説明

細胞集合体選別取得装置及び細胞集合体の選別取得方法

【課題】 自動的に細胞集合体を選別取得する細胞集合体選別取得装置を提供
【解決手段】 細胞集合体選別取得装置100は、定期的な培地交換の時間になると、テーブル111に載置されているマイクロプレート101のウェルを処理位置に配置させ、培地除去装置132を各ウェルの培地Mの内部に位置させ、ウェル内の培地Mを除去し、細胞集合体Cを一時的に培地Mから露出させる。そして、カメラ装置133を動作させて、細胞集合体画像を取得し、細胞集合体画像から細胞集合体の位置、大きさを判断する。そして、細胞集合体Cが所定以上の大きさであると判断すると、マイクロハンド134を用いて細胞集合体Cをウェルから取得し、収集トレイ135へ移動させる。これにより、所定の状態に培養された細胞集合体Cを自動的に取得できる。細胞集合体Cが所定の状態にないと判断すると、培地注入装置131によってウェルの内部に新しい培地Mを注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合体として培養した細胞集合体を取得する細胞集合体選別取得装置に関し、特に、自動的に所定の条件を満たすまで細胞集合体を培養し、所定の条件を満たした細胞集合体のみを選別して取得するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の培養した細胞を取得する装置である自動細胞培養装置について、図8〜図10を用いて説明する。自動細胞培養装置は、細胞培養を行うための清浄空間を維持する筐体10を備え、筐体10内には、細胞培養に必要な機器類と、筐体10内における各機器類間での培養器具の搬送を主に行う多関節型の操作ロボット11とを備えている。
細胞培養に必要な機器類は、筐体10の一の面である背面10aに平行な設置面1に沿って配置されている。機器類としては、インキュベータ14、冷蔵保管庫19、キャッパー53、操作ステーション20、テンポラリステーション9、チップスタンド8、及び遠心分離器7(図9)が配置されている。
【0003】
自動細胞培養装置には、設置面1に沿って敷設された水平軸部材としてのレール13と、レール13に直交する方向に延伸する垂直軸部材としての昇降ポスト3とが設けられている。操作ロボット11は昇降ポスト3の上端に取り付けられている。昇降ポスト3がレール13に対して上下することにより、操作ロボット11の上下の移動が可能となっている。また、昇降ポスト3がレール13に沿って水平移動することにより、操作ロボット11の水平移動が可能となっている。
【0004】
操作ロボット11は2本のフィンガー11aを備えている。2本のフィンガー11aを用いて、筐体10内における各機器類間での培養器具の搬送及び培養操作を行う。
【0005】
次に、自動細胞培養装置の動作を説明する。操作ロボット11は、レール13上を移動しながら、細胞培養中のディッシュを対象とする培地交換、継代操作等を自動的に実行する。
【0006】
自動細胞培養装置は、培地交換を行う場合には以下の動作を実行する。チップスタンド8に載置されているチップ5がピペット装置6に取り付けられ、5枚のディッシュから古い培地が順次吸引されて廃棄される。続いて、操作ロボット11はレール13上を移動して棚15又は冷蔵保管庫19から培地容器を取り出し、キャッパー53において開栓した後、テンポラリステーション9に設置する。一方、ピペット装置6はチップ5を新しいものに交換する。次に、ピペット装置6はテンポラリステーション9の薬液容器から培地を吸引し、操作ステーション20の各ディッシュに培地を順次注入する。その後、テンポラリステーション9の薬液容器は操作ロボット11によりキャッパー53まで搬送され、そこで閉栓された後、もとの棚15又は冷蔵保管庫19に戻される。以上により、自動細胞培養装置を用いた培地交換が完了する。
【0007】
また、 自動細胞培養装置は、継代操作を行う場合には以下の動作を実行する。まず、前述と同様に各ディッシュ内の培地がピペット装置6により廃棄される。次に、操作ロボット11により、トリプシン等の培養細胞の剥離用の溶液を入れた容器が冷蔵保管部から取り出され、キャッパー53まで搬送され、そこで開栓された後、テンポラリステーション9に設置される。ピペット装置6には、前述と同様に新しいチップ5がピペット装置6に取り付けられる。
【0008】
次に、ピペット装置6はピペット5によりこの剥離用の溶液が吸引され、操作ステーション20の各ディッシュに順次注入される。全てのディッシュへの剥離溶液の注入が終わると、テンポラリステーション9の剥離用溶液の容器はキャッパー53によって閉栓された後、操作ロボット11によりもとの冷蔵保管庫19に戻される。次に、操作ロボット11は、棚15から生理食塩水の容器を取り出し、キャッパー53において開栓した後、テンポラリステーション9に設置する。一方、操作ステーション20の各ディッシュは一定時間放置された後、細胞の剥離を促進するためにタッピング操作を受ける。次に、操作ステーション20の各ディッシュには、新しいものに交換したチップ5を用いてテンポラリステーション9に設置された生理食塩水の容器から生理食塩水が注がれる。その後、テンポラリステーション9の生理食塩水の容器はキャッパー53によって閉栓された後、もとの棚15に戻される。
【0009】
次に、操作ロボット11により、培養器具保管部56から遠心管が取り出されてテンポラリステーション9に設置される。次に、新しいものに交換したチップ5により各ディッシュから細胞を含む液が吸引され、遠心管に入れられる。次に、操作ロボット11はキャッパー53において遠心管を閉栓した後、これを遠心分離器7に設置する。これにより遠心分離が行われる。一方、空になったディッシュを載置したトレイ26は、操作ロボット11により操作ステーション20から取り除かれる。次に、新たなディッシュを載置したトレイ26が操作ステーション20に設置される。
【0010】
遠心分離が終了すると、遠心管からピペット5により上澄み液が廃棄され、上述と同様にテンポラリステーション9に設置された容器から更に新たな培地が注がれる。次に、新しいものに交換したチップ5により遠心管から細胞を含む液が操作ステーション20の各ディッシュに注がれる。その後、操作ロボット11はキャッパー53において培地の容器を閉栓した後、もとのもとの棚15又は冷蔵保管庫19に戻される。続いて、操作ロボット11によりトレイ26がインキュベータ14に搬送される。以上により、自動細胞培養装置を用いた継代操作が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−291104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の自動細胞培養装置には、次に示すような改善すべき点がある。自動細胞培養装置では、培地交換を行うか、継代操作を行うかについては、自動細胞培養装置の操作者が判断しなければならない。したがって、全ての処理を自動的に処理して、細胞の所定の状態に培養できるわけではない、という改善すべき点がある。
【0013】
また、前述の自動細胞培養装置では、ディッシュで細胞を培養し、また、培養した細胞を剥離用溶液を用いて剥離した後に細胞を取得している。つまり、自動細胞培養装置は、培養基質を用いて培養した細胞を対象としている。このため、細胞を培養基質を用いずに培地中で培養する場合、例えば、細胞を立体的な細胞集合体を形成するように培養する場合には、前述の自動細胞培養装置を用いることはできない、という改善すべき点がある。
【0014】
そこで、本発明は、自動的に所定の条件を満たすまで細胞集合体を培養し、所定の条件を満たした細胞集合体のみを選別して取得する細胞集合体選別取得装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
本発明に係る細胞集合体選別取得装置は、所定の培地中で細胞を培養し、前記細胞が立体的に凝縮した細胞集合体を形成するための細胞培養容器に前記培地を注入、除去するための培地注入・除去手段、前記細胞培養容器で培養されている前記細胞集合体の状態を示す画像である細胞集合体画像として取得する細胞集合体画像取得手段、前記細胞培養容器から培養した前記細胞集合体を取得するための細胞集合体取得手段、を有する細胞集合体選別取得装置であって、前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させ、前記細胞集合体画像取得手段に前記細胞集合体画像を取得させ、前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にあると判断すると、前記細胞集合体取得手段に前記細胞集合体を取得させ、前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にないと判断すると、前記培地注入・除去手段に前記細胞培養器に前記培地を注入させる。
【0016】
これにより、培養状態によって細胞集合体を選別し、自動的に、細胞集合体の取得、培養を行うことができる。
本発明に係る細胞集合体選別取得装置では、前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させる際に、前記細胞培養容器において前記細胞集合体が前記培地から露出するまで、又は、前記培地から露出する直前まで、前記培地を除去させること、を特徴とする。
【0017】
これにより、 培地の表面における光の屈折がないので、細胞集合体の位置を容易に判断することができる。また、培地の表面における光の屈折がないので、細胞集合体の大きさを正確かつ容易に判断することができる。さらに、細胞集合体が培地の外部に露出するので、細胞集合体を容易に取得することができる。
【0018】
本発明に係る細胞集合体選別取得装置では、前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させる際に、前記細胞培養容器における前記培地の液面の低下に合わせて、前記培地の除去位置を移動させること、を特徴とする。
【0019】
これにより、細胞培養容器内で培養されている細胞及び細胞集合体を除去することなく、培地のみを除去することができる。
【0020】
本発明に係る細胞集合体選別取得装置では、さらに、前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させる際に、前記細胞培養容器内の前記細胞又は前記細胞集合体を所定の領域から外部に移動しないようにする移動制限手段を有すること、を特徴とする。
【0021】
これにより、細胞培養容器内で培養されている細胞及び細胞集合体を除去することなく、培地のみを除去することができる。
本発明に係る細胞集合体選別取得装置は、さらに、複数の前記細胞培養容器を載置する細胞培養容器載置手段、を有し、前記細胞培養容器載置手段に前記細胞培養容器を、順次、所定の処理位置に移動させて、前記培地の除去、前記細胞集合体画像の取得、前記細胞集合体の取得、及び前記培地の注入を行うこと、を特徴とする。
【0022】
これにより、複数の細胞培養容器に対して容易に培地の除去、細胞集合体画像の取得、細胞集合体の取得、及び培地の注入を行うことができる。
本発明に係る細胞集合体選別取得装置では、前記細胞培養容器載置手段は、所定の回転軸を中心に複数の前記細胞培養容器を載置し、前記回転軸を中心に回転することによって、前記細胞培養容器を前記処理位置へ移動させること、を特徴とする。
【0023】
これにより、容易に細胞培養容器を所定の処理位置に配置することができる。
本発明に係る細胞集合体選別取得装置では、前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させるのは、定期的な前記培地の交換時であること、を特徴とする。
【0024】
これにより、培地交換以外の特別な作業を必要とせずに、細胞集合体を取得することができる。
本発明に係る細胞集合体の選別取得方法は、所定の培地内で細胞を培養し、前記細胞が立体的に凝縮した細胞集合体を形成するための細胞培養容器から培養された前記細胞集合体を取得するための細胞集合体選別取得方法であって、前記細胞培養容器から前記培地を除去し、前記細胞集合体の画像である細胞集合体画像を取得し、前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にあると判断すると、前記細胞集合体を取得し、前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にないと判断すると、前記細胞培養器に前記培地を注入すること、を特徴とする。
【0025】
これにより、細胞集合体の培養状態によって、自動的に、細胞集合体の取得、培養を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】細胞集合体選別取得装置100の全体構成を示す図である。
【図2】マイクロハンド134に用いる技術を説明するための図である。
【図3】マイクロハンド134に用いる技術を説明するための図である。
【図4】マイクロハンド134に用いる技術を説明するための図である。
【図5】マイクロハンド134に用いる技術を説明するための図である。
【図5a】細胞集合体選別取得装置100の第1段階における動作を説明するための図である。
【図6】細胞集合体選別取得装置100の第2段階における動作を説明するための図である。
【図7】細胞集合体選別取得装置200の全体構成を示す図である。
【図8】従来の細胞集合体選別取得装置を示した図である。
【図9】従来の細胞集合体選別取得装置を示した図である。
【図10】従来の細胞集合体選別取得装置を示した図である。
【図11】細胞集合体選別取得装置300の観察装置335に用いる技術を説明するための図である。
【図12】細胞集合体選別取得装置300の観察装置335に用いる技術を説明するための図である。
【図13】細胞集合体選別取得装置300の観察装置335に用いる技術を説明するための図である。
【図14】細胞集合体選別取得装置300の観察装置335に用いる技術を説明するための図である。
【図15】細胞集合体選別取得装置400の全体構成を説明するための図である。
【図16】細胞集合体選別取得装置400の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0028】
第1 構成
本発明に係る細胞集合体選別取得装置100は、立体的な集合体として培養された細胞である細胞集合体を選別し、所定の条件を満たした細胞集合体を取得する装置である。
【0029】
ここで、細胞集合体選別取得装置100が対象とする細胞集合体について説明する。細胞集合体とは、培養基質を用いずに、培地中で立体的な集合体として培養された細胞群をいう。細胞集合体の培養においては、培養途中、特に細胞が緩やかに固まりはじめ立体的な集合体を形成し始める段階において、細胞を吸い取ってしまうことなく、培地を交換する必要がある。この段階で、誤って細胞集合体の緩やかな塊をほぐしたり、細胞集合体の一部を吸い取ったりすると、最終的に形成された細胞集合体のサイズにばらつきが生じてしまう。このため、細胞集合体の形成過程において、適切に培地を交換することが重要となる。また、細胞集合体を所定の状態以上のサイズまで培養すると、細胞集合体の内部への酸素の拡散が悪くなり、細胞集合体の内部の細胞が死に始めてしまう。このため、適切な状態で、培養した細胞集合体を取得することも重要となる。
【0030】
次に、細胞集合体選別取得装置100の構成について図1を用いて説明する。ここで、細胞集合体選別取得装置100は、無菌室に配置される。
【0031】
細胞集合体選別取得装置100は、マイクロプレート101を載置するマイクロプレート載置部110、マイクロプレート101に対して各種の処理操作を行う処理部120を有している。ここでは、マイクロプレート101として、複数のウェル、例えば96ウェルを有するマイクロプレートを使用する。
【0032】
マイクロプレート載置部110は、所定の回転軸111Jを中心に矢印a1方向へ回転する円形のテーブル111、テーブル111を内包する筐体113を有している。なお、テーブル111を回転させる回転機構、テーブル111の回転を回転制御機構については図示していない。
【0033】
テーブル111には、複数のマイクロプレート101が載置される。マイクロプレート載置部110は、マイクロプレート101が載置されているテーブル111を回転させることによって、各マイクロプレート101の各ウェルを所定の処理位置(後述)に配置する。
【0034】
処理部120は、処理ユニット130、
培地貯蔵装置136、及び廃棄培地貯蔵装置137を有している。培地貯蔵装置136は、内部に培地を貯蔵している。培地貯蔵装置136は、所定のコンプレッサ(図示せず)と接続されている。培地貯蔵装置136は、
コンプレッサによって、内部に貯蔵している培地を矢印a3方向へ送出する。廃棄培地貯蔵装置137は、所定の負圧ポンプ(図示せず)と接続されている。廃棄培地貯蔵装置137は、負圧ポンプによって、マイクロプレート101のウェルから除去された培地を一時的に貯蔵する。
【0035】
処理ユニット130は、培地注入装置131、培地除去装置132、カメラ装置133、マイクロハンド134、及び収集トレイ135を有している。処理ユニット130は、テーブル111の回転方向に対して直交する矢印a11、矢印a13方向へ直線的に移動することができる。テーブル111によるマイクロプレート101の配置位置及び処理ユニット130の配置位置によって、マイクロプレート101の各ウェルを、処理ユニット130が最も処理しやすい位置(処理位置)に配置することができる。
【0036】
培地注入装置131は、
マイクロプレート101の各ウェルへ培地を注入する。培地注入装置131は、培地貯蔵装置136と接続されている。培地注入装置131は、培地貯蔵装置136から培地を取得し、マイクロプレート101の各ウェルへ注入する。
【0037】
培地除去装置132は、マイクロプレート101の各ウェルから培地を吸引し、各ウェルから培地を除去する。培地除去装置132は、廃棄培地貯蔵装置137と接続されている。培地除去装置132は、マイクロプレート101の各ウェルから培地を吸引し、取得した培地を矢印a7方向へ送出する。
【0038】
培地注入装置131、培地除去装置132のそれぞれには、伸縮可能な管状部(図示せず)が配置されている。培地注入装置131は、培地を注入する際に、細胞塊が破壊されないように、管状部の先端を所定の位置まで伸長する。培地除去装置132は、培地を除去する際に、細胞塊が破壊されないように、各ウェルに貯留されている培地の内部の所定の位置まで管状部の先端を伸長する。
【0039】
カメラ装置133は、
マイクロプレート101の各ウェルの画像を取得する。カメラ装置133は、マイクロプレート101の各ウェルの上方からの画像を取得する。
【0040】
収集トレイ135は、マイクロハンド134によって取得した細胞塊を一時的に保持する。
【0041】
1.マイクロハンド134
マイクロハンド134は、
マイクロプレート101の各ウェルから細胞集合体を取得する。マイクロハンド134は、特開2006−204612号公報に開示されているバルーンアクチュエータを用いたフィンガーアクチュエータ1の所定の一又は複数のフィンガー部によって構成されている。以下において、
特開2006−204612号公報に開示されているフィンガーアクチュエータについて図2〜図5を用いて説明する。
【0042】
(1)全体構成
図2はフィンガーアクチュエータ1の全体構成を示している。フィンガーアクチュエータ1は、人の手の親指、人差し指、中指、薬指、小指に相当する5本(複数)のフィンガー部2a,2b,2c,2d,2eを備えている。各フィンガー部2a,2b,2c,2d,2eは関節部3において屈曲することができ、人の手のように物体の把持などを行うことができる。なお、フィンガーアクチュエータ1は、一本のフィンガー部によって構成されていてもよい。
【0043】
親指に相当する第1フィンガー部2aは、2つの関節部3を有し、他の指に相当する第2〜第5フィンガー部2b,2c,2d,2eは、それぞれ、3つの関節部3を有している。これらの関節部3は、空気圧によって曲がり運動を行うバルーンアクチュエータ5a,5b,5cによって構成されている。
【0044】
このフィンガーアクチュエータ1は、1本のフィンガー部2の幅が1mm程度、長さが3〜3mm程度のいわゆるマイクロフィンガーであって、微小な対象物を取り扱うのに適している。
【0045】
フィンガーアクチュエータ1は、各フィンガー部2a,2b,2c,2d,2eが取り付けられた治具(取付部)4を有している。この治具4は、空気注入用のチューブを取り付けるための8つ(複数)の空気注入部6を有している。これらの空気注入部6から空気各バルーンアクチュエータ5へのチャネル部(空気供給路)7が、治具4から各フィンガー部2a,2b,2c,2d,2eにわたって形成されており、各バルーンアクチュエータ5a,5b,5cへ空気を供給することができる。
【0046】
親指に相当し、2つの関節部3(バルーンアクチュエータ5a,5b)を有する第1フィンガー部2aには、2つのチャネル部7が割り当てられており、2つの関節部3(バルーンアクチュエータ5a,5b)を個別に駆動させることができる。
【0047】
人差し指に相当する第2フィンガー部2b及び中指に相当する第3フィンガー部2cは、3つの関節部3を有しているが、それぞれ、2つのチャネル部7が割り当てられている。一つ目のチャネル部7は最も治具4寄りの第1バルーンアクチュエータ5aに割り当てられ、二つ目のチャネル部7は、フィンガー先端側の第2バルーンアクチュエータ5b及び第3バルーンアクチュエータ5cに割り当てられている。したがって、これらのフィンガー部2b,2cの第1バルーンアクチュエータ5aと、第2及び第3バルーンアクチュエータ5b,5cとは個別駆動が可能であるが、第2及び第3バルーンアクチュエータ55b,5cは、同時に動作する。
【0048】
薬指に相当する第4フィンガー部2d及び小指に相当する第5フィンガー部2eは、3つの関節部3を有しているが、それぞれ1つのチャネル部7が割り当てられている。したがって、これらのフィンガー部2d,2eの第1〜第3バルーンアクチュエータ5a,5
b,5cは、同時に動作する。
【0049】
(2)フィンガー部の構造及び動作
図3は、第4又は第5フィンガー部2d,2eの断面図を示している。なお、第1〜第3フィンガー部2a,2b,2cについても、バルーンアクチュエータの数やチャネル数が異なるだけで、基本的構造は、第4又は第5フィンガー部2d,2eと同様である。そこで、以下では、図2に示すフィンガー部2d,2eを、単に、フィンガー部2とよぶ。
【0050】
フィンガー部2は、2つのシリコーンラバー層11,12から構成されており、全体が1mm以下の薄く柔軟な構造となっている。具体的には、フィンガー部2は、シリコーンラバーフィルムからなる第1膜体11と、同じくシリコーンラバーフィルムからなる第2膜体11とを積層して構成されている。
【0051】
第1膜体11と第2膜体12との間には、部分的に、空気が供給されて膨張する空間13と、当該空間13へ空気を供給するためのチャネル部(空気供給路)7と、が形成されている。フィンガー部2のうち、空間13が形成された部分はバルーンアクチュエータ5a,5b,5cとして機能する。空間13及びチャネル部7は、空間13及びチャネル部7に相当する部分の第1膜体11を凹状形成することによって形成されている。なお、第2膜体12はフラットに形成されている。
【0052】
なお、空間13は、幅方向寸法よりも長手方向寸法が大きい形状(矩形状)に形成されている。ただし、空間13の形状は特に限定されるものではない。
【0053】
また、フィンガー部2において、関節部3となるバルーンアクチュエータ5a,5b,5cの間の範囲14a,14b、第1バルーンアクチュエータ5aよりも治具(取付部)4側の範囲15a、及び第3バルーンアクチュエータ5aよりも先端側15bの範囲は、曲がり運動が実質的に生じない基部14a,14b,15a,15bとされている。
【0054】
第1膜体11及び第2膜体12は、シリコーンラバーの一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)薄膜によって構成されている。第1実施形態のフィンガー部2は、PDMSだけで形成されているため、全体が柔軟であり、(把持)対象物の損傷を防止することができる。
【0055】
バルーンアクチュエータ5a,5b,4cを構成する第1膜体11と第2膜体12は、それぞれ厚さが異なっている。具体的には、第1膜体11において、バルーンアクチュエータ5に相当する部分(凹状形成された部分)の厚さTtよりも、第2膜体12の厚さTbが大きくなっている。
【0056】
また、第1膜体11と第2膜体とは、ともにPDMSによって形成されているが、それぞれ硬度が異なっている。具体的には、第1膜体11は、第2膜体12よりも硬度が低く形成されている。
【0057】
なお、膜体11,12の厚さや硬度を異ならせる方法については後述する。
【0058】
第1膜体11と第2膜体12は、ともに伸縮自在なシリコーンラバーによって形成されているため、両膜体11,12のうちバルーンアクチュエータ5a,5b,5cを構成する部分は、空間13内に供給された空気の圧力Pによって、風船のように、その表面積を拡げつつ伸びて膨張することができる。そして、これらのバルーンアクチュエータ5a,5b,5cは、全体が柔軟な材料であるPDMS(シリコーンラバー)によって形成されているため、従来のバルーンアクチュエータに比べて低い圧力で膨張することができる。例えば、従来のバルーンアクチュエータでは膨張するために数百kPa必要であったが、バルーンアクチュエータ5a,5b,5cでは、100kPa以下で膨張することができる。
【0059】
バルーンアクチュエータ5a,5b,5cでは、第1膜体11が、第2膜体12よりも薄く柔らかいため、同じ圧力下でも、第1膜体11は第2膜体12よりも大きく膨張することができる。換言すると、第2膜体12は、第1膜体11よりも厚く硬度が高いため、同じ圧力下では第1膜体11よりも小さく膨張することしかできない。
【0060】
図4及び図5は、図3のバルーンアクチュエータ5a,5b,5cの膨張の様子を示している。
【0061】
図4は、空気圧Pが、ある圧力Psat未満である場合における膨張の様子を示しており、この場合、バルーンアクチュエータ5a,5b,5cを構成する第1膜体11及び第2膜体12は、空気圧Pによって共に膨張するものの、薄く柔らかい第1膜体11の方が、より大きく膨張する。
【0062】
膜体11,12が膨張すると、それぞれの膜体11,12において、図示のような引っ張り応力Ft、Fbが発生する。
【0063】
ここで、図3では、第2バルーンアクチュエータ5bについて注目すると、引っ張り応力Ft、Fbは、当該バルーンアクチュエータ5bの両側にある基部14a,14bを近づける方向の力となる。図3の状態では、第1膜体11に発生する引っ張り応力の方が第2膜体12に発生する引っ張り応力よりも大きくなっている(Ft>Fb)。このため、バルーンアクチュエータ5bは、より大きな引っ張り応力Ftによって、基部14bが基部14aに対して上方に移動する曲がり運動を行う。すなわち、図3の状態では、第1膜体11の膨張方向と同じ方向への曲がり運動が生じる。
【0064】
図4において、第1膜体11の引っ張り応力Ftが第2膜体12の引っ張り応力Fbよりも大きくなるのは次の理由のためである。つまり、厚く硬度の高い第2膜体12では、空気圧Pが比較的低い場合には、大きな引っ張り応力を生じさせるほどの伸びがほとんど生じないため、第2膜体12で発生する引っ張り応力Fbも小さくなる。これに対して、薄く柔らかい第1膜体12では、比較的低い空気圧Pであっても十分な伸びが生じて大きく膨張するため、第1膜体11で発生する応力Ftも大きくなる。
【0065】
そして、第2バルーンアクチュエータ5bと同様の曲がり運動が、他のバルーンアクチュエータ5a,5bについても生じ、フィンガー部2全体が、上方への曲がり運動を行う。
【0066】
図5は、空気圧Pがある圧力Psatよりも大きくなった場合における膨張の様子を示しており、この場合、フィンガー部2は図4とは逆方向(下方)への曲がり運動を行う。
【0067】
空気圧Pが大きくなると、バルーンアクチュエータを構成する第1膜体11及び第2膜体12はさらに伸びて膨張する。
【0068】
図4での第2膜体12の膨張(伸び)は僅かであったが、圧力が十分に高くなることで、厚く硬度の高い第2膜体12においても大きな引っ張り応力Fbが生じるほどの十分な膨張(伸び)が生じる。
【0069】
しかも、第2膜体12は、第1膜体11よりも厚く硬度が高いため、一旦十分な伸びが生じた場合の第2膜体12における引っ張り応力Fbは、第1膜体11において生じる引っ張り応力Ftよりも大きくなる。
【0070】
つまり、図4では、Ft<Fbであり、バルーンアクチュエータ5bは、より大きな引っ張り応力FbによってFtに打ち勝ち、基部14bが基部14aに対して下方に移動する曲がり運動を行う。すなわち、図5の状態では、第2膜体12の膨張方向と同じ方向への曲がり運動が生じる。
【0071】
そして、第2バルーンアクチュエータ5bと同様の曲がり運動が、他のバルーンアクチュエータ5a,5bについても生じ、フィンガー部2全体が、下方への曲がり運動を行う。
【0072】
なお、第2膜体12の引っ張り応力による曲がり運動の最大移動量は、第1膜体12の引っ張り応力による曲がり運動の最大移動量よりも大きくなっている。
【0073】
また、上記のフィンガーアクチュエータ1では、第2膜体12側が人間の手のひら側に相当し、図4の曲がり運動が人間の手による把持動作に類似したものとなる。
【0074】
以上のように、バルーンアクチュエータ5a,5b,5cによれば、2つの方向への曲がり運動が可能である。すなわち、従来のバルーンアクチュエータでは、1方向動作だけであったのに対して、第1実施形態に係るバルーンアクチュエータ5a,5b,5cでは2方向動作が可能である。
【0075】
また、バルーンアクチュエータ5a,5b,5cによれば、空気圧Pによって曲がり運動方向を変えることができる。従来のバルーンアクチュエータでは、空気圧を変化させると、運動量(移動量)を変えることはできたが、運動方向まで変えることはできない。これに対して、第1実施形態に係るバルーンアクチュエータ5a,5b,5cでは、空気圧Pの変化によって運動量(移動量)を変えるとともに、空気圧Pをある圧力Psatよりも小さくしたり大きくしたりすることで、曲がり運動の方向を変えることもできる。
【0076】
したがって、バルーンアクチュエータ5a,5b,5cに供給される空気圧(流体圧)を検出する圧力センサ(図示せず)と、圧力センサで検出した圧力値に基づきバルーンアクチュエータ5a,5b,5cに供給される圧力を制御する制御装置(図示せず)と、を備えることで、曲がり運動量、曲がり運動方向を自在に制御することができる。
【0077】
なお、圧力センサは、バルーンアクチュエータ5a,5b,5cの空間13内や、チャネル部7内に設けることができる。また、制御装置は、マイクロコンピュータ・メモリなどを有するコンピュータと、コンピュータからの信号に基づき圧力を調節する電空レギュレータによって構成することができる。
【0078】
さらに、圧力センサに代えて、歪みセンサ(図示せず)を設けて、各膜体11,12に発生する引っ張り応力を検出してもよい。歪みセンサを設ける場合、第1膜体11と第2膜体12のバルーンアクチュエータ5a,5b,5cに相当する部分に、それぞれ歪みセンサを配置し、各膜体11,12に発生する引っ張り応力を個別に検出して、こられの検出値に基づいて、制御装置がバルーンアクチュエータ5に供給する圧力を制御すればよい。
【0079】
また、バルーンアクチュエータ5に供給される空気圧は、チャネル部7ごとに個別制御することができ、これにより、フィンガーアクチュエータ1は、人間の手に類似した複雑な動作を行うことができるとともに、2方向運動が可能であることから、人間の手よりも一層複雑な動作を行うこともできる。
【0080】
上記フィンガーアクチュエータ1では、前述のように、第2膜体12側で物体(対象物)を把持することができる。そして、第2膜体12は、曲がり運動が生じているときでも、膨張量が少ないため、対象物を把持する把持面(作用面)として好適である。なお、従来のバルーンアクチュエータでは、大きく膨張する方向に曲がりが生じるため、この膨張面を把持面とするのが困難である。
【0081】
また、上記フィンガーアクチュエータ1では、図12の従来構造に比べて、効率が向上している。すなわち、加圧圧力(空気圧)とそれによって生じる力の関係を測定すると、上記フィンガーアクチュエータ1では、高い効率が得られた。これは、PDMSが非常に柔軟な材料であることに加え、2枚のPDMS膜の組み合わせにおいて、薄い膜と厚い膜を用いているため、加圧圧力が力(変位ではなく)として有効に使われているためと考えられる。
【0082】
また、フィンガー部2において、バルーンアクチュエータ5a,5b,5cによって構成される関節部3以外の範囲(基部14a,14b,15a,15b)には、不必要な屈曲を防止するための補強部(図示せず)を設けても良い。補強部は、フィンガー部2の基部表面に取り付けても良いし、第1膜体11及び/又は第2膜体12の内部に設けても良い。
【0083】
第2 動作
次に、細胞集合体選別取得装置100の動作を説明する。細胞集合体選別取得装置100は、細胞の培養過程における、細胞が緩やかに固まりはじめる段階である第1段階と、細胞がある程度固まった第2段階とで、異なる動作を行う。このように第1段階と第2段階とで異なる動作としたのは、第1段階において、培地交換の際に誤って細胞の一部を吸い取ったり、細胞の緩やかな塊をほぐしたりすると、最終的に形成される細胞集合体に生ずるサイズのばらつきを防止するためである。
【0084】
1.第1段階の動作
細胞集合体選別取得装置100の第1段階における動作について図5aを用いて説明する。ここで、図5aAに示すように、マイクロプレート101には、各ウェルに培地Mが注入されている。各ウェルでは、培地M中で細胞集合体Cが培養されている。
【0085】
細胞集合体選別取得装置100は、所定の時間、例えば定期的な培地交換の時間になると、テーブル111及び処理ユニット120を動作させて、テーブル111に載置されている一のマイクロプレート101の一のウェルを所定の処理位置に配置させる。図5aBに示すように、細胞集合体選別取得装置100は、培地除去装置132の管状部132aを所定の位置まで伸長させる。これにより、管状部132aの先端Tを各ウェルの培地Mの内部に位置させる。細胞集合体選別取得装置100は、培地除去装置132を用いて、ウェル内の培地Mを吸引し、排気培地貯蔵装置137への送出を開始する。
【0086】
図5aCに示すように、培地除去装置132は、培地の除去にともなう培地液面Sの矢印a51方向への低下に合わせて、管状部132aの先端Tを矢印a53方向へ移動させる。ウェルの培地の量、ウェルの平面面積、吸引する培地の時間量等から、ウェルにおける培地液面Sの低下速度を予め算出することができる。よって、算出した培地液面Sの低下速度に合わせて、管状部132aの先端Tの移動速度を算出する。培地液面Sの低下に合わせて、管状部132aの先端Tを移動させることによって、ウェルの下部の培地を攪拌することなく、また、ウェルの下部に位置する細胞集合体Cを破壊することなく、培地を除去することができる。
【0087】
図5aDに示すように、培地除去装置132は、最初の培地の量の50%〜60%を除去する。細胞集合体選別取得装置100は、培地Mの除去が終了すると、管状部132aの先端Tを短縮させ、元の状態とする。
【0088】
図5aEに示すように、細胞集合体選別取得装置100は、培地の除去が終了すると、培地注入装置131の管状部131aをウェルの所定の位置まで伸長させる。そして、ウェルの内部に培地貯蔵装置136に貯蔵されている新しい培地Mを注入する。なお、注入する培地Mの量は、予め設定しておく。培地Mの注入が終了すると、細胞集合体選別取得装置100は、次のウェルを処理位置に移動させ、図5aA〜図5aEの処理を繰り返す。
【0089】
2.第2段階の動作
細胞集合体選別取得装置100の第2段階における動作について図6を用いて説明する。ここで、図6Aに示すように、マイクロプレート101には、各ウェルに培地Mが注入されている。各ウェルでは、培地M中に一つの細胞集合体Cが培養されている。細胞集合体Cが培養されているマイクロプレート101が、複数、テーブル111に載置されているものとする。
【0090】
細胞集合体選別取得装置100は、所定の時間、例えば定期的な培地交換の時間になると、テーブル111及び処理ユニット120を動作させて、テーブル111に載置されている一のマイクロプレート101の一のウェルを所定の処理位置に配置させる。図6Bに示すように、細胞集合体選別取得装置100は、培地除去装置132の管状部132aを所定の位置まで伸長させる。これにより、管状部132aの先端Tを各ウェルの培地Mの内部に位置させる。細胞集合体選別取得装置100は、培地除去装置132を用いて、ウェル内の培地Mを吸引し、排気培地貯蔵装置137へ送出する。培地除去装置132は、ウェル内の細胞集合体Cを、一時的に、培地Mから露出させるまで培地を除去する。なお、除去する培地Mの量は、予め設定しておく。細胞集合体選別取得装置100は、培地Mの除去が終了すると、管状部132aの先端Tを短縮させ、元の状態とする。
【0091】
次に、図6Cに示すように、カメラ装置133を動作させて、細胞集合体Cを含むウェルの画像である細胞集合体画像を取得する。細胞集合体選別取得装置100は、取得した細胞集合体画像から細胞集合体の大きさを判断する。ウェルから培地を除去し、細胞集合体を露出させているので、細胞集合体画像から細胞集合体Cの位置及び大きさを正確かつ容易に判断することができる。なお、細胞集合体画像から細胞集合体を特定する技術については、一般的な画像処理技術を適宜選択して用いる。
【0092】
図6Dに示すように、細胞集合体選別取得装置100は、細胞集合体Cが所定の状態、例えば最大直径50μm〜100μmの大きさであると判断すると、マイクロハンド134を伸長させる。細胞集合体選別取得装置100は、マイクロハンド134を用いて細胞集合体Cをウェルから取得する。細胞集合体選別取得装置100は、マイクロハンド134の動作に合わせて、収集トレイ135を動作させて、マイクロハンド134の近傍の所定の位置に配置させる。なお、収集トレイ135には、所定量の培地を注入しておく。
【0093】
図6Eに示すように、細胞集合体選別取得装置100は、マイクロハンド134を用いて取得した細胞集合体Cを収集トレイ135へ移動させる。これにより、所定の状態に培養された細胞集合体Cを自動的に取得することができる。
【0094】
なお、図6Fに示すように、細胞集合体選別取得装置100は、細胞集合体Cが所定の状態にないと判断すると、培地注入装置131の管状部131aをウェルの所定の位置まで伸長させる。そして、ウェルの内部に培地貯蔵装置136に貯蔵されている新しい培地Mを注入する。なお、注入する培地Mの量は、予め設定しておく。細胞集合体Cの取得又は新しい培地Mの注入が終了すると、細胞集合体選別取得装置100は、次のウェルを処理位置に移動させ、図6B〜図6Fの処理を繰り返す。

【実施例2】
【0095】
前述の実施例1における細胞集合体選別取得装置100は、無菌室で利用するものであった。本実施例における細胞集合体選別取得装置200は、実験室の机の上等、無菌環境でない状態で使用するものである。なお、以下においては、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号を付している。また、実施例1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0096】
1.構成
細胞集合体選別取得装置200の構成ついて図7を用いて説明する。細胞集合体選別取得装置200は、無菌シェル211、恒温・換気装置213、小型コンプレッサ215、小型負圧ポンプ217を有している。無菌シェル211は、処理ユニット130を内包する。恒温・換気装置213は、マイクロプレート載置部110に接続される。恒温・喚起装置213は、外部から空気を取得し、取得した空気を所定の温度に調節し、また、所定のフィルタを用いて取得した空気を洗浄する。恒温・喚起装置213は、温度を調節し洗浄した空気をマイクロプレート載置部110の内部へ送出する。また、恒温・喚起装置213は、マイクロプレート載置部110から空気を吸引し外部へ排出する。恒温・喚起装置213は、マイクロプレート載置部110の内部を所定の状態に維持する。
【0097】
小型コンプレッサ215は、培地貯蔵装置136に接続される。小型負圧ポンプ217は、廃棄培地貯蔵装置137に接続される。小型コンプレッサ215、小型負圧ポンプ217、それぞれの機能は、実施例1におけるコンプレッサ、負圧ポンプと同様である。
なお、細胞集合体選別取得装置200の動作については、実施例1における細胞集合体選別取得装置100と同様である。

【実施例3】
【0098】
前述の実施例1における細胞集合体選別取得装置100では、マイクロハンド134によって取得した細胞集合体をマイクロプレート101から収集トレイ135へ移動させて、所定の細胞集合体を収集することとしたが、本実施例における細胞集合体選別取得装置300は、取得した細胞集合体を収集以外の観察する観察装置335に提供する。以下においては、細胞集合体選別取得装置300について説明する。
【0099】
第1 構成
細胞集合体選別取得装置300は、細胞集合体選別取得装置100に観察装置335を付加したものである。観察装置335は、マイクロハンド134が所定の細胞集合体を取得した後に、収集トレイ135と同様に、マイクロハンド134に対して所定の位置まで移動し、取得した細胞集合体について観察を行えるようにするものである。
【0100】
細胞集合体選別取得装置300では、使用者の判断、若しくは、自動的に、マイクロハンド134によって取得した細胞集合体を収集トレイ135に収集するか、観察装置335等の他の装置で利用するかを選択できるように構成されている。
【0101】
観察装置335は、特開2008−129512号公報に開示されている微小観察対象物用の観察装置20Zを用いて構成される。但し、以下の点において、観察装置335は、観察装置20Zと異なる。観察装置20Zでは複数の観察対象物Wを対象として観察を行うが、観察装置335では、マイクロハンド134によって取得した1つの細胞集合体を対象として観察を行う。また、観察装置335は、マイクロハンド134が観察対象物を取得した状態で観察を行う。観察装置335のその他の構成については、観察装置20Zと同様である。
【0102】
以下において、 特開2008−129512号公報に開示されている観察装置20Zについて図11〜図14を用いて説明する。
【0103】
1.観察装置20Z
図11は観察装置20Zの斜視図である。図12は観察装置20Zの分解斜視図である。図13はこの観察装置20Zのブロック図である。
【0104】
観察装置20Zは、イメージセンサ11Zを備えたビジョン回路10Zと、細胞等の微小な観察対象物Wを表面側に多数存在させる保持部材1Zとを備えている。図例の保持部材1Zはシート状の部材であり、以下において、保持部材1Zを観察シートと呼んで説明する。そして、観察シート1Zはビジョン回路10Z上に積み重ね状に搭載されており、具体的には、観察シート1Zとビジョン回路10Zとは積層状態にある。さらに、図例の観察装置20Zではビジョン回路10Zと観察シート1Zとの間に光学シート7Zが積層状態で介在している。
【0105】
図13において、ビジョン回路10Zは、観察装置20Zが備えているコンピュータ23Zと繋がっており、相互の間で信号の送受信が行われる。このコンピュータ23Zは観察装置20Z全体の動作を制御したり、観察して得た情報を処理したり、情報を蓄積したりする。ビジョン回路10Zは、プリント基板13Z(図12参照)上に、イメージセンサ11Zと、イメージセンサ11Zから送られた映像信号を処理する画像処理回路部(イメージプロセッサ)12Zとを備えている。また、ビジョン回路10Zは記憶手段(メモリ)14Zを備えており、イメージセンサ11Zが取り込んだ映像信号を一時的に記憶したり、画像処理回路部12Zが処理した画像データを記憶したりする。なお、この記憶手段14Zは、ビジョン回路10Z上に設けられる以外に、コンピュータ23Zに設けられていてもよい。
【0106】
イメージセンサ11Zは多数の微小な画素(受光素子)を有する画像素子であり、CCDやCMOSセンサとすることができる。画像処理回路部12Zは、イメージセンサ11Zが取り込んだ映像信号及び記憶手段14Zに記憶させた画像データの色調補正や解像度変更等の画像処理を行う機能を有している。なお、イメージセンサ11Zと画像処理回路部12Zとは、例えば従来知られているデジタルカメラが備えているものを利用することができる。
【0107】
図11及び図12において、観察シート1Zは光透過性を有する部材、例えば透明の樹脂により形成されており、シリコンラバーにより成形することができる。観察シート1Zは、ビジョン回路10Z上に積層状態で設けられる本体部2Zと、本体部2Zの一部に形成されている観察部3Zとを備えている。本体部2Zは、イメージセンサ11よりも広い面積に設定されており、図例ではビジョン回路10Zと同じ(略同じ)大きさとしている。そして、本体部2Zの中央部に観察部3Zが形成されている。観察部3Zはイメージセンサ11Zに対応する位置に微小な観察対象物Wを存在させる部分である。観察部3Zの表面側に細胞等の微小な観察対象物Wを載せることができ、この観察部3Zの裏側部及び光学シート7Zを通してイメージセンサ11Zが観察対象物Wの像をそのまま(直接的に)取り込むことができる。つまり、観察対象物Wを微小な大きさのままでとらえることができる。このように、観察シート1Zは、ビジョン回路10Zのイメージセンサ11Z上に積層状態で設けられている。観察シート1Zは、その全部が透明であってもよく、又は、観察部3Zの観察面(表面3aZ)よりも裏面側が少なくとも光を透過させるものであってもよい。
【0108】
また、観察装置20Zにおいて、観察シート1Zはビジョン回路10Zから取り外し可能である。つまり、観察シート1Zは、光学シート7Zをビジョン回路10Zに残してビジョン回路10Zから取り外すことができる。このために、観察シート1Zは光学シート7Zの上に取り外し可能に載置させた状態で設けられている。この場合、光学シート7Zの表面7aZが観察シート1Z用の載置面となる。なお、図示しないが、本発明の観察装置20Zにおいて、光学シート7Zを省略することもできる。すなわち、ビジョン回路10Zの上に観察シート1Zが直接載せられた状態にあり、観察シート1Zはビジョン回路10Zの上に取り外し可能に載置させた状態で設けられている。この場合、ビジョン回路10Zの表面10aZが観察シート1Z用の載置面となる。
【0109】
図11及び図12の形態において、観察シート1Zは光学シート7Zの表面(載置面)7aZに載せられているが、観察シート1Zを載置面7aZに載せる際、載置面7aZと観察シート1Zとの間に光学レンズ用の油等の液体を介在させるのが好ましい。または、載置面7aZと観察シート1Zとの間から気体を除き、両者間を観察シート1Zの表面1aZ側に対して負圧とするのが好ましい。これにより、載置面7aZに観察シート1Zを密着させることができると共に、観察終了後、観察シート1Zを載置面7aZから容易に取り外すことができる。
【0110】
観察シート1Zは、観察部3Zにおいて、観察対象物Wを吸引することによって位置保持する吸引部4Zを有している。吸引部4Zは観察シート1Z内に形成された微小な断面積の流路5Zを有している。流路5Zは、一端が観察シート1Zの観察部3Zの表面3aZに開口し、他端が観察シート1Zの観察部3Z以外の部分に開口している。具体的には、流路5Zの他端は観察シート1Zの本体部2Zの周縁部で開口しており(開口部5bZ)、例えば、図12に示しているように、本体部2Zの表面2aZの周縁部の一部で開口したり、図示しないが、本体部2Zの側面2bZで開口したりできる。なお、流路5Z及びその一端の開口部5aZは複数(多数)形成されており、一つの開口部5aZに対して一つの観察対象物Wを対応させることができる。また、一条の流路5Zが分岐して複数の開口部5aZを有していても良い。また、開口部5aZは格子状や千鳥状に配列されている。一方、各流路5Zの他端は一つの開口部5bZに集約されている。
【0111】
そして、開口部5bZに、図示しない吸引装置(ポンプ)を接続している。吸引装置は、観察部3Zの表面3aZの周辺の気体を流路5Zを通じて吸引することができ、これにより、流路5Zの一端の開口部5aZに微小な観察対象物Wを吸着して固定することができ、多数の観察対象物Wを観察シート1Zに位置保持させることができる。なお、言うまでもないが、流路5Zの一端の開口部5aZの孔は観察対象物Wよりも小さく設定されている。
【0112】
光学シート7Zは、ビジョン回路10Zと観察シート1Zとの間に介在しており、イメージセンサ11Zと観察部3Zとの間に積層状態で介在していればよい。光学シート7Zは様々なものを採用できるが、例えば、観察対象物Wが発光又は蛍光した光のうちの特定範囲の波長の光(例えば特定の色等)を選択して透過させる機能を備えた光学的フィルタとすることができる。この場合、イメージセンサ11Zへ所望の光を透過させることができ、イメージセンサ11Zは観察対象物Wの像や発光した様子を明確にとらえることができる。
【0113】
他の光学シート7Zとして、観察対象物Wの光を集光する(指向性を持たせる)機能を備えたレンズフィルムとすることができる。この場合、微弱な光であっても、イメージセンサ11Zに向かって光を透過させることができ、イメージセンサ11Zは観察対象物Wの像や発光した様子を明確にとらえることができる。または、他の光学シート7Zとして、実質的な拡大縮小を行わないで焦点の微調整を行う機能や、色彩や明度を補正したり調整したりする機能を備えたもの等がある。
【0114】
さらに、他の光学シート7Zとして、ビジョン回路10Zと観察シート1Zとの間の距離を調整するための光透過性を有するシートや、ビジョン回路10Zを保護するための光透過性を有する保護シートであってもよい。また、光学シート7Zを組み合わせて複数枚用いてもよい。
【0115】
このように、光学シート7Zを介在させることによって、その機能により、観察対象物Wの適切な画像を得ることができる。また、光学シート7Zは、観察シート1Zよりも薄いものや、同程度の厚さのものがある。
【0116】
光学シート7Zは、ビジョン回路10Zと一体として形成されていてもよいが、ビジョン回路10Zから取り外し可能であってもよい。取り外し可能とした場合では、光学シート7Zをビジョン回路10Zから取り外し、他の機能を有する光学シート7Zに入れ替えたり、同じ機能であっても別の(例えば厚さの異なる)光学シート7Zに入れ替えたりできる。これにより、観察対象物Wの種類や大きさが異なっても、光学シート7Zを変更することによって例えば焦点等を微調整することができ、同じイメージセンサ11Zによって適切な画像データを得ることができる。また、一つのビジョン回路10Zに対して複数の光学シート7Zを予め準備しておき、観察対象物Wに応じて光学シート7Zを選択して適用してもよい。
【0117】
図13において、観察装置20Zは、ビジョン回路10Zが得た画像データに基づく画像を表示するモニタ(表示手段)24Zを更に備えている。モニタ24Zはコンピュータ23Zのインターフェースに繋がっているものとすることができる。
【0118】
また、図示しないが、観察シート1Zは観察対象物Wからの電気信号を受けるための電極を有していても良い。この場合、例えば、流路5Zの一端の開口部5aZに電極を設け、この電極と、観察シート1Zの外部に設けた計測器(例えばアンプ付き電流計)とを導出線で繋げる。そして、後述する処理手段22Zにより観察対象物Wに対して化学的又は電気的な刺激を与える等の観察のための処理をして、この刺激に応答する観察対象物Wからの信号を、前記電極を通じて計測器が計測することができる。
【0119】
なお、観察対象物Wとしての細胞の大きさ(直径)が5μm〜100μm程度に対して、イメージセンサ11Zの一つの画素の大きさは1μm〜50μm程度のものを採用することができる。一つの画素が観察対象物Wの大きさと同程度乃至小さい場合は、一つの観察対象部Wの画像乃至そのうちの一部の画像を得ることができる。また、一つの画素のサイズ(ピクセルサイズ)が観察対象物Wの大きさよりも大きくても良く、この場合であっても、例えば、観察対象物Wが反応して明度の変化等が生じたことを、このイメージセンサ11Zを利用して検出することができる。
【0120】
観察装置20Zによれば、観察シート1Zの観察面(表面)1aZに細胞を多数存在させ、この観察シート1Zをビジョン回路10Z上に積み重ね状(積層状)に搭載することにより、観察シート1Zに多数存在している微小な観察対象物Wの像を拡大しなくても、微小な大きさのままでイメージセンサ11Zによりとらえることができ、この画像を処理し、画像データを記憶させたり、その画像をモニタ24Zに表示させたりすることができる。つまり、多数の画素を有するイメージセンサ11Zと、微小な観察対象物Wを存在させた観察シート1Zとを近接配置し、イメージセンサ11Zは観察対象物Wを実質的に等倍率で撮像する方法によって、観察対象物Wを観察することができる。したがって、従来、細胞等を光学的に観察する際に像を拡大するために利用していた顕微鏡を介在させなくても、本発明によれば、微小な細胞の画像を取得することができる。これにより観察装置のコストを低減できる。
【0121】
なお、前記「実質的に等倍率」とは、観察対象物Wを拡大縮小させない場合の他に、人目で確認することができない程度に観察対象物Wを拡大する場合も含む。具体的には例えば前記光学シート7を利用することによって二倍まで拡大する場合を含む。すなわち、「実質的に等倍率」は、従来のような顕微鏡によって人目で確認することができる程度に観察対象物Wを拡大(例えば50倍や1000倍に拡大)する場合とは異なる。
【0122】
さらに、イメージセンサ11Zと観察シート1とを「近接配置し」とは、イメージセンサ11Zと観察シート1Zとの間を、観察シート1Zの厚さの二倍の値以下の場合と定義することができる。
【0123】
そして、観察装置20Zでは、観察シート1Zをビジョン回路10Zから取り外すことができるので、観察対象物Wを存在させた観察シート1Zを次々と取り換えて観察することができる。特にバイオ実験では、観察対象物Wを存在させる観察シート1Zの再利用は好ましくない場合があるが、観察装置20Zによれば、ビジョン回路10Zを残して観察シート1Zのみを使い捨てにすることもでき、経済的である。
【0124】
図14は、観察装置20Zを備えた観察システムを説明する説明図である。観察システム20Zは、ビジョン回路10Z及び観察シート1Zを備えた観察装置と、観察装置20Zのビジョン回路10Zから観察シート1Zを取り換える搬送手段21Zとを備えている。なお、図14の観察システムは、図11に示した観察装置20Zを備えたものであり、ビジョン回路10Zと観察シート1Zとの間に光学シート7Zが介在している。
【0125】
搬送手段21Zは、観察シート1Zをビジョン回路10Z(光学シート7Z)から取り外したり、別の観察シート1Zをビジョン回路10Z(光学シート7Z)上に設置させたりするロボットアームである。搬送手段21Zはコンピュータ23Zからの指令信号に従って制御される。搬送手段21Zは、観察シート1Zを挟むことにより観察シート1Zを持ち上げて移動させることができる一対の爪部材26Zと、一対の爪部材26Zを相互接近離反させる駆動部(図示せず)と、爪部材26Zを移動させる移動部(図示せず)とを有する構成である。なお、搬送手段21Zの形式はその他のものであってもよく、例えば、観察シート1Zを吸引することができる吸引具と、この吸引具を移動させる移動部とを有しているものであってもよい。この観察システムによれば、搬送手段21Zが、ビジョン回路10Zに対して観察シート1Zのみを自動的に取り換えることができ、観察作業が行いやすくなる。
【0126】
また、この観察システムは、観察装置20Zと、この観察装置の観察シート1Zに存在する微小な観察対象物Wに対して処理を施す処理手段22Zとを備えている。図16において、処理手段22Zは、観察シート1Z上の観察対象物Wに対して薬液を注入するノズル(ピペット)22Zを有しているものである。なお、他の処理手段22Zとしては、観察対象物Wに対して電気信号を与える電極を有しているものがある。さらに、複数種類の処理手段22Zを備えたものであってもよい。図14の観察システムは、観察対象物Wを載せた観察シート1Zをビジョン回路10Z上に積層状態で設け、この観察対象物Wに対して処理手段22Zのノズル27Zから薬液を注入する。これにより、観察対象物Wを処理しながら観察することができる。
【0127】
以上のように、観察装置20Z及び観察装置20Zを用いた観察システムによれば、観察対象物Wとイメージセンサ11Zとの間に従来利用していた顕微鏡を介在させなくても、微小な観察対象物Wの画像を取得することができる。このように高価な顕微鏡が不要となるので、微小な観察対象物W用の装置のコストを低減できる。すなわち、従来では、細胞等の微小な観察対象物の像を顕微鏡により一旦拡大したにも関わらず、その像をデジタルカメラのイメージセンサに取り込ませるためにレンズにより縮小している。しかし、本発明によれば、微小な観察対象物Wを(光学シートを用いた場合では多少の焦点調整等を行う場合があるが)イメージセンサ11Zにより微小な大きさのままでとらえることができ、高価な顕微鏡を不要とすることができる。さらに、次々と観察シート1Zを取り換えて観察することができ、観察作業が行いやすい。また、観察装置20Z及び観察装置20Zを用いた観察システムをスクリーニング装置とすることができる。
【0128】
なお、観察シート1Zの材質はシリコンラバー以外であってもよく、その他の無色透明又は有色透明な材料とすることができ、ガラス製を利用したり、これら材料とその他の材料との複合材料としたりできる。また、図11に示した形態では、観察シート1Zはビジョン回路10Zと輪郭形状を同じとしているが、観察シート1Zはビジョン回路10Zのうちの少なくともイメージセンサ11Zと積層状態にあればよく、観察シート1Zの輪郭形状をイメージセンサ11Zの輪郭形状よりも大きく設定することができる。
【0129】
さらに、観察シート1Zとビジョン回路10Zとの間、光学シート7Zを設けた場合には光学シート7Zと観察シート1Zとの間及び/又は光学シート7Zとビジョン回路10Zとの間に、隙間があってもよい。例えば、観察シート1Zを、ビジョン回路10Zのイメージセンサ11Zの上に隙間を有して積み重ね状に搭載していてもよい。この場合、両部材の間に別のスペーサ部材(図示せず)をさらに介在させ、両部材の間に隙間を形成すればよい。

【実施例4】
【0130】
前述の実施例1における細胞集合体選別取得装置100では、カメラ装置133は、マイクロプレート101の各ウェルの上方からの画像を取得するものであった。本実施例における細胞集合体選別取得装置400は、マイクロプレート101の各ウェルを下方からの画像を取得する細胞集合体画像取得装置433を有するものである。なお、以下においては、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号を付している。また、実施例1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0131】
1.構成
細胞集合体選別取得装置400の構成について図15を用いて説明する。細胞集合体選別取得装置400は、マイクロプレート載置部110、処理部420を有している。
【0132】
マイクロプレート載置部110は、テーブル111、筐体113を有している。テーブル111には、複数のマイクロプレート101が載置される。
【0133】
処理部420は、処理ユニット430、
培地貯蔵装置136、及び廃棄培地貯蔵装置137を有している。
【0134】
処理ユニット430は、培地注入装置131、培地除去装置132、細胞集合体画像取得装置433、マイクロハンド134、及び収集トレイ135を有している。細胞集合体画像取得装置433は、マイクロプレート載置部110の筐体113の内部、処理ユニット430の位置に対応して設置される。
【0135】
細胞集合体画像取得装置433は、前述の観察装置20Zにおけるイメージセンサ11Zを備えたビジョン回路10Z、及び、マイクロプレート101とビジョン回路10Zとの間に配置される所定の光学系を用いて構成されている。ビジョン回路10Zをマイクロプレート101に対して下方に配置することによって、処理ユニット430を、培地注入装置131、培地除去装置132、マイクロハンド134と、細胞集合体画像取得装置433とに分けてマイクロプレート101を挟んで上下に配置することができるので、処理ユニット430の構成要素の配置をより自由に設計することができる。
【0136】
なお、マイクロプレート101の底面は半球状であるため、所定の精巧な光学部品を用いた光学系、及び、ビジョン回路10Zによって得られた細胞集合体画像に対する画像処理によって細胞集合体画像を補整し、正確な細胞集合体の測定を可能とする。
【0137】
第2 動作
次に、細胞集合体選別取得装置400の動作について図16を用いて説明する。なお、細胞培養初期の動作、及び、図16A、図16B、図16D〜図16Fの動作については、図5a、図6A、図6B、図6D〜図6Fと同様であるため、記載を省略する。
【0138】
図16Cに示すように、細胞集合体画像取得装置333を動作させて、細胞集合体Cを含むウェルの画像である細胞集合体画像を、マイクロプレート101の下方に配置されているビジョン回路10Zを用いて取得する。
【0139】
[その他の実施例]
(1)テーブル111:前述の実施例1、実施例2においては、複数のマイクロプレート101は回転軸111Jを中心に回転し、マイクロプレート101の各ウェルを処理位置へ配置するとしたが、マイクロプレート101の各ウェルを処理位置へ配置できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、マイクロプレート101を直線状に配置し、ベルトコンベアのように、マイクロプレート101を直線的に移動させるものであってもよい。
【0140】
(2)培地交換時:前述の実施例1、実施例2においては、定期的な培地の交換時に、細胞集合体選別取得装置100を動作させることとしたが、定期的な培地の交換時とは別に、任意の時間に、自動的に又は操作者の操作によって、細胞集合体選別取得装置100を動作させるようにしてもよい。
【0141】
(3)セル・ストレージ:
前述の実施例1における細胞集合体選別取得装置100は、マイクロプレート載置部110のテーブル111上にマイクロプレート101を個別に載置するものであったが、マイクロプレート101をテーブル111に載置するものであれば、例示のものに限定されない。例えば、細胞集合体を培養しているマイクロプレート101大量に保存するセル・ストレージに、細胞集合体選別取得装置100を接続し、所定の時間に、セル・ストレージから所定のマイクロプレート101を取得し、テーブル111に自動的に載置するようにしてもよい。この場合、セル・ストレージの動作制御と、細胞集合体選別取得装置100の動作制御とを連動させることによって、必要なマイクロプレート101を、最適な時間でテーブル111に配置することが可能となる。
【0142】
(4)マイクロハンド134:前述の実施例1においては、マイクロハンド134は空気圧を用いて動作するものであったが、マイクロプレート101から培養した細胞集合体を取得できる構成であれば、例示のものに限定されない。例えば、圧電式、形状記憶合金、静電式、圧空式、合成樹脂など高分子式の人工筋肉アクチュエータの原理を用いてマイクロハンドを形成するようにしてもよい。
【0143】
(5)マイクロプレート101の蓋の除去:マイクロプレート101には、コンタミネーション防止のため蓋が取り付けられることが多い。したがって、前述の実施例1〜実施例3において、蓋が閉じられたマイクロプレート101をテーブル111に配置し、自動でマイクロプレート101の蓋を取り除くようにしてもよい。この場合、例えば、所定のアームに取り付けられた吸盤を蓋が閉じられたマイクロプレート101の上方に配置し、アームを下降させ、吸盤に圧力をかけて吸盤をマイクロプレート101の蓋に取り付け、その状態でアームを上昇させることによって、マイクロプレート101から蓋を取り外すことができる。
【0144】
さらに、培地の交換や細胞集合体の選別取が終了した後、アームを移動させて、マイクロプレート101に蓋をした後、空気圧等を用いて吸盤をマイクロプレート101の蓋から取り外すようにしてもよい。
【0145】
(6)培地の除去:前述の実施例1においては、第1段階における培地の除去に際し、培地除去装置132の管状部132aの先端Tを培地の液面Sの低下に合わせて、下方に移動させることによって、意図しない培地内の細胞の除去を防止することとしたが、例示のものに限定されない。例えば、例えばネットや傘の様に先端が広がるマイクロハンドを用いて、培地内の細胞又は細胞集合体をウェル内の所定の領域から外部に流出しないように押さえ込むようにしてもよい。この際のマイクロハンドは、マイクロハンド134と一体として形成してもよい。また、マイクロハンド134とは別に配置するようにしてもよい。

【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明に係る細胞集合体選別取得装置は、例えば、幹細胞の培養に用いることができる。

【符号の説明】
【0147】
100・・・・・細胞集合体選別取得装置
101・・・・・マイクロプレート
110・・・・・マイクロプレート載置部
120・・・・・処理部
130・・・・・処理ユニット
131・・・・・培地注入装置
132・・・・・培地除去装置
133・・・・・カメラ装置
134・・・・・マイクロハンド
135・・・・・収集トレイ
136・・・・・培地貯蔵装置
137・・・・・廃棄培地貯蔵装置
200・・・・・細胞集合体選別取得装置
211・・・・・無菌シェル
213・・・・・恒温・喚起装置
215・・・・・小型コンプレッサ
217・・・・・小型負圧ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の培地中で細胞を培養し、前記細胞が立体的に凝縮した細胞集合体を形成するための細胞培養容器に所定の培地を注入、除去するための培地注入・除去手段、
前記細胞培養容器で培養されている前記細胞集合体の状態を示す画像である細胞集合体画像として取得する細胞集合体画像取得手段、
前記細胞培養容器から培養した前記細胞集合体を取得するための細胞集合体取得手段、
を有する細胞集合体選別取得装置であって、
前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させ、前記細胞集合体画像取得手段に前記細胞集合体画像を取得させ、前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にあると判断すると、前記細胞集合体選別取得手段に前記細胞集合体を取得させ、前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にないと判断すると、前記培地注入・除去手段に前記細胞培養器に前記培地を注入させる細胞集合体選別取得装置。
【請求項2】
請求項1に係る細胞集合体選別取得装置において、
前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させる際に、前記細胞培養容器において前記細胞集合体が前記培地から露出するまで、又は、前記培地から露出する直前まで、前記培地を除去させること、
を特徴とする細胞集合体選別取得装置。
【請求項3】
請求項1に係る細胞集合体選別取得装置において、
前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させる際に、前記細胞培養容器における前記培地の液面の低下に合わせて、前記培地の除去位置を移動させること、
を特徴とする細胞集合体選別取得装置。
【請求項4】
請求項1に係る細胞集合体選別取得装置において、さらに、
前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させる際に、前記細胞培養容器内の前記細胞又は前記細胞集合体を所定の領域から外部に移動しないようにする移動制限手段を有すること、
を特徴とする細胞集合体選別取得装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に係る細胞集合体選別取得装置のいずれかにおいて、さらに、
複数の前記細胞培養容器を載置する細胞培養容器載置手段、
を有し、
前記細胞培養容器載置手段に前記細胞培養容器を、順次、所定の処理位置に移動させて、前記培地の除去、前記細胞集合体画像の取得、前記細胞集合体の取得、及び前記培地の注入を行うこと、
を特徴とする細胞集合体選別取得装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に係る細胞集合体選別取得装置のいずれかにおいて、
前記細胞培養容器載置手段は、
所定の回転軸を中心に複数の前記細胞培養容器を載置し、前記回転軸を中心に回転することによって、前記細胞培養容器を前記処理位置へ移動させること、
を特徴とする細胞集合体選別取得装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に係る細胞集合体選別取得装置のいずれかにおいて、
前記培地注入・除去手段に前記細胞培養容器から前記培地を除去させるのは、定期的な前記培地の交換時であること、
を特徴とする細胞集合体選別取得装置。
【請求項8】
所定の培地内で細胞を培養し、前記細胞が立体的に凝縮した細胞集合体を形成するための細胞培養容器から培養された前記細胞集合体を選別取得するための細胞集合体の選別取得方法であって、
前記細胞培養容器から前記培地を除去し、
前記細胞集合体の画像である細胞集合体画像を取得し、
前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にあると判断すると、前記細胞集合体を取得し、
前記細胞集合体画像から前記細胞集合体が所定の状態にないと判断すると、前記細胞培養器に前記培地を注入すること、
を特徴とする細胞集合体の選別取得方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−231764(P2012−231764A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103920(P2011−103920)
【出願日】平成23年5月8日(2011.5.8)
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【Fターム(参考)】