説明

組換えゼラチンを含む制御放出組成物

本発明は薬理学の分野に関する。より詳細には、本発明は制御放出組成物に関する。1態様において、本発明は下記の工程を含む、制御放出組成物の製造方法を提供する:−組換えゼラチンおよび医薬を含む混合物を調製する;−この組換えゼラチンを化学架橋させて三次元網状構造体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学の分野に関する。より詳細には、本発明は制御放出組成物、その制御放出組成物を含む医薬組成物、その制御放出組成物を含む医療用品、およびその制御放出組成物を調製するための方法、ならびにその制御放出組成物を調製するための組換えゼラチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非経口投与した療法用タンパク質の薬理活性濃度の長期間にわたる維持は、タンパク質の構造を変更してそれらの循環時間を延長することにより、また制御放出配合物の使用により達成できる。あるタンパク質、たとえば組織プラスミノーゲンアクチベーター、エリスロポエチン、およびインターフェロンについては、タンパク質の天然構造の変更が効果的な方法であった。しかし、多くの場合、徐放性配合物の開発がより実行可能な方法である。現在、徐放性配合物はしばしばタンパク質をポリマーマトリックスに封入することにより調製され、これから数日、数週または数カ月以内に、拡散またはマトリックスの分解により放出される。封入されたタンパク質の天然構造および機能の保存が、徐放性配合物の開発に際しての主要な問題点である。さらに、配合物は良好に耐容されるべきであり、また非経口投与に関しては空のマトリックスの外科的摘出を避けるためにそれらの全体が生分解性であることがしばしば好ましい。
【0003】
ヒドロゲルは療法用タンパク質の制御放出にとって魅力的な特定のタイプのマトリックス系である。それらは親水性ポリマーの物理的または化学的な架橋後に形成される三次元網状構造体であり、大量の水を含有する。埋込み可能または注射可能なインサイチューゲル化系としてのヒドロゲルを開発することができる。ヒドロゲルの親水性は取り込まれたタンパク質の天然構造および機能を保存するために好ましいことが示された。ヒドロゲルの高い含水率および軟質コンシステンシーは、投与に際しての機械的刺激を最小限に抑える。さらに、ヒドロゲルはインビボで良好に耐容され、生体適合性であることが示された。ポリマーのタイプおよび架橋のタイプによっては、それらは生分解性でもある。
【0004】
ヒドロゲル製造用のポリマーは、一般に天然由来のものまたは合成によるものとして分類される。天然由来のポリマー、たとえばデキストランおよびゼラチンがタンパク質送達のためのヒドロゲルの開発に用いられている;これらのポリマーは生体適合性かつ生分解性だからである。しかし、天然由来のポリマーの適応はポリマー主鎖中の官能基の化学的誘導体化に限定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬を含む混合物を調製する;
−この混合物中の組換えゼラチンを架橋させて、内部に医薬が閉じ込められた三次元網状構造体を得る。
【0006】
本明細書中で用いる用語”閉じ込める(entrap)”または”閉じ込められた(entrapped)”は、個々に架橋したゼラチン分子により(規定された空間内に)医薬が捕獲された状態に保持されるという事実を表わす。この用語は、用語”封入された(encapsulated)”とは異なる;この場合は、封入材料により囲まれた(surrounded)、内包された(enclosed)、または覆われた(enveloped)位置に医薬が収容されている。
【0007】
この用途のための組換えゼラチンの使用は多数の利点をもち、これらは特にこれらのゼラチンの特定の性質に帰因する。本発明はさらに、架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む制御放出組成物、ならびに本発明の制御放出組成物を使用した医薬組成物および医療用品に関する。本発明はまた、有効量の本発明の制御放出組成物で対象を処置する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】HU4ゼラチンのアミノ酸配列を示す。
【図2】CBEのアミノ酸配列を示す。
【図3】ヒトCol1A1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ヒドロゲルは療法用タンパク質の制御放出にとって魅力的な特定のタイプの三次元マトリックス系である。ヒドロゲルを製造するためのポリマーは、一般に天然由来のものまたは合成によるものとして分類される。天然由来のポリマー、たとえばデキストランおよびゼラチンは生体適合性かつ生分解性であるので、タンパク質送達のためのヒドロゲルの開発に用いられている。
【0010】
制御放出用途のためのヒドロゲルの製造に天然由来のポリマーを使用することには欠点がある;すなわち、投与した際、医薬成分の放出が線形状態とは掛け離れており、かなり頻繁に初期段階で放出が著しく高いため、その制御放出製剤は使用できない。ヒドロゲルの形成に際して医薬の活性が負の影響を受ける可能性があることは、さらに他の欠点である。後者は医薬の分子コンホメーションが失われることにより起きると思われ、免疫原応答を引き起こす可能性すらある。これらの有害作用は、一般に天然由来のポリマーの不均一性、すなわちそれらのきわめて広い分子量分布、および動物起源の不純物が潜在的に存在することが原因である。後者は医薬製剤の安全性に関して次第に重大になっている。
【0011】
本発明は先行技術のこれらの欠点を回避することに関する。
最近では、本来は天然由来であったゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質ポリマーも、組換えDNA技術を用いてバイオテクノロジーにより製造されている。好ましい態様において、組換えゼラチンはピキア・パストリス(Pichia pastoris)を発現系として用いて製造される。組換えゼラチンのアミノ酸配列を組換えによらないゼラチンのものと等しくなるように選択したとしても、それらの化学構造は組換えによらないゼラチンのものと厳密に同一ではない;ピキア・パストリスと動物細胞における翻訳後修飾が異なるからである。ピキア・パストリスは酵素プロリル−4−ヒドロキシラーゼを含まないので、ゼラチンの二次構造および三重らせん形成に重要なプロリン残基のヒドロキシル化が起きない。リジン残基のヒドロキシル化およびヒドロキシリジン残基のグリコシル化もピキア・パストリスにおいては起きない。組換えゼラチンのたとえばセリン残基におけるグリコシル化は可能である。
【0012】
組換えによらないゼラチンと組換えゼラチンの間で可能性のある多数の相異の結果として、組換えゼラチンは新規クラスのバイオポリマーとみなすべきである。
制御放出組成物の重要な特色は、ヒドロゲルの製造に用いるポリマーが生分解性であり、したがって医薬を完全に放出した後に取り出すための侵襲性の外科的方法を必要としないものでなければならないことである。さらに、生分解性は組成物中に使用する医薬を放出するために要求されるであろう。組換えゼラチンが天然ゼラチンの分解を引き起こすのと同じ機序で破壊されるかどうかは推測では明らかにならない。天然のゼラチンおよびコラーゲンがヒトの体内でプロテアーゼ、より具体的にはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)により分解されることは知られている。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。MMPはメトジンシン(metzincin)スーパーファミリーとして知られる比較的大きなプロテアーゼファミリーに属する。共通してそれらはあらゆる種類の細胞外マトリックスタンパク質を分解しうるが、いくらかの生物活性分子も処理することができる。MMPの重要なグループはコラゲナーゼである。これらのMMPは三重らせん線維性コラーゲンを別個の3/4と1/4のフラグメントに分解することができる。これらのコラーゲンは骨および軟骨の主成分であり、MMPはこれらを分解しうる唯一の既知の哺乳動物酵素である。伝統的にコラゲナーゼはMMP−1(間質性コラゲナーゼ)、MMP−8(好中球コラゲナーゼ)、MMP−13(コラゲナーゼ3)、およびMMP−18(コラゲナーゼ4)である。MMPの他の重要なグループはゼラチナーゼにより形成される。これらのMMPの主な基質はIV型コラーゲンおよびゼラチンであり、これらの酵素は触媒ドメインに挿入された追加ドメインが存在することにより識別される。このゼラチン結合領域は亜鉛結合モチーフの直前に位置し、触媒ドメインの構造を妨害しない別個のフォールディングユニットを形成する。このサブグループの2つのメンバーは、MMP−2(72kDaゼラチナーゼ、ゼラチナーゼ−A)およびMMP−9(92kDaゼラチナーゼ、ゼラチナーゼ−B)である。
【0013】
意外にも、本発明はMMPに対する既知の開裂部位を含まない組換えゼラチンがヒトマトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)により酵素分解しうることを開示する。明らかに、これまで推定されたものより多数のタイプの(組換え)ゼラチンを適用できる。この知見に基づいて、本発明者らは組換えゼラチンに関する有用な用途を開発した。
【0014】
組換えゼラチンは幾つかの理由でタンパク質送達系の開発のためのポリマーとして特に魅力的である。バイオテクノロジーによる製造では、動物源ゼラチン中に存在する可能性のあるプリオンの混入のリスクが除外される。組換えゼラチンは、発現するゼラチン遺伝子により決定される良好に規定された分子量をもつ。さらに、組換えDNA技術はアミノ酸配列の修飾または設計によりゼラチンの化学構造を操作する可能性を開く。これは、架橋に関与するアミノ酸の数および位置を規定するために、または前記に述べたプロテアーゼの基質(開裂部位)であるアミノ酸配列の導入によりゼラチンの生分解性を操作するために有用な可能性がある。
【0015】
第1態様において本発明は、下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬を含む混合物、たとえば溶液を調製する;
−この混合物中の組換えゼラチンを架橋させて三次元網状構造体を得る。
【0016】
得られた三次元(3−D)網状構造体は架橋したポリマー鎖の統一された網状構造体であり、これらは湿潤状態で通常は粘稠ではなく弾性をもつ(したがって貯蔵弾性をもつ)。
【0017】
制御放出組成物(または系)またはヒドロゲル(これらの用語は本明細書中で互換性をもって用いられる)は一般に、実質的な量の水を含むポリマー鎖の網状構造体を表わす。用途、すなわち含有される医薬の目的とする放出プロフィール、およびヒドロゲルが受ける機械的応力、に応じて、幾つかのタイプのヒドロゲルを使用できる。たとえば、40%〜60%の水を含有するきわめて剛性かつ非弾性であるヒドロゲル、60%〜85%の水を含有する弾性であるけれどもなお剛性であるヒドロゲル、および85%〜99%の水を含有する軟質かつきわめて弾性であるヒドロゲル。ヒドロゲルは天然または合成ポリマーから製造できる。ヒドロゲル形成ポリマーは、実質的な量の水を吸収して弾性または非弾性のゲルを形成しうるポリマーである。合成ポリマーの例は、ポリエチレンオキシド、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ナトリウムポリアクリレート、アクリレートポリマー、および多量の親水基をもつコポリマーである。天然ポリマーおよびそれらの誘導体の例は、多糖類、たとえばデキストリン、デキストラン、キチン、キトサン、カラゲナンおよび寒天、セルロースおよびその誘導体、アルギネート、天然ガム、たとえばキサンタンガム、ローカストビーンガム、ならびにコラーゲンおよびその誘導体、たとえばゼラチンである。
【0018】
組換えゼラチン(組換えコラーゲンまたは組換えコラーゲン様ペプチドとも表記する)は一般に、組換え法により、たとえばペプチドをコードするヌクレオチドを微生物、昆虫、植物または動物宿主において発現させることにより製造した1種類以上のゼラチンまたはゼラチン様ポリペプチドを表わす。そのようなペプチドは、Gly−Xaa−Yaaトリプレットを含むことを特徴とし、ここでGlyはアミノ酸グリシンであり、XaaおよびYaaは同一でも異なってもよく、いかなる既知のアミノ酸であってもよい。少なくとも40%のアミノ酸は好ましくは連続Gly−Xaa−Yaaトリプレットの形で存在する。より好ましくは少なくとも60%、よりさらに好ましくは少なくとも80%、またはさらに90%より多いアミノ酸が、Gly−Xaa−Yaaトリプレットの形で存在する。好ましくは、これらのペプチドは約2.5kD以上の分子量をもつ。約2.5〜約100kDまたは約15〜約90kDの分子量がより好ましい。よりさらに好ましいのは約30〜約80kD、最も好ましくは31kD以上の分子量の組換えゼラチンである。組換えゼラチンはEP−A−0926543およびEP−A−1014176の記載、またはUS 6,150,081の記載に従って製造できる。最も好ましいゼラチンはCBE(図2)またはそのマルチマー、たとえばトリマーまたはペンタマーであり、これらはCBEのより長い長さ(3倍または5倍)のペプチドを提供するのみである。
【0019】
組換えゼラチンは、たとえばいずれかのタイプのコラーゲン、たとえばI、II、IIIまたはIV型コラーゲンから誘導できる。好ましい態様において、有害な免疫原応答の可能性を避けるために組換えゼラチンはヒトコラーゲンから誘導される。他の例において、組換えゼラチンはヒドロゲルが配置される組織との相互作用に関して特定の用途の要望に適合するように設計できる。たとえば、組換えゼラチンはRGDモチーフ(すなわちアルギニン−グリシン−アスパラギン酸配列)が富化されてもよい。タンパク質中のRGDモチーフは細胞結合特性に影響を及ぼし、増強することが周知である。特に有益な可能性がある他の例は、グリコシル化されていない組換えゼラチンである。これらの特定のゼラチンにおいては、特許明細書WO 2006/091099に記載されるようにピキア属発現系について既知のグリコシル化部位がすべて除去されている。
【0020】
組換えゼラチンおよび医薬の溶液を調製できる種々の方法がある。たとえば、組換えゼラチンを適切な溶剤に溶解することによりまず組換えゼラチンの溶液を調製し、続いてこの調製した組換えゼラチン溶液に医薬を添加または溶解することができる。水溶液が最も好ましい。水混和性有機溶剤、たとえばテトラヒドロフラン、アセトンまたはエタノールとの混合物も使用できる。使用できる他の溶剤は、グリコール、テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、およびN−メチル−ピロリジノン(NMP)である。すべての溶剤を単独で、または他の溶剤との混合物として使用できる。ある場合には、たとえばゼラチンマトリックスと医薬の間の静電相互作用を操作するために、特定のpHが必要である。pHはいずれかの酸または塩基を用いて調整できる。さらに、一般に知られているあらゆる有機または無機の緩衝剤を用いて溶液を緩衝化することができる。組換えゼラチンが既に溶液として存在する場合、この例の最初の部分を省くか、またはその組換えゼラチンを適切な希釈剤中に希釈することと置き換えることができるのは明らかである。他の例においては、医薬を適切な希釈剤または溶剤に添加または溶解することによりまず医薬の溶液を調製し、続いて医薬を含むこの溶液に組換えゼラチンを添加または溶解する。さらに他の例においては、組換えゼラチンと医薬を同時に適切な希釈剤または溶剤に添加および/または溶解する。
【0021】
医薬を必ずしも溶解する必要はない。使用する溶剤系における医薬の溶解度が限られている場合、医薬の粒子懸濁液を使用することもできる。これらの粒子懸濁液を予め調製しておいてゼラチン溶液に添加するか、またはその逆も可能であり、あるいはゼラチン溶液中で形成する、すなわち沈殿させることもできる。
【0022】
組換えゼラチンを架橋させた後、三次元網状構造体/制御放出組成物が得られる。得られた三次元網状構造体は、使用する医薬を含む/閉じ込めたマトリックスを含む。医薬はその後この三次元網状構造体から数日、数週または数カ月以内に、マトリックスが分解した際に拡散により放出される。
【0023】
得られる制御放出組成物のその後の使用に応じて、本発明方法は乾燥工程を含むことができる;すなわち、好ましい態様において、本発明は下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬を含む混合物(たとえば溶液)を調製する;
−この混合物中の組換えゼラチンを架橋させて、医薬が網状構造体に閉じ込められた三次元網状構造体を得る;
−得られた三次元網状構造体を乾燥させる。
【0024】
本質的に、医薬が網状構造体(ゲルマトリックス)に閉じ込められた場合、網状構造体と医薬は固体/ゲル混合物を形成する。
閉じ込められた医薬は、架橋ゼラチンマトリックス内に閉じ込められているためマトリックスからの拡散排出が好ましくは本質的に阻止され、好ましくは本質的に架橋ゼラチンが分解した場合にのみ、この三次元網状構造体から放出される(たとえばインビボで)。
【0025】
本発明の制御放出組成物から医薬が放出される速度(すなわち放出速度)は、制御放出組成物を水溶液中に入れた場合に(たとえば実施例の記載に従って)、制御放出組成物中に閉じ込められた医薬のうち好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、よりさらに好ましくは30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満の画分が24時間の期間で放出されるものである。そのような遅い放出速度は、拡散により支配された放出ではなく分解により支配された放出の指標である。
【0026】
制御放出組成物は、用途に応じてそれを型に注入し、続いて化学架橋させることにより、多様な形状のゲルまたは弾性半固体として得ることができる。さらに、制御放出組成物を乳化し、架橋後に形成された乳濁液滴を多少とも固体状の粒子として単離することにより、制御放出粒子を得ることができる。制御放出粒子を得るための他の方法は、噴霧乾燥によるものである。粒度は0.1マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲であってよいが、用途および目的とする放出プロフィールに応じて、より特定の範囲を選択できる。注射用配合物を用いる場合、粒度は好ましくは200マイクロメートルを超えるべきでない。さらに、制御放出組成物をキャストしてフィルムまたはシートにすることができる。適切なキャスチング技術の例には、スピンコーティング、グラビアコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ブラシまたはローラーによるコーティング、スクリーン印刷、ナイフコーティング、カーテンコーティング、スライドカーテンコーティング、押出し、スクィーズコーティングなどが含まれる。フィルムまたはシートの厚さは1マイクロメートルから1センチメートルまでの範囲であってよい。たとえば、創傷包帯の場合は1ミリメートル〜1センチメートルの厚さが好ましく、一方、医療用具、たとえばステントまたは血管移植片その他のインプラントのコーティングには1mmまでのコーティング厚さが好ましい。組成物の乾燥は、一般的な方法、たとえば風乾、真空乾燥、凍結乾燥または噴霧乾燥により行なうことができる。
【0027】
架橋したゼラチンを製造する架橋方法は本質的に化学架橋である。本明細書中で用いる化学架橋という用語は、架橋が架橋剤の添加により、または架橋性の基によるゼラチンの修飾により達成されるという事実を表わす。本明細書中で用いる架橋という用語はヒドロキシル化ゼラチン中のリジン残基間の架橋を表わすのではないことを特に明記しなければならない。それから天然ゼラチンが得られる天然コラーゲン(たとえば骨または皮に由来する)においては、一定量のプロリンおよびリジン残基がヒドロキシラーゼによりヒドロキシル化されている。個々のコラーゲン分子内および分子間に存在する生成したヒドロキシル化リジル残基がインビボで生合成により架橋し、これによってコラーゲンが架橋して線維状構造体になる可能性がある。得られる天然ゼラチンはコラーゲンの線維状構造を失っているが、生合成架橋の一部は残るであろう。このタイプの架橋は制御できないので望ましくない。さらに、このタイプの架橋は天然ゼラチンに本来、すなわちそれが生成した瞬間から、種々の程度で存在する。本発明において、架橋はゼラチンを医薬有効成分と混合した時点で初めて生じるべきである。したがって、架橋のレベルと同様にその開始も制御できることが望ましい。したがって、本発明の観点に使用するゼラチンは好ましくは組換えゼラチンであり、より好ましくはリジン残基のヒドロキシル化および生合成架橋のための生合成酵素を欠如した発現系において産生され、したがって本質的にヒドロキシリジン架橋を含まない(本質的にヒドロキシリジン架橋が無い)。本発明の観点に用いられるゼラチンは本質的にヒドロキシプロリン残基も含まない。
【0028】
たとえば、架橋プロセス中における使用する医薬の安定性に応じて、まず医薬の不存在下で架橋ヒドロゲルを調製し、場合によりそれを乾燥させ、次いで医薬を含有させることも可能である。マトリックスの架橋に際して、療法用タンパク質(TP)が共架橋して活性を失ない、最悪の場合には毒性を生じるという可能性がある。したがって、ヒドロゲル調製後にTPを取り込ませるのが有利である。医薬を(乾燥)ヒドロゲルに取り込ませるために幾つかの方法を適用できる;たとえば(乾燥)ヒドロゲルを医薬の溶液に浸漬するか、または医薬の溶液を上に滴下することによる。
【0029】
制御放出組成物を対象に投与すると、制御放出組成物は生理的pHである約7.4のpHに曝露される。7.4より高いpIをもつ医薬については組換えゼラチンマトリックスのpIが7.4より低い場合にきわめて良好な放出特性が得られ、一方、7.4より低いpIをもつ医薬については7.4より高いpIをもつ組換えゼラチンマトリックスを用いて同じ良好な結果が得られることが見いだされた。ヒドロゲルの装入について、医薬のpIがこのpHよりそれぞれ低い場合および高い場合、好ましくは組換えゼラチンマトリックスのpIがこのpHより高いかまたは低いようにpHを選択すべきである。
【0030】
装入量を最適化するほか、医薬/療法用タンパク質の安定性を保護することもできる。化学修飾を用いてマトリックスポリマーの電荷を変化させることもできるが、これは化学物質残留物および修飾されたゼラチン自身(たとえばフタル化ゼラチンまたはアミン富化ゼラチン)の毒性挙動ならびに含有されるタンパク質の安定性に関してリスクを生じるであろう。
【0031】
本発明方法に用いる組換えゼラチンは、広範な組換えゼラチン、たとえばヒトI、II、IIIまたはIV型コラーゲンを含めた哺乳動物コラーゲンに基づく組換えゼラチンから選択できる。前記のように、組換えゼラチンはいずれか適切な(過剰)発現系、たとえば酵母、細菌、真菌または植物における発現により産生させることができる。ある発現系の使用が産生される組換えゼラチンに特定の性質、たとえば異なるグリコシル化パターン(天然バリアントと比較した場合)を付与する可能性があることは当業者に明らかである。グリコシル化の量およびパターンは本発明による制御放出用品に対する免疫寛容に有害な影響を及ぼす可能性があり、したがって本発明の好ましい態様は本質的にグリコシル化を伴わない組換えゼラチンを含む。
【0032】
組換えゼラチンを使用することの重要な利点は、明確に規定された制御放出組成物を調製できることである。動物由来のゼラチンと比較した組換えゼラチンの一定の品質(たとえば純度および良好に規定された分子量)は、制御放出組成物中の医薬の品質にも寄与する。
【0033】
組換えゼラチンの別の重要な利点は、アミノ酸配列を操作して、特定の特性を作り出せることである。現在操作できる特性の例は下記のものである:(i)架橋性アミノ酸の量(たとえば(ヒドロキシ)リジンの量)、(ii)グリコシル化パターン(たとえば、特定のトリプレット中にトレオニンおよび/またはセリンアミノ酸が存在しないとグリコシル化が生じない)、(iii)組換えゼラチンのサイズ、(iv)組換えゼラチンの電荷密度を補正することができ(たとえば荷電アミノ酸、たとえばアスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)またはリジン(Lys)を導入または除外することができる)、したがって医薬(特に療法用タンパク質)の装入および放出に影響を及ぼすことができる、または(v)メタロプロテアーゼに対する開裂部位の存在もしくは不存在により生分解性を補正できる。
【0034】
具体的な要望に応じて、本発明の方法は、組換えゼラチン中に存在する架橋性アミノ酸の量に基づいて組換えゼラチンを選択する、または組換えゼラチンを遺伝子修飾して組換えゼラチン中の(ヒドロキシ)リジン残基の量を増加(または減少)させるなどの工程を含むことができる。
【0035】
好ましい態様において、本発明は下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬の溶液を調製する;
−組換えゼラチンを(化学)架橋させて三次元網状構造体を得る;
その際、組換えゼラチンは哺乳動物様、好ましくはヒトのものである。哺乳動物様ゼラチンは、哺乳動物コラーゲン配列に対して少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%同一であると定義される。組換えによる哺乳動物様ゼラチンを製造するための出発点は、たとえばヒトCol1A1配列である。しかし、出発点として他の哺乳動物コラーゲン配列を使用することもできる。
【0036】
前記に述べたように、組換えゼラチンの重要な特性のひとつは架橋性アミノ酸の量、たとえば(ヒドロキシ)−リジン基の量、ならびにアスパラギン酸およびグルタミン酸に由来するカルボン酸基の量である。好ましい態様において、本発明は下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬の溶液を調製する;
−組換えゼラチンを(化学)架橋させて三次元網状構造体を得る;
その際、組換えゼラチンは架橋前に少なくとも0.05mmol/gのリジンまたはヒドロキシリジン基を含む。
【0037】
好ましくは、組換えゼラチンは架橋後に適切な構造を得るために少なくとも0.10mmol/g、より好ましくは少なくとも0.20mmol/gのリジンまたはヒドロキシリジン基を含む。目的とする三次元網状構造に応じて、より高い約0.40または0.60もしくは0.80mmol/gまでのリジンまたはヒドロキシリジン含量も適用できる。
【0038】
架橋性の基の量が架橋度に影響を及ぼすことは明らかである。架橋性の基がより多量あれば、架橋性の基がより少量存在する状況と比較した場合、架橋の量は原則としてより高い可能性がある。架橋性の基の下限は、なおゲルを形成しうる量である。架橋性の基の量は、原則としてメッシュサイズも決定する;これは、生理的条件(pH7.4、37℃および300mOsm/L)における絡まった/架橋したゼラチン網状構造体の平均“細孔サイズ”の尺度である。最終的に、架橋性の基の量は形成された制御放出組成物の生分解性を決定する。組換えゼラチンの使用により、架橋性の基の量に影響を及ぼし、したがってゲルのメッシュサイズおよび生分解性を操作することができる。
【0039】
化学架橋の場合、使用する組換えゼラチンにたとえば(化学)リンカーを供給し、続いて連結反応させる。したがって、本発明は下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬の溶液を調製する;
−組換えゼラチンを化学架橋させて三次元網状構造体を得る;
その際、組換えゼラチンは架橋性の基で化学修飾されている。
【0040】
前記の架橋性の基は、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン類、またはエテン性不飽和化合物、たとえばアクリレート類、メタクリレート類、ポリエン−ポリチオール類、ビニルエーテル類、ビニルアミド類、ビニルアミン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、アリルアミン類、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジエン類およびスチレン類の群から選択できるが、これらに限定されない。好ましくは、(メタ)アクリレート類、たとえばアルキル−(メタ)アクリレート類、ポリエステル−(メタ)アクリレート類、ウレタン−(メタ)アクリレート類、ポリエーテル−(メタ)アクリレート類、エポキシ−(メタ)アクリレート類、ポリブタジエン−(メタ)アクリレート類、シリコーン−(メタ)アクリレート類、メラミン−(メタ)アクリレート類、ホスファゼン−(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、およびその組合わせは、それらの反応性が高いので架橋性の基として使用される。よりさらに好ましくは、架橋性の基はメタクリレートであり、したがって本発明の好ましい観点においてはメタクリル化した組換えゼラチンを使用する。そのようなメタクリル化した組換えゼラチンは、制御放出組成物の調製にきわめて有用である。一般に連結基(たとえばメタクリレート)を組換えゼラチンに結合させ、レドックス重合により架橋を得る(たとえば化学的開始剤、たとえば組合わせペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)/N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED))で処理することによるか、または開始剤の存在下でのラジカル重合、たとえば熱反応、もしくはUV線などの電磁線による)。
【0041】
選択したゼラチンのタイプ(架橋性の基の数)および架橋方法に応じて一定の架橋密度を得ることができ、これは達成できる平均メッシュサイズに強く関係する。架橋性の基を別個の工程でゼラチンに結合させる場合、およびそのヒドロゲルについて緻密な網状構造を得たい場合、ゼラチン中の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%の架橋性の基が活性化されることが好ましい。最も好ましくは、置換度は100%に近い。
【0042】
本発明によれば光開始剤を使用でき、これを組換えゼラチンの溶液に混合することができる。光開始剤は通常は混合物をUV線または可視光線により硬化させる際に必要である。適切な光開始剤は当技術分野で既知のもの、たとえばラジカルタイプ、カチオンタイプまたはアニオンタイプの光開始剤である。
【0043】
ラジカルI型光開始剤の例は下記のものである:α−ヒドロキシアルキルケトン類、たとえば2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(Irgacure(商標)2959:Ciba)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(Irgacure(商標)184:Ciba)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Sarcure(商標)SR1173:Sartomer)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン](Sarcure(商標)SR1130:Sartomer)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4’−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパノン(Darcure(商標)1116:Ciba);α−アミノアルキルフェノン類、たとえば2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン(Irgacure(商標)369:Ciba)、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン(Irgacure(商標)907:Ciba);α,α−ジアルコキシアセトフェノン類、たとえばα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン(Irgacure(商標)651:Ciba)、2,2−ジエチオキシ−1,2−ジフェニルエタノン(Uvatone(商標)8302:Upjohn)、α,α−ジエトキシアセトフェノン(DEAP:Rahn)、α,α−ジ−(n−ブトキシ)アセトフェノン(Uvatone(商標)8301:Upjohn);フェニルグリオキソレート類、たとえばメチルベンゾイルホルメート(Darocure(商標)MBF:Ciba);ベンゾイン誘導体、たとえばベンゾイン(Esacure(商標)BO:Lamberti)、ベンゾインアルキルエーテル類(エチル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチルなど)、ベンジルベンゾインベンジルエーテル類、アニソイン(Anisoin);モノ−およびビス−アシルホスフィンオキシド類、たとえば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(商標)TPO:BASF)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(Lucirin(商標)TPO−L:BASF)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(商標)819:Ciba)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド(Irgacure 1800または1870)。他の市販の光開始剤は下記のものである:1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]−1,2−オクタンジオン(Irgacure OXE01)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)エタノン(Irgacure OXE02)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(Irgacure127)、オキシ−フェニル−酢酸2−[2 オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル(Irgacure754)、オキシ−フェニル−アセティック−2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル(Irgacure754)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure 379)、1−[4−[4−ベンゾイルフェニル)チオ]フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルホニル)]−1−プロパノン(Esacure 1001M,Lambertiから)、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール(Omnirad BCIM,IGMから)。
【0044】
II型光開始剤の例は下記のものである:ベンゾフェノン誘導体、たとえばベンゾフェノン(Additol(商標)BP:UCB)、4−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]フェニル−メタノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミウムクロリド、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン(Uvecryl(商標)P36:UCB)、4−ベンゾイル−N,N−ジメチ−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)オイ]エチルベンゼンメタナミニウムクロリド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、アントラキノン、エチルアントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩、ジベンゾスベレノン;アセトフェノン誘導体、たとえばアセトフェノン、4’−フェノキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−エトキシアセトフェノン;チオキサンテノン誘導体、たとえばチオキサンテノン、2−クロロチオキサンテノン、4−クロロチオキサンテノン、2−イソプロピルチオキサンテノン、4−イソプロピルチオキサンテノン、2,4−ジメチルチオキサンテノン、2,4−ジエチルチオキサンテノン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミウムクロリド(Kayacure(商標)QTX:日本化薬);ジオン類、たとえばベンジル、カンファーキノン、4,4’−ジメチルベンジル、フェナントレンキノン、フェニルプロパンジオン;ジメチルアニリン類、たとえば4,4’,4”−メチリジン−トリス(N,N−ジメチルアニリン)(Omnirad(商標)LCV,IGMから);イミダゾール誘導体、たとえば2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール;チタノセン類、たとえばビス(エタ−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス−[2,6−ジフルオロ−3−1H−ピロール−1−イル]フェニル]チタン(Irgacure(商標)784:Ciba);ヨードニウム塩、たとえばヨードニウム、(4−メチルフェニル)−[4−(2−メチルプロピル−フェニル)−ヘキサフルオロホスフェート(1−)。所望により光開始剤の組合わせも使用できる。
【0045】
アクリレート類、ジアクリレート類、トリアクリレート類または多官能性アクリレート類、I型光開始剤が好ましい。特にアルファ−ヒドロキシアルキルフェノン類、たとえば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4’−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]、アルファ−アミノアルキルフェノン類、アルファ−スルホニルアルキルフェノン類およびアシルホスフィンオキシド類、たとえば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルホスフィネートおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが好ましい。
【0046】
赤外線による架橋は熱硬化としても知られている。したがって架橋は、エチレン性不飽和基をフリーラジカル開始剤および場合により触媒と組み合わせ、この混合物を加熱することにより実施できる。フリーラジカル開始剤の例は下記のものである:有機過酸化物、たとえば過酸化エチルおよび過酸化ベンジル;ヒドロペルオキシド類、たとえばメチルヒドロペルオキシド、アシロイン類、たとえばベンゾイン;特定のアゾ化合物、たとえばα,α’−アゾビスイソブチロニトリルおよびγ,γ’−アゾビス(γ−シアノ吉草酸);ペルスルフェート類;ペルオキソスルフェート類;ペルアセテート類、たとえば過酢酸メチルおよび過酢酸tert−ブチル;ペルオキサレート類、たとえば過シュウ酸ジメチルおよび過シュウ酸ジ(tert−ブチル);ジスルフィド類、たとえばジメチルチウラムジスルフィド;ならびにケトンペルオキシド類、たとえばメチルエチルケトンペルオキシド。約23℃から約150℃までの範囲の温度が一般に用いられる。約37℃から約110℃までの範囲の温度がより多く用いられる。
【0047】
メタクリル化された組換えゼラチンを医薬としての療法用タンパク質と組み合わせて使用するのは特に好ましい;メタクリル化ゼラチンの架橋は療法用タンパク質の存在下で、療法用タンパク質を共架橋せずに、かつ療法用タンパク質の活性を失うことなく実施できるからである。
【0048】
架橋の結果、医薬を含む制御放出組成物が得られる。得られる生成物のメッシュサイズまたは細孔サイズは、使用する組換えゼラチンおよび架橋密度に依存する。メッシュサイズは、ヒドロゲルポリマー網状構造中の2つの隣接架橋間の平均距離と定義される。療法用タンパク質を医薬として用いる場合、メッシュサイズは療法用タンパク質の流体力学的半径より大きい場合と小さい場合の両方の可能性がある。流体力学的半径Rは、すべての環境作用を考慮したゼラチンマトリックス中のタンパク質の見掛け半径である。したがって、流体力学的半径は拡散定数Dから関係式D=kT/6πηRにより求められ、ここでkはボルツマン定数であり、Tは温度(ケルビン)であり、πは3.14であり、ηは溶液の粘度(mPa)である。本発明において、流体力学的半径は好ましくは生理的条件で測定される。得られる生成物の分解速度は架橋の量に依存する:架橋が多いほど分解は遅い。好ましい態様において、分解速度は1年以内である。医薬の放出プロフィールは通常は数週間または最大で数カ月間に延長するので、組換えゼラチンからなるマトリックスは同様な時間ウインドウで分解することが好ましい。得られる生成物の最終電荷密度は、使用する組換えゼラチンのアミノ酸配列および架橋度の両方に依存する。得られる生成物は種々の外観をもつ可能性がある:たとえば緻密/均質またはマクロ多孔質。使用する医薬の放出プロフィールは、数時間(拡散による制御)から数週間または数カ月間(分解速度による制御)までの可能性がある。両方の機序の組合わせが起きる可能性もある。
【0049】
前記のように、架橋は組換えゼラチンの前修飾に際して導入した(メタ)アクリレート残基の架橋により得ることができる。しかし、使用する組換えゼラチンへの別個の結合を必要としない化学架橋剤を用いることも可能である。他の態様において、本発明は下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬の溶液を調製する;
−組換えゼラチンを架橋させて三次元網状構造体を得る;その際、架橋は下記のものから選択される化学架橋剤の使用により得られる:水に可溶性のカルボジイミド、不溶性のカルボジイミド、ジ−アルデヒド ジ−イソシアネート、アルデヒド化合物、たとえばホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド、ケトン化合物、たとえばジアセチルおよびクロロペンタンジオン、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、反応性ハロゲン含有化合物:US−A−3288 775に開示、ピリジン環がスルフェートまたはアルキルスルフェート基をもつカルバモイルピリジニウム化合物:US−A−4 063 952およびUS−A−5 529 892に開示、ジビニルスルホン類など。S−トリアジン誘導体、たとえば2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−s−トリアジンは周知の架橋化合物である。
【0050】
基本的に、架橋は異なるゼラチン分子上の2つの反応性基の間で起きる。特に好ましいのは医療目的に許容しうる架橋剤、特に水溶性カルボジイミド1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩の使用である。
【0051】
あらゆる種類の医薬を前記の制御放出組成物に取り込ませることができる。用語“医薬”は、治療、診断または予防効果を、好ましくはインビボでもたらす化学分子または生体分子を表わす。医薬という用語は、そのプロドラッグ形態をも示すものとする。医薬の“プロドラッグ形態”は、その医薬の構造関連化合物または誘導体であって、ホストに投与した際に目的とする医薬に変換されるものを意味する。プロドラッグ形態は、それが変換される医薬が示す目的薬理活性をほとんどまたは全くもたない場合がある。
【0052】
本明細書に記載する組成物中に使用することを意図する医薬成分には、下記のカテゴリーおよび例の薬物、ならびにこれらの薬物の別形態、たとえば別の塩形、遊離酸形、遊離塩基形および水和物が含まれる。
【0053】
本発明の制御放出組成物中に使用するのに適切な可能性のある医薬の代表例には、下記のものが含まれる(療法クラスにより分類):
下痢止め薬、たとえばジフェノキシレート(diphenoxylate)、ロペラミド(loperamide)およびヒオスチアミン(hyoscyamine);
抗高血圧薬、たとえばヒドララジン(hydralazine)、ミノキシジル(minoxidil)、カプトプリル(captopril)、エナラプリル(enalapril)、クロニジン(clonidine)、プラゾシン(prazosin)、デブリソキン(debrisoquine)、ジアゾキシド(diazoxide)、グアネチジン(guanethidine)、メチルドーパ(methyldopa)、レセルピン(reserpine)、トリメタファン(trimethaphan);
カルシウムチャンネル遮断薬、たとえばジルチアゼム(diltiazem)、フェロジピン(felodipine)、アムロジピン(amlodipine)、ニトレンジピン(nitrendipine)、ニフェジピン(nifedipine)およびベラパミル(verapamil);
抗不整脈薬、たとえばアミオダロン(amiodarone)、フレカイニド(flecainide)、ジソピラミド(disopyramide)、プロカインアミド(procainamide)、メキシレテン(mexiletene)およびキニジン(quinidine);
抗狭心症薬、たとえば三硝酸グリセリル(glyceryl trinitrate)、四硝酸エリトリチル(erythrityl tetranitrate)、四硝酸ペンタエリトリトール(pentaerythritol tetranitrate)、六硝酸マンニトール(mannitol hexanitrate)、ペルヘキシレン(perhexilene)、二硝酸イソソルビド(isosorbide dinitrate)およびニコランジル(nicorandil);
ベータ−アドレナリン遮断薬、たとえばアルプレノロール(alprenolol)、アテノロール(atenolol)、ブプラノロール(bupranolol)、カルテオロール(carteolol)、ラベタロール(labetalol)、メトプロロール(metoprolol)、ナドロール(nadolol)、ナドキソロール(nadoxolol)、オキシプレノロール(oxprenolol)、ピンドロール(pindolol)、プロプラノロール(propranolol)、ソタロール(sotalol)、チモロール(timolol)およびマレイン酸チモロール;
強心配糖体、たとえばジゴキシン(digoxin)および他の強心配糖体ならびにテオフィリン誘導体;
アドレナリン作動薬、たとえばアドレナリン、エフェドリン(ephedrine)、フェノテロール(fenoterol)、イソプレナリン(isoprenaline)、オルシプレナリン(orciprenaline)、リメテロール(rimeterol)、サルブタモール(salbutamol)、サルメテロール(salmeterol)、テルブタリン(terbutaline)、ドブタミン(dobutamine)、フェニレフェリン(phenylephrine)、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリンおよびドーパミン;
血管拡張薬、たとえばシクランデレート(cyclandelate)、イソクスプリン(isoxsuprine)、パパベリン(papaverine)、ジピリダドール(dipyrimadole)、二硝酸イソソルビド(isosorbide dinitrate)、フェントラミン(phentolamine)、ニコチニルアルコール、コ−デルゴクリン(co-dergocrine)、ニコチン酸、三硝酸グリセリル、四硝酸ペンタエリトリトールおよびキサンチノール(xanthinol);
抗片頭痛製剤、たとえばエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、メチセルギド(methysergide)、ピゾチフェン(pizotifen)およびスマトリプタン(sumatriptan);
抗凝固薬および血栓溶解薬、たとえばワルファリン(warfarin)、ジクマロール(dicoumarol)、低分子量ヘパリン類、たとえばエノキサパリン(enoxaparin)、ストレプトキナーゼおよびその活性誘導体;
止血薬、たとえばアプロチニン(aprotinin)、トラネキサム酸(tranexamic acid)およびプロタミン(protamine);
鎮痛薬および下熱薬:下記を含む:オピオイド系鎮痛薬、たとえばブプレノルフィン(buprenorphine)、デキストロモラミド(dextromoramide)、デキストロプロポキシフェン(dextropropoxyphene)、フェンタニル(fentanyl)、アルフェンタニル(alfentanil)、スフェンタニル(sufentanil)、ヒドロモルホン(hydromorphone)、メサドン(methadone)、モルヒネ、オキシコドン(oxycodone)、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、ペチジン(pethidine)、フェノペリジン(phenoperidine)、コデイン ジヒドロコデイン、アセチルサリチル酸(アスピリン)、パラセタモール(paracetamol)、およびフェナゾン(phenazone);
神経毒、たとえばカプサイシン(capsaicin);
催眠薬および鎮静薬、たとえばバルビツレート類アミロバルビトン(amylobarbitone)、ブトバルビトン(butobarbitone)およびペントバルビトン(pentobarbitone)、ならびに他の催眠薬および鎮静薬、たとえば抱水クロラール、クロルメチアゾール(chlormethiazole)、ヒドロキシジン(hydroxyzine)およびメプロバメート(meprobamate);
抗不安薬、たとえばベンゾジアゼピン類アルプラゾラム(alprazolam)、ブロマゼパム(bromazepam)、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、クロバザム(clobazam)、クロラゼペート(chlorazepate)、ジアゼパム(diazepam)、フルニトラゼパム(flunitrazepam)、フルラゼパム(flurazepam)、ロラゼパム(lorazepam)、ニトラゼパム(nitrazepam)、オキサゼパム(oxazepam)、テマゼパム(temazepam)およびトリアゾラム(triazolam);
神経弛緩薬および抗精神病薬、たとえばフェノチアジン類、クロルプロマジン(chlorpromazine)、フルフェナジン(fluphenazine)、ペリシアジン(pericyazine)、ペルフェナジン(perphenazine)、プロマジン(promazine)、チオプロパゼート(thiopropazate)、チオリダジン(thioridazine)、トリフルオペラジン(trifluoperazine);およびブチロフェノン(butyrophenone)、ドロペリドール(droperidol)およびハロペリドール(haloperidol);ならびに他の抗精神病薬、たとえばピモジド(pimozide)、チオチキセン(thiothixene)およびリチウム;
抗うつ薬、たとえば三環系抗うつ薬アミトリプチリン(amitryptyline)、クロミプラミン(clomipramine)、デシプラミン(desipramine)、ドチエピン(dothiepin)、ドキセピン(doxepin)、イミプラミン(imipramine)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、オピプラモール(opipramol)、プロトリプチリン(protriptyline)およびトリミプラミン(trimipramine)、ならびに四環系抗うつ薬、たとえばミアセリン(mianserin)、ならびにモノアミンオキシダーゼ阻害薬、たとえばイソカルボキサジド(isocarboxazid)、フェネリジン(phenelizine)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)およびモクロベミド(moclobemide)、ならびに選択的セロトニン再取込み阻害薬、たとえばフルオキセチン(fluoxetine)、パロキセチン(paroxetine)、シタロプラム(citalopram)、フルボキサミン(fluvoxamine)およびセルトラリン(sertraline);
中枢神経興奮薬、たとえばカフェインおよび3−(2−アミノブチル)インドール;
抗アルツハイマー病薬、たとえばタクリン(tacrine);
抗パーキンソン病薬、たとえばアマンタジン(amantadine)、ベンセラジド(benserazide)、カルビドーパ(carbidopa)、レボドーパ(levodopa)、ベンゾトロピン(benztropine)、ビペリデン(biperiden)、ベンゾキソール(benzhexol)、プロシクリジン(procyclidine)、およびドーパミン−2アゴニスト、たとえばS(−)−2−(N−プロピル−N−2−チエニルエチルアミノ)−5−ヒドロキシテトラリン(N−0923));
抗痙攣薬、たとえばフェニトイン(phenytoin)、バルプロ酸(valproic acid)、プリミドン(primidone)、フェノバルビトン(phenobarbitone)、メチルフェノバルビトン(methylphenobarbitone)およびカルバマゼピン(carbamazepine)、エトスキシミド(ethosuximide)、メトスキシミド(methsuximide)、フェンスキシミド(phensuximide)、スルチアム(sulthiame)およびクロナゼパム(clonazepam);
鎮吐薬および制吐薬、たとえばフェノチアジン類プロクロペラジン(prochloperazine)、チエニルペラジン(thiethylperazine)、ならびに5HT−3受容体アンタゴニスト、たとえばオンダンセトロン(ondansetron)およびグラニセトロン(granisetron)、ならびにジメンヒドリネート(dimenhydrinate)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、メトクロプラミド(metoclopramide)、ドンペリドン(domperidone)、ヒヨスチン(hyoscine)、臭化水素酸ヒヨスチン、塩酸ヒヨスチン、クレボプリド(clebopride)およびブロムプリド(brompride);
非ステロイド系抗炎症薬:使用可能な場合にはそれらのラセミ混合物または個々の鏡像異性体を含む;好ましくは皮膚透過促進剤と組み合わせて配合される;たとえばイブプロフェン(ibuprofen)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、ケトプロフェン(ketoprofen)、アクロフェナク(aclofenac)、ジクロフェナク(diclofenac)、アロキシプリン(aloxiprin)、アプロキセン(aproxen)、アスピリン、ジフルニサール(diflunisal)、フェノプロフェン(fenoprofen)、インドメタシン(indomethacin)、メフェナム酸(mefenamic acid)、ナプロキセン(naproxen)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、ピロキシカム(piroxicam)、サリチルアミド、サリチル酸、スリンダク(sulindac)、デスオキシスリンダク(desoxysulindac)、テノキシカム(tenoxicam)、トラマドール(tramadol)、ケトロラク(ketoralac)、フルフェニサール(flufenisal)、サルサレート(salsalate)、サリチル酸トリエタノールアミン、アミノピリン(aminopyrine)、アンチピリン(antipyrine)、オキシフェンブタゾン(oxyphenbutazone)、アパゾン(apazone)、シンタゾン(cintazone)、フルフェナム酸(flufenamic acid)、クロニキセリル(clonixeril)、クロニキシン(clonixin)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、フルニキシン(flunixin)、コイチシン(coichicine)、デメコルシン(demecolcine)、アロプリノール(allopurinol)、オキシプリノール(oxypurinol)、塩酸ベンジダミン(benzydamine hydrochloride)、ジメファダン(dimefadane)、インドキソール(indoxole)、イントラゾール(intrazole)、塩酸ミンバン(mimbane hydrochloride)、塩酸パラニレン(paranylene hydrochloride)、テトリダミン(tetrydamine)、塩酸ベンゾインドピリン(benzindopyrine hydrochloride)、フルプロフェン(fluprofen)、イブフェナク(ibufenac)、ナプロキソール(naproxol)、フェンブフェン(fenbufen)、シンコフェン(cinchophen)、ジフルミドンナトリウム(diflumidone sodium)、フェナモール(fenamole)、フルチアジン(flutiazin)、メタザミド(metazamide)、塩酸レチミド(letimide hydrochloride)、塩酸ネキセリジン(nexeridine hydrochloride)、オクタザミド(octazamide)、モリナゾール(molinazole)、ネオシンコフェン(neocinchophen)、ニマゾール(nimazole)、クエン酸プロキサゾール(proxazole citrate)、テシカム(tesicam)、テシミド(tesimide)、トルメチン(tolmetin)、およびトリフルミデート(triflumidate);
抗リウマチ薬、たとえばペニシラミン(penicillamine)、金チオグルコース(aurothioglucose)、金チオリンゴ酸ナトリウム(sodium aurothiomalate)、メトトレキセート(methotrexate)およびオーラノフィン(auranofin);
筋弛緩薬、たとえばバクロフェン(baclofen)、ジアゼパム(diazepam)、塩酸シクロベンザプリン(cyclobenzaprine hydrochloride)、ダントロレン(dantrolene)、メトカルバモール(methocarbamol)、オルフェナドリン(orphenadrine)およびキニーネ(quinine);
痛風および高尿酸血症に用いられる薬剤、たとえばアロプリノール(allopurinol)、コルヒチン(colchicine)、プロベネシド(probenecid)およびスルフィンピラゾン(sulphinpyrazone);
エストロゲン薬、たとえばエストラジオール(oestradiol)、エストリオール(oestriol)、エストロン(oestrone)、エチニルエストラジオール(ethinyloestradiol)、メストラノール(mestranol)、スチルベストロール(stilboestrol)、ジエノストロール(dienoestrol)、エピエストリオール(epioestriol)、エストロピペート(estropipate)およびゼラノール(zeranol);
プロゲステロン薬および他の黄体ホルモン薬、たとえばアリルエストレノール(allyloestrenol)、ジドルゲステロン(dydrgesterone)、リノエストレノール(lynoestrenol)、ノルゲストレル(norgestrel)、ノルエチンドレル(norethyndrel)、ノルエチステロン(norethisterone)、酢酸ノルエチステロン、ゲストデン(gestodene)、レボノルゲストレル(levonorgestrel)、メドロキシプロゲンテロン(medroxyprogesterone)およびメゲストロール(megestrol);
抗アンドロゲン薬、たとえば酢酸シプロテロン(cyproterone acetate)およびダナゾール(danazol);
抗エストロゲン薬、たとえばタモキシフェン(tamoxifen)およびエピチオスタノール(epitiostanol)およびアロマターゼ阻害薬、エキセメスタン(exemestane)ならびに4−ヒドロキシ−アンドロステンジオンおよびその誘導体;
アンドロゲン薬およびタンパク質同化薬、たとえばテストステロン、メチルテストステロン、酢酸クロステボール(clostebol acetate)、ドロスタノロン(drostanolone)、フラザボール(furazabol)、ナンドロロン(nandrolone) オキサンドロロン(oxandrolone)、スタノゾロール(stanozolol)、酢酸トレンボロン(trenbolone acetate)、ジヒドロ−テストステロン、17−[アルファ]−メチル−19−ノルテストステロンおよびフルオキシメステロン(fluoxymesterone);
5−アルファレダクターゼ阻害薬、たとえばフィナステリド(finasteride)、ツロステリド(turosteride)、LY−191704およびMK−306;
コルチコステロイド類、たとえばベタメタゾン(betamethasone)、吉草酸ベタメタゾン、コルチゾン(cortisone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、21−リン酸デキサメタゾン、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、フルメタゾン(flumethasone)、フルオシノニド(fluocinonide)、フルオシノニドデソニド(fluocinonide desonide)、フルオシノロン(fluocinolone)、フルオシノロンアセトニド(fluocinolone acetonide)、フルオコルトロン(fluocortolone)、ハルシノニド(halcinonide)、ハロプレドン(halopredone)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、17−吉草酸ヒドロコルチゾン、17−酪酸ヒドロコルチゾン、21−酢酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylprednisolone)、プレドニゾロン(prednisolone)、21−リン酸プレドニゾロン、プレドニゾン(prednisone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide);
ステロイド系抗炎症薬の他の例、たとえばコルトドキソン(cortodoxone)、フルドロルアセトニド(fludroracetonide)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、二酢酸ジフルオルゾン(difluorsone diacetate)、フルランドレノロンアセトニド(flurandrenolone acetonide)、メドリゾン(medrysone)、アムシナフェル(amcinafel)、アムシナフィド(amcinafide)、ベタメタゾンおよびそれの他のエステル、クロロプレドニゾン(chloroprednisone)、クロルコルテロン(clorcortelone)、デスシノロン(descinolone)、デソニド(desonide)、ジクロリゾン(dichlorisone)、ジフルプレドネート(difluprednate)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン(flumethasone)、フルニソリド(flunisolide)、フルコルトロン(flucortolone)、フルオロメタロン(fluoromethalone)、フルペロロン(fluperolone)、フルプレドニゾロン(fluprednisolone)、メプレニドゾン(meprednisone)、メチルメプレニドニゾロン(methylmeprednisolone)、パラメタゾン(paramethasone)、酢酸コルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、コルトドキソン(cortodoxone)、フルセトニド(flucetonide)、酢酸フルドロコルチゾン(fludrocortisone acetate)、フルランドレノロンアセトニド(flurandrenolone acetonide)、メドリゾン(medrysone)、アインシナファル(aincinafal)、アムシナフィド(amcinafide)、ベタメタゾン(betamethasone)、安息香酸ベタメタゾン、酢酸クロロプレドニゾン(chloroprednisone acetate)、酢酸クロコルトロン(clocortolone acetate)、デスシノロンアセトニド(descinolone acetonide)、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、酢酸ジクロリゾン(dichlorisone acetate)、ジフルプレドネート(difluprednate)、フルクロニド(flucloronide)、ピバル酸フルメタゾン(flumethasone pivalate)、酢酸フルニソリド(flunisolide acetate)、酢酸フルペロロン(fluperolone acetate)、吉草酸フルプレドニゾロン(fluprednisolone valerate)、酢酸パラメタゾン(paramethasone acetate)、プレドニゾラメート(prednisolamate)、プレドニバル(prednival)、トリアムシノロンヘキサアセトニド(triamcinolone hexacetonide)、コルチバソール(cortivazol)、ホルモコルタル(formocortal)およびニバゾール(nivazol);
下垂体ホルモンおよびそれらの活性誘導体または類似体、たとえばコルチコトロフィン(corticotrophin)、チロトロピン(thyrotropin)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)および性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH);
血糖降下薬、たとえばインスリン、クロルプロパミド(chlorpropamide)、グリベンクラミド(glibenclamide)、グリクラジド(gliclazide)、グリピジド(glipizide)、トラザミド(tolazamide)、トルブタミド(tolbutamide)およびメトホルミン(metformin);
甲状腺ホルモン薬、たとえばカルシトニン(calcitonin)、チロキシン(thyroxine)およびリオチロニン(liothyronine)、ならびに抗甲状腺薬、たとえばカルビマゾール(carbimazole)およびプロピルチオウラシル(propylthiouracil);
他の各種ホルモン薬、たとえばオクトレオチド(octreotide);
下垂体阻害薬、たとえばブロモクリプチン(bromocriptine);
排卵誘発薬、たとえばクロミフェン(clomiphene);
利尿薬、たとえばチアジド類、関連利尿薬およびループ利尿薬、ベンドロフルアジド(bendrofluazide)、クロロチアジド(chlorothiazide)、クロルタリドン(chlorthalidone)、ドーパミン、シクロペンチアジド(cyclopenthiazide)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、インダパミド(indapamide)、メフルシド(mefruside)、メチコルチアジド(methycholthiazide)、メトラゾン(metolazone)、キネタゾン(quinethazone)、ブメタニド(bumetanide)、エタクリン酸(ethacrynic acid)およびフルセミド(frusemide)ならびにカリウム保持性利尿薬、スピロノラクトン(spironolactone)、アミロリド(amiloride)およびトリアムテレン(triamterene);
抗利尿薬、たとえばデスモプレシン(desmopressin)、リプレシン(lypressin)およびバソプレッシン(vasopressin);それらの活性誘導体または類似体を含む;
産科薬:子宮に作用する薬剤を含む:たとえばエルゴメトリン(ergometrine)、オキシトシン(oxytocin)およびゲメプロスト(gemeprost);
プロスタグランジン薬、たとえばアルプロスタジル(alprostadil(PGE1))、プロスタサイクリン(prostacyclin(PGI2))、ジノプロスト(dinoprost(プロスタグランジンF2−アルファ))およびミソプロストール(misoprostol);
抗微生物薬:セファロスポリン類を含む:たとえばセファレキシン(cephalexin)、セフォキシチン(cefoxytin)およびセファロチン(cephalothin);
ペニシリン類、たとえばアモキシシリン(amoxycillin)、クラブラン酸(clavulanic acid)含有アモキシシリン、アンピシリン(ampicillin)、ベカンピシリン(bacampicillin)、ベンザチンペニシリン(benzathine penicillin)、ベンジルペニシリン(benzylpenicillin)、カルベニシリン(carbenicillin)、クロキサシリン(cloxacillin)、メチシリン(methicillin)、フェネチシリン(phenethicillin)、フェノキシメチルペニシリン(phenoxymethylpenicillin)、フルクロキサシリン(flucloxacillin)、メジオシリン(meziocillin)、ピペラシリン(piperacillin)、チカルシリン(ticarcillin)およびアズロシリン(azlocillin);
テトラサイクリン類、たとえばミノマイシン(minocycline)、クロルテトラサイクリン(chlortetracycline)、テトラサイクリン(tetracycline)、デメクロサイクリン(demeclocycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、メタサイクリン(methacycline)およびオルシテトラサイクリン(oxytetracycline)、ならびに他のテトラサイクリン系抗生物質;
アミノグリコシド類、たとえばアミカシン(amikacin)、ゲンタマイシン(gentamicin)、カナマイシン(kanamycin)、ネオマイシン(neomycin)、メチルマイシン(netilmicin)およびトブラマイシン(tobramycin);
抗真菌薬、たとえばアモロルフィン(amorolfine)、イソコナゾール(isoconazole)、クロトリマゾール(clotrimazole)、エコナゾール(econazole)、ミコナゾール(miconazole)、ナイスタチン(nystatin)、テルビナフィン(terbinafine)、ビフォナゾール(bifonazole)、アンホテリシン(amphotericin)、グリセオフルビン(griseofulvin)、ケトコナゾール(ketoconazole)、フルコナゾール(fluconazole)およびフルシトシン(flucytosine)、サリチル酸、フェザチオン(fezatione)、チクラトン(ticlatone)、トルナフテート(tolnaftate)、トリアセチン(triacetin)、亜鉛、ピリチオン(pyrithione)およびピリチオンナトリウム;
キノロン類、たとえばナリジクス酸(nalidixic acid)、シノキサシン(cinoxacin)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、エノキサシン(enoxacin)およびノルフロキサシン(norfloxacin);
スルホンアミド類、たとえばフタリスルフチアゾール(phthalysulphthiazole)、スルファドキシン(sulfadoxine)、スルファジアジン(sulphadiazine)、スルファメチゾール(sulphamethizole)およびスルファメトキサゾール(sulphamethoxazole);
スルホン類、たとえばダプソン(dapsone);
他の各種抗生物質、たとえばクロラムフェニコール(chloramphenicol)、クリンダマイシン(clindamycin)、エリスロマイシン(erythromycin)、エリスロマイシンエチルカーボネート、エストール酸エリスロマイシン(erythromycin estolate)、グルセプト酸エリスロマイシン(erythromycin glucepate)、エチルコハク酸エリスロマイシン(erythromycin ethylsuccinate)、ラクトビオン酸エリスロマイシン(erythromycin lactobionate)、ロキシスロマイシン(roxithromycin)、リノマイシン(lincomycin)、ナタマイシン(natamycin)、ニトロフラントイン(nitrofurantoin)、スペクチノマイシン(spectinomycin)、バンコマイシン(vancomycin)、アズトレオネイン(aztreonain)、コリスチンIV(colistin IV)、メトロニダゾール(metronidazole)、チニダゾール(tinidazole)、フシジン酸(fusidic acid)、トリメトプリム(trimethoprim)、および2−チオピリジンN−オキシド;ハロゲン化合物、特にヨウ素およびヨウ素化合物、たとえばヨウ素−PVP複合体およびジヨードヒドロキシキン(diiodohydroxyquin)、ヘキサクロロフェン(hexachlorophene);クロルヘキシジン(chlorhexidine);クロロアミン化合物;ならびに過酸化ベンゾイル;
抗結核薬、たとえばエタンブトール(ethambutol)、イソニアジド(isoniazid)、ピラジンアミド(pyrazinamide)、リファンピシン(rifampicin)およびクロファジミン(clofazimine);
抗マラリア薬、たとえばプリマキン(primaquine)、ピリメタミン(pyrimethamine)、クロロキン(chloroquine)、ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)、キニーネ(quinine)、メフロキン(mefloquine)およびハロファントリン(halofantrine);
抗ウイルス薬、たとえばアシクロビル(acyclovir)およびアシクロビルプロドラッグ、ファムシクロビル(famcyclovir)、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、スタブジン(stavudine)、ラミブジン(lamivudine)、ザルシタビン(zalcitabine)、サキナビル(saquinavir)、インジナビル(indinavir)、リトナビル(ritonavir)、n−ドコサノール(n-docosanol)、トロマンタジン(tromantadine)およびイドクスウリジン(idoxuridine);
駆虫薬、たとえばメベンダゾール(mebendazole)、チアベンダゾール(thiabendazole)、ニクロサミド(niclosamide)、プラジカンテル(praziquantel)、エンボン酸ピランテル(pyrantel embonate)およびジエチルカルバマジン(diethylcarbamazine);
細胞毒、たとえばプリカイナイシン(plicainycin)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、ダカルバジン(dacarbazine)、フルオロウラシル(fluorouracil)およびそのプロドラッグ(たとえばInternational Journal of Pharmaceutics 111, 223-233 (1994)に記載)、メトトレキセート(methotrexate)、プロカルバジン(procarbazine)、6−メルカプトプリンならびにムコフェノール酸(mucophenolic acid);
食欲抑制薬および体重減少薬:デクスフェンフルラミン(dexfenfluramine)、フェンフルラミン(fenfluramine)、ジエチルプロピオン(diethylpropion)、マジンドール(mazindol)およびフェンタルミン(phentermine)を含む;
高カルシウム血症に用いる薬剤、たとえばカルシトリオール(calcitriol)、ジヒドロタキステロール(dihydrotachysterol)、およびそれらの活性誘導体または類似体;
鎮咳薬、たとえばエチルモルヒネ(ethylmorphine)、デキストロメトルファン(dextromethorphan)およびホルコジン(pholcodine);
去痰薬、たとえばカルボルシステイン(carbolcysteine)、ブロムヘキシン(bromhexine)、エメチン(emetine)、クアニフェシン(quanifesin)、イペカックアナ(ipecacuanha)およびサポニン類;
うっ血除去薬、たとえばフェニレフリン(phenylephrine)、フェニルプロパノールアミン(phenylpropanolamine)およびプソイドエフェドリン(pseudoephedrine);
気管支攣縮弛緩薬、たとえばエフェドリン(ephedrine)、フェノテロール(fenoterol)、オルシプレナリン(orciprenaline)、リミテロール(rimiterol)、スルブタモール(salbutamol)、クロモグリク酸ナトリウム(sodium cromoglycate)、クロモグリク酸およびそのプロドラッグ(たとえばInternational Journal of Pharmaceutics 7, 63-75 (1980)に記載)、テルブタリン(terbutaline)、イプラトロピウム臭化物(ipratropium bromide)、サルメテロール(salmeterol)ならびにテオフィリン(theophylline)およびテオフィリン誘導体;
抗ヒスタミン薬、たとえばメクロジン(meclozine)、サイクリジン(cyclizine)、クロルサイクリジン(chlorcyclizine)、ヒドロキシジン(hydroxyzine)、ブロムフェニラミン(brompheniramine)、クロルフェニラミン(chlorpheniramine)、クレマスチン(clemastine)、シプロヘプタジン(cyproheptadine)、デクスクロルフェニラミン(dexchlorpheniramine)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、ジフェニルアミン(diphenylamine)、ドキシラミン(doxylamine)、メブヒドロリン(mebhydrolin)、フェニラミン(pheniramine)、トリポリジン(tripolidine)、アザタジン(azatadine)、ジフェニルピラリン(diphenylpyraline)、メトジラジン(methdilazine)、テルフェナジン(terfenadine)、アステミゾール(astemizole)、ロラチジン(loratidine)およびセトリジン(cetirizine);
局所麻酔薬、たとえばブピバカイン(bupivacaine)、アメトカイン(amethocaine)、リグノカイン(lignocaine)、リドカイン(lidocaine)、シンコカイン(cinchocaine)、ジブカイン(dibucaine)、メピバカイン(mepivacaine)、プリロカイン(prilocaine)、エチドカイン(etidocaine)、ベラトリジン(veratridine(特異的c−線維遮断薬))およびプロカイン(procaine);
皮膚バリヤー修復改善のための角質層脂質、たとえばセラミド類、コレステロールおよび遊離脂肪酸[Man, et al. J. Invest. Dermatol., 106(5), 1096, (1996)];
神経筋遮断薬、たとえばスキサメトニウム(suxamethonium)、アルクロニウム(alcuronium)、パンクロニウム(pancuronium)、アトラクリウム(atracurium)、ガラミン(gallamine)、ツボクラリン(tubocurarine)およびベクロニウム(vecuronium);
禁煙薬、たとえばニコチン、ブプロピオン(bupropion)およびイボゲイン(ibogaine);
局所適用に適切な殺昆虫薬および他の殺虫薬;
外皮用薬、たとえばビタミンA、C、B1、B2、B6、B12aおよびE、ビタミンE酢酸エステルおよびビタミンEソルビン酸エステル;
脱感作用アレルゲン、たとえばハウス、ダストまたはダニのアレルゲン;
栄養剤、たとえばビタミン、必須アミノ酸および脂肪;
角質溶解薬、たとえばアルファ−ヒドロキシ酸類、グリコール酸およびサリチル酸。
【0054】
本発明の制御放出組成物は、高分子薬理活性物質、たとえばタンパク質、酵素、ペプチド、多糖類、核酸、細胞、組織などの封入/取込みのために特に有利である。これらの高分子薬剤のうちあるものは有機溶剤、体液中に存在するある成分、または室温よりかなり高い温度に曝露された際に変性しやすいため、制御放出組成物中への高分子医薬の固定化は困難な可能性がある。しかし、本発明の方法およびこの方法で調製した制御放出組成物は生体適合性溶剤、たとえば水、DMSOまたはエタノールを使用し、さらに加熱を必要としないので、これらのタイプの物質が変性するリスクは低くなる。さらに、これらの高分子医薬のサイズのため、これらの薬剤は制御放出組成物を埋め込んだ際に形成されるヒドロゲル内に捕捉され、これにより他の場合にはそれらを変性させる体液の成分から保護される。したがって、本発明の制御放出デバイスはこれらの高分子薬剤がそれらの療法効果を発揮するのを可能にし、一方ではなお高分子薬剤を変性または他の構造分解から保護する。
【0055】
本発明の薬物送達デバイスにおいて医薬/薬理活性物質として使用できる細胞の例には、初代培養物、およびトランスフォームした細胞を含めた樹立細胞系が含まれる。これらの例には膵島細胞、ヒト包皮線維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、膵島細胞腫ベータ細胞、リンパ芽球性白血病細胞、マウス3T3線維芽細胞、ドーパミン分泌性の腹側中脳細胞(ventral mesencephalon cell)、神経芽様細胞、副腎髄質細胞、T細胞、これらの細胞の組合わせなどが含まれるが、これらに限定されない。この部分リストから分かるように、皮膚、神経、血液、臓器、筋肉、腺、生殖系および免疫系の細胞を含めたあらゆるタイプの細胞、ならびにあらゆる種に由来する細胞をこの方法によって効果的に封入できる。
【0056】
より好ましい態様において、前記の医薬は療法用タンパク質である。本発明の薬物送達デバイスに取り込ませることができるタンパク質の例には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ヘモグロビン、バソプレッシン、オキシトシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮増殖因子、プロラクチン、ルリベリンまたは黄体形成ホルモン放出因子、ヒト成長因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血管形成増殖因子、血管内皮増殖因子、骨形態形成増殖因子、神経増殖因子など;インターロイキン、酵素、たとえばアデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、キサンチンオキシダーゼなど;酵素系;血液凝固因子;凝血阻害物質または凝血溶解物質、たとえばストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲンアクチベーター;免疫化のための抗原;ホルモン;多糖類、たとえばヘパリン;オリゴヌクレオチド;細菌、およびウイルスを含めた他の微生物性微生物;モノクローナル抗体;ビタミン;補因子;遺伝子療法のためのレトロウイルス;これらの組合わせなど。
【0057】
組換えゼラチンをベースとする制御放出組成物を医薬としての療法用タンパク質と組み合わせて使用することは、本発明のきわめて有用な態様である。原則としてあらゆる組換えゼラチンを、使用する療法用タンパク質に適合するように遺伝子修飾することができる;たとえば特定の電荷を組換えゼラチンに導入することにより、使用する療法用タンパク質の制御放出組成物に対する結合を強化する。あらゆる療法用タンパク質について、適切な環境を作り出すことができる。
【0058】
本明細書に記載する方法、すなわち組換えゼラチンおよび医薬を含む溶液を調製し、そして組換えゼラチンを(化学)架橋させて三次元網状構造体を得る工程を含む制御放出組成物の調製方法は、少なくとも1種類/タイプの組換えゼラチンを用いて実施できるが、少なくとも2種類/タイプの組換えゼラチン(好ましくは異なる特性をもつもの)を用いて実施することもできる。さらに、組換えゼラチンと少なくとも1種類の水溶性ポリマー(好ましくは生分解性、潜在的に架橋性であり、組換えゼラチンではない)の組合わせも可能である。前記の本発明の範囲を限定することなく、これらの生分解性ポリマーは天然もしくは合成であってもよく、または組換え法により作成されてもよい。例はデキストラン、ヒアルロン酸、ポリ−乳酸、ポリ−グリコール酸、またはそれらのコポリマー、キチン、キトサン、アルギネート、ポリエステルなどである。さらに他の適切なポリマーはUS 2004/0235161、2頁に開示されている。架橋剤の量も少なくとも1、または少なくとも2から2を超えるまで(たとえば3または4)変更できる。
【0059】
さらに、調製過程での佐剤、たとえば緩衝剤、塩類、界面活性剤、保湿剤および共溶媒の添加も採用できる。
使用する医薬の量および種類も変更できる;たとえば少なくとも2種類の療法用タンパク質の使用または療法用タンパク質と抗生物質の併用。
【0060】
本発明の他の態様は、少なくとも化学架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む制御放出組成物である。そのような制御放出組成物は、たとえば本明細書に記載する方法により得ることができる。
【0061】
好ましい態様において、本発明は少なくとも化学架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む制御放出組成物を提供し、その際、組換えゼラチンはヒトまたはヒト様のものである。ヒトまたはヒト様の組換えゼラチンを用いることにより、動物疾患(たとえば、ウシ由来のプリオン病)のリスクがなく、免疫原応答のリスクもない(天然コラーゲンと対照的に)。
【0062】
ヒト様ゼラチンは、ヒトコラーゲン中のゼラチンのアミノ酸配列と少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%同一であるものと定義される。組換えによるヒトまたはヒト様ゼラチンを調製するための出発点は、たとえばヒトCol1A1配列である。しかし、他のヒトコラーゲン配列を最初に用いることも可能である。組換えヒトゼラチンは、本明細書において、ヒトのアミノ酸配列、ヒトゼラチンと等しいグリコシル化レベル、およびヒトゼラチンと等しいヒドロキシル化レベルをもつゼラチンと定義される。ヒト様ゼラチンは、タンパク質のアミノ酸配列中の1以上の変異、内因性ヒトレベルと比較して変化したレベルのグリコシル化(組換えゼラチンの免疫原性を低下させるために、好ましくは低下している)、および/または内因性ヒトレベルと比較して変化したレベルのリジンおよび/またはプロリン残基のヒドロキシル化をもつ組換えゼラチンを表わす。哺乳動物様は、対応する用語であって、哺乳動物由来のゼラチンに関するものである。
【0063】
化学架橋した組換えゼラチンは、たとえば組換えゼラチンを架橋性の基で化学修飾することにより得られる;すなわち本発明は、少なくとも化学架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む制御放出組成物を提供し、その際、組換えゼラチンは架橋性の基で化学修飾されている。好ましくは架橋性の基はアクリレートの群から選択され、よりさらに好ましくは架橋性の基はメタクリレートである。さらに他の態様において、化学架橋した組換えゼラチンは水に溶解性のカルボジイミド、不溶性のカルボジイミド、ホルムアルデヒド、ジ−アルデヒドおよびジ−イソシアネートから選択される化学架橋剤を用いて得られる。
【0064】
本明細書に記載する制御放出組成物は、続いて医薬組成物の調製に使用できる。したがって、さらに他の態様において本発明は制御放出組成物を含む医薬組成物を提供し、その際、制御放出組成物は少なくとも化学架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む。そのような医薬組成物は、さらに佐剤または希釈剤を含むことができる。適切な医薬組成物の例は、注射用配合物、皮下送達デポ剤、包帯、またはインプラント(ゲルまたは成形ゲル)である。注射用配合物の例は、EP 1 801 122に記載されるように1〜500μmの(マトリックス)粒子を含む配合物である。
【0065】
本明細書に記載する制御放出組成物は、医療用品の製造にも使用でき、したがって本発明は制御放出組成物を含む医療用品をも提供し、その際、制御放出組成物は少なくとも化学架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む。適切な用品の例は、インプラント、たとえばステントまたは人工血管移植片、骨インプラント、または不溶性薬物粒子、創傷包帯、皮膚移植片である。
【0066】
本発明による医薬組成物は、いずれかの経路により、すなわち注射(たとえば皮下、静脈内または筋肉内)、または外科的埋込み、経口、吸入、または外部創傷包帯もしくは経皮により投与できる。
【0067】
本発明に開示するように、組換えゼラチンは制御放出に適切な網状構造体の製造にきわめて有用である。さらに他の態様において、本発明は制御放出組成物の調製のための組換えゼラチンの使用を提供する。
【0068】
本発明はさらに、その必要がある対象を処置する方法であって、対象に有効量の制御放出組成物、すなわち少なくとも化学架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む制御放出組成物を付与することを含む方法を提供する。制御放出系の使用がより効果的となりうる処置は、たとえば痛みの処置、癌療法、心血管疾患、心筋修復、血管形成、骨の修復および再生、創傷の処置、神経刺激/療法、糖尿病などである。制御放出組成物は、注射(皮下、静脈内または筋肉内)もしくは経口により、または吸入により投与できる。しかし、使用する制御放出組成物を外科処置により埋込むこともできる。さらに他の適切な投与経路は外部創傷包帯、またはさらには経皮によるものである。
【0069】
本発明はさらに、痛みの処置、癌療法、心血管疾患、心筋修復、血管形成、骨の修復および再生、創傷の処置、神経刺激/療法または糖尿病に用いる医薬の調製のための、本明細書に記載する制御放出組成物の使用を提供する。
【0070】
本発明を以下の限定ではない例においてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0071】
本発明においては、組換えゼラチンをタンパク質の制御放出のためのヒドロゲルの製造に用いた。1態様においては、メタクリレート残基を組換えゼラチンに結合させて化学架橋を可能にした。メタクリル化ゼラチンをH−NMRにより分析して置換度(DS)を判定し、SDS−PAGEにより分析して純度を判定した。さらに、ゼラチン溶液をマトリックスメタロプロテイナーゼ1および9の存在下でインキュベートすることにより、酵素分解性を試験した。ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を開始剤として用いるラジカル重合によりヒドロゲルを形成した。EP 1 801 122の記載の方法により得られたゼラチンマイクロスフェアもコラゲナーゼによる生分解を行なった。
【0072】
組換えゼラチンヒドロゲルからのモデル‘療法用’タンパク質リゾチームの放出を調べた。放出されたタンパク質の化学的安定性をHPLCにより判定し、タンパク質の機能を酵素活性の測定により評価した。
【0073】
材料および方法
組換えHU4ゼラチン(MW 72.6kDa)およびCBE(17.2kDa)を用いた。これらの組換えゼラチンの製造は他に記載されている(EP−A−1398324、EP−A−0926543およびEP−A−1014176)。図1はHU4ゼラチンのアミノ酸配列を示す。反復ブロックのアミノ酸配列は、ヒトI型コラーゲンのa1鎖の部分に相当する。図2は組換えゼラチンCBEのアミノ酸配列を示す。この配列はヒトI型コラーゲンを基礎とし、増加した数のRGDモチーフを含む。さらにまた酸処理、加水分解したブタのゼラチン(平均MW 26kDa,多分散度D 1.6,DGF Stoess、および加水分解、アルカリ処理したウシゼラチン(平均MW 23kDa,多分散度D 1.6,Nitta)を用いた。分子量および多分散度は、GPCによりTSKgel superSW3000および2000カラムを、溶離剤としての10mM NaSO、1% SDS、pH5.3と共に用いて測定された。
【0074】
無水メタクリル酸(MA−Anh)はSigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入された。ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)はMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から入手した。20mg/mlのKPSを含むストック溶液をpH7.4の等張リン酸緩衝液で調製し、エッペンドルフ試験管に分注し、−20℃に保存した。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)はFluka(スイス、ブーフス)から入手した。20%(v/v)のTEMEDを含むストック溶液をpH7.4の等張リン酸緩衝液中に調製し、エッペンドルフ試験管に分注し、−20℃に保存した。鶏卵リゾチームはFluka(スイス、ブーフス)から入手した。10mg/mlのリゾチームを含む原液をpH7.4の等張リン酸緩衝液中に調製し、0.2mmのHPLCフィルター(Alltech、イリノイ州ディーアフィールド)により濾過し、低結合性エッペンドルフ試験管(Eppendorf、ドイツ、ハンブルグ)に分注し、−20℃に保存した。原液のタンパク質濃度を280nmでのUV吸収により測定した(e280リゾチーム=37000M−1.cm−1)。生理的リン酸緩衝液は、0.76mg/mlのNaH2PO4×H2O、0.79mg/mlのNa2HPO4、および0.06mg/mlのNaClを溶解し、NaOH溶液でpHを7.4に調整し、この緩衝液を0.2mmのフィルター(Schleicher und Schuell、ドイツ、ダッセル)で濾過することにより調製された。4−アミノフェノール水銀アセテート(APMA)およびヒト線維芽細胞マトリックスメタロプロテイナーゼ1および9(MMP1およびMMP9)はSigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手された。
【0075】
A)(組換え)ゼラチンのメタクリル化
組換えゼラチンHU4およびCBE、酸処理したブタゼラチン(PBから入手)およびアルカリ処理したウシゼラチン(Nittaから入手)を下記に従ってメタクリレート残基で誘導体化した。2.5gのゼラチンを200mlのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した。溶液を窒素雰囲気下で50℃に加熱し、無水メタクリル酸(MA−Anh)を添加した。種々の置換度を達成するために、MA−Anh:ゼラチン比を変化させた。メタクリル化反応中に溶液のpHを定期的に制御し、必要であれば1M NaOH溶液の添加により7〜7.4に維持した。50℃で1時間激しく撹拌した後、溶液を水に対して十分に透析した(透析チューブ:14kDa MWCO Medicell International、英国ロンドン)。凍結乾燥により乾燥生成物が得られ、これを密閉ガラス容器内に4℃で保存した。
【0076】
B)置換度(DS)の測定
置換度(DS)、すなわち組換えゼラチンの第一級アミノ基の総数に対するメタクリル化アミノ酸の画分をH−NMRにより測定した。300MHzで作動するGemini分光計(Varian Associates,Inc. NMR Instruments、カリフォルニア州パロアルト)により測定を行なった。40mg/mlのゼラチンを重水に溶解することにより試料を調製した。62.5°のパルスおよび2秒間の緩和遅れ(relaxation delay)を用いて40のスキャンを累積した。フェニルアラニンの信号を積算し、それの面積をゼラチン分子の既知のフェニルアラニンプロトン数で割ることにより、1個のプロトンの面積が得られた。2つのメタクリレート信号の総面積を1個のプロトンの面積で割ることにより、それらのメタクリレート信号を構成するプロトンの数が得られた。この値を2で割ったものがゼラチン鎖当たりのメタクリレート残基の平均数に相当し、DSの計算が可能になった。
【0077】
C)ヒドロゲルの調製
初期ゼラチン濃度20%(w/w)のヒドロゲルを調製した。0.05%のNaNを含有するリン酸緩衝液(pH7.4)にメタクリル化ゼラチンを溶解し、溶液を遠心分離した(5分間、10000RPM)。遠心分離した時点で596mgのゼラチン溶液をエッペンドルフ試験管に充填し、75マイクロリットルのリン酸緩衝液、pH7.4(または放出実験用のリゾチーム・ストック溶液)を添加し、穏やかに混合した。KPS 20mg/mlストック溶液(56.5マイクロリットル)およびTEMED 20%ストック溶液(22.5マイクロリットル)を添加し、混合してゼラチンメタクリレート残基の架橋を誘発した。この溶液を1mlの注射器(Becton−Dickinson、ニュージャージー州フランクリン・レイク)に充填した。1.5時間後、注射器を開いてヒドロゲルを取り出し、これを長さ6mmおよび半径2.3mmの円筒に切断した。
【0078】
D)リゾチーム放出実験および活性測定
タンパク質を装填したヒドロゲル円筒を、3mlのリン酸緩衝液(pH7.4、0.05%のNaNを含有)を収容したガラスバイアルに入れた。バイアルを37℃の振とう水浴内に保存した。種々の時点で1mlのリン酸緩衝液をサンプリングし、低結合性エッペンドルフ試験管に充填し、分析するまで−20℃に保存した。取り出した容量の代わりに新鮮なリン酸緩衝液を入れた。試料をHPLCによりAlltima C18 RP−HPLCカラム(Alltech、イリノイ州ディーアフィールド)で分析した。注入容量は40マイクロリットルであった。70%の溶離剤A(10%のアセトニトリル、90%の水、0.1%のトリフルオロ酢酸)および30%の溶離剤B(90%のアセトニトリル、10%の水、0.1%のトリフルオロ酢酸)の出発混合物を55%の溶離剤Aおよび45%の溶離剤Bまで変化させる直線勾配を15分間で実施した。1分で出発溶離剤組成に戻した。280nmでのUV吸収により検出を行ない、タンパク質ストック溶液から調製した標準品を用いてHPLC信号の曲線下面積(AUC)によりタンパク質濃度を判定した。
【0079】
リゾチームを用いた放出実験からの試料を酵素活性アッセイによっても分析した。50マイクロリットルの試料を、リン酸緩衝液(pH6.2)中の0.2mg/mlミクロコッカス−ルテウス(M.luteus)懸濁液1.3mlを収容したキュベットに添加した。リゾチームによるミクロコッカス−ルテウスの溶解により懸濁液の光学濃度(OD)が直線的に低下し、これを450nmで分光光度計(Lambda 2、Perkin Elmer、マサチュセッツ州ウェレスリー)により検出した。リゾチーム・ストック溶液から調製した標準品を用いて、酵素活性リゾチームの濃度を経時的なOD低下の傾きから判定した。
【0080】
E)ゼラチンおよびヒドロゲルの酵素生分解
MMP1/MMP9
組換えゼラチンがマトリックスメタロプロテイナーゼ1および9(MMP1およびMMP9)に対する基質として作用する能力を、酵素の存在下でゼラチン溶液をインキュベートすることにより試験した。インキュベーション前にMMP類(2.5mg/ml)を、37℃で、0.05M TRIS緩衝液、pH7.4[0.15MのNaCl、1mMの4−アミノフェノール水銀アセテート(APMA)、0.01MのCaClおよび0.001mMのZnClを含有]中において5時間、活性化した。同じTRIS緩衝液を用いて、4mg/mlのゼラチンを含有する溶液を調製した。活性化したMMP1またはMMP9をゼラチン溶液に添加して、酵素濃度を2mg/mlに、ゼラチン濃度を0.8mg/mlにした。溶液を37℃で6日間インキュベートし、種々の時点で試料を取り出した。5日後、新鮮なMMP溶液を添加して、最終日のインキュベーションにつき総酵素濃度2.2mg/mlおよびゼラチン濃度0.44mg/mlを得た。すべての試料を希釈してゼラチン濃度を0.44mg/mlにし、Superdex 200カラム(GE Healthcare Europe GmBH、オランダ、ルーゼンダール)を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析するまで−20℃に保持した。pH7.4の等張リン酸緩衝液を希釈剤として用いた。20マイクロリットルの試料を注入し、流速は0.4ml/分であった。210nmにおけるUV吸収により検出を行なった。
【0081】
CHC
クロストリジウム−ヒストリチカム(clostridium histolyticum)コラゲナーゼ(CHC)による組換えゼラチンヒドロゲル粒子の分解。EDCにより架橋した約100μmの組換えゼラチンヒドロゲル球体の懸濁液(EP 1 801 122に記載された方法により得た)をCHCにより処理した。24時間後、残留する組換えゼラチン粒子の存在を目視観察した。
【0082】
結果
前記に従って実施した放出実験の結果を表Iにまとめる。
【0083】
【表1】

【0084】
表Iの結果は、組換えゼラチンの使用によって放出リゾチームの活性がより高くなったことを明らかに示す。したがって本発明は、制御放出組成物中の医薬(たとえば療法用タンパク質)の活性を増強する方法であって、組換えゼラチンを用いて制御放出組成物を調製することを含む方法をも提供する。前記の組換えゼラチンおよびそれから調製したヒドロゲルの純粋かつ均一な性質により三次元網状構造が保存され、したがってモデルタンパク質リゾチームの酵素活性がきわめて良好に保存されることは明らかである。さらに、メタクリレート残基の架橋は放出されたリゾチームに有害な影響をもたないと結論できる。
【0085】
表I中に証明されている本発明の他の観点は、組換えゼラチンの場合は放出されたリゾチームの量がより多いことである。組換えゼラチンヒドロゲルは均質であるためヒドロゲル中に捕捉されるタンパク質がほとんど無く、これに対し幅広い分子量分布をもつ天然ゼラチンの場合はヒドロゲル中に高密度領域が存在し、この中にこれらのタンパク質が捕捉されると推測される。
【0086】
種々の置換度(DS)をもつHU4のMMP−1およびMMP−9によるインビトロ生分解性試験の結果を表IIに示す。表IIIには(組換え)ゼラチン粒子のCHCによるインビトロ分解試験を示す。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
+は目視できる粒子が無いことを意味し、これは分解されたことの指標となる。
表IIおよびIII中の結果により、組換えゼラチンおよび天然ゼラチンは良好に生分解されることが明らかに説明される;これは、制御放出組成物に使用するための前提条件である。組換えゼラチンについては、その配列は既知の開裂部位を含まないので、これは意外な結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む、制御放出組成物の製造方法:
−組換えゼラチンおよび医薬を含む混合物を調製する;
−この混合物中の組換えゼラチンを架橋させて、内部に医薬が閉じ込められた三次元網状構造体を得る。
【請求項2】
得られた、内部に医薬が閉じ込められた三次元網状構造体を乾燥させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組換えゼラチンが哺乳動物のものまたは哺乳動物様のものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
組換えゼラチンが少なくとも0.05mmol/gのリジンまたはヒドロキシリジン基を含み、好ましくは組換えゼラチンが本質的にヒドロキシリジン架橋および/またはヒドロキシプロリン残基を含まない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
組換えゼラチンが架橋性の基で化学修飾されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
架橋性の基が、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン類、またはエテン性不飽和化合物、たとえばアクリレート類、メタクリレート類、ポリエン−ポリチオール類、ビニルエーテル類、ビニルアミド類、ビニルアミン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、アリルアミン類、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジエン類およびスチレン類の群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
架橋性の基が、アクリレート類およびメタクリレート類の群から選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
医薬が、治療、診断または予防効果を好ましくはインビボで提供することができる化学分子または生体分子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
医薬が療法用タンパク質である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
架橋したゼラチンがレドックス重合またはラジカル重合により得られる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
レドックス重合またはラジカル重合が、ペルオキソ二硫酸カリウムおよびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの混合物により開始される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化学架橋が、水に可溶性のカルボジイミド、不溶性のカルボジイミド、ホルムアルデヒド、ジ−アルデヒドおよびジ−イソシアネートの群から選択される化学架橋剤の使用により得られる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組換えゼラチンが約2.5〜約100kDの分子量を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも、化学架橋した組換えゼラチンおよび医薬を含む、制御放出組成物。
【請求項15】
組換えゼラチンが哺乳動物のものまたは哺乳動物様のものである、請求項14に記載の制御放出組成物。
【請求項16】
組換えゼラチンが少なくとも0.05mmol/gのリジンまたはヒドロキシリジン基を含み、好ましくは組換えゼラチンが本質的にヒドロキシリジン架橋を含まない、請求項14または15に記載の制御放出組成物。
【請求項17】
組換えゼラチンが架橋性の基で化学修飾されている、請求項14〜16のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項18】
架橋性の基が、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン類、またはエテン性不飽和化合物、たとえばアクリレート類、メタクリレート類、ポリエン−ポリチオール類、ビニルエーテル類、ビニルアミド類、ビニルアミン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、アリルアミン類、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジエン類およびスチレン類の群から選択される、請求項17に記載の制御放出組成物。
【請求項19】
架橋性の基が、アクリレート類およびメタクリレート類の群から選択される、請求項17または18に記載の制御放出組成物。
【請求項20】
架橋した組換えゼラチンが、可溶性のカルボジイミド、不溶性のカルボジイミド、ホルムアルデヒド、ジ−アルデヒドおよびジ−イソシアネートの群から選択される化学架橋剤の使用により得られる、請求項14〜19のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項21】
組換えゼラチンが約2.5〜約100kDの分子量を有する、請求項14〜20のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項22】
請求項14〜21のいずれか1項に記載の制御放出組成物を含む医薬組成物。
【請求項23】
注射用配合物、皮下送達デポ剤、包帯、またはインプラントである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項14〜21のいずれか1項に記載の制御放出組成物を含み、インプラント、骨インプラント、不溶性薬物粒子、創傷包帯または皮膚移植片である医療用品。
【請求項25】
制御放出組成物を調製するための、組換えゼラチンの使用。
【請求項26】
その必要がある対象を処置する方法であって、対象に有効量の請求項14〜21のいずれか1項に記載の制御放出組成物を付与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519253(P2010−519253A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550600(P2009−550600)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050105
【国際公開番号】WO2008/103045
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509077761)フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ (25)
【Fターム(参考)】