説明

経口投与用の抗炎症性キナ酸誘導体

抗炎症特性を有するキナ酸またはシキミ酸のアナログを含む化合物を開示する。この化合物は、経口投与に適し、安定であり、かつNF-kBの阻害、白血球接着の阻害、ならびに炎症性疾患に関与することが公知である他の因子およびサイトカインの阻害において、著しい効能を示す。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2007年11月9日に出願された米国仮特許出願第61/002,611号の優先権の恩典を主張し、この内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、キナ酸およびシキミ酸誘導体に関する。より具体的には、本発明は、キナ酸およびシキミ酸のアミド誘導体、ならびに抗炎症剤としてのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
非ステロイド性抗炎症剤は、年間およそ7千万〜1億個の処方箋の割合で患者へ処方されている。およそ300+億ドルが、抗炎症剤の購入のために毎年費やされ、研究者らは、新規のより優れた抗炎症性組成物を絶えず探している。かなりの割合のヒト疾患が「炎症性疾患」であると考えられ、または疾患の原因もしくは進行の部分としてかなりの炎症性構成要素を有すると考えられる。炎症性疾患は器官系に影響を与え得、それらは、高齢者、特定の人種においてより一般的であり得、または一方の性別においてより一般的であり得るが、それらは誰に対しても影響を与え得る。これらの疾患としては、いくつか例を挙げると、神経変性障害、喘息、肝炎、急性呼吸障害(ARD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、腎炎、糸球体腎炎、虚血/再灌流障害、敗血症性ショック、およびサルコイドーシスが挙げられる。これらの疾患に冒されている人の数は甚大である。例えば、米国の人口のおよそ15%がリウマチ障害に苦しんでいる。
【0004】
疾患への他の薬学的アプローチと同様に、医薬の副作用は常に懸念されている。いくつかの薬剤が、抗炎症剤として大きな将来性を示したが、それらの副作用のために、それらはヒトまたは動物への投与が認められず、または、副作用のために、状況のうちの最も必要なものにおいてのみそれらは使用され、それらの薬剤においては、それらの効果よりも、患者の安楽を改善するための著しい必要性がより重要である。
【0005】
新規の抗炎症性組成物が、何百万人もの患者の必要性を満たすために必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、キナ酸のアナログとして記載され得る組成物に関し、それらのアナログは、式Iにおけるような構造を有する。

式中、
R1およびR2は、各々独立して、水素、直鎖もしくは分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、ヘテロ環式アミン、アミノアルキル、

であり、かつ
R3、R4、R5、およびR6は、各々独立して、水素またはヒドロキシルである。
【0007】
本発明の化合物はまた、R3

で置換されている式Iの化合物、ならびに、R3が存在せず、二重結合が環の炭素1および6を連結している式Iの化合物を含み得る。
【0008】
本発明の別の局面は、治療有効量の式Iの化合物をヒトまたは動物へ投与する工程を含む、ヒトまたは動物において抗炎症効果を誘発するための方法である。一局面において、ヒトまたは動物において抗炎症効果を誘発するための方法は、式Iの化合物をヒトまたは動物へ投与し、細胞のNF-kB活性を低下させる工程を含み得る。別の局面において、ヒトまたは動物において抗炎症効果を誘発するための方法は、式Iの化合物をヒトまたは動物へ投与し、白血球接着を低下させる工程を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のアミドの合成を示すスキーム(スキーム1)である。個々の化合物についてのアミド基が-NH-R1によって示され、R1が、合成される各々の対応の化合物について示される。
【図2】化合物KZ-41の合成についての代替スキーム(スキーム2)である。
【図3】化合物KZ-09およびヘテロ環式アミン置換KZ-45の合成についてのスキーム(スキーム3)である。
【図4】本発明の化合物の合成についてのスキーム(スキーム4)である。
【図5】R3で置換を有するアミド化合物を含む、追加の化合物の合成についてのスキーム(スキーム5)である。
【図6】キナ酸の第3級アルコールアナログの合成についての条件を記載するスキーム(スキーム6)である。
【図7】R4位でのヒドロキシルが除去されているアナログの合成についての条件を記載するスキーム(スキーム7)である。
【図8】追加のアナログKZ-93およびKZ-91の合成についての条件を記載するスキーム(スキーム8)である。
【図9】記載のキナ酸アナログを使用して行われたSEAPアッセイの結果を示すグラフである。NF-kB活性に対する合成されたキナ酸アナログの効果を、NF-kB応答配列によって駆動される分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を含有するプラスミドが安定にトランスフェクトされたA549細胞を含む細胞ベースのハイスループットスクリーニングシステムを使用して評価した。TNF-α刺激で、NF-kBは、核へ移動し、κB応答配列に結合し、転写活性化が引き起こされる。この活性化は、SEAPレポーターの産生を駆動し、これは、NF-kBについての代理マーカーとして細胞培養上清中において測定され得る。細胞を、3 x 104細胞/ウエルで24ウエルプレート上に平板培養し、一晩増殖させた。A549 NF-kB SEAPレポーター細胞を、10 ng/ml TNF-αおよびx軸に記載のキナ酸アナログ(1マイクロモル)で処理した。18時間後、SEAP活性(y軸に記載)を測定した。
【図10】マウス背部弁モデルによって測定された白血球活性に対するキナ酸アナログKZ-41の効果を示すグラフである。
【図11】細菌酵素による分解に対するアナログKZ-41の安定性とキナ酸(QA)のそれとを比較するためのアッセイの結果を示すグラフである。残存薬物のパーセンテージがY軸に示され、酵素へ曝露された時間がX軸に示される。キナ酸についての結果は菱形(◆)で示され、KZ-41の結果は正方形(■)によって示される。
【図12】経口的に(PO)または静脈内投与(IV)によって提供される場合のアナログKZ-41のレベルを示すグラフである。腸内細菌によって産生される酵素によって分解される天然または合成キナ酸とは異なり、KZ-41は、分解されず、循環中への吸収に利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明者らは、キナ酸およびシキミ酸の誘導体を合成することにより、著しい抗炎症活性を有する化合物を提供した。これらの化合物は経口送達用に設計され、細胞傷害性を測定する細胞増殖アッセイであるMTSアッセイを使用する研究では、前記化合物が100マイクロモルレベルで細胞傷害性を示さないことが示されている。前記化合物は、室温で安定であり、水溶性でもある。
【0011】
キナ酸は、文献に以前記載された方法によって合成され得、またはキャッツクロー抽出物などの種々の植物抽出物から単離され得る。これらの抽出物は、抗炎症特性を有することが以前示された。その後の研究によって、この活性のかなりの部分が、植物抽出物のキナ酸部分に起因し得ることが実証された。抽出物は、アレルギー、関節炎、化学療法副作用、癌、細菌/真菌感染症、胃腸炎および胃潰瘍を含む種々の疾患について治療的に使用されてきた。熱水キャッツクロー抽出物である、C-Med-100(登録商標)の経口投与は、ドキソルビシン誘発白血球減少症ラットモデル中の全ての白血球集団を増強し、一方、化学療法誘発白血球減少症を治療するために一般的に使用される顆粒球コロニー刺激物質である、Neupogen(登録商標)は、好中球フラクションのみを増加させた。
【0012】
しかし、キナ酸は、腸細菌によって産生される酵素によって異化される。ラットにおいては、回収されるのはキナ酸の経口投与された用量の10%未満である。従って、本発明者らは、キナ酸の有利な効果を保持または改善し、同時に経口投与に有効である、キナ酸誘導体の製造を目指す。本発明者らは、例えばカルボキサミド置換などのアミド置換が、キナ酸およびシキミ酸と関連する有利な効果を保持しかつある場合には著しく改善された効果を提供する化合物を生成し、これらの同じ化合物は腸細菌酵素分解に耐性であることを発見した。本発明者らが合成した化合物は、細菌酵素によって異化されず、しかし、水溶性であり、室温で安定であり、抗炎症効果を引き起こすのに有効である。図12におけるグラフによって示されるように、前記化合物は、経口投与され得、静脈内(IV)投与によって引き起こされるものと同様の、またはそれよりも優れた、組織中における化合物のレベルを提供する。これらの特性のため、前記化合物は、抗炎症剤としての治療的使用について魅力的な選択肢となる。
【0013】
前記化合物は、比較的合成しやすく、本発明者らは、添付の図面に示されるように、当業者に一般的に知られている分子内転移または官能基の付加についての工程の組み合わせを使用する、それらの合成のための1つを上回るアプローチを見出した。一例において、本発明のキナ酸アナログの合成は、先ず、ラクトンを形成させることによって行った。キナ酸出発材料へ、還流ベンゼンおよびDMF中のPTSAを添加した。種々の個々のアナログを形成するために、ラクトンを、図1に示されるように、85℃で酢酸中において種々のアミン(図1、R基を参照のこと)と反応させた。
【0014】
手短に記載すると、図4(スキーム4)に示されるように、本発明の化合物は、それらを酢酸エステルへ変換することによってシキミ酸のアルコールを保護し、続いて、カルボン酸部分を活性化し、プロピルアミン(R=nPr)で処理し、続いて、LiOHで脱アセチル化し、所望のアミドを得ることによって形成され得る。
【0015】
追加の化合物の合成についてのスキームを図5(スキーム5)に記載する。手短に記載すると、化合物は、Kailaら(Kaila, N., et al., (2005) J. Med. Chem. 48: 4346-4357)によって以前記載された化学現象を使用して、しかし、効果および細菌酵素分解に対する耐性を改善するために記載のアミンを添加して、示される通りに合成され得る。
【0016】
第3級アルコールの合成についてのスキームをスキーム6(図6)に示す。それは、Hanessian(Hanessian, S. et al. (1997) J. Org. Chem. 62: 465-473)に概説されるように、キナ酸からの22の形成を利用する。2つのアルコールは、次いで、シリル保護基によって保護され、ベンジル保護基が除去され、中間体アルコールが得られ、これは、二クロム酸ピリジニウムによって酸化され、ケトン24が得られる。エポキシドは、プロピルアミン(R=nPr)で開環され得、続いて、新たに生成されたアルコールをシリル保護し、25が得られる。
【0017】
本発明の化合物は、式Iによって記載され得る。

式中、
R1およびR2は、各々独立して、水素、直鎖もしくは分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、ヘテロ環式アミン、アミノアルキル、ケトン、または

であり、
R3、R4、R5、およびR6は、各々独立して、水素またはヒドロキシルである。
【0018】
一局面において、R1およびR2はNと共にピペリジン環を形成し、本発明の別の局面において、R1またはR2が水素であり、R1またはR2の他方がアルキルである、化合物KZ-41などの化合物がある。一局面において、アルキルは-C3H7であり、R3〜R6の各々はヒドロキシルである。
【0019】
本発明の別の局面において、ケトンは、

であり得、R3〜R6の各々は、ヒドロキシルであり得る。
【0020】
本発明の化合物はまた、R3

で置換されている式Iの化合物、ならびに、R3が存在せず、環の炭素1と6との間に二重結合が存在する式Iの化合物を含み得る。
【0021】
本発明の化合物は、好都合なことに、好適な賦形剤と組み合わせて該化合物を含有する薬学的組成物の状態で投与され得る。このような薬学的組成物は、当技術分野において周知である方法によって作製され得、当技術分野において周知である賦形剤を含有し得る。このような方法および成分は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Alfonso Gennaro et al., eds., Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, Maryland, 20th ed., 2000)において見られ得る。本発明の化合物および組成物は、非経口的に(例えば、静脈内、腹腔内または筋肉内注射によって)、局所的に、経口的に、または直腸的に、投与され得る。
【0022】
経口治療投与について、活性化合物は、1つまたは複数の賦形剤と合わされ、例えば、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、およびカシェ剤の形態で使用され得る。このような組成物および調製物は、活性化合物を少なくとも0.1%含有するべきである。組成物および調製物のパーセンテージは、当然ながら、変化し得、好都合なことに、所定の単位投薬形態の重量の約2〜約100%であり得る。このような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効投薬量レベルが達成されるようなものである。
【0023】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた、結合剤、例えば、トラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウム;崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;および甘味剤、例えば、スクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパルテームを含有し得、または矯味矯臭剤、例えば、ペパーミント、ウインターグリーン油、もしくはチェリー香味料が添加され得る。単位投薬形態がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、液体担体、例えば、植物油またはポリエチレングリコールを含有し得る。種々の他の材料が、コーティングとして、またはそうでなければ固体単位投薬形態の物理的形態を変更するために、存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、ゼラチン、ろう、シェラックまたは砂糖などでコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロースまたはフルクトース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素ならびに香味料、例えば、チェリーもしくはオレンジフレーバーを含有し得る。活性化合物はまた、徐放性調製物およびデバイス中へ組み入れられ得る。
【0024】
注射または注入に好適な薬学的投薬形態は、無菌の注射可能または注入可能な液剤またはディスパージョンの調製に適している、有効成分を含む無菌水溶液もしくはディスパージョンまたは無菌粉末を含み得る。最終的な投薬形態は、製造および保管の条件下で無菌、流動的、かつ安定であるべきである。液体担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、植物油、無毒性グリセリルエステル、およびそれらの好適な混合物を含む、溶媒または液体分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、リポソームの形成によって、ディスパージョンの場合においては必要とされる粒度の維持によって、または界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0025】
無菌注射可能液剤は、上述の種々の他の成分を含む好適な溶媒中に必要量の活性化合物を組み入れ、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。
【0026】
局所投与について、本化合物は、液体組成物中において純粋な形態で適用され得、または、固体または液体であり得る、皮膚科学的に許容される担体と組み合わされた、組成物または製剤として投与され得る。
【0027】
式Iの化合物の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性、および動物モデル中におけるインビボ活性を比較することによって、決定され得る。マウス、および他の動物における有効投薬量をヒトへ外挿するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第4,938,949号を参照のこと)。
【0028】
本発明の別の局面は、抗炎症効果を提供するために本発明の化合物をヒトまたは動物患者へ投与するための方法である。本発明の化合物は、インビボおよびインビトロの両方において抗炎症効果を示した。テストした化合物の中で、いくつかが、NF-kB活性の阻害に対して効能を示し、N-プロピルアミド置換(KZ-41と指定)が特に有効であった。本発明の化合物はまた、白血球接着を低下させること、ならびに炎症性疾患またはかなりの炎症性構成要素を有する疾患に寄与することが知られている種々のサイトカインのレベルまたは活性を低下させることにおいて、効能を示した。
【0029】
従って、治療的に有効な投薬量は、経口的に、または静脈内もしくは抗炎症効果を達成するための他の好適な手段によって投与され得る。一局面において、本発明の組成物は、例えば、関節リウマチなどの疾患についてのNF-kB活性を阻害するために投与され得る。本発明の組成物はまた、ウイルス性疾患、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、ならびに増加したTNF-αおよびNF-kB活性と関連する他の疾患状態の治療に有効であり得る。
【0030】
本発明は、下記の非限定的な例によってさらに記載され得る。
【0031】
実施例
具体的なQAアナログの合成

1,3,4-トリヒドロキシ-6-オキサ-ビシクロ[3.2.1]オクタン-7-オン(2
撹拌子、還流冷却器、Dean-Starkトラップ、およびアルゴン注入口が備えられた200 mL丸底フラスコ中に、5 gのキナ酸(1、26 mmol)を置き、10 mLの乾燥DMFを注射器によって添加し、スラリーを室温で撹拌した。次に、ベンゼン60 mLおよびp-トルエンスルホン酸0.5 gを添加し、スラリーを26時間加熱還流した。TLCを使用し、反応の完了を確認した。EtOAcおよび12エプタン(12 eptane)の1:1混合物(100 mL)を、冷却した反応混合物へ添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、濾過した。回収した固体を、EtOAcおよび12エプタンの1:1混合物(100 mL)と共に室温で1時間再び撹拌し、濾過した。粉砕(tituration)を、EtOAcおよび12エプタンの1:1混合物(100 mL)でもう1回繰り返し、沈殿物を回収し、3.5 gのラクトン2(収率78%)が得られた。Mp: 192-193℃, Rf 0.25 (EtOAc); MS: [M-H]-: 171;

【0032】
1,3,4,5-テトラヒドキシ-シクロヘキサン-カルボン酸プロピルアミド(3
撹拌子、還流冷却器が備えられた50 mL丸底フラスコ中において、0.196 gラクトン2(1.125 mmol)、およびプロピルアミン(0.83 mL, 0.6g, 10.13 mmol)を合わせ、次いで氷酢酸(0.19 mL, 0.20 g, 3.36 mmol)を添加した。溶液を油浴中において30分間85℃へ加温し、その時点で、TLC(CHCl3:MeOH:NH3OH=100:10:1)は、出発ラクトンの完全な消費を示した。反応混合物を、TLCと同一の溶媒を用いて、フラッシュカラムによって精製した。生成物3を回収し、206 mg(収率80%)が得られた。Mp: 132-133℃, Rf 0.03 (CHCl3:MeOH:NH3OH = 100:10:1); MS: [M-H]- = 232;

【0033】

3,4-O-イソプロピリデン-1,5-キナ酸ラクトン(4
キナ酸(quinic qcid)(1)(20g, 104.1 mMol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(p-totuenesulfonic acid monohydrate)(0.2g)、2,2-ジメトキシプロパン(38g, 364 mMol)、およびアセトン(100 mL)の混合物を、2時間加熱還流した。反応混合物を冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチル(100 mL)中に溶解し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)で洗浄した。水相を、酢酸エチル(50 x 2 mL)で逆抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、溶媒を真空下で除去した。残渣を熱酢酸エチルで結晶化し、白色固体16 g(収率80%)が得られた。mp: 147-149℃ Rf = 0.3 (EtoAC: Hex = 3:7). MS: [M+Na]+ = 237.

【0034】
5,7-ジヒドロキシ-2,2-ジメチル-ヘキサヒドロ-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボン酸プロピルアミド(5
ラクトン(4)(10 g, 46.7 mMol)、プロピルアミン(30 mL)、および氷酢酸(10 mL)を、アルゴン下で45分間、油浴(85℃)を用いて還流した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100 mL)で洗浄し、酢酸エチル(100 x 3 mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、溶媒を真空下で除去した。残渣を熱酢酸エチルで結晶化し、白色固体9.7g(収率76%)が得られた。mp: 85-86℃, Rf = 0.15 (EtoAC: Hex = 2:1). MS: [M+Na]+ = 296.

【0035】
1,3,4,5-テトラヒドキシ-シクロヘキサン-カルボン酸プロピルアミド(3
前記アミド(5)(5.0 g)を水(10 mL)に溶解し、次いで室温で1M HCl水溶液(40 mL)を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。残留HClを、真空下でEtOEt(20 x 3 mL)を添加することによって除去した。残渣をオイルポンプ下でさらに乾燥した。生成物(3)を回収し、生成物4.26 g(収率100%)が得られた。mp: 132-133℃, Rf 0.03 (CHCl3:MeOH:NH3OH =100:10:1); MS: [M-H]- = 232;

【0036】
NF-kB活性に対するキナ酸アミドの効果
NF-kB活性に対する合成されたキナ酸アナログの効果を、NF-kB応答配列によって駆動される分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を含有するプラスミドを用いて安定にトランスフェクトされたA549細胞を含む、細胞ベースのハイスループットスクリーニングシステムを使用して評価した。TNF-α刺激で、NF-kBは、核へ移動し、κB応答配列に結合し、転写活性化が引き起こされる。この活性化は、SEAPレポーターの産生を駆動し、これは、NF-kBについての代理マーカーとして細胞培養上清中において測定され得る。
【0037】
細胞を、3 x 104細胞/ウエルで24ウエルプレート上に平板培養し、一晩増殖させた。A549 NF-kB SEAPレポーター細胞を、10 ng/ml TNF-αおよび図4のx軸に記載のキナ酸アナログ(1マイクロモル)で処理した。18時間後、SEAP活性(図9のy軸に記載)を測定した。
【0038】
白血球活性に対するキナ酸アミドの効果
LPSに応答しての白血球−内皮細胞相互作用に対するキナ酸アナログの効果をまた、マウス背部ウインドウイメージングモデルにおいてテストした。手短に記載すると、動物の背部皮膚弁に、イメージングウインドウを用意した。動物に全身性LPSを受容させ、白血球ローリングおよび接着を4時間後に定量した。ローリングおよび接着は、ビヒクルのみと比較して、LPS処置動物において有意に増加した(図10)。本発明のキナ酸アナログは、白血球接着を有意に減少させ、一方、白血球ローリングに対してほとんど効果を有さなかった。
【0039】
25〜30グラムの体重の、8〜10週齢の雄性ヌードマウスを、研究のために使用した。全ての外科的処置を無菌的に行った。動物に麻酔をかけた後、背部の皮膚の好適な領域を、クリッパーでの除毛についてマークし、続いて除毛ローションを使用した。外科的領域をアルコールおよびベタジン(betadine)で消毒した。薄い背部皮膚のひだを、背部から持ち上げ、2つチタンプレート間に挟んだ。チタンプレートを、該ひだ中に作製された穴を通る3つのネジおよびナットで堅く固定した。追加の安定性のために、プレートの上部へ皮膚を縫合した。皮膚のひだの一方の面上の皮膚の円形断面を、その皮膚組織および筋膜と共に、前記アセンブリのウインドウを介して切開し、背部皮膚のひだの反対側の皮膚の横紋筋および血管を曝露させた。亜鉛バシトラシン、硫酸ポリミキシンBおよび硫酸ネオマイシンを含有する抗生物質軟膏を、背部皮膚のひだのアセンブリ内の曝露された領域の上部の上の、スナップリングで固定されたガラスウインドウおよび切開した創傷の端へ塗った。動物に、疼痛について、手術後直ちに、および48時間のあいだ12時間毎に、ブプレノルフィン(s.c. 0.1 mg/kg)を受容させた。
【0040】
キナ酸アミドは細菌酵素によって分解されない
グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)を含む実験を、Adachiら(Adachi, O., et al., (2003) Biosci. Biotechnol. Biochem. 67: 2124-2131)によって記載されたように行った。手短に記載すると、G.オキシダンス(ATCC, Manassas, VA)を、水道水1リットル中のグリセロール、酵母抽出物3グラム、およびポリペプトン1グラムからなる基本培地中において培養した。キナ酸デヒドロゲナーゼ(QDH)を誘導するために、キネート(2 g)を添加し、pHを7.0へ調節した。微生物を30℃で培地(100 mL)中において増殖させた。細胞大量生産のために、培地100 mL中における種培養を一晩行い、卓上シェーカーインキュベーター中の5リットルの新鮮な培地へ移し、通気下で12時間培養した。採取した細胞を媒体(5 mMリン酸カリウム、pH 6.5)中に懸濁し、遠心分離し、細胞をペレット化した。細胞を凍結させずに保存した。
【0041】
5 mMリン酸カリウム, pH 6.5 10 mL当たり湿った細胞10 gの割合で、採取した細胞をホモジナイズすることによって、細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、フレンチプレッシャーセルプレスに2回通した。インタクトな細胞を低速遠心分離によって除去し、細胞フリーの抽出物をさらに遠心分離し(68,000 x g、90分間)、膜および細胞質可溶性フラクションを分離した。膜フラクションを、緩衝液中の沈殿物をホモジナイズし遠心分離を繰り返すことによって洗浄した。
【0042】
膜フラクション(乾燥された5グラム)を、30℃で異なるpH条件(pH 3〜10)下でQAアナログ(1 mM)と共にインキュベートした。培養培地を3時間まで30分毎にサンプリングした。以前の結果がこの時間枠内でのQAの完全な枯渇を示したので(Adachi, et al. (2003) Biosci. Biotechnol. Biochem. 67: 2124-2131)、3時間を選択した。サンプルを分析まで-80℃で保存した。
【0043】
サンプルを30℃で蒸発乾固し、水中0.5%アンモニアおよびアセトニトリルの1:1(v/v)混合物150 mLで再構成した。内部標準を添加し、質量分析応答の可変性を補正した。調製したサンプルを、分析のためにLC-MS/MSへ注入した。Shimadzu HPLCシステム(Shimadzu Scientific Instruments, Columbia, MD)は、SCA-10A vpシステムコントローラー、2つのLC-10AD VP液体クロマトグラムポンプ、およびCTC PAL(CTC Analytics AG, Zwingen, Switzerland)オートサンプラーからなった。周囲温度で維持された、2-cm C18ガードカラムによって保護された、Waters Nova-Pak(登録商標)C18 3 mm(2.1 x 50 mm)カラムを分析において使用した。移動相Aは水中0.5%アンモニアからなり、移動相Bはアセトニトリル中0.5%アンモニアからなった。流量を0.3 mL/分に設定し、勾配は4分で60%から40%Aへ、3分間定組成、次いで2分で40%へ戻した。MS/MS分析を、Sciex(登録商標)API 3000三連四重極質量分析計(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して行った。質量分析システムを、陰イオンモード下でターボイオンスプレーイオン化源を用いて運転した。スプレーニードル電圧を5,000 Vに設定し、ターボガス温度を400℃に設定し、デクラスタリング電位を60 Vに設定した。この研究のために、サンプルを、プロダクトイオン同定についてのQ1スキャン、代謝産物または酵素生成物のキャラクタライゼーションについてのプロダクトイオンスキャンを使用して、かつQAの定量化についての多重反応モニタリング(MRM)を使用することによって、分析した。定量化を、MRMトランジッションの1セットを使用して行った:親QAイオン(MH-/191)(登録商標)選択的娘イオンm/z 127。スイッチバルブを、質量分析計の前で使用し、サンプル中のバッファーマトリクスを除去した。ピーク領域、ピーク比、線形回帰、アッセイ濃度、および他の定量分析計算を、Sciex Analyst 1.4ソフトウエアで行った。較正標準中の分析物の濃度に対する分析物/内部標準のピーク領域比に関する加重線形回帰曲線である、較正曲線を、各QAアナログについて確立した。サンプル中の分析物濃度を、Analystソフトウエアを使用して較正曲線と比較することによって決定した。
【0044】
結果を図11に示し、ここで、キナ酸についての結果は菱形(◆)で示され、KZ-41についての結果は正方形(■)によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:

式中、
R1およびR2は、各々独立して、水素、直鎖もしくは分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、ヘテロ環式アミン、アミノアルキル、ケトン、または

であり、かつ
R3、R4、R5、およびR6は、各々独立して、水素またはヒドロキシルである。
【請求項2】
R1が水素であり、R2がアルキルであり、かつR3、R4、R5、およびR6が、各々、ヒドロキシルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2が-C3H7である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R1がシクロヘキシルである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R1がアミノアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
治療有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物対象へ投与して、ヒトまたは動物対象において抗炎症効果を引き起こす工程を含む方法。
【請求項7】
式(I)の化合物が、R1が水素であり、R2がアルキルであり、かつR3、R4、R5、およびR6が各々ヒドロキシルである化合物をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗炎症効果がNF-kB活性の阻害である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
抗炎症効果が白血球接着の阻害である、請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−503110(P2011−503110A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533331(P2010−533331)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/083068
【国際公開番号】WO2009/062200
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(504326686)ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション (22)
【Fターム(参考)】