説明

組立式ダクト

【課題】施工現場での組み立てが容易で、しかも強度剛性、耐火性及び断熱性に優れた組立式ダクトを提供する。
【解決手段】複数の単位ダクト11を連結してなり、各単位ダクト11が、4枚のダクト構成板12と、これら4枚のダクト構成板12を角筒状に連結する連結手段13とを有する組立式ダクト10であって、ダクト構成板12として、軽量セメント層14と発泡合成樹脂層15とからなる積層板を用い、発泡合成樹脂層15が単位ダクト11の内側に配置されるように、4枚のダクト構成板12を連結手段13で角筒状に連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ダクトとして好適に利用可能な組立式ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
空調設備等で使用されるダクトとして、グラスウールダクトが、現場での施工作業を軽減でき、しかも吸音性に優れているため、ホールや映画館、会議室などの静かな場所での空調設備のダクトとして広く採用されている(例えば、特許文献1参照。)。グラスウールダクトとしては、接着剤を塗布したグラスウールを厚さ方向に重ね、加熱して板状に成形し、一方の表面に表皮材を貼着してなる平板状のグラスウール板を用い、このグラスウール板を折り曲げて、両側部を重ね合わせて粘着テープで接合してなるものが採用されている。
【0003】
また、最近では、グラスウールダクトと比較して、安価に製作可能で、しかも工期を短縮できることから、段ボールダクトも採用されつつある。この段ボールダクトとしては、段ボール板の両面にアルミ箔を貼着してなる平板状の段ボール材を用い、この段ボール材を多角筒体形状に折り曲げて、両側部を重ね合わせて粘着テープで接合することで組み立て可能なものが実用化されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
前記グラスウールダクト及び段ボールダクトを施工する際には、グラスウール板又は段ボール板からなるダクト構成板を平板状な状態で施工現場へ輸送し、施工現場においてダクト構成板を多角筒体形状に折り曲げて、その両側部を重ね合わせて粘着テープで接合し、角筒状の複数の単位ダクトを組み立てる。そして、これら複数の単位ダクトをダクトの配設位置に沿って配置させて、隣接する単位ダクトの開口端部同士を突合せ、突合せ部分を含む単位ダクトの外周面に粘着テープを巻き付けて、隣接する単位ダクトを順次結合して施工している。
【0005】
【特許文献1】特開平5−18595号公報
【特許文献2】特開2006−29681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記段ボールダクトは、軽量且つ安価に製作可能なものではあるが、段ボールを主体として構成していることから、強度剛性を十分に確保することができず、施工作業時等において他物に接触すると容易に破損してしまうこと、耐火性が要求される部位には使用できないこと、発泡合成樹脂等と比較して断熱性が低いこと、などの問題がある。
【0007】
本発明の目的は、施工現場での組み立てが容易で、しかも強度剛性、耐火性及び断熱性に優れた組立式ダクトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る組立式ダクトは、複数の単位ダクトを連結してなり、各単位ダクトが、4枚のダクト構成板と、これら4枚のダクト構成板を角筒状に連結する連結手段とを有する組立式ダクトであって、前記ダクト構成板として、軽量セメント層と発泡合成樹脂層とからなる積層板を用い、前記発泡合成樹脂層が単位ダクトの内側に配置されるように、4枚のダクト構成板を連結手段で角筒状に連結したものである。
【0009】
この組立式ダクトでは、4枚のダクト構成板が角筒状になるように、その両端部を連結手段で連結するとこで、単位ダクトを容易に組み立てることができ、この単位ダクトを複数個連結することで組立式ダクトを施工することができる。従って、単位ダクトを、平板状のダクト構成板と連結手段とに分解した状態で、これらを施工現場へ輸送して、施工現場において単位ダクトに組み立てることが可能となるので、単位ダクトを組み立てた状態で輸送する場合と比較して、輸送費を節減できるとともに、保管に要する空間も小さくでき嵩張らない。また、ダクト構成板として、軽量セメント層と発泡合成樹脂層とからなる積層板を用いているので、ダクト構成板の強度剛性を向上でき、輸送時や施工時等におけるダクト構成板の破損を防止できる。しかも、発泡合成樹脂層側を内側にして単位ダクトを組み立てるので、外側に配置される軽量セメント層により、組立式ダクトの耐火性及び断熱性を向上でき、内側に配置される発泡合成樹脂層により、組立式ダクトの断熱性及び保温性を向上できる。
【0010】
前記軽量セメント層が、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化した多孔質成形体からなり、該成形体中に前記補強繊維及び泡を分散状態で含有してなり、比重が0.5〜1.0の範囲内であることが好ましい実施の形態である。このような構成のダクト構成板は、鋸等で容易に加工することができ、現場合わせでの寸法調整も容易なので、ダクト構成板の製造時及び施工現場での組付時の作業性を向上できる。また、軽量セメント層を多孔質成形体で構成しているので、軽量セメント層における断熱性及び保温性を一層向上することができ、しかもダクト構成板を極力軽量に構成することができる。また、軽量セメント層は、それに分散状態で含有した補強繊維の絡み合いにより補強された構造を有することから、曲げ弾性係数が、例えば1700N/mm以上と高強度であるし、釘打ち等も可能なものなので、ダクト構成材の施工性を向上できる。
【0011】
前記連結手段として、ダクト構成板の端部に外嵌する嵌合部を有する4本の連結フレームを枠状に連結したものを用いこともできる。このように構成すると、ダクト構成板を連結フレームの嵌合部に順次嵌め込むことで、単位ダクトを容易に組み立てることができる。連結フレームとしては、金属板のプレス成形品や、金属材料或いは合成樹脂材料の押出成形品や、合成樹脂材料の射出成形品等を用いることができる。合成樹脂材料で構成する場合には、耐火性を確保するため耐熱性に優れた合成樹脂材料で構成することが好ましい。
【0012】
隣接する単位ダクトの連結部に配置される連結手段として、隣接する単位ダクトのダクト構成板の端部にそれぞれ外嵌する、2つの嵌合部を有する断面H型の4本の連結フレームを枠状に連結したものを用いることが好ましい実施の形態である。つまり、単位ダクト毎に独立に2つの連結手段を設けることも可能であるが、組立式ダクト施工時に隣接する単位ダクト同士を連結する作業が必要となる。この発明では、連結フレームとして、隣接する単位ダクトのダクト構成板の端部にそれぞれ外嵌する、2つの嵌合部を有するものを用いているので、隣接する単位ダクトのダクト構成板の端部を嵌合部にそれぞれ嵌合させて、単位ダクトを順次連設することができ、施工現場において単位ダクト同士を連結する作業が不要となるので、組立式ダクトの施工能率を向上できる。断面H型の連結フレームは、押し出し成形により製作できるが、1対のC型チャンネル材を背中合わせにして接合することで製作すると、プレス成形を主体として連結フレームを製作することができ、連結フレームの製作コストを安くできる。
【0013】
前記4本の連結フレームを、枠状に展開した展開姿勢と、折り重ねた折畳姿勢とに姿勢切替え可能にヒンジ部材で連結することも好ましい実施の形態である。この場合には、4本の連結フレームを小さく折り畳むことが可能となるので、連結手段の輸送性や保管性を向上できる。
【0014】
隣接配置されるダクト構成板の側部接合面の一方にシール材を設けることも好ましい実施の形態である。この場合には、施工性を低下させることなく、組立式ダクトの気密性をシール材により高めることができる。
【0015】
隣接配置されるダクト構成板の側部接合面に凹凸嵌合部或いは合抉り部を形成することも好ましい実施の形態である。このように構成すると組立式ダクトの気密性を一層向上できるので好ましい。また、ダクト構成板の発泡合成樹脂層が外部に露出しないように嵌合させると、組立式ダクトの耐火性を一層向上させることができる。
【0016】
前記連結フレームの嵌合部の内面にダクト構成板の抜け方向への移動を規制する係止突部を形成することも好ましい実施の形態である。この場合には、施工時に、ダクト構成板の端部が連結フレームの嵌合部から抜け落ちることを係止突部により防止できるので、連結フレームに対するダクト構成板の組み付け作業性を向上できる。
【0017】
前記ダクト構成板の一方の側部に、隣接するダクト構成板の側部に貼着可能な封止テープを一体的に設けることもできる。単位ダクトは、その気密性を高めるため、組み立てた後、ダクト構成板の側部の接合部に封止テープを貼着して気密性を確保することになるが、本発明のように、封止テープをダクト構成板に予め一体的に設けると、その施工作業を効率的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る組立式ダクトによれば、単位ダクトを、平板状のダクト構成板と連結手段とに分解した状態で、これらを施工現場へ輸送して、作業現場において単位ダクトに組み立てることが可能となるので、単位ダクトを組み立てた状態で輸送する場合と比較して、輸送費を節減できるとともに、保管に要する空間を小さくすることができる。また、ダクト構成板として、軽量セメント層と発泡合成樹脂層とからなる積層板を用いているので、ダクト構成板の強度剛性を向上でき、輸送時や施工時におけるダクト構成板の破損を防止できる。しかも、発泡合成樹脂層側を内側にして単位ダクトを組み立てるので、外側に配置される軽量セメント層により、組立式ダクトの耐火性及び断熱性を向上でき、内側に配置される発泡合成樹脂層により、組立式ダクトの断熱性及び保温性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図3に示すように、組立式ダクト10は、複数の単位ダクト11を連結してなるものである。各単位ダクト11は、4枚のダクト構成板12と、これら4枚のダクト構成板12を角筒状に連結する連結手段13とをそれぞれ有している。
【0020】
ダクト構成板12は、軽量セメント層14と発泡合成樹脂層15とからなる2層構造の細長い長方形状の積層板で構成され、発泡合成樹脂層15が単位ダクト11の内側に配置され、軽量セメント層14が単位ダクト11の外側に配置されるように、2つの連結手段13で角筒状に連結されている。また、左右のダクト構成板12の上下両端部は、上下のダクト構成板12の側端部の発泡合成樹脂層15に突き当てられ、隣接するダクト構成板12の接合部16には、組立式ダクト10の気密性を高めるための封止テープ17がそれぞれ貼着されている。尚、この封止テープ17は、図5に示すように、ダクト構成板12の製作時に、ダクト構成板12の側部に一体的に設けることも可能である。また、輸送時等において剥離しないように、図5に仮想線で示すように、折り曲げた状態に仮止めすることが好ましい。
【0021】
隣接配置されるダクト構成板12間のシール性能を一層高めるため、図6に示すように、ダクト構成板12の発泡合成樹脂層15の側部に、隣接するダクト構成板12の端部に圧接されるシール材18を一体的に設けることもできる。また、組立式ダクト10の耐火性能を高めるため、隣接配置されるダクト構成板12の側部接合部16に、図7に示すように、側端部の発泡合成樹脂層15を除去してなる合抉り部19を形成することも好まく、この場合には、組立式ダクト10の外面に耐熱性の低い発泡合成樹脂層15が露出せず、外面全体が耐熱性の高い軽量セメント層14で構成されるので、組立式ダクト10の耐火性を一層向上させることができる。
【0022】
連結手段13としては任意の構成のものを採用できるが、例えば図1〜図3に示すように、ダクト構成板12の端部に外嵌する2つの嵌合部20を有する断面H型の4本の連結フレーム21と、これら4本の連結フレーム21を連結する4つのヒンジ部材22とを有し、枠状に展開した図3に図示の展開姿勢と、折り重ねた図4に図示の折畳姿勢とに姿勢切替え可能となしたものを好適に利用できる。このように構成すると、連結手段13の輸送性や保管性を向上できるので好ましい。ヒンジ部材22は、溶接やビス止めにより連結フレーム21に取り付けられている。但し、連結手段13として、ヒンジ部材22を用いないで、4本の連結フレーム21を溶接やビス止めにより折畳不能な枠状に連結してなるものを用いることもできる。
【0023】
連結フレーム21としては、鉄やステンレス鋼などからなる金属板をプレス成形して断面C型のチャンネル材23を製作し、このチャンネル材23を背中合わせに溶接接合して断面H型に構成したものが、安価に製作できることから好ましいが、金属材料或いは合成樹脂材料を断面H型に押し出し成形した押出成形品や、合成樹脂材料の射出成形品等で構成することもできる。合成樹脂材料で構成する場合には、耐火性を確保するため耐熱性に優れた合成樹脂材料で構成することが好ましく、またヒンジ部材22に代えて、隣接する連結フレーム21の端部同士を樹脂ヒンジで連結することも可能である。
【0024】
連結手段13の他の実施の形態として、図8に示す連結手段13Aのように、略コ字状の嵌合部20と、嵌合部20の基部から外方へ延びる固定部25とを有する断面F型の4本の連結フレーム21Aを備え、これら4本の連結フレーム21Aを前記実施の形態と同様にヒンジ部材22を介して或いは介さずに枠状に連結したものを用いることも可能である。この場合には、2つの連結手段13Aを用いて各単位ダクト11を独立して多角筒状に組み立てることができる。また、組み立てた単位ダクト11は、施工位置へ順次移送して、隣接する単位ダクト11の固定部25同士をボルト26やビスなどで連結することで、施工することができる。このため、任意の場所で単位ダクト11を組み立てることができるし、複数の単位ダクト11を同時に組み立てて、これらを施工位置に順次組み付けることができるので、施工作業の作業効率を向上できる。
【0025】
また、連結フレーム21の嵌合部20の内面は、平坦面に形成することも可能であるが、図9に示すように、長手方向に延びる鋸刃状の係止突部27を形成し、この係止突部27により、嵌合部20に差し込んだダクト構成板12の抜け方向への移動を規制することも好ましい実施の形態である。この場合には、施工時に、ダクト構成板12の端部が連結フレーム21の嵌合部20から抜け落ちることを係止突部27により防止できるので、連結フレーム21に対するダクト構成板12の組み付け作業性を向上できる。
【0026】
こうして連結手段13により、4枚のダクト構成板12を角筒状に連結した状態で、図1に仮想線で示すように、連結手段13を含む単位ダクト11同士の連結部28を覆うように封止テープ29を貼着して、連結部28からの空調エアの漏れを防止することになる。
【0027】
このように組立式ダクト10によれば、単位ダクト11を、平板状のダクト構成板12と連結手段13とに分解した状態で、これらを施工現場へ輸送して、作業現場において単位ダクト11に組み立てることが可能となるので、単位ダクト11を組み立てた状態で輸送する場合と比較して、輸送費を節減できるとともに、保管に要する空間を小さくすることができる。また、ダクト構成板12として、軽量セメント層14と発泡合成樹脂層15とからなる積層板を用いているので、ダクト構成板12の強度剛性を向上でき、輸送時や施工時におけるダクト構成板12の破損を防止できる。しかも、発泡合成樹脂層15側を内側にして単位ダクト11を組み立てるので、外側に配置される軽量セメント層14により、組立式ダクト10の耐火性及び断熱性を向上でき、内側に配置される発泡合成樹脂層15により、組立式ダクト10の断熱性及び保温性を向上できる。
【0028】
次に、ダクト構成板12の詳細な構成について説明する。
前述のように、ダクト構成板12は、軽量セメント層14と発泡合成樹脂層15とからなる2層構造の積層板で構成され、軽量セメント層14として、パネル状の多孔質成形体を製作してから、このパネル状の多孔質成形体からなる軽量セメント層14の上側に発泡合成樹脂層15を積層状に設けて製作されている。
【0029】
前記軽量セメント層14は、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化した多孔質成形体からなり、該成形体中に前記補強繊維及び泡を分散状態で含有してなり、比重が0.5〜1.0の範囲内のものである。
【0030】
前記セメントは特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等、各種セメントを使用できる。これらのなかでも、生産性、強度等の点から早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0031】
セメントと水との配合割合は、セメント100重量部に対して水が20〜100重量部、更には20〜50重量部の範囲が好ましい。水が多すぎると強度が低下する傾向にあり、水が少なすぎると成形時にセメント混練物の流動性が低下して成形性を阻害する傾向にある。
【0032】
前記補強繊維としては、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等が挙げられる。これらの繊維のなかでも、ビニロン繊維は耐久性が高く、しかもセメントとの親和性に優れるので好ましい。補強繊維の繊維長は特に限定されないが、4〜35mmの範囲が好ましい。補強繊維の繊維長が4mm未満では補強効果が不足する傾向がみられる。補強繊維の繊維長が長い方が補強効果の点では有利であるが、その一方で、繊維長が長くなるほど分散性が低下し、成形体内で補強繊維が偏在して、かえってパネル強度を低下させる場合もある。また、補強繊維の太さにも特に限定はないが、通常、10μm〜100μmのものが用いられる。
【0033】
前記軽量セメント層14は、セメント混練時にビニロンやガラスチョップ等の補強繊維を均一に分散させるだけで、補強繊維の絡み合いによる補強構造が得られる。従って、軽量セメント層14の製造に際して、網状補強材等の補強材を埋設する場合の位置決め操作等の煩雑な作業も不要で、強度にバラツキのないパネルを容易に製造できる。
【0034】
補強繊維の配合量は、前記セメント100重量部に対して0.5〜5重量部とすることが好ましい。補強繊維の配合量が少ないと、補強効果も低く、パネル強度も低くなる。補強繊維の配合量が多いほどパネル補強効果においては有利であるものの、補強繊維の配合量が過剰であるとセメント混練物中での分散性が悪くなり、補強繊維が偏在して、パネルの強度が不均一になり、かえってパネルの強度を低下させるおそれがある。このような観点から、補強繊維の配合量のより好ましい範囲は、セメント100重量部に対して0.5〜3重量部である。
【0035】
前記起泡剤は特に限定されず、セメント用、コンクリート用の起泡剤、例えば、タンパク質系、界面活性剤系、樹脂系等の公知の各種の起泡剤を使用できる。更に、前記起泡剤とともに、アルミニウム粉等の金属系発泡剤を使用することもできる。起泡剤の添加量や添加方法は特に限定されないが、通常はセメント100重量部に対して0.1〜3重量部の範囲で、得られるパネルの比重が、1.0以下の、目標値となるように適宜調整すればよい。パネルの比重は、好ましくは0.5〜1.0であり、更に好ましくは0.6〜0.9の範囲、特に好ましくは木質合板と同じ0.7〜0.8程度である。比重が小さいほどパネルは軽量となり、取り扱い性の面では有利である。しかし、比重が小さくなるほど気孔率が大きくなり、パネルの強度が低下する。一方、比重が大きくなるほどパネルが重くなり、取り扱い性が低下する。
【0036】
前記セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡、その他の添加剤等からなる混練物の混練に際しては、従来公知のセメントミキサーやコンクリートミキサーなどを使用できるが、混練物中の起泡剤をプレフォームした泡(気泡)の状態や補強繊維にダメージを与えることなく、かつ全体を均一に混練することが必要である。混練時に起泡剤の泡(気泡)がダメージを受けると、成形後のパネルにおける気泡の大きさが不均一となり、パネル強度にバラツキが生じることがある。また、補強繊維がダメージを受けると折損して所期の補強効果が得られないおそれがある。
【0037】
軽量セメント層14は、上記のようなセメント、水、補強繊維および起泡剤をプレフォームした泡を混練し、成形型に充填して使用目的に応じた大きさの板状に成形するか、又はそれより大きなブロック状に成形した後、養生することで、気泡を含んだセメントミルクが、セメントと水との水和反応により硬化して、補強繊維と多数の気泡を分散状態で含有する軽量な多孔質成形体が得られる。軽量セメント層14の厚さは、通常、ダクトとしての強度剛性を確保できるように9〜18mmに設定することが好ましい。
【0038】
軽量セメント層14の具体的な製造法の一例を挙げると、セメントに水及び減水剤を混合し、これに補強繊維を加えて混練する。一方、起泡剤に空気を導入し、所定の倍率、例えば20倍程度にプレフォームする。この起泡剤をプレフォームした泡を、前記混練物に加えて混練する。なお、混練の途中で混練物の比重を適宜測定し、目標値に近づけるよう、起泡剤をプレフォームした泡を更に追加して混練してもよい。このセメント混練物を、例えば、金属製の耐圧成形型に充填し、例えば600mm(幅)×1800mm(長さ)×11mm(厚)の板状に成形し、これを養生、固化させる。これにより、多孔質成形体からなる軽量セメント層14が得られる。また、大きなブロック状に成形した多孔質成形体を、養生固化した後、所望の厚さ、大きさの板状に切り出して、軽量セメント層14を得るようにしてもよい。なお、養生は、通常の養生でもよいし、蒸気養生でもよいし、両者を組み合わせてもよい。また、養生は成形型内で完了させるのではなく、成形型内で蒸気養生し、ある程度固化した段階、通常は数時間後、型から取り出して更に養生することで、成形型での成形サイクルが短くなり、生産性が向上する。
【0039】
そして、本発明に係るダクト構成板12は、前記のような軽量セメント層14の上面に発泡合成樹脂層15を積層状に設けたものである。
【0040】
発泡合成樹脂層15を構成する発泡合成樹脂は特に限定されるものではないが、例えばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、硬質塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォーム、酢酸セルロースフォーム、その他の発泡合成樹脂が例示できる。
【0041】
発泡合成樹脂層15を形成する方法としては、一般的に公知な方法が適用可能である。このうち、ポリウレタンフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォームの3種類の発泡方法を、その代表例として以下に例示する。
【0042】
ポリウレタンフォームは、ポリオール、過剰のジイソシアネート、架橋剤、発泡剤、触媒、気泡サイズ調整剤等の原料によって得られ、発泡剤として水とイソシアネートとの反応による二酸化炭素、メチレンジクロライド、ペンタン、機械混合時に入れる空気等、その他分解型の有機系発泡剤が用いられる。気泡サイズ調整剤にはシリコーン樹脂や乳化剤が、触媒にはアミン類や有機スズ化合物等が使用できる。
【0043】
ユリアフォームは、粘度が1000cp程度の粘稠なユリア−ホルムアルデヒド水溶液(樹脂分50〜90%)100部に、プロパン、ブタン、ブテン、ヘキサン、塩化メチルのような発泡剤を2〜30部低温または密閉容器中で分散させ、乳化剤の存在下で酸触媒を加えた後、15〜115℃に温度を上げて得る。また乳化剤を含んだユリア樹脂初期縮合物を、現場発泡機によって塩酸液を混合しながら機械的に起泡しながら吐出させてもよい。
【0044】
フェノールフォームは、レゾール型初期縮合物に泡立機で空気を吹き込みながらクリーム状としつつ、攪拌下で硬化剤を混合して対象部分に被着あるいは充填することによって得る。さらに、クリーム状とする時に重炭酸ソーダを1%程度加えて発泡を助けてもよい。この方法によれば、硬化剤の添加後速やかに硬化する。酸化触媒にはベンゼンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、硫酸、リン酸等が用いられる。また、揮発性発泡剤を配合しておくと、反応熱で起泡するので初めの泡立ては必要ない。発泡用に適したフェノール樹脂も市販されているが、レゾール85部にアジピン酸とヘキサメチレンジアミンから得られたポリアミド5部を共重合させて強靱な発泡体を作製することもでき、ポリビニルアルコール、塩化ビニル樹脂を5〜20部程度配合して強靱性、弾性などを補うこともできる。
【0045】
発泡合成樹脂層15の発泡倍率に特に限定はないが、通常は2〜10倍程度でよい。発泡合成樹脂層15の発泡倍率が小さいほどパネル強度は増大するが、その一方でパネル重量が増大するとともに断熱性も低下する。また、発泡合成樹脂層15の発泡倍率が大きくなるほどパネルは軽量化されるとともに断熱性も高くなるが、その一方でパネル強度が低下する傾向が見られる。従って、発泡合成樹脂層15の発泡倍率は、パネルの断熱性、軽量性、強度、耐衝撃性などの観点から適宜決定される。また、発泡合成樹脂層15の厚みにも特に限定はないが、例えば、0.5〜3mm程度にすることが好ましい。
【0046】
軽量セメント層14の上面に発泡合成樹脂層15を積層状に設ける方法も特に限定されないが、一例を挙げると、密閉可能な成形型内で、軽量セメントからなる軽量セメント層14の表面に充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させて積層状に設ける。より具体的には、軽量セメント層14よりも若干大きな内部空間を有する成形型内に、前記軽量セメント層14を包むように発泡性合成樹脂を充填し、成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、軽量セメント層14に発泡合成樹脂層15を積層状に設けた本発明に係るダクト構成板12が得られる。このように、密閉した成形型内で発泡性合成樹脂を発泡硬化させて発泡合成樹脂層15を設けることで、発泡合成樹脂層15は、その表面が気泡のないスキン層に覆われた平滑面に形成されるとともに、多孔質成形体からなる軽量セメント層14表面の気孔も封止され、パネル表面からの吸水が防止される。なお、発泡合成樹脂層15は、連続気泡の少ない、または連続気泡のない独立気泡からなるものが、断熱性能を向上できるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】組立式ダクトの要部斜視図
【図2】組立式ダクトの単位ダクトの連結部における縦断面図
【図3】連結手段の展開姿勢での斜視図
【図4】連結手段の折畳姿勢での側面図
【図5】他の実施の形態のダクト構成板における側部の縦断面図
【図6】他の実施の形態のダクト構成板における両側の接続部付近の縦断面図
【図7】他の実施の形態のダクト構成板における両側の接続部付近の縦断面図
【図8】他の実施の形態の連結手段及びその付近の縦断面図
【図9】他の実施の形態の連結フレームの縦断面図
【符号の説明】
【0048】
10 組立式ダクト 11 単位ダクト
12 ダクト構成板 13 連結手段
14 軽量セメント層 15 発泡合成樹脂層
16 接合部 17 封止テープ
18 シール材 19 合抉り部
20 嵌合部 21 連結フレーム
22 ヒンジ部材 23 チャンネル材
25 固定部 26 ボルト
27 係止突部 28 連結部
29 封止テープ 13A 連結手段
21A 連結フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位ダクトを連結してなり、各単位ダクトが、4枚のダクト構成板と、これら4枚のダクト構成板を角筒状に連結する連結手段とを有する組立式ダクトであって、
前記ダクト構成板として、軽量セメント層と発泡合成樹脂層とからなる積層板を用い、
前記発泡合成樹脂層が単位ダクトの内側に配置されるように、4枚のダクト構成板を連結手段で角筒状に連結した、
ことを特徴とする組立式ダクト。
【請求項2】
前記軽量セメント層が、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化した多孔質成形体からなり、該成形体中に前記補強繊維及び泡を分散状態で含有してなり、比重が0.5〜1.0の範囲内である請求項1記載の組立式ダクト。
【請求項3】
前記連結手段として、ダクト構成板の端部に外嵌する嵌合部を有する4本の連結フレームを枠状に連結したものを用いた請求項1又は2記載の組立式ダクト。
【請求項4】
隣接する単位ダクトの連結部に配置される連結手段として、隣接する単位ダクトのダクト構成板の端部にそれぞれ外嵌する、2つの嵌合部を有する断面H型の4本の連結フレームを枠状に連結したものを用いた請求項1〜3のいずれか1項記載の組立式ダクト。
【請求項5】
前記4本の連結フレームを、枠状に展開した展開姿勢と、折り重ねた折畳姿勢とに姿勢切替え可能にヒンジ部材で連結した請求項3又は4記載の組立式ダクト。
【請求項6】
隣接配置されるダクト構成板の側部接合面の一方にシール材を設けた請求項1〜5のいずれか1項記載の組立式ダクト。
【請求項7】
隣接配置されるダクト構成板の側部接合面に凹凸嵌合部或いは合抉り部を形成した請求項1〜6のいずれか1項記載の組立式ダクト。
【請求項8】
前記連結フレームの嵌合部の内面にダクト構成板の抜け方向への移動を規制する係止突部を形成した請求項1〜7のいずれか1項記載の組立式ダクト。
【請求項9】
前記ダクト構成板の一方の側部に、隣接するダクト構成板の側部に貼着可能な封止テープを一体的に設けた請求項1〜8のいずれか1項記載の組立式ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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