説明

組織分類装置

(たとえば500MHzから60GHzの周波数を有する)順方向マイクロ波放射が源(108)から第1の伝送路に沿ってプローブ(116)に供給される組織分類装置であって、プローブ(116)は分類対象の組織にマイクロ波放射を送出する。プローブ(116)は組織から反射された放射を受ける。反射された放射は、第2の伝送路から順方向放射を分離するサーキュレータ(198)を介して第2の伝送路に沿って検出器(178)に送出される。検出器は、第2の伝送路からの反射された放射と順方向放射から導出された基準信号とを切換可能な入力を有し、組織分類のための反射された放射の検出された大きさおよび位相の情報は、検出された基準信号の大きさおよび位相の情報との比較により、順方向放射の大きさおよび位相のドリフトを補償され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、マイクロ波放射を用いた生体組織の治療に関する。特に、この発明は、アンテナプローブから送出されるマイクロ波放射を用いて組織の性質を測定することが可能な組織治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生体組織(たとえば腫瘍)を制御可能に切除(ablate)しならびに/または腫瘍および周囲の健常組織に関する情報を測定するように配置される電気外科システムが公知である。そのようなシステムは、2つのチャネル、すなわち、制御された組織切除を行なう第1のチャネル、および感度のよい組織状態(誘電率)測定を行なう第2のチャネルを用い得る。そのようなシステムの動作に関する一般的原則はWO2004/047659およびWO2005/115235に開示されている。
【0003】
図1は、WO2005/115235に開示される装置の模式図を示す。この装置は、測定または切除対象の組織6にマイクロ波放射を方向付けるように構成されるプローブ5に接続されるマイクロ波放射の安定した位相ロックされた源1を有する。プローブ5は、測定される組織がプローブ5の遠端5aに存在するかまたは遠端5aを取囲むように組織に挿入されるように適合される。
【0004】
源1とプローブ5との間の経路上には、増幅器2と、増幅器2から(マイクロ波コネクタ、DC分離バリア、導波路または半剛性ケーブル、可撓性ケーブルアセンブリを備える出力回路を有し得る)プローブ5を分離して、反射されたパワーが増幅器2を損傷しないようにするためのサーキュレータ40と、3スタブインピーダンスチューナ50と、ケーブルアセンブリ4とが存在する。チューナ50のインピーダンスは、同調キャビティを出入りする3つの同調素子の動きによって変化する。同調素子は、コントローラ101からの信号A1、A2、A3によって制御されるアクチュエータ1130によって動かされる。
【0005】
この装置を、マイクロ波放射をプローブ5を通してプローブ5の端にある組織6へ方向付けるのに用いる場合、組織6は、マイクロ波放射の一部をプローブ5を通して源1に向けて反射し返す。方向性結合器200は、この反射された信号210の一部を検出器100の入力Bに向ける。さらなる方向性結合器250は、順方向基準信号255を検出器100の入力Aに結合する。
【0006】
検出器100は、反射された信号210および基準信号255の両者の大きさおよび位相を検出し、この情報を用いて、組織の複素インピーダンスを測定することができる。検出器から得られた位相および大きさの情報は、たとえば、極プロット(polar plot)または周波数に伴う位相変化および周波数に伴う大きさの変化の別個のプロットなどの他の有用な形式に変換されてもよい。すなわち、位相および大きさの情報が抽出可能である限り、この情報は、組織の種類または状態に関する有用な情報を提供するいずれの形式で提示されてもよい。
【0007】
次にこの情報は組織分類器150へ出力され、組織分類器150は、組織6を特定の組織の種類(たとえば、筋肉、脂肪、癌性腫瘍)として分類し、その結果を組織の種類を表示するディスプレイ160に出力する。
【0008】
図2は検出器100の公知の構成を示す。スイッチ600は、検出器100の入力A(順方向基準)または入力B(測定データ)からの信号を取るように切換可能である。スイッチ600はコントローラ101からの信号610によって制御され、各々の信号から最新の情報を得るため、2つの位置の間で素早く切換可能である(すなわちスイッチは信号を多重化する)。スイッチ600は、反射された信号210または基準信号255をミキサー620に出力し、ミキサー620において、この信号は、基準信号255および反射された信号210とは周波数が異なる信号630と混合される。信号630の周波数は、この信号が反射された信号210および基準信号255と混合して、デジタル信号プロセッサ680に出力可能なより低周波数の信号を発生するように選択される。ミキサー620の出力とデジタル信号プロセッサ680との間には、いずれの高い周波数も、またはミキサーの出力で発生する、取り除かなければ信号調節増幅器650およびアナログ−デジタル変換器660に入力されてしまう他の所望されない信号も取り除くための低域通過フィルタ640が存在する。
【0009】
デジタル信号プロセッサ680は、入力された反射された信号および基準信号に基づいて(実成分と虚成分との両方を有する)複素インピーダンスを算出する。検出器100はこの情報を組織分類器150に出力する。
【0010】
組織分類器150は、組織6を、複数の異なる組織の種類、または組織が切除過程の間になり得る複数の異なる状態のうち1つ(たとえば、皮膚、脂肪、筋肉、癌性腫瘍、加熱された(cooked)組織など)に分類し、組織分類器150はまた、組織分類器150が算出した複素インピーダンス値に基づいて、いつプローブが空気中にあって組織と接触していないかを検出することもできる。
【0011】
組織分類器150は、(プローブの端にある組織6を表わす)上記複素インピーダンス値と、複素インピーダンスまたはその範囲を特定の組織の種類に割当てる予め定められた値の表とを比較することによって組織を分類する。これらの予め定められた値は、制御された条件下で管外(ex-vitro)で測定された組織の種類の公知のインピーダンスに基づいて理論的に算出され得るかまたは経験的に定められ得る。1990年にアカデミックプレスロンドン(Academic Press London)によって発行された(ISBN 0−12−222800−6)、フランス A ダック(France A Duck)による総合参考書である「組織の物理的性質(Physical Properties of Tissue)」の第6章は、そのような理論値を算出することができるデータを提供している。
【0012】
図1および図2に示される装置は、プローブ5の端にある組織6を切除するおよび測定することの両者が可能である。装置は両方の動作モードについて同じ放射伝送路を用い、測定用信号はメインの(切除)ラインアップ構成から結合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の概要
発明者らは、切除線からの測定信号の結合に係る潜在的な問題が存在することを認識した。結合器は切除線上の信号の一部しか除去しないため、結合された信号が確実に検出可能であるためには、装置が測定モードで動作しているときですらあるレベルよりも高いパワーを送出する必要がある。送出される放射が非常に強力で測定されている組織を損傷してしまうかもしれない可能性があることがわかった。すなわち、測定信号は組織の切除を引起すかもしれないのである。たとえば、関心のある周波数で生成された約1Wのパワーレベルが組織の損傷を発生させる可能性があることが発見された。
【0014】
本発明者らは、英国特許出願第0620064.6号において、この問題に対する解決
策を提案した。この文献は、マイクロ波放射源と治療プローブとの間に、生体組織を切除しかつ測定することが可能な、2つの別個の(独立した)治療チャネル、すなわち切除のための放射用の第1のチャネルと測定(たとえば組織分類)のための放射用の第2のチャネルとを有する、電気外科装置を開示した。第2のチャネルによって送出されるパワーは、第1のチャネルによって送出されるパワーよりも遥かに小さい(たとえば10万倍少ない)。この配置において、反射された信号は、第2のチャネルから直接に取り入れ可能である。これは、関心のある周波数において第1のポートと第3のポートとの間で高い信号分離を与えるように同調されるかまたは最適化されたサーキュレータと、反射された信号を順方向放射から分離するように配置された搬送波打消回路とを用いることによって達成された。この配置に従う装置は図3に示され、以下に詳細に説明される。
【0015】
この解決策は測定感度を向上させ、たとえば高過ぎて組織の切除を引起してしまい得る測定回路における比較的高レベルのマイクロ波パワーを用いることに関連の欠点を解消した。しかしながら、発明者らは、温度変化、およびマイクロ波構成要素または装置中の他の構成要素もしくはデバイスにおけるその他の変化により、送出される信号の位相および大きさにドリフトが起こることを発見した。たとえば、デバイスの劣化またはDC電源の僅かな変化がある成分の特性を変えてしまう可能性がある。たとえば、発振器用のDC電源の変化は、DC電源電圧の関数としての発振器の出力周波数の変化である周波数プッシングとして公知の影響を生じ得る。このドリフトは、装置が典型的に用いられる期間の間に起こり、したがって測定結果が不正確になってしまう可能性がある。本発明はこの問題に対処している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一般的に表現すると、本発明は、プローブからの反射された信号との比較のため、検出器に順方向基準信号を与えることを提案しており、基準信号は、プローブに向けて送出される信号に基づくかまたはこの信号から導出されるものであるので、反射された信号および基準信号の両者ともドリフトによる同じオフセットを含むことになる。測定のために基準信号と反射された信号との間の差を算出しかつこれを用いることにより、ドリフトによるオフセットが打消される。
【0017】
したがって、この発明に従うと、組織分類装置であって、予め定められた周波数を有するマイクロ波放射源と、第1の伝送路に沿って源から放射を受けるように接続可能なプローブとを備え、プローブは放射を源から順方向に組織へ送出し、かつ反射された放射を組織から受けるように配置され、さらに、源から順方向に方向付けられた放射から導出される基準信号と、第2の伝送路に沿ったプローブから受けた反射された放射とを切換え可能な入力を受けるように配置される検出器と、源とプローブと検出器との間に位置するサーキュレータとを備え、サーキュレータは、第1の伝送路に沿った順方向に方向付けられた放射を第2の伝送路に沿った反射された放射から分離して順方向に方向付けられた放射が第2の伝送路に沿って進まないようにするように配置され、さらに、検出器に接続された組織分離器を備え、検出器は、反射された放射および基準信号の両者の大きさおよび位相を検出するように配置され、組織分類器は、検出器が検出した信号の大きさおよび位相に基づいて組織を分類するように配置される、組織分類装置が提供され得る。
【0018】
基準信号が反射された信号と同じ源から導出されるので、それらは実質的に同じ大きさ/位相ドリフトを示す。これにより、そのドリフトを、検出器によってなされる測定において補償することができる。基準信号は、たとえばサーキュレータの第1のポートの前などの第1の伝送路上に方向性結合器を設けて第1の伝送路からの基準信号を結合することによって得られ得る。この場合、大きさ/位相のドリフトは基準信号の測定実施と反射された信号の測定実施との間にかかる時間が、たとえば1ms、10msまたは100msなど比較的短ければちょうど打消され得る。なぜなら、基準信号と反射信号とはマイクロ
波回路を通して同じ経路(またはルート)に接続されているからである。すなわち、基準信号は、反射された信号の経路にない活性したデバイスを通過しないからである。基準信号の測定および反射された信号の測定の両者ともが約1msの時間枠に亘って行なわれ得る。基準信号が活性したデバイスを独立して通過する場合、この信号は活性したデバイス内で生成されるノイズ、およびたとえば半導体増幅器における接合温度の変化によって起こり得るドリフトの影響を受けることが予測される。
【0019】
検出器への入力は、基準信号と反射された信号との間で定期的に(たとえば周期的に)切換えられてもよい。1つの実施例では、基準信号と反射された信号との間で検出器入力を切換える期間は、たとえば0.1msから100msの間など、たとえば1秒未満の比較的短いものである。これらの期間内の信号ドリフトは、その後の算出もしくはシステム内のハードウェアコンポーネントの制御のためにユーザに提示されるかまたはそのために用いられる測定情報の有効性に大きな影響を及ぼすはずがない。
【0020】
検出器は、基準信号と反射された信号との間の大きさおよび位相の差を測定するように配置され得る。これにより、両方の信号に共通であり得るいずれのドリフト誤差も打消すことができる。測定された差は組織のインピーダンスによって生じる反射係数に関し、組織分類器は、測定された差を用いて組織の複素インピーダンスを算出するように配置される。これらの測定値を用いて複素誘電率値を抽出することが望ましいであろう。
【0021】
サーキュレータは、基準(順方向)信号を反射された信号から分離するように働いてもよい。換言すると、サーキュレータは、メインのパワーラインアップ構成の順方向成分および反射された成分を分離する(分ける)ように働き得る。サーキュレータは第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを有し、第1の伝送路は第1のポートから第2のポートへの経路を含み、第2の伝送路は第2のポートから第3のポートへの経路を含む。第3のポートは、サーキュレータがアイソレータとして働くことができるように、十分に整合した負荷で終端されてもよい。サーキュレータは、いずれの信号も第1のポートと第3のポートとの間を進まないようにするように配置され得る、すなわち設計され、構築され、および同調され得る。しかしながら、実際には少量の漏れが起こり得る。したがって、装置は、サーキュレータの第1のポートと第3のポートとの間に接続される搬送波打消回路を含んでもよく、搬送波打消回路は、サーキュレータの第3のポートから漏れる源からの放射を打消すように配置される。搬送波打消回路は、第1の伝送路からの順方向に方向付けられた放射を結合するように配置される第1の結合器と、結合された信号の大きさおよび/または位相を修正するように配置される信号調整器と、修正された信号を第2の伝送路に結合するように配置される第2の結合器とを備えてもよく、これにより、修正された信号はサーキュレータの第3のポートから漏れている源からの放射を打消す。すなわち、信号は逆位相であり、大きさが同じである。信号調整器は可変減衰器および/または可変位相調整器を含んでもよい。搬送波打消回路はまた、ケーブルアセンブリおよびプローブによって生じるいずれの所望されない信号成分も打消すのに用いられてもよい。すなわち、打消される信号は、第1のポートから第3のポートへサーキュレータを通り抜ける信号(ブレークスルー信号)ならびにケーブルアセンブリおよびプローブ(およびこの経路に沿って存在するいずれの他の構成要素も)によって生じる信号の合成であってもよい。
【0022】
これに代えてまたはこれに加えて、基準信号を用いて、反射された信号中に存在する順方向に方向付けられた放射のいずれの成分も数学的に除去することができる。これは、順方向(基準)漏れ信号の成分を所望の反射された測定信号から減算するデジタル信号処理技術を用いることによって達成される。これは、固定された負荷インピーダンスがアンテナまたはケーブルアセンブリの端に接続された状態で、反射された信号の直交位相IおよびQ値を測定することによって達成されてもよい(負荷は、ケーブルアセンブリの特徴的なインピーダンス、たとえば、実験用ベクトルネットワークアナライザを較正するのに用
いられるもののような50Ω負荷などと十分に整合していることが望ましい。このように、測定されるいずれの信号も、サーキュレータの第1のポートと第3のポートとの間での信号ブレークスルーおよび検出器内に含まれる活性した構成要素によって生成され得る何らかのノイズによるものであろう。
【0023】
1つの実施例では、装置は、検出器に対する切換えられた入力を受けるように接続される第1の入力と、ミキサーに対する(たとえば局部発振器からの)ミキシング信号を受けるように接続される第2の入力と、検出器回路の残余に接続される出力とを有するミキサーを含み、これにより、検出器に対する周期的に切換えられる入力の周波数は、入力が検出器回路の残余において受けられる前にミキサーによって変更される。たとえば、マイクロ波源の周波数は、検出器の一部を形成し得るアナログ−デジタル変換器(ADC)による処理には高過ぎる場合がある。局部発振器からのミキシング信号は、切換えられた入力信号の周波数を低減するように配置されるミキシングダウン信号(mixing down signal)であり得る。ミキシングダウン信号はマイクロ波放射源から導出され得る。
【0024】
装置はまた、生体組織を切除するように構成されてもよい。したがって、装置は、装置が切除モードで動作している場合は、放射を源からプローブへ伝達するための別個の(独立した)放射送出チャネルを含んでもよい。プローブは、第1の伝送路または第1の伝送路とは独立した第3の伝送路を介して源から放射を受けるように選択的に接続可能であり得、第3の伝送路を介してプローブが受けることができる放射は組織を切除するためのものである。したがって、装置は、放射が第3の伝送路を介してプローブに伝達される切除モード、または放射が第1の伝送路を介してプローブに伝達される測定モードで作動することができる。
【0025】
第3の伝送路は、第3の伝送路を介して受けることができる放射が第1の伝送路を介して受けることができる放射よりも高い振幅を有するように増幅器を含み得る。第1の伝送路を介して伝達される放射の振幅は、第3の伝送路によって伝達されるよりも何オーダも小さいものであり得る。たとえば、プローブ(空中線)の遠端で送出されて組織の種類/状態の測定を可能にするパワーレベルは、10mW未満、たとえば0.1mW(−10dBm)(またはいくつかの実施例では1μW(−30dBm)程度に低い)から10mW(+10dBm)の間であり得る一方、組織の切除を引起す、プローブの遠端で送出されるパワーレベルは、たとえば400W(56dBm)などの、1W(30dBm)から200W(53dBm)以上の範囲に及び得る。
【0026】
第3の伝送路は、装置のインピーダンスを生体組織のインピーダンスに整合させるように配置される調整可能複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器を含み得る。
【0027】
プローブは組織に挿入可能であるように適合され得る。
現発明の実現に有用と考えられるマイクロ波周波数の範囲は500MHzから60GHzの間である。現発明の実現に特に有用であり得る周波数範囲は、2.4−2.45GHz、5.725−5.875GHz、14−15GHz、および24−24.25GHzである。これらの帯の中にあるスポット周波数を用いて現発明を実現してもよい。たとえば、2.45GHz、5.8GHz、14.5GHz、および24GHzを用いてもよい。比較的容易に高Qキャビティおよび構造を設定できるという観点から単一の周波数が利点をもたらし、また、広い帯域幅に亘って動作するようにマイクロ波構成要素を設計しなくてよいことにより、構成要素のコストおよび将来における全体的なシステム開発コストの削減に実質的な効果があり得る。本明細書中で同定される将来の医療適用例のため、915MHzおよび60GHz付近の周波数の使用も検討されてもよい。
【0028】
本件に記載の改良された構成の実現によるメリットが実際のシステムにおいて今回実証
された。ここに記載の改良された構成は、システムがウォームアップ中である間ですら有効な複素インピーダンス測定を可能にすることが最近実証された。すなわち、機器がコールドスタートからスイッチオンされるとすぐに、有用な測定を行なうことができる。この特徴は、たとえば有効な測定が可能になるまでなど機器がウォームアップするのに10分間を見込んでおくことがしばしば必要である多数の既存の試験および測定器具に勝るメリットを提供し得る。実験用試験および測定機器を用いて感度のよい測定を行なう際、以前は数時間の期間に亘って何度か較正を繰返すことが望ましかったかもしれないことに注目することも有意義である。この発明は、この制限的な要件を減じ得るまたは解消し得る。そのような機器の実際の例は、ベクトルネットワークアナライザ、電力計、またはオシロスコープを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は上述の生体組織を切除または測定するための公知の電気外科装置を示す図である。
【図2】図1の装置で用いることができ、また上述される検出器の構成を示す図である。
【図3】本発明を適用可能な電気外科装置を示す図である。
【図4】この発明の実施例である電気外科装置を示す図である。
【図5】(たとえば図3に示されるもののような)補正なしの装置および(たとえば図4に示されるもののような)補正ありの装置における位相および振幅のドリフトを示すグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明;さらなるオプションおよび好ましい例
図3は、この発明と共に用いるのに好適な電気外科システムの図を示す。これは、2つの治療チャネル(切除チャネルおよび測定チャネル)を含み、以下にこれらを詳細に説明する。
【0031】
チャネルは両者ともマイクロ波源108から始まり、治療アンテナ(プローブ)116を含む。切除チャネルにおいては、第1の周波数源161を用いて予め定められた周波数の低出力信号を生成し、ドライバ増幅器110を用いて第1の周波数源161が発生する出力信号レベルを増幅させ、電力増幅器112を用いてドライバ増幅器110が発生した信号を制御された組織破壊を引起し得るレベルに増幅する。電力増幅器112からの出力はマイクロ波サーキュレータ114に接続され、マイクロ波サーキュレータ114を用いて、電力増幅器112内に含まれる出力トランジスタを、治療アンテナ116の遠端におけるインピーダンス不整合によって生じるまたは同調フィルタ144内側の同調素子(これらは同調ロッドまたは同調ねじであり得る)の位置によって生じるインピーダンス不整合による過剰な量の反射されたパワーから保護する。不整合はまた、サーキュレータの出力ポート2とプローブの遠端との間に接続されるいずれかの構成要素、すなわち出力コネクタ、ケーブルアセンブリなどによって生じるまたは導入されるインピーダンスの変化または不連続によっても生じ得る。サーキュレータ114は、マイクロ波パワーが時計回り方向に流れることのみを許し、したがって電力増幅器112に向けて戻ってくるいずれの反射されたパワーも、サーキュレータ114の第3のポートに接続されたパワーダンプ負荷118によって吸収される。パワーダンプ負荷は、反射されたパワーが第1のポートに戻ってこないように、サーキュレータの第3のポートのインピーダンスと十分に整合していなければならない。低出力パワーレベル、たとえば1.5Wの持続波が生成されている例では、デバイスの動作性を維持しつつ、マイクロ波サーキュレータと50Ωパワーダンプ負荷とを設計から省略することが可能であり得る(反射されたパワーの最悪の場合のレベルは、電力増幅器の出力段に損傷が生じないであろうようなものである)。
【0032】
切除チャネルはさらに、パルス化モードで電気外科システムが動作することを可能にする変調スイッチ130を含む。この動作モードは、ユニットが、たとえば15Wから120Wなどの、ハンドピースおよび/またはプローブ軸および/またはケーブルアセンブリに関する熱の影響を考慮すべきより高いマイクロ波パワーレベルで動作する場合に特に有用である。切除チャネルはまたパワー制御減衰器132も有し、これを用いてユーザは、組織に送出されるパワーのレベルを制御することができる。ここでも、ユニットが100Wまでおよび恐らくはこれを超えるパワーレベルを送出することができるように構成されるこの特徴を含むことが望ましいであろう。実際には、変調スイッチ130をラインアップ構成から省略できるように十分に速い速度で減衰器132をスイッチオンオフすることが可能であろう。変調スイッチ130およびパワー制御減衰器132を実現するのにMEM技術を用い得る。発電機の全体的なサイズの小型化を助けるため、源発振器108もMEM技術を利用し得る。別個の(または外部の)変調スイッチおよび/またはパワー制御減衰器ユニットは不要である。これらの特徴(または動作)は、発電デバイスに印加される電圧のレベルを変化させることによって実現され得る。DCまたはバイアス電圧の変化による利得の変化は約15dBであり得る。より大きな幅の変化が望まれる場合は、PINダイオードのバンクを備えるデジタル減衰器を用いることができる。これは、64dBまで(およびいくつかの場合ではこれを超える)利得の変化を与え得る。
【0033】
切除チャネルはさらに、電力増幅器110、112が生じるマイクロ波エネルギを、インピーダンスの観点で、生体組織の現在の状態により治療アンテナ116の遠端に与えられる負荷に整合させることができるようにする動的インピーダンス整合システムを含む。このシステムは、治療器具と作られるべき組織との間の共役整合を可能にし得る。この構成は、組織への効率的なエネルギ送出と、治療時間の短縮と、不整合状態がアンテナの遠端と組織の負荷との間で起こるときですら整合アルゴリズムによって要求パワーを組織に送出可能にすることにより要求パワーが実際に組織に送出されるパワーとなることによる、制御された組織破壊を生じるのに必要なエネルギ適用量を正確に定量化できることと、の観点での利点を与える。
【0034】
インピーダンス整合システムは、同調フィルタ144、4つの方向性結合器146、148、151、152、時間多重スイッチ154、および第1の段を有する二重中間周波数(IF)ヘテロダイン受信機とを含み、これは、第1の局部発振器156と、第1の周波数源161のいずれの信号成分も除去するのに用いられる帯域通過フィルタ158と、マイクロ波周波数ミキサー162とを含む。第3の周波数源164は、二重IFヘテロダイン受信機の第2の段171に対する局部発振器信号を与える。切除チャネルのその他の構成要素は、3つの信号発振器156、161、164が共に同期できるようにする基準周波数発振器166と、第1の周波数源161の出力と変調スイッチ130への入力との間に接続されて第1の局部発振器信号156の周波数に存在し得るいずれの信号成分も除去する第2の帯域通過フィルタ168とを含む。
【0035】
この配置において、時間多重スイッチ154は、順方向電力および反射電力信号結合器146、148、151、152の4つの結合されたポートのうちいずれか1つからの信号が(ミキサー162の)二重IF周波数ダウンコンバータ回路に向けられるようにして位相および大きさの抽出が行なわれるようにするのに用いられる。後方の結合されたポート151、152または前方の結合されたポート146、148で利用可能な情報を比較して同調フィルタ144内(またはその外側)の同調素子170に必要な調整を判断して、電源(すなわち増幅器110または直列接続された一連の増幅器110、112によって生成される電力)が組織の負荷とインピーダンス整合するようにして、たとえば最大量のマイクロ波パワーが組織の負荷に確実に転送されるようにすることが必要であり得る。示されるように、調整は、3つのダイオード上の電圧を調整することによって実現され得る。チューナ144は、同調キャビティ内に含まれる複数の同調スタブの形態をとっても
よく、この中では、電気機械アクチュエータを用いて同調スタブをキャビティ内で上下に動かし、たとえばPIDコントローラなどのコントローラを用いて、同調スタブ(ロッド)の動きが十分に規定されることを確実にする。誘導性または容量性リアクタンスは同調スタブによって導入され、その値はキャビティ内に存在するスタブの長さに依存する。同調フィルタ144の実現のためには多数の配列が考えられ得るが、小型のシステムを実現可能にするためには(たとえば、ユニットの全体サイズはビデオカセットレコーダのサイズとなり得る)、PINまたはバラクタダイオードの配置を用いることが好ましいであろう。
【0036】
マイクロ波周波数ミキサー162の動作は、制御された組織の損傷を生じさせるのに用いられる高周波マイクロ波信号の一部が、4つの方向性結合器146、148、151、152の結合されたポートから利用可能な信号に含まれる位相および大きさの情報を保持しながら、より低周波数の信号に周波数がミックスダウンされ得るようにすることである。ミキサー162からの所望される出力周波数は、結合器からの第1の入力RF1と局部発振器156からの第2の入力LO1との間の差分周波数である。図3に与えられる構成では、RF1入力とLO1入力との間の差分は50MHzである。なぜなら、局部発振器156は14.45GHzで動作する一方で、(結合器が接続されている)第1の周波数は14.5GHzであるからである。50MHz信号を用いて位相および大きさの情報を抽出する。この発明は、4つの方向性結合器146、148、151、152を用いる示される配置を用いることに限定されるものではない。たとえば後者の2つ151、152のみを用いてもよく、または前者の2つ146、148のみを用いてもよい。また、6ポート方向性結合器または複数の方向性結合器を含むいずれの他の好適な結合器配置をシステムの実現例で用いてもよい。
【0037】
二重IFヘテロダイン受信機の第2の段171は、第1のミキサー162の出力で発生される差分IF信号以外の信号を除去するのに用いられる第3の帯域通過フィルタ172を備え、第2のミキサー174を用いて、標準的なアナログ−デジタル変換器を用いて容易に対処可能な値に周波数をさらに再びミックスダウンする。第4の帯域通過フィルタ176を用いて、第2のミキサー174の出力で発生される差分IF信号以外の周波数の、この時点でシステムに存在するすべての信号成分を除去する。この実施例では、ミキサーは、第1のミキサー162の出力で発生される第1の入力RF2と、第3の周波数源164で発生される第2の入力LO2との間の差分である周波数の信号を発生する。この実施例では、第3の周波数源は40MHzで動作するので、差分は10MHzである。第4の帯域通過フィルタ176からの出力は、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラであり得るデジタルプロセッサ178に供給され、位相および大きさの情報が、方向性結合器146、148、151、152(またはその組合せ)の結合されたポートで測定され、多重スイッチ154を用いてヘテロダイン受信機に方向付けられる情報に基づいて同調フィルタ144の可変素子170を制御するのに用い得る形式にデジタルに抽出され変換され得る。受信機からのアナログ出力は、好適なアナログ−デジタル変換器(ADC)を用いてデジタル化され、得られたデジタル信号はデジタル信号処理(DSP)ユニットまたはマイクロプロセッサ(MP)ユニットによって処理される。ADCをDSPまたはMPユニット内に含み得ることに注目することが有意義であろう。後方の方向性結合器151、152の結合されたポートで利用可能な情報を用いて、整合した状態を維持するのに用いられる可変同調素子を制御することのみが必要であろう。
【0038】
電源180は、電気外科ユニットが動作するのに必要なDCエネルギを与える。電圧制御ユニット182は、電源180が発生する単一の電圧を、たとえば増幅器110、112のためのドレインおよびゲート−ソース電圧V6−V9、マイクロプロセッサユニットを起動するための電圧V10などのユニットを動作させるのに必要な複数の電圧に変換できる
ようにする複数のDC−DC変換器を備え得る。電圧供給および制御信号は図3に詳細に示される。
【0039】
単極4投(SP4T)時間多重スイッチ154の極位置の選択、変調スイッチ130の開閉動作、および可変減衰器132によって導入される減衰レベルは、マイクロプロセッサ178が生成する制御信号C1−C3によって決まる。
【0040】
システムはユーザインターフェイス184を含み、ユーザはこれによってシステムを操作することができる。ユーザインターフェイスは、LED棒グラフ、可聴警報単色LEDおよびマイクロスイッチ、音声(可聴)認識、マイクロスイッチもしくはメンブレンスイッチを備える音声(可聴)フィードバックもしくは文字数字LCDディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、または情報もしくはデータをシステムに入力しかつ情報もしくはデータをシステムから出力するもしくはアクセスするいずれの他の好適な手段も含み得る。
【0041】
測定チャネルは、第1の周波数源161から治療アンテナ116に放射を伝達するための別個の伝送路を提供する。測定チャネルは、増幅器および切除チャネルと関連の動的同調システムをバイパスする。この構成では、3dBスプリッタまたは結合器または電力分割器が切除チャネルと測定チャネルとの間で第1の周波数源の出力を分割する。導波路スイッチ188および同軸スイッチ190を用いて2つのチャネル間の切換を可能にする。導波路スイッチ188および同軸スイッチ190の切換位置を切換可能にする制御信号C4、C5は、マイクロプロセッサ(またはデジタル信号プロセッサ)178によって与えられる。この発明は、2つの動作モード間を切換えるのに導波路スイッチおよび同軸スイッチを用いるものに限定されない。たとえば、2つの同軸スイッチ、2つの導波路スイッチ、PINおよび導波路スイッチの組合せ、またはPINおよび同軸スイッチの組合せを用いることが可能であろう。測定チャネルは、アンテナ116に供給され、アンテナ116から受信される信号を調節するように配置される低出力トランスミッタ186を含む。第1の周波数源161からの入力信号は帯域通過フィルタ194の入力ポートに供給され、帯域フィルタ194の機能は、測定周波数で発生されるエネルギは通すが、すべての他の周波数で発生されるエネルギは阻止することである。フィルタ194からの出力は、順方向電力方向性結合器として構成され、搬送波打消回路の一部を形成する第1の方向性結合器196の入力に供給される。第1の方向性結合器196からの出力は、マイクロ波サーキュレータ198の第1のポート(入力ポート)に供給される。サーキュレータ198の第2のポート(出力ポート)は、導波路スイッチ188を介して測定アンテナに接続される。マイクロ波サーキュレータ198の第3のポートは、順方向電力方向性結合器として構成され、搬送波打消回路の一部を形成する第2の方向性結合器201への入力に接続される。第2の方向性結合器201からの出力は、二重IFヘテロダイン受信機の第1の周波数ミキサー162のRF入力に(同軸スイッチ190を介して)供給される。
【0042】
二重IFヘテロダイン受信機の構成および記述が以上で説明される。測定モードでは、位相および大きさの情報は、デジタル信号処理を用いて信号から抽出され、マイクロプロセッサ178を用いて処理されて、アンテナの遠端が接している組織の状態および/または組織の種類に関する情報を与える。デジタル信号プロセッサは信号を処理してもよく、またはこれを用いて上述の処理機能の一部を果たしてもよいことに注目し得る。
【0043】
測定モードにおいて順方向に伝送される信号と反射された信号との間の分離を向上させるため、サーキュレータ198の第1のポートと第3のポートとの間の高レベルの分離を与えることが必要である。好ましくは、サーキュレータ198は、信号経路における低い挿入損および分離された経路における高い阻止のため、測定周波数に同調されるかまたは最適化される。第1の順方向信号方向性結合器196、位相調整器202、調整可能減衰器204、および第2の順方向信号結合器201を含む搬送波打消回路を用いてより一層
の分離を与えてもよい。搬送波打消回路は、信号結合器196の結合されたポートから伝送される信号の一部をとり、これがサーキュレータ198の第3のポートまで通ってくるいずれの所望されない信号とも180°位相がずれかつ同じ振幅となって所望されない信号成分を打消し得るように位相およびパワーレベルを調整することによって働く。搬送波打消信号は、第2の順方向結合器201を用いてサーキュレータ198の第3のポートの出力の中へ(または出力において)注入される。搬送波打消回路はまた、出力アンテナ(同軸シャフトおよびプローブ先端)ならびに発電機をアンテナに接続するマイクロ波ケーブルアセンブリによって生じる変化を調整するように用いられてもよい。搬送波打消回路は、代表的なケーブルアセンブリおよびプローブがシステムに取付けられる場合に設定され得る。
【0044】
図4はこの発明の実施例を示す。これは図3の配置によく似ている。共通の構成要素には同じ参照番号を用い、それらの構成要素の説明は繰返さない。
【0045】
実施例では、治療チャネルは、治療アンテナ116からの反射された信号に加えて、第1の周波数源161から導出される基準信号(順方向信号)を与えるように適合される。信号は両者とも二重IFヘテロダイン受信機を介してマイクロプロセッサ(またはデジタル信号プロセッサ)178に供給されて、そこでそれらは組織の複素インピーダンスを測定するように処理され用いられる。これは、2つの信号がドリフトのために位相または振幅に本質的に同じオフセットを含むシステム内の場所において信号どうしの間の差を測定することによって達成され、したがってこのばらつきは打消可能であり、所望の順方向および反射された電力信号のみが測定される。次に複素インピーダンスは、位相および大きさの情報を2つの補償された信号から抽出することによって算出され得る。反射された電力測定から発生される信号の大きさを基準(順方向)電力測定から発生された信号の大きさで除算し、反射された電力ベクトルの位相から順方向電力ベクトルの位相を減算することにより、高精度の複素インピーダンスを確立することができる。
【0046】
デジタル信号プロセッサは入力された基準(順方向)信号および反射された信号から直交位相I−Q信号をそれぞれ検出し得る。次に、システムから所望の情報を得るため、直交位相I−Q信号(デカルト座標)から大きさおよび位相信号(極座標)および/または実値および虚値(複素インピーダンス形式)への変換が行なわれ得る。
【0047】
たとえば、デジタル信号プロセッサは基準(順方向)検出電圧Vfについての直交位相値QfおよびIfならびに反射された検出電圧Vrについての直交位相値QrおよびIrを(たとえば公知の負荷インピーダンスを用いた以前の構成によって定められた因子に基づいて)検出し正規化し得る。例示的な例として、検出された正規化された値は次のとおりである。
【0048】
f=0.6
f=0.8
r=−0.4
r=−0.3
これらの検出された値は以下の式を用いて極座標(R,φ)に変換可能である。
【0049】
【数1】

【0050】
これにより、Vfについては、値はRf=1.0かつφf=36.87°であり、
rについては、値はRr=0.5かつφr=233.13°である。
【0051】
求められる大きさRtおよび位相φtの情報は以下の式によって与えられる。
【0052】
【数2】

【0053】
この式は、この例について、Rt=0.5かつφt=196.26°を与える。次に、これらの極座標は複素インピーダンス表記に変換され(xt±jyt)、求められる複素インピーダンス情報を生じる。このように、この例では以下のようになる。
【0054】
【数3】

【0055】
これらの値は非正規化(de-normalize)されて、測定された組織の実際の複素インピーダンスを求めることができる。たとえば50Ωへの非正規化は、xt+jyt=16.95−j6.3を与える。
【0056】
スイッチ206は、反射された信号または基準(順方向)信号のいずれかが二重IFヘテロダイン受信機の第1の段のミキサー162に入る経路を提供するように配置される。スイッチ206は、たとえばアドバンストコントロールコンポーネンツ(Advanced Control Components)からの部品番号S2K2コンポーネントである単極双投(SP2T)スイッチである。スイッチ206は、マイクロプロセッサ178(またはデジタル信号プロセッサ)からの制御信号C9の制御下で、反射された信号と基準(順方向)信号とを周期的に切換える。2つの測定を行なうための期間は短く、すなわち100ms(たとえば1msの時間枠内)であり、したがって、2つの測定が行なわれる時間窓の間に成分のドリフトが起こる時間は十分にない。
【0057】
反射された信号は、図3と関連して以上で論じられた低出力トランスミッタ186を用いて与えられる。
【0058】
順方向電力結合器208は、第1の周波数源161から低出力トランスミッタ186への経路上に設けられる。結合器208は、第1の周波数源161が生成する順方向に方向付けられた電力の一部(たとえば10%)を測定するように構成される。この測定された部分が基準(順方向)信号である。したがって、基準信号は、最終的に組織から反射される信号と同じ経路をとる。このことは、何らかのオフセットが存在する場合は、オフセットが両方の信号に存在し、一方の信号を他方から減算することによってこれを打消可能であることを意味する。
【0059】
図5は、図3で示されたシステムにおいて図4を参照して説明されたシステム改良例を実現した結果を示す。図5の上のグラフは、ある期間に亘って起こり得る位相ドリフトを反射された信号との比較のための基準信号を与えることによって除去することができ、基準信号の測定が反射された信号(関心のある信号)とほぼ同時になされていることを示す。下のグラフは、改良例が組入れられた場合には、以前のシステムである時間に亘って観察された振幅のドリフトが向上し得ることを示す。このシステムは依然として、たとえばチャネル選択スイッチまたはミキサーのうち1つなどの検出器内の構成要素の特徴の変化による軽微なドリフトを示す。この軽微なドリフトは、システムが組織認識モードで動作する場合の複素インピーダンスの測定に、システムの測定感度に悪影響を及ぼすレベルまで影響するようには思われない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織分類装置であって、
予め定められた周波数を有するマイクロ波放射源と、
第1の伝送路に沿って前記源から放射を受けるように接続可能なプローブとを備え、前記プローブは、前記源から順方向に組織へ放射を送出し、かつ前記組織から反射された放射を受けるように配置され、さらに
前記源から前記順方向に方向付けられた放射から導出される基準信号と、第2の伝送路に沿った、前記プローブから受けた前記反射された放射とを切換え可能な入力を受けるように配置された検出器と、
前記源と、前記プローブと、前記検出器との間に位置するサーキュレータとを備え、前記サーキュレータは、前記第1の伝送路に沿った順方向に方向付けられた放射を前記第2の伝送路に沿った反射された放射から分離して、前記順方向に方向付けられた放射が前記第2の伝送路に沿って進まないようにするように配置され、さらに、
前記検出器に接続された組織分類器を備え、
前記検出器は、前記反射された放射および前記基準信号の両者の大きさおよび位相を検出するように配置され、前記組織分類器は、前記検出器が検出した信号の大きさおよび位相に基づいて前記組織を分類するように配置される、組織分類装置。
【請求項2】
前記サーキュレータは、第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを有し、前記第1の伝送路は、前記第1のポートから前記第2のポートへの経路を含み、前記第2の伝送路は、前記第2のポートから前記第3のポートへの経路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サーキュレータの前記第1のポートと第3のポートとの間に接続された搬送波打消回路を含み、前記搬送波打消回路は、前記サーキュレータの前記第1のポートから前記第3のポートに漏れる前記源からの放射を打消すように配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記搬送波打消回路は、前記第1の伝送路からの順方向に方向付けられた放射を結合するように配置される第1の結合器と、結合された信号の大きさおよび/または位相を修正するように配置される信号調整器と、修正された前記信号を前記第2の伝送路に結合するように配置される第2の結合器とを備え、これにより、前記修正された信号は、前記サーキュレータの前記第3のポートから漏れている前記源からの放射を打消す、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記搬送波打消回路は、ケーブルアセンブリおよび/または前記プローブによって生じる前記反射された放射中の成分を打消すように配置される、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記基準信号は前記第1の伝送路から結合される、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記第1の伝送路上に方向性結合器を含み、前記方向性結合器によってサンプリングされる信号は前記基準信号であり、前記基準信号は前記検出器に与えられて前記反射された放射から減算される、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
ミキサーを含み、前記ミキサーは、前記検出器に対する周期的に切換えられる前記入力を受けるように接続される第1の入力と、前記ミキサーに対するミキシングダウン信号を受けるように接続される第2の入力と、前記検出器に接続される出力とを有し、これによ
り前記検出器に対する前記周期的に切換えられる入力の周波数は、前記入力が前記検出器で受けられる前に前記ミキサーによって変更される、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記ミキシングダウン信号は前記マイクロ波放射源から導出される、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記プローブは、前記第1の伝送路または前記第1の伝送路とは独立した第3の伝送路を介して前記源から放射を受けるように選択的に接続可能であり、前記第3の伝送路を介して前記プローブが受けることができる前記放射は組織を切除するためのものである、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記第3の伝送路は、前記第3の伝送路を介して受けることができる前記放射が前記第1の伝送路を介して受けることができる前記放射よりも高い振幅を有するように増幅器を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第3の伝送路は、前記装置のインピーダンスを前記組織に整合させるように配置される、調整可能な複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器を含む、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記プローブは組織に挿入可能である、請求項1から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記マイクロ波放射源は単一の周波数に位相ロックされる、請求項1から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記放射によって組織に放出されるマイクロ波パワーの振幅は、健常組織構造に対する熱傷または熱損傷を防止するように100mW(20dBm)未満である、請求項1から14のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−520777(P2010−520777A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552271(P2009−552271)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000762
【国際公開番号】WO2008/110756
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506390362)メディカル・デバイス・イノベーションズ・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL DEVICE INNOVATIONS LIMITED
【Fターム(参考)】