説明

細菌を単離するための方法

本発明は、新規細菌及びそれに由来する代謝物を同定するための組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、目的の代謝物を産生する細菌を環境サンプルから単離するための新規方法を記載する。特に、本発明は、稀な抗生物質産生細菌を選択するための方法を開示する。本発明は、任意のサンプルから使用することができ、例えば、医薬的又は農薬的な利益を有する細菌の単離を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規細菌及びそれに由来する代謝物を同定するための組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、目的の代謝物を産生する細菌を環境サンプルから単離するための新規方法を記載する。特に、本発明は、新規の抗生物質産生細菌を選択するための方法を開示する。本発明は、任意のサンプルから使用することができ、例えば、医薬的又は農薬的な利益を有する細菌の単離を可能にする。
【0002】
背景
太古の時代から、人類は、治療目的のために周囲の生物を供給源にしてきた。市販の抗生物質の大半は依然として天然起原を有する。過去10年間に、抗菌薬発見プロセスを合理化し、加速するための努力において、産業界は、天然産物及び分子指向の発見戦略から合成分子及び標的指向の戦略に移っている。
【0003】
何年もの抗生物質R&Dプロセスの一意化(前例がない高い摩擦率を伴う)後、天然資源に戻ることが必要である。実際に、天然産物ライブラリーのスクリーニングは、通常、化学的ライブラリーのそれより高い抗生物質ヒットのパーセンテージをもたらし、結果的に、治療法を得るより高い確率を提供する。第1の理由は、恐らくは、抗生物質の生態学的な役割にあり、それは他の生きている生物から植物、動物、及び微生物を防御するように進化の過程を通じて最適化されてきた。さらに、天然産物は、一般的に、組み合わせ化合物と同程度に親油性であるが、しかし、それらは比類ない構造的な多様性及び化学空間における分散を有する。これは、インビボでの適用のために最適化することができる稀な親水性ヒットを見いだすのに役立つ。
【0004】
一般的に、環境供給源(例えば土壌又は水など)から単離される細菌の20〜30パーセントが抗生物質産生株であると想定される(Berdy, 2005)。明白な理由のため、より適当なもの及び最も代表される細菌が、最も頻繁に単離される。これによって、バチルス(Bacillus)又はシュードモナス(Pseudomonas)により産生される多くの抗生物質がなぜ既に記録されているのか、及び、これらの属により産生される新たな分子実体を見出すことがなぜますます困難であるのかが説明される。低く表される細菌の他の科は、抗生物質産生により適応され、より大きなゲノムのために、適応された技術を用いて簡単に単離することができる。これはアクチノミセターレスの場合であり、はるかに最善の抗生物質産生株である(Berdy, 2005)。それらは、医薬産業により1950〜1980年の間に広範囲に試験され、現在、非冗長分子を産生する株を同定することは困難である。
【0005】
過去10年、努力は、医薬目的の新たな化学実体を見出すために、稀な細菌を単離することに捧げられてきた。粘液細菌は、例えば、1940年代から公知であるが、しかし、それらを単離する際に遭遇する困難のために、それらはコレクションにおいて低く表された。Reichenbach H及び共同研究者により行われた広範囲のコレクションキャンペーンのおかげで、現在までに、粘液細菌により産生される約80の異なる化合物及び450の構造バリアントが特徴付けられている(Reichenbach, 2001)。それらの化合物の多くが新しかった。それらの中には抗新生物薬エポチロンがあり、現在、臨床試験において評価されている。
【0006】
しかし、細菌学者が大半の土壌微生物を培養できないことが一般的に認識されている(Schoenborn et al, 2005)。土壌中の培養可能な細胞の数は、しばしば、存在する細胞の総数のわずか約1%である。これらの細菌の大半は、標準的な単離技術を使用して検出及び単離することが困難である。なぜなら、それらは環境中でまれであるからである。又は、それらは、他の細菌(シュードモナス属又はバチルス属など)ほどには環境に適応せず、迅速に過成長するからである。単離株の多様性を増加させることを目的とするいくつかの単離技術が発表されている。例えば、連続液体希釈培養が成功裏に使用されており、培養可能性が改善され(Schoenborn et al, 2005)、多様な環境からの細菌の単離が促進されてきた。Yang et al., 2008には、稀な放線菌を単離するためのマイクロ波処理の使用も記載された。WO02/059351は、例えば温泉水を使用して自然環境から微生物集団を濃縮するための方法に関する。
【0007】
しかし、環境微生物は、依然として、新規化合物及び活性の豊富な未開発の資源を表し、当技術分野において、目的の細菌を同定するための改善された又は代わりの方法についての必要性がある。
【0008】
発明の要約
本願は、環境サンプルから細菌を同定又は単離するための新規アプローチを提供する。特に、本発明は、DNA損傷処理を使用して環境サンプルから稀な(rare)細菌を同定又は単離する効率的で迅速な方法を開示する。
【0009】
本発明の目的は、従って、(二次)代謝物産生細菌を同定又は単離するための方法にあり、方法は、特徴付けされていない細菌を含むサンプルを、細胞破壊DNA損傷処理に供すること、及び、前記の処理サンプルから、(二次)代謝物を産生する細菌を同定又は単離することを含む。好ましい実施態様において、処理は繰り返し照射処理である。
【0010】
この点に関して、本発明の特定の目的は、代謝物産生細菌を同定又は単離するための方法であって、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを繰り返し照射処理に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)代謝物を産生する工程c)の細菌を選択すること
を含む。
【0011】
特定の実施態様において、処理は、連続UV処理、例えば、本質的に一定間隔での少なくとも2、好ましくは3又はそれ以上の照射の繰り返しを含む。
【0012】
特定の実施態様において、処理は繰り返しUV照射を含む。
【0013】
別の特定の実施態様に従い、本発明は、代謝物産生細菌を同定又は単離するための方法に関し、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルにブレオマイシンファミリーの抗生物質を加えること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)代謝物を産生する工程c)の細菌を選択すること
を含む。
【0014】
ブレオマイシンファミリーの好ましい抗生物質は、ブレオシンである。
【0015】
代謝物は、任意の医薬的産物、例えば抗生物質、静菌性化合物、抗代謝薬剤、化学療法化合物、抗真菌薬剤、抗ウイルス化合物、サイトカイン活性化合物、又は細胞増殖因子などでありうる。
【0016】
本発明の別の目的は、抗生物質又は静菌性化合物を産生する細菌を同定又は単離するための方法であって、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを繰り返し照射処理、好ましくは繰り返しUV処理に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)工程c)の同定又は単離された細菌、あるいはその抽出物を、参照細菌株に暴露すること、及び、抗生物質活性又は静菌活性を示す細菌を同定又は単離すること
を含む。
【0017】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、前記の細菌により産生された代謝物を単離又は精製するさらなる工程を含む。
【0018】
さらに、本発明の方法は、場合により、遺伝的、生物学的、又は化学的のいずれかで、同定又は単離された細菌又はそのDNAを、それ自体が当業者に公知である任意の技術プロセスにより改変するさらなる工程を含み、前記の改変は、例えば、抗生物質活性又は産生を改善するために、例えば、前記細菌の生存、増殖、又は機能を改善することを目的とする。これは、限定なしに、細胞融合、加速進化、DNAシャッフリング技術、別の系統からの真核、原核、又は合成核酸(例、DNA)の挿入、あるいは任意の遺伝子操作技術を含む。前記の改変工程は、単離された細菌で、又はプロセスの任意のより初期の段階で、例えば、工程a)のサンプルで行うことができる。
【0019】
本発明の別の目的は、上で開示する方法により得られる野生型又は改変細菌、あるいはその抽出物にある。
【0020】
本発明のさらなる目的は、代謝物、特に医薬的化合物を産生する方法であって、方法は、(i)前記の代謝物を産生する細菌を、上で定義する方法を使用して同定又は単離すること、及び(ii)前記の抗生物質を産生することを含む。
【0021】
本発明のさらなる目的は、医薬的化合物(例えば抗生物質など)を、野生型又は改変ディノコッカス(Deinococcus)細菌株を使用して単離又は産生する方法である。
【0022】
本発明のさらなる目的は、医薬的化合物(例えば抗生物質など)を産生するための野生型又は改変ディノコッカス細菌の使用にある。
【0023】
本発明のさらなる目的は、野生型又は改変ディノコッカス細菌に由来する抗生物質である。
【0024】
本発明のさらなる目的は、組換え宿主細胞を産生する方法であって、方法は、上で定義する方法に従って細菌を同定又は単離すること、及び、1つ又はいくつかの遺伝子(又は対応する合成もしくは組換え核酸)を、別の宿主細胞において前記細菌からクローニングすることを含み、それにより組換え宿主細胞を産生する。
【0025】
本発明の方法を、種々のサンプル(例えば環境サンプルなど)と使用することができ、有利な医薬的及び/又は農薬的特性を有する新規細菌を単離するために成功裏に使用されてきた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】a)1回のUV暴露(0、4、及び17mJ/cm2)及びb)UV処理(4mJ/cm2)への繰り返し暴露後に得られた細菌マット暗色コロニーはDラジオパグナンス(radiopugnans)である。他の細菌は土壌群集に属する。
【0027】
発明の詳細な説明
本願は、サンプルから細菌を同定又は単離するための新規方法を記載する。特に、本発明は、細胞破壊DNA損傷処理を使用して環境サンプルから稀な細菌を同定又は単離する効率的で迅速な方法を開示する。
【0028】
UV又は照射に対する細菌の耐性が広範囲に試験され、細菌がそのような侵食環境においてどのようにして生存することができるのかが理解されてきた(Makarova et al, 2001)。Rainey et al, 2005は、Geodermatophylus属及びディノコッカス属が、ソノラ砂漠土壌から回収された最も放射線耐性な細菌であることを示した。他の細菌も単離された(即ち、ディノコッカス、ヒメノバクター(Hymenobacter)、キネオコッカス(Kineococcus)、コクリア(Kocuria)、及びメチロバクテリウム(Methylobacterium))。
【0029】
本発明は、今回、代謝物を産生する新規の(低く表される(under-represented))細菌を単離するための細胞破壊DNA損傷処理の使用を提案する。本発明は、実際に、そのような処理(通常は実質的な細胞死を起こしうる)によって、予想外に、貴重な代謝物を産生する顕著な特性を有する低く表される細菌の選択が可能になることを示す。
【0030】
本発明は、今回、初めて、細胞破壊DNA損傷処理後、貴重な二次代謝物を産生することができる多くの細菌を単離することが可能であることを示す。
【0031】
本発明の目的は、従って、代謝物産生細菌を同定又は単離するための方法にあり、方法は、特徴付けされていない細菌を含むサンプルを、細胞破壊DNA損傷処理に供すること、及び、前記の処理サンプルから、代謝物を産生する細菌を同定又は単離することを含む。
【0032】
特定の実施態様において、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを、細胞破壊DNA損傷処理に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)代謝物を産生する工程c)の細菌を選択すること
を含む。
【0033】
方法は、特徴付けられていない細菌を含む種々のサンプルを用いて、特に環境サンプルからである又はそれに由来するサンプルを用いて実行することができる。本発明の関連内で、環境サンプルは、(複数の)特徴付けられていない(微)生物、特に未培養の微生物(例、意図的に培養され、単離形態で増殖されていない微生物)を含む任意のサンプルを含む。サンプルは、天然環境から又は人工のもしくは特別に作製された環境から得られうる又はそれに由来しうる。
【0034】
示す通り、サンプルは、任意の環境サンプル、例えば、土壌、水、植物抽出物、生物学的材料、沈殿物、泥炭地、工場廃水又は用地、無機抽出物、砂などから得られる又はそれに由来するものなどでありうる。サンプルは、種々の地域又は状況、例えば、限定はされないが、熱帯地域、火山地域、森林、農場、工業地域などから回収されうる。サンプルは、通常、(特徴付けられていない未培養の)微生物の種々の種、例えば陸生微生物、海洋微生物、淡水微生物、共生微生物などを含む。そのような環境微生物の種は、細菌、藻類、菌類、酵母、カビ、ウイルスなどを含む。微生物は、好極限性生物(例えば、好熱菌など)を含みうる。サンプルは、典型的には、そのような(未培養の)微生物の種々の種、ならびにその種々の量を含む。さらに、サンプルは、加えて、公知の及び/又は培養可能な微生物(例、原核又は真核)を含みうる。
【0035】
本発明が、サンプルの任意の特定の型又は環境微生物に限定されず、未培養の微生物を含む任意のサンプルを使用して実施することができることを理解すべきである。
【0036】
好ましい実施態様において、サンプルは、土壌、水、温泉、海洋環境、泥、木、石、コケ、植物抽出物、地衣、生物学的物質、沈殿物、バイオフィルム、工場排液、ガス、砂、油、汚水、又は動物もしくはヒト排泄物である又はそれに由来する。
【0037】
本発明における使用のために、サンプルは、湿潤、可溶性、乾燥、懸濁液の形態、ペーストなどでありうる。さらに、方法の工程b)の前に、サンプルを処理し、例えば微生物を濃縮するためのプロセスを改善してもよい(例、ろ過、洗浄、濃縮、希釈、撹拌、乾燥などを通じて)。
【0038】
特定の実施態様において、サンプルはろ過された懸濁液の形態である。特に、サンプルを、処理工程b)の前に、滅菌濾過してもよい及び/又は滅菌水中に置いてもよい。
【0039】
プロセスの工程b)は、サンプル(即ち、サンプル中に含まれる微生物)を、細胞破壊DNA損傷処理に供することを含む。
【0040】
細胞破壊DNA損傷処理は、DNA改変を導入する単なる突然変異処理とは対照的に、サンプルにおいて実質的な細胞死を起こす処理を指す。特に、細胞破壊DNA損傷処理は、E. coli細菌の培養において90%細胞死又はそれ以上を起こすために十分である処理である。さらにより好ましくは、細胞破壊DNA損傷処理は、E. coliの培養において細菌力価を少なくとも2対数だけ低下させるために十分である処理である。驚くべきことに、本発明は、そのような処理(通常、大半の細胞集団に対して致死的であり得る)は、種々の型のサンプルからの新規微生物の効率的で迅速な単離を可能にし、その微生物は貴重な(二次)代謝物を産生する。この結果は特に驚くべきことである。なぜなら、微生物をそのような細胞破壊DNA損傷処理に供することによって、生きた微生物の単離を予防することが期待されてきたであろうからである。驚くべきことに、本発明は、サンプルからの稀な微生物、特に、そのゲノムを再構成する又はDNA損傷に耐性にする能力を有する微生物の選択を可能にする。
【0041】
本発明は、このように、初めて、高効率で、貴重な(二次)代謝物を産生する低く表される細菌を選択するための細胞破壊DNA損傷処理の使用を開示する。実施例において例示される通り、本発明は、ディノコッカス属、バチルス属、メチロバクテリウム属、スフィンゴバクテリウム(Sphingobacterium)属、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)属、テピヂモナス(Tepidimonas)属、トルーペラ(Truepera)属、ポルフィロバクター(Porphyrobacter)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属、エキシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属、ノカルジア(Nocardia)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、キネオコッカス属、及びウィリアムシア(Williamsia)属の新規細菌株の単離を可能にした。
【0042】
DNA損傷処理は、サンプルを照射及び/又は1つもしくはいくつかの遺伝毒性薬剤に供することを含みうる。処理は、サンプル中に存在する微生物において実質的な細胞死を誘導するために十分な条件下で及び/又は時間にわたり行う。
【0043】
好ましい実施態様において、DNA損傷処理は、サンプルを1つ又はいくつかの照射に供することを含む。好ましい処理は、サンプル(即ち、サンプル中の微生物)を繰り返し(例、連続的な)照射処理に供することを含む。
【0044】
照射は、UV、ガンマ、及び/又はX線照射(単独又は組み合わせのいずれかで)より選択され、最も好ましくはUV照射でありうる。照射処理は、典型的には、微生物を1つ又はいくつかの連続的な照射(例、1〜5)に供することを含み、それは同じ又は異なる性質、好ましくは同じ性質でありうる。繰り返し照射処理は、典型的には、1〜8時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間の間隔で行う。
【0045】
特に好ましい処理は、サンプルを細胞破壊UV照射に供することを含む。本発明は、実際に、そのような処理によって、高効率で、環境(例、土壌又は水)サンプルから、(二次)代謝物(例えば抗生物質など)を産生する低く表される細菌種を単離することが可能になることを示す。細胞破壊UV処理は、典型的には、0.5〜400mJ/cm2、より好ましくは1〜200mJ/cm2、典型的には1〜100mJ/cm2であり、約5''〜5’の時間にわたり適用される。好ましいUV処理は、30秒にわたり4mJ/cm2である。
【0046】
特定の実施態様において、細胞破壊DNA損傷処理は、サンプルを少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回のUV処理(各々が0.5〜400mJ/cm2、好ましくは各々が約4mJ/cm2)に供することを含み、1〜8時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間の間隔で行う。
【0047】
代替方法において、細胞破壊DNA損傷処理は、サンプルを遺伝毒性薬剤(例えば溶媒、マイトマイシン、ブレオマイシン抗生物質、又はH)と接触させることを含む。遺伝毒性薬剤は、また、照射と組み合わせて使用してもよいことを理解すべきである。特定の実施態様において、処理工程b)は、サンプルに有効量のブレオシン、ブレオマイシンファミリー抗生物質を加えることを含む。実施例において例示される通り、ブレオシンの添加は実質的な細菌細胞死を起こし、稀な代謝物産生細菌が増殖することを可能にする。
【0048】
処理段階の間に、サンプルを、好ましくは、適した培養培地、例えば、限定なしに、PGY(バクトペプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、グルコース20g/L)又はLB(バクトトリプトン10g/L、酵母抽出物2.5g/L、塩化ナトリウム10g/L)などに置く。他の適した培養培地が当業者に公知である(Buchanan et al, 1974, Difco, 1995)又は当業者によりそのような公知の培地から調製されうることを理解すべきである。
【0049】
処理工程b)は、典型的には、固形又は半固形培地において、例えばゲル(例、寒天)などの存在において実施する。最も好ましい処理培地は、寒天培養培地、例えば軟寒天培養培地などを含む。特定の実施態様において、TGY寒天培地を使用して細菌を増殖させる。しかし、炭素源、窒素源、及び無機塩を含む異なる固形培地も使用することができる。連続希釈技術も、Schoenborn et al 2004に従って使用することができる。
【0050】
工程c)において、生きた又は増殖する細菌を、処理サンプルから同定又は単離する。生きた又は増殖する細菌を、当技術分野においてそれ自体が公知である様々な手段により同定してもよい。特定の実施態様において、培養培地中で形成するコロニーを同定する。生きた又は増殖する細菌を、さらなる培養又は増殖のために新鮮培地中で単離し、その中に置くことができる。
【0051】
上で言及した通り、本発明の方法は、好ましくは、同定又は単離された生きた又は増殖する細菌(特定の代謝物を産生する)から1つ又はいくつかの細菌を選択する工程d)を含む。この点において、工程c)及びd)を連続的、任意の順番で、又は同時に実施することができることに留意されたい。例えば、サンプル中の細菌を、工程b)又はc)において所望の活性を選択するために適した条件下に置いてもよく、工程c)において同定又は単離された増殖する又は生きた細菌は、所望の活性を示すようにする。あるいは、工程c)において同定又は単離された細菌を、工程d)において所望の活性を選択するために適した条件下のみに置いてもよく、増殖する又は生きた細菌を、最初に、工程c)において同定又は単離し、次に、所望の活性について選択するようにする。
【0052】
代謝物は、医薬的及び/又は農薬的な目的を有する任意の化合物でありうる。特定の実施態様において、代謝物は、医薬的化合物(ヒト又は獣医学における使用のため)であって、好ましくは、抗生物質、静菌性化合物、抗代謝薬剤、化学療法化合物、抗寄生虫薬剤、抗真菌薬剤、抗ウイルス化合物、サイトカイン活性化合物、又は細胞増殖因子より選択される。
【0053】
代謝物は、また、例えば、化粧品又は農業、例えば顔料、殺虫剤、農薬、化学分解化合物などにおける有用性を有しうる。
【0054】
選択された代謝物を産生する細菌の同定又は選択は、当技術分野においてそれ自体が公知である技術に従って作製することができる。特定の実施態様において、工程d)は、工程c)の同定又は単離された細菌、あるいはその抽出物を、1つ又はいくつかの指標細胞に暴露すること、及び、前記の指標細胞の少なくとも1つの生存、増殖、代謝、移動、RNA発現、タンパク質発現、タンパク質分泌、又はウイルス産生に影響を及ぼす細菌を選択することを含む。
【0055】
抗生物質薬剤又は抗生物静力学的(antibiostatic)薬剤の場合において、指標細胞は、典型的には、参照細菌株であり、増殖を阻害する又は前記の参照株を殺す試験細菌が選択される。
【0056】
例えば、抗ウイルス化合物の場合において、指標細胞は、典型的には、ウイルス産生細胞であり、ウイルスの産生又はウイルス感染細胞の生存に影響を与える細菌が選択される。
【0057】
この点において、特定の実施態様において、本発明の方法は、前記の細菌により産生される代謝物を単離又は精製する工程をさらに含む。
【0058】
好ましい実施態様において、選択された活性は、抗生物質活性又は静菌活性の産生である。本発明は、抗生物質産生細菌を、高効率で、本発明に従って処理された環境サンプルから単離することができることを示す。特に、実施例において例示される通り、バチルス属、メチロバクテリウム属、スフィンゴバクテリウム属、セルロシミクロビウム属、テピヂモナス属、ノカルジア属、ディノコッカス属、トルーペラ属、ポルフィロバクター属、ノボスフィンゴビウム属、エキシグオバクテリウム属、クロモバクテリウム属、アルスロバクター属、ロドコッカス属、ミクロバクテリウム属、キネオコッカス属、及びウィリアムシア属の抗生物質産生細菌が、異なる環境サンプル(水、土壌、動物排泄物、木などを含む)より単離されている。
【0059】
抗生物質産生細菌の選択は、当技術分野においてそれ自体が公知である異なる技術を使用して実施することができる(Singh, 2008, Janssen, 2002, Hamaki, 2005, Schoenborn L et al 2005)。特定の実施態様において、試験された細菌(又はその抽出物)を、1つ又はいくつかの参照細菌株と接触させて置き、参照株の増殖を阻害する又はそれを殺す試験細菌の能力を、抗生物質活性の指標として測定する。参照株の例は、限定なしに、E. coli、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、又はカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)を含む(Lorian, 1996)。
【0060】
この点において、本発明は、抗生物質又は静菌薬剤を産生する細菌を同定又は単離するための方法に関し、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを、細胞破壊DNA損傷処理、好ましくは繰り返し照射処理(例、UV処理)に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)工程c)の同定又は単離された細菌、あるいはその抽出物を、参照細菌株に暴露すること、及び、抗生物質活性又は静菌活性を示す細菌を同定又は単離すること
を含む。
【0061】
方法は、前記の細菌により産生される抗生物質を単離又は精製する工程をさらに含みうる。
【0062】
本発明のさらなる目的は、抗代謝又は化学療法又は抗真菌又はサイトカイン活性又は細胞増殖因子産生細菌を同定又は単離するための方法であって、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを、細胞破壊DNA損傷処理、好ましくは繰り返し照射処理(例、UV処理)に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)工程c)の同定又は単離された細菌、あるいはその抽出物を、1つ又はいくつかの参照真核細胞型に暴露すること、及び、真核細胞型の一部の生存、増殖、代謝、移動、RNA発現、タンパク質発現、又はタンパク質分泌に影響を及ぼす選択された細菌を同定すること
を含む。
【0063】
方法は、前記の細菌により産生される抗代謝又は化学療法又は抗真菌又はサイトカイン活性又は細胞増殖因子を単離又は精製する工程をさらに含みうる。
【0064】
本発明のさらなる目的は、抗ウイルス化合物産生細菌を同定又は単離するための方法にあり、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを、細胞破壊DNA損傷処理、好ましくは繰り返し照射処理(例、UV処理)に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)工程c)の同定又は単離された細菌、あるいはその抽出物を、1つ又はいくつかのウイルス産生細胞型に暴露し、ウイルスの産生又はウイルス感染細胞の生存に影響を及ぼす細菌を選択すること
を含む。
【0065】
方法は、前記の細菌により産生される抗ウイルス薬剤を単離又は精製する工程をさらに含みうる。
【0066】
本発明の方法は、また、同定又は単離された細菌の属/種を決定する工程を含みうる。この点において、本発明は、選択された代謝物を産生するディノコッカス細菌を同定又は単離するために特に適する。
【0067】
したがって、特定の実施態様において、本発明は、選択された活性を示す(例、目的の代謝物を産生する)細菌を同定又は単離するための方法に関し、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを、細胞破壊DNA損傷処理、好ましくは繰り返し照射処理に供すること;
c)生きた又は増殖するディノコッカス細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)選択された活性を示す工程c)のディノコッカス細菌を選択すること
を含む。
【0068】
細菌を、例えば、Hirsch, 2004及びKampfer, 2008に従って特徴付け、分類することができる。生理学的な特徴付けは、例えば、脂肪酸、呼吸鎖キノン、極性脂質、及びポリアミンパターンの決定、異なる炭素源の代謝プロファイリング、及び/又は16S rDNA遺伝子配列の決定を含む。
【0069】
さらに、本発明の方法は、特定の特性を有する細菌を選択する1つ又はいくつかの追加の工程を含むことができる。特に、好ましい実施態様において、方法は、選択された培養条件(例えば培地、温度、pH、塩分、栄養分、酸素化、又は炭素源など)下で生存可能である又は増殖する細菌を選択する1つ又はいくつかの工程をさらに含む。この目的のために、サンプル又は細菌を、工程b)、c)、又はd)のいずれか1つの間、あるいは先の又は続く工程の間に、適切な選択条件下に置くことができ、結果として得られる特性をこれらの工程のいずれかの間に選択する。
【0070】
本発明の特定の局面において、細菌を、温度幅約4〜70℃において生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、特定の温度条件下で培養する。特に、所望の温度で生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、工程b)、c)及び/又はd)の間;及び/又は追加工程e)の間に、細菌を選択された温度で維持する。
【0071】
本発明の別の特定の局面において、細菌を、恐らくはおよそ5%重量/容積に達するNaCl又は等価の塩の濃度条件下で生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、特定の塩条件下で培養する。特に、所望の塩度で生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、工程b)、c)及び/又はd)の間;及び/又は追加工程e)の間に、細菌を選択された塩分で維持する。
【0072】
本発明のさらなる特定の好ましい実施態様において、約3〜9.5、好ましくは4〜8のpHで生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、細菌を特定のpH条件下で培養する。特に、所望のpHで生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、工程b)、c)及び/又はd)の間;及び/又は追加工程e)の間に、細菌を選択されたpHで維持する。
【0073】
本発明のさらなる特定の実施態様において、好気及び/又は嫌気条件下で生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、細菌を特定の酸素化条件下で培養する。特に、所望の条件で生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、工程b)、c)及び/又はd)の間;及び/又は追加工程e)の間に、細菌を選択された酸素化条件下で維持する。
【0074】
本発明のさらなる特定の実施態様において、選択された炭素源の存在において生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、細菌を特定の培養培地中で培養する。特に、所望の炭素源を使用して生存可能である又は増殖することができる細菌を同定又は単離するために、工程b)、c)及び/又はd)の間;及び/又は追加工程e)の間に、細菌を培地下で維持する。
【0075】
上の特徴を個々に又は任意の組み合わせで選択することができることを理解すべきである。例えば、この方法を使用して、所望の温度及び塩分で、又は所望の温度及びpHで、又は所望の温度、pH、及び酸素化条件で生存可能である又は増殖することができる細菌を同定することができる。
【0076】
さらに、本発明の方法は、例えば、生物学的、遺伝学的、及び/又は化学的のいずれかで、同定又は単離された細菌を、又はそのDNAを、当技術分野においてそれ自体が公知である任意のプロセスにより改変するさらなる工程を含みうる。前記の改変は、例えば、抗生物質活性を改善するために、例えば、前記の細菌の生存、増殖、又は機能を改善することを目的とする。そのような改変工程は、限定なしに、細胞融合、加速進化、DNAシャッフリング、突然変異誘発、別の株からの真核生物、原核生物、もしくは合成核酸(例、DNA)の挿入、又は任意の遺伝子操作技術を含む。改変は、また、細菌においてマーカー遺伝子(例、カナマイシン耐性)を導入する工程を含みうる。
【0077】
多くの(市販の)抗菌薬は、天然産物の半合成アナログであり、最初の発酵産物の修飾から得られる。これは、ケトライド系(βラクタム群の抗生物質)について当てはまる。抗生物質の生合成に関与する酵素の半合成又はさらには、操作は、従って、最初のヒットを改善するために使用することができる(Von Nusssbaum, 2006, Marsden, 1998)。
【0078】
したがって、特定の実施態様において、本発明は、選択された活性を有する細菌を産生する方法にある。この方法は、上記の方法のいずれかに従って細菌を単離すること及び前記の細菌を、例えば、遺伝学的、生物学的、又は化学的処理により改変し、前記の活性を改善することを含む。
【0079】
実施例において例示される通り、本発明の方法によって、二次代謝物(例、抗生物質)を産生するUV耐性細菌の効率的かつ迅速な単離が可能になっている。これらの細菌は以前に公知であったが、治療的又は他の産業的な目的のために抗生物質活性(又は他の二次代謝物)の多様性及びスペクトルを拡大することができる。
【0080】
本発明のさらなる局面は、従って、また、上で開示する方法により入手可能な細菌、又はその抽出物にある。抽出物は、細胞培養に由来する任意の調製物、例えば上清、ライセート、細胞膜、又はそれに由来し、好ましくは二次代謝物を含む濃縮/精製調製物などでありうる。
【0081】
細菌は、異なる属、例えばバチルス属、メチロバクテリウム属、スフィンゴバクテリウム属、セルロシミクロビウム属、テピヂモナス属、ノカルジア属、ディノコッカス属、トルーペラ属、ポルフィロバクター属、ノボスフィンゴビウム属、エキシグオバクテリウム属、クロモバクテリウム属、アルスロバクター属、ロドコッカス属、ミクロバクテリウム属、キネオコッカス属、及びウィリアムシア属などに属しうる。
【0082】
本発明は、また、組換え宿主細胞を産生する方法に関し、方法は、上で定義する方法のいずれか1つに従って細菌を同定又は単離又は産生すること及び遺伝子(又は遺伝子クラスターもしくはオペロン、又は対応する合成もしくは組換え核酸)を、前記の細菌から別の宿主細胞中にクローニングし、それにより組換え宿主細胞を産生することを含む。宿主細胞は、原核又は真核宿主細胞、好ましくは原核宿主細胞でありうる。クローニングを、当技術分野においてそれ自体が公知である技術に従って、例えばクローニングベクター(例、プラスミド、ファージ、細菌染色体など)を使用して行うことができる。好ましい実施態様において、生合成経路の全部又は部分をコードする遺伝子又は遺伝子クラスター(例、そのような経路に関与する酵素をコードする遺伝子)を、同定された細菌より単離し、適切なベクター中にクローニングし、選択された宿主細胞中に挿入し、新たな生合成経路を構築する。
【0083】
本発明は、また、医薬的薬剤(例えば抗生物質など)を産生する方法に関し、この方法は、上の方法のいずれか1つに従って細菌を同定又は単離又は産生すること(それにおいて前記の細菌は医薬的薬剤を産生する)、及び前記の抗生物質を産生することを含む。医薬的薬剤の産生は、細菌(又はその子孫もしくは派生体)を適した条件下で培養すること及び薬剤を回収又は精製することを含みうる。薬剤の産生は、また、人工合成(例、化学的、組換え、酵素など)を含みうる。
【0084】
本発明のさらなる目的は、医薬的薬剤(例えば抗生物質など)を、野生型ディノコッカス細菌株を使用して同定、単離、又は産生する方法である。
【0085】
本発明のさらなる目的は、医薬的薬剤(例えば抗生物質など)を、改変ディノコッカス細菌株を使用して同定、単離、又は産生する方法である。
【0086】
本発明のさらなる目的は、医薬的薬剤(例えば抗生物質など)を産生するためのディノコッカス細菌の使用にある。
【0087】
本発明のさらなる目的は、ディノコッカス細菌に由来する抗生物質である。
【0088】
また、本発明を使用して、細菌を選択し、メタゲノムライブラリーを生成することができる。典型的には、そのような細菌からのゲノムDNAを抽出し、DNAの大きなフラグメントをシャトルベクターに(直接的に)クローニングし、前記の細菌を代表するメタゲノムライブラリーを作製する。このメタゲノムライブラリーを異なる宿主細菌中に移して、二次代謝物産生株を同定することができる。例として、ポリケチド産生に関与する酵素を、Ginolhac, 2007に従ってスクリーニングすることができる。
【0089】
さらに、本発明は、また、微生物を使用する改善された工業的方法に関する。実際に、本発明は、また、潜在的な混入細菌を除去するために、1つ又はいくつかの細胞破壊DNA損傷処理を工業的プロセス中の含むことを提案する。実際に、本発明の細菌は、増殖して、そのような細胞破壊処理を生き残ることができるため、後者を、例えば、任意の工業発酵又は培養デバイスもしくは装置において使用し、混入を回避してもよい。この点において、本発明の特定の目的は、また、発酵又は連続培養において上記の方法により入手可能な細菌を使用するプロセスにあり、ここでプロセスは、発酵又は連続培養の開始の前又はそれに続く細菌の照射の工程を含み、他の細菌又は細胞による混入を限定する。本発明のさらなる目的は、発酵又は連続培養においてディノコッカス細菌を使用するプロセスであり、ここでプロセスは、発酵又は連続培養の開始の前又はそれに続く細菌の照射の工程を含み、他の細菌又は細胞による混入を限定する。照射を繰り返し、典型的には、上記の条件下で実施してもよい。
【0090】
本発明のさらなる局面及び利点が、以下の実施例において開示され、それらは例示的であり、限定的ではないと見なすべきである。本願において引用される全ての参考文献(特許出願、特許、科学刊行物)が、参照により本明細書に組み入れられる。
【0091】
実施例
実施例1−代謝物産生細菌を選択するための改善条件の決定
予備工程において、5株を、UVに対するそれらの耐性について試験した。これらの株は、E. coli、ディノコッカス・ラジオパグナンス、ディノコッカス・ラディオデュランス(radiodurans)、ディノコッカス属、及びディノコッカス・ゲオサーマリス(geothermalis)であった。
【0092】
5つの試験株の静止期培養物を、10から10−8まで連続希釈した。全ての希釈物を寒天リッチ培地TGY(トリプトン10g/L、グルコース2.5g/L、及び酵母抽出物5g/L)上にスポットし(5μL)、異なるUV処理を適用した:BioLinkクロスリンカー(Vilbert Lourmat)を用いた0mJ/cm2、4mJ/cm2、17mJ/cm2、42mJ/cm2、及び167mJ/cm2
【0093】
下の表1には、異なるUV処理後での細菌密度を提示する。
【0094】
【表1】

【0095】
見られる通り、4mJ/cm2の処理によってE. coliの培養において細菌力価が3対数だけ低下する。17mJ/cm2の処理でもE. coliとディノコッカス細菌の間で区別される。
【0096】
第2の工程において、土壌懸濁液を、表1の結果に基づき、異なる照射処理に供した。土壌懸濁液を以下の通りに調製した:5gの湿潤土壌を20mLの蒸留水中に希釈した。ボルテックス及び超音波処理(1分)後、土壌上清を回収し、静止増殖期の350μLのDラジオパグナンス培養物と混合した。一定分量(50μL)を、抗真菌薬(シクロヘキシミド、100μg/mL)を含むTGY寒天上に広げ、異なる繰り返し連続照射処理を試験した:1回の処理、2回の処理、及び3回の処理。4時間の間隔を、各々のUV処理の間で順守した。
【0097】
図1aは、0mJ/cm2、4mJ/cm2、及び17mJ/cm2での1回の暴露後に得られた結果を示す。図1bは、4mJ/cm2に対する1、2、及び3回の暴露後に得られた結果を示す。
【0098】
見られる通り、最善の試験条件は、各々4mJ/cm2のUV照射に対する3回の暴露である。そのような条件は、処理された土壌サンプルから最高量の増殖ディノコッカス細菌を提供する。相当量のディノコッカス細菌が、また、17mJ/cm2のUV処理に対するサンプルの1回の暴露後に得られる。
【0099】
実施例2.水サンプルからのUV耐性細菌の単離
水サンプルを、0.22μmのニトロセルロースフィルター(Millipore, France)上でのろ過により濃縮し、次に、10mlの滅菌水中に懸濁した。ろ過した溶液を、次に、約60秒間にわたり超音波処理し、細菌を再懸濁した。
【0100】
超音波処理に続き、150μl〜2mlの懸濁液を、オートクレーブにより滅菌し(120℃で20分)、グルコース(Sigma-Aldrich, France)1g/L、ペプトン(Fluka, France)10g/L、及び酵母抽出物(Fluka, France)5g/Lを含む固形PGY寒天濃縮培養培地上に広げる。播種された培養物は、次に、BLX-E254 biolink(Vilber-Lourmat, France)を使用し、4時間の間隔で行われる各々4mJ/cm2の3回のUV処理を受ける。30〜50℃での3〜4日間にわたるインキュベーション後、目的の生存コロニーが目に見えた。
【0101】
同定されたコロニーの例を、下の表2中に列挙する。
【0102】
実施例3.木及び小石サンプルからのUV耐性細菌の単離
木及び小石サンプルを滅菌水中に浸し、次に、ボルテックスし、約60秒間にわたり超音波処理した。
【0103】
超音波処理に続き、150μL〜2mlの懸濁液を、オートクレーブにより滅菌し(120℃で20分)、グルコース(Sigma-Aldrich, France)1g/L、ペプトン(Fluka, France)10g/L、及び酵母抽出物(Fluka, France)5g/Lを含む固形PGY寒天濃縮培養培地上に広げる。播種された培養培地は、次に、BLX-E254 biolink(Vilber-Lourmat, France)を使用し、4時間の間隔で行われる各々4mJ/cm2の3回のUV処理を受ける。30〜50℃での3〜4日間にわたるインキュベーション後、目的の生存コロニーが目に見えた。
【0104】
同定されたコロニーの例を、下の表2中に列挙する。
【0105】
実施例4.石、コケ、地衣、泥、沈澱物、バイオフィルム、土壌、及び動物排泄物からのUV耐性細菌の単離
コケ、地衣、泥、土壌、及び動物排泄物のサンプルを滅菌水(V/V)中に懸濁し、次にボルテックスした。サンプルを次に約60秒間にわたり超音波処理した。
【0106】
超音波処理に続き、150μL〜2mlの懸濁液を、オートクレーブにより滅菌し(120℃で20分)、グルコース(Sigma-Aldrich, France)1g/L、ペプトン(Fluka, France)10g/L、及び酵母抽出物(Fluka, France)5g/Lを含む固形PGY寒天濃縮培養培地上に広げる。播種された培養培地は、次に、BLX-E254 biolink(Vilber-Lourmat, France)を使用し、4時間の間隔で行われる各々4mJ/cm2の3回のUV処理を受ける。30〜50℃での3〜4日間にわたるインキュベーション後、目的の生存コロニーが目に見える。
【0107】
同定されたコロニーの例を、表2中に列挙する。
【0108】
【表2】

【0109】
実施例5.ブレオシン処理されたサンプルからの細菌の単離
ディノコッカス・ラジオパグナンス株DRH40を含む土壌サンプルを、実施例2と同様の条件下で懸濁した。照射の代わりに、懸濁液を、50μg/ml又は100μg/mlのブレオシンの非存在(コントロール)又は存在において維持した。
【0110】
ブレオシンの非存在において、増殖中のピンクコロニー(ディノコッカス)は観察されず、しかし、常在性細菌叢だけが観察された。50μg/mlのブレオシンの存在において、常在性細菌叢は劇的に減少し、ピンクコロニーが存在する。同じ現象が100μg/mlのブレオシンで観察される。
【0111】
実施例6.抗生物質産生細菌の同定
表2に開示するUV耐性株を、細菌のいくつかの参照株の増殖を阻害するそれらの能力について試験した。簡単には、発酵を、ペプトン5g/L、酵母抽出物2.5g/L、及びグルコース0.5g/Lを含む10mlのPGY培地中で、30〜50℃でエアレーション及び撹拌を伴い行った。3日後、試験株の抗生物質産生を制御し、LB培地上で培養されたいくつかの参照株に対する拡散試験寒天により定量化した。
【0112】
LB:バクトトリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、塩化ナトリウム10g/L
PGY:ペプトン5g/L、酵母抽出物2.5g/L、グルコース0.5g/L
参照株:
スタフィロコッカス・アウレウスCIP 76.25
エシェリキア・コリCIP 76.24
カンジダ・トロピカリスCIP 1275
【0113】
結果を下の表3に描写する。
【0114】
【表3】

【0115】
結果は、抗生物質活性を示すいくつかの株が単離されていることを示す。これらの株は、スタフィロコッカス・アウレウス、エシェリキア・コリ、及び/又はカンジダ・トロピカリスに対して活性である抗生物質活性を産生する。産生株はUVに対して耐性であり、上昇温度で増殖することができ、それにより、本発明の方法の有効性を例示する。
【0116】
実施例7.抗生物質産生スクリーニングアッセイ
7.2.材料及び方法
培養培地
異なる培地を調製し、抗生物質産生を試験した。
100mLの溶液Aは、MnCl、4HO 0.1g、ZnSO、7HO 0.1g、及びFeCl 0.1gにより構成される。
培地1は、カゼイン5g/L、バクト酵母抽出物3g/Lからのバクトペプトンにより構成され、pH 7.1に調整される。
培地2は、セロビオース10g/L、KHPO 1g/L、MgSO、7HO 1g/L、NaCl 1g/L、(NH SO 2g/L、CaCO 2g/Lにより構成され、pH 7.2に調整される。溶液Aを1ml/Lで加える。
培地3は、オートミール20g/L及び1ml/Lの溶液Aにより構成される。
【0117】
試験株の培養調製
株を5mLのPGY液体培地中に接種した。前培養物を、次に、30℃又は45℃で48時間にわたり150rpmでの撹拌下でインキュベートした。
【0118】
15mLガラスチューブ中で、100μLの前培養物を5mLの培地1〜3中に接種した。培養物を、次に、30℃又は45℃で48時間、96時間、168時間、及び336時間にわたり150rpmでの撹拌下でインキュベートした。
【0119】
標的株の培養調製
標的株は、スタフィロコッカス・アウレウスCIP76.25、エシェリキア・コリCIP 76.24、シュードモナス・エルギノーサCIP 76.110、ストレプトコッカス・ニューモニエCIP 104485、及びカンジダ・トロピカリスDSM 1346であった。
【0120】
それらをLB培地上で、37℃で18時間にわたり培養した。次に、10mLの軟寒天(7g/Lの寒天を伴うLuria Bertani培地)に、ペトリ皿中の標的株の前培養物を2%(v/v)で接種した。
【0121】
抗生物質産生の評価
30℃又は45℃で48時間、96時間、168時間、及び336時間にわたるインキュベーション後、1mL試験培養物を13000rpmで3分間にわたり遠心した。上清を、次に、0.22μmフィルター上でろ過した。10μLのろ過された培養上清を、標的株を含む軟寒天上に接種した。37℃で18時間にわたるインキュベーション後、溶解プラークを観察することができた。
【0122】
7.2.結果
表4には、異なる得られた抗生物質プロファイルの例を提示する。キネオコッカス株M10−5Hは、グラム陽性試験株及びE. coli CIP 76.24に対する抗生物質を産生した。ディノコッカス株MC5−7Fは、SアウレウスCIP 76.25に対する抗生物質を産生した。ミクロバクテリウム株MA3−7Gは、CトロピカリスCIP 1275に対する抗生物質を産生し、及びウィリアムシア株MA3−6Bは、グラム陽性試験株及びPエルギノーサCIP 76.110に対する抗生物質を産生した。
【0123】
【表4】

【0124】
【表5】



【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝物産生細菌を同定又は単離するための方法であって、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを繰り返し照射処理に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を前記の処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)代謝物を産生する工程c)の細菌を選択すること
を含む、方法。
【請求項2】
サンプルが、環境サンプルである又はそれに由来する、好ましくは、土壌、水、温泉、海洋環境、泥、木、石、コケ、植物抽出物、地衣、生物学的物質、沈殿物、泥炭地、バイオフィルム、工場排液、ガス、砂、油、汚水、又は動物もしくはヒト排泄物より得られる又はそれに由来する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
繰り返し照射処理が、E. coliの培養において細菌力価を少なくとも2対数だけ低下させる処理である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
処理が、UV、ガンマ、及び/又はX線照射(単独又は組み合わせのいずれかで)より選択される繰り返し照射、最も好ましくは繰り返しUV照射を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
処理が、1〜8時間、好ましくは3〜5時間、最も好ましくは約4時間の間隔での繰り返し処理を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
処理が、サンプルを少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回のUV処理(各々が0.5〜400mJ/cm2、より好ましくは1〜200mJ/cm2、典型的には1〜100mJ/cm2)に供することを含み、1〜8時間の間隔で行われる、請求項4又は5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
ディノコッカス細菌を選択する工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
工程b)が固形培養培地中で実施される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
工程c)において、コロニーが同定又は単離される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
工程c)及びd)が、連続的、任意の順番で、又は同時に実施される、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
工程d)が、工程c)の同定又は単離された細菌、あるいはその抽出物を、1つ又はいくつかの指標細胞に暴露すること、及び、該指標細胞の少なくとも1つの生存、増殖、代謝、移動、RNA発現、タンパク質発現、タンパク質分泌、又はウイルス産生に影響を及ぼす細菌を選択することを含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
方法が、代謝物を単離又は精製するさらなる工程を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
代謝物が、医薬的化合物、好ましくは、抗生物質、静菌性化合物、抗代謝薬剤、化学療法化合物、抗寄生虫薬剤、抗真菌薬剤、抗ウイルス化合物、サイトカイン活性化合物、又は細胞増殖因子より選択される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
抗生物質又は静菌性化合物を産生する細菌を同定又は単離するための方法であって、方法は以下:
a)特徴付けられていない細菌を含むサンプルを提供すること;
b)サンプルを繰り返し照射処理、好ましくは繰り返しUV処理に供すること;
c)生きた又は増殖する細菌を該処理サンプルから同定又は単離すること;及び
d)工程c)の同定又は単離された細菌、あるいはその抽出物を、参照細菌株に暴露させること、及び、抗生物質活性又は静菌活性を示す細菌を同定又は単離すること
を含む、方法。
【請求項15】
細菌により産生される抗生物質又は静菌性化合物を単離又は精製する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
選択された培養条件(例えば培地、栄養分、温度、pH、塩分、酸素化、共培養、バイオリアクター、又は炭素源など)下で生存可能である又は増殖する細菌を選択する工程をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
細菌の生存、増殖、又は機能を改善するために、生物学的、遺伝学的、及び/又は化学的のいずれかで、同定又は単離された細菌を改変する工程をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項記載の方法により入手可能な細菌、又はその抽出物。
【請求項19】
バチルス属、メチロバクテリウム属、スフィンゴバクテリウム属、セルロシミクロビウム属、テピヂモナス属、ノカルジア属、ディノコッカス属、トルーペラ属、ポルフィロバクター属、ノボスフィンゴビウム属、エキシグオバクテリウム属、クロモバクテリウム属、アルスロバクター属、ロドコッカス属、ミクロバクテリウム属、キネオコッカス属、又はウィリアムシア属に属する、請求項18記載の細菌。
【請求項20】
好ましくは、抗生物質薬剤又は静菌性薬剤又は抗真菌薬剤又は抗寄生虫薬剤又は抗ウイルス薬剤又は抗代謝薬剤又は化学療法薬剤又はサイトカイン活性化合物又は細胞増殖因子より選択される医薬的化合物を産生する方法であって、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法に従って医薬的化合物産生細菌を同定又は単離すること及び該医薬的化合物を産生することを含む方法。
【請求項21】
好ましくは、抗生物質薬剤又は静菌性薬剤又は抗寄生虫薬剤又は抗真菌薬剤又は抗ウイルス薬剤又は抗代謝薬剤又は化学療法薬剤又はサイトカイン活性化合物又は細胞増殖因子より選択される医薬的化合物を産生するためのディノコッカス細菌の使用。
【請求項22】
組換え宿主細胞を産生する方法であって、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法に従って細菌を同定又は単離すること及び1つ又はいくつかの遺伝子、又は対応する合成もしくは組換え核酸を、別の宿主細胞中の該細菌からクローニングし、それにより組換え宿主細胞を産生することを含む方法。

【公表番号】特表2012−514991(P2012−514991A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545755(P2011−545755)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050513
【国際公開番号】WO2010/081899
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511174454)
【氏名又は名称原語表記】DEINOVE
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】