説明

経口固形製剤

微量で脂質の代謝改善が期待される(S)−2−[3−[N−[4−(4−フルオロフェノキシ)ベンジル]カルバモイル]−4−メトキシベンジル]ブタン酸(以下KRP−101と略す)の臨床試験を実施するにあたり、KRP−101を定量的に投与可能な経口固形製剤は具現化されていなかった。KRP−101と製剤担体(賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤)を混合後、造粒及び打錠し、コーティング剤をコーティングすることによって、微量のKRP−101を均一に含有するフィルムコーティング錠が得られ、臨床試験時に微量のKRP−101を定量的に経口投与可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、脂質の代謝改善が期待されるKRP−101を微量かつ均一に含有する経口固形製剤(錠剤)及びその製法に関するものである。
【背景技術】
【特許文献1】特開2001−55367
KRP−101は、置換フェニルプロピオン酸誘導体として公知であり([特許文献1])、ヒトペルオキシゾーム増殖活性化受容体アゴニスト活性を示し、微量でコレステロール及び中性脂肪の双方に対し低下作用を有する脂質代謝改善薬として開発中である。
KRP−101の臨床試験を実施するにあたり、微量で脂質の代謝改善が期待されるKRP−101を定量的に投与可能な経口固形製剤は具現化されていなかった。
【発明の開示】
KRP−101と製剤担体(賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤)を混合後造粒し、これを打錠し得られた素錠に、コーティング剤をコーティングすることにより、微量のKRP−101を均一に含有するフィルムコーティング錠が得られ、臨床試験時に微量のKRP−101を定量的に投与可能な経口固形製剤を提供可能となる。
すなわち、本発明は、
1)KRP−101を有効成分とし、KRP−101と製剤担体とからなる経口固形製剤;
2)製剤担体が、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤あるいはこれらとコーティング剤からなる1)に記載の経口固形製剤;
3)賦形剤が、乳糖及び/または結晶セルロース、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、コーティング剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/またはカルナウバロウからなる1)または2)に記載の経口固形製剤;
4)KPR−101に対し賦形剤による複数段階の混合希釈を繰り返して得られる混合粉末に、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を添加してKRP−101が1%未満の混合粉末を顆粒化してなる1)から3)までのいずれか1項に記載の経口固形製剤;
に関するものである。
本発明の経口固形製剤の製法は、次の通りである。粉末状もしくは微粉末状のKRP−101に賦形剤(例えば、乳糖及びブドウ糖などの糖類、D−ソルビトール及びマンニトールなどの糖アルコール類、結晶セルロースなどのセルロース類、トウモロコシデンプンなどの澱粉類で、好ましくは乳糖及び結晶セルロース)及び崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、メチルセルロースなどのセルロース類、クロスポビドン及び部分アルファー化デンプンなどで、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)と滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及び硬化油などで、好ましくはステアリン酸マグネシウム)を混合した後、乾式造粒する。得られた造粒物を打錠し、素錠にコーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース類、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸コポリマー、酸化チタン、三二酸化鉄及びカルナウバロウなどで、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルナウバロウ)をコーティングする。
微量のKRP−101を定量的に投与するには、製剤中のKRP−101の含量をより均一にする必要がなる。そのためには以下の製法が望ましい。KRP−101粉末中に少量含まれる凝集物を目開き177ミクロンの篩で強制的に押し出して通過させる。篩を通過したKRP−101 1重量部に対して、賦形剤4重量部を加え混合する(=混合粉末A)。混合粉末A 1重量部に対して、賦形剤1重量部を加え混合する(=混合粉末B)。所望のKRP−101含量になるよう、得られた混合粉末B、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を秤取した後、これらを混合する(=混合粉末C)。混合粉末Cを乾式造粒し、得られた顆粒を打錠し素錠とする。これにコーティングを施し、目的とするフィルムコーティング錠を製する。
こうして得られたフィルムコーティング錠は、一錠当り0.025〜1mgほどの微量なKRP−101を均一に含有することから、定量的な経口投与が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
目開き177ミクロンの篩で篩過したKRP−101及び乳糖(75μm篩過品)をそれぞれ11及び44g秤取し、メカノミル(岡田精工(株)、MM−10N型)で20分間混合した。これに乳糖(75μm篩過品)55gを加えて更に20分間混合した。得られた混合粉末、乳糖(75μm篩過品)、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをそれぞれ80、725.6、265.6及び120g秤取し、ハイスピードミキサー(深江工業(株)FSGS−5型)で10分間混合した。これにステアリン酸マグネシウム8.8gを添加し更に5分間混合した。得られた混合粉末をローラーコンパクター(フロイント産業(株)、TF−MINI型)で100kgf/cmの圧力で薄片状に成形し、この成形物をロールグラニュレーター(日本グラニュレーター(株)、GRN−T−54−S型)で破砕し顆粒を得た。この顆粒を、打錠機(畑鉄工所(株)、HT−AP18SS−II型)で圧縮成形し、1錠の重量が150mgで、直径及び曲率半径がそれぞれ7及び9mmの形状を有する素錠を得た。得られた素錠1錠に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910が5mgコーティングされるように、ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液をコーティングした後、カルナウバロウ0.001mgを加えて混合し、KRP−101を1mg含有するフィルムコーティング錠を得た。
【実施例2】
目開き177ミクロンの篩で篩過したKRP−101及び乳糖(75μm篩過品)をそれぞれ12及び48g秤取し、メカノミル(岡田精工(株)、MM−10N型)で20分間混合した。これに乳糖(75μm篩過品)60gを加えて更に20分間混合した。得られた混合粉末、乳糖(75μm篩過品)、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをそれぞれ50、4970、1675、750g秤取し、ハイスピードミキサー(深江工業(株)FS−20型)で10分間混合した。得られた混合粉末にステアリン酸マグネシウム110gを添加し、パウミキサー(ツカサ工業(株)、PM−V−80−S)で更に5分間混合した。得られた混合粉末をローラーコンパクター(フロイント産業(株)、TF−MINI型)で100kgf/cmの圧力で薄片状に成形し、この成形物をロールグラニュレーター(日本グラニュレーター(株)、GRN−T−54−S型)で破砕し顆粒を得た。この顆粒を、打錠機(畑鉄工所(株)、HT−AP18SS−II型)で圧縮成形し、1錠の重量が150mgで、直径及び曲率半径がそれぞれ7及び9mmの形状を有する素錠を得た。得られた素錠1錠に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910が5mgコーティングされるように、ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液をコーティングした後、カルナウバロウ0.001mgを加えて混合し、KRP−101を0.1mg含有するフィルムコーティング錠を得た。
【実施例3】
目開き177ミクロンの篩で篩過したKRP−101及び乳糖(75μm篩過品)をそれぞれ11及び44g秤取し、メカノミル(岡田精工(株)、MM−10N型)で20分間混合した。これに乳糖(75μm篩過品)55gを加えて更に20分間混合した。得られた混合粉末、乳糖(75μm篩過品)、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースそれぞれ2、801.2、268及び120gを秤取し、ハイスピードミキサー(深江工業(株)FSGS−5型)で10分間混合した。これにステアリン酸マグネシウム8.8gを添加し更に5分間混合した。得られた混合粉末をローラーコンパクター(フロイント産業(株)、TF−MINI型)で100kgf/cmの圧力で薄片状に成形し、この成形物をロールグラニュレーター(日本グラニュレーター(株)、GRN−T−54−S型)で破砕し顆粒を得た。この顆粒を、打錠機(畑鉄工所(株)、HT−AP18SS−II型)で圧縮成形し、1錠の重量が150mgで、直径及び曲率半径がそれぞれ7及び9mmの形状を有する素錠を得た。得られた素錠1錠に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910が5mgコーティングされるようにヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液をコーティングした後、カルナウバロウ0.001mgを加えて混合し、KRP−101を0.025mg含有するフィルムコーティング錠を得た。
<実験例1>
各実施例で得られたフィルムコーティング錠中のKRP−101の含量を、第十四改正日本薬局方収載の含量均一性試験法に従って測定した。その結果、いずれも含量均一性試験法の判定値に適合し、KRP−101の含量は均一であった。結果を表1に示す。

<実験例2>
各実施例で得られたフィルムコーティング錠について、第十四改正日本薬局方収載の溶出試験法第2法(回転数:毎分50回転、試験液:薄めたpH6.8のリン酸塩緩衝液900mL)に従って試験を行った結果、いずれも30分間で80%以上の平均溶出率(n=6)を示し、錠剤からのKRP−101の溶出は速やかであった。結果を図1に示す。
<実験例3>
各実施例で得られた素錠の硬度の測定、摩損度試験及び崩壊試験(試験液:水)を行った結果、いずれも物性上問題ない値を示した。結果を表2に示す。

<実験例4>
雄性ビーグル犬に、実施例1で得られたフィルムコーティング錠1錠を経口投与又はKRP−101を0.5mg/kg静脈内投与し、投与後24時間までの各々の血漿中KRP−101濃度を測定した。その結果、実施例1で得られたフィルムコーティング剤のバイオアベイラビリティーは85%と高い値を示し、フィルムコーティング錠から放出されたKRP−101は消化管から良好に吸収されるものと推察された。結果を表3に示す。

産業上利用可能性
本発明によって、微量のKRP−101を均一に含有するフィルムコーティング錠が得られ、臨床試験時に微量のKRP−101を定量的に経口投与可能となる。
【図面の簡単な説明】
[図1] 実験例3で実施した各フィルムコーティング錠の溶出試験結果を示す。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)−2−[3−[N−[4−(4−フルオロフェノキシ)ベンジル]カルバモイル]−4−メトキシベンジル]ブタン酸(以下KRP−101と略)を有効成分とし、KRP−101と製剤担体とからなる経口固形製剤。
【請求項2】
製剤担体が、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤あるいはこれらとコーティング剤からなる請求項1記載の経口固形製剤。
【請求項3】
賦形剤が、乳糖及び/または結晶セルロース、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、コーティング剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/またはカルナウバロウからなる請求項1または2記載の経口固形製剤。
【請求項4】
KPR−101に対し賦形剤による複数段階の混合希釈を繰り返して得られる混合粉末に、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を添加してKRP−101が1%未満の混合粉末を顆粒化してなる請求項1から3までのいずれか1項記載の経口固形製剤。

【国際公開番号】WO2004/091600
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505427(P2005−505427)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005317
【国際出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】