説明

経口投与用シクロスポリン含有新規製剤

【課題】より容易に製造することができ、また優れた生物的−有効性を有する、新規なシクロスポリン−含有経口製剤を提供すること。
【解決手段】この新規製剤は、活性成分としてのシクロスポリンに加え、アルキレン−ポリエーテルまたはアルキレン−ポリエステルを含む。任意に、アルキレン−ポリオール、アルキレン−グリコール、ポリアルキレン−グリコールや低級モノオキシアルカンジオールまたはポリオキシアルカンジオールのアルキルジエーテルまたは部分エーテルおよび/または植物油またはその水和物または加水分解物が含まれていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、経口投与用活性成分としてのシクロスポリンからなる新規な医薬に関する。
【0002】
シクロスポリンは、特に免疫抑制剤として使用されているペプチドの1種である。さらに、このシクロスポリンは、抗炎症性および駆虫効果を有することも知られている。そこで、シクロスポリンの利用は、免疫抑制剤に制限されず、各種の自己免疫症に加え他の炎症状態、とくに自己免疫過程が引き起こす炎症状態を含む全ての炎症性疾患に関係する。
【0003】
上記炎症状態は、また慢性関節リウマチに加えリウマチ性疾患のような特に関節炎症を含む。シクロスポリンは、たとえばマラリアのような原生動物感染症の治療のための駆虫剤として使用することができる。シクロポリンは、高度に疎水性物質であり、そのためさらに十分な生物的有効性を確実にする製剤へそれを処理することは困難である。シクロポリンは、本質的に重要な腎毒性副作用を有するので、後者の性向は、特に重要である。
【0004】
これまでに提案されたシクロスポリン含有製剤は、表面活性剤と組み合わせたアルコールおよび/またはオイルまたは類似のビヒクルの利用に基づくものである。このような製剤は、例えばDE−OS2907460から公知である。
【0005】
しかしながら、このような液体成分の利用は、多くの不利益と困難性を伴うものである。オイルまたはこれと同等のオイルベースのビヒクルの利用は、特に長期間の治療の結果として長期投与される場合においては味覚を害することとなる。活性成分を溶解するために、多量のアルコールが必要とされるので、その結果さらに患者は永続的にアルコールを投与されることになり、また長期間の利用の間にアルコールが蒸発する場合には活性成分が沈澱する。
【0006】
軟質ゼラチンカプセルの形態でこのような製剤を提供する試みは、それと関連した高い経費のため満足すべき解決をもたらしていない。
【0007】
DE−OS4003844は、活性成分に加えて脂肪酸サッカライドモノエステルと希釈剤又はビヒクルを含む製剤系を提案し、その系により経口投与は快適に可能となり、また、たとえば生物的有効特性に関する効率の向上が達成されるよう十分な高濃度のミクロスポリンの含有量を有する固体、半固体、および液体製剤を提供することが可能となると言及している。したがって、これらの投与形態は、活性成分に加えて少なくとも2種の成分を含む。
【0008】
出願人は、このたび驚くべきことに、活性成分シクロスポリンに加えてわずか1種のビヒクル成分を含むだけの経口投与用シクロスポリン含有製剤を提供することを可能にする経口投与用製剤を見出した。該ビヒクル成分は、アルキレン−ポリエーテルまたはアルキレン−ポリエステルまたはそれらの混合物であり、ビヒクル系は少なくとも10のHLBを持たなければならない。本発明による製剤は、最良の公知のシクロスポリン含有製剤と少なくとも対比し得る活性成分の生物的有効性を発現する。
【0009】
本発明による同等に優れた生物的有効性を有する製剤は、より経済的な方法により製造でき、味覚を害する添加剤を用いずに、また含有アルコールによる不利益を回避しさらには同一の活性成分濃度を維持しつつ公知の製剤と対比するとき投与される処方の全量は減少するという意味において患者に受入やすくすることかできる。
【0010】
したがって、本発明は、活性成分としてシクロスポリンを含み、下記のように構成される経口投与用製剤に関する。
a)活性成分としてのシクロスポリン
b)少なくとも10であるHLBをもつビヒクル成分としてのアルキレン−
ポリエーテルまたはアルキレン−ポリエステル、またはそれらの混合物
本発明による製剤は、任意にさらに(c)炭素原子数2〜15を有するアルキレンポリオール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、低級モノオキシアルカンジオールまたはポリオキシアルカンジオールのC2-5−アルキルジエーテルまたは部分エーテル、および/または植物油またはその水和物または加水分解物を含んでいてもよい。
【0011】
さらに、本発明による製剤は、これらに加えて、公知の通常製剤に許容される、経口処方剤の製造の分野において公知であるような添加剤(d)を含むことができる。
【0012】
本発明による製剤は、重量部で活性成分の重量部当り(b)を1〜50部および/または(c)を0.5〜20部含み、好ましくは活性成分1部当り(b)を5〜10部および/または(c)を1〜10部含み、特に好ましくは活性成分1部当り(b)を5部および/または(c)を1部含む。
【0013】
成分(b)の場合においては、C3〜C5アルキレン−トリオールエーテルまたはC3〜C5アルキレン−トリオールエステルが好適であり、特に好ましいのはグリセリンのそれである。これらはまた、DE−OS4003844において「C5成分」として記述された物質に加えて、たとえば、アルキレン−トリオールエステルと他のモノオール、ジオールまたはポリオールとのエステル交換反応生成物を含む。少なくとも10のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセライドは、特に有益である。好ましくは商標名ゲルシル[ゲルシル(Gelucire)はガッテフォセ社(Gattefosse)の商標である]として公知のポリグリコール化グリセライドが用いられる。特にゲルシルR35/10,44/14,42/12,50/13,53/10およびそれらの混合物で、使用されたビヒクル成分のHLBが少なくとも10であるものが好ましい。
【0014】
任意成分(c)は、たとえばDE−OS3930928における成分1.1に関連するセクションに記述されたような低級(C2-22)モノ−またはポリオキシアルカンジオールのジエーテルまたは部分エーテルを含んでいる。任意成分(c)は、さらにC3-5アルキレンポリオール、C2-4アルキレングリコール、ポリ−(C2-4−アルキレン)−グリコール、およびたとえばひまし油、オリーブ油、パーム油、ココナッツ油、コーン油、ごま油などの植物油やその水和物および/または加水分解物を含んでいる。
【0015】
成分(c)は、単独でまたは混合物として含んでいてよい。好ましい成分(c)の例は、グリセリン、プロピレングリコールおよび600までの分子量を有するポリアルキレングリコールなどであり、とくにトランスカトール(transcutol)やひまし油およびそれらの水和物、加水分解物が好ましい。
【0016】
さらに使用可能な添加剤は、投与の経口形態の分野で通常の製剤上許容される添加剤が好ましい。その例をあげると、持続解放制御物質、増粘剤、保存剤、安定剤、調味剤、結合剤、潤滑剤およびその他の添加剤である。これらの添加剤は、組成物全体の50%まで達してもよいが、しかし好ましくは全組成物の25%を越えず、特に10%を越えない。
【0017】
同族体および誘導体を含む全ての公知の天然および合成のシクロスポリンが本発明による製剤に好適に使用される。このようなシクロスポリンの例は、たとえばDE−OS4003844やDE−OS4005190にみられる。好ましくはシクロスポリンAが使用される。
【0018】
投与の形態は、たとえば液体、顆粒、および錠剤やカプセルのような固形形態を包含する。これらは当業者に知られた通常の方法により製造することができる。
【0019】
本発明による投与の経口形態は、通常標準の服用形態で利用でき、標準服用量につき約20〜200mg、好ましくは50〜100mgの活性成分を含む。
【0020】
次の実施例は、本発明のさらに具体的な説明に供するものである。
【表1】


【表2】


【表3】

【0021】
製造:
実施例1〜9の組成物は、成分(b)が好ましくは少なくとも60℃に加熱することにより溶融され、活性成分(a)がその中に撹拌により溶解される。もし望むならば、任意の成分(c)が溶融物質中に加えられる。
【0022】
その後、得られた製剤は、たとえば、望ましい濃度で望ましいサイズの硬質−ゼラチンカプセル中に液体形態で充填される。組成物は、またさらに公知の方法によって錠剤に加工することもできる。このためには、溶融物は上述したように製造される。液体溶融物は、流出され、固化の後、ふるい機により粉砕される。
【0023】
こうして製造された顆粒は、通常の補助剤たとえば滑剤および潤滑剤、爆破(blasting)剤、充填剤、調味矯正剤等と混合される。仕上げられた混合物は、シクロスポリンの望ましい含量をもつ錠剤にプレスされる。錠剤はまた保護被膜で被覆してもよい。
【0024】
生物的−有効性:
本発明による組成物の犬に対する生物的−有効性に関する試験。
【0025】
6頭のビーグル犬のグループが生物的−有効性試験のために使用された。テスト医薬は、食道ゾンデ(sound)により空の胃をもつ動物に経口投与された。決められた時間に動物の伏在静脈から採血され、EDTA添加剤を含む適応性プラスチックチューブに集められた。血液サンプルは、−18℃で分析するまで貯蔵された。シクロスポリンの分析は、螢光−分極免疫分析[fluorescence−polarisation immunoassay(FPIA)]により全血液において行われた。
【0026】
血液医薬濃度が時間に関して適用された曲線下面積(AUC)がトラペゾイド(trapesoid,台形)ルールにしたがって計算された。本発明による組成物の平均AUC値は、次の表に、シクロスポリン飲用溶液の入手可能な市販の物質と、同じ犬を使って同じ服用量でのまったく同じ方法により試験されたシクロスポリンカプセル[サンジムンR(SandimmunR)]と対比して示される。
【表4】


生物的−有効性に関する上記テストが示すように本発明による製剤は、その生物的−有効性が今まで知られた製剤に少なくとも相応するような経口形態での活性成分シクロスポリンを供給することを可能にさせる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シクロスポリン、および
(b)ビヒクルとしてHLBが少なくとも10である、アルキレン−ポリエーテルまたはアルキレン−ポリエステルもしくはそれらの混合物
を必須成分とする、経口投与用製剤。
【請求項2】
必須成分として、さらに(c)アルキレン−ポリオール、アルキレン−グリコール、ポリアルキレン−グリコール、低級モノオキシアルカンジオールまたはポリオキシアルカンジオールのアルキルジエーテルまたは部分エーテルおよび植物油またはその水和物もしくは加水分解物から選択された少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
成分(a)および(b)の重量比が1:1〜50、好ましくは1:5〜10:、特に1:5である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
成分(a)、(b)および(c)重量比が1:1〜50:0.5〜20、好ましくは1:5〜10:1〜10、特に1:5:1である、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
成分(b)が飽和ポリグリコール化グリセライドである、請求項1〜4の1つに記載の製剤。
【請求項6】
成分(b)がゲルシル(Gelucires Gelucir)35/10、44/14、42/12、50/13、53/10およびそれらの混合物から選択される、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
成分(c)がグリセリン、プロピレングリコール、約600までの分子量を持つPEG(ポリエチレングリコール)、トランスカトール(transcutol)およびひまし油から選択される少なくとも1種である、請求項2または4に記載の製剤。
【請求項8】
硬質ゼラチンカプセルの形態または錠剤の形態である、請求項1〜7の1つに記載の製剤。
【請求項9】
シクロスポリンの濃度が服用単位当り20〜200mg、好ましくは50〜100mgである、請求項1〜8の1つに記載の製剤。

【公開番号】特開2006−206615(P2006−206615A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131593(P2006−131593)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【分割の表示】特願平6−522782の分割
【原出願日】平成6年4月20日(1994.4.20)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】