透明帯の少なくとも一部が部分的に酵素的に除去される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記卵母細胞が、少なくとも3つの部分に分けられて、少なくとも2つの細胞質体が得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法であって、前記ドナー細胞または細胞核の所望の遺伝的特性が、変異、欠失および/または挿入によって所望の遺伝子(単数または複数)を改変することによって得られている、方法。
【請求項7】
前記融合の方法が、化学融合、電気融合および生体融合から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記融合が、少なくとも1つの工程で行われる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記融合が、少なくとも2つの工程で行われる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
融合の第一工程が、少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核との間である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
融合の第二工程が請求項8の少なくとも1つの融合対と少なくとも1つの細胞質体との間である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ドナー細胞が体細胞である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記体細胞が、上皮細胞、神経系細胞、上皮細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラニン形成細胞、軟骨細胞、リンパ球(Bリンパ球およびTリンパ球)、赤血球、マクロファージ、単球、単核球、線維芽細胞、心筋細胞および他の筋細胞からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記体細胞が、皮膚細胞、肺細胞、膵臓細胞、肝細胞、胃細胞、腸細胞、心臓細胞、生殖器細胞、膀胱細胞、腎臓細胞、尿道細胞および他の泌尿器官細胞からなる群より得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記体細胞が線維芽細胞である、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記体細胞が、哺乳動物由来の線維芽細胞である、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記哺乳動物がブタである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ドナー細胞が、生殖系列細胞に由来する、請求項1および/または請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記卵母細胞がブタに由来する、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
遺伝子操作されるか、またはトランスジェニックの非ヒト哺乳動物を生成するための方法であって:
a.操作された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、
b.該卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る工程と、
c.所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、
d.少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、
e.再構成された胚を得る工程と、
f.該再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と;
g.該胚を培養する工程と;
h.該培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果その胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、
を包含する、方法。
【請求項21】
遺伝子操作されるか、またはトランスジェニックの非ヒト哺乳動物を生成するための方法であって:
a.少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、
b.該卵母細胞を少なくとも3つの部分に分けて、少なくとも1つの細胞質体を得る工程と、
c.所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、
d.少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、
e.再構成された胚を得る工程と、
f.該再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と;
g.該胚を培養する工程と;
h.該培養された胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果その胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、
を包含する、方法。
【請求項22】
請求項20または21に記載の方法であって、該方法が、請求項1〜21のいずれかに規定されるような特徴のうちの1つ以上を含み、前記再構成された胚の活性化のための方法が、電気パルス、化学的導入ショック、二価陽イオンの細胞内レベル増大、およびリン酸化の軽減からなる方法群より選択される、方法。
【請求項23】
請求項20または21に記載の方法であって、該方法が、請求項1〜22のいずれかに規定されるような特徴のうちの1つ以上を含み、工程d)およびf)が、連続的にまたは同時に行われる、方法。
【請求項24】
請求項20または21に記載の方法であって、該方法が、請求項1〜23のいずれかに規定されるような特徴のうちの1つ以上を含み、前記胚がインビトロで培養される、方法。
【請求項25】
前記胚が、連続培養で培養される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項20または21に記載の方法であって、該方法が、請求項1〜25のいずれかに規定されるような特徴のうちの1つ以上を含み、前記胚が、宿主哺乳動物への移入の前に凍結保存される、方法。
【請求項27】
前記胚が、胞胚期である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ブタ胚の凍結保存のための方法であって、
a)少なくとも1つのブタ卵母細胞を樹立する工程と、
b)卵母細胞を脱脂する工程と、
c)再構成された胚を活性化して胚を形成する工程と、
d)該胚を培養する工程と、
e)該胚を透化させる工程と、
を包含する、方法。
【請求項29】
前記脱脂された卵母細胞が、少なくとも2つの部分に分けられて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項28または29に記載の方法であって、該方法が、請求項1〜29のいずれかに規定されるような特徴の1つ以上を含み、前記胚が、透化の前に胞胚期まで培養される、方法。
【請求項31】
非ヒト哺乳動物をクローニングするための方法であって、
a.請求項1〜30のいずれかで得られるような胚を樹立して、必要に応じて胚を解凍する工程と、
b.該胚を宿主哺乳動物に移入して、その結果該胚を遺伝子操作された胎児に発達させる工程と、
を包含する、方法。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれかに規定されるような方法によって獲得可能である遺伝子操作された非ヒト哺乳動物。
【請求項33】
請求項1〜31のいずれかに規定されるような方法によって獲得可能である遺伝子操作された非ヒト胚。
【請求項34】
請求項1〜31のいずれかに規定されるような方法によって獲得可能な遺伝子操作された非ヒト哺乳動物であって、その組織細胞中に、少なくとも3つの異なる母体供給源由来のミトコンドリアを有する、非ヒト哺乳動物。
【請求項35】
請求項32または33に記載の遺伝子操作された非ヒト哺乳動物または遺伝子操作された非ヒト胚であって、その組織細胞中に、少なくとも3つの異なる母体供給源由来のミトコンドリアを有する、非ヒト哺乳動物または非ヒト胚。
【請求項36】
請求項32、33または34に記載の遺伝子操作された非ヒト哺乳動物または遺伝子操作された非ヒト胚であって、その組織細胞中に、少なくとも4つの異なる母体供給源由来のミトコンドリアを有する、非ヒト哺乳動物または非ヒト胚。
【請求項37】
請求項32、または33に記載の遺伝子操作された非ヒト哺乳動物または遺伝子操作された非ヒト胚であって、その組織細胞中に、唯一の母体供給源由来のミトコンドリアを有する、非ヒト哺乳動物または非ヒト胚。
【請求項38】
請求項32または33に記載の遺伝子操作された非ヒト哺乳動物または遺伝子操作された非ヒト胚であって、その組織細胞中に、少なくとも2つの母体供給源由来のミトコンドリアを有する、非ヒト哺乳動物または非ヒト胚。
【請求項39】
前記哺乳動物がブタである、請求項32、33または34に記載の遺伝子操作された非ヒト哺乳動物。
【請求項40】
前記胚がブタ由来である、請求項33または34に記載の遺伝子操作された非ヒト胚。
【請求項41】
再構成された胚(胚)を培養する方法であって、
a.操作された透明帯の少なくとも一部を有する少なくとも1つの卵母細胞を樹立する工程と、
b.該卵母細胞を少なくとも2つの部分に分けて、核および少なくとも1つの細胞質体を有する卵母細胞を得る工程と、
c.所望の遺伝的特性を有するドナー細胞または細胞核を樹立する工程と、
d.少なくとも1つの細胞質体とドナー細胞または膜に囲まれる細胞核とを融合させる工程と、
e.再構成された胚を得る工程と、
f.該再構成された胚を活性化して胚を形成させる工程と;
g.該胚を培養する工程と;
を包含する、方法。
【請求項42】
前記胚が、連続培地で培養される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が、非ヒト動物身体で行われる外科的工程を包含しない、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−506781(P2009−506781A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529471(P2008−529471)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000498
【国際公開番号】WO2007/028396
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508071401)アルフス ユニバーシテット (1)
【Fターム(参考)】