説明

細胞膜の水移動機能を応用した木材用乾燥機

【課題】 従来の木材用乾燥機では、高温、減圧、高周波などの細胞破壊工法である。これらの乾燥工法で仕上がった乾燥木材は、細胞がボロボロに破壊されており、年数の経過とともに強度が著しく低減されて、大規模災害などには極めて危険な建築材となる。更に、これらの乾燥機は燃料を多量に消費するためランニングコストが極めて高い。同時にCO2を多量に放出する地球温暖化の助長的乾燥機である。しかも、短時間乾燥に研究努力が傾注されて高額化し、小規模あるいは零細規模の製材会社には採用が困難なものである。よって、低価格で購入でき、ランニングコストが低く、細胞を破壊させない良質乾燥材が生産でき、地球環境に優しい乾燥機が望まれてきた。
【解決手段】 木材細胞の細胞皮膜の水チャネルを開かせて液胞内の水を細胞皮膜外に移動させながら、木材細胞で出来ている乾燥機と、乾燥機の中に入れたグリーン材(被乾燥木材)の双方の細胞を同化させることにより、グリーン材から水を移動させて、更に水をグリーン材の外部に放出させ、次に放出された水が乾燥機躯体の細胞に移動(侵入)して、最後に乾燥機躯体から乾燥機外部に水を放出させることにより、結果としてグリーン材を乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞膜の水移動機能を応用し、自然が持つ環境を維持させながら木材を、低コストで、短時間で、割れ・ヒビ・変色が発生しない乾燥を実現させたバイオ技術によるエコロジカル木材用乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の木材乾燥技術には、高温乾燥法、蒸気式乾燥法の他、蒸気加熱乾燥、蒸煮加熱乾燥、煙道乾燥、燻煙乾燥、薬品乾燥、高周波(マイクロ波)乾燥、蒸気・高周波複合乾燥、高周波加熱式真空乾燥、真空減圧乾燥、赤外線加熱乾燥、熱板加熱乾燥などがあり、いずれも細胞を極度に破壊させるものである。
【0003】
低価格の乾燥機では、低温除湿乾燥機があるが、割れやヒビは発生しにくいものの、含水率が100%以上のスギ材では約1ヶ月の乾燥時間を要するため、生産性が極めて悪く、乾燥コストが安いとは言えない。
【0004】
短時間乾燥技術では、蒸気・高周波複合乾燥、高周波加熱式真空乾燥、真空減圧乾燥があるが、一連の装置を購入する設備投資が1億円を超えるものもあり極めて高く、林業が求めている広範な使用や、汎用性、市場性に乏しい。更に、物理的に強制減圧や高周波を使うため材中の細胞が極度に破壊、損傷されるため、材の長期的保存・耐久性・強度が著しく損なわれる。
【0005】
広く一般的に導入されている蒸気式高温乾燥機があるが、乾燥処理工程にて、最初に80℃前後の高温蒸気で木材細胞をふやかし、更に100℃以上で高温処理するため、木材細胞は完全に破壊、損傷されるため、材の長期的保存・耐久性・強度が著しく損なわれ、地震などの大規模災害の多い日本のような国では特に採用すべきでない乾燥技術と言える。更に、燃料として重油、灯油及び電力を多量に使用するため、CO2を大量に発生させて地球のCO2削減に逆行させるものであり、地球の温暖化を広範囲に助長するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安い外国産輸入材が大部分を占める日本の木材市場の中で、国産材の普及が極めて低く、更に、人件費の高騰などから間伐の実施が停止されており、森林の荒廃が日本全国で問題となっている。この問題を解決させるためは、国産材及びそれらの間伐材による高付加価値製品の開発が必要であり、そのための基本的条件である木材用乾燥機の購入価格の低額化が第1の課題である。
【0007】
従来の乾燥技術、特に最も広く使用されている蒸気式高温乾燥技術では、燃料に重油、灯油及び電力を多量に使用し、ランニングコストが高額となり、よって、乾燥コストの低額化が困難である。よって、ランニングコストを著しく低額化させる乾燥技術が第2の課題である。
【0008】
従来の乾燥技術では、蒸気、高温、減圧、高周波などの物理的工法を駆使しながら木材細胞を極度に破壊しながら乾燥させるため、木造住宅では40年間以上の維持は困難である。木材住宅や建材において、100年、200年の長期に使用することが出来、大規模災害にも強い、強度のある木材が出来る乾燥技術が第3の課題である。
【0009】
従来の乾燥技術では、重油、灯油及び電力を多量に使用するため、CO2が多量に排出され、地球の温暖化を助長している。地球環境に優しいエコ技術をもつ乾燥技術が第4の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の乾燥機は、細胞膜の水移動機能を応用するため、躯体はすべて木材であることと、乾燥機躯体の内部温度を30℃から50℃に温度調整をするだけの小規模ヒーターが躯体内に設置されるだけの簡易型であるため、超低価格で製造が可能となり、木材用乾燥機の購入価格の低額化という第1の課題を解決した。
【0011】
特に最も広く使用されている蒸気式高温乾燥では、燃料に重油、灯油及び電力を多量に使用し、燃料コストが月額で20万円以上にもなり、ランニングコストを著しく高揚している。本発明の乾燥機は電力コストが月額2万円前後となり、ランニングコストの低額化という第2の課題を解決した。
【0012】
本発明の乾燥機では、高温、減圧、高周波などの物理的破壊工法を一切使用せず、バイオ技術、つまり、木材細胞の細胞皮膜の水チャネルを開かせて液胞内の水を細胞皮膜外に移動させながら木材を乾燥させる技術であることから、水移動後の乾燥木材は、細胞の破壊がなく、よって、木材住宅や建材において、200年以上の長期に使用することが可能である。よって、大規模災害にも強い、強度のある木材が出来る乾燥技術という第3の課題を解決した。
【0013】
本発明の乾燥機は、木材細胞で出来ている乾燥機と、乾燥機の中に入れたグリーン材の双方の細胞を同体化させることにより、グリーン材から水を移動させて、更に水を外部に出させ、次にその水が乾燥機躯体の細胞に移動(侵入)して、最後に乾燥機躯体から乾燥機外部に水を移動(放出)させることにより、結果としてグリーン材を乾燥させるものであり、従来技術で使用する重油、灯油及び多量の電力は使用しないため、CO2が排出されることなく、地球環境に優しいエコ技術をもつ乾燥技術という第4の課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
秋田県、秋田県立大学等が本発明の乾燥機の乾燥機能を確認する目的で、乾燥テストを次の要領で実施した。

【0015】
木材及び木材製品の含水率については、JAS規格で使用目的別に適正値が定められている。平成13年に規格が改正され、寸法仕上げ材についてはSD20,SD15(それぞれ含水率20%、15%以下)の2基準とし、寸法の安定化を図ることとなった。本乾燥機の乾燥テストでは、乾燥機躯体内の温度を細胞破壊しない低温の40℃に設定し、3日間テスト、さらに2日間延長した5日間テストの乾燥を実施した。材の厚さが12mmの場合、平均含水率は7.8%であり、材の厚さが21mmの場合、平均含水率8.6%という顕著な効果が立証された。更に、割れやヒビ、反り、変色が一切見られなかった。
【0016】
日本の人工林面積の約50%を占めるスギ林から、病虫獣害等に起因する材の変色や腐朽による材質劣化被害が顕在化し、全国的な問題になっている。その一つとして心材部位が黒化する黒心材被害が各地で多発しており、材色の欠点や含水率が著しく高く乾燥困難であるなどのため,低品質材に評価されている。乾燥が困難である黒心材は、本発明の乾燥機により、他の材と同様な低含水率の乾燥が得られるという結果も立証された。
【0017】
スギ12mm厚の乾燥テスト結果;平均含水率 7.1%

3日後の第1回結果で平均含水率18.3%を達成したが、水移動は進行し続けるため、5日後の平均含水率は7.1%となった。
【0018】
スギ21mm厚の乾燥テスト結果;平均含水率 6.6%

3日後の第1回結果で平均含水率43.3%を達成したが、水移動は進行し続けるため、5日後の平均含水率は6.6%となった。
【発明の実施するための最良の形態】
【0019】
請求項1で述べている如く、本発明の乾燥機は、木材細胞の細胞皮膜の水チャネルを開かせて液胞内の水を細胞皮膜外に移動させながら木材を乾燥させる。その為には乾燥機躯体を構成する木材は、乾燥処理を行わない生材である必要があり、伐採直後の生材が最適である。
【0020】
請求項2で述べている如く、木材細胞で出来ている乾燥機と、乾燥機の中に入れたグリーン材の双方の細胞を同化させることにより、グリーン材から水を移動させて、更に水をグリーン材の外部に放出させ、次に放出された水が乾燥機躯体の細胞に移動(侵入)して、最後に乾燥機躯体から乾燥機外部に水を移動(放出)させることにより、結果としてグリーン材を乾燥させる。つまり、乾燥機躯体の木材と、グリーン材とが、同じ細胞内の環境に置くことにより、細胞同士が同化させることとなり、水をグリーン材から乾燥機躯体に、更に躯体から躯体外部へ移動(放出)させることが出来る。その環境を作る為には、請求項3で述べる如く、乾燥機躯体の内部温度を30℃から50℃に温度調整をすることである。最適な温度は40℃である。
【0021】
また、グリーン材の水移動(放出)を積極的に促すためには乾燥機躯体内の湿度調整を行う必要がある。この湿度調整を行うために、請求項4で述べる如く、乾燥機躯体の上部2ヶ所、対角線上に小窓を作る必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材細胞の細胞皮膜の水チャネルを開かせて液胞内の水を細胞皮膜外に移動させながら木材を乾燥させることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項2】
木材細胞で出来ている乾燥機と、乾燥機の中に入れたグリーン材(被乾燥木材)の双方の細胞を理論上、同化させることにより、グリーン材から水を移動させて、更に水をグリーン材の外部に放出させ、次に放出された水が乾燥機躯体の細胞に移動(侵入)して、最後に乾燥機躯体から乾燥機外部に水を放出させることにより、結果としてグリーン材を乾燥させることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項3】
請求項1及び2において、乾燥機躯体の内部温度を30℃から50℃に温度調整をすることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項4】
請求項1及び2において、乾燥機躯体の内部に複数個の小窓を設置して湿度調整をすることを特徴とする木材用乾燥機。

【公開番号】特開2009−109170(P2009−109170A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303680(P2007−303680)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(501410757)日本不燃木材株式会社 (10)
【出願人】(595161773)
【出願人】(504193712)
【出願人】(503095723)
【Fターム(参考)】