説明

組換え型ヒトインターロイキン−1を含む口腔ケア組成物

本発明は、組換え型ヒトインターロイキン−1を含む口腔ケア組成物ならびに口腔を良好な状態に保ち、口臭を減少させ、および/または歯周病を予防または治療する方法に関する。好ましくは、組換え型ヒトインターロイキン−1は、組換え型ヒトインターロイキン−1αまたはインターロイキン−1βである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、組換え型ヒトインターロイキン−1を含む口腔ケア組成物ならびに口腔を良好な状態に保ち、口臭を減少させ、および/または歯周病を予防または治療する方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
[0002]サイトカインのインターロイキン−1ファミリーには、いくつかの代表的なメンバーが存在する。それらのうち、インターロイキン−1αおよびインターロイキン−1βは、当該技術分野でよく知られているアミノ酸配列を有する主な2つのアイソフォームである。それらのうち、インターロイキン−1αのみが、口腔粘膜上皮細胞によって構成的に合成および分泌されるポリペプチドである。Li J, Farthing PM, Ireland GW, Thornhill MH. IL-1 alpha and IL-6 production by oral and skin keratinocytes: similarities and differences in response to cytokine treatment in vitro(口腔および皮膚のケラチノサイトによるインターロイキン−1αおよびインターロイキン−6の産生:in vitroでのサイトカイン処理に対する応答の類似点および相違点). J Oral Pathol Med. 1996, 25(4): 157-62。一般に考えられているように、インターロイキン−1αは、口腔粘膜損傷または細菌感染後の修復過程の開始に重要な役割を担っている。
【0003】
[0003]口腔粘膜修復過程での積極的な役割だけではなく、インターロイキン−1は、歯周病発生の強力な病原因子であると考えられている。歯周病は、細菌感染によって引き起こされ、結合組織および骨などの歯を支持する組織の炎症性破壊を特徴とする。歯周の病原性細菌は、インターロイキン−1の上昇したレベルを誘発する。歯肉溝滲出液中のインターロイキン−1濃度は歯周炎になると上昇し、治療後に減少する。Masada MP, Persson R, Kenney JS, Lee SW, Page RC, Allison AC. Measurement of interleukin-1 alpha and -1 beta in gingival crevicular fluid: implications for the pathogenesis of periodontal disease(歯肉溝滲出液中のインターロイキン−1αおよびインターロイキン−1βの測定:歯周病の発生との関連). J Periodontal Res 1990, 25:156-163。インターロイキン−1βの組織中濃度は、進行性歯周炎部位で上昇する。Stashenko P, Fujiyoshi P, Obernesser MS, Prostak L, Haffajee AD, Socransky SS (1991). Levels of interleukin 1 beta in tissue from sites of active periodontal disease(活動性歯周病部位からの組織中のインターロイキン1βの濃度). J Clin Periodontol 18:548-554。Figueredo CM, Ribeiro MS, Fischer RG, Gustafsson A. Increased interleukin-1 beta concentration in gingival crevicular fluid as a characteristic of periodontitis(歯周炎の特徴としての歯肉溝滲出液中のインターロイキン−1β濃度の上昇). J Periodontol 1999;70:1457-1463. Zhong Y, Slade GD, Beck JD, Offenbacher S. Gingival crevicular fluid interleukin-1 beta, prostaglandin E2 and periodontal status in a community population(地域集団における歯肉溝滲出液インターロイキン−1β、プロスタグランジンE2および歯周の状態). J Clin Periodontol 2007;34:285-293。口腔粘膜上皮の基底層でインターロイキン−1αを過剰発現させる遺伝子導入マウスの口腔微小環境におけるインターロイキン−1αの上昇したレベルは、歯周病の臨床的特徴の全てを媒介することができる。Dayan S, Stashenko P, Niederman R, Kupper TS. Oral epithelial overexpression of IL-1 alpha causes periodontal disease(口腔上皮でのインターロイキン−1αの過剰発現によって歯周病が引き起こされる). J Dent Res. 2004, 83(10):786-90。従って、インターロイキン−1は、歯周病の強力な病原因子であると考えられている。これまでのところ、当該技術分野では、歯周病の治療または予防のためのインターロイキン−1を含む口腔ケア組成物に関して公開も開示もされていない。
【0004】
[0004]口臭(悪臭呼気または臭い息としても知られている)は、重大な社会的および/または心理的問題である。口臭の最も一般的な原因は、歯肉炎および歯周炎を引き起こす微生物群である。McNamara TF, Alexander JF and Lee M, The role of microorganisms in the production of oral malodor(口臭の発生における微生物の役割). Oral Surg Oral Med Oral Pathol 34(1):41-8. 1972. Kostelc JG, Preti G et al. Oral odors in early experimental gingivitis(初期の実験的な歯肉炎における口臭). J Periodontal Res 19(3):303-12, 1984. Yaegaki K and Sanada K, Biochemical and clinical factors influencing oral malodor in periodontal patients(歯周病患者の口臭に影響を与える生化学的および臨床学的要因). J Periodontol 63(9):783-9, 1992。口腔内のアミノ酸、ペプチド類およびタンパク質は口腔内の細菌によって代謝され、悪臭を放つ揮発性化合物を形成する。そのような化合物の例としては、硫化水素、メチルメルカプタンおよび硫化ジメチル(含硫アミノ酸から形成される)、インドールおよびスカトール(トリプトファンから形成される)、カダベリンおよびプトレッシン(リシンおよびオルニチンから形成される)ならびに酪酸塩および吉草酸塩(他のアミノ酸から形成される)が挙げられる。従って、口臭の治療は、口腔内の細菌負荷の減少に焦点を当てることができる。Quirynen M, Zhao H, van Steenberghe D. Review of the treatment strategies for oral malodour(口臭に対する治療戦略の再検討). Clin Oral Invest. 2002, 6:1-10。これまでのところ、当該技術分野では、口臭の治療または予防のためのインターロイキン−1を含む口腔ケア組成物に関して公開も開示もされていない。
【0005】
[0005]医薬用途でのインターロイキン−1の使用が当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第4,816,436号は、インターロイキン−1αの関節内、筋肉内、静脈内もしくは腹腔内注射を用いた関節炎または炎症の治療過程を開示しており、米国特許第5,120,534号は、インターロイキン−1αまたはインターロイキン−1αのAsp36,Ser141誘導体を投与して血小板減少症を治療する方法を開示しており、米国特許第5,534,251号は、インターロイキン−1αのAsp36,Ser141誘導体を含む安定化された医薬組成物を開示しており、欧州特許第0391444号は、インターロイキン−1αを含み、かつ非経口的に投与可能な水性製剤を形成するのに適した医薬組成物を開示しており、国際公開第9116916号、日本特明第4018033号、欧州特許第0482213号およびスペイン特許第2121782T号は、インターロイキン−1とγインターフェロンとの組み合わせを含む抗腫瘍組成物を開示している。しかし、当該技術分野では、組換え型ヒトインターロイキン−1αおよびインターロイキン−βなどのインターロイキン−1を含む口腔ケア製品に関して公開も開示もされていない。
【0006】
[0006]ヒトインターロイキン−1は、天然のヒトポリペプチド類と同一の組換え型ポリペプチド類として、工業規模および好適な純度で調製することができる。Gubler U. et al. Recombinant human interleukin 1 alpha: purification and biological characterization(組換え型ヒトインターロイキン1α:精製および生物学的特性評価). J. Immunol. 1986, 136:2492-2497。米国特許6,268,180号は、組換え型ヒトインターロイキン−1αの調製方法を開示している。
【0007】
[0007]驚くべきことに、本発明者らは、組換え型ヒトインターロイキン−1の組成物は、口腔を良好な状態に保ち、悪臭を減少させ、ならびに歯周病を予防および治療するのに有用であることを見い出した。
【0008】
[0008]本発明の目的は、組換え型ヒトインターロイキン−1を含む口腔ケア組成物ならびに口腔を良好な状態に保ち、口臭を減少させ、および歯周病を予防または治療する方法を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0009]本発明は、組換え型ヒトインターロイキン−1および経口的に許容される担体を含む口腔ケア組成物を提供する。
[0010]本明細書で使用されている「組換え型ヒトインターロイキン−1」という用語は、例えば、宿主として大腸菌または酵母を使用する好適な組換え型タンパク質発現系を用いて発現されるポリペプチドを指す。組換え型ヒトインターロイキン−1の調製については、例えば、J. Immunol. 1986, 136(7):2429および米国特許第6,268,180号に記載されている。
【0010】
[0011]本発明の好ましい態様では、組換え型ヒトインターロイキン−1は、組換え型ヒトインターロイキン−1αまたは組換え型ヒトインターロイキン−1βである。
[0012]本明細書で使用されている「組換え型ヒトインターロイキン−1α」という用語は、例えば、宿主として大腸菌または酵母を使用する好適な組換え型タンパク質発現系を用いて発現され、そしてヒトインターロイキン−1αのアミノ酸配列を有するポリペプチド、その生物学的に活性な類似体またはその誘導体を指す。
【0011】
[0013]本明細書で使用されている「ヒトインターロイキン−1α」という用語は、例えば、UniProtデータベース番号P01583(http://www.uniprot.org/uniprot/P01583)に公開されている当該技術分野でよく知られているポリペプチドを指し、以下のアミノ酸配列を有する。
SAPFSFLSNVKYNFMRIIKYEFILNDALNQSIIRANDQYLTAAALHNLDEAVKFDMGAYKSSKDDAKITVILRISKTQLYVTAQDEDQPVLLKEMPEIPKTITGSETNLLFFWETHGTKNYFTSVAHPNLFIATKQDYWVCLAGGPPSITDFQILENQA
[0014]本明細書で使用されている「ヒトインターロイキン−1α類似体」という用語は、インターロイキン−1α類似体がヒトインターロイキン−1αのin vitroおよび/またはin vivoでの生物学的活性をなお保持するような部位に、ヒトインターロイキン−1αと比較して、複数の部位に1つ以上のアミノ酸置換、欠失、添加または再編成を含むインターロイキン−1αを指す。そのような類似体の例は、米国特許第6,268,180号および米国特許第5,120,534号に記載されている。
【0012】
[0015]本明細書で使用されている「ヒトインターロイキン−1α誘導体」という用語は、例えば、アセチル化、アシル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、リン酸化、ペグ化またはグリコシル化によって、1つ以上の構成アミノ酸の位置で化学的にあるいは酵素によって誘導体化され(側鎖修飾、骨格修飾およびNおよびC末端修飾を含む)、そしてインターロイキン−1αのin vivoでの生物学的活性を保持する、ヒトインターロイキン−1αおよびヒトインターロイキン−1α類似体を指す。ヒトインターロイキン−1α誘導体の例は、N6−ミリストイル−Lys11−インターロイキン−1αおよびヒスチジンタグ−インターロイキン−1αである。
【0013】
[0016]本明細書で使用されている「組換え型ヒトインターロイキン−1β」という用語は、例えば、宿主として大腸菌または酵母を使用する好適な組換え型タンパク質発現系を用いて発現され、そしてヒトインターロイキン−1βのアミノ酸配列を有するポリペプチド、その生物学的に活性な類似体またはその誘導体を指す。
【0014】
[0017]本明細書で使用されている「ヒトインターロイキン−1β」という用語は、例えば、UniProtデータベース番号P01584(http://www.uniprot.org/uniprot/P01584)に公開されている当該技術分野でよく知られているポリペプチドを指し、以下のアミノ酸配列を有する。
APVRSLNCTLRDSQQKSLVMSGPYELKALHLQGQDMEQQVVFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKNYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWYISTSQAENMPVFLGGTKGGQDITDFTMQFVSS
[0018]本明細書で使用されている「ヒトインターロイキン−1β類似体」という用語は、インターロイキン−1β類似体がインターロイキン−1βのin vivoでの生物学的活性をなお保持するような部位に、ヒトインターロイキン−1βと比較して、複数の部位に1つ以上のアミノ酸置換、欠失、添加または再編成を含むインターロイキン−1βを指す。インターロイキン−1β類似体の例としては、OCT−43(日本の東京にある大塚製薬株式会社)および米国特許第6,107,465号および米国特許第5,847,098号に記載されている他のものが挙げられる。
【0015】
[0019]本明細書で使用されている「ヒトインターロイキン−1β誘導体」という用語は、例えば、アセチル化、アシル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、リン酸化、ペグ化またはグリコシル化によって、1つ以上の構成アミノ酸の位置で化学的にあるいは酵素によって誘導体化され(側鎖修飾、骨格修飾およびNおよびC末端修飾を含む)、そしてインターロイキン−1βのin vivoでの生物学的活性を保持する、ヒトインターロイキン−1βおよびヒトインターロイキン−1β類似体を指す。インターロイキン−1β誘導体の例は、ミリストイル−Lys16−インターロイキン−1βおよびヒスチジンタグ−インターロイキン−1βである。
【0016】
[0020]本発明の好ましい態様では、本発明の組成物中の組換え型ヒトインターロイキン−1の含有量は、10−7〜10−4重量%である。
[0021]本発明の好ましい態様では、本発明の組成物は、本組成物のpHを約4.0〜約10.0に維持するのに有効な濃度の緩衝液をさらに含む。経口的に許容される緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、コハク酸塩緩衝液およびグリシン緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
[0022]本明細書で使用されている「口腔ケア組成物」という用語は、対象の健康、衛生または外観を高めるためにヒトもしくは動物対象の口腔への投与に適し、好ましくは、歯、歯肉、粘膜または口腔の他の硬組織もしくは軟組織の状態または疾患の予防または治療、全身性の状態または疾患の予防または治療、およびそれらの組み合わせなどの利点を提供するいずれの組成物を指す。様々な態様では、口腔ケア組成物は、本組成物の成分の全身投与のために意図的に飲み込まれるものではなく、経口作用のために実質的に口腔組織全体に接触させるのに十分な時間にわたって口腔内に保持されるものである。本発明の口腔組成物は、練り歯磨き、歯磨きゲル、歯肉ゲル、歯磨き剤、歯磨き粉、洗口液、義歯製品、マウススプレー、経口錠剤またはチューインガムの形態でもあってもよい。口腔組成物は、口腔表面への適用または付着のための小片またはフィルムに組み込まれていてもよい。
【0018】
[0023]本明細書に使用されている「経口的に許容される担体」という用語は、組換え型ヒトインターロイキン−1に適合する1種以上の安全な固体もしくは液体希釈剤またはカプセル化物質を指し、局所経口投与に適している。本明細書で使用されている「適合する」という用語は、インターロイキン−1の安定性および/または有効性を実質的に減少させる相互作用を生じることなく組換え型ヒトインターロイキン−1と混合可能な物質を意味する。そのような経口的に許容される担体の例としては、蒸留水もしくは脱イオン水、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ベントナイトおよびモンモリロナイトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
[0024]本発明の組成物は、任意添加成分を含むことができる。そのような任意添加成分は一般に、個々に本組成物の約0.0005重量%〜約10.0重量%、好ましくは約0.005重量%〜約1.0重量%の濃度で使用する。
【0020】
[0025]好適な任意添加成分の例としては、フッ素イオン源、重炭酸アルカリ金属塩源、湿潤剤、歯石防止剤、研削研磨剤、増粘剤、界面活性剤、二酸化チタン、着香料および甘味料、キシリトール、着色剤、歯白色化剤、ベントナイト、モンモリロナイト、他の有効成分およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
[0026]好適なフッ素イオン源の例としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
[0027]好適な重炭酸アルカリ金属塩源の例としては、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
[0028]好適な湿潤剤の例としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物を含む群から選択される水溶性液体ポリオール類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
[0029]好適な歯石防止剤の例としては、ポリアクリル酸塩および、無水マレイン酸またはマレイン酸とメチルビニルエーテルとの共重合体(例えば、Gantrez)などの合成アニオン重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
[0030]好適な研削研磨剤の例としては、シリカ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸水素カルシウムおよび樹脂研磨剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
[0031]好適な増粘剤の例としては、カルボキシビニルポリマー、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースエーテルの水溶性塩(例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム)、天然ガム(例えば、カラヤガム、キサンタンガム、アラビアガムおよびトラガカントガム)およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
[0032]好適な界面活性剤の例としては、ラウロイルサルコシン酸、ミリストイルサルコシン酸、パルミトイルサルコシン酸、ステアロイルサルコシン酸およびオレオイルサルコシン酸のナトリウムおよびカリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
[0033]好適な歯白色化剤の例としては、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄、褐色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、紺青、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、メタクリル酸塩粉末、ポリスチレン粉末、絹粉末、結晶セルロース、澱粉、雲母チタン、酸化鉄雲母チタン(iron oxide titanated mica)、オキシ塩化ビスマスおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。顔料は一般に安全なものとみなされており、C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Handbook(CTFA化粧品成分ハンドブック)、第3版、Cosmetic and Fragrance Assn., Inc.(化粧品香料協会)、ワシントンDC(1982)に記載されている。
【0028】
[0034]好適な着香料の例としては、冬緑油、薄荷油、スペアミント油、クローブ芽油、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、カッシア、酢酸1−メンチル、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α−イオノン、マヨラナ、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、CGAとして知られているシンナムアルデヒドグリセリンアセタールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
[0035]好適な甘味料の例としては、スクロース、グルコース、サッカリン、デキストロース、レブロース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フラクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム塩およびシクラミン酸塩、特に、シクラミン酸ナトリウムおよびナトリウムサッカリン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
[0036]好適な他の有効成分の例としては、抗菌剤、酵素および抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
[0037]好適な抗菌剤の例としては、フェノールおよびその同族体、モノアルキルハロフェノール、ポリアルキルハロフェノールおよび芳香族ハロフェノール、レゾルシノールおよびその誘導体、ビスフェノール系化合物およびハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸エステル、ハロゲン化フェノール、第4級アンモニウム剤、ビスグリシン酸銅、グリシン酸銅、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、クロルヘキシジン、トリクロサン、一リン酸トリクロサンならびにチモールなどの着香油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
[0038]好適な酵素の例としては、パパイン、ペプシン、トリプシン、フィシンおよびブロメリンなどのタンパク質分解酵素、リゾチームなどの細胞壁溶解酵素、デキストラナーゼおよびムタナーゼなどのプラークマトリックス阻害剤ならびにグルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよび尿酸オキシダーゼなどのオキシダーゼ、ワサビペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼおよびクロロペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
[0039]本発明の組成物は、当業者によく知られている標準的な技術によって調製する。そのような手順としては、従来の方法で組換え型ヒトインターロイキン−1を本組成物の他の成分と混合することが挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
[0040]さらに、本発明は、口腔ケア用組成物を製造するための組換え型ヒトインターロイキン−1の使用を提供する。
[0041]本発明の好ましい態様では、組換え型ヒトインターロイキン−1は、組換え型ヒトインターロイキン−1αである。
【0034】
[0042]本発明の好ましい態様では、組換え型ヒトインターロイキン−1は、組換え型ヒトインターロイキン−1βである。
[0043]本発明の好ましい態様では、本組成物は、口腔組織および/または歯の表面を良好な状態に保ち、口臭を予防または治療し、かつ歯周病を予防または治療するのに有用である。そのような歯周病としては、歯肉疾患、慢性歯周炎、侵襲性歯周炎、全身性疾患の徴候としての歯周炎、壊死性歯周病、歯周膿瘍、歯内病変を伴う歯周炎および、例えば、the 1999 International Workshop for Classification of Periodontal Diseases and Conditions in Oak Brook(1999年にオークブルックで行われた歯周疾患および歯周病の分類のための国際ワークショップ(米国イリノイ州), 30.10.1999 to 2.11.1999. Ann Periodontol 1999, 4:1-6に従って歯周病の現在の分類で分類される進行性および後天性奇形および状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
[0044]さらに、本発明は、組換え型ヒトインターロイキン−1および経口的に許容される担体を含む口腔ケア組成物を、それを必要としている対象の口腔表面に適用する工程を含む、口臭を減少させる方法を提供する。
【0036】
[0045]さらに、本発明は、組換え型ヒトインターロイキン−1および経口的に許容される担体を含む口腔ケア組成物を、それを必要としている対象の口腔表面に適用する工程を含む、歯周病の治療または予防方法を提供する。
【0037】
[0046]本発明の好ましい態様では、歯周病は、歯周炎および/または歯肉疾患である。
[0047]本発明の方法を実施する際には、上述した口腔の疾患または病気の治療または予防のために、本発明の組成物の安全かつ有効な量を、いくつかの従来の方法で、口腔の粘膜組織、口腔の歯肉組織および/または歯の表面に、好ましくは少なくとも約0.1〜約10分間、より好ましくは0.5〜1分間局所に適用してもよい。例えば、歯肉または粘膜組織を、組換え型ヒトインターロイキン−1を含む溶液(例えば、洗口液、マウススプレー)ですすいでもよく、また、組換え型ヒトインターロイキン−1が歯磨き剤(例えば、練り歯磨き、歯磨きゲルまたは歯磨き粉)に含まれている場合には、歯肉/粘膜組織または歯を、液体および/または歯を磨くと生成される泡に浸して洗う。他の非限定的な例としては、組換え型ヒトインターロイキン−1を含む非研磨ゲルまたはペーストを歯肉/粘膜組織に直接に適用すること、あるいは、口腔ケア剤を使用する(組換え型ヒトインターロイキン−1を含むガムを噛む、組換え型ヒトインターロイキン−1を含むブレス錠剤またはトローチ剤を噛むか舐める)かそれらを使用せずに歯に適用することが挙げられる。この方法は、1日につき1〜約5回、好ましくは1〜2回繰り返し適用することができる。典型的には、本組成物の有効量は、約0.5〜約10グラム、好ましくは約1グラムである。
【0038】
[0048]本発明を実証するために以下の実施例を提示する。本実施例は、単なる例示であって、決して本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
[0049]
【0039】
【表1】

【0040】
上記成分を従来の方法で混合および捏和して、組換え型ヒトインターロイキン−1αを含む練り歯磨きを調製した。
実施例2
[0050]
【0041】
【表2】

【0042】
上記成分を従来の方法で混合および捏和して、組換え型ヒトインターロイキン−1βを含む練り歯磨きを調製した。
実施例3
[0051]
【0043】
【表3】

【0044】
上記成分を従来の方法で混合して、組換え型ヒトインターロイキン−1αを含むゲル組成物を調製した。
実施例4
[0052]
【0045】
【表4】

【0046】
上記成分を従来の方法で混合して、組換え型ヒトインターロイキン−1αを含む洗口液を調製した。
実施例5
[0053]本実施例は、口臭および歯肉の出血を減少させるための組換え型ヒトインターロイキン−1αを含む練り歯磨きの有効性を実証する。歯肉炎を有する8人の男性対象に、1週間にわたって1日2回、口腔表面に、1グラムの実施例1の練り歯磨き(試験、n=4)または媒体(対照、n=4)を適用した。14日目の試験群の平均口腔臭気強度は、対照群の2.75(僅かな臭気〜明らかに検出可能な臭気)に対して、0.50(検出不可能な臭気〜かろうじて検出可能な臭気)のスコアであった。臭気強度は、ローゼンバーグの官能測定(Rosenberg's organoleptic scal)によって検出した(Rosenberg M, et al. J Dent Res, 1991, 70:1436-40)。歯肉の出血(歯肉炎の徴候)は試験群では減少したが、対照群では変化がなかった。本実施例によって、組換え型ヒトインターロイキン−1αを含む口腔ケア組成物が歯肉炎を有する対象の口臭および歯肉の出血を減少させるのに有用であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え型ヒトインターロイキン−1および経口的に許容される担体を含む口腔ケア組成物。
【請求項2】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1αである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1βである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該組成物中の該組換え型ヒトインターロイキン−1の含有量が10−7〜10−4重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
口腔ケア用組成物を製造するための組換え型ヒトインターロイキン−1の使用。
【請求項6】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1αである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1βである、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
組換え型ヒトインターロイキン−1および経口的に許容される担体を含む口腔ケア組成物を、それを必要としている対象の口腔表面に適用する工程を含む、口臭を減少させる方法。
【請求項9】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1αである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1βである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
該組成物中の該組換え型ヒトインターロイキン−1の含有量が10−7〜10−4重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
組換え型ヒトインターロイキン−1および経口的に許容される担体を含む口腔ケア組成物を、それを必要としている対象の口腔表面に適用する工程を含む、歯周病の治療または予防方法。
【請求項13】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1αである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該組換え型ヒトインターロイキン−1が組換え型ヒトインターロイキン−1βである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該組成物中の該組換え型ヒトインターロイキン−1の含有量が10−7〜10−4重量%である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
該歯周病が歯肉疾患である、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2013−505972(P2013−505972A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531243(P2012−531243)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062639
【国際公開番号】WO2011/038754
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(511112364)ユナイテッド・テクノロジーズ・ユーティー・アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】