説明

細胞貯蔵培地

本発明は特に貯蔵中に細胞の生存率が維持される特にヒト細胞の貯蔵方法、細胞貯蔵用の細胞培地並びにこのような細胞貯蔵用細胞培地の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯蔵中に細胞の生存率が維持される、特にヒト細胞の貯蔵方法、細胞貯蔵用細胞培地及び細胞の貯蔵のためのこのような細胞培地の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結保存は長期間にわたり生細胞を貯蔵するためにしばしば使用される方法である。凍結保存技術はここ数十年の間に絶えず開発され、改善されてきた。例えば臓器から単離した直後又は凍結の前もしくは凍結保存の後の細胞の解凍の際又はその後には、細胞を短期間貯蔵することが必要になる。こうした貯蔵の後に細胞を生体、特にヒトに再びそのまま投与することがしばしば必要である。この細胞投与は例えば細胞の静脈内適用によって行うことができる。特に凍結保存により貯蔵した細胞のヒトへの適用は、とりわけ臨床適用、特に治療的適用として利用することができる。例えば治療的適用のためにヒト肝細胞移植物を静脈内適用することができる。ところが凍結過程及び再解凍過程、並びに先行の又は直後のin vitro貯蔵は、特に臨床適用の場合、貯蔵される細胞の生存率及び生存細胞数に関してなお問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の根底にあるのは、動物細胞、とりわけヒト細胞、特に肝細胞又は肝細胞移植物の貯蔵のための、簡単に製造できるなるべく安価な細胞培地を提供するという技術的課題である。とりわけ凍結保存に関連して、凍結の前及び/又は解凍の後には細胞を貯蔵しなければならない。そこで本発明の根底にあるのは、細胞の生存率及び生存細胞数の損失をなるべく少なくして、動物細胞、とりわけヒト細胞、中でも肝細胞又は肝細胞移植物の短時間貯蔵を可能にし、そのため周知の細胞培地の代替物となりうる細胞培地を提供するという技術的課題である。
【0004】
凍結保存に関連して、貯蔵及び再解凍のための細胞培地は周知である。しかしこの細胞培地は5〜20%のウシ胎児血清(FCS)のような、ヒトへの適用、特に静脈内適用が法的に許されず、又は不適当でさえある成分を含む。そこでさらに本発明の根底には、細胞、とりわけヒト細胞、特に肝細胞又は肝細胞移植物の生存率及び生存細胞数の僅かな損失で動物、特にヒトへの細胞の安全な適用を可能にする培地を提供するという技術的課題がある。
【0005】
例えばCustodiol(登録商標)は、初めに凍結保存され、解凍された細胞、例えば肝細胞の貯蔵のための細胞培地として効果的に使用され、臓器全体の臓器移植用の保存液として開発されたものである。ところがCustodiol(登録商標)はヒトの静脈内適用には法的に許されていない。そこでさらに本発明の根底には、ヒトへの静脈内適用が許可される、従って解凍の後に手数のかかる、生存細胞数を減少させる洗浄工程なしで、細胞をこの細胞培地でヒトに静脈内適用することができる、特に凍結保存に関連した細胞の短期貯蔵のための細胞培地を提供するという技術的課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は基本的には特許請求の範囲に記載の動物又はヒト細胞の短期間貯蔵のための方法を提供することによって、根底にある技術的課題を解決する。特に塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム及びクエン酸ナトリウムを含む塩溶液及び/又はリンガー乳酸塩溶液及び/又はリン酸緩衝化生理食塩水を含む塩溶液から選ばれた塩溶液、及び/又は高分子糖類、特にヒドロキシエチルデンプンの水溶液、並びにグルコース、さらには血清アルブミン及び/又は血漿を含む、液体細胞培地に細胞を収容し、この細胞培地中で細胞を貯蔵する方法を提供することが好ましい。
【0007】
好ましい実施形態では、動物細胞は哺乳動物細胞である。例えばブタ、ウシ又はマウス細胞が挙げられる。とりわけヒト細胞が挙げられる。本発明によれば、細胞は細胞懸濁液及び細胞移植物をも意味する。細胞は1つの種類であってもよいが、様々な種類の細胞の組成物又は共存培養物を使用することもできる。
【0008】
本発明に基づき動物細胞は治療的適用のための細胞であることが好ましい。別の好ましい実施形態では動物細胞はin vitro培養のための細胞である。動物細胞は例えば肝実質細胞、膵島、軟骨細胞(chondrocyte)、軟骨細胞(cartilage cell)、神経細胞、角化細胞又はリンパ球であってよい。細胞培地に貯蔵するための細胞はとりわけ肝細胞、特に肝実質細胞である。
【0009】
本発明に関連して肝細胞とは、主として肝実質細胞からなる細胞混合物を意味する。但し様々な数量分のリンパ球、内皮細胞及びその他の非実質細胞群を含んでもよい。
【0010】
栓球(血小板ともいう)の解凍及び/又は貯蔵は本発明から除外する。栓球は本発明の意味の動物細胞ではない。
【0011】
本発明に関連して短時間貯蔵とは、24時間以下、特に10時間以下、とりわけ5時間以下、特に3時間以下の期間にわたる、本発明に基づく培地でのin vitro貯蔵を意味する。
【0012】
凍結保存とは0℃以下、特に−20℃〜−200℃での細胞のたいてい長期の貯蔵を意味する。凍結は通常1℃/分の速度で行われる。
【0013】
本発明に関連して細胞培地(培地、解凍培地又は栄養培地ともいう)とは、特に液状の水溶液を意味する。細胞培地はなるべく多い生存細胞数、即ちなるべく低い細胞死亡率及びなるべく高い生存能力又は生存率(当業者にはviabilityとしても知られている)を維持する生細胞のin vitro貯蔵のために利用される。
【0014】
本発明に基づき使用される細胞培地の成分は、動物生体とりわけヒト生体への適用、特に静脈内適用が法的に許可されているものであることが好ましい。本発明によれば本発明に基づく培地で貯蔵した後の細胞を臨床適用、特に治療的適用、又はin vitro試験のために使用することができる。
【0015】
本発明に関連して塩溶液とは、1つ又は複数の塩の水溶液を意味する。本発明に基づき好ましい塩溶液は塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム及びクエン酸ナトリウムを含み、それらの塩は水に溶解されている。利用される水は注射用の無菌水、とりわけ脱イオン水である。
【0016】
本発明に基づき好ましい塩溶液はComposol(登録商標)又はComposol(登録商標)の組成に相当する溶液である。Composol(登録商標)は塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム六水和物及びクエン酸ナトリウムの水溶液である。173mmol/lのナトリウム、5mmol/lのカリウム、1.5mmol/lのマグネシウム、98mmol/lの塩化物、10.9mmol/lのクエン酸塩、27mmol/lの酢酸塩及び23mmol/lのグルコン酸塩を含み、とりわけ上記からなるものが好ましい。
【0017】
そこで本発明に基づき塩溶液は0.45〜0.60重量%、特に0.53重量%の塩化ナトリウム、0.45〜0.55重量%、とりわけ0.50重量%のグルコン酸ナトリウム、0.20〜0.25重量%、とりわけ0.22重量%の酢酸ナトリウム、0.03〜0.04重量%、とりわけ0.037重量%の塩化カリウム、0.025〜0.035重量%、とりわけ0.031重量%の塩化マグネシウム六水和物及び0.31〜0.33重量%、とりわけ0.32重量%のクエン酸ナトリウムを含み、とりわけ上記からなることが好ましい。塩溶液は7.0〜7.4、とりわけ7.2のpH値を有することが好ましい。
【0018】
別の実施形態では、塩溶液はリンガー乳酸塩溶液である。リンガー乳酸塩溶液の慣用の組成は当業者に周知である。リンガー乳酸塩溶液は塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムを含む水溶液である。本発明に基づき使用されるリンガー乳酸塩溶液は7.0〜7.4、とりわけ7.2のpH値を有する。
【0019】
別の実施形態では塩溶液はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)である。PBSの慣用の組成は当業者に周知である。本発明に基づき使用されるPBSは7.0〜7.4、とりわけ7.2のpH値を有する。
【0020】
別の実施形態では少なくとも1つの高分子糖類の水溶液が培地の成分である。本発明に基づく高分子糖類は例えばデキストラン、さらにはデキストラン溶液、例えばパーファデックス(Perfadex)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)及びヒドロキシエチルデンプンの誘導体である。本発明に基づき高分子糖類としてヒドロキシエチルデンプンを使用することが好ましい。
【0021】
本発明に基づき固形の又は水溶液としての細胞培地にグルコースを加える。
【0022】
本発明に基づき血清アルブミンは細胞培地に溶解され、又は液状で加えられる。血清アルブミンは例えばウシ胎児血清(FCS)、ウシ血清アルブミン(BSA)又はヒト血清アルブミン(HAS)である。本発明によれば、ヒト血清アルブミンが好ましい。これはヒトへの静脈内適用が許可されているからである。
【0023】
別の実施形態では血清アルブミンを血漿に替え、又は血漿を補充する。本発明に基づきヒト血漿、とりわけ自己血漿が好ましい。特に血漿及び/又はHSAは凍結保護剤としてとりわけ単独で又は他の周知の凍結保護剤、特にDMSOと組み合わせて使用される。
【0024】
別の好ましい実施形態では、本発明に基づき使用される培地はアミノ酸、ホルモン、ビタミン、プロビタミン及び抗アポトーシス作用物質から選ばれる少なくとも1つの別の成分を含む。
【0025】
当業者は本発明の教示によって、培地組成物の成分を本発明に従って本発明に基づく濃度で使用するように促されるが、上記の成分を使用分野に応じてその専門知識に従って選択するであろう。
【0026】
本発明に基づく方法はpH値6.4〜8、とりわけ7.0〜7.4、特に7.2の上記の細胞培地で行うことが好ましい。
【0027】
細胞は凍結保存から解凍した後に本発明に基づく細胞培地で洗浄し、保存培地及び本発明に基づく細胞培地から分離し、その上で新しい本発明に基づく貯蔵用細胞培地に収容することが好ましい。その分離は遠心して行うことが好ましい。
【0028】
本方法は2〜40℃の温度で行うことが好ましい。細胞培地は2〜40℃の温度を有することが好ましい。特に本方法を4℃で行い、さらに/又は使用する培地が4℃の温度を有することが好ましい。別の好ましい変法では本方法を10℃で行い、さらに/又は使用する培地が10℃の温度を有する。別の特に好ましい変法では、本方法を25℃で行い、さらに/又は使用する培地が25℃の温度を有する。別の特に好ましい変法では、本方法を37℃で行い、さらに/又は使用する培地が37℃の温度を有する。
【0029】
特に、塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム及びクエン酸ナトリウム並びにグルコース、さらには血清アルブミン及び/又は血漿を含み、上記の成分が水に溶解されている液体細胞培地中で、特に凍結保存の後に解凍された、動物又はヒト細胞を、短時間貯蔵するための特殊な細胞培地も、もちろん本発明の対象である。
【0030】
好ましい細胞培地は塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム六水和物及びクエン酸ナトリウム並びにグルコース、さらには血清アルブミン及び/又は血漿からなり、上記の成分が水に溶解されているものである。特に好ましい細胞培地は0.45〜0.60重量%塩化ナトリウム、0.45〜0.55重量%のグルコン酸ナトリウム、0.20〜0.25重量%の酢酸ナトリウム、0.03〜0.04重量%の塩化カリウム、0.025〜0.035重量%の塩化マグネシウム六水和物及び0.31〜0.33重量%のクエン酸ナトリウム並びにグルコース及びさらに血清アルブミン及び/又は血漿を含み、上記の成分は水に溶解されているものである。
【0031】
細胞培地は0.01〜0.5重量%のグルコース、とりわけ0.1〜0.2重量%のグルコースを含むことが好ましい。
【0032】
本発明に基づき細胞培地はヒト血清アルブミンを含むことが好ましい。ヒト血清アルブミンは本発明に基づきヒト血漿、特に自己血漿に置き換えることができる。好ましい実施形態では培地は0.5〜50重量%の血清アルブミン、とりわけ3〜5重量%の血清アルブミンを含む。別の好ましい実施形態では培地は0.5〜50重量%の血漿、とりわけ3〜5重量%の血漿を含む。
【0033】
本発明に基づく細胞培地は6.4〜8、とりわけ7.0〜7.4、特に7.2のpH値を有することが好ましい。
【0034】
本発明に基づき本発明の細胞培地の成分は動物生体、とりわけヒト生体への適用、特に静脈内適用が法的に許可されているものであることが好ましい。
【0035】
また本発明に基づき本発明の方法及び/又は本発明の細胞培地の本発明に基づく実施形態を組み合せることが好ましい。
【0036】
また本発明は凍結保存の後に解凍された動物細胞の、特に本発明方法による短時間貯蔵のための上記の本発明細胞培地の使用を包含する。
【実施例】
【0037】
特殊な凍結用バッグ/凍結用試験管由来の凍結保存した肝細胞を使用した。個別の細胞調製物の現存する凍結用試験管の数は研究の規模に比して十分でなかったので、それらはもっぱら結果の比較のために採用した。すべての作業段階を無菌条件で行った。細胞培地を加える前に細胞懸濁液を完全に解凍した。凍結用試験管の解凍はバッグの解凍と時間的に関係なく行った。仕込んだ細胞に細胞培地を徐々に加えた。
【0038】
比較可能な結果を得るために、少なくとも2人、場合によっては3人の係員が異なる試験を平行して行った。
【0039】
以下の解凍培地を調製した。
培地1: Custodiol(登録商標)(比較例)
培地2: ヒドロキシエチルデンプン(HES)+1g/lグルコース+4%HSA(本発明に基づく培地)
培地3: リンガー乳酸塩溶液+1g/lグルコース+4%HSA(本発明に基づく培地)
培地4: Composol(登録商標)+1g/lグルコース+4%HSA(本発明に基づく培地)
培地5: リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)+1g/lグルコース+4%HAS(本発明に基づく培地)
培地6: ヒト血漿(比較例)
【0040】
継代(解凍したバッグ)ごとにそれぞれ約50mlの細胞培地が必要であった。ヒト血漿を37℃の温水浴で解凍した。
【0041】
3つの試験で培地を37℃の温水浴で少なくとも15分間熱処理した(=“warm”)。2つの試験で細胞培地を冷蔵庫で少なくとも15分間冷却した(=“cold”)。
【0042】
溶液に従ってラベル付けした6本の50ml試験管を仕込んで、室温で保管した。
【0043】
“warm”試験では18℃及び50gで5分間遠心し、“cold”試験では4℃及び50gで遠心した。
【0044】
凍結バッグをアルミニウムカセットから注意深く取り出した。凍結懸濁液を2〜5分、絶えず振りながら、氷晶がもはや見えなくなるまで解凍した。全操作が要した時間は5分以内であった。
【0045】
黄色いキャップをバッグから除き、ベニャミックス(Benjamix)の穿刺針を隔膜に刺し通した。凍結バッグのベニャミックスに60ml注射器を接続し、60mlの細胞懸濁液を取り出した。
【0046】
用意した6本の試験管にそれぞれ10mlの細胞懸濁液を移した。さらにそれぞれ40mlの該当する細胞培地を徐々に加えた。全操作の所要時間は5分以内であった。
【0047】
遠心の後に細胞の洗浄を行った。パスツール・ピペットで上清を吸い出した。細胞ペレットを注意深く振って5mlの該当する細胞培地に完全に再懸濁した。
【0048】
細胞数及び生存率に従って細胞数計測を行い、各細胞数計測に従って肝細胞培養物を仕込んだ。
【0049】
3時間の総貯蔵時間の間に60分ごとに上記の2つの段階を反復した。
【0050】
凍結保存の前に生存率40%以上の肝細胞だけを使用した。異なる個別細胞調製物(バッチ)を用いて試験を少なくとも3回繰り返した。その際バッチごとに少なくとも1個のバッグを解凍した。使用したそれぞれのバッチの凍結用試験管の解凍の結果を比較に採用した。
【0051】
4つの個別細胞調製物(バッチ)を解凍液の影響に関してテストした。解凍後の生存率及び生存細胞数(LZZ)並びに貯蔵時の生存率及び生存細胞数の維持というパラメータに関して懸濁液でテストした。肝細胞移植物の場合、培地及び遠心時の温度を4℃に固定した。バッチHH142による試験は、一方では“warm”で行い、次に“cold”で繰り返した(図1及び図2を参照)。その他の評価のために2つの試験の平均値をとり、HH142と称した。
【0052】
個々の結果を図3及び4に示す。
【0053】
バッチに左右されない評価を保証するために、被検溶液での貯蔵時の生存細胞数の維持率というパラメータを定義した。これは2つの異なる基準点に関係した。すなわち一方では、維持率は凍結の前の生存細胞数に関係した(図5a)。他方では、維持率は洗浄の後(特定の貯蔵培地での0時間)の生存細胞数に関係した(図5b)。5つの溶液の比較のために、3つの被検バッチから上記のパラメータの中央値を計算し、図5にグラフで示した。
【0054】
選ばれた2つの溶液−Composol(登録商標)及びHES−をさらに、4つのバッチの中央値に基づいて評価し、図6にグラフで示した。
【0055】
上記の結果の分析の便宜上、次のアプローチを行った。凍結LZZの維持率であるパラメータをCustodiol(登録商標)100%で試験した。5つの被検バッチ(比較例/本発明の例)について、Custodiol(登録商標)と比較したこのパラメータの偏差百分率を計算した(図7a及び7bを参照)。
【0056】
細胞の洗浄の直後に3つの溶液(PBS、Composol(登録商標)及びHES)はLZZ維持率であるパラメータに関してCustodiol(登録商標)と同等の維持率(80%以上一致)を示した。その場合Composol(登録商標)はCustodiol(登録商標)より良好な結果さえ示した(100%以上の維持率)。1時間後にPBSは最良の結果を有したが、Composol(登録商標)及びヒト血漿は2時間後にCustodiol(登録商標)より約10%良好な中央値結果を示した。
【0057】
別の比較のために別の評価を行った。溶液ごとに4つのすべての時点の平均値を計算した(0時間〜3時間、図7c)。
【0058】
試験の時間的進行に関係なく、HESとリンガー乳酸塩溶液はCustodiol(登録商標)と比較して約20%のLZZの損失を示し、またPBS、Composol(登録商標)及びヒト血漿はCustodiol(登録商標)と同等な(偏差が10%以下の)結果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(凍結保存後の)貯蔵した細胞の生存率と貯蔵時間、使用した貯蔵培地及び貯蔵温度との関係を示す。凡例:“HH142”:個別細胞調製物(バッチ)の番号、“warm”:18℃の貯蔵温度、“cold”:4℃の貯蔵温度、“HES”:培地2、“PBS”:培地5、“Custodiol(登録商標)”:培地1、“Composol(登録商標)”:培地4、“リンガー乳酸塩溶液”:培地3、“ヒト血漿”:培地6
【図2】(凍結保存前の)貯蔵した細胞の維持率と貯蔵時間、使用した貯蔵培地及び貯蔵温度との関係を示す。凡例は図1を参照。
【図3】(凍結保存後の)貯蔵した細胞の生存率と貯蔵時間、使用した貯蔵培地及び貯蔵温度との関係を示す。凡例は図1を参照。
【図4】(凍結保存後の)貯蔵した細胞の生存細胞数(LZZ)と貯蔵時間及び使用した貯蔵培地との関係を示す。凡例は図1を参照。
【図5】(凍結保存前の)貯蔵した細胞の生存細胞数(LZZ)と貯蔵時間及び使用した貯蔵培地との関係を示す。3つの個別細胞調製物(バッチ)の中央値。凡例は図1を参照。
【図6】(凍結保存前の)貯蔵した細胞の生存細胞数(LZZ)と貯蔵時間及び使用した貯蔵培地との関係を示す。4つの個別細胞調製物(バッチ)の中央値。凡例は図1を参照。
【図7】図7A〜C。(凍結保存前の)貯蔵した細胞の維持率、生存細胞数(LZZ)と貯蔵時間及び使用した貯蔵培地との関係を示す。3つの個別細胞調製物(バッチ)の中央値。図7C:Custodiol(=100%)との比較。4つの貯蔵時間の平均値。3つの個別細胞調製物(バッチ)の中央値。凡例は図1を参照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物細胞の短時間貯蔵のための方法であって、
a)− 特に塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム及びクエン酸ナトリウムを含む塩溶液、
− リンガー乳酸塩溶液
− リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)
から選ばれる塩溶液、及び/又は高分子糖類の水溶液、特にヒドロキシエチルデンプンの水溶液
b)グルコース、並びに
c)血清アルブミン及び/又は血漿
を含む液体細胞培地に細胞を収容し、この細胞培地中で貯蔵する方法。
【請求項2】
細胞が凍結保存細胞であり、該細胞を解凍し、解凍の後に細胞培地で洗浄し、細胞培地から分離し、その上で新しい貯蔵用細胞培地に収容する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞培地が2〜40℃の温度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
細胞が肝細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
細胞が肝実質細胞である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞が哺乳動物細胞である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
細胞がヒト細胞である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
細胞が治療的適用のための細胞である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
In vitro培養のための細胞を取り扱う請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
特に請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法による動物細胞の短時間貯蔵のための、請求項1で特徴づけた細胞培地の使用。
【請求項11】
細胞培地が、水に溶解した
a)塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム及びクエン酸ナトリウム
b)グルコース、並びに
c)血清アルブミン及び/又は血漿
を含む、動物細胞の短時間貯蔵のための細胞培地。
【請求項12】
血清アルブミンがヒト血清アルブミンである請求項11に記載の細胞培地。
【請求項13】
血漿がヒト血漿である請求項11又は12のいずれか1項に記載の細胞培地。
【請求項14】
細胞培地が
0.45〜0.60重量%の塩化ナトリウム、
0.45〜0.55重量%のグルコン酸ナトリウム、
0.20〜0.25重量%の酢酸ナトリウム、
0.03〜0.04重量%の塩化カリウム、
0.025〜0.035重量%の塩化マグネシウム六水和物
及び0.31〜0.33重量%のクエン酸ナトリウム
を含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の細胞培地。
【請求項15】
細胞培地が0.01〜0.5重量%、とりわけ0.1〜0.2重量%のグルコースを含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の細胞培地。
【請求項16】
細胞培地が0.5〜50重量%、とりわけ3〜5重量%の血清アルブミンを含む、請求項11〜15のいずれか1項に記載の細胞培地。
【請求項17】
細胞培地が0.5〜50重量%、とりわけ3〜5重量%の血漿を含む、請求項11〜16のいずれか1項に記載の細胞培地。
【請求項18】
細胞培地が6.4〜8、とりわけ7.0〜7.4のpH値を有する、請求項11〜17のいずれか1項に記載の細胞培地。
【請求項19】
アミノ酸、ホルモン、ビタミン、プロビタミン及び抗アポトーシス作用物質から選ばれる少なくとも1つの別の成分を含む請求項11〜18のいずれか1項に記載の細胞培地。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−500006(P2009−500006A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518747(P2008−518747)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006401
【国際公開番号】WO2007/003382
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508000478)シトネット ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (1)
【Fターム(参考)】