説明

経口ゼリー剤

【課題】十分に高い防腐力を有し、かつ味や食感が良く、服用性の良好な経口ゼリー剤を提供する。
【解決手段】ゲル化剤、パラベン類0.005〜0.1重量%、及び安息香酸又はその塩0.02〜0.5重量%を含有し、浸透圧が1000〜3500mOsmである経口ゼリー剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防腐力に優れ、味及び食感の良好な経口ゼリー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
経口ゼリー剤は、錠剤やカプセル剤のように口腔内や食道に付着することがなく、服用時に水を必要とせず、利便性に優れた剤形である。また、散剤のように、飛散することがなくスムーズに服用できる。さらに、いわゆるドリンク剤と比較して重量及び容積を大幅に減らすことが可能であるため、携帯性に優れる。
また、経口ゼリー剤は、嚥下機能が低下して、固形物や液体を摂取し難くなっている生活者でも容易に服用できる剤形である。高齢者は生理的・病的老化の進行に伴い、嚥下機能の低下が生じ、服薬時において支障が出る(非特許文献1)。また、嚥下機能の低下は、誤嚥(飲食物の一部又は全部が声門以下の気道に流入すること)による肺炎など、直接生命予後に関連する(非特許文献2)。日本人の死因別死亡率の4位が肺炎であるが、この3分の1から半分は誤嚥によるものと考えられている(非特許文献3)。
固形物や液体の誤嚥を防止するには、とろみを付与することやゼリー状にすること等の工夫が必要であると言われている(非特許文献4)。また、医療機関においては、ゼリー状の調剤が服薬コンプライアンスの向上に有用であることが報告されている(非特許文献5)。
【0003】
しかしながら、経口ゼリー剤は、食感及び硬さの点から、良好な服用性を確保するため水分量が高くなっていることから、種々の細菌、カビに対する防腐力が弱いという問題がある。
【0004】
経口ゼリー剤に関する技術として、(a)糖、(b)タンパク質、ペプチド又はアミノ酸、及び(c)電解質を含有し、脂肪を実質的に含有せず、かつアミノ酸スコアが90〜100であり、NPC/N値が50〜180であることを特徴とする栄養飲料又はゼリーにおいては、浸透圧を200〜440mOsmとすることで腸管を刺激せず、下痢の発生が回避できることが知られている(特許文献1)。また、ナトリウム型カラギーナンをゼリー剤として用いることで、水分量が少なく(水分活性0.8以下)、糖濃度が高い(糖濃度70°以上)半生ゼリーが得られること(特許文献2)、サイリウムシードガムをゼリー化剤として用いることで、水分活性が0.6〜0.8で、糖度が70〜95°であるグミ状ゼリーが得られること(特許文献3)、ゲル化剤の主成分をゼラチンとし、水分含量が10〜25重量%、20℃での水分活性が0.7以下とすることで微生物の繁殖の恐れのないグミ製剤が得られること(特許文献4)が知られている。
【0005】
しかしながら、前記技術のうち浸透圧に関しては、経口ゼリー剤の浸透圧を200〜440mOsmに調整しても真菌やカビに対する十分な防腐力は得られない。また、その他のゼリー剤は、いずれも水分含量の少ないグミ製剤の範疇に入るものであり、ゼリー剤としての良好な服用性を有するものではない。
【0006】
一方、塩酸ジフェンヒドラミン等の酸性で分解する薬物を含有する内服液剤については、pH4以上とし、安息香酸及び安息香酸塩の少なくともいずれかを0.01〜0.5W/V%(g/100mL)、アルキルエステルの炭素数が4〜6であるパラオキシ安息香酸アルキルエステルを0.005〜0.05W/V%(g/100mL)含有させることで、種々の菌・カビに対する防腐力に優れ、安定性が高く、味・風味が良好な内服液剤組成物とすることが可能であることが知られている(特許文献5)。
また、食塩、糖などの浸透圧の総計が約120気圧以上(オズモル濃度換算で約4800mOsm以上)であれば、発酵性酵母の増殖が抑制されることが知られている(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−315548号公報
【特許文献2】特開2001−252027号公報
【特許文献3】特開2001−178381号公報
【特許文献4】特開平09−52850号公報
【特許文献5】特開2003−95933号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】老年歯科医学、20、25−33(2005)
【非特許文献2】BRAIN and NERVE、591、1149−1154(2007)
【非特許文献3】野原幹司、「食医のススメ 日常臨床に役立つ摂取・嚥下障害の診断と治療」(2)、大阪歯科保険医新聞、2008年5月15日
【非特許文献4】伊東明彦 杉原正泰、高齢者向け製剤、月刊薬事、Vol.37、No.11(1995)
【非特許文献5】内田公子 太田ひさよ 松本有右 下平秀夫 内田寛、漢方製剤における剤形の検討 第1報、薬局、Vol.42、No.11(1991)
【非特許文献6】石井泰造監修、微生物制御実用事典、初版第1刷、P29、744(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、経口ゼリー剤においては、安息香酸及び安息香酸塩の少なくともいずれかを0.01〜0.5W/V%(g/100mL)、アルキルエステルの炭素数が4〜6であるパラオキシ安息香酸アルキルエステルを0.005〜0.05W/V%(g/100mL)含有させるだけでは、真菌・カビに対する防腐力が十分に得られないことが判明した。また、経口ゼリー剤において防腐力を向上させるために浸透圧を4800mOsm以上にした場合、ゼリー剤を形成しているゲル構造に影響を及ぼし、多量の離水を生じたり、ゼリー剤としての食感が悪くなることが判明した。
従って、本発明の課題は、十分に高い防腐力を有し、かつ味や食感が良く、服用性の良好な経口ゼリー剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、パラベン類と安息香酸又はその塩とを併用し、かつ浸透圧を1000〜3500mOsmに調整することにより、高い防腐力を有し、良好な味・食感・服用性とが両立した経口ゼリー剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、ゲル化剤、パラベン類0.005〜0.1重量%、及び安息香酸又はその塩0.02〜0.5重量%を含有し、浸透圧が1000〜3500mOsmである経口ゼリー剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の経口ゼリー剤は、高含水量でありながら、細菌だけでなく真菌、カビに対しても優れた防腐力を有し、かつ味、食感が良好であり、嚥下機能の低下した生活者においても服用可能な硬さを有する。従って、高齢者も安心して服用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の経口ゼリー剤とは、経口投与する、流動性のない形成したゲル状の製剤(日本薬局フォーラム JP Forum Vol.18,No.4)である。いわゆるグミよりも柔らかく、口に含んだとき、口腔内で容易に形がくずれるゼリー状の製剤である。
【0014】
本発明の経口ゼリー剤には、(A)ゲル化剤、(B)パラベン類、及び(C)安息香酸又はその塩が含まれる。
【0015】
本発明に使用するゲル化剤とは、流動性のあるものをゼリー状に固化する添加剤を示す。ゲル化剤を添加してゼリー状にしたものは外部からの応力に対して弾力性があり、さらに強い応力を与えると崩壊する。
【0016】
本発明に使用するゲル化剤には、カンテン(カンテンを粉末としたカンテン末を含む)、カラギーナン、カロブビーンガム(別名:ローカストビーンガム)、プルラン、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、アルギン酸又はその塩、ジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、タラガム、タマリンドガム、グアーガム、デンプンリン酸塩、アラビアガム、カードラン、ガティガム等が挙げられる。このうち、良好な食感と硬さを付与する点からカンテン、アルギン酸又はその塩、カロブビーンガム、キサンタンガム、プルランが好ましい。さらに、カンテン、アルギン酸又はその塩及びカロブビーンガムは、他のゲル化剤と比較して容易に良好な食感と硬さの経口ゼリー剤を製することが可能であるため特に好ましい。
これらのゲル化剤は1種又は2種以上を混合して配合することができる。
【0017】
これらのゲル化剤は、食感、服用感及び防腐力の点から、本発明経口ゼリー剤中に、0.15〜5重量%、さらに0.3〜3重量%、特に0.4〜2重量%含有するのが好ましい。
【0018】
本発明の経口ゼリー剤は、十分な防腐力を得る点から、(B)パラベン類を0.005〜0.1重量%含有する。パラベン類の含有量は、経口ゼリー剤においては0.1重量%を超えると、苦味が著しく強くなり、口腔内の刺激を有し、味が損なわれる。また、0.1重量%を超えると、可溶化剤や溶解補助剤等が多く必要となり、より一層の味の低下に繋がる。また、パラベン類の含有量が0.005重量%未満であると、防腐力は著しく弱くなる。より好ましいパラベン類の含有量は0.005〜0.05重量%である。
【0019】
本発明に用いられるパラベン類は、通常の食品、医薬品又は医薬部外品に使用されるものであればよく、特に制限されないが、例えば、日本薬局方収載品のパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルが挙げられる。
また、本発明に用いられるパラベン類は、予め加熱溶解させて添加することが望ましい。パラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸エチルは、パラオキシ安息香酸プロピル及びパラオキシ安息香酸ブチルと比較して水への溶解性が比較的良好で、製造時における溶解時間がパラオキシ安息香酸プロピル及びパラオキシ安息香酸ブチルと比較して短いなどの長所があり、食品、医薬品又は医薬部外品の防腐剤として汎用されている。しかしながら、パラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸エチルはパラオキシ安息香酸プロピル及びパラオキシ安息香酸ブチルよりも抗菌力が弱い。また、本発明経口ゼリー剤において、パラオキシ安息香酸メチル又はパラオキシ安息香酸エチルに比べて、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルは、抗菌力が強く、添加量を減らすことができるため、苦味がなく、服用感が良好である。
【0020】
本発明の経口ゼリー剤においては、パラベン類に加えて、(C)安息香酸又はその塩0.02〜0.5重量%を併用することにより、優れた防腐力が得られる。本発明の経口ゼリー剤においては、安息香酸及び/又はその塩の含有量が0.5重量%を超えると、味が損なわれる。一方、含有量が0.02重量%未満であると、防腐力は著しく弱い。より好ましい安息香酸又はその塩の含有量は0.05〜0.3重量%である。
本発明の経口ゼリー剤に用いられる安息香酸の塩としては、安息香酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
また本発明経口ゼリー剤中の、(B)パラベン類と(C)安息香酸又はその塩との含有重量比(B:C)は、防腐力の向上効果、味の点から、1:100〜5:1が好ましく、さらに1:100〜2:1が好ましい。
【0022】
本発明の経口ゼリー剤の浸透圧は、真菌、カビ等に対する防腐力の点から、1000〜3500mOsmであり、好ましくは1000〜2500mOsmである。
一般に、浸透圧の高い組成物中では、微生物細胞が生存することができず、増殖が抑制されることが知られている。例えば、こうした技術を実用化したものが野菜漬物の塩蔵である。酵母菌(好浸透圧性のものも含む)は浸透圧が約120気圧以上、すなわち約4800mOsm以上であれば、増殖が著しく阻害されると言われている(非特許文献6)。
しかしながら、経口ゼリー剤においては、浸透圧を4800mOsm以上にした場合、ゼリー剤を形成しているゲル構造に影響を及ぼし、食感が悪くなるという問題がある。
浸透圧が1000mOsm未満であると、十分な防腐力が得られない。一方、浸透圧が3500mOsmを超えると、ゼリー剤が硬くなり、服用性が低下する。
浸透圧は、第15改正日本薬局方 一般試験法 浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)に準じて測定する。ただし、浸透圧を測定する経口ゼリー剤は、予め加温した精製水に溶かして10倍希釈することにより、ゲル化剤による影響がないようにした。
浸透圧の調整は、水分量、糖類、多価アルコール及び他の成分の分量を調整することにより行うことができる。
【0023】
本発明の経口ゼリー剤中の水含有量は、防腐力、服用性、食感の点から、50〜90重量%が好ましく、さらに70〜90重量%が好ましく、特に70〜80重量%が好ましい。特に70重量%以上もの高含水率のゼリー剤においても十分な防腐力が得られることは驚くべきことである。
【0024】
本発明の経口ゼリー剤には、浸透圧の調整、硬さの調整、味、食感の点から糖類及び/又は多価アルコールを含有するのが好ましい。糖類としては、精製白糖、キシリトール、D−ソルビトール、デキストリン、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖水アメ、マルチトール、エリスリトール等が挙げられる。多価アルコールとしては、糖類として分類される糖アルコールを除いたものを指し、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。本発明の経口ゼリー剤においては、糖類と多価アルコールの両者を含有するのが、浸透圧の調整、硬さの調整、味、食感の点から特に好ましい。この中でも経口ゼリー剤の味、食感の点から、特に、糖類としては、精製白糖、果糖ブドウ糖液糖及び還元麦芽糖水アメから選ばれる1種又は2種以上を、多価アルコールとしては、グリセリン及びプロピレングリコールのいずれか又は両方を使用するのが望ましい。
なお、糖類の含有量は、経口ゼリー剤の味及び食感の点から経口ゼリー剤中10〜40重量%が好ましく、特に10〜30重量%が好ましい。多価アルコールの含有量は、味及び食感の点から経口ゼリー剤中2〜15重量%が好ましく、特に2〜10重量%が好ましい。
【0025】
また、本発明の経口ゼリー剤には、薬効成分を含有させることができる。そのような薬効成分としては、ビタミン類及びその他の成分が挙げられる。ビタミン類としては、チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、フルスルチアミン塩酸塩、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、シアノコバラミン、ニコチン酸アミド、トコフェロール酢酸エステルなどが挙げられる。またその他の成分としては、ヨクイニンエキス、トウキ流エキス、ニンジンエキス、加工大蒜(別名:オキソアミジン)、クコシ流エキス、ガラナエキス、ローヤルゼリー、オウセイ流エキス、アセトアミノフェン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、リゾチーム塩酸塩、カンゾウエキス、無水カフェインなどが挙げられる。
【0026】
また、本発明の経口ゼリー剤には、エデト酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸などの安定化剤;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの可溶化剤;乳酸、クエン酸ナトリウム水和物、L−グルタミン酸などの緩衝剤;アセスルファムカリウム、サッカリン、ステビアエキス、スクラロースなどの甘味剤;クエン酸水和物、DL−リンゴ酸などの酸味剤、カラメル、トウガラシチンキなどの矯味剤;食用赤色3号、ウコン抽出液などの着色剤;オレンジ風味、グレープフルーツ風味、ストロベリー風味、ピーチ風味、レモン風味、ヨーグルト風味などの香料;リン酸及びその塩、塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、乳酸及びその塩などのpH調節剤;エタノール、デキストリンなどの分散剤を含有させることができる。
【0027】
本発明の経口ゼリー剤のpHは、ゲル状態の安定性の点から3.0〜7.0が好ましく、特に3.5〜5.5が好ましい。
【0028】
本発明の経口ゼリー剤を製造するには、通常、前記成分を加えて混和し、適切な方法でゲル化させ、一定の形状に成形する。
本発明の経口ゼリー剤は、例えば加熱した水にパラベン類、安息香酸ナトリウム、多価アルコール、糖類及びゲル化剤を加えて溶解し、さらにクエン酸等の緩衝剤を加えてこれを溶解させ、水酸化ナトリウム等のpH調節剤により指定のpHに調整した後、メスアップを施し、十分に混和する。これを一定の形状に成形することにより製造できる。ゲル化剤などを溶解させる加熱水の温度は、80℃以上、例えば90℃程度にすればよい。
【0029】
本発明の経口ゼリー剤は、前記のように服用性が良好でかつ防腐力に優れる。ここで、本発明における食感が良好な経口ゼリー剤とは、保存により離水の発生がなく、服用した際の弾力性や硬さが良好な経口ゼリー剤を示す。
また、食安発第0212001号「特別用途食品の表示許可等について」で定められた えん下困難者用食品の規格基準IIの硬さの規格値を参考にして、20℃±2℃で経口ゼリー剤を圧縮したときの抵抗が1×103 〜1.5×105N/m2である場合、嚥下機能が低下した生活者でも安心して服用できる硬さが良好な経口ゼリー剤である。
本発明の経口ゼリー剤を充填する容器は、特に限定されないが、通例は気密容器が好ましい。
ポーションタイプの容器、パウチタイプの容器、三方シール容器などが挙げられる。この中でも特に小容量のスティック状の三方シール容器は、開封が容易であり、服用し易く、服用後に容器に残る量が極めて少ない。さらに携帯性に優れるなどの利点を有する。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
実施例1〜27及び比較例1〜18
表1〜表5の実施例1〜26及び比較例1〜18の記載の処方に従い、90℃程度に加熱した精製水にパラベン類を溶解した。その後各成分を加えて溶解し十分に混和した後、1回服用量のスティック状の三方シール容器に充填して封を施し、常温まで冷却した。
また、表3の実施例27については、パラベン類(パラオキシ安息香酸ブチル)を加熱した精製水に溶解せずに、常温のプロピレングリコールに溶解した。その他の成分は、90℃程度に加熱した精製水に溶解した。これらを合わせて十分に混和した後、1回服用量のスティック状の三方シール容器に充填して封を施し、常温まで冷却した。
得られた経口ゼリー剤について、以下の評価を行った。その結果を表1〜表5に示す。
評価方法
保存効力試験
実施例1〜27及び比較例1〜18の経口ゼリー剤について、第十五改正日本薬局方参考情報 「保存効力試験法」に準拠して保存効力試験を実施した。試験菌は、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus の細菌類及び Aspergillus niger、Candida albicansの真菌類とし、接種時の生菌数、14日後及び28日後の生菌数をカウントして、以下の判定基準によって防腐力を判定した。なお、摂取時の生菌数は、1gあたり105〜106個とした。
【0032】
細菌類の判定
◎:14日後の生菌数が摂取時の生菌数の1%以下まで低下し、28日後の生菌数が14日後のレベルと同等若しくはそれ以下まで低下した。
○:14日後の生菌数が摂取時の生菌数の10%以下まで低下し、28日後の生菌数が14日後のレベルと同等若しくはそれ以下まで低下した。
△:14日後の生菌数が摂取時の生菌数の50%以下まで低下したが、10%以下までは低下しなかった。
×:14日後の生菌数が摂取時の生菌数の50%以下まで低下しなかった。若しくは摂取時の生菌数よりも増加した。
【0033】
真菌類の判定
◎:14日後の生菌数が摂取時の生菌数の10%以下まで低下し、28日後の生菌数が14日後のレベルと同等若しくはそれ以下まで低下した。
○:14日後と28日後の生菌数がいずれも摂取時と同レベル若しくはそれ以下まで低下した。
△:14日後の生菌数が摂取時の生菌数と同レベル若しくはそれ以下まで低下したが、28日後の生菌数は摂取時よりも増加した。
×:14日後又は28日後の生菌数が摂取時の生菌数よりも増加した。
【0034】
味の評価
良く訓練された評価パネラー5名が実施例1〜27及び比較例1〜18の経口ゼリー剤を服用し、以下の評価基準によって苦味と服用感を評価し、5名の評点の平均値によって苦味の程度を判定した。なお、各経口ゼリー剤を服用する前には必ず常水を用いて口をすすぎ、前に服用した経口ゼリー剤の苦味が影響しないように配慮した。
評価基準
評点3:極めて僅かに苦味があったが、美味しく服用できた。
評点2:僅かに苦味があったが、美味しく服用できた。
評点1:苦味があり、美味しく服用できなかった。
評点0:強い苦味があり、極めてまずかった。
【0035】
苦味の程度の判定
○○:5名の評点の平均値が2.3以上〜3.0未満
○ :5名の評点の平均値が1.5以上〜2.3未満
△ :5名の評点の平均値が0.8以上〜1.5未満
× :5名の評点の平均値が0〜0.8未満
【0036】
食感の評価
実施例1〜27及び比較例1〜18の経口ゼリー剤を40℃の恒温室に1箇月間保管し、これを良く訓練された評価パネラー5名が服用して、以下の評価基準によって食感を評価し、5名の評点の平均値によって食感の良し悪しを判定した。
評価基準
評点4:ゼリー剤としての食感が極めて良好だった。
評点3:ゼリー剤としての食感が良好だった。
評点2:ゼリー剤としての食感がやや良好だった。
評点1:ゼリー剤としての食感が悪かった。
評点0:ゼリー剤としての食感が著しく悪かった。
食感の良し悪しの判定
○○○:5名の評点の平均値が3.2以上〜4.0
○○:5名の評点の平均値が2.4以上〜3.2未満
○ :5名の評点の平均値が1.6以上〜2.4未満
△ :5名の評点の平均値が0.8以上〜1.6未満
× :5名の評点の平均値が0〜0.8未満
【0037】
硬さ
○:20℃±2℃で圧縮したときの抵抗が1×103 〜1.5×105N/m2
×:20℃±2℃で圧縮したときの抵抗が1.5×105N/m2より高い
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
表1〜表5から明らかなように、ゲル化剤、パラベン類0.005〜0.1重量%、及び安息香酸又はその塩0.02〜0.5重量%を含有し、浸透圧が1000〜3500mOsmであるゼリー剤は、細菌及び真菌に対する防腐力が十分であり、苦味がなく、食感、硬さが良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤、パラベン類0.005〜0.1重量%、及び安息香酸又はその塩0.02〜0.5重量%を含有し、浸透圧が1000〜3500mOsmである経口ゼリー剤。
【請求項2】
パラベン類が、パラオキシ安息香酸プロピル及び/又はパラオキシ安息香酸ブチルである請求項1記載の経口ゼリー剤。
【請求項3】
糖類及び多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1又は2記載の経口ゼリー剤。
【請求項4】
多価アルコールが、プロピレングリコール及び/又はグリセリンである請求項3記載の経口ゼリー剤。
【請求項5】
糖類10〜40重量%及び/又は多価アルコール2〜15重量%を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の経口ゼリー剤。
【請求項6】
ゲル化剤が、カンテン、アルギン酸又はその塩、カロブビーンガム、キサンタンガム及びプルランから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の経口ゼリー剤。
【請求項7】
pHが3.0〜7.0である請求項1〜6のいずれか1項記載の経口ゼリー剤。

【公開番号】特開2011−246407(P2011−246407A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122522(P2010−122522)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000108339)ゼリア新薬工業株式会社 (30)
【出願人】(508293885)共栄製薬工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】