説明

細菌検出および/または同定培地

本発明は、尿試料中の大腸菌を検出および/または同定する方法であって、
a)細菌コロニーを得るために
・β−グルクロニダーゼ基質、β−ガラクトシダーゼ基質及びα−ガラクトシダーゼ基質、及びラクトース酸性化酵素、β−リボシダーゼ、ホスファターゼ、L−アラニンアミノペプチダーゼ及びL−ロイシンアミノペプチダーゼのための基質から選択される第1の基質、及び
・β−グルクロニダーゼ基質、β‐ガラクトシダーゼ基質及びα−ガラクトシダーゼ基質、及びラクトース酸性化酵素、β−リボシダーゼ、ホスファターゼ、L−アラニンアミノペプチダーゼ及びL−ロイシンアミノペプチダーゼのための基質から選択される上記第1の基質とは異なる、第2の基質を含む検出培地に、大腸菌を含む傾向がある尿試料を接種すること、
b)第1の基質および/または第2の基質と反応するコロニーを大腸菌のコロニーとして同定すること、
を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、生化学的な微生物分析、特に細菌の検出と同定である。
【0002】
腸内細菌のような病原菌、特にグラム陰性細菌は毎年多くの疾患、流行病等の原因となる。
【0003】
大腸菌(Escherichia coli)という種は、消化管において最も優勢的な好気性の種である。しかしながら、水中の上記細菌の存在は糞便の混入を示し、特定の菌株は病原性であり、腹膜、胆管、虫垂又は生殖器の化膿の原因となる。
大腸菌の早期の特異的な検出は、治療に関して、汚染除去、その他の適切な解決法を提案することを可能にする。この検出は、検出することが求められる細菌の酵素活性等の標的代謝活性とされる代謝に特異的な基質を含む検出培地の使用に特に基づくことができ、すなわち基質の選択によって、反応があるか否かに応じて、微生物の性質を特徴づけることが可能である。
【0004】
CPS ID 3(ビオメリュー)培地は、大腸菌の菌株を検出するために、β−グルコシダーゼ基質と組合わせて、場合によりトリプトファナーゼの検出と組合わせて、β−グルクロニダーゼ基質を使用する。しかしながら、この培地が優れた特異性を有する一方で、大腸菌の検出のためのβ‐グルクロニダーゼ基質の使用は、この活性を発現しないごく一部の大腸菌の菌株(5−10%)の存在のために不完全な感受性を呈する。さらにまた、特定のシトロバクター属の菌株も、大腸菌のコロニーと同じ色のβ−グルクロニダーゼ陽性コロニーを作ることができる。
【0005】
本発明は、迅速且つ安価に、実施が容易な方法で病原性大腸菌を同定するために、特に適切な新規な培地を提供することによって従来技術の問題を解決することを提案する。驚くべきことに、発明者は、特に尿サンプルを使用して、適切な濃度の酵素基質の特定の組合せが、大腸菌の迅速で容易な検出を可能にすることを示した。
【0006】
本発明の開示を続ける前に、以下の定義を、本発明の理解を容易にするために提供する。
【0007】
「検出培地」なる用語は、微生物の生存および/または成長のために必要な全ての要素を含む培地を意味することを目的とする。この検出培地は、検出培地のみとして、又は培養且つ検出培地として、どちらにも提供される。第1の場合において、微生物の培養は接種の前に実行され、第2の場合において、検出培地は培養培地も構成する。例えば、本発明による培地は、他の考えられる添加物を含んでもよい:ペプトンまたは組織の抽出物、一つ以上の成長因子、炭水化物、一つ以上の選択剤、バッファー、一つ以上のゲル化剤等。
この培養培地は、チューブまたはフラスコまたはシャーレ上に播種の準備ができている、液体形態または使用準備済みのゲル形態であってもよい。
本発明の目的において、検出は、液体培地、一片(a strip)または他の固体支持体で行われ得る。
【0008】
「基質」なる用語は、微生物の酵素又は代謝活性による検出可能なシグナルを直接的に又は間接的に生じることができる何らかの分子を意味することを目的とする。
基質は特に代謝基質、例えば炭素または窒素源であってもよく、代謝の生成物のうちの1つの存在下で呈色反応を生じる指示薬に結合されてもよい。
また、基質は酵素基質であってもよく、基質は微生物の直接的または間接的な検出を可能にする生成物を与えるために酵素によって加水分解され得る基質であってもよい。この基質は、明らかにされる酵素活性に特異的な第1の部分及び標識として作用する第2の部分(以下では標識部分とする)を含んでもよい。この標識部分は色素生産性、蛍光発生性、発光性等でもよい。固体支持体(フィルター、寒天、電気泳動ゲル)に適している色素生産性基質として、オキシダーゼ(osidase)とエステラーゼ活性の検出を可能にする、インドキシルとその誘導体を主成分とした基質、及びヒドロキシキノリン又はエスクレチンとそれらの誘導体を主成分とした基質を挙げることが出来る。また、ニトロフェノール及びニトロアニリン及びその誘導体を主成分とする基質を挙げることができ、ニトロフェノールに基づく基質の場合はオキシダーゼとエステラーゼ活性を検出するためであり、ニトロアニリンに基づく基質の場合はペプチダーゼ活性を検出するためである。最後に、ナフトールとナフチルアミンとそれらの誘導体を主成分とする基質を挙げることができ、ナフトールによってオキシダーゼとエステラーゼ活性を検出することが可能であり、ナフチルアミンによってペプチダーゼ活性を検出することが可能である。この基質は、オキシダーゼ、ペプチダーゼ、エステラーゼ等の活性のような酵素活性の検出を特に可能にすることができるが、これに制限されるものではない。
また、酵素基質は、その加水分解の生成物が直接的または間接的に検出される天然の基質であってもよい。天然の基質としては、特に、トリプトファナーゼまたはデアミナーゼ活性を検出するためのトリプトファン、デアミナーゼ活性を検出するための環状アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン)、ホスホリパーゼ活性を検出するためのホスファチジルイノシトール等を挙げることができる。
【0009】
本発明によれば、基質は、好ましくは、インドキシル(3−インドキシル、5−ブロモ−3−インドキシル、5−ヨード−3−インドキシル、4−クロロ−3−インドキシル、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル、5−ブロモ−6−クロロ3−インドキシル、6−ブロモ−3−インドキシル、6−クロロ−3−インドキシル、6−フルオロ−3−インドキシル、5−ブロモ−4−クロロ−N−メチル−3−インドキシル、N−メチル−3−インドキシル等);ウンベリフェロン(4−メチルウンベリフェロン、シクロヘキセノエスクレチン等);アリザリン;p−ナフトールベンゼイン;ニトロフェノール(オルト−ニトロフェノール、パラ−ニトロフェノール等);ヒドロキシキノリン;カテコール(カテコール、ジヒドロキシフラボン、ヒドロキシフラボン等);レゾルフィン;クロロフェノール・レッド;フルオレセイン;アミノフェノール(パラ−アミノフェノール、ジクロロアミノフェノール等);ナフトール(α−ナフトール、2−ナフトール、ナフトール−ASBI等);アミノクマリン(7−アミノ−4−メチルクマリン等);ナフチルアミド;アクリジン(アミノフェニルアクリジン等);またはアミノフェノキサジン(アミノベンゾフェノキサジノン、アミノペンチルレソルフィン等)を主成分とする基質から選択される。
【0010】
指示作用により、β‐グルクロニダーゼ活性を検出するために使用する基質は、特に4−メチルウンベリフェリル−β−グルクロニド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、アリザリン−β−グルクロニドまたはシクロヘキセノエスクレチン−β−グルクロニド、またはその塩類であってもよい。
【0011】
β‐ガラクトシダーゼ活性を検出するために使用する基質は、特に4−メチルウンベリフェリル−β−ガラクトシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシド、6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシド、アリザリン−β−ガラクトシドまたはシクロヘキセノエスクレチン−β−ガラクトシド)またはその塩類であってもよい。
【0012】
β−グルコシダーゼ活性を検出するために使用する基質は、特に4−メチルウンベリフェリル−β−グルコシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルコシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−グルコシド、6−クロロ−3−インドリル−β−グルコシド、アリザリン−β−グルコシド、シクロヘキセノエスクレチン−β−グルコシド、ニトロフェニル−β−グルコシドまたはジクロロアミノフェニルグルコシドまたはその塩類であってもよい。
【0013】
「誘導物質」なる用語は、標的とされる代謝活性の発現の増大を誘発する化合物を意味することを目的とする;全ての実験条件が別の面で等しくて、誘導物質が適切な濃度である場合は、それが不在の場合または不適当な濃度である場合よりも、代謝活性はより大きい。 100ng/lと10g/lとの間の、好ましくは10mg/lと3g/lとの間の濃度は、特に本発明に適しているが、これに限定されるものではない。
・β‐グルクロニダーゼの場合は、好ましくはグルクロネート及びメチル−β−グルクロニドから選択されるグルクロニドを挙げることができる;
・β‐ガラクトシダーゼの場合は、好ましくはラクトースとイソプロピル−β−チオガラクトシドから選択されるガラクトシドを挙げることができる;
・β−グルコシダーゼの場合は、グルコースにβ位において結合する炭水化物で構成される炭水化物、またはβグルコシドサブユニットを有する炭水化物、特にセロビオース、セルロース、デンプン、セロトリオースまたはトレハロースを挙げることができる。また、メチル−β−グルコシド、イソプロピル−β−チオグルコシド、インドキシル−β−グルコシドまたはメチル−β−チオグルコシドを挙げてもよい。
【0014】
「阻害物質」なる用語は、標的とされた代謝活性の発現の減少を誘発する化合物を意味することを目的とする;全ての実験条件が別の面で等しくて、誘導物質が適切な濃度である場合は、それが不在の場合または不適当な濃度である場合よりも、代謝活性はより弱い。
100ng/lと30g/lとの間、好ましくは1mg/lと3g/lとの間の濃度は、特に本発明に適しているが、これに限定されるものではない。
・β‐グルクロニダーゼの場合は、D−グルコース、D−グルカル酸1,4−ラクトンを特に挙げることができる。
・β‐ガラクトシダーゼの場合は、2−デオキシガラクトース、セロビオース、D−ガラクトース、D−グルコースを特に挙げることができる。
【0015】
「生物試料」なる用語は、生体液に由来する臨床試料、又は任意の種類の食品に由来する食品試料、又は表面試料、水試料、空気試料のような環境試料を意味することを目的とする。従って、この試料は液体又は固体でもよく、血液、血漿、尿または糞便、鼻、のど、皮膚、傷又は脳脊髄液から採取された試料に由来する臨床試料、水又例えば牛乳または果汁等の飲料の試料;ヨーグルト、肉、卵、野菜、マヨネーズまたはチーズの試料;魚等の試料に由来する食品試料、あるいは、特に動物の餌のような動物飼料に由来する食品試料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
この点に関して、本発明は、生物試料中の、好ましくは尿試料中の大腸菌を検出および/または同定する方法であって、
a)細菌コロニーを得るために
・β‐グルクロニダーゼ基質、β‐ガラクトシダーゼ基質及びα−ガラクトシダーゼ基質、及びラクトース酸性化酵素、β−リボシダーゼ、ホスファターゼ、L−アラニンアミノペプチダーゼ及びL−ロイシンアミノペプチダーゼのための基質から選択される第1の基質、及び
・β‐グルクロニダーゼ基質、β‐ガラクトシダーゼ基質及びα−ガラクトシダーゼ基質、及びラクトース酸性化酵素、β−リボシダーゼ、ホスファターゼ、L−アラニンアミノペプチダーゼ及びL−ロイシンアミノペプチダーゼのための基質から選択される上記第1の基質とは異なる第2の基質
を含む、検出培地上に、大腸菌を含む傾向がある試料、好ましくは尿試料を接種すること、
b)第1の基質および/または第2の基質と反応するコロニーを大腸菌のコロニーとして同定すること、
を含む方法に関する。
【0017】
好ましくは、上記第1および第2の基質は、適切な濃度である。微生物の接種は、当業者に公知である任意の接種技術によって実施され得る。インキュベーション工程は検出が要求される酵素活性にとって最適である温度で実施されてもよく、当業者は検出される酵素活性に従って直ちに前記温度を選択することができる。検出/同定は、比色法または蛍光定量法によって、目視検査によって実施され得る。
本発明の好ましい一実施形態によれば、上記第1の基質は20と1000mg/lとの間の濃度であり、上記第2の基質は20mg/と30g/lとの間の濃度である。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記第1の基質はβ−グルクロニダーゼ基質であり、第2の基質はβ−ガラクトシダーゼ基質である。
好ましくは、β‐グルクロニダーゼ活性のための基質は、好ましくは20と1000mg/lとの間の濃度の、4−メチルウンベリフェリル−β−グルクロニド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、6−クロロ−3インドリル−β−グルクロニド、アリザリン−β−グルクロニドまたはシクロヘキセノエスクレチン−β−グルクロニド、またはそれらの塩類から選択される。
【0018】
好ましくは、β‐ガラクトシダーゼ基質は、低濃度である。好ましくは、β‐ガラクトシダーゼ活性のための基質は、好ましくは10と1000mg/lとの間、好ましくは20と500mg/lとの間の濃度の、4−メチルウンベリフェリル−β−ガラクトシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシド、6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシド、アリザリン−β−ガラクトシドまたはシクロヘキセノエスクレチン−β−ガラクトシド、またはそれらの塩類から選択される。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態によれば、検出培地は、好ましくはβ−グルコシダーゼ、β−ラクトシダーゼ、N−アセチルヘキソサミニダーゼ、エステラーゼ、スルファターゼ、β−キシロシダーゼ、フォスフォリパーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−セロビオシダーゼ、α−グルコシダーゼ、トリプトファナーゼ、デアミナーゼ、オキシダーゼ、色素合成、ペプチダーゼ(β−アラニン・アミノペプチダーゼ、エラスターゼ等)のための基質から選択される第3の基質も含む。
好ましくは、上記第3の基質はβ−グルコシダーゼのための基質である。好ましくは、β−グルコシダーゼ活性のための基質は、好ましくは10と1000mg/lとの間、好ましくは20と500mg/lとの間の濃度の、4−メチルウンベリフェリル−β−グルコシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルコシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−グルコシド、6−クロロ−3−インドリル−β−グルコシド、シクロヘキセノエスクレチン−β−グルコシド、ニトロフェニル−β−グルコシドまたはジクロロアミノフェニルグルコシド、またはそれらの塩類から選択される。本発明の好ましい一実施形態によれば、検出培地も、誘導物質を含む。
【0020】
好ましくは、誘導物質は、100ng/lと10g/lとの間の濃度である。
本発明の好ましい一実施形態によれば、誘導物質は:
・β−グルクロニダーゼの場合は、好ましくはグルクロネート及びメチル−β−グルコシドから選択されるグルクロニド;
・β−ガラクトシダーゼの場合は、好ましくはラクトース及びイソプロピル−β−チオガラクトシドから選択されるガラクトシド;
・β−グルコシダーゼの場合は、グルコースにβ位において結合する炭水化物で構成される炭水化物、またはβ−グルコシドサブユニットを有する炭水化物、特にセロビオース、セルロース、デンプン、セロトリオースまたはトレハロースである。また、メチル−β−グルコシド、イソプロピル−β−チオグルコシド、インドキシル−β−グルコシドまたはメチル−β−チオグルコシドを挙げてもよい。
好ましくは、誘導物質は、好ましくは100ng/lと10g/lとの間の濃度のセロビオースである。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態によれば、検出培地も、阻害物質を含む。好ましくは、阻害物質は、100ngと30g/lとの間の濃度である。
本発明の好ましい一実施形態によれば、阻害物質は、好ましくは、
・β−グルクロニダーゼの場合は、Dグルコース、Dグルカル酸−1,4−ラクトン、
・β−ガラクトシダーゼの場合は、2−デオキシガラクトース、セロビオース、D−ガラクトース、Dグルコースである。
【実施例】
【0022】
下記の実施例は、説明として提供されるものであって、事実上限定するものではない。 本発明を、より明らかに理解することを可能にするものである。
【0023】
実施例1:6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニドと5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドとの組合せの評価

さまざまな濃度の6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド(0、0.1、0.15と0.20g/l)及び、さまざまな濃度の5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシド(0、0.025、0.05と0.1g/l)は、β‐グルクロニダーゼのための合成酵素基質が取り除かれたCPS ID 3培地(ビオメリュー)に加えられて、組合せられる。また、これらの培地は、50mg/lの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルコシドを含む。それらは、1シャーレにつき20mlの割合で分配される。食品試料中の大腸菌と大腸菌群の検出とカウントを目的とする、β‐グルクロニダーゼ基質(6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド)とβ−ガラクトシダーゼ基質(5−ブロモ−3−インドリル−β−ガラクトシド)を組合わせたColi ID培地(ビオメリュー)は、平行して試験される。尿試料から一般に単離された微生物及び出願人のコレクションに由来する微生物は、0.5のマクファーランドを1/20に希釈した10μlの懸濁液の半定量的単離によってこれらの培地上に接種される。シャーレは37°Cで20時間インキュベートされ、次に形成されたコロニーは視覚的に調べられる。これらのコロニーの色は記録される。結果を、下記の表1に示す:
【0024】
表1:CPS ID 3培地中の6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニドと5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドの組合せのコロニー呈色反応への影響
表1

NA=適用なし、−=無色、Inh=阻害された、P=ピンク色、Pp=薄ピンク色、GP=灰色がかったピンク、GG=灰色がかった緑色、GB=灰色がかった青色、BG=青っぽい緑色、Vi=紫色、O=オレンジ色がかった茶色、T=青緑色
【0025】
表1において、6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニドと5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドを組合せた培地2c、3b、3c、4b及び4cだけが全ての大腸菌の菌株を検出できることが示されている。βグルクロニダーゼ基質とβガラクトシダーゼ基質を組合わせたにもかかわらず、Coli ID培地の場合はそれは事実ではない。しかしながら、培地2c、3c及び4cでは、イ.クロアカ(E. cloacae) 菌株は、大腸菌(E. coli)菌株からより直ちには識別されない。同様に、シ.フロインデイ(C. freundii)菌株は、少なくとも0.05g/lの5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドを有する全ての培地上の大腸菌(E.coli)菌株と同じ色のコロニーを生じる。
したがって、また特異性に過度に損害を与えず大腸菌の菌株の検出感度を向上させるために最も有利な培地を決定することが可能でする。
【0026】
実施例2:6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドと5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルコシドを組合わせてなる培地へのセロビオースの影響

それぞれ0.15g/l、0.08g/l及び0.08g/lの6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドと5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルコシドを、トリプチケースソイ寒天培地(ビオメリュー)に、加えた。この培地に、0.5g/lのセロビオースが補充されるか、または補充されない。これらの2つの培地は、1つのシャーレにつき20mlの割合で分配される。尿サンプルから一般に単離された微生物及び出願人のコレクションに由来する微生物は、0.5のマクファーランドを1/20に希釈した10μlの懸濁液の半定量的単離によってこれらの培地上に接種される。シャーレは37℃で24時間インキュベートされ、次に形成されたコロニーは視覚的に調べられる。これらのコロニーの色は記録される。結果を、下記の表2に示す:
【0027】
表2:6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドと5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−グルコシドを組合わせてなる培地におけるセロビオースのコロニー呈色反応への影響

【0028】
上記の表2において、6−クロロ−3−インドリル−β−グルクロニド及び5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドを組合わせてなる培地では、セロビオースは、シトロバクター(Citrobacter)009菌株を大腸菌の菌種からより明らかに識別できることが示されている。これは、特異性に損害を与えることにより不利にならずに、大腸菌の検出感度の増大から恩恵をうけることを可能にする。
【0029】
実施例3:本発明による上記第1および第2の基質の濃度を定めるための試験

下記の試験は本発明による上記第1および第2の基質の濃度を定めるために実施されることができ、それは使用する基質及び、さらに一般的にいえば、反応培地の調製に応じて可変的である。この試験の理解を助けるために、特に大腸菌の菌株を含み、陽性活性を表さない菌株、あるいは弱くまたは遅く陽性活性を表す菌株及び任意に他の微生物を含む、微生物の菌株のキットを用いて、β−グルクロニダーゼとβ−ガラクトシダーゼの組合せの場合について、以下で実施する。この試験は、他の種類の基質のために実施され得る。適切な濃度のβ−グルクロニダーゼ基質を含むか、あるいはβ−グルクロニダーゼ基質を含まない2つの反応培地は、ゼロ濃度、β−ガラクトシダーゼを発現する大腸菌の菌株に陽性反応を得るための少なくとも一つの濃度、更には中間濃度からなるβ−ガラクトシダーゼ基質の範囲を調製するために用いる。各々の微生物の菌株が、各々の培地上の純粋な培地に接種をされ得るような方法で、各々の培地は等分される。他の微生物の菌株から大腸菌の菌株を識別すると同時に、大腸菌の菌株の最大数を明らかにすることを可能にするようなβ−ガラクトシダーゼ及びβ−グルクロニダーゼのための基質の組合せを含む培地を選択するために、培地は好ましくは20と50℃との間の適切な温度、通常は30分間と72時間との間の適切なインキュベーションの後、検討される。調製される各基質の濃度及び菌株キットについて実験を繰り返す必要がある可能性がある。また、反応培地は、β−ガラクトシダーゼおよび/またはβ−グルクロニダーゼの誘導物質および/または阻害物質を含むことは有利である可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿試料中の大腸菌を検出および/または同定する方法であって、
a)細菌コロニーを得るために
・β−グルクロニダーゼ基質、β−ガラクトシダーゼ基質及びα−ガラクトシダーゼ基質、及びラクトース酸性化酵素、β−リボシダーゼ、ホスファターゼ、L−アラニンアミノペプチダーゼ及びL−ロイシンアミノペプチダーゼのための基質から選択される第1の基質、及び
・β−グルクロニダーゼ基質、β‐ガラクトシダーゼ基質及びα−ガラクトシダーゼ基質、及びラクトース酸性化酵素、β−リボシダーゼ、ホスファターゼ、L−アラニンアミノペプチダーゼ及びL−ロイシンアミノペプチダーゼのための基質から選択される前記第1の基質とは異なる、第2の基質を含む検出培地に、大腸菌を含む傾向がある尿試料を接種すること、
b)第1の基質および/または第2の基質と反応するコロニーを大腸菌のコロニーとして同定すること、
を含む方法。
【請求項2】
第1の基質がβ−グルクロニダーゼ基質であり、第2の基質がβ−ガラクトシダーゼ基質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の基質が20と1000mg/lとの間の濃度であり、前記第2の基質が10mg/と30g/lとの間の濃度である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
検出培地が、β−グルコシダーゼ、β−ラクトシダーゼ、N−アセチルヘキソサミニダーゼ、エステラーゼ、スルファターゼ、β−キシロシダーゼ、フォスフォリパーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−セロビオシダーゼ、α−グルコシダーゼ、トリプトファナーゼ、デアミナーゼ、オキシダーゼ、色素合成、ペプチダーゼ(βアラニン・アミノペプチダーゼ、エラスターゼ等)のための基質から選択される第3の基質を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
第3の基質がβ−グルコシダーゼ基質である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
検出培地が誘導物質、好ましくはセロビオースを含む、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
検出培地が阻害物質を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−517552(P2010−517552A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548726(P2009−548726)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050185
【国際公開番号】WO2008/104681
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】