説明

細胞運命の解析方法

【課題】血液血管芽細胞から血液系細胞系列及び血管内皮系細胞系列への運命決定、分化を解析する方法の開発、特に血液系細胞系列及び血管内皮系細胞系列の細胞運命を同時に解析する方法の開発を目的とする。
【解決手段】幹細胞の単一細胞を調製し、得られた単一細胞を増幅する工程(第1工程)、増幅した細胞を培養し、コロニーを産生させる工程(第2工程)、及び産生されたコロニーの様式に基づいて単一細胞を群分けし、同じ群に分類される単一細胞の数を測定する工程(第3工程)を含む、幹細胞の細胞運命の解析方法、得られた群の種類を細胞運命としてX軸方向に展開し、同じ群に分類される単一細胞の数を頻度としてY軸方向に展開することによって得られる、幹細胞の細胞運命の解析用グラフ等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞運命の解析方法、特に幹細胞の細胞運命を解析・評価する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
血液系及び血管系医学の分野において、ヒトの血液幹細胞含有分画であるCD34陽性細胞において血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell=EPC)が発見(非特許文献1)され、CD34陽性細胞さらには早期血液幹細胞分画であるCD133陽性細胞は、血液血管芽細胞(Hemangioblast=HB)含有分画として考えられるようになった。つまり、胎生期における血管島では、血液前駆細胞(hematopoietic stem/progenitor cell=HSPC)及びEPCは共通の多能性幹細胞であるHBから分化することが明らかとなっている。成体内においても、このような未分化なHBの存在証拠が確認(非特許文献2〜4)され、EPCは骨髄幹細胞ニッチ内において、HSPCと共にHBという共通の幹細胞から血液・血管細胞系列の運命決定(commitment)、分化(differentiation)が行われた結果であると推定されている。
【0003】
血液系分野において、形態学的観察に基づいたHSPCの血液細胞系列への分化様式に関する解析法としては、1970年代に非接着系培養皿と半固形培地のメチルセルロースを用いた方法が開発され、以後、その意義は確立している(非特許文献5)。すなわち、コロニーのタイピング、数を評価する方法である。しかし、当然、血液系細胞に限られた解析法であり、HBの細胞生物学的解析は不可能である。
EPCの分化様式評価系は、1997年の成体内EPCの発見以来、2つの細胞生物学的解析法が用いられてきた。一つは、未分化EPC含有細胞(骨髄や末梢血のCD34陽性及び/又はCD133陽性細胞、単核球)を内皮系細胞培養用の液体培地で培養し、接着細胞を獲得してこれを数的に評価するEPC培養アッセイ法(非特許文献6及び7)であり、二つ目は、メチルセルロースを用いたEPCコロニーアッセイ法で、EPCのコロニーを数的に評価するものである(非特許文献8)。いずれの方法も、EPCの数的評価に止まり、その分化過程の評価は不可能である。特許文献1及び2ではEPCの分化様式を解析する方法が記載されているが、内皮系細胞の解析に止まり、血液系細胞系列への分化との因果関係は不明である。
【非特許文献1】T. Asahara, T. Murohara, A. Sullivan et al., Science 275:964-967 (1997)
【非特許文献2】E. Pelosi, M. Valtieri et al., Blood 100(9): 3203-3208 (2002)
【非特許文献3】S. Loges, B. Fehse et al., Stem Cells Dev. 13(3): 229-242 (2004)
【非特許文献4】UM. Gehling, S. Ergun et al., Blood 95(10): 3106-3112 (2000)
【非特許文献5】A. Hirao, Y. Takaue et al., Journal of Clinical Apheresis 10: 17-22 (1995)
【非特許文献6】T. Asahara, T. Takahashi et al., EMBO J. 18(14): 3964-3972 (1999)
【非特許文献7】C. Kalka, H. Masuda et al., Circ Res. 86(12): 1198-1202 (2000)
【非特許文献8】B. Assmus, C. Urbich et al., Circ Res. 92(9): 1049-1055 (2003)
【特許文献1】WO2006/090882号国際公開公報
【特許文献2】WO2006/090886号国際公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、幹細胞、特に組織幹細胞の細胞運命の解析方法、具体的には血液血管芽細胞(HB)から血液系細胞系列及び血管内皮系細胞系列への運命決定、分化を解析する方法の開発、特に血液系細胞系列及び血管内皮系細胞系列の細胞運命を同時に解析する方法の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明者らは、まず、HBから単離される単一細胞を培養し、血液系細胞系列あるいは内皮系細胞系列へと分化して産生されるコロニーの様式を調べ、その様式のパターンに基づいて細胞を群分けし、「細胞運命(commitment)」を定義づけた。次いで、得られた細胞運命のそれぞれについて、その頻度(すなわち該当する細胞運命を提示するようになる単一細胞の数)を測定した。細胞運命とその頻度を対応させることによって細胞運命の明確化、グラフ化が可能となり、定量化することが可能となった。
【0006】
即ち、本発明は下記の通りである:
[1]幹細胞の単一細胞を調製し、得られた単一細胞を増幅する工程(第1工程)、
増幅した細胞を培養し、コロニーを産生させる工程(第2工程)、及び
産生されたコロニーの様式に基づいて単一細胞を群分けし、同じ群に分類される単一細胞の数を測定する工程(第3工程)
を含む、幹細胞の細胞運命の解析方法。
[2]幹細胞が血液血管芽細胞である、上記[1]記載の方法。
[3]血液血管芽細胞が、骨髄、臍帯血又は末梢血由来である、上記[2]記載の方法。
[4]血液血管芽細胞が、CD34陽性及び/又はCD133陽性である、上記[2]記載の方法。
[5]産生されるコロニーが、血液系細胞コロニー又は血管内皮系細胞コロニーのいずれかである、上記[2]記載の方法。
[6]血液系細胞コロニーが、赤芽球コロニー(BFU−E)、顆粒球・マクロファージ系コロニー(CFU−GM)、マクロファージコロニー(CFU−M)及び混合コロニー(CFU−Mix)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[5]記載の方法。
[7]血管内皮系細胞コロニーが、内皮細胞様大細胞コロニー(CFU−Large cell like EPC)及び内皮細胞様小細胞コロニー(CFU−small cell like EPC)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[5]記載の方法。
[8]第1工程が、添加因子の存在下又は非存在下で実施される、上記[1]記載の方法。
[9]添加因子が成長因子である、上記[8]記載の方法。
[10]上記[1]記載の方法を実施することを含む、幹細胞の細胞運命に影響を及ぼす化合物のスクリーニング方法。
[11]上記[1]記載の方法を実施することを含む、幹細胞から特定の細胞系列へ運命付けられた細胞の濃縮度を確認する方法。
[12]幹細胞が血液血管芽細胞であり、特定の細胞系列へ運命付けられた細胞が血管内皮前駆細胞である、上記[11]記載の方法。
[13]幹細胞の単一細胞を培養し、該単一細胞から産生されるコロニーの様式に基づいて群分けし、同じ群に分類される単一細胞の数を測定し、各群について、その群に属する単一細胞の数を対応させることによって得られる、幹細胞の細胞運命の解析用グラフ。
[14]幹細胞の単一細胞を培養し、該単一細胞から産生されるコロニーの様式に基づいて群分けし、得られた群の種類を細胞運命としてX軸方向に展開し、同じ群に分類される単一細胞の数を頻度としてY軸方向に展開することによって得られる、幹細胞の細胞運命の解析用グラフ。
[15]幹細胞が血液血管芽細胞である、上記[13]又は[14]記載のグラフ。
[16]産生されるコロニーが、血液系細胞コロニー又は血管内皮系細胞コロニーのいずれかである、上記[15]記載のグラフ。
[17]血液系細胞コロニーが、赤芽球コロニー(BFU−E)、顆粒球・マクロファージ系コロニー(CFU−GM)、マクロファージコロニー(CFU−M)及び混合コロニー(CFU−Mix)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[16]記載のグラフ。
[18]血管内皮系細胞コロニーが、内皮細胞様大細胞コロニー(CFU−Large cell like EPC)及び内皮細胞様小細胞コロニー(CFU−small cell like EPC)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[16]記載のグラフ。
【発明の効果】
【0007】
組織幹細胞の細胞運命、具体的にはHBからの血液系及び血管内皮系細胞系列の細胞運命をグラフ化、定量化することが可能となる。特に血液系及び血管内皮系細胞系列の細胞運命を同時にグラフ化、定量化することにより、従来の単独細胞系列解析法では判別不可能であった細胞運命の明確化、その定量化が可能となる。また、本発明の方法は、単一細胞での評価であり、細胞系列決定評価が正確である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、幹細胞の細胞運命の解析方法、例えばHBから血液系細胞系列及び血管内皮系細胞系列への運命決定、分化を解析する方法の開発、特に血液系細胞系列及び血管内皮系細胞系列の細胞運命を同時に解析する方法を提供する。本発明の解析方法は、まず、その細胞運命の解析が所望される幹細胞の単一細胞を調製し培養する工程を含む。
【0009】
幹細胞としては、所定の細胞へと分化し得る細胞運命を有するものであれば特に限定されないが、好ましくは組織幹細胞であり、神経系幹細胞、造血系・血管系幹細胞、間葉系幹細胞、内胚葉系幹細胞等が例示される。特に好ましくは各細胞系列の表現型がよく研究されている造血系・血管系幹細胞であり、該幹細胞は、上記したHB(血液血管芽細胞)に相当する。
【0010】
本発明で用いられる「血液血管芽細胞(Hemangioblast=HB)」とは、血液系細胞及び血管内皮細胞両方の前駆細胞であって、血液幹細胞、血液前駆細胞を経て血液系細胞(例えば、赤血球、T−リンパ球、B−リンパ球、単球/マクロファージ、顆粒球、巨核球)になり得、また、血管内皮前駆細胞(EPC)を経て血管内皮細胞になり得る未分化な細胞であれば特に限定されない。HBとしては、被検対象の骨髄、臍帯血又は末梢血由来の細胞を使用できる。HBはまた、単核球であり得る。
【0011】
HBはさらに、CD34及び/又はCD133陽性であり得る。従って、HBとして、CD34陽性及び/又はCD133陽性細胞のみ予め選別して用いることもまた好ましい。CD34陽性及び/又はCD133陽性細胞の選別は、当分野で通常行われている細胞選別の手法が用いられ、具体的にはCD34抗原及び/又はCD133抗原に特異的な親和性を有する物質を用いた磁気細胞分離法(MACS)、蛍光細胞分離法(FACS)等が挙げられる。かかる分離方法により、幹細胞を単一細胞とすることができる。
【0012】
CD34抗原あるいはCD133抗原に特異的な親和性を有する物質としては例えばこれらの蛋白質に特異的親和性を有する抗体又はその断片が挙げられ、その特異的親和性とは抗原・抗体反応により該蛋白質を特異的に認識し、結合する能力のことである。該抗体又はその断片は、当該蛋白質と特異的に結合可能なものであれば特に限定されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びそれらの機能的断片のいずれであってもよい。これらの抗体あるいはその機能的断片は、通常当分野で行なわれている方法によって製せられる。例えばポリクローナル抗体を用いる場合であれば、該蛋白質をマウスやウサギといった動物の背部皮下あるいは腹腔内あるいは静脈等に注射して免疫し、抗体価が上昇するのを待った後に抗血清を採取する方法が挙げられ、またモノクローナル抗体を用いる場合であれば、常法に従いハイブリドーマを作製して、その分泌液を採取する方法が挙げられる。抗体断片を製造する方法としてはクローニングした抗体遺伝子断片を微生物等に発現させる方法がよく用いられている。当該抗体、抗体断片等の純度は、当該蛋白質との特異的親和性を保持している限り、特に限定されない。これらの抗体又はその断片は、蛍光物質等で標識されていてもよい。
【0013】
HBはまた、HBを動員可能な物質により動員されたものであり得る。HBを動員可能な物質としては、例えば、G−CSF、SDF−1、エストロゲン、VEGF、GM−CSF、アンジオポエチン1及び2、HGF、スタチン類(statins)、エリスロポエチンが挙げられるが、なかでもG−CSFが好ましい。この場合、HBを動員可能な物質の被検対象への投与により得られる、HBを動員しておいた体液成分(例えば、末梢血)の形態で、HBが提供されてもよい。HBを動員可能な物質の被検対象への投与回数、投与期間、投与量は用いる物質の種類によっても異なり、HBを動員可能である限り特に限定されないが、G−CSFの場合であれば、投与回数については、例えば通常1日1回〜3回、好ましくは2回であり、投与期間については、例えば約3〜7日間、好ましくは約4〜6日間、より好ましくは5日間であり、投与量については、約2〜50μg/kg/日、好ましくは約5〜20μg/kg/日、より好ましくは約10μg/kg/日である。
【0014】
HBはさらに、HBを動員可能な物質により動員されたHBを移植された被検対象から採取されるものであってもよい。
【0015】
本発明において被検対象は、幹細胞の細胞運命を解析することが求められている動物であって、ヒトを含む哺乳動物一般を意味するが、臨床応用という本発明の目的に鑑みれば、被検対象は好ましくはヒトである。また、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル等の哺乳動物での使用も好ましい。
【0016】
本発明の解析方法では、幹細胞、必要に応じて選別されたCD34及び/又はCD133陽性の幹細胞の単一細胞を培養する。単一細胞の培養は、幹細胞の由来や所望する細胞系列に応じて、従来行なわれている方法あるいはそれに準じた方法で行なうことができる。例えば幹細胞がHBであり、所望する細胞系列が血管内皮細胞系列であれば、特許文献1及び特許文献2に開示されている方法が好適に用いられる。幹細胞がHBであり、所望する細胞系列が血液細胞系列の細胞であれば、非接着系培養皿と半固形培地のメチルセルロースを用いた方法(非特許文献5)が好適に用いられる。
【0017】
本発明の方法においては、単一細胞の培養は、組織幹細胞の単一細胞を調製して増幅させる工程(第1工程)及び増幅させた細胞からコロニーを産生させる工程(第2工程)の、通常2工程によって行なわれる。第1工程は、幹細胞が効率よく増殖することができればその方法は特に限定されないが、組織幹細胞がHBの場合、特許文献1に記載の方法によって実施することが好ましい。具体的には、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン6(IL−6)、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt−3)及びトロンボポエチン(TPO)を含有する無血清培地でHBをインキュベートすることを含む。
【0018】
第1工程で用いられる無血清培地は、当分野で通常用いられている培地を利用することができ、例えば造血幹細胞の増殖用培地として知られている無血清培地を用いることができる。無血清培地として用いられる基礎培地としては、例えば、DMEM、MEM、IMDM等が挙げられる。
【0019】
無血清培地に含めうる幹細胞因子(SCF)は、248個のアミノ酸からなる分子量約30,000の糖タンパク質である。選択的スプライシングにより可溶型と膜結合型が存在するが、本発明で用いるSCFはHBの培養に有用である限りいずれのタイプのSCFでもよい。好ましくは可溶型である。SCFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。無血清培地中のSCFの濃度は、用いるSCFの種類によっても異なり、HBの培養に有用である限り特に限定されないが、ヒト組換えSCFの場合であれば、例えば10〜1000ng/mL、好ましくは50〜500ng/mL、より好ましくは約100ng/mLである。
【0020】
本発明で用いられるインターロイキン6(IL−6)は、B細胞の抗体産生細胞への最終分化を誘導する因子として単離された分子量21万の糖タンパク質であり、免疫応答、造血系や神経系細胞の増殖分化、急性期反応等に関与することが知られている。本発明で用いるIL−6は適宜選択されるが、ヒトHBの培養に用いる場合には、ヒトIL−6が好ましく、安定した供給が見込まれる組換え体が特に好ましい。商業的に入手可能なものが知られている。無血清培地中のIL−6の濃度は、用いるIL−6の種類によっても異なり、HBの培養に有用である限り特に限定されないが、ヒト組換えIL−6の場合であれば、例えば1〜500ng/mL、好ましくは5〜100ng/mL、より好ましくは約20ng/mLである。
【0021】
本発明で用いられるFMS様チロシンキナーゼ3(Flt−3)は、初期造血制御において重要な役目を担う受容体型チロシンキナーゼとして知られている。いくつかの選択的スプライシングによる産物が知られているが、造血系幹細胞の増殖を刺激するという報告がある。本発明で用いるFlt−3は、HBの培養に有用である限り、いずれのタイプのFlt−3であってもよい。商業的に入手可能なものが知られている。無血清培地中のFlt−3の濃度は、用いるFlt−3の種類によっても異なり、HBの培養に有用である限り特に限定されないが、ヒト組換えFlt−3リガンドの場合であれば、例えば10〜1000ng/mL、好ましくは50〜500ng/mL、より好ましくは約100ng/mLである。
【0022】
本発明で用いられるトロンボポエチン(TPO)は、造血系サイトカインの一種であり、造血幹細胞から巨核球が作られる過程に特異的に作用し、巨核球の産生を促進することが知られている。本発明で用いるTPOの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。無血清培地中のTPOの濃度は、用いるTPOの種類によっても異なり、HBの培養に有用である限り特に限定されないが、ヒト組換えTPOの場合であれば、例えば1〜500ng/mL、好ましくは5〜100ng/mL、より好ましくは約20ng/mLである。
【0023】
第1工程で用いられる無血清培地には、後述の実施例で示されるように、EPCをより効率的に増幅させる、あるいは増幅総細胞数をより増加させるという観点から、上記SCF、IL−6、Flt−3及びTPOに加え、成長因子、特に血管内皮細胞増殖因子をさらに含有することが好ましい場合もある。
【0024】
本発明で用いられ得る血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、EPCに特異的に作用する増殖因子であり、主に血管周囲の細胞で産生されることが知られている。選択的スプライシングによってサイズの異なる数種のVEGFタンパク質が産生されるが、本発明で用いるVEGFはEPCをより効率的に増幅させる、あるいは増幅総細胞数をより増加させる限りいずれのタイプのVEGFでもよい。好ましくはVEGF165である。VEGFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。無血清培地中のVEGFの濃度は、用いるVEGFの種類によっても異なり、HBの培養に有用である限り特に限定されないが、ヒト組換えVEGF165の場合であれば、例えば約5〜500ng/mL、好ましくは約5〜200ng/mL、より好ましくは約100ng/mLである。
【0025】
本発明において好ましい無血清培地は、約100ng/mLのSCF、約20ng/mLのIL−6、100ng/mLのFlt−3、約20ng/mLのTPOを含有する無血清培地であり、約100ng/mLのVEGFを含有しているものが好ましい。
【0026】
上記した各成分は無血清培地で所定の濃度に溶解するか、あるいはあらかじめ各成分の濃縮液(ストック溶液)を調製し、無血清培地で所定の濃度に希釈することによって本発明において用いられるHBの単一細胞を増幅させる為の無血清培地を調製することができる。例えば市販の無血清培地に必要な成分を所定の濃度となるよう溶解した後、濾過滅菌等により滅菌するか、あるいは濾過滅菌等により滅菌したストック溶液を無菌的に市販の無血清培地に添加、希釈することによって調製することができる。濾過滅菌は当分野で通常実施されている方法に準じて行うことができ、例えば0.22μmや0.45μmのミリポアフィルター等を用いて行う。
【0027】
上述した因子を含有する無血清培地でのHBの培養は、HBの単一細胞を、上述の因子を含有する無血清培地中に播種することにより行われる。HBの培養条件は特に限定されず、通常当分野で実施される条件で実施することができる。例えば、5%CO雰囲気下、37℃で7日間程度培養される。
【0028】
第1工程において、細胞の「増幅」とは、細胞の未分化状態をできる限り維持しつつ、その細胞数を増加させることを意味する。第1工程におけるHBの増幅は、上述の因子を例えば上述の濃度で用いてHBを培養することにより達成でき、血液前駆細胞(HSPC)や血管内皮前駆細胞(EPC)が増幅される。好ましくは本工程(第1工程)は、単一細胞の培養という性質上、96ウェルプレートなど、単一細胞の培養に適した培養器中で行なう。
【0029】
本発明では、組織幹細胞の単一細胞の調製ならびに増幅(第1工程)に続いて、増幅させた細胞からコロニーを産生させる工程(第2工程)を行なう。第2工程は、所望する細胞系列のコロニーが産生される限り、特にその方法は限定されないが、コロニーを産生させるという性質上、第1工程よりはより培養面積の広い培養器、例えば24ウェルプレート等の培養器中で行なうことが好ましい。組織幹細胞がHBであり、細胞系列が血液系細胞系列である場合には、半固形培地である血液系細胞系列用のメチルセルロース培地を用いた方法が好適に用いられる。かかる培養によりHBから血液前駆細胞コロニー(HSPCコロニー)が産生される。本発明では、細胞構成の異なる4種類のHSPCコロニーが出現する。このような4種類のHSPCコロニーが出現するのは第1工程で増幅させたHBの懸濁液を半固形培地上に播種してから通常10日以上、例えば12日経過した時点であるので、本発明においてHSPCのコロニーを形成させるには例えば12日間培養される。形成される4種類のコロニーは、赤芽球コロニー(BFU−E)、顆粒球・マクロファージ系コロニー(CFU−GM)、マクロファージコロニー(CFU−M)及び混合コロニー(CFU−Mix)である。形成されるコロニーの種類はその色や形態から容易に識別することができる。また、個々のコロニーを採取してRT−PCRを行い、遺伝子発現レベルで確認することもできる。
【0030】
HSPCコロニー産生のために用いられる半固形培地は、HSPCコロニー形成を可能とするものである限り特に限定されないが、例えば、造血幹細胞等の未分化細胞の増殖用培地などとして知られている半固形培地を使用できる。このような半固形培地としては、例えば、メチルセルロース培地、マトリゲル、コラーゲンゲル、メビオールゲルなどが挙げられる。半固形培地としてメチルセルロース培地を用いる場合、培地中のメチルセルロース濃度は特に限定されるものではないが、例えば約0.5〜5%、好ましくは約0.7〜3%、より好ましくは約1%で用いられる。
【0031】
また、組織幹細胞がHB細胞であり、細胞系列が血管内皮細胞系列である場合には、特許文献1及び2に記載された方法に準じて好適に実施することができる。具体的には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含有する半固形培地でHBを培養することを含む。かかる培養により、HBから血管内皮前駆細胞コロニー(EPCコロニー)が産生される。本発明では、構成細胞のサイズが異なる2種類のEPCコロニーが出現する。このような2種類のサイズのEPCコロニーが出現するのは第1工程で増幅させたHBの懸濁液を半固形培地上に播種してから通常10日以上、例えば14〜18日経過した時点であるので、本発明においてEPCのコロニーを形成させるには例えば14〜18日間培養される。形成される2種類のコロニーのうち、大きい細胞で構成されるコロニー(内皮細胞様大細胞コロニー;CFU−Large cell like EPC、大細胞コロニーともいう)は長径約50〜200μmの細胞を主に含み、小さい細胞で構成されるコロニー(内皮細胞様小細胞コロニー;CFU−small cell like EPC、小細胞コロニーともいう)は直径約20μm以下(例えば約10〜20μm)の細胞を主に含む。ここで「主に」とはコロニーを構成する細胞集団の約30%、好ましくは約50%、特に好ましくは約70%が、長径約50〜200μmの細胞(大細胞コロニーの場合)あるいは直径20μm以下の細胞(小細胞コロニーの場合)であることを意味する。被検対象から経時的に骨髄液、臍帯血あるいは末梢血等を採取し、採取した試料についてEPCコロニーアッセイを行うと、動員後のコロニー出現迄に要する時間が、大細胞コロニーと小細胞コロニーとでは異なっていることが判明している。大細胞コロニーは小細胞コロニーにやや遅れて出現する。即ち、分化段階の異なるEPCが存在することが示唆される。早い段階で出現する内皮細胞様小細胞は早期分化段階のEPCと言え、また遅い段階で出現する内皮細胞様大細胞は晩期分化段階のEPCであると言える。本発明の解析方法では、上述の通りコロニーを形成する細胞サイズの差異に基づき分化度の異なるEPCが区別可能である。
【0032】
EPCコロニー産生のために用いられる半固形培地は、EPCコロニー形成を可能とするものである限り特に限定されないが、例えば、造血幹細胞等の未分化細胞の増殖用培地などとして知られている半固形培地を使用できる。このような半固形培地としては、例えば、メチルセルロース培地、マトリゲル、コラーゲンゲル、メビオールゲルなどが挙げられる。半固形培地としてメチルセルロース培地を用いる場合、培地中のメチルセルロース濃度は特に限定されるものではないが、例えば約0.5〜5%、好ましくは約0.7〜3%、より好ましくは約1%で用いられる。
【0033】
EPCコロニー産生のために用いられる半固形培地には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が含まれていることが好ましい。ここで用いられるVEGFとしては、上記第1工程で無血清培地に添加したものと同様なものが例示される。半固形培地中のVEGFの濃度は、用いるVEGFの種類によっても異なり、EPCコロニー産生に適切である限り特に限定されないが、ヒト組換えVEGF165の場合であれば、例えば約5〜500ng/mL、好ましくは約20〜100ng/mL、より好ましくは約50ng/mLである。ここで用いられるbFGFは、約18kDa、等電点9.0の一本鎖ペプチドであり、血管新生、種々の細胞増殖促進、分化誘導等の機能を有することが知られている。本発明で用いるbFGFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。半固形培地中のbFGFの濃度は、用いるbFGFの種類によっても異なり、EPCコロニー産生に適切である限り特に限定されないが、ヒト組換えbFGFを用いる場合であれば、例えば約5〜500ng/mL、好ましくは約20〜100ng/mL、より好ましくは約50ng/mLである。
【0034】
第2工程で、EPCコロニー産生のために用いられる半固形培地には、さらにEPCコロニーをより効率的に形成させるという観点から、上記VEGF及び/又はbFGFに加え、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3(IL−3)、インスリン様成長因子(IGF)及び上皮細胞増殖因子(EGF)からなる群より選ばれる1又は2以上の因子、好ましくは3以上の因子、より好ましくは全ての因子をさらに含有することが好ましい。
【0035】
幹細胞因子(SCF)は、上記第1工程で無血清培地に添加したものと同様なものが例示される。半固形培地中のSCFの濃度は、用いるSCFの種類によっても異なり、EPCコロニーをより効率的に形成できる限り特に限定されないが、ヒト組換えSCFの場合であれば、10〜1000ng/mL、好ましくは50〜500ng/mL、より好ましくは約100ng/mLである。
【0036】
インターロイキン3(IL−3)は、造血幹細胞や各種血球系列の前駆細胞に作用し、その増殖、分化を促進するサイトカインとして知られている。ヒトで152残基、マウスで166残基のアミノ酸から成るが、糖鎖の修飾によって見かけ上28,000の分子量を有する。本発明で用いるIL−3はコロニー産生を目的とするEPCの由来に応じて適宜選択されるが、ヒトのEPCのコロニー産生に用いる場合には、ヒトIL−3が好ましく、安定した供給が見込まれる組換え体が特に好ましい。商業的に入手可能なものが知られている。半固形培地中のIL−3の濃度は、用いるIL−3の種類によっても異なり、EPCコロニーをより効率的に産生できる限り特に限定されないが、ヒト組換えIL−3を用いる場合であれば、約1〜500ng/mL、好ましくは約5〜100ng/mL、より好ましくは約20ng/mLである。
【0037】
インスリン様成長因子(IGF)は、ソマトメジンとも称される、プロインスリンに類似した一次構造をもつ分子量約7000のポリペプチドで互いに類似したIGF−I及びIGF−IIの2種類が存在することが知られている。ともに類似した作用を有し、インビトロでは様々な細胞の増殖を促進することが知られている。本発明で用いるIGFはEPCのコロニー産生を可能にする限りいずれのタイプのIGFでもよい。好ましくはIGF−Iである。IGFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。半固形培地中のIGFの濃度は、用いるIGFの種類によっても異なり、EPCコロニーをより効率的に産生できる限り特に限定されないが、ヒト組換えIGF−Iを用いる場合であれば、約5〜500ng/mL、好ましくは約20〜100ng/mL、より好ましくは約50ng/mLである。
【0038】
上皮細胞増殖因子(EGF)は、上皮細胞の分化・増殖を促進させる作用を有する、アミノ酸53個のタンパク質であり、糖鎖は結合していないことが知られている。約6kDaで3ヶ所のジスルフィド結合を有する。本発明で用いるEGFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。半固形培地中のEGFの濃度は、用いるEGFの種類によっても異なり、EPCコロニーをより効率的に産生できる限り特に限定されないが、ヒト組換えEGFを用いる場合であれば、約5〜500ng/mL、好ましくは約20〜100ng/mL、より好ましくは約50ng/mLである。
【0039】
EPCコロニー産生のために用いられる半固形培地は、EPCコロニーをさらにより効率的に形成させるという観点から、上記VEGF及びbFGF、並びにSCF、IL−3、IGF及びEGFからなる群より選ばれる1又は2以上の因子に加え、血清及び/又はヘパリンをさらに含有することが好ましい。
【0040】
血清が使用される場合、その由来等は特に限定されないが、培地に添加されることから比較的使用量が多いことが予想される。従って、商業的に入手可能なウシ、ウマ、ヒト等の血清(例えば、胎児血清)が用いられる。より好ましくはウシ胎児血清(FCS)である。当該血清は非働化して用いることが好ましい。半固形培地中の血清の濃度は、用いる血清の種類によっても異なり、EPCコロニーをさらにより効率的に産生できる限り特に限定されないが、FCSの場合であれば、約10〜50%、好ましくは約15〜40%、より好ましくは約30%である。
【0041】
ヘパリンは、D−グルクロン酸、あるいはL−イズロン酸のいずれかを含むウロン酸残基と、D−グルコサミンとの二糖体の繰り返し構造を骨格に持つグルコサミノグリカンである。ヘパリンは哺乳類の小腸や肺に多く存在し、市販品はブタの腸由来の抽出物が多く、その分子量は7,000〜25,000程度である。本発明で用いるヘパリンは動物組織由来のものであってもよいし、EPCのコロニー産生を可能にする限り、化学的、物理的に分解された低分子化ヘパリンであってもよい。例えば、ブタ腸由来ヘパリンが使用される。商業的に入手可能なものが知られている。半固形培地中のヘパリンの濃度は、用いるヘパリンの種類によっても異なり、EPCコロニーをさらにより効率的に産生できる限り特に限定されないが、ブタ腸由来ヘパリンの場合であれば、約0.2〜10U/mL、好ましくは約1〜5U/mL、より好ましくは約2U/mLである。
【0042】
上記した各生理活性物質は半固形培地で所定の濃度に溶解するか、あるいはあらかじめ各生理活性物質の濃縮液(ストック溶液)を調製し、半固形培地で所定の濃度に希釈することによって本発明で用いる、EPCコロニー産生用の半固形培地を調製できる。例えば市販の半固形培地に必要な生理活性物質を所定の濃度となるよう溶解した後、濾過滅菌等により滅菌するか、あるいは濾過滅菌等により滅菌したストック溶液を無菌的に市販の半固形培地に添加、希釈することによって本発明で用いる生理活性物質含有半固形培地を調製できる。濾過滅菌は当分野で通常実施されている方法に準じて行うことができ、例えば0.22μmや0.45μmのミリポアフィルター等を用いて行う。
【0043】
EPCコロニーの産生は目視で確認することができるが、得られるコロニーが本当にEPCで構成されているか否かは、例えば、アセチル化LDL(acLDL)の取り込み能やUEA−1レクチンとの結合能、VE−カドヘリン、KDR(VEGFR−2とも称される)、vWFの発現(例えば、RT−PCRにより、あるいは蛍光免疫組織化学的方法により)等を確認することによって行われ得る。例えばDiIで標識したアセチル化LDL(acLDL−DiI)及びFITC標識したUEA−1レクチン(UEA−1レクチン−FITC)でコロニーを二重染色した場合に、EPCであれば共に染色される。
【0044】
本発明では、幹細胞の単一細胞を培養し、該単一細胞から産生されるコロニーの様式に基づいて群分けする工程を含む。例えば幹細胞としてHBを用いた場合、EPCコロニーであればCFU−Large cell like EPC、あるいはCFU−small cell like EPCが形成され、HSPCコロニーであればBFU−E、CFU−GM、CFU−MあるいはCFU−Mixが産生される。各単一細胞について、どのようなコロニーを産生するかを調べることによって群分けする。
【0045】
例えば血管内皮細胞系列であれば、CFU−Large cell like EPCを産生するがCFU−small cell like EPCを産生しない細胞(後述の実施例ではLVZ領域に相当)、CFU−Large cell like EPCを産生しないがCFU−small cell like EPCを産生する細胞(後述の実施例ではEVZ領域に相当)、及び両方産生する細胞(後述の実施例ではIVZ領域に相当)の3群に分けることができる。さらに血液細胞系列のそれぞれについて、産生されるコロニーの様式の一例を下記表1に示す。このようにして各様式に基づく群分けを可能とする個々の細胞が有している、あるいは有することになる特性を「細胞運命」と称し、本発明はそのような「細胞運命」の解析を可能とし、その応用を提供する。
【0046】
【表1】

【0047】
本発明では、産生されたコロニーの様式に基づいて群わけされた「細胞運命」に対して、同じ細胞運命を有する単一細胞の数を測定する(第3工程)。例えば、増幅、分化を経て(第1工程)、CFU−Mix、BFU−E、CFU−GM、CFU−Mのコロニーを産生するようになる単一細胞は細胞運命1を有している、と言える(上記表1参照)。4種全てのコロニーを産生するようになる単一細胞は細胞運命1を有していて、その数を測定する。第1工程で例えば96ウェルプレートにHBを播種した場合、各ウェルに1個ずつのHBが存在する。各ウェルに存在するHBから派生するコロニーがどの様な種類のものかを評価することによって、そのHB単一細胞の細胞運命が決定されるので、細胞運命頻度とは同じコロニー産生様式を示す単一細胞の数、即ちウェルの数を測定することによって簡便に知ることができる。
【0048】
本発明では組織幹細胞、特にHBの単一細胞から産生されるEPCコロニー及びHSPCコロニーを同時にアッセイすることができ、本発明者らは、このようなアッセイをHELIC(Hematopoietic and Endothelial Lineage Commitment)アッセイと命名した。HELICアッセイは、血液系細胞系列の細胞運命の解析と血管内皮系細胞系列の細胞運命の解析を同時に行なうことができる。
【0049】
本発明の解析方法では、上記した単一細胞の培養に必要な因子以外に、細胞運命の決定に影響を与えるか否かを調べることを目的として、あるいは既に細胞運命の決定に影響を与えることが知られている因子を別途添加してもよい(以後、添加因子とも称する)。本発明において用いる添加因子としては、サイトカイン、成長因子、性ホルモンをはじめ抗悪性腫瘍剤、抗高脂質血症剤、降圧剤等を含む臨床応用薬剤或いは臨床応用予定薬剤が挙げられる。サイトカインとしては、血管形成促進作用を有するstromal derived factor−1(SDF−1)、等が例示される。成長因子としては、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、angiopoietin−1等が例示される。性ホルモンとしては血管形成促進作用を有するエストロゲン、プロゲステロン等が例示される。臨床応用薬剤としては、特に生活習慣病の高脂質血症や高血圧症において血管内皮前駆細胞活性の低下が報告されている。そこで特に、これらの治療薬剤のHBから血管内皮細胞の運命決定に与える影響の解析が可能である。また、逆に血管形成能が高くなる色々の悪性腫瘍において抗悪性腫瘍薬のHBから血管内皮細胞への運命決定に与える影響をも解析可能である。
【0050】
本発明はまた、本発明の解析方法を用いて、細胞運命に影響を与える化合物をスクリーニングする方法を提供する。
具体的には、以下のような方法が例示される。
(1)幹細胞の単一細胞を調製する。
上記した本発明の解析方法と同様、単一細胞の選別が必要な場合はこの段階で行なうことができる(例えばCD133陽性細胞の選別)。
(2)上記(1)で得られた単一細胞を増幅・培養し、コロニーを産生させる。
第1工程:培養条件は幹細胞の由来に応じて適宜設定される。2群にわけ一方は試験化合物存在下で、他方は試験化合物非存在下で培養する。試験化合物が存在するか、あるいは存在しないか、という点を除いては、上記した本発明の解析方法に準じて本工程を実施する。
第2工程:試験化合物存在下あるいは非存在下で増幅させた幹細胞からコロニーを産生させる。上記した本発明の解析方法に準じて本工程を実施する。
(3)産生されるコロニーの様式に基づいて群わけ(細胞運命)し、同じ細胞運命を有する単一細胞の数(頻度)を測定する。上記した本発明の解析方法に準じて本工程を実施する。
(4)試験化合物存在下、及び非存在下で、細胞運命とその頻度の関係を調べることにより、細胞運命に影響を与える試験化合物であるか否かを判定する。例えば、試験化合物存在下、及び非存在下での細胞運命を、後述する様にグラフ化した場合、そのグラフの形状が有意に変動した場合、試験化合物が細胞運命に影響を及ぼしたと判断することができる。
【0051】
存在させる試験化合物の量は細胞に致死的な影響を与えないよう設定され、好ましくは段階的に投与量を変えてスクリーニングを行なう。また、上記した例では幹細胞の増幅の段階(第1工程)で試験化合物を用いたが、目的に応じてコロニー産生の段階(第2工程)で試験化合物を用いることもできる。
【0052】
本発明の解析方法は、幹細胞の単一細胞を培養し、該単一細胞から産生されるコロニーの様式に基づいて群分けし、得られた群の種類を細胞運命としてX軸方向に展開し、同じ細胞運命を有する細胞の数を頻度としてY軸方向に展開することによって、グラフ化することができる。グラフ化することによって、細胞運命を定量化することができ、上記した試験化合物の影響を数値化することも可能になる。グラフの種類は、細胞運命とその頻度とを対応させたものであれば特に限定されないが、細胞運命をX軸に頻度をY軸にそれぞれ展開して得られる折れ線グラフや、それを統計処理して得られる棒グラフ等が好ましい。
また、本発明の解析方法は、幹細胞から誘導される1つの細胞系列について実施されるものであってもよいが、好ましくは2つ以上の細胞系列について同時に実施される。2つの細胞系列について同時に実施される場合には、両細胞系列のグラフを重ね合わせることで、両細胞系列の因果関係を知ることができる。
【0053】
本発明の細胞運命の解析用グラフは、上記した折れ線グラフや、棒グラフ以外に、細胞運命を分別し、その頻度を測定することによって得られる任意の種類のグラフを包含する。
【0054】
本発明は、また、本発明の解析方法を応用することによって、特定の細胞系列へ運命付けられた細胞の濃縮度を確認する方法を提供する。例えば幹細胞がHBである場合、該幹細胞は将来的に血液系細胞系列あるいは血管内皮細胞系列へと分化が誘導される。いずれの細胞系列に運命付けられるかを本発明の解析方法によって解析するとともに、特定の細胞系列へ運命づけられた細胞を増幅する場合、その濃縮度(純度)を確認することもできる。ここで、「特定の細胞系列へ運命づけられた細胞を増幅及び濃縮する」とは、多分化能を有する幹細胞から目的とする細胞系列に運命付ける増幅培養により、目的とする細胞系列の純度を上げ(濃縮)、その細胞系列の細胞数を増やす(増幅)ことをいう。特定の細胞系列、例えば血管内皮系細胞系列へ運命付けられた細胞を増幅・濃縮する方法としては、幹細胞因子、インターロイキン6、FMS様チロシンキナーゼ3及びトロンボポエチンを含有する無血清培地でインキュベートする方法(特許文献1)が挙げられる。特許文献1に記載の方法に準じてHBから血管内皮前駆細胞(EPC)の増幅・濃縮を試みた場合、純度又は濃縮度をこの方法により調べることができる。増幅・濃縮を経て得られたEPC含有細胞集団について血管内皮細胞系列コロニーを産生させ、その頻度を調べる。増幅・濃縮が適切に行なわれていた場合には、EPCコロニーを産生する細胞の頻度が高くなる。グラフ化することにより、より簡便に判断することができ、また数量化が可能となる。
【実施例】
【0055】
以下実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、実施例は本発明の説明のために記載するものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0056】
実施例1:HELICアッセイ
実験プロトコルを図1に示す。
(1)CD133陽性細胞の単離と増幅
幹細胞としてHBを用いた。HBを含有する細胞懸濁液としては臍帯血(cord-blood:CB)由来の単核球を含有する細胞懸濁液を用いた。まず、採血した血液をHistopaque−1077上に重層し、密度勾配遠心分離法にて単核球を分離した。分離した単核球をPBS−EDTAで洗浄し、血小板除去後の単核球を採取し、緩衝液中に懸濁して細胞懸濁液を調製した。
次いで、細胞懸濁液を抗CD133抗体を用いたMACSに付してCD133陽性細胞を回収した。詳細には、CD133陽性細胞単離キット(Militenyi Biotec社製、カタログNo.130−050−801)を用いて、添付文書のプロトコルに準じて行った。
BD社製FACS Vantageシステムにより1ウェルあたりCD133陽性細胞1個(単一細胞)ずつ、60個(60ウェル)を1プレートに播種した(図2a−1)。同様にして4プレート調製した。該プレートをCOインキュベーターにて37℃、5%CO存在下、7日間培養した(図2a−2)。プレートは96ウェルのPrimaria plate(BD Labware)を用いた。1ウェルあたり100μLのVEGF(100ng/mL)添加、あるいは非添加培養液を用いた。培養液は、Stem span無血清培地に下記表2に示す成分を無菌的に添加したものを用いた。
【0057】
【表2】

【0058】
表2中、「h」はヒト由来であることを、「r」は遺伝子工学的に製造された組換え体であることを示す。それ以外の各略語は上述の通りである。
7日後に細胞が増幅したウェルにおける増幅細胞数をカウントした。
【0059】
(2)コロニー産生
24ウェルのsuspension culture dish(Greiner)に1ウェルあたり300μLの血液細胞系列コロニー産生用のメチルセルロース培地(H4435,Stem Cell Tec.)を入れた。
また、メチルセルロース培地(H4236,Stem Cell Tec.)を用いて表3に示す組成に基づいて血管内皮細胞系列コロニー産生用のメチルセルロース培地を作製した。即ち、表3に示す各成分を所定の濃度となるようにメチルセルロース培地に無菌的に添加した。1ウェルあたり300μlずつ24ウェルのPrimaria dish (BD Labware)に入れた。
【0060】
【表3】

【0061】
表3中、「h」はヒト由来であることを、「r」は遺伝子工学的に製造された組換え体であることを示す。それ以外の各略語は上述の通りである。
上記単一細胞が増幅したウェルにつき、細胞培養液の半分ずつ(50μLずつ)をそのまま、さきに調製した血液細胞系列用及び血管内皮細胞系列用メチルセルロース培地に添加した。
HSPCコロニー産生能及びEPCコロニー産生能をそれぞれ、12日、14〜18日後に評価した。
HSPCコロニーは、CFU−Mix、CFU−GM、CFU−M、BFU−Eを判定し(図2a−5,6,7,8)、EPCコロニーは、内皮細胞様小細胞コロニー(CFU−small cell like EPC)及び内皮細胞様大細胞コロニー(CFU−large cell like EPC)を判定した(図2a−3,4)。
図2aから明らかなように、単一のCD133陽性細胞の中には、血液系HSPCコロニー及び血管内皮系EPCコロニーの産生が認められるものが存在し、HB含有分画であることが確認された。
【0062】
また、単一細胞から産生されたCFU−small cell like EPC及びCFU−large cell like EPCから、RNAを採取し、血管内皮系の遺伝子発現をRT−PCRにて確認したところ、血管内皮細胞増殖因子受容体−2(vascular endothelial groth factor receptor-2;VEGFR−2)、血管内皮細胞カドヘリン(vascular endothelial cadherin;VE cadherin)、内皮型NO合成酵素(endothelial nitric oxide syntase;eNOS)の発現がいずれのコロニーにも認められ、これらのコロニーが血管内皮系EPCコロニーであることが確認された(図2b)。
RT−PCTについての手順を以下に示す。
RNeasy micro(Mini)kit (QIAGEN)を用いてtotal RNAの抽出を行った。逆転写反応をsuper script (invitrogen) を用いて行いcDNAを作成した。PCR反応をEx Taq kit(TaKaRa)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは以下の通り。
eNOS:
forward: 5’-AACCACATCAAGTATGCCACCAACC-3’(配列番号1)
reverse: 5’-CGTGCCGATCTCAGTGCTCA-3’(配列番号2)
VEGFR−2:
forward: 5’-TGTGATATGTCTGAGACTGAATGCG-3’(配列番号3)
reverse: 5’-CCCAGCATTTCACACTATGGTACC-3’(配列番号4)
VE cadherin:
forward: 5’-ACACCAAGCTCACCCTTCGTC-3’(配列番号5)
reverse: 5’-CTTGTCATGCACCAGTTTGGC-3’(配列番号6)
【0063】
さらに、1000個のCD133陽性細胞を滅菌した24mm x 24mmガラスプレート(松浪ガラス工業)を置いた35mm Primaria dishを用いて血管内皮細胞系列コロニー産生用のメチルセルロース培地にて培養し、出現したCFU−small cell like EPC及びCFU−large cell like EPCコロニーをVEGFR−2、eNOS、VE cadherin抗体を用いて免疫染色を行い、蛍光顕微鏡にて観察したところ、いずれのコロニーも染色され血管内皮系EPCコロニーであることが確認された(図3)。
免疫染色についての手順を以下に示す。
氷冷した1mLのPBS添加によりメチルセルロース除去後、1mLの4%パラホルムアルデヒドを添加して、3時間4℃でインキュベーションを行った。その後、5分のPBSでのインキュベーションによる洗浄を2回行った。5% goat serum-PBS-0.1%Triton-X100にて30分ブロッキングを行った。各一次抗体mouse anti-human VEGFR-2 antibody (V9134, Sigma), mouse anti-human eNOS (NOS Type III 610296, BD Pharmingen)を各々、1:50,1:500の希釈倍率で5% goat serum-PBS-0.1%Triton-X100を用いて希釈した。mouse anti-human VE cadherin antibody (HM2032, Hycult)を、1:10の倍率で2mM CaCl2含有5% goat serum-PBS-0.1%Triton-X100を用いて希釈した。希釈一次抗体を添加して4℃にて12時間インキュベーションを行った。各染色において5分のPBSでのインキュベーションによる洗浄を3回行った。Alexa488-goat anti-mouse IgG (H+L) (Molecular Probe)を1:500の倍率で5% goat serum-PBS-0.1%Triton-X100で希釈後添加し、室温で1時間インキュベーションを行った。5分のPBSでのインキュベーションによる洗浄を3回行った。VECTASHIELD HardSet Mounting Medium with DAPI (H-1500, Vector Lab)を用いて染色されたコロニーのグラスを蛍光顕微鏡用スライドガラスに包埋した。confocal microscopy (FluoViewTMFV1000, Olympus)にて観察撮影した。
【0064】
(3)グラフ作成及び解析
上記(2)で産生されたコロニーを解析した。HSPCコロニーの単独評価において、単一細胞からの産生コロニーの様式からVEGF非存在下(VEGF−)及びVEGF存在下(VEGF+)において合計10個の細胞運命(cell fate)が存在していることがわかった(図4a,X軸方向)。X軸に細胞運命を展開し、Y軸にはそのような細胞運命を有している細胞の数(頻度)をプロットした。いずれかの細胞運命に決定された単一細胞の頻度は、VEGF−及びVEGF+の2グループ(各60個の単一細胞×4サンプル=240個の単一細胞/グループ)において、有意差は認められなかった(図4b)。
EPCコロニーの単独評価において、単一細胞からの産生コロニーの様式からVEGF−及びVEGF+において合計3個の細胞運命が存在した(図4c,X軸方向)。即ち、小細胞EPCコロニーのみを産生する単一細胞、大細胞EPCコロニーのみを単独で産生する単一細胞、両方のコロニーを産生する単一細胞の決定細胞運命領域3種類に分類された。このことから、EPCへと運命が決定された単一細胞の分化度は、CFU−small cell like EPC単独のearly vascular zone=EVZ、両方のintermediate vascular zone=IVZ、CFU−large cell like EPC単独のlate vascular zone=LVZに分類が可能であることが判明した。これに基づいてHB単一細胞のEPCへの運命決定頻度を評価したところ、VEGF−グループではEVZからLVZにかけて変化は認められなかったが、VEGF+グループではLVZにおいてEVZの約2倍、VEGF−groupのLVZの約2倍の頻度が認められ、VEGFにより、CD133陽性細胞の内皮系への分化が促進されることが判明した。また、HB単一細胞のEPCへ決定頻度は、VEGF−グループに比較してVEGF+グループは約1.5倍となり、VEGFはCD133陽性細胞に対するEPCへの細胞系列決定能を有することが明らかとなった(図4c及びd)。
【0065】
さらに、血液系及び血管内皮系における細胞系列決定法を重ね合わせることにより両細胞系列を同時に解析した。血液系及び血管内皮系の細胞運命を同時に評価することにより、細胞運命はVEGF−及びVEGF+グループにおいて合計34個存在することが判明した。血管内皮系細胞系列についてのみ言えばEVZ、IVZ、LVZ及び血液系コロニー産生能のみでEPCコロニーの産生能のないhematopoietic zone=HZの4種類の決定細胞運命領域に分類された。VEGFはHZの細胞運命頻度を約40%程度に有意に減少させることが明らかとなった(図4e及びf)。即ち、HBから血液系細胞系列への分化を抑えて血管内皮系細胞系列への分化を促進していると考えられる。
【0066】
HELICアッセイにより、VEGFがCD133陽性細胞の血管内皮系への細胞系列運命決定及び分化に促進的に作用し、また血液系単独への細胞運命決定を抑制することが示された。このようにHELICアッセイは、HBを含有する細胞分画の単一細胞の血液系、血管内皮系細胞運命決定の解析により、血液系又は血管内皮系の単独評価では解析が不可能な細胞運命決定を正確かつ定量的、簡便に評価できることが明らかとなった。本アッセイの開発は、血液学及び血管生物学の幹細胞生物学において画期的なものとなると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の解析方法は、血液系及び血管内皮系細胞系列の運命をグラフ化、定量化することが可能となり、特に血液系及び血管内皮系細胞系列の運命を同時にグラフ化、定量化することにより、従来の単独細胞系列解析法では判別不可能であった細胞運命の明確化、その定量化が可能となる。
【配列表フリーテキスト】
【0068】
配列番号1 eNOS検出のためのRT−PCR用プライマー(フォワード)
配列番号2 eNOS検出のためのRT−PCR用プライマー(リバース)
配列番号3 VEGFR−2検出のためのRT−PCR用プライマー(フォワード)
配列番号4 VEGFR−2検出のためのRT−PCR用プライマー(リバース)
配列番号5 VE Cadherin検出のためのRT−PCR用プライマー(フォワード)
配列番号6 VE Cadherin検出のためのRT−PCR用プライマー(リバース)
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の解析方法の手順を示す図である。
【図2】図2は、CD133陽性細胞の中に、血液系HSPCコロニー及び血管内皮系EPCコロニーの産生が認められるものが存在し、HB含有分画であることを示す図である。図2aは位相差像を示し、図2bはRT−PCRによりEPCコロニーの産生を確認した図である。図2a1は、CD133陽性単一細胞を播種した12時間後の細胞の様子を示し、図2a2は、単一細胞を7日間増幅培養した後の細胞の様子を示している。図2a3,4はEPCコロニー産生の様子を、図2a5,6,7,8はHSPCコロニーの産生の様子を示している。
【図3】図3は、産生されたコロニーがEPCコロニーであることを示す蛍光染色の結果を示す像である。
【図4】図4は、細胞運命とその頻度との関係を示すグラフである。図4aは、血液系細胞系列の細胞運命とその運命を有する細胞の頻度との関係をグラフ化したものである。10種類の細胞運命に分けられる。図4bは、血液系細胞系列の運命決定に及ぼすVEGFの影響を調べた結果を示すグラフである。図4cは、血管内皮系細胞系列の細胞運命とその運命を有する細胞の頻度との関係をグラフ化したものである。3種類の細胞運命に分けられる。図4dは、血管内皮系細胞系列の運命決定に及ぼすVEGFの影響を調べた結果を示すグラフである。図4eは、血液系細胞系列と血管内皮系細胞系列の細胞運命とその運命を有する細胞の頻度との関係を重ねてグラフ化したものであり、34種類の細胞運命に分けられる。図4fは、血液系細胞系列及び血管内皮系細胞系列の運命決定に及ぼすVEGFの影響を調べた結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞の単一細胞を調製し、得られた単一細胞を増幅する工程(第1工程)、
増幅した細胞を培養し、コロニーを産生させる工程(第2工程)、及び
産生されたコロニーの様式に基づいて単一細胞を群分けし、同じ群に分類される単一細胞の数を測定する工程(第3工程)
を含む、幹細胞の細胞運命の解析方法。
【請求項2】
幹細胞が血液血管芽細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
血液血管芽細胞が、骨髄、臍帯血又は末梢血由来である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
血液血管芽細胞が、CD34陽性及び/又はCD133陽性である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
産生されるコロニーが、血液系細胞コロニー又は血管内皮系細胞コロニーのいずれかである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
血液系細胞コロニーが、赤芽球コロニー(BFU−E)、顆粒球・マクロファージ系コロニー(CFU−GM)、マクロファージコロニー(CFU−M)及び混合コロニー(CFU−Mix)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
血管内皮系細胞コロニーが、内皮細胞様大細胞コロニー(CFU−Large cell like EPC)及び内皮細胞様小細胞コロニー(CFU−small cell like EPC)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
第1工程が、添加因子の存在下又は非存在下で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
添加因子が成長因子である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法を実施することを含む、幹細胞の細胞運命に影響を及ぼす化合物のスクリーニング方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法を実施することを含む、幹細胞から特定の細胞系列へ運命付けられた細胞の濃縮度を確認する方法。
【請求項12】
幹細胞が血液血管芽細胞であり、特定の細胞系列へ運命付けられた細胞が血管内皮前駆細胞である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
幹細胞の単一細胞を培養し、該単一細胞から産生されるコロニーの様式に基づいて群分けし、同じ群に分類される単一細胞の数を測定し、各群について、その群に属する単一細胞の数を対応させることによって得られる、幹細胞の細胞運命の解析用グラフ。
【請求項14】
幹細胞の単一細胞を培養し、該単一細胞から産生されるコロニーの様式に基づいて群分けし、得られた群の種類を細胞運命としてX軸方向に展開し、同じ群に分類される単一細胞の数を頻度としてY軸方向に展開することによって得られる、幹細胞の細胞運命の解析用グラフ。
【請求項15】
幹細胞が血液血管芽細胞である、請求項13又は14記載のグラフ。
【請求項16】
産生されるコロニーが、血液系細胞コロニー又は血管内皮系細胞コロニーのいずれかである、請求項15記載のグラフ。
【請求項17】
血液系細胞コロニーが、赤芽球コロニー(BFU−E)、顆粒球・マクロファージ系コロニー(CFU−GM)、マクロファージコロニー(CFU−M)及び混合コロニー(CFU−Mix)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項16記載のグラフ。
【請求項18】
血管内皮系細胞コロニーが、内皮細胞様大細胞コロニー(CFU−Large cell like EPC)及び内皮細胞様小細胞コロニー(CFU−small cell like EPC)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項16記載のグラフ。

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−55817(P2009−55817A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224782(P2007−224782)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月1日社団法人日本循環器学会発行の「Circulation Journal Vol.71 Supplement I」において「A Single Cell Evaluation of Endothelial Progenitor Cell,Hematopoietic Stem Cell and Hemangioblast in Cord Blood CD 133 Positive Cells」を発表、平成19年3月15日 社団法人日本循環器学会主催の第71回日本循環器学会総会・学術集会において文書をもって発表
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】