説明

組成物及びその製造方法

【課題】従来と異なる特徴と性質を有するホログラフィック記録媒体を提供する。
【解決手段】次式Iに示す構造を有する組成物。


式中、RとRは各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R、R、及びRは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、RとRは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック記録媒体に関し得る実施形態を含む。本発明は、プロトン化ニトロン色素を含む組成物に関し得る実施形態を含む。本発明は、ホログラフィック記録媒体を製造し使用する方法に関し得る実施形態を含む。
【背景技術】
【0002】

ホログラフィック記録は、ホログラムの形態の情報の記憶である。情報は、バイナリーデータ、画像、バーコード、及びグレーティングを始めとする様々な形態で記憶することができる。ホログラムは三次元干渉縞(パターン)の画像である。これらのパターンは、感光性媒体内において光の2つのビームの交差によって作り出され得る。表面系記憶フォーマットと比較した場合のボリュームホログラフィック記録の差違は、多重化技術を使用して感光性媒体の同じ容積内に多数のホログラムを重なり様式で記憶し得ることである。多重化技術は、信号及び/又は参照ビームの角度、波長、又は媒体位置を変化させ得る。しかし、実行可能な技術としてのホログラフィック記録の具現化に対する障害は適切な記録媒体の開発であった。
【0003】
最近のホログラフィック記録材料の研究により、色素をドープしたデータポリマー材料が開発されることになった。色素をドープしたデータ記憶材料の感度は、色素の濃度、記録波長における色素の吸収断面積、光化学遷移の量子効率、及び単位色素密度に対する色素分子のインデックス変化に依存し得る。しかし、色素濃度と吸収断面積の積が増大するにつれて、記憶媒体(例えば、光学データ記憶ディスク)が不透明になり得、そのため記録と読取の双方が複雑になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在利用可能なものとは異なる特徴と性質を有するホログラフィック記録媒体を得ることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、組成物が提供される。組成物は次式Iに示す構造を有する。
【0006】
【化1】

式中、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R、R、及びRは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。
【0007】
一実施形態では、物品が提供される。物品は式Iに示す構造を有する組成物を含む。
【0008】
一実施形態では、次式VIIIに示す構造を有する組成物が提供される。
【0009】
【化2】

一実施形態では、物品が提供される。物品は式VIIIに示す構造を有する組成物を含む。
【0010】
一実施形態では、次式IXに示す構造を有する組成物が提供される。
【0011】
【化3】

一実施形態では、物品が提供される。物品は式IXに示す構造を有する組成物を含む。
【0012】
一実施形態では、式Iに示す構造を有する組成物を製造する方法が提供される。一実施形態では、式VIIIに示す構造を有する組成物を製造する方法が提供される。一実施形態では、式IXに示す構造を有する組成物を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光化学活性色素の吸光度の変化を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る光化学活性色素の吸光度の変化を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る光化学活性色素の屈折率の変化を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る感光性材料の屈折率変化を示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る感光性材料の回折効率変化を示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る物品のホログラム消去測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ホログラフィック記録媒体に関し得る実施形態を含む。本発明は、プロトン化ニトロン色素を含む組成物に関し得る実施形態を含む。本発明は、ホログラフィック記録媒体を作成し使用する方法に関し得る実施形態を含む。
【0015】
一実施形態では、組成物は次式Iに示す構造を有する。
【0016】
【化4】

式中、R及びRは、各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であることができ、R、R、及びRは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。原子団の選択は、得られる材料の1以上の性能特性に影響し得、得られる材料を実現し、又は得られる材料を使用するには加工処理の変更が必要になることがある。
【0017】
一実施形態では、Rは炭素原子数約5〜約12の芳香族基であり、Rは炭素原子数約5〜約12の芳香族基であり、R、R、及びRは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基である。一実施形態では、Xは塩素である。一実施形態では、Xは臭素である。一実施形態では、Xはヨウ素である。
【0018】
一実施形態では、Rは炭素原子数約6〜約10の芳香族基であり、Rは炭素原子数約6〜約10の芳香族基であり、R、R、及びRは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約5の脂肪族基、炭素原子数約4〜約8の環式脂肪族基、又は炭素原子数約6〜約10の芳香族基であり、「n」は1〜3の値を有する整数である。
【0019】
一実施形態では、Rは次式からなる群から選択される構造を有する1種以上の電子求引性の置換基からなる。
【0020】
【化5】

式中、R、R、及びR10は各々が各々独立に炭素原子数1〜10の脂肪族基、炭素原子数約3〜10の環式脂肪族基及び炭素原子数約3〜10の芳香族基である。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「芳香族基」は、1以上の価数を有し1以上の芳香族基を含む原子配列をいう。1以上の価数を有し1以上の芳香族基を有する原子配列は窒素、イオウ、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素から構成されていてもよい。本明細書で使用する場合、用語「芳香族基」には、特に限定されないが、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、及びビフェニル基がある。既に述べたように、芳香族基は1以上の芳香族基を含有する。芳香族基は常に4n+2個の「非局在化」電子を有する環状構造であり、ここで「n」はフェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などで例示されるように1以上の整数である。芳香族基は非芳香族部分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族部分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、非芳香族部分−(CH−と縮合した芳香族基(C)を含む芳香族基である。便宜上本明細書では、用語「芳香族基」は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものとして定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基をを含むC芳香族基であり、メチル基は官能基のアルキル基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC芳香族基であり、ニトロ基は官能基である。芳香族基は、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPhC(CFPhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(すなわち、3−CClPh−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(すなわち、4−BrCHCHCHPh−)などのハロゲン化芳香族基を包含する。芳香族基の別の例として、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(すなわち、4−HNPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(すなわち、NHCOPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPhC(CN)PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPhCHPhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPh(CHPhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(すなわち、4−HOCHPh−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(すなわち、4−HSCHPh−)、4−メチルチオフェン−1−イル(すなわち、4−CHSPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(すなわち、2−NOCHPh)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。用語「C〜C10芳香族基」は、3個以上10個以下の炭素原子を含有する芳香族基を包含する。芳香族基の1−イミダゾリル(C−)はC芳香族基の代表例である。ベンジル基(C−)はC芳香族基の代表例である。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「環式脂肪族基」とは、1以上の価数を有し、環状であるが芳香族ではない原子配列を含む基をいう。本明細書で定義される場合、「環式脂肪族基」は芳香族基を含有しない。「環式脂肪族基」は1以上の非環状部分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C11CH−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族ではない原子配列)及びメチレン基(非環状部分)を含む環式脂肪族基である。環式脂肪族基は、窒素、イオウ、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素から構成されていてもよい。便宜上、本明細書で用語「環式脂肪族基」は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものとして定義される。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基はメチル基を含むC環式脂肪族基であり、メチル基は官能基のアルキル基である。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基はニトロ基を含むC環式脂肪族基であり、ニトロ基は官能基である。環式脂肪族基は同じでも異なっていてもよい1以上のハロゲン原子を含み得る。ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む環式脂肪族基としては、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(すなわち、−C10C(CF10−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えば、CHCHBrCH10O−)などがある。環式脂肪族基の別の例として、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(すなわち、HNC10−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(すなわち、NHCOC−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち、−OC10C(CN)10O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち、−OC10CH10O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち、−OC10(CH10O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち、4−HOCH10−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち、4−HSCH10−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(すなわち、4−CHSC10−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CHOCOC10O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち、NOCH10−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば、(CHO)SiCHCH10−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。用語「C〜C10環式脂肪族基」は、3個以上10個以下の炭素原子を含有する環式脂肪族基を包含する。環式脂肪族基2−テトラヒドロフラニル(CO−)はC環式脂肪族基の代表である。シクロヘキシルメチル基(C11CH−)はC環式脂肪族基の代表である。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「脂肪族基」とは、環状ではない線状又は枝分れ原子配列からなり1以上の価数を有する有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基を含む原子配列は、窒素、イオウ、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素から構成され得る。本明細書では便宜上、用語「脂肪族基」は、「環状ではない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものとして定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC脂肪族基であり、メチル基は官能基のアルキル基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC脂肪族基であり、ニトロ基は官能基である。脂肪族基は、同じでも異なっていてもよい1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基としては、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CHCHBrCH−)などがある。脂肪族基の別の例としては、アリル、アミノカルボニル(すなわち、−CONH)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(すなわち、−CHC(CN)CH−)、メチル(すなわち、−CH)、メチレン(すなわち、−CH−)、エチル、エチレン、ホルミル(すなわち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち、−CHOH)、メルカプトメチル(すなわち、−CHSH)、メチルチオ(すなわち、−SCH)、メチルチオメチル(すなわち、−CHSCH)、メトキシ、メトキシカルボニル(すなわち、CHOCO−)、ニトロメチル(すなわち、−CHNO)、チオカルボニル、トリメチルシリル(すなわち、(CHSi−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(すなわち、(CHO)SiCHCHCH−)、ビニル、ビニリデンなどがある。別の例として、C〜C10脂肪族基は1個以上10個以下の炭素原子を含有する。メチル基(すなわち、CH−)はC脂肪族基の一例である。デシル基 すなわち、CH(CH−)はC10脂肪族基の一例である。
【0024】
一実施形態では、物品は、式Iに示す構造を有する組成物を含む。一実施形態では、物品はホログラフィック記録媒体である。物品の非限定的な例としては、光学媒体記憶、バイオメトリックアクセスカード、及びクレジットカードがある。
【0025】
一実施形態では、式Iに示す構造を有する組成物は、次式IIに示す構造を有する組成物をプロトン化することによって製造することができる。
【0026】
【化6】

ここで、R、R、R、R、R、R、R、X、及び「n」は上記式Iに対して挙げたものと同じ意味を有する。
【0027】
一実施形態では、次式VIIIに示す構造を有する組成物が提供される。
【0028】
【化7】

一実施形態では、式VIIIに示す構造を有する組成物は、次式Xに示す構造を有する組成物をプロトン化することによって製造することができる。
【0029】
【化8】

式VIIIに示す構造を有する組成物はα−(4−ジメチルアミノスチリル)−N−フェニルニトロン塩酸塩ともいうことがある。式Xに示す構造を有する組成物はα−(4−ジメチルアミノスチリル)−N−フェニルニトロンということもある。一実施形態では、物品が提供される。物品は式VIII及びXに示す構造を有する組成物を含む。
【0030】
一実施形態では、次式IXに示す構造を有する組成物が提供される。
【0031】
【化9】

一実施形態では、式IXに示す構造を有する組成物は次式XIに示す構造を有する組成物をプロトン化することによって製造することができる。
【0032】
【化10】

式IXに示す構造を有する組成物はα−(4−メチルアミノスチリル)−N−(4−カルベトキシフェニル)ニトロン塩酸塩ということもある。式XIに示す構造を有する組成物はα−(4−メチルアミノスチリル)−N−(4−カルベトキシフェニル)ニトロンということもある。一実施形態では、物品は式IX及びXIに示す構造を有する組成物を含む。組成物のプロトン化は式Iに示す構造を有する組成物を酸に暴露することによって実現し得る。一実施形態では、酸の種類は、プロトン化する必要がある色素の種類に依存する。酸の非限定的な例としては、塩酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸がある。
【0033】
一実施形態では、透明基材を含むホログラフィック記録媒体が提供される。透明基材は光化学活性色素、及びその光化学活性色素のプロトン化型を含む。光化学活性色素のプロトン化型は次式Iに示す構造を有する組成物である。
【0034】
【化11】

また、光化学活性色素は次式IIに示す構造を有する組成物である。
【0035】
【化12】

ここで、式IとIIの両方で、RとRは各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であることができ、R、R、及びRは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、RとRは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。
【0036】
一実施形態では、透明基材は約300〜約1000nmの範囲の波長で約0.1超の吸光度を有する。一実施形態では、透明基材は約300〜約1000nmの範囲の波長で約0.1〜約5の吸光度を有する。一実施形態では、透明基材は約300〜約1000nmの範囲の波長で約0.1〜約1、約1〜約2、約2〜約3、約3〜約4、及び約4〜約5の吸光度を有する。一実施形態では、透明基材は約300〜約400nm、約400〜約500nm、約500〜約600nm、約600〜約700nm、約700〜約800nm、約800〜約900nm、及び約900〜約1000nmの範囲の波長で約0.1超の吸光度を有する。
【0037】
一実施形態では、透明基材は約10%超の回折効率を有し得る。一実施形態では、透明基材は約10〜約50%の回折効率を有し得る。一実施形態では、透明基材は約10〜30%、約20〜30%、約30〜約40%、又は約40〜約50%以上の回折効率を有し得る。報告されている回折効率の値はバックグラウンド吸収及び表面反射に関して補正されている。
【0038】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体は約1超のデータ記憶容量を有し得る。本明細書で定義される場合、用語データ記憶容量は、M/#で与えられるホログラフィック記録媒体の容量に関する。M/#は、所与の回折効率でデータ記憶媒体のボリュームエレメントに記録することができる多重ホログラムの総数の関数として測定することができる。M/#は屈折率の変化(Δn)、媒体の厚さ、及び色素濃度のような様々なパラメーターに依存する。これらの用語については、本明細書でさらに説明する。M#は次式1に示すように定義される。
【0039】
【数1】

ここで、ηはi番目のホログラムの回折効率であり、Nは記録されるホログラムの数である。選択した波長、例えば532nm又は405nmにおける試験試料のM/#測定のための実験設定は、コンピューターにより制御される回転台上に試験試料を位置付けることを含む。回転台は高い角分解能、例えば約0.0001度をもっている。M/#測定は記録と読取の2つの工程を含む。記録においては、複数の平面波ホログラムが同じ試料上の同じ位置に記録される。平面波ホログラムは、信号ビームと参照ビームにより生成した記録された干渉縞である。信号ビームと参照ビームは互いに対してコヒーレントである。これらは両方とも、試料上の同じ位置に入射し、同じ方向に偏光した、同じ出力とビームサイズを有する平面波である。複数の平面波ホログラムが試料を回転することによって記録される。2つの隣接するホログラム間の角間隔は約0.2度である。間隔は、追加のホログラムを多重化したときに既に記録されたホログラムに対する影響が最小であり、同時に、媒体の総容量の使用が効率的であるように選択される。各ホログラムに対する記録時間はM/#測定において一般に同じである。読取においては、信号ビームが遮断される。回折信号は参照ビームと増幅光検出器を使用して測定される。回折出力は、約0.004度の段幅で記録角範囲にわたって試料を回転することによって測定される。読取に使用される参照ビームの出力は、記録に使用したものより約2〜3オーダー小さくてよい。これは、読取中測定可能な回折信号を維持しつつホログラム消去を最小化するためである。回折信号に基づき、多重ホログラムが、ホログラム記録角における回折ピークから同定され得る。次に、i番目のホログラムの回折効率ηが次式2を使用して計算される。
【0040】
【数2】

ここで、Pi,diffractedはi番目のホログラムの回折出力であり、Preferenceは参照ビームの出力である。次いで、M/#が、ホログラムの回折効率と式1を使用して計算される。こうして、ホログラフィック平面波キャラクタリゼーション系を使用して、データ記憶材料の特性、殊に多重ホログラムを試験することができる。さらにまた、データ記憶材料の特性は回折効率を測定することによって決定することもできる。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「ボリュームエレメント」とは、透明基材又は改質透明基材の総容積の三次元的一部分を意味する。「透明」とは、光が可視光範囲内のある所定の波長を有する場合約90%以上の光を伝搬することができる性質をいう。ホログラムは回折パターンである。
【0042】
本明細書で定義される場合、用語「光学的に読取可能なデータ」は、記憶されるデータの「ホログラム」を含有する第1又は改質透明基材の1以上のボリュームエレメントで構成される。個々のボリュームエレメント内の屈折率は、電磁放射線に暴露されたことがないボリュームエレメントの場合、又は光化学活性色素がボリュームエレメントの全体にわたって同じ程度に反応しているボリュームエレメントの場合のように、ボリュームエレメントの全体にわたって一定であってもよい。ホログラフィックデータ書込プロセス中に電磁放射線に暴露されたボリュームエレメントの中には複雑なホログラフィックパターンを含有するものがある。また、ボリュームエレメント内の屈折率はボリュームエレメントの中で変化し得る。ボリュームエレメント内の屈折率がボリュームエレメントの中で変化する場合、そのボリュームエレメントは、照射前の対応するボリュームエレメントの屈折率と比較し得る「平均の屈折率」を有するものとみなすのが便利である。ように、一実施形態では、光学的に読取可能なデータは、照射前の透明基材の対応するボリュームエレメントと異なる屈折率を有する1以上のボリュームエレメントを含んでいる。データ記憶媒体の屈折率を離散的ではなく段階的に局部的に変化させ(連続的シヌソイド変化)、次いで誘起された変化を回折光学素子として使用することによりデータ記憶が可能になる。
【0043】
ホログラムとしてデータを記憶する能力(M/#)は、データを読み取るのに使用した波長における単位色素密度当たりの屈折率の変化(Δn/N)と、データをホログラムとして書き込むのに使用した所与の波長における吸収断面積(σ)との比に直接比例し得る。単位色素密度当たりの屈折率変化は、照射前のボリュームエレメントの屈折率から照射後の同じボリュームエレメントの屈折率を差し引いた差と色素分子の密度との比によって与えられる。単位色素密度当たりの屈折率変化はcmの単位を有する。従って、ある実施形態では、光学的に読取可能なデータは、1以上のボリュームエレメントの単位色素密度当たりの屈折率の変化と1種以上の光化学活性色素の吸収断面積との比がcm単位で表して約10−5以上である1以上のボリュームエレメントを含む。
【0044】
感度(S)は一定量の光フルエンス(F)を用いて記録されるホログラムの回折効率の尺度である。光フルエンス(F)は光強度(i)と記録時間(t)との積で与えられる。数学的には、感度は次式3で表すことができる。
【0045】
【数3】

ここで、「i」は記録ビームの強度であり、「t」は記録時間であり、Lは記録(又はデータ記憶)媒体(例、ディスク)の厚さであり、ηは回折効率である。回折効率は次式4で与えられる。
【0046】
【数4】

ここで、λは記録媒体内の光の波長であり、θは媒体内での記録角度であり、Δnは色素分子が光化学変換を受ける記録プロセスにより生成するグレーティングの屈折率コントラストである。
【0047】
吸収断面積は、特定の波長で光を吸収する原子又は分子の能力の大きさであり、分子当たり平方cm単位で測定される。これは、一般にσ(λ)と表され、光学的に薄い試料の場合次式5に示すようにBeer−Lambert則により支配される。
【0048】
【数5】

ここで、Nは1cm当たりの分子の濃度であり、Lはcm単位の試料の厚さである。
【0049】
量子効率(QE)は、所与の波長の吸収した各光子に対する光化学遷移の確率の尺度である。すなわち、入射光がブリーチングプロセスともいわれる所与の光化学変換を実現するのに使用される効率の尺度を与える。QEは次式6で与えられる。
【0050】
【数6】

ここで、「h」はPlanck定数であり、「c」は光の速度であり、σ(λ)は波長λにおける吸収断面積であり、Fはブリーチングフルエンスである。パラメーターFはブリーチングプロセスを特徴付ける光の強度(i)と時定数(t)の積で与えられる。
【0051】
一実施形態では、透明基材中に存在する光化学活性色素は約0.1〜約20重量%である。一実施形態では、光化学活性色素は約0.1〜約2重量%、約2〜約4重量%、約4〜約6重量%、約6〜約8重量%、約8〜約10重量%、約10〜約12重量%、約12〜約14重量%、約14〜約16重量%、約16〜約18重量%、及び約18〜約20重量%の量で透明基材中に存在する。本明細書で使用する場合、色素に関する用語「重量%」とは、透明基材中に含まれる色素の重量の、透明基材の総重量(色素の重量を含む)に対する比をいう。例えば、透明基材中に配置された10重量%の色素は、90gの透明基材中の10gの色素を意味する。色素の充填割合は、その色素と透明基材の特性に基づく望ましい性質が得られるように制御し得る。
【0052】
光化学活性色素は、最大吸収及び500nm未満のスペクトル幅(半値全幅、FWHM)を伴う中心波長により特徴付けられる光吸収共鳴を有する色素分子として説明し得る。加えて、光化学活性色素分子は、吸収範囲内の波長の光に暴露されたときに部分的な光励起化学反応を受けて1種以上の光生成物を形成し得る。様々な実施形態では、反応は、酸化、還元、若しくは結合破壊のようなより小さい構成成分を形成する光分解反応、又は例えばシグマトロピック再配列、若しくはペリ環状環付加を始めとする付加反応のような分子再配列であり得る。ように、ある実施形態では、ホログラムの形態のデータ記憶が実現され得、場合光生成物は改質透明基材内で(例えば、段階的に)パターン化されて、1以上の光学的に読取可能なデータを提供する。
【0053】
一実施形態では、式IIを有する光化学活性色素の光生成物は次に示す式を有し得る。
【0054】
【化13】

ここで、R、R、R、R、及びR、R及びR及びX及び「n」は式IIについて挙げたものと同じ意味を有する。
【0055】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体は式VIIIに示す構造を有する組成物を含む。一実施形態では、式VIIIに示す構造を有する組成物を含むホログラフィック記録媒体は、式Xに示す構造を有する組成物を含むホログラフィック記録媒体を酸に暴露することによって製造することができ、その結果式VIIIと式Xに示す構造を有する組成物を含むホログラフィック記録媒体が生成する。一実施形態では、ホログラフィック記録媒体は式Xに示す構造を有する組成物の光生成物を含み得る。光生成物は次式XIIに示す構造を有し得る。
【0056】
【化14】

一実施形態では、ホログラフィック記録媒体は式IXに示す構造を有する組成物を含む。一実施形態では、式IXに示す構造を有する組成物を含むホログラフィック記録媒体は、式XIに示す構造を有する組成物を含むホログラフィック記録媒体を酸に暴露することによって製造することができ、その結果式IXと式XIに示す構造を有する組成物を含むホログラフィック記録媒体が得られる。一実施形態では、ホログラフィック記録媒体は式XIVに示す構造を有する組成物の光生成物を含み得る。光生成物は次式XIIIに示す構造を有し得る。
【0057】
【化15】

一実施形態では、透明基材は約20μmより厚い。一実施形態では、透明基材は約20〜約50μmの厚さ、約50〜約100μmの厚さ、約100〜約150μmの厚さ、約150〜約200μmの厚さ、約200〜約250μmの厚さ、又は約250〜約300μmの厚さ、約300〜約350μmの厚さ、約350〜約400μmの厚さ、約400〜約450μmの厚さ、約450〜約500μmの厚さ、約500〜約550μmの厚さ、約550〜約600μmの厚さ、以上である。
【0058】
一実施形態では、透明基材は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、インク、接着剤、及びこれらの組合せを含んでいてもよい。ガラスの非限定的な例としては、石英ガラス及びホウケイ酸塩ガラスを挙げることができる。プラスチックの非限定的な例として有機ポリマーが挙げられる。適切な有機ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリオレフィンから選択される熱可塑性ポリマー、及び熱硬化性ポリマーを挙げることができる。一実施形態では、透明基材は、ガラスのような基材上にプラスチック、インク、又は接着剤のコーティングを含み得る。一実施形態では、透明基材は、反射性コーティングで被覆してもよい。例えば、透明基材がDVDのような光学媒体である場合、反射性コーティングはそのDVDの一方又は両方の表面に設けることができる。反射性コーティングの例には、銀コーティングのような金属コーティングがある。
【0059】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体を製造するのに使用する透明基材には、ホログラフィック記録材料中のデータを読取可能にするのに充分な光学品質、例えば、所定の波長における低い散乱、低い複屈折、及び無視し得る損失を有するあらゆるプラスチック材料が含まれ得る。例えば、オリゴマー、ポリマー、デンドリマー、アイオノマー、例えばブロックコポリマー、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、スターブロックコポリマーのようなコポリマーなど、又は以上のポリマーの1種以上を含む組合せのような有機ポリマー材料を使用することができる。熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを使用することができる。適切な熱可塑性ポリマーの例として、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルなど、又は以上の熱可塑性ポリマーの1種以上を含む組合せがある。適切な熱可塑性ポリマーの別の幾つかの可能な例として、特に限定されないが、非晶質及び半結晶性の熱可塑性ポリマー及びポリマーブレンド、例えば、ポリ塩化ビニル、線状及び環状ポリオレフィン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなど、水素化ポリスルホン、ABS樹脂、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマーなど、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート−ポリイミドコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、例えば、特に限定されないが、2,6−ジメチルフェノールから誘導されるもの及び2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーなど、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリ塩化ビニリデンがある。
【0060】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示された方法で基材として使用する熱可塑性ポリマーはポリカーボネートからなる。ポリカーボネートは芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、又は芳香族と脂肪族の構造単位を両方含むポリカーボネートでよい。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「ポリカーボネート」は、次式XIVの構造単位を有する組成物を包含する。
【0062】
【化16】

ここで、R11は脂肪族、芳香族又は環式脂肪族基である。ある実施形態では、ポリカーボネートは次式XVIの構造単位を含む。
【0063】
【化17】

ここで、A1とA2は各々単環式二価アリール基であり、Y1はA1とA2とを0、1、又は2個の原子で隔てる橋かけ基である。1つの代表的な実施形態では、A1とA2とは1原子で隔てられている。非限定的な例には、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、及びアダマンチリデンがある。かかるビスフェノール化合物の幾つかの例は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホン、又は以上のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。一実施形態ではA1とA2を隔てている原子がなく、実例とビフェノールである。橋かけ基Y1は、例えばメチレン、シクロヘキシリデン若しくはイソプロピリデンのような炭化水素基、又はアリール橋かけ基であることができる。
【0064】
当技術分野で公知のジヒドロキシ芳香族化合物はいずれもポリカーボネートを作成するのに使用することができる。ジヒドロキシ芳香族化合物の例として、例えば、次式XVIIを有する化合物がある。
【0065】
【化18】

ここで、R16とR17は各々独立にハロゲン原子、又は脂肪族、芳香族、若しくは環式脂肪族基を表し、aとbは各々独立に0〜4の整数であり、Tは次式XVIIIを有する基の1つを表す。
【0066】
【化19】

ここで、R14とR15は各々独立に水素原子又は脂肪族、芳香族若しくは環式脂肪族基を表し、R16は二価炭化水素基である。適切なジヒドロキシ芳香族化合物の幾つかの具体的な非限定的な例として、米国特許第4217438号に(包括的又は具体的)名称又は構造で開示されているもののような二価フェノール類及びジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。ビスフェノールAから誘導された構造単位を含むポリカーボネートを選択し得る。これらは比較的安価で商業的に容易に入手可能であるからである。構造(XVII)で表され得るこの種のビスフェノール化合物の具体例の非排他的リストには次のものが含まれる。1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後「ビスフェノールA」又は「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以後「DMBPA」)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、及びビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以後「DMBPC」)など、並びに以上のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せ。
【0067】
ポリカーボネートは当技術分野で公知のいかなる方法でも製造することができる。枝分れポリカーボネート、並びに線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも有用である。一実施形態では、ポリカーボネートはビスフェノールAに基づき得る。一実施形態では、ポリカーボネートの重量平均分子量は約5000〜約100000原子質量単位である。一実施形態では、ポリカーボネートの重量平均分子量は約5000〜約10000原子質量単位、約10000〜20000原子質量単位、約20000〜40000原子質量単位、約40000〜60000原子質量単位、約60000〜80000原子質量単位、又は約80000〜100000原子質量単位である。ホログラフィックデータ記憶媒体を形成するのに使用するのに適した熱可塑性ポリマーの他の具体例として、Lexan(登録商標)ポリカーボネート及びUltem(登録商標)非晶質ポリエーテルイミドがあり、これらはいずれもSABIC IPから市販されている。
【0068】
有用な熱硬化性ポリマーの例には、エポキシ、フェノール樹脂、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、及び以上の熱硬化性ポリマーの1種以上を含む組合せからなる群から選択されるものがある。
【0069】
一実施形態では、透明基材を含むホログラフィック記録媒体が提供される。透明基材は光化学活性色素、その光化学活性色素のプロトン化型、及びその光化学活性色素の光生成物を含む。その光化学活性色素のプロトン化型は式Iに示す構造を有する組成物であり、光化学活性色素は式IIに示す構造を有する組成物である。光生成物は透明基材内でパターン化されて、ホログラフィック記録媒体のボリューム内に含有される光学的に読取可能なデータを提供する。一実施形態では、光学的に読取可能なデータは透明基材の対応するボリュームエレメントとは異なる平均屈折率を有するボリュームエレメントを含み、前記ボリュームエレメントは1種以上の光生成物がパターン化される前の対応するボリュームエレメントの屈折率に対する平均屈折率の変化によって特徴付けられる。
【0070】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体を使用する方法が提供される。方法は、光化学活性色素を含む透明基材に、約300〜約1000nmの範囲の波長の入射光を照射して、その結果光学的に読取可能なデータ及び光化学活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成し、そのホログラフィック記録媒体を酸に暴露して、その結果光化学活性色素の少なくとも一部分が光化学活性色素のプロトン化型を生成する工程を含む。その光化学活性色素のプロトン化型は式Iに示す構造を有する組成物であり、光化学活性色素は式IIに示す構造を有する組成物である。
【0071】
一実施形態では、光学的書込及び読取方法が提供される。方法は、データを保有する信号ビームと参照ビームでホログラフィック記録媒体を同時にパターン化してホログラムを作り出すことにより光化学活性色素を部分的に光生成物に変換し、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露して、光化学活性色素の少なくとも一部分にその光化学活性色素のプロトン化型を形態させ、信号ビーム内の情報をホログラムとしてホログラフィック記録媒体内に記憶し、ホログラフィック記録媒体を読取ビームと接触させ、ホログラムからの回折光が含有するデータを読み取ることを含む。ホログラフィック記録媒体は透明基材を含んでいる。透明基材は光化学活性色素を含んでいる。その光化学活性色素のプロトン化型は式Iに示す構造を有する組成物であり、光化学活性色素は式IIに示す構造を有する組成物である。一実施形態では、読取ビームは信号ビームの波長に対して約0.001〜約500nmの範囲の量だけシフトした波長を有する。別の実施形態では、読取ビームの波長は信号ビームの波長に対してシフトしていない。
【0072】
一実施形態の方法は、ホログラフィック記録媒体物品内のホログラフィック記録媒体を、第1の波長を有する電磁放射線でパターン化し、1種以上の光化学活性色素の1種以上の光生成物、及びホログラムとして記憶された1以上の光学的に読取可能なデータを含む改質透明基材を形成し、その改質透明基材を酸に暴露して、その結果光化学活性色素の少なくとも一部分にその光化学活性色素のプロトン化型を形成させ、物品内のホログラフィック記録媒体を、第2の波長を有する電磁エネルギーに接触させて前記ホログラムを読み取ることを含む。ホログラフィック記録媒体は透明基材を含んでいる。透明基材は光化学活性色素を含んでいる。光化学活性色素は式IIに示す構造を有する組成物であり、光化学活性色素のプロトン化型は式Iに示す構造を有する組成物である。
【0073】
一実施形態では、第2の波長は第1の波長に対して約0.001〜約500nmの範囲の量だけシフトされている。一実施形態では、第1の波長は第2の波長と同じはない。一実施形態では、第1の波長は第2の波長と同じである。別の実施形態では、読取ビームの波長は信号ビームの波長に対してシフトされていない。
【0074】
様々な実施形態では、光化学活性色素は、光に暴露された際に色素の屈折率が変化する能力、光がその屈折率変化を作り出す効率、及び色素が最大吸収を示す波長と所望の波長又はデータを記憶し及び/又は読み取るのに使用される波長との差を始めとする幾つかの特性を基準にして選択し利用することができる。光化学活性色素の選択は、ホログラフィック記録媒体の感度(S)、光化学活性色素の濃度(N)、記録波長における色素の吸収断面積(σ)、色素の光化学変換の量子効率(QE)、及び単位色素密度当たりの屈折率変化(すなわち、Δn/N)のような多くの要因に依存する。これらの要因のうち、QE、Δn/N、及びσは、感度(S)に影響し、また情報記憶容量(M/#)にも影響する、より重要な要因である。一実施形態では、単位色素密度当たりの高い屈折率変化(Δn/N)、光化学変換工程での高い量子効率、及び光化学変換に使用する電磁放射線の波長における低い吸収断面積を示す光化学活性色素が選択される。
【0075】
一実施形態では、光化学活性色素は電磁放射線によって書き込み読み取ることができるものであり得る。一実施形態では、化学線、すなわち約300〜約1000nmの波長を有する放射線を用いて(信号ビームで)書込、かつ(読取ビームで)読み取ることができる色素を使用するのが望ましいであろう。書込及び読み取を達成し得る波長は約300〜約800nmの範囲でよい。一実施形態では、書込及び読取は、約400〜約500nmの波長、約500〜約550nmの波長、又は約550〜約600nmの波長で達成される。一実施形態では、読取波長は、書込波長に対して約400nm以下の最小の量だけシフトされる。書込及び読取を達成する代表的な波長は約405nm及び約532nmである。
【0076】
一実施形態では、光化学活性色素は、他の添加剤と混和して光活性材料を形成してもよい。かかる添加剤の例として、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、追加の樹脂、結合剤、発泡剤など、並びに以上の添加剤の組合せがある。一実施形態では、光活性材料はホログラフィック記録媒体を製造するのに使用し得る。
【0077】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体が製造される。製造方法は、光化学活性色素を含む透明基材のフィルム、押出物、又は射出成形部品を形成し(この透明基材は透明プラスチック材料及び光化学活性色素を含む)、そのフィルム、押出物、又は射出成形部品を酸に暴露して、その結果光化学活性色素の少なくとも一部分にその光化学活性色素のプロトン化型を形成させる工程を含んでいる。光化学活性色素は式IIに示す構造を有する組成物であり、光化学活性色素のプロトン化型は式Iに示す構造を有する組成物である。フィルムの形成は熱可塑性の押出を含み得る。フィルムの形成は溶媒鋳造を含み得る。フィルムの形成は熱可塑性成形を含み得る。
【0078】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体内に永久ホログラムを提供するための方法が提供される。方法は、光化学活性色素を含む透明基材に、約300〜約1000nmの範囲の波長の入射光を照射し、データを保有する信号ビーム及び参照ビームでホログラフィック記録媒体をパターン化して同時にホログラムを作り出させることにより光化学活性色素を部分的に光生成物に変換させ、その結果として光学的に読取可能なデータ及び光化学活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成させ、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露させ、その結果として、その光化学活性色素の光化学活性色素のプロトン化型に変換させることを含む。光化学活性色素は式IIに示す構造を有する組成物であり、光化学活性色素のプロトン化型は式Iに示す構造を有する組成物である。
【0079】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体が提供される。ホログラフィック記録媒体は透明基材を含む。透明基材は光化学活性色素、光化学活性色素のプロトン化型、光化学活性色素の光生成物及び光化学活性色素の光生成物のプロトン化型を含む。その光化学活性色素のプロトン化型は式Iに示す構造を有する組成物であり、光化学活性色素は式IIに示す構造を有する組成物である。光生成物は透明基材内でパターン化されていて、ホログラフィック記録媒体のボリューム内に含有された光学的に読取可能なデータを提供する。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は本発明に従う方法及び実施形態を例証するものであり、従って特許請求の範囲に限定を課するものではない。特に断らない限り、成分は全てAlpha Aesar、Inc.(Ward Hill,Massachusetts)、Spectrum Chemical Mfg.Corp.(Gardena,California)などの普通の化学品供給業者から市販されている。
【0081】
実施例1:色素の調製
工程A:フェニルヒドロキシルアミンの調製
塩化アンモニウム(20.71g、0.39モル)、脱イオン水(380ml)、ニトロベンゼン(41.81g、0.34モル)、及びエタノール(420ml、95%)を、機械的攪拌機、温度計、及び窒素導入口を備えた1L三首丸底フラスコに加える。得られた反応混合物を、氷水浴を用いて15℃に冷却する。冷却した混合物に、亜鉛粉末(46.84g、0.72モル)を約0.5時間わたって、温度が25℃を超えないように確かめながら少しずつ加える。亜鉛を完全に添加した後、反応混合物を室温まで暖める。暖めた混合物を半時間撹拌した後、濾過して亜鉛塩と未反応の亜鉛を除く。濾過ケーク(すなわち、亜鉛塩)をまず熱水(約200ml)で洗浄した後塩化メチレン(約100ml)で洗浄する。濾液を塩化メチレン(約100ml)で抽出する。(濾過ケーク洗液及び濾液抽出物から得られた)塩化メチレン層を合わせ、塩水(約100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、塩化メチレンを蒸発させる。生成物を真空オーブンで約24時間乾燥して17.82gのフェニルヒドロキシルアミンを綿毛状の淡黄色固体として得た。
【0082】
工程B:α−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンの調製
機械的攪拌機と窒素導入口を備えた1リットルの三首丸底フラスコに、フェニルヒドロキシルアミン(27.28g、0.25モル)、4−ジメチルアミノシンナムアルデヒド(43.81g、0.25モル)及びエタノール(250ml)を加えて鮮やかなオレンジ色に着色した混合物を得る。得られた混合物に、メタンスルホン酸(250マイクロリットル)を、注射器を用いて加える。得られる混合物は全ての固体が溶解すると深紅色の溶液になる。約5分以内にオレンジ色の固体が形成される。混合物にペンタン(〜300ml)を加えて撹拌を促進する。固体を濾過し、真空オーブン中80℃で約24時間乾燥して55.91gのα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンを鮮やかなオレンジ色の固体として得る。
【0083】
実施例2:色素の調製
工程A:4−カルベトキシフェニルヒドロキシルアミンの調製
塩化アンモニウム(9.2g、0.17モル)、脱イオン水(140ml)、p−ニトロエチルベンゾエート(29.28g、0.15モル)、及びエタノール(150ml、95%)を、機械的攪拌機、温度計、及び窒素導入口を備えた500mlの三首丸底フラスコに加える。得られた反応混合物を、氷水浴を用いて15℃に冷却する。冷却した混合物に、亜鉛粉末(21.82g、0.34モル)を少しずつ約0.25時間にわたって温度が15℃を超えないように確かめながら加える。亜鉛の完全な添加の後、反応混合物を室温まで暖める。暖めた混合物を1時間撹拌した後、濾過して亜鉛塩と未反応の亜鉛を除く。濾過ケーク(すなわち、亜鉛塩)をまず熱水(約200ml)で洗浄した後、塩化メチレン(約100ml)で洗浄する。濾液を塩化メチレン(約100ml)で抽出する。(濾過ケーク洗液及び濾液抽出物から得られた)塩化メチレン層を合わせ、塩水(約100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、塩化メチレンを蒸発する。生成物を真空オーブンで約24時間乾燥して20.04gの4−カルベトキシフェニルヒドロキシルアミンを綿毛状の淡黄色固体として得る。
【0084】
工程B:α−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−4−カルベトキシフェニルニトロンの調製
機械的攪拌機と窒素導入口を備えた100mlの三首丸底フラスコに、4−カルベトキシフェニルヒドロキシルアミン(4.53g、0.025モル)、4−ジメチルアミノシンナムアルデヒド(4.38g、0.025モル)及びエタノール(25ml)を加えて鮮やかなオレンジ色の着色した混合物を得る。得られた混合物に、注射器を用いてメタンスルホン酸(2マイクロリットル)を加える。得られる混合物は全ての固体が溶解すると深紅色の溶液になる。約5分以内に赤色の固体が形成される。固体を濾過し、ペンタン(100ml)で洗浄し、真空オーブン中50℃で約24時間乾燥して6.23gのα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−4−カルベトキシフェニルニトロンを得る。
【0085】
実施例3:溶液試料の調製手順
実施例1又は実施例2で調製した色素の約2mgをアセトニトリル(100ml)に加える。得られた混合物を約2時間又は色素がアセトニトリル中に完全に溶解するまで撹拌する。
【0086】
実施例4:試料評価−溶液試料
光化学活性色素のUV−可視スペクトルの測定手順。全てのスペクトルは溶液を用いてCary/Varian 300 UV−可視分光光度計に記録される。スペクトルは約300〜約800nmの範囲で記録される。実施例2で調製した色素を用いて実施例3で調製した溶液試料を1cmの石英キュベット内に入れ、UV−可視測定のための参照ビーム経路に置くブランク溶媒としてアセトニトリルを取る。溶液試料を含有するキュベットに濃塩酸をマイクロリットルピペットで加える。各試料に対するUV−可視スペクトルは濃塩酸をキュベットに添加する前後に測定される。
【0087】
図1を参照して、グラフ100は本発明の一実施形態に係る光化学活性色素の吸光度の変化を示す。グラフは吸光度110対nm単位の光の波長112である。曲線114は光退色前すなわちUV暴露前で濃塩酸添加の前の可視領域における色素の吸光度である。曲線114は約441nmに吸収極大を有する。曲線116は、濃塩酸の添加前のUV暴露された形態の色素の吸光度であり、約312nmに吸収極大を有する。曲線118は光退色の前で濃塩酸の添加後の色素の吸光度であり、約548nmに吸収極大を有する。曲線120は濃塩酸の添加後のUV暴露された形態の色素の吸光度であり、約548nmに吸収極大を有する。グラフは、色素が532nm及び405nmのレーザー光に光感受性であってUV暴露の際に急速に光退色し、吸収極大が約441nmから約312nmに低下することを示す。しかし、色素が酸によりプロトン化されていると、UV−可視領域の吸収極大は約441nmから約548nmに増大する。また、プロトン化色素がUVに暴露されたとき、吸収極大は大きく変化することがなく、プロトン化型の色素の光感受性が低下していることを示す。
【0088】
実施例5:スピンコート試料の調製手順
スピンコート試料を調製するには、実施例2で調製した色素32mgと1gのPMMAを10mlのテトラクロロエタンに溶解させる。溶液をガラススライド上に注ぎ、1000rpmで及びスピンコートした後、45℃に維持したホットプレート上で約30分乾燥する。これらの試料を40℃の真空オーブンで約12時間乾燥する。試料はPMMA中に約3.2重量%の実施例2で調製した色素を含有しており、厚さ約500nmにスピンコートされている。試料の光退色は、約365nm/30mWのピーク出力を有する手持ち式の広帯域UV−可視光源で行う。フィルム試料は濃塩酸水溶液からの塩酸蒸気に約2分間暴露される。
【0089】
実施例6:スピンコート試料の試料評価
スピンコート試料のUV−可視スペクトルを測定する手順。時間分解UV−可視スペクトルを用いて記録されるスペクトルは全て、約532nmにおける同時のレーザー照射の下でのOcean Opticsファイバー結合したUSB2000分光計で得られる。吸収スペクトルは約200〜約800nmの範囲で記録する。試料は、これらの試料を試料の厚さに応じて約2〜約30分水性濃塩酸を含有するボトルの口部に配置することによってプロトン化される。酸の蒸気は試料を通って拡散し、従って試料中の色素をプロトン化する。試料は、約500nmの厚さを有する薄いフィルムを、様々なレベルの色素充填率、すなわち0.45、1.06、1.64、3.22及び4.97のシリコンウエハー上にスピンコートすることによって調製される。これらの試料は約200〜約800nmの波長範囲にわたって複数の角度で測定し、分析は通例汎用発振器モデルで行う。屈折率は、モデル化吸収を測定した吸収に合わせることによりKramer−Kronig関係を用いて得られる。フィルムは、その初期状態、すなわちプロトン化の前とプロトン化の後に測定する。
【0090】
図2を参照して、グラフ200は、本発明の一実施形態に係る光化学活性色素の吸光度の変化を示す。グラフは、吸光度210対光のnm単位の波長212である。曲線214は、光退色前かつ濃塩酸添加前の可視領域における色素に対する吸光度である。曲線214は約435nmに吸収極大を有する。曲線216は、濃塩酸添加前のUV暴露された形態の色素の吸光度であり、約390nmに吸収極大を示す。曲線218は、光退色前かつ濃塩酸添加後の色素に対する吸光度であり、約500nmに吸収極大を有する。曲線220は、濃塩酸添加後のUV暴露された形態の色素の吸光度であり、約500nmに吸収極大を有する。グラフは、スピンコート試料中の色素の、溶液試料において上に示すのと類似の挙動を示す。グラフは、色素が、532nmと405nmのレーザー光に対して光感受性であり、UV暴露の際に光退色して、吸収極大が約435nmから約390nmに低下することを示す。しかし、色素が酸でプロトン化されていると、UV−可視領域における吸収極大が約435nmから約500nmに増大する。また、プロトン化色素をUV暴露したとき、吸収極大にあまり大きな変化がなく、プロトン化型における色素の光感受性が低下していることも示している。
【0091】
以下の表に報告されている吸収は、試験した各試料に対する700〜800nmの範囲の平均ベースラインを、405nm又は532nmで測定した吸収から差し引くことによって計算される。これらの化合物は700〜800nmの範囲で吸収しないので、補正により、ディスクの表面からの反射により生じた見掛けの吸収が除かれ、その色素の吸光度のより正確な表示が得られる。これらの実施例で使用したポリマーは405nm又は532nmで殆ど又は全く吸収がない。これらの測定の結果を図3、図4、及び表1に示す。
【0092】
図3を参照して、グラフ300は、本発明の一実施形態に係る光化学活性色素の屈折率の変化を示す。グラフは、屈折率310対光のnm単位の波長312である。曲線314は、光退色前かつ濃塩酸添加前の可視領域における色素の屈折率であり、最大の屈折率は約1.535である。曲線316は、UV暴露された形態の色素の濃塩酸添加前の屈折率であり、最大の屈折率は約1.525である。曲線318は、光退色前かつ濃塩酸添加後の色素に対する屈折率であり、最大の屈折率は約1.539である。
【0093】
図4を参照して、グラフ400は、本発明の一実施形態に係る光感受性材料の屈折率変化を示す。グラフは、屈折率の差(ΔRI)410対光のnm単位の波長412である。曲線414は、実施例5で調製したスピンコート試料に対する屈折率変化を示す。決定された波長の光の活性化領域は約405nmに下限416を、約532nmに上限418を有する。上限と下限は、プロトン化色素と非プロトン化型色素が光を吸収し、立体配座の変化に影響を及ぼしてホスト物品の屈折率に影響を及ぼすときに得られるプロトン化型の色素と退色した形態の色素との間のRIの差を含む区域を定める。実施例5で調製したスピンコート試料の405nmと532nmで測定した屈折率の変化を下記表1に挙げる。表1は、非退色試料と退色試料との最大Δn、及びプロトン化試料と退色試料との間の最大Δnを含んでいる。
【0094】
【表1】

上述したように、実施例2で調製した色素は、理想的に、ホログラムを書き込むために532nmで露光され、その後酸蒸気に2分間暴露されて、屈折率を高めると同時にその色素を光不感受性にするであろう。推奨される読取波長は分光偏光解析法の場合450nmである。色素は532nmと405nmのレーザー光に対して光感受性であり、UV暴露の際に急速に光退色する。しかし、色素が酸によりプロトン化されていると、光感受性が劇的に低下し、吸収バンドのより長い波長への強いシフトが観察される。
【0095】
実施例7:色素−ポリマー混合物の調製
10kgのペレット化ポリスチレンPS1301(Nova Chemicalsから入手)をRetschミルで粗い粉末に粉砕し、80℃に維持した循環オーブン中で12時間乾燥する。10リットルのHenschelミキサーで、6.5kgの乾燥ポリスチレン粉末と195gのα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンをブレンドして均質なオレンジ色の粉末を形成する。粉末を185℃のPrism(16mm)二軸式押出機に供給して、色素含量約3重量%を有する6.2kgの暗いオレンジ色の着色したペレットを得る。押し出しに使用した条件を表2に示す。
【0096】
【表2】

実施例8:色素−ポリマー混合物の調製
実施例7で得られた押し出したをポリマーのガラス転移温度よりほぼ40℃低い温度の真空オーブンで乾燥する。(上記のようにして調製された)ブレンドを、Sumitomo、SD−40E全電気式(all-electrical)工業用CD/DVD(コンパクトディスク/ディジタルビデオディスク)成形機(Sumitomo Inc.から入手可能)で射出成形することによって、光学品質のディスクを調製する。成形されたディスクは厚さが約500〜約1200μmの範囲である。ミラードスタンパーを両方の表面に使用する。サイクル時間は一般に約10秒に設定する。成形条件は使用するポリマーのガラス転移温度及び溶融粘度、並びに光化学活性色素の熱安定性に応じて変化する。例えば、最高のバレル温度は約200〜約375℃の範囲に制御される。成形されたディスクを集め、暗所に貯蔵する。
【0097】
実施例9:成形されたディスクの調製手順
光化学活性色素のOQ(光学グレード)のポリスチレン系ブレンドを成形するのに使用される条件を表3に示す。
【0098】
【表3】

実施例10:使用方法
ホログラムの記録手順
532nm又は405nmにおけるホログラムの記録には、参照ビームと信号ビームの両方を45度の斜角で試験試料に入射する。試料は、コンピューターで制御される回転台に載せる。参照ビーム及び信号ビームは両方とも同じ光学出力を有しており、同じ方向(試料表面に対して平行)に偏光される。ビームの直径(1/e)は4mmである。カラーフィルターと小さいピンホールを検出器の前に置いて、バックグラウンド光からの光学ノイズを低減する。レーザーの前の高速の機械的シャッターでホログラムの記録時間を制御する。532nmの設定では、赤色の632nmのビームを用いてホログラム記録中の動力学をモニターする。各ビームの記録出力は1〜100mWで変化し、記録時間は10ミリ秒〜約5秒で変化する。記録されたホログラムからの回折された出力は、試料ディスクを0.2〜0.4度回転することによってBraggデチューニング(detuning)曲線から測定する。報告される値は試料表面からの反射に関して補正されている。ホログラムを読み取るのに使用される出力は、読取中のホログラムの消去を最小にするために、記録出力より2〜3オーダー低い大きさである。実施例9でディスクを調製するのに使用した、実施例1で調製した色素のUV−可視吸収スペクトル測定及び回折効率の結果を下記表4に示す。
【0099】
実施例11:試料評価
実施例9で調製した試料を、水性HClを含有するボトルの口部に、試料の厚さ/構造に応じて約2〜約30分間配置することによって、これらの試料をプロトン化する。酸の蒸気が試料を通って拡散し、従ってこれをプロトン化する。実施例9で調製した試料の回折効率を、その初期状態、すなわちプロトン化の前及びプロトン化の後に測定する。酸に暴露すると、吸収バンドのより長い波長への強いシフトがあり、これにより屈折率が高まり、従って回折効率が増大することが観察される。また、酸への暴露により、光感受性が劇的に低減し、従ってホログラムの安定性が高まる。プロトン化の前後の、(実施例1で調製した色素を3重量%含有する)成形されたディスクに対する
回折効率の測定結果を表4と図5に示す。
【0100】
【表4】

図5を参照して、グラフ500は、本発明の一実施形態に係る光感受性材料の回折効率の変化を示す。グラフは、回折効率510対度で表した回折の角度512である。曲線514は実施例9で調製した成形されたディスクに対するプロトン化前の吸光度であり、曲線516は実施例9で調製した成形されたディスクに対するプロトン化後の吸光度である。プロトン化前と比較したときにプロトン化後の回折効率は著しく増大している。
【0101】
実施例12:溶媒鋳造された試料の調製手順
1gのポリスチレンペレットを10mlの塩化メチレンに溶解し、約2時間、又はポリスチレンペレットが塩化メチレンに完全に溶解するまで、撹拌する。(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロン(50mg)をポリマー溶液に加え、約2時間、又はニトロンが塩化メチレンに完全に溶解するまで、撹拌する。溶媒鋳造された試料を作成するには、色素−ポリスチレン溶液をガラス基材の上に載っている金属リング(半径5cm)の内側に注ぐ。ガラス基材の上に載せた金属リングのアセンブリを約40℃の温度に維持したホットプレート上に載せる。アセンブリを倒立漏斗で覆い、塩化メチレンをゆっくり蒸発させる。約4時間後、乾燥した色素をドープしたポリスチレンフィルムを回収する。色素をドープしたポリスチレンフィルムは5重量%の色素を含有する。
【0102】
実施例13:ホログラムを永続的にする方法
フィルムをプロトン化前とプロトン化後に約30〜約400秒間ホログラム消去ビーム532nm/100mWに付す。表5は、プロトン化試料の回折効率の低下がプロトン化前の試料の回折効率の低下より少ないことを示す。ホログラム消去ビームがプロトン化前の試料及びプロトン化後の試料に及ぼす効果を図6に示す。
【0103】
【表5】

図6を参照して、グラフ600は、本発明の一実施形態に係る物品のホログラム消去測定を示す。グラフは、回折効率610対秒単位のホログラム消去時間612である。曲線614は、プロトン化前の試料で観察された、ホログラム消去ビームに付されたときの回折効率の経時変化である。曲線614は、プロトン化後の試料で観察された、ホログラム消去ビームに付されたときの回折効率の経時変化である。プロトン化前の試料中のホログラムを消去するのにかかる時間の量は約30秒であり、プロトン化後の試料中のホログラムを消去するのにかかる時間は約380秒である。これは、プロトン化により、色素がブリーチング波長に対して不感受性になり、従ってホログラムが永続的になることを示す。
【0104】
単数形態は、前後関係から明らかに異なる意味を示さない限り、複数も含む。「任意」又は「場合により」とは、その後に記載される事象又は状況が起こってもよいし起こらなくてもよいことを意味し、またその記載がその事象が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味している。本明細書及び特許請求の範囲を通じて使用する場合、概略的用語は、関連する基本的な機能に変化を及ぼすことなく変化することができる量的表示を表すために使用され得る。従って、「約」及び「実質的に」のような用語によって修飾された値は表示された正確な値に限定されることはない。少なくとも幾つかの場合において、概略的用語は、その値を測定するための機器の精度に相当し得る。明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、範囲の限定は組み合わせ、及び/又は相互に交換でき、特に前後関係から他の意味を示さない限り、かかる範囲は同等に扱われ、その中の小範囲を全て包含する。本明細書に開示されている分子量範囲はポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで決定される分子量をいう。
【0105】
幾つかの実施形態に関連して本発明を詳細に説明して来たが、本発明はかかる開示された実施形態に限定されることはない。むしろ、本発明は、本明細書には記載されていないが本発明の範囲に入る任意の数の変化、変更、置換又は等価な配置を含むように改質することができる。さらにまた、本発明の様々な実施形態が記載されているが、本発明の局面は記載した実施形態の幾つかのみを含んでいてもよいものと了解されたい。従って、本発明は以上の詳細な説明に限定されることはなく、後続の特許請求の範囲の範囲によってのみ制限される。
【符号の説明】
【0106】
100 グラフ
110 吸光度
112 光の波長
114 光退色前で酸添加前の吸光度
116 光退色後で酸添加前の吸光度
118 光退色前で酸添加後の吸光度
120 光退色後で酸添加後の吸光度
200 グラフ
210 吸光度
212 光の波長
214 光退色前で酸添加前の吸光度
216 光退色後で酸添加前の吸光度
218 光退色前で酸添加後の吸光度
220 光退色後で酸添加後の吸光度
300 グラフ
310 屈折率
312 光の波長
314 光退色前で酸添加前の屈折率
316 光退色後で酸添加前の屈折率
318 光退色前で酸添加後の屈折率
400 グラフ
410 屈折率の差
412 光の波長
414 屈折率変化
416 光の活性化領域の下限
418 光の活性化領域の上限
500 グラフ
510 回折効率
512 回折角度
514 プロトン化前の吸光度
516 プロトン化後の吸光度
600 グラフ
610 回折効率
612 ホログラム消去時間
614 プロトン化前の回折効率の経時変化
616 プロトン化後の回折効率の経時変化

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式Iに示す構造を有する組成物。
【化1】

式中、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R、R、及びRは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の環式脂肪族基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。
【請求項2】
が、次式からなる群から選択される構造を有する1種以上の電子求引性置換基からなる、請求項1記載の組成物。
【化2】

式中、R、R、及びR10は各々が各々独立に炭素原子数1〜10の脂肪族基、炭素原子数3〜10の環式脂肪族基、及び炭素原子数3〜10の芳香族基である。
【請求項3】
請求項1記載の組成物を含んでなる物品。
【請求項4】
物品がホログラフィック記録媒体である、請求項3記載の物品。
【請求項5】
次式VIIIに示す構造を有する組成物。
【化3】

【請求項6】
式VIIIの組成物を含んでなる物品。
【請求項7】
次式IXに示す構造を有する組成物。
【化4】

【請求項8】
式IXの組成物を含んでなる物品。
【請求項9】
式Iに示す構造を有する組成物を製造する方法。
【請求項10】
式Iに示す構造を有する組成物を、次式IIに示す構造を有する組成物をプロトン化することにより製造する、請求項9記載の方法。
【化5】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−18613(P2010−18613A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161287(P2009−161287)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】