細胞用デバイス及び細胞用デバイスの製造方法
【課題】細胞の取り扱いに好適であり、特に中空糸が用いられることによって、凍結保存や培養に際しての細胞の取り扱いに適し、かつ中空糸の破損防止に適した手段を提供する。
【解決手段】細胞用デバイス10は、両端が開口された中空糸11と、中空糸11の第1端21に接続されて、その内部空間が中空糸11の内部空間と連続する流路を構成する注射針12と、中空糸11に挿通された芯材13と、を具備する。芯材13は、使用に際して中空糸11から脱抜可能である。
【解決手段】細胞用デバイス10は、両端が開口された中空糸11と、中空糸11の第1端21に接続されて、その内部空間が中空糸11の内部空間と連続する流路を構成する注射針12と、中空糸11に挿通された芯材13と、を具備する。芯材13は、使用に際して中空糸11から脱抜可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の取り扱いに好適に用いられ、中空糸の内部空間に細胞を内包しうる細胞用デバイスに関し、特に中空糸の破損防止に適した手段を有する細胞用デバイスに関する。
【0002】
また、本発明は、中空糸の破損防止に適した芯材を、中空糸を管体に結合するに適した治具として用いる細胞用デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの不妊治療や動物のクローンの分野において、卵子や初期胚などの生殖細胞を培養したり凍結保存することがある。この培養や凍結保存において、生殖細胞を培地から取り出したり、凍結保存容器に対して出し入れしたりすることがある。このような生殖細胞の取り扱い作業は、ピペットの如くストロー形状の器具を用いて、生殖細胞をストロー内へ吸い込む或いはストロー内から吐き出すことにより行われている。この他にも、膜状又は板状のデバイス(例えば、北里サプライ社製、クライオトップ)が用いられたり、ループ形状のナイロン糸(例えば、北里サプライ社製、クライオループ)が用いられたりしている。
【0004】
特許文献1には、初期胚の遺伝情報の判定のために使用される器具が開示されている。この器具は、移植前初期胚から細胞を取り出すために使用され、ピペットに類似するパイプ材(2)を有する。このパイプ材(2)は、細いガラス管であり、その先端に鋭利な突き刺し部(3)が形成されている。パイプ材(2)の他端はマイクロマニピュレータ用の微量吸引及び排出が可能な操作器具に接続されている。初期胚にパイプ材(2)が突き刺され、初期胚内の細胞がパイプ材(2)の内部に吸引される。
【0005】
特許文献2には、中空糸内部で細胞を培養又は保存するための器具が開示されている。この器具は、細胞懸濁液流通管(1)に中空糸固定部(3)を介して中空糸(4)の束が固定され、その中空糸(4)の束の先端が硬化性樹脂(5)で封止されている。中空糸(4)の束が培地に浸漬された状態で細胞懸濁液流通管(1)が吸引され、細胞懸濁液流通管(1)及び中空糸(4)の束に培地が満たされる。その後、細胞懸濁液流通管(1)を通じて中空糸(4)の束に細胞懸濁液が注入されると、中空糸(4)の内部に細胞が堆積される。
【0006】
特許文献3には、生体組織マトリックスへ細胞を播種する方法が開示されている。この方法においては、播種すべき細胞が充填された生体分解性中空糸が生体組織片に埋め込まれ、その生体組織片において中空糸から細胞が放出される。
【0007】
【特許文献1】特開2003−33200号公報
【特許文献2】特開2003−339368号公報
【特許文献3】特開2007−168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、生殖細胞の培養において培地を交換する度に、従来のストロー形状の器具を用いて、培地などに対して生殖細胞の取出し及び吐き出しを繰り返す作業は煩雑であるという問題がある。
【0009】
また、生殖細胞を凍結保存する際に、例えばガラス化により凍結保存するのであれば、濃度勾配を有する複数のガラス化平衡液に生殖細胞を順次浸漬するが、その際に、従来のストロー形状の器具を用いて、複数種のガラス化平衡液に対して生殖細胞の注入及び取出しを繰り返す作業は煩雑であるという問題がある。さらには、凍結保存された生殖細胞を解凍して培地に注入する際にも、同様の煩雑さが問題となる。
【0010】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、細胞の取り扱いに好適であり、特に中空糸が用いられることによって、凍結保存や培養に際しての細胞の取り扱いに適し、かつ中空糸の破損防止に適した手段を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、中空糸の破損防止に適した芯材を、中空糸を管体に結合するに適した治具として用いて細胞用デバイスを簡易に製造できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る細胞用デバイスは、両端が開口された中空糸と、上記中空糸の第1端に接続されて、その内部空間が当該中空糸の内部空間と連続する流路を構成する管体と、上記中空糸に挿通された芯材と、を具備する。上記芯材は、使用に際して上記中空糸から脱抜可能である。
【0013】
本発明における細胞としては、生殖細胞が挙げられる。生殖細胞とは、始原生殖細胞、精子、精子細胞、卵子、卵母細胞、初期胚を含む包括的な概念である。ここで、精子細胞とは、精子となる過程における前駆細胞をいう。卵母細胞とは、卵子となる過程における前駆細胞をいう。初期胚とは、着床前の受精卵をいう。なお、本発明に係る細胞用デバイスは、生殖細胞以外にも、ES細胞のような細胞の取り扱いに用いられてもよい。
【0014】
中空糸とは、細胞を通過させないが、水や電解質、タンパク質などを通過させうる径の孔を複数有する膜がストロー形状に成形されたものをいう。中空糸を形成する膜として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースアセテート、再生セルロースなどが挙げられる。この膜が有する細孔径は、ナノメートルオーダーのものであればよい。また、膜の厚みは、前述の細胞を観察できる程度の透明性を中空糸が有するためには、好ましくは0.5〜30μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。
【0015】
中空糸の内径は、対象となる細胞を内包することができる程度が選択され、好ましくは20〜1000μmであり、さらに好ましくは50〜500μmである。
【0016】
中空糸の長さは、数個の細胞を内包することが可能であり、後述される気泡を形成したりするに適した長さが選択され、好ましくは1〜100mmであり、さらに好ましくは10〜40mmである。中空糸の長さがこの範囲内であれば、卵母細胞、卵子及び初期胚であれば1〜数十個程度を内包することができ、始原生殖細胞、精子及び精子細胞であれば数十〜数万個程度を内包することができ、かつ、その内包された複数個の生殖細胞に対して中空糸の両開口側に気泡を形成することができる。
【0017】
第1管体は、中空糸と接続可能なものであって、接続された中空糸を支持する剛性を有する。第1管体は、その内部空間が中空糸の内部空間と連続して気体又は液体の流路となり得るものである。第1管体の素材は特に限定されないが、例えば、ステンレスなどの金属や、プラスチック、ガラスなどが挙げられる。
【0018】
第1管体の形状は、特に限定されず、円管、角管などを採用しうるが、通常、中空糸が円筒形状となるので、円管であることが好ましい。
【0019】
第1管体の外径又は内径は、中空糸との接続を考慮して選択される。例えば、第1管体に対して中空糸を外嵌させるのであれば、第1管体の外径は中空糸の内径と同程度としてもよい。逆に、中空糸に対して第1管体を外嵌させるのであれば、第1管体の内径は中空糸の外径と同程度としてもよい。また、筒形状のジョイントを用いて中空糸と第1管体とを接続するのであれば、第1管体の外径は中空糸の外径と同程度としてもよい。
【0020】
第1管体の長さは、ハンドリングを考慮して選択され、50〜1000mm程度がハンドリングに優れるので好適である。
【0021】
中空糸と第1管体との接続は、内嵌や外嵌、ジョイントによる機械的な接続構造が選択されてもよく、さらに医療用接着剤などを用いて接着固定が行われてもよい。
【0022】
芯材は、中空糸に挿抜可能なものであって、中空糸に挿通された状態において、中空糸が折れ曲がらないように支持する程度の剛性を有する。芯材の素材は特に限定されないが、例えば、ステンレスなどの金属やプラスチックなどが挙げられる。なお、芯材は、中空糸のみに挿通されるものであっても、中空糸及び第1管体に挿通されるものであってもよい。
【0023】
芯材の形状は、特に限定されず、円柱や角柱などの棒材が採用されうるが、通常、中空糸が円筒形状となるので、円柱形状の棒材であることが好ましい。また、芯材の外径は、中空糸への挿通を考慮して選択され、中空糸の内径より若干小さい外径のものが好適である。
【0024】
細胞用デバイスの使用に際して、芯材を中空糸から脱抜する。これにより、中空糸内に細胞を吸引することができる。一方、使用までの間においては、芯材によって中空糸が支持されることにより、中空糸が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸が折れ曲がることが防止される。
【0025】
中空糸から芯材を抜き取った後、例えば、顕微鏡などによって培地中の細胞を確認して、細胞用デバイスの第1管体を操作して、第1管体に接続された中空糸を培地中に挿入し、中空糸の先端を細胞に近接させる。そして、適当な吸引具を用いて、第1管体を通じて中空糸の内部空間を負圧とすると、その負圧が吸引圧となって、中空糸の先端から細胞が培養液と共に中空糸の内部空間へ吸引される。複数個の細胞を中空糸の内部空間へ吸引する場合には、この作業を繰り返す。
【0026】
培地から取り出した細胞を凍結保存する場合には、中空糸から細胞を取り出すことなく、中空糸に内包された状態の細胞を凍結保存溶液に浸漬する。前述のように、中空糸の孔は、細胞を通過させないが、培養液や凍結保存溶液などを通過させるので、中空糸の内部空間に細胞が内包された状態を維持しながら、中空糸の内部空間の培養液や細胞の細胞内液などを凍結保存溶液に置換することができる。そして、その中空糸を液体窒素などに浸漬することによって、中空糸内の細胞を凍結する。
【0027】
凍結された細胞を内包する中空糸を保存するために、中空糸において細胞が存在する一部分を第1管体から切断して、中空糸を第1管体から分離する。そして、分離された中空糸をディープフリーザなどで冷凍保存する。また、中空糸を第1管体から切断することなく、中空糸が接続された第1管体を吸飲具等から取り外して、中空糸及び第1管体を冷凍保存に適した容器などに封入してディープフリーザなどで冷凍保存してもよい。
【0028】
なお、前述のように中空糸の内部空間に内包されて凍結保存された細胞は、中空糸と共に加温液に浸すことにより解凍される。解凍後に、中空糸の一端から内部空間へ排出圧を付与すると、中空糸の内部空間から細胞が外部へ排出される。また、中空糸の内部空間に細胞を内包させた状態で培養を行うのであれば、解凍された中空糸を所望の培地中に投入すればよい。
【0029】
(2) 上記芯材は、中空糸の両端から突出されたものであってもよい。
【0030】
これにより、中空糸の両端が芯材によって支持されるので、その両端の破損が防止される。
【0031】
(3) 上記中空糸の第1端に対して上記管体が外嵌されて、上記中空糸と上記管体とが接続され、上記芯材は、上記中空糸の第1端に当接する段差部を有するものであってもよい。
【0032】
中空糸の第1端側から芯材を挿入すると、芯材の段差部が中空糸の第1端と当接して、芯材の挿入限界が決定される。また、芯材の脱抜が、第1端側から引き抜く向きに限定されるので、中空糸の第1端側を鉛直上向きにしていれば、自重によって芯材が中空糸から脱落することがない。
【0033】
(4) 本発明に係る細胞用デバイスの製造方法は、両端が開口された中空糸に挿通可能な芯部と、当該中空糸の第1端と当接し得る段差部とを有する芯材を、当該中空糸を挿入可能な管体に挿通して、その段差部を当該管体内の所定位置に位置決めする第1ステップと、上記芯材の芯部を中空糸に挿通させるようにして、当該中空糸の第1端を上記管体に挿入し、当該第1端を上記芯材の段差部に当接させて、上記管体に対して当該中空糸を位置決めする第2ステップと、上記中空糸の第1端側と上記管体との間に接着剤を充填して、上記中空糸と上記管体とを結合する第3ステップと、を含む。
【0034】
第1ステップにおいて、管体の所定の位置まで芯材を挿入する。この芯材の挿入において、管体において中空糸の第1端と接続される側に芯材の段差部が向くようにする。管体に対して芯材を挿入する位置は、管体の内部空間において、中空糸の第1端が位置決めされるべき位置に、芯材の段差部が配置されるように決定される。このような管体の芯材との配置は、適当な治具などによって決められてもよい。
【0035】
第2ステップにおいて、芯材の芯部を中空糸に挿通させるようにして、芯部に沿って中空糸を移動させながら、管体に中空糸の第1端を挿入する。管体に挿入された中空糸の第1端は、管体の内部空間に配置された芯材の段差部と当接する。この当接によって、管体へ中空糸を挿入する位置が決定される。このようにして、芯材が、管体へ挿入される中空糸のガイドとして用いられ、また、中空糸の第1端を位置決めする治具として用いられる。
【0036】
第3ステップにおいて、中空糸の第1端側と管体との間に接着剤を充填する。中空糸と管体との間に隙間があれば、その隙間に接着剤を充填する。中空糸と管体との間に隙間が殆ど無ければ、中空糸と管体との境界に接着剤を塗布するように充填する。この接着剤は、いわゆる医療用接着剤を使用する。これにより、管体と中空糸とが結合される。製造後の細胞用デバイスは、芯材により中空糸が支持されて、中空糸の折れ曲がりや破損が防止される。この芯材は、使用に際して中空糸から引き抜かれる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る細胞用デバイスによれば、各々の内部空間が流路として連続されて第1管体と中空糸とが接続されているので、吸引具により流路に吸引圧を付与すると、中空糸の内部空間へ細胞を取り込むことができる。この中空糸の孔は、細胞を通過させないが、培養液や凍結保存溶液などを通過させるので、中空糸の内部空間に細胞が内包された状態を維持しながら、中空糸の内部空間の培養液や細胞の細胞内液などを凍結保存溶液に置換することができる。
【0038】
また、使用に際して脱抜可能な芯材が中空糸に挿通されているので、使用までの間においては、芯材によって中空糸が支持される。これにより、中空糸が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸が折れ曲がることが防止される。
【0039】
また、本発明に係る細胞用デバイスの製造方法によれば、管体に挿通された芯材が、管体へ挿入される中空糸のガイドとして機能する。また、管体内に位置決めされた芯材の段差部が、管体に挿入された中空糸の第1端と当接して、管体へ中空糸を挿入する位置が決定されるので、芯材が、管体へ挿入される中空糸の第1端を位置決めする治具として機能するとともに、製造後においては、芯材により中空糸が支持されて、中空糸の折れ曲がりや破損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0041】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態にかかる細胞用デバイス10の全体構成を示す斜視図である。図2は、中空糸11、注射針12及び芯材13の分解斜視図である。図3は、芯材13の全体構成を示す斜視図である。図4から図7は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。図8は、細胞用デバイス10にチューブ14を介して注射筒15が接続された状態を示す斜視図である。図9〜図16は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。なお、図9〜図16には、細胞用デバイス10の中空糸11、注射針12の一部のみが示されており、チューブ14及び注射筒15は各図に示されていない。
【0042】
[細胞用デバイス10]
図1及び図2に示されるように、細胞用デバイス10は、主として、中空糸11と、注射針12と、芯材13と、を有する。
【0043】
中空糸11は、細胞を通過させないが、水や電解質、タンパク質などを通過させうる径の孔を複数有する膜が、両端が開口したストロー形状に成形されたものである。中空糸11の内径及び長さは、対象となる細胞に対応させて適宜選択されるが、内径は数百μm程度であり、長さは数cm程度である。
【0044】
注射針12は、本発明における第1管体の一実施態様である。注射針12は一般的なものであり、ポリウレタン樹脂製のカヌラがハブに固定されている。注射針12のカヌラの先端開口に中空糸11の一端が挿入されて、医療用接着剤により中空糸11と注射針12固定されている。これにより、中空糸11の内部空間が注射針12のカヌラの内部空間と連続する。この連続した内部空間は、後述されるように吸引圧が付与されて気体又は液体の流路となる。本明細書において、注射針12と連結された側の中空糸11の端が第1端21と称され、注射針12から延出された先端が中空糸11の第2端22と称される。
【0045】
図1から図3に示されるように、芯材13は、中空糸11及び注射針12の軸線101と同じ方向に長尺の部材であり、全体として、概ね細長な円柱形状をなしている。芯材13は、軸線101に沿って小径部24と大径部25とが並設された形状であり、その小径部24と大径部25との境界に段差部26が形成されている。
【0046】
小径部24の外径は、中空糸11の内径とほぼ同等乃至若干小さい。したがって、小径部24は、中空糸11に挿通可能である。小径部24の軸線101方向に沿った長さは、中空糸11の長さより若干長い。したがって、小径部24が中空糸11に挿通された状態において、小径部24は、中空糸11の両端である第1端21及び第2端22からそれぞれ突出し得る。この小径部24が、本発明における芯材の芯部に相当する。
【0047】
大径部25の外径は、中空糸11の内径より大きく、かつ注射針12の内径とほぼ同等乃至若干小さい。したがって、大径部25は、注射針12に挿通可能であるが、中空糸11に挿通することはできない。大径部25の軸線101に沿った長さは、注射針12より若干長い。
【0048】
小径部24と大径部25との境界に形成された段差部26は、軸線101と直交する方向へ拡がる平面を形成している。この段差部26をなす平面は、小径部24の外径と大径部25の外径との差となる寸法幅で環状をなしている。後述されるように、段差部26には、中空糸11の第1端21が当接し得る。
【0049】
芯材13は、小径部24が中空糸11に挿通された状態において、中空糸11が容易に折れ曲がらないように支持できる剛性を有する。芯材13の素材は特に限定されないが、例えば医療用ステンレスから芯材13が作製されうる。
【0050】
[細胞用デバイス10の製造方法]
以下に、前述された細胞用デバイス10の製造方法が説明される。
【0051】
細胞用デバイス10の製造方法は、主として、芯材13を注射針12に挿通して、段差部26を注射針12内の所定位置に位置決めする第1ステップ(S1)と、芯材13の小径部24を中空糸11に挿通させるようにして、中空糸11の第1端21を注射針12に挿入し、第1端21を段差部26に当接させて位置決めする第2ステップ(S2)と、中空糸11の第1端21側と注射針12との間に接着剤27を充填して、中空糸11と注射針12とを結合する第3ステップ(S3)と、からなる。
【0052】
図4に示されるように、第1ステップ(S1)において、注射針12の所定の位置まで芯材13を挿入する。この芯材13の挿入において、注射針12において中空糸11の第1端21と接続される側へ芯材13の段差部26の平面が向くようにする。つまり注射針12の先端から芯材13の小径部24が突出するように、芯材13を注射針12に挿入する。
【0053】
注射針12に対して芯材13を挿入する位置は、注射針12の内部空間において、中空糸11の第1端21が位置決めされるべき位置に、芯材13の段差部26が配置されるように決定される。図4には治具が現れていないが、注射針12に芯材13が挿入された状態において、注射針12のカヌラ側及び芯材13の小径部24側を上側とし、注射針12のハブ側及び芯材13の大径部25側を下側として、注射針12及び芯材13を不図示の治具上に起立させる。この治具によって、注射針12と芯材13との配置が決定され、図4に示されるように、注射針12の先端付近に芯材13の段差部26が配置される。
【0054】
図5に示されるように、第2ステップ(S2)において、注射針12の先端側へ中空糸11の第1端21を挿入する。芯材13の小径部24に沿って中空糸11を注射針12側へスライドさせると、中空糸11の第1端21が注射針12に挿入される。つまり、芯材13が、注射針12へ挿入される中空糸11のガイドとして用いられる。
【0055】
図6に示されるように、注射針12に挿入された中空糸11の第1端21は、注射針12の内部空間に配置された芯材13の段差部26と当接する。この当接によって、注射針12へ中空糸11を挿入する位置が決定される。つまり、芯材13が、注射針12へ挿入される中空糸11の第1端21を位置決めする治具として用いられる。前述されたように、芯材13の段差部26は上側を向いているので、中空糸11は、第1端21が段差部26に支持された状態で静止する。
【0056】
図7に示されるように、第3ステップ(S3)において、中空糸11の第1端21側と注射針12との間に接着剤27を充填する。中空糸11の外周に沿って注射針12との間に隙間があれば、その隙間に接着剤27を充填すればよいし、中空糸11の外周に沿って注射針12との間に隙間が殆ど無ければ、中空糸11の外周に沿った注射針12との境界に接着剤27を塗布するように充填する。この接着剤27は、いわゆる医療用接着剤を使用する。これにより、中空糸11と注射針12とが結合される。
【0057】
[細胞凍結保存方法]
以下に、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法が説明される。
【0058】
以下に説明される細胞凍結保存方法は、主として、細胞浮遊液から細胞41及び培養液42を中空糸11の内部空間へ吸引する第1ステップ(S11)と、細胞41及び培養液42を内包した中空糸11をガラス化溶液43に浸漬する第2ステップ(S12)と、中空糸11を注射針12から分離する第3ステップ(S13)と、分離された中空糸11を冷却する第4ステップ(S14)と、の4つのステップを有する。
【0059】
細胞用デバイス10の使用に際して、芯材13を中空糸11から脱抜する。前述されたように、注射針12の内部空間において、芯材13の段差部26が中空糸11の第1端21と当接しているので、注射針12のハブ側から芯材13を引き抜く。これにより、中空糸11内に細胞41を吸引することができる状態となる。一方、使用までの間においては、芯材13によって中空糸11が支持されることにより、中空糸11が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸11が折れ曲がることが防止される。
【0060】
図8に示されるように、芯材13が脱抜された後の細胞用デバイス10は、チューブ14を介して注射筒15と接続される。
【0061】
チューブ14は、シリコーンゴム製である。チューブ14の内径及び外径は、注射針12及び注射筒15に対応させて適宜選択される。図8においては、チューブ14が、その長さ方向に対して一部が省略されて現されているが、チューブ14の長さは、注射針12と注射筒15とを作業者が両手に分けて持って操作できるに適した長さであり、通常、数十cm程度である。チューブ14の可撓性は、注射針12と注射筒15とを作業者が両手に分けて持って操作した際にチューブ14が座屈せず、かつチューブ14の内部空間が後述される吸引に適した負圧にされた際にチューブ14が内部空間を閉塞して潰れない程度である。チューブ14の一端は、ジョイントなどを介して注射針12のハブと接続されている。これにより、注射針12の内部空間は、チューブ14の内部空間と連続されている。このジョイントなどは、公知のものを適宜用いればよいので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0062】
なお、チューブ14は、可撓性を有するものであれば、例えば天然ゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などをチューブ形状に成形したものが適宜用いられる。チューブ14の長さは特に限定されないが、注射針12と注射筒15とを別々に操作するに適した長さが採用され、50〜1000mm程度であれば、一方の手で注射針12を操作しながら他方の手で注射筒15を操作できるの好適である。
【0063】
注射筒15の構成は一般的である。シリンジ31は略円筒形状であり、その先端側が縮径されて円筒形状の取付部33が形成されている。取付部33の両端は開口しており、一端がシリンジ31の内部空間と通ずる。つまり、取付部33の内部空間は、シリンジ31の内部空間と外部とを連続させるポートを形成する。この取付部33にチューブ14の他端が外嵌されて、シリンジ31の内部空間とチューブ14の内部空間とが連続されている。シリンジ31の基端側は開口されており、その基端側からプランジャ32が内部空間へ挿入されている。プランジャ32は、シリンジ31の内部空間の軸線101方向の長さより長く、シリンジ31の内部空間の最奥部まで挿入された状態で、プランジャ32の一部がシリンジ31の基端から外部へ突出している。
【0064】
各図には現れていないが、プランジャ32の先端にはガスケットが接続されている。ガスケットは、ゴムなどの弾性素材からなる円柱体であり、シリンジ31の内部空間に気密に嵌合されて、プランジャ32とともにシリンジ31の内部空間を軸線101に沿った方向へスライド移動可能である。プランジャ32が延びる方向は、ガスケットのスライド方向と一致する。ガスケットがシリンジ31の基端側へ移動されると、シリンジ31の内部空間が負圧となって、取付部33から気体又は液体が内部空間へ吸引される。
【0065】
なお、注射筒15は吸引具の一例であって、マイクロポンプなどの他の吸引具が用いられてもよいが、コストや廃棄の観点からは、吸引具としてディスポーザブルの注射筒15が好ましい。また、注射針12と注射筒15との接続は特に限定されず、本実施形態に示されるようにチューブ14を介して接続されても、注射筒15に注射針12が直接に接続されてもよい。また、注射筒15が用いられずに、チューブ14に対して口などから吸引圧が付与されてもよい。
【0066】
凍結保存すべき細胞41は培養液42中に浮遊している。培養液42は、培地皿などの容器に保持されているが、図9〜図14では容器が省略されて複数個の細胞41及び培養液42の一部のみが示されている。培養液42中には複数個の細胞41が浮遊しており、これら細胞41は、同一個体から採取された単一種類のものである。
【0067】
培養液42は、細胞41を浮遊させるに適した液体であり、細胞41の種類及び目的により選択され、例えば、精子細胞や卵母細胞、初期胚を培養する場合には、TCM−199培地、RPMI−1640培地、DMEM培地、MEM培地、α−MEM培地、IMDM培地などが挙げられる。また、ヒトの体外受精を目的とする培地として、HUCUM培地(ニプロ社製)が挙げられる。ウシの体外受精を目的とする培地として、TCM−199培地、SOF培地、CR1培地、KSOM培地、IVF100培地、IVF110S培地、IVMD101培地、IVD101培地(機能性ペプチド研社製)が挙げられる。ブタの体外受精を目的とする培地として、NCSU培地、PZM−5培地(機能性ペプチド研社製)が挙げられる。
【0068】
図9に示されるように、第1ステップ(S11)において、細胞用デバイス10の注射針12を片手で持って操作し、中空糸11の第2端22を培養液42中に挿入する。そして、他方の手で注射筒15を操作してプランジャ32をシリンジ31から引き出し、中空糸11内に微量の培養液42を吸引する。
【0069】
つづいて、図10に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を培養液42から取り出し、再び注射筒15を操作して微量の空気を中空糸11の内部空間へ吸引する。これにより、中空糸11に吸引された微量の培養液42は、中空糸11の内部空間を注射針12側へ若干移動する。
【0070】
つづいて、図11に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を再び培養液42中に挿入し、顕微鏡を用いて培養液42中の細胞41を確認しながら、中空糸11の第2端22を細胞41に近接させる。そして、注射筒15を操作して、中空糸11の内部空間へ細胞41を培養液42と共に吸引する。これにより、中空糸11の内部空間において、細胞41及び培養液42が存在する液体層44より第1端21側に、微量の気体層45が形成される。つまり、中空糸11の内部空間には、第1端21側から第2端22側へ向かって順次、培養液42のみの層、気体層45、細胞41及び培養液42を含む液体層44がそれぞれ形成される。
【0071】
つづいて、図12に示されるように、中空糸11の第2端22を培養液42から取り出さずに、第2端22を他の細胞41に近接させ、注射筒15を操作して、中空糸11の内部空間へ他の細胞41を培養液42と共に吸引する。中空糸11の内部空間へ吸引する細胞41の個数は特に限定されないが、本実施形態では、3個の細胞41が培養液42とともに中空糸11の内部空間へ吸引されて液体層44が形成されている。
【0072】
中空糸11の内部空間へ3個の細胞41を吸引した後、図13に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を培養液42から取り出し、注射筒15を操作して、微量の空気を中空糸11の内部空間へ吸引する。これにより、中空糸11内の液体層44及び気体層45は、中空糸11の内部空間を注射針12側へ若干移動する。
【0073】
つづいて、図14に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を再び培養液42中に挿入し、注射筒15を操作して、中空糸11の内部空間へ培養液42を吸引する。これにより、液体層44に対して第2端22側に、微量の気体層46が形成される。
【0074】
第2ステップ(S12)において、図15に示されるように、内部空間に細胞41及び培養液42を内包する中空糸11をガラス化溶液43に浸す。前述されたように、中空糸11の孔は、細胞41を通過させないが、培養液42やガラス化溶液43を通過させるので、中空糸11の内部空間に細胞41が内包された状態が維持されながら、中空糸11の内部空間の培養液42や細胞41の細胞内液などがガラス化溶液43に置換される。
【0075】
また、中空糸11内の培養液42をガラス化溶液43に置換する際に、細胞41に対して緩慢な条件を選択したい場合には、ガラス化溶液43として、培養液42が適度な濃度勾配で混合された複数種のものが用いられる。このような濃度勾配は、例えば2〜5種類に設定される。複数種のガラス化溶液43が用いられる場合には、予め調整された各ガラス化溶液43が準備されており、図15に示されるようにして、複数種のガラス化溶液43に中空糸11が順次浸漬される。
【0076】
なお、細胞の凍結保存方法として、高濃度の凍害保護液中での急速冷凍と、低濃度の凍害保護液での通常冷凍とが挙げられる。高濃度の凍害保護液中での急速冷凍は、ガラス化とも称され、また、凍害保護液はガラス化溶液とも称される。細胞内保護タイプのガラス化溶液として、ジメチルスルホキシド(DMSO)含有液、エチレングリコール含有液、プロパンジオール含有液などが挙げられる。細胞外保護タイプのガラス化溶液として、シュークロース含有液、トレハロース含有液、フィルコールコンレイ溶液が挙げられる。
【0077】
図16に示されるように、第3ステップ(S13)において、細胞41を内包する中空糸11を注射針12から分離する。この分離は、中空糸11を、細胞41が含まれる液体層44及び気体層45より第1端21側において、鋏などで切断することによって行う。これにより、細胞用デバイス10から、細胞41及びガラス化溶液43を内包する中空糸11が分離される。
【0078】
図には示されていないが、第4ステップ(S14)において、細胞用デバイス10から分離された中空糸11を液体窒素又は液体ヘリウムに投入して冷却する。これにより、中空糸11の内部空間に内包された細胞41がガラス化される。そして、ガラス化された細胞41を含有する中空糸11は、適当な容器内に投入してフリーザ内に保存する。
【0079】
なお、前述のように中空糸11の内部空間に内包されて凍結保存された細胞41は、中空糸11と共に加温液に浸すことにより解凍される。解凍を終えた後、中空糸11の第1端21又は第2端22から内部空間へ排出圧を付与すると、中空糸11の内部空間から細胞41が外部へ排出される。また、中空糸11の内部空間に細胞41を内包させた状態で培養を行うのであれば、解凍後に、細胞41を内包する中空糸11を所望の培地中に投入すればよい。
【0080】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係る細胞用デバイス10及び細胞凍結保存方法によれば、各々の内部空間が流路として連続されて中空糸11と注射針12とが接続されているので、注射筒15により流路に吸引圧を付与すると、中空糸11の内部空間へ細胞41を取り込むことができる。この中空糸11の孔は、細胞41を通過させないが、培養液42やガラス化溶液43などを通過させるので、中空糸11の内部空間に細胞41が内包された状態を維持しながら、中空糸11の内部空間の培養液42や細胞41の細胞内液などをガラス化溶液43に置換することができる。
【0081】
また、使用に際して脱抜可能な芯材13が中空糸11に挿通されているので、使用までの間においては、芯材13によって中空糸11が支持される。これにより、中空糸11が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸11が折れ曲がることが防止される。
【0082】
また、芯材13は、中空糸11の両端である第1端21及び第2端22から突出されるので、中空糸11の両端が芯材13によって支持され、中空糸11の両端の破損が防止される。
【0083】
また、芯材13は、中空糸11の第1端21に当接する段差部26を有するので、中空糸11の第1端21側から芯材13を挿入すると、芯材13の段差部36が中空糸11の第1端21と当接して、芯材13の挿入限界が決定される。また、芯材13の脱抜が、第1端21側から引き抜く向きに限定されるので、中空糸11の第1端21側を鉛直上向きにしていれば、自重によって芯材13が中空糸11から脱落することがない。
【0084】
また、本実施形態に係る細胞用デバイス10の製造方法によれば、注射針12に挿通された芯材13の小径部24が、注射針12へ挿入される中空糸11のガイドとして機能する。また、注射針12内に位置決めされた芯材13の段差部36が、注射針12に挿入された中空糸11の第1端21と当接して、注射針12へ中空糸11を挿入する位置が決定されるので、芯材13が、注射針12へ挿入される中空糸11の第1端21を位置決めする治具として機能するとともに、製造後においては、芯材13により中空糸11が支持されて、中空糸11の折れ曲がりや破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる細胞用デバイス10の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、中空糸11、注射針12及び芯材13の分解斜視図である。
【図3】図3は、芯材13の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】図5は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】図6は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】図7は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】図8は、細胞用デバイス10にチューブ14を介して注射筒15が接続された状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図10】図10は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図11】図11は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図12】図12は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図13】図13は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図14】図14は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図15】図15は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図16】図16は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・細胞用デバイス
11・・・中空糸
12・・・注射針(管体)
13・・・芯材
21・・・第1端
24・・・小径部(芯部)
26・・・段差部
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の取り扱いに好適に用いられ、中空糸の内部空間に細胞を内包しうる細胞用デバイスに関し、特に中空糸の破損防止に適した手段を有する細胞用デバイスに関する。
【0002】
また、本発明は、中空糸の破損防止に適した芯材を、中空糸を管体に結合するに適した治具として用いる細胞用デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの不妊治療や動物のクローンの分野において、卵子や初期胚などの生殖細胞を培養したり凍結保存することがある。この培養や凍結保存において、生殖細胞を培地から取り出したり、凍結保存容器に対して出し入れしたりすることがある。このような生殖細胞の取り扱い作業は、ピペットの如くストロー形状の器具を用いて、生殖細胞をストロー内へ吸い込む或いはストロー内から吐き出すことにより行われている。この他にも、膜状又は板状のデバイス(例えば、北里サプライ社製、クライオトップ)が用いられたり、ループ形状のナイロン糸(例えば、北里サプライ社製、クライオループ)が用いられたりしている。
【0004】
特許文献1には、初期胚の遺伝情報の判定のために使用される器具が開示されている。この器具は、移植前初期胚から細胞を取り出すために使用され、ピペットに類似するパイプ材(2)を有する。このパイプ材(2)は、細いガラス管であり、その先端に鋭利な突き刺し部(3)が形成されている。パイプ材(2)の他端はマイクロマニピュレータ用の微量吸引及び排出が可能な操作器具に接続されている。初期胚にパイプ材(2)が突き刺され、初期胚内の細胞がパイプ材(2)の内部に吸引される。
【0005】
特許文献2には、中空糸内部で細胞を培養又は保存するための器具が開示されている。この器具は、細胞懸濁液流通管(1)に中空糸固定部(3)を介して中空糸(4)の束が固定され、その中空糸(4)の束の先端が硬化性樹脂(5)で封止されている。中空糸(4)の束が培地に浸漬された状態で細胞懸濁液流通管(1)が吸引され、細胞懸濁液流通管(1)及び中空糸(4)の束に培地が満たされる。その後、細胞懸濁液流通管(1)を通じて中空糸(4)の束に細胞懸濁液が注入されると、中空糸(4)の内部に細胞が堆積される。
【0006】
特許文献3には、生体組織マトリックスへ細胞を播種する方法が開示されている。この方法においては、播種すべき細胞が充填された生体分解性中空糸が生体組織片に埋め込まれ、その生体組織片において中空糸から細胞が放出される。
【0007】
【特許文献1】特開2003−33200号公報
【特許文献2】特開2003−339368号公報
【特許文献3】特開2007−168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、生殖細胞の培養において培地を交換する度に、従来のストロー形状の器具を用いて、培地などに対して生殖細胞の取出し及び吐き出しを繰り返す作業は煩雑であるという問題がある。
【0009】
また、生殖細胞を凍結保存する際に、例えばガラス化により凍結保存するのであれば、濃度勾配を有する複数のガラス化平衡液に生殖細胞を順次浸漬するが、その際に、従来のストロー形状の器具を用いて、複数種のガラス化平衡液に対して生殖細胞の注入及び取出しを繰り返す作業は煩雑であるという問題がある。さらには、凍結保存された生殖細胞を解凍して培地に注入する際にも、同様の煩雑さが問題となる。
【0010】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、細胞の取り扱いに好適であり、特に中空糸が用いられることによって、凍結保存や培養に際しての細胞の取り扱いに適し、かつ中空糸の破損防止に適した手段を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、中空糸の破損防止に適した芯材を、中空糸を管体に結合するに適した治具として用いて細胞用デバイスを簡易に製造できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る細胞用デバイスは、両端が開口された中空糸と、上記中空糸の第1端に接続されて、その内部空間が当該中空糸の内部空間と連続する流路を構成する管体と、上記中空糸に挿通された芯材と、を具備する。上記芯材は、使用に際して上記中空糸から脱抜可能である。
【0013】
本発明における細胞としては、生殖細胞が挙げられる。生殖細胞とは、始原生殖細胞、精子、精子細胞、卵子、卵母細胞、初期胚を含む包括的な概念である。ここで、精子細胞とは、精子となる過程における前駆細胞をいう。卵母細胞とは、卵子となる過程における前駆細胞をいう。初期胚とは、着床前の受精卵をいう。なお、本発明に係る細胞用デバイスは、生殖細胞以外にも、ES細胞のような細胞の取り扱いに用いられてもよい。
【0014】
中空糸とは、細胞を通過させないが、水や電解質、タンパク質などを通過させうる径の孔を複数有する膜がストロー形状に成形されたものをいう。中空糸を形成する膜として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースアセテート、再生セルロースなどが挙げられる。この膜が有する細孔径は、ナノメートルオーダーのものであればよい。また、膜の厚みは、前述の細胞を観察できる程度の透明性を中空糸が有するためには、好ましくは0.5〜30μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。
【0015】
中空糸の内径は、対象となる細胞を内包することができる程度が選択され、好ましくは20〜1000μmであり、さらに好ましくは50〜500μmである。
【0016】
中空糸の長さは、数個の細胞を内包することが可能であり、後述される気泡を形成したりするに適した長さが選択され、好ましくは1〜100mmであり、さらに好ましくは10〜40mmである。中空糸の長さがこの範囲内であれば、卵母細胞、卵子及び初期胚であれば1〜数十個程度を内包することができ、始原生殖細胞、精子及び精子細胞であれば数十〜数万個程度を内包することができ、かつ、その内包された複数個の生殖細胞に対して中空糸の両開口側に気泡を形成することができる。
【0017】
第1管体は、中空糸と接続可能なものであって、接続された中空糸を支持する剛性を有する。第1管体は、その内部空間が中空糸の内部空間と連続して気体又は液体の流路となり得るものである。第1管体の素材は特に限定されないが、例えば、ステンレスなどの金属や、プラスチック、ガラスなどが挙げられる。
【0018】
第1管体の形状は、特に限定されず、円管、角管などを採用しうるが、通常、中空糸が円筒形状となるので、円管であることが好ましい。
【0019】
第1管体の外径又は内径は、中空糸との接続を考慮して選択される。例えば、第1管体に対して中空糸を外嵌させるのであれば、第1管体の外径は中空糸の内径と同程度としてもよい。逆に、中空糸に対して第1管体を外嵌させるのであれば、第1管体の内径は中空糸の外径と同程度としてもよい。また、筒形状のジョイントを用いて中空糸と第1管体とを接続するのであれば、第1管体の外径は中空糸の外径と同程度としてもよい。
【0020】
第1管体の長さは、ハンドリングを考慮して選択され、50〜1000mm程度がハンドリングに優れるので好適である。
【0021】
中空糸と第1管体との接続は、内嵌や外嵌、ジョイントによる機械的な接続構造が選択されてもよく、さらに医療用接着剤などを用いて接着固定が行われてもよい。
【0022】
芯材は、中空糸に挿抜可能なものであって、中空糸に挿通された状態において、中空糸が折れ曲がらないように支持する程度の剛性を有する。芯材の素材は特に限定されないが、例えば、ステンレスなどの金属やプラスチックなどが挙げられる。なお、芯材は、中空糸のみに挿通されるものであっても、中空糸及び第1管体に挿通されるものであってもよい。
【0023】
芯材の形状は、特に限定されず、円柱や角柱などの棒材が採用されうるが、通常、中空糸が円筒形状となるので、円柱形状の棒材であることが好ましい。また、芯材の外径は、中空糸への挿通を考慮して選択され、中空糸の内径より若干小さい外径のものが好適である。
【0024】
細胞用デバイスの使用に際して、芯材を中空糸から脱抜する。これにより、中空糸内に細胞を吸引することができる。一方、使用までの間においては、芯材によって中空糸が支持されることにより、中空糸が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸が折れ曲がることが防止される。
【0025】
中空糸から芯材を抜き取った後、例えば、顕微鏡などによって培地中の細胞を確認して、細胞用デバイスの第1管体を操作して、第1管体に接続された中空糸を培地中に挿入し、中空糸の先端を細胞に近接させる。そして、適当な吸引具を用いて、第1管体を通じて中空糸の内部空間を負圧とすると、その負圧が吸引圧となって、中空糸の先端から細胞が培養液と共に中空糸の内部空間へ吸引される。複数個の細胞を中空糸の内部空間へ吸引する場合には、この作業を繰り返す。
【0026】
培地から取り出した細胞を凍結保存する場合には、中空糸から細胞を取り出すことなく、中空糸に内包された状態の細胞を凍結保存溶液に浸漬する。前述のように、中空糸の孔は、細胞を通過させないが、培養液や凍結保存溶液などを通過させるので、中空糸の内部空間に細胞が内包された状態を維持しながら、中空糸の内部空間の培養液や細胞の細胞内液などを凍結保存溶液に置換することができる。そして、その中空糸を液体窒素などに浸漬することによって、中空糸内の細胞を凍結する。
【0027】
凍結された細胞を内包する中空糸を保存するために、中空糸において細胞が存在する一部分を第1管体から切断して、中空糸を第1管体から分離する。そして、分離された中空糸をディープフリーザなどで冷凍保存する。また、中空糸を第1管体から切断することなく、中空糸が接続された第1管体を吸飲具等から取り外して、中空糸及び第1管体を冷凍保存に適した容器などに封入してディープフリーザなどで冷凍保存してもよい。
【0028】
なお、前述のように中空糸の内部空間に内包されて凍結保存された細胞は、中空糸と共に加温液に浸すことにより解凍される。解凍後に、中空糸の一端から内部空間へ排出圧を付与すると、中空糸の内部空間から細胞が外部へ排出される。また、中空糸の内部空間に細胞を内包させた状態で培養を行うのであれば、解凍された中空糸を所望の培地中に投入すればよい。
【0029】
(2) 上記芯材は、中空糸の両端から突出されたものであってもよい。
【0030】
これにより、中空糸の両端が芯材によって支持されるので、その両端の破損が防止される。
【0031】
(3) 上記中空糸の第1端に対して上記管体が外嵌されて、上記中空糸と上記管体とが接続され、上記芯材は、上記中空糸の第1端に当接する段差部を有するものであってもよい。
【0032】
中空糸の第1端側から芯材を挿入すると、芯材の段差部が中空糸の第1端と当接して、芯材の挿入限界が決定される。また、芯材の脱抜が、第1端側から引き抜く向きに限定されるので、中空糸の第1端側を鉛直上向きにしていれば、自重によって芯材が中空糸から脱落することがない。
【0033】
(4) 本発明に係る細胞用デバイスの製造方法は、両端が開口された中空糸に挿通可能な芯部と、当該中空糸の第1端と当接し得る段差部とを有する芯材を、当該中空糸を挿入可能な管体に挿通して、その段差部を当該管体内の所定位置に位置決めする第1ステップと、上記芯材の芯部を中空糸に挿通させるようにして、当該中空糸の第1端を上記管体に挿入し、当該第1端を上記芯材の段差部に当接させて、上記管体に対して当該中空糸を位置決めする第2ステップと、上記中空糸の第1端側と上記管体との間に接着剤を充填して、上記中空糸と上記管体とを結合する第3ステップと、を含む。
【0034】
第1ステップにおいて、管体の所定の位置まで芯材を挿入する。この芯材の挿入において、管体において中空糸の第1端と接続される側に芯材の段差部が向くようにする。管体に対して芯材を挿入する位置は、管体の内部空間において、中空糸の第1端が位置決めされるべき位置に、芯材の段差部が配置されるように決定される。このような管体の芯材との配置は、適当な治具などによって決められてもよい。
【0035】
第2ステップにおいて、芯材の芯部を中空糸に挿通させるようにして、芯部に沿って中空糸を移動させながら、管体に中空糸の第1端を挿入する。管体に挿入された中空糸の第1端は、管体の内部空間に配置された芯材の段差部と当接する。この当接によって、管体へ中空糸を挿入する位置が決定される。このようにして、芯材が、管体へ挿入される中空糸のガイドとして用いられ、また、中空糸の第1端を位置決めする治具として用いられる。
【0036】
第3ステップにおいて、中空糸の第1端側と管体との間に接着剤を充填する。中空糸と管体との間に隙間があれば、その隙間に接着剤を充填する。中空糸と管体との間に隙間が殆ど無ければ、中空糸と管体との境界に接着剤を塗布するように充填する。この接着剤は、いわゆる医療用接着剤を使用する。これにより、管体と中空糸とが結合される。製造後の細胞用デバイスは、芯材により中空糸が支持されて、中空糸の折れ曲がりや破損が防止される。この芯材は、使用に際して中空糸から引き抜かれる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る細胞用デバイスによれば、各々の内部空間が流路として連続されて第1管体と中空糸とが接続されているので、吸引具により流路に吸引圧を付与すると、中空糸の内部空間へ細胞を取り込むことができる。この中空糸の孔は、細胞を通過させないが、培養液や凍結保存溶液などを通過させるので、中空糸の内部空間に細胞が内包された状態を維持しながら、中空糸の内部空間の培養液や細胞の細胞内液などを凍結保存溶液に置換することができる。
【0038】
また、使用に際して脱抜可能な芯材が中空糸に挿通されているので、使用までの間においては、芯材によって中空糸が支持される。これにより、中空糸が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸が折れ曲がることが防止される。
【0039】
また、本発明に係る細胞用デバイスの製造方法によれば、管体に挿通された芯材が、管体へ挿入される中空糸のガイドとして機能する。また、管体内に位置決めされた芯材の段差部が、管体に挿入された中空糸の第1端と当接して、管体へ中空糸を挿入する位置が決定されるので、芯材が、管体へ挿入される中空糸の第1端を位置決めする治具として機能するとともに、製造後においては、芯材により中空糸が支持されて、中空糸の折れ曲がりや破損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0041】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態にかかる細胞用デバイス10の全体構成を示す斜視図である。図2は、中空糸11、注射針12及び芯材13の分解斜視図である。図3は、芯材13の全体構成を示す斜視図である。図4から図7は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。図8は、細胞用デバイス10にチューブ14を介して注射筒15が接続された状態を示す斜視図である。図9〜図16は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。なお、図9〜図16には、細胞用デバイス10の中空糸11、注射針12の一部のみが示されており、チューブ14及び注射筒15は各図に示されていない。
【0042】
[細胞用デバイス10]
図1及び図2に示されるように、細胞用デバイス10は、主として、中空糸11と、注射針12と、芯材13と、を有する。
【0043】
中空糸11は、細胞を通過させないが、水や電解質、タンパク質などを通過させうる径の孔を複数有する膜が、両端が開口したストロー形状に成形されたものである。中空糸11の内径及び長さは、対象となる細胞に対応させて適宜選択されるが、内径は数百μm程度であり、長さは数cm程度である。
【0044】
注射針12は、本発明における第1管体の一実施態様である。注射針12は一般的なものであり、ポリウレタン樹脂製のカヌラがハブに固定されている。注射針12のカヌラの先端開口に中空糸11の一端が挿入されて、医療用接着剤により中空糸11と注射針12固定されている。これにより、中空糸11の内部空間が注射針12のカヌラの内部空間と連続する。この連続した内部空間は、後述されるように吸引圧が付与されて気体又は液体の流路となる。本明細書において、注射針12と連結された側の中空糸11の端が第1端21と称され、注射針12から延出された先端が中空糸11の第2端22と称される。
【0045】
図1から図3に示されるように、芯材13は、中空糸11及び注射針12の軸線101と同じ方向に長尺の部材であり、全体として、概ね細長な円柱形状をなしている。芯材13は、軸線101に沿って小径部24と大径部25とが並設された形状であり、その小径部24と大径部25との境界に段差部26が形成されている。
【0046】
小径部24の外径は、中空糸11の内径とほぼ同等乃至若干小さい。したがって、小径部24は、中空糸11に挿通可能である。小径部24の軸線101方向に沿った長さは、中空糸11の長さより若干長い。したがって、小径部24が中空糸11に挿通された状態において、小径部24は、中空糸11の両端である第1端21及び第2端22からそれぞれ突出し得る。この小径部24が、本発明における芯材の芯部に相当する。
【0047】
大径部25の外径は、中空糸11の内径より大きく、かつ注射針12の内径とほぼ同等乃至若干小さい。したがって、大径部25は、注射針12に挿通可能であるが、中空糸11に挿通することはできない。大径部25の軸線101に沿った長さは、注射針12より若干長い。
【0048】
小径部24と大径部25との境界に形成された段差部26は、軸線101と直交する方向へ拡がる平面を形成している。この段差部26をなす平面は、小径部24の外径と大径部25の外径との差となる寸法幅で環状をなしている。後述されるように、段差部26には、中空糸11の第1端21が当接し得る。
【0049】
芯材13は、小径部24が中空糸11に挿通された状態において、中空糸11が容易に折れ曲がらないように支持できる剛性を有する。芯材13の素材は特に限定されないが、例えば医療用ステンレスから芯材13が作製されうる。
【0050】
[細胞用デバイス10の製造方法]
以下に、前述された細胞用デバイス10の製造方法が説明される。
【0051】
細胞用デバイス10の製造方法は、主として、芯材13を注射針12に挿通して、段差部26を注射針12内の所定位置に位置決めする第1ステップ(S1)と、芯材13の小径部24を中空糸11に挿通させるようにして、中空糸11の第1端21を注射針12に挿入し、第1端21を段差部26に当接させて位置決めする第2ステップ(S2)と、中空糸11の第1端21側と注射針12との間に接着剤27を充填して、中空糸11と注射針12とを結合する第3ステップ(S3)と、からなる。
【0052】
図4に示されるように、第1ステップ(S1)において、注射針12の所定の位置まで芯材13を挿入する。この芯材13の挿入において、注射針12において中空糸11の第1端21と接続される側へ芯材13の段差部26の平面が向くようにする。つまり注射針12の先端から芯材13の小径部24が突出するように、芯材13を注射針12に挿入する。
【0053】
注射針12に対して芯材13を挿入する位置は、注射針12の内部空間において、中空糸11の第1端21が位置決めされるべき位置に、芯材13の段差部26が配置されるように決定される。図4には治具が現れていないが、注射針12に芯材13が挿入された状態において、注射針12のカヌラ側及び芯材13の小径部24側を上側とし、注射針12のハブ側及び芯材13の大径部25側を下側として、注射針12及び芯材13を不図示の治具上に起立させる。この治具によって、注射針12と芯材13との配置が決定され、図4に示されるように、注射針12の先端付近に芯材13の段差部26が配置される。
【0054】
図5に示されるように、第2ステップ(S2)において、注射針12の先端側へ中空糸11の第1端21を挿入する。芯材13の小径部24に沿って中空糸11を注射針12側へスライドさせると、中空糸11の第1端21が注射針12に挿入される。つまり、芯材13が、注射針12へ挿入される中空糸11のガイドとして用いられる。
【0055】
図6に示されるように、注射針12に挿入された中空糸11の第1端21は、注射針12の内部空間に配置された芯材13の段差部26と当接する。この当接によって、注射針12へ中空糸11を挿入する位置が決定される。つまり、芯材13が、注射針12へ挿入される中空糸11の第1端21を位置決めする治具として用いられる。前述されたように、芯材13の段差部26は上側を向いているので、中空糸11は、第1端21が段差部26に支持された状態で静止する。
【0056】
図7に示されるように、第3ステップ(S3)において、中空糸11の第1端21側と注射針12との間に接着剤27を充填する。中空糸11の外周に沿って注射針12との間に隙間があれば、その隙間に接着剤27を充填すればよいし、中空糸11の外周に沿って注射針12との間に隙間が殆ど無ければ、中空糸11の外周に沿った注射針12との境界に接着剤27を塗布するように充填する。この接着剤27は、いわゆる医療用接着剤を使用する。これにより、中空糸11と注射針12とが結合される。
【0057】
[細胞凍結保存方法]
以下に、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法が説明される。
【0058】
以下に説明される細胞凍結保存方法は、主として、細胞浮遊液から細胞41及び培養液42を中空糸11の内部空間へ吸引する第1ステップ(S11)と、細胞41及び培養液42を内包した中空糸11をガラス化溶液43に浸漬する第2ステップ(S12)と、中空糸11を注射針12から分離する第3ステップ(S13)と、分離された中空糸11を冷却する第4ステップ(S14)と、の4つのステップを有する。
【0059】
細胞用デバイス10の使用に際して、芯材13を中空糸11から脱抜する。前述されたように、注射針12の内部空間において、芯材13の段差部26が中空糸11の第1端21と当接しているので、注射針12のハブ側から芯材13を引き抜く。これにより、中空糸11内に細胞41を吸引することができる状態となる。一方、使用までの間においては、芯材13によって中空糸11が支持されることにより、中空糸11が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸11が折れ曲がることが防止される。
【0060】
図8に示されるように、芯材13が脱抜された後の細胞用デバイス10は、チューブ14を介して注射筒15と接続される。
【0061】
チューブ14は、シリコーンゴム製である。チューブ14の内径及び外径は、注射針12及び注射筒15に対応させて適宜選択される。図8においては、チューブ14が、その長さ方向に対して一部が省略されて現されているが、チューブ14の長さは、注射針12と注射筒15とを作業者が両手に分けて持って操作できるに適した長さであり、通常、数十cm程度である。チューブ14の可撓性は、注射針12と注射筒15とを作業者が両手に分けて持って操作した際にチューブ14が座屈せず、かつチューブ14の内部空間が後述される吸引に適した負圧にされた際にチューブ14が内部空間を閉塞して潰れない程度である。チューブ14の一端は、ジョイントなどを介して注射針12のハブと接続されている。これにより、注射針12の内部空間は、チューブ14の内部空間と連続されている。このジョイントなどは、公知のものを適宜用いればよいので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0062】
なお、チューブ14は、可撓性を有するものであれば、例えば天然ゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などをチューブ形状に成形したものが適宜用いられる。チューブ14の長さは特に限定されないが、注射針12と注射筒15とを別々に操作するに適した長さが採用され、50〜1000mm程度であれば、一方の手で注射針12を操作しながら他方の手で注射筒15を操作できるの好適である。
【0063】
注射筒15の構成は一般的である。シリンジ31は略円筒形状であり、その先端側が縮径されて円筒形状の取付部33が形成されている。取付部33の両端は開口しており、一端がシリンジ31の内部空間と通ずる。つまり、取付部33の内部空間は、シリンジ31の内部空間と外部とを連続させるポートを形成する。この取付部33にチューブ14の他端が外嵌されて、シリンジ31の内部空間とチューブ14の内部空間とが連続されている。シリンジ31の基端側は開口されており、その基端側からプランジャ32が内部空間へ挿入されている。プランジャ32は、シリンジ31の内部空間の軸線101方向の長さより長く、シリンジ31の内部空間の最奥部まで挿入された状態で、プランジャ32の一部がシリンジ31の基端から外部へ突出している。
【0064】
各図には現れていないが、プランジャ32の先端にはガスケットが接続されている。ガスケットは、ゴムなどの弾性素材からなる円柱体であり、シリンジ31の内部空間に気密に嵌合されて、プランジャ32とともにシリンジ31の内部空間を軸線101に沿った方向へスライド移動可能である。プランジャ32が延びる方向は、ガスケットのスライド方向と一致する。ガスケットがシリンジ31の基端側へ移動されると、シリンジ31の内部空間が負圧となって、取付部33から気体又は液体が内部空間へ吸引される。
【0065】
なお、注射筒15は吸引具の一例であって、マイクロポンプなどの他の吸引具が用いられてもよいが、コストや廃棄の観点からは、吸引具としてディスポーザブルの注射筒15が好ましい。また、注射針12と注射筒15との接続は特に限定されず、本実施形態に示されるようにチューブ14を介して接続されても、注射筒15に注射針12が直接に接続されてもよい。また、注射筒15が用いられずに、チューブ14に対して口などから吸引圧が付与されてもよい。
【0066】
凍結保存すべき細胞41は培養液42中に浮遊している。培養液42は、培地皿などの容器に保持されているが、図9〜図14では容器が省略されて複数個の細胞41及び培養液42の一部のみが示されている。培養液42中には複数個の細胞41が浮遊しており、これら細胞41は、同一個体から採取された単一種類のものである。
【0067】
培養液42は、細胞41を浮遊させるに適した液体であり、細胞41の種類及び目的により選択され、例えば、精子細胞や卵母細胞、初期胚を培養する場合には、TCM−199培地、RPMI−1640培地、DMEM培地、MEM培地、α−MEM培地、IMDM培地などが挙げられる。また、ヒトの体外受精を目的とする培地として、HUCUM培地(ニプロ社製)が挙げられる。ウシの体外受精を目的とする培地として、TCM−199培地、SOF培地、CR1培地、KSOM培地、IVF100培地、IVF110S培地、IVMD101培地、IVD101培地(機能性ペプチド研社製)が挙げられる。ブタの体外受精を目的とする培地として、NCSU培地、PZM−5培地(機能性ペプチド研社製)が挙げられる。
【0068】
図9に示されるように、第1ステップ(S11)において、細胞用デバイス10の注射針12を片手で持って操作し、中空糸11の第2端22を培養液42中に挿入する。そして、他方の手で注射筒15を操作してプランジャ32をシリンジ31から引き出し、中空糸11内に微量の培養液42を吸引する。
【0069】
つづいて、図10に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を培養液42から取り出し、再び注射筒15を操作して微量の空気を中空糸11の内部空間へ吸引する。これにより、中空糸11に吸引された微量の培養液42は、中空糸11の内部空間を注射針12側へ若干移動する。
【0070】
つづいて、図11に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を再び培養液42中に挿入し、顕微鏡を用いて培養液42中の細胞41を確認しながら、中空糸11の第2端22を細胞41に近接させる。そして、注射筒15を操作して、中空糸11の内部空間へ細胞41を培養液42と共に吸引する。これにより、中空糸11の内部空間において、細胞41及び培養液42が存在する液体層44より第1端21側に、微量の気体層45が形成される。つまり、中空糸11の内部空間には、第1端21側から第2端22側へ向かって順次、培養液42のみの層、気体層45、細胞41及び培養液42を含む液体層44がそれぞれ形成される。
【0071】
つづいて、図12に示されるように、中空糸11の第2端22を培養液42から取り出さずに、第2端22を他の細胞41に近接させ、注射筒15を操作して、中空糸11の内部空間へ他の細胞41を培養液42と共に吸引する。中空糸11の内部空間へ吸引する細胞41の個数は特に限定されないが、本実施形態では、3個の細胞41が培養液42とともに中空糸11の内部空間へ吸引されて液体層44が形成されている。
【0072】
中空糸11の内部空間へ3個の細胞41を吸引した後、図13に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を培養液42から取り出し、注射筒15を操作して、微量の空気を中空糸11の内部空間へ吸引する。これにより、中空糸11内の液体層44及び気体層45は、中空糸11の内部空間を注射針12側へ若干移動する。
【0073】
つづいて、図14に示されるように、注射針12を操作して中空糸11の第2端22を再び培養液42中に挿入し、注射筒15を操作して、中空糸11の内部空間へ培養液42を吸引する。これにより、液体層44に対して第2端22側に、微量の気体層46が形成される。
【0074】
第2ステップ(S12)において、図15に示されるように、内部空間に細胞41及び培養液42を内包する中空糸11をガラス化溶液43に浸す。前述されたように、中空糸11の孔は、細胞41を通過させないが、培養液42やガラス化溶液43を通過させるので、中空糸11の内部空間に細胞41が内包された状態が維持されながら、中空糸11の内部空間の培養液42や細胞41の細胞内液などがガラス化溶液43に置換される。
【0075】
また、中空糸11内の培養液42をガラス化溶液43に置換する際に、細胞41に対して緩慢な条件を選択したい場合には、ガラス化溶液43として、培養液42が適度な濃度勾配で混合された複数種のものが用いられる。このような濃度勾配は、例えば2〜5種類に設定される。複数種のガラス化溶液43が用いられる場合には、予め調整された各ガラス化溶液43が準備されており、図15に示されるようにして、複数種のガラス化溶液43に中空糸11が順次浸漬される。
【0076】
なお、細胞の凍結保存方法として、高濃度の凍害保護液中での急速冷凍と、低濃度の凍害保護液での通常冷凍とが挙げられる。高濃度の凍害保護液中での急速冷凍は、ガラス化とも称され、また、凍害保護液はガラス化溶液とも称される。細胞内保護タイプのガラス化溶液として、ジメチルスルホキシド(DMSO)含有液、エチレングリコール含有液、プロパンジオール含有液などが挙げられる。細胞外保護タイプのガラス化溶液として、シュークロース含有液、トレハロース含有液、フィルコールコンレイ溶液が挙げられる。
【0077】
図16に示されるように、第3ステップ(S13)において、細胞41を内包する中空糸11を注射針12から分離する。この分離は、中空糸11を、細胞41が含まれる液体層44及び気体層45より第1端21側において、鋏などで切断することによって行う。これにより、細胞用デバイス10から、細胞41及びガラス化溶液43を内包する中空糸11が分離される。
【0078】
図には示されていないが、第4ステップ(S14)において、細胞用デバイス10から分離された中空糸11を液体窒素又は液体ヘリウムに投入して冷却する。これにより、中空糸11の内部空間に内包された細胞41がガラス化される。そして、ガラス化された細胞41を含有する中空糸11は、適当な容器内に投入してフリーザ内に保存する。
【0079】
なお、前述のように中空糸11の内部空間に内包されて凍結保存された細胞41は、中空糸11と共に加温液に浸すことにより解凍される。解凍を終えた後、中空糸11の第1端21又は第2端22から内部空間へ排出圧を付与すると、中空糸11の内部空間から細胞41が外部へ排出される。また、中空糸11の内部空間に細胞41を内包させた状態で培養を行うのであれば、解凍後に、細胞41を内包する中空糸11を所望の培地中に投入すればよい。
【0080】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係る細胞用デバイス10及び細胞凍結保存方法によれば、各々の内部空間が流路として連続されて中空糸11と注射針12とが接続されているので、注射筒15により流路に吸引圧を付与すると、中空糸11の内部空間へ細胞41を取り込むことができる。この中空糸11の孔は、細胞41を通過させないが、培養液42やガラス化溶液43などを通過させるので、中空糸11の内部空間に細胞41が内包された状態を維持しながら、中空糸11の内部空間の培養液42や細胞41の細胞内液などをガラス化溶液43に置換することができる。
【0081】
また、使用に際して脱抜可能な芯材13が中空糸11に挿通されているので、使用までの間においては、芯材13によって中空糸11が支持される。これにより、中空糸11が他の部材に接触したりして外力が加わって、中空糸11が折れ曲がることが防止される。
【0082】
また、芯材13は、中空糸11の両端である第1端21及び第2端22から突出されるので、中空糸11の両端が芯材13によって支持され、中空糸11の両端の破損が防止される。
【0083】
また、芯材13は、中空糸11の第1端21に当接する段差部26を有するので、中空糸11の第1端21側から芯材13を挿入すると、芯材13の段差部36が中空糸11の第1端21と当接して、芯材13の挿入限界が決定される。また、芯材13の脱抜が、第1端21側から引き抜く向きに限定されるので、中空糸11の第1端21側を鉛直上向きにしていれば、自重によって芯材13が中空糸11から脱落することがない。
【0084】
また、本実施形態に係る細胞用デバイス10の製造方法によれば、注射針12に挿通された芯材13の小径部24が、注射針12へ挿入される中空糸11のガイドとして機能する。また、注射針12内に位置決めされた芯材13の段差部36が、注射針12に挿入された中空糸11の第1端21と当接して、注射針12へ中空糸11を挿入する位置が決定されるので、芯材13が、注射針12へ挿入される中空糸11の第1端21を位置決めする治具として機能するとともに、製造後においては、芯材13により中空糸11が支持されて、中空糸11の折れ曲がりや破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる細胞用デバイス10の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、中空糸11、注射針12及び芯材13の分解斜視図である。
【図3】図3は、芯材13の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】図5は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】図6は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】図7は、細胞用デバイス10の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】図8は、細胞用デバイス10にチューブ14を介して注射筒15が接続された状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図10】図10は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図11】図11は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図12】図12は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図13】図13は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図14】図14は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図15】図15は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【図16】図16は、細胞用デバイス10を用いた細胞凍結保存方法の手順を示す模式図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・細胞用デバイス
11・・・中空糸
12・・・注射針(管体)
13・・・芯材
21・・・第1端
24・・・小径部(芯部)
26・・・段差部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口された中空糸と、
上記中空糸の第1端に接続されて、その内部空間が当該中空糸の内部空間と連続する流路を構成する管体と、
上記中空糸に挿通された芯材と、を具備し、
上記芯材は、使用に際して上記中空糸から脱抜可能である細胞用デバイス。
【請求項2】
上記芯材は、中空糸の両端から突出されたものである請求項1に記載の細胞用デバイス。
【請求項3】
上記中空糸の第1端に対して上記管体が外嵌されて、上記中空糸と上記管体とが接続され、
上記芯材は、上記中空糸の第1端に当接する段差部を有するものである請求項1又は2に記載の細胞用デバイス。
【請求項4】
両端が開口された中空糸に挿通可能な芯部と、当該中空糸の第1端と当接し得る段差部とを有する芯材を、当該中空糸を挿入可能な管体に挿通して、その段差部を当該管体内の所定位置に位置決めする第1ステップと、
上記芯材の芯部を中空糸に挿通させるようにして、当該中空糸の第1端を上記管体に挿入し、当該第1端を上記芯材の段差部に当接させて、上記管体に対して当該中空糸を位置決めする第2ステップと、
上記中空糸の第1端側と上記管体との間に接着剤を充填して、上記中空糸と上記管体とを結合する第3ステップと、を含む細胞用デバイスの製造方法。
【請求項1】
両端が開口された中空糸と、
上記中空糸の第1端に接続されて、その内部空間が当該中空糸の内部空間と連続する流路を構成する管体と、
上記中空糸に挿通された芯材と、を具備し、
上記芯材は、使用に際して上記中空糸から脱抜可能である細胞用デバイス。
【請求項2】
上記芯材は、中空糸の両端から突出されたものである請求項1に記載の細胞用デバイス。
【請求項3】
上記中空糸の第1端に対して上記管体が外嵌されて、上記中空糸と上記管体とが接続され、
上記芯材は、上記中空糸の第1端に当接する段差部を有するものである請求項1又は2に記載の細胞用デバイス。
【請求項4】
両端が開口された中空糸に挿通可能な芯部と、当該中空糸の第1端と当接し得る段差部とを有する芯材を、当該中空糸を挿入可能な管体に挿通して、その段差部を当該管体内の所定位置に位置決めする第1ステップと、
上記芯材の芯部を中空糸に挿通させるようにして、当該中空糸の第1端を上記管体に挿入し、当該第1端を上記芯材の段差部に当接させて、上記管体に対して当該中空糸を位置決めする第2ステップと、
上記中空糸の第1端側と上記管体との間に接着剤を充填して、上記中空糸と上記管体とを結合する第3ステップと、を含む細胞用デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−148457(P2010−148457A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331227(P2008−331227)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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