説明

経皮アレルゲン投与によるアレルギー治療

医薬品組成物、医薬品キット、およびアレルギー治療法が提供される。医薬品組成物は、経皮投与に適しており、アレルゲンと少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤とを含んでなる。医薬品組成物は、接着パッチ、皮内送達器具、軟膏、ゲル、スプレー、または皮膚への投与に好適な同様の種類の製剤としてデザインすることができる。さらに、そのような組成物のアレルギーの治療における使用が提供される。とりわけ、そのような組成物は、前処理された皮膚に投与される。前処理は、選択された投与部位の表皮の部分的または完全な脱角質化からなる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
前世紀では、すべての先進工業国においてアレルギーが段々と広まっていった。約100年前、花粉症は珍しい疾患であり、人口のおおよそ1%が罹患していた。今日、ヨーロッパ人口の約20%が花粉アレルギーに悩まされおり、そして前記人口の約1/3が、花粉、動物の鱗屑、イエダニまたは食物に対してアレルギーがある。
臨床診療において最も頻繁に遭遇するアレルギーは、季節限定の鼻結膜炎すなわち花粉症である。それは、感作された個体のマスト細胞と結合したIgEとアレルゲンが相互作用するときに発症する粘膜の炎症状態である。特徴的な臨床症状としては、鼻のかゆみ、くしゃみ、鼻漏、結膜の充血、および流涙が挙げられる。皮膚感作は、主に、草の花粉(人口の12.7%)、それに続いてイエダニ(8.9%)、シラカバの花粉(7.9%)および猫上皮(3.8%)によって生じる(Wuthrich B. et al., Int Arch Allergy Immunol 1995; 106: 149〜56)。アレルギー性鼻炎は、通常、小児期、平均して10歳前後の年齢で発症する。その罹患率は、とりわけ都市地域において増加しているが、その理由は不明である。草の花粉は、世界各地で花粉症の主な原因となっている。また、草によって誘発される花粉症は、ヨーロッパで最も一般的な花粉アレルギーでもあるが、その頻度は地域ごとに異なる。
アレルギー性鼻炎は臨床的に有意な健康問題というよりはむしろ厄介なものであると考えられることが多いが、米国では年間60億ドルの医療費がこの疾患に費やされており、また、この疾患が原因で仕事中または授業中に集中できなかったり、能力が低下することも多い(Durham S.R. et al., N Engl J Med 1999; 341: 468〜75)。
【0002】
現在の治療および予後
術策は、薬物治療の助けを借りて、アレルゲンへの暴露を防ぐのに尽力することから始まる。第二世代HI受容体拮抗薬およびローカルマスト細胞安定剤は、軽度または中程度の鼻炎を患っている患者の症状を制御する。より深刻な疾患にかかっている患者には、グルココルチコイド点鼻薬を投与する必要がある。しかしながら、これらの薬物治療は、症候性に過ぎず、アレルギー自体に対して長期的に持続する有益な効果は無い。花粉、動物の鱗屑またはイエダニに対するアレルギーは、通常、軽度の鼻炎および結膜炎として始まるが、年を追うごとに悪化する傾向がある。約1/3の患者は、気道のより深い部分の粘膜がますます関わりを持つようになり、最終的に喘息を発症する。初めは花粉症のみを患っていた別の1/3の患者は、食物に対するアレルギーを発症する。これは、多くの果物および野菜が、花粉タンパク質との相同性が高いタンパク質を含有しているためである。喘息の発症および食物アレルギーへの拡大を伴うアレルギーの前記経過は、症候性薬物治療の影響は受けないが、免疫系の調節、すなわち、アレルゲン特異的免疫療法を必要とする。
【0003】
NoonおよびFreemanは、鼻炎を患っている患者の大多数が、草の花粉の抽出物の注射を受けた後に症状の改善を示したことを1911年に報告している(Lancet 1911; 1: 1572〜3)。一般に「アレルギー注射」として知られている生物抽出物の注射の長期にわたる投与は、依然、アレルギー性鼻炎の治療の代表的なものである。脱感作または滅感作としても知られているアレルゲン免疫療法は、アレルギー患者にアレルゲン抽出物を少しずつ増量させながら投与していくことによって、後の原因アレルゲンへの暴露に関連する症状を和らげるという治療法である。外来治療では、アレルゲン投与量は、例えば標準化された草花粉溶液の場合、16週間にわたって週に一度増量する。維持量に達したら、1ヶ月〜2ヶ月の間隔で注射を打つ(Golden D.B. et al., J Allergy Clin Immunol 1981; 67: 4824)。免疫療法は、アレルギー性疾患の自然経過に作用し得る唯一の治療法であり、また、アレルギー性鼻炎を患っている患者が喘息を発症するのを防ぐことができる。
【0004】
しかしながら、慣用の皮下脱感作では、治療期間が約3〜5年であり、通常、約30〜100回のアレルゲン注射を要する。高用量のアレルゲンを投与しなければならないため、アレルギーによる副作用が生じることがあり、患者は、少なくとも1時間、医師の管理下に置かれなければならない。従って、副作用が少なく且つ患者が医師の管理下に置かれる必要がなく、さらには患者自身が自宅で自己治療できるような、より低用量の抗原による治療法が必要とされている。さらに、無針かつ無痛の治療法が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、アレルゲンと少なくとも1種の賦形剤とを含んでなる経皮投与用医薬品組成物を提供する。好ましくは、前記組成物は、接着パッチ、皮内送達器具、液体、ゲル、スプレーまたは泡の形態にある。前記抗原は、植物の花粉、塵埃、動物の鱗屑、イエダニ、真菌胞子、食物、あるいはアリ、ハチまたはスズメバチの毒から選択することができる。前記組成物は、前記抗原に対するアレルギーに苦しむ患者の治療、とりわけ、脱感作療法に有用である。
【0006】
第2の態様において、本発明は、上記のごとき医薬品組成物と、皮膚の選択領域の前処理を行い、それに続いて前記皮膚の前処理された領域に前記組成物を投与するための印刷された指示とを含んでなる医薬品キットを提供する。好ましくは、前記キットは、皮膚の選択領域を前処理するための手段、例えば粘着テープ、をさらに含んでなる。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、抗原と少なくとも1種の賦形剤とを含んでなり且つ経皮投与に適している医薬品組成物の、アレルギーの治療のための使用を提供する。さらに、本発明は、上記のごとき医薬品組成物と、皮膚の選択領域を前処理するための手段との組み合わせの、アレルギーの治療のための使用を提供する。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、抗原に対するアレルギーに苦しむ患者を治療する方法を提供する。前記方法は、(a)皮膚の選択領域を前処理する工程と、(b)前記皮膚の前処理された領域に医薬品組成物を投与する工程とを含んでなる。前記医薬品組成物は、抗原と少なくとも1種の賦形剤とを含んでなる。好ましくは、前記抗原は、天然アレルゲン、改質天然アレルゲン、合成アレルゲン、組み換えアレルゲン、アレルゴイド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
本発明のさらなる態様は、下記発明の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲に基づいて明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1の主要な態様によれば、アレルゲンと少なくとも1種の賦形剤とを含んでなる経皮投与用医薬品組成物が提供される。
【0011】
本願明細書において使用される医薬品組成物は、人間または他の動物に投与するのに適しており、かつ、健康状態の維持または症状、疾患または病気の予防、抑制、緩和または治療に有用である、少なくとも1種の生物活性剤を含んでなる組成物である。経皮投与とは組成物を皮膚の上に置く投与方法であると理解され、前記組成物は、生物活性剤を皮膚の上へ、皮膚の内部へ、あるいは皮膚を介して生物の他の組織へと放出する。経皮投与は、傷のない皮膚に対して行われることが多いが、傷のある皮膚に対して行ってもよい。経皮投与は、局所性、経皮または皮内投与と呼ばれることもある。経皮投与は、皮膚への生物活性剤の浸透の可能性を伴う場合、経皮投与と呼ばれることがある。特に明記しない限り、経皮投与は、本発明の文脈の中で、経皮的送達を伴うかどうかに関わらず、あらゆる種類の皮膚への投与について使用される。本願明細書において使用される「経皮投与用」という表現は、経皮投与に適していることと同じ意味であると理解される。換言すれば、本発明の組成物は、一般に認められている基準によって、経皮投与に好適となるように構成および加工される。
賦形剤は、医薬品組成物を調製するのに有用な任意の薬理学的に不活性で、薬学的に許容できる物質または物質の混合物である。潜在的に有用性のある賦形剤の例としては、溶媒、共溶媒、希釈剤、界面活性剤、共界面活性剤、増粘剤、被膜剤、安定剤、酸化防止剤、可溶化剤、pH調整剤、着色剤などが挙げられる。
【0012】
アレルゲンは、アレルギー反応を引き起こすことができる任意の化合物、物質または材料である。アレルゲンは、通常、任意の免疫反応を誘引することができる化合物、物質または材料である抗原の下位範疇であると理解される。本発明を実施するに当たって、前記アレルゲンは、とりわけ、天然アレルゲン、改質天然アレルゲン、合成アレルゲン、組み換えアレルゲン、アレルゴイド、およびこれらの混合物またはこれらを組み合わせたものから選択することができる。特に興味深いのは、IgE媒介即時型過敏反応を引き起こすことができるアレルゲンである。
好ましいアレルゲンの例としては、植物の花粉、塵埃、動物の鱗屑、イエダニ、真菌胞子、食物、あるいはアリ、ハチまたはスズメバチの毒に代表されるか、又はこれらから得られる、化合物または化合物混合物が挙げられる。アレルゲンまたはアレルゲン混合物は、自然のままで使用してもよいし、あるいは物理的または化学的改質または誘導体化を施した後で使用してもよい。任意に、前記アレルゲンの組み換えまたは合成類似体を、前記組成物に組み込んでもよい。
【0013】
好ましいアレルゲンは、それらの化学的または生化学的性質の観点から、天然または組み換えタンパク質またはペプチド、天然または組み換えタンパク質またはペプチドの断片または切片、融合タンパク質、合成化合物(化学アレルゲン)、アレルゲンによく似た合成化合物、あるいは化学的または物理的に変化したアレルゲン、例えば熱変性アレルゲン、を表すことができる。
特に好ましいアレルゲンは、花粉症を引き起こすことができる草、木および雑草の花粉のごとき、植物の花粉または植物の花粉のアレルギー成分、または前述のような修飾体または類似体である。草花粉アレルゲンの例としては、トウモロコシ、オオアワガエリ、イチゴツナギ、ギョウギシバ、ブルーグラス、ブロム、スズメノヒエ、カモガヤ、ペレニアルライムギ、ヨシ、ジューン(ケンタッキーブルー)、レッドトップ、ジョンソン、栽培ライムギ、栽培オートムギ、栽培小麦、オオスズメノテッポウ、バイア、エゾムギ、カナリアサード、シバムギ、スーダングラス、塩生草、およびこれらを混ぜ合わせたものが挙げられる。
【0014】
雑草花粉アレルゲンの例としては、一般的なブタクサ、西洋ブタクサ、オオブタクサ、ニセブタクサ、ニガヨモギ、デイジー、ロシアアザミ、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、ピレトリウム、イラクサ、オオバコ、ウキクサ、アカザ、スイバ、ヒユ、アカザ、タンポポ、アキノキリンソウ、ヒマワリ、セージ、オナモミ、クローバー、アルファルファ、ラビットブッシュ、ヒユ、アカザ、ビンボーグサ、野生アカザ、イエロードック、カミツレモドキ、およびこれらの混合物からのアレルゲンが挙げられる。
本発明を実施するための花粉アレルゲンが得られる木としては、例えば、ハンノキ、ニレ、オリーブ、セイヨウトネリコ、ハシバミ、マツ、ブナノキ、ヒース、スズカケノキ、カバノキ、ヒッコリー、ポプラ、クリ、シデ、ライム、シナノキ、カエデ、ティー、ヒノキ、ギンバイカ、アカシア、スギ、クワ、クルミ、西洋エンピツビャクシン、オーク、ヤナギ、およびこれらを混ぜ合わせたものが挙げられる。任意に、前記アレルゲンは、草、雑草および/または木の花粉アレルゲンの混合物を表すことができる。
【0015】
他の好ましいアレルゲンのグループは、菌類、とりわけ、カビ胞子、例えばPenicillium n., Cladosporium h., Aspergillus f., Mucor r., Candida a., Alternaria a., Botrytis c., Helminthosporium h., Fusarium m., Fusarium s., Stemphylium b., Rhizopus n., Aureobasidium p. (Pullularia), Phoma b., Epicoccum p., Trichoderma v., Curvularia s., Trichophyton m., Grass Smut, Malassezia pachydermatis, Cephalothecium, Hormodendrum, Mucor, Rhisopus, またはこれらを混ぜ合わせたもの、からのアレルゲンである。
【0016】
さらなる好ましいアレルゲンのグループは、動物毒、例えばミツバチ、スズメバチ、カリバチ、アシナガバチ、黄色スズメバチ、ゴキブリ、ノミ、アブ、クロアリ、イエバエ、アカアリ、蚊、ヒアリ、蛾、ウマバエからの毒、またはそれらの毒を混ぜ合わせたものに基づく。
さらなる好ましいアレルゲンのグループは、毒ではない他の畜産物、とりわけ、獣毛、動物の鱗屑、イエダニの排泄物、ゴキブリの萼成分などに基づく。
【0017】
空中浮遊はしないが、一般に食物に見られる天然アレルゲンであって、本発明の文脈において好ましいアレルゲンでもある天然アレルゲンとしては、例えば、ピーナッツ、木の実、ゴマ、海産物、牛乳、卵、エンドウ豆、豆、大豆、他の豆類、小麦、トウモロコシ、またはこれらを混ぜ合わせたものからのアレルゲンが挙げられる。
特に好ましい実施態様の1つにおいて、アレルゲンは、アルミニウムまたはカルシウム塩に吸着させてもよい、任意に改質された草、雑草および/または木アレルゲンの混合物である。
組み換え手段またはペプチド合成によって得られたアレルゲン、並びに抗原自然源または抽出物は、抗原の物理的および化学的性質を利用して、好ましくは分別またはクロマトグラフィーによって精製してもよい。
【0018】
アレルゲンは、元のアレルゲンのIgGまたはIgE結合部位によく似た小分子でもよい。本発明の組成物に使用することができるアレルゲンまたはアレルゴイドは、ペプチドまたはペプチド断片(例えば、T細胞ペプチド)に代表される。前記ペプチド断片は、生体アレルゲンから誘導され、かつ、T細胞に対する直接的な作用によって親アレルゲンの免疫調節作用を維持するようにデザインされているが、IgE媒介全身性作用が不足しているかまたは低減されている。一般に、そのようなペプチドは、約8〜約20個のアミノ酸残基を含んでなる。任意に、それらは環状であり、および/またはそれらのC−末端はアミド化されてもよく、および/またはそれらのN−末端はアセチル化もしくはアシル化されてもよい。そのような潜在的に好適であるペプチドの例としては、下記アミノ酸配列、すなわち、EICPAVKRDVDLFLTGT、FLTGTPDEYVEQVAQY、EQVAQYKALPVVLENA、KALPVVLENARILKNCV、RILKNCVDAKMTEEDKE、KMTEEDKENALSLLDK、KENALSVLDKIYTSPL、LTKVNATEPERTAMKK、TAMKKIQDCYVENGLI、SRVLDGLVMTTISSSK、ISSSKDCMGEAVQNTV、AVQNTVEDLKLNTLGRが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。そのようなペプチドの選択および任意の特徴についてのさらなるガイダンスは、例えばC. Alexander et al., The effect of Fel d 1−derived T−cell peptides on upper and lower airway outcome measurements in cat−allergic subjects, Allergy 2005: 60: 1269−1274といった文献から得ることができる。
【0019】
特に好ましい実施態様の1つにおいて、本発明の組成物は、免疫アジュバントを含有しないことを特徴とする。さらなる実施態様において、前記組成物は、1種以上のアジュバントを含んでなる。
免疫アジュバントとは、特異抗原と組み合わせて用いられることによって、前記抗原のみよりも強い免疫反応を生じさせる物質であると定義することができる。この広い定義には、非常に広い範囲の物質が包含される。多くの市販されているワクチン製品に使用されている免疫アジュバントとしては、無機塩、とりわけリン酸カルシウム、リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムが挙げられる。より効果的な免疫アジュバントとしては、免疫刺激オリゴデオキシヌクレオチド、免疫刺激RNA;抗体を含むタンパク質、またはトール(Toll)状受容体のごとき免疫刺激または共刺激受容体と一般に結合するより小さな合成化学物質が挙げられる。とりわけ、好適なアジュバントは、サポニン(例えばQS21)、サイトカイン(例えばIL−2、IL−12)、MDP誘導体、LPS、MLPおよびその誘導体、GM−CSF、リポペプチドおよびイミキモド(imiquimod)からなる群から選択することができる。潜在的に好適であるアジュバントの別のグループは、コロイド粒子、例えば脂質粒子、例えばリポソーム、ビロソーム、免疫刺激複合物(Iscoms)、渦巻型(cochleates)、またはポリマーナノ粒子またはマイクロ粒子、例えばポロキサマー(poloxamer)またはポリアクチド−コ−グリコリド粒子に代表される。
【0020】
本発明の組成物中のアレルゲンの量は、選択されたアレルゲンの性質を考慮して選択されるべきである。天然または改質生体アレルゲンまたはアレルゲンの混合物が用いられる場合、アレルゲンの含有量は、一般に0.001〜1,000μg、好ましくは0.01〜100μg、または約0.1〜約10μg、または約1〜約10μgでなければならない。アレルゲンの混合物が用いられる場合、アレルゲンの総量は上記よりも若干高く、例えば約0.1〜約10,000μg、約1〜約1,000μg、約5〜約500μg、約10〜約100μg、または約20〜約50μgである。
しかしながら、免疫力は前述の様々な種類のアレルゲンおよびアレルゴイド(改質された変異体および誘導体を含む)によって異なり得ることを考慮に入れるべきである。従って、質量よりも代替パラメータを利用して、本発明の組成物に含有されるアレルゲンの強さを説明することが有益となり得る。例えば、生物学的に同等なアレルギー単位(BAU)または反応性指数(R.I.)を使用して、免疫原性活性を定量化してもよい。BAUの観点からは、前記組成物中の好適なアレルゲン含有量は、約0.001〜約10BAUの範囲内で選択されることが好ましい。
前記組成物は、接着パッチ、皮内送達器具、液体、ゲル、スプレー、泡、または経皮投与に好適な任意の他の種類の剤形として調製することができる。剤形のデザインに応じて前記少なくとも1種類の賦形剤を選択することによって、人間への投与に適しており且つ効果的で安全な製剤が提供される。
【0021】
本願明細書において使用される接着パッチは、皮膚へ貼付するのに適した、平たい、テープのような剤形である。薬物送達との関連において、接着パッチは、経皮パッチ、経皮送達システム、経皮治療システム、皮膚用パッチなどと呼ばれることもある。
本発明によるアレルゲンを含んでなる接着パッチを作製する上で、様々な任意のデザインを選択することができる。ある実施態様において、パッチは、薬物内包接着剤またはマトリクス型システムとしてデザインされる。これは、パッチの感圧接着剤層内部にアレルゲン(生物活性原料または「薬物」を意味する)が内包されていることを意味する。他の実施態様では、パッチは、保有システムとしてデザインすることができる。これは、生物活性剤を透過膜層を介して皮膚に放出させる非接着剤、一般には液状または半固体状の保有層内部に、前記生物活性剤が内包されていることを意味する。さらなる主要なデザインによれば、パッチは、ヒドロゲル系として作製することができる。
薬物内包接着剤またはマトリクスデザインが選択される場合、パッチの有用な任意の特徴は、それ自体周知の調製法に応じて選択されてもよい。特に、前記パッチが、前記接着剤層に含有されるアレルゲンに対して実質的に不透過性である裏層、および/または、パッチが貼付されるまで、保管および取扱時にパッチを保護するための、放出ライナーとも呼ばれる剥離可能な保護層をさらに含んでなることが好ましい。
【0022】
図1は、マトリクス型接着パッチの一例の概略断面図を示している。接着パッチ(1)は、裏層(2)と、アレルゲンを内包する感圧接着剤層(3)とを含んでなる。剥離可能な放出ライナー(4)は、保管および取扱時に、特に接着剤層を保護する。前記放出ライナー(4)は、パッチが貼付される前に取り除かれる。前記各種層を構成するのに使用され得る材料に関する選択肢は多いため、前記図面における層同士の相対的な厚みは、一例に過ぎない。さらに、前記図面における層は、いずれも厚みを拡大して示してある。
生物活性剤のためのマトリクスも形成する接着剤層は、経皮システムに使用される任意の一般的な感圧接着剤をベースにして調製することができる。感圧接着剤の例としては、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブロック重合体などが挙げられる。スチレンブロック共重合体をベースとした接着剤の例としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンブテン−スチレン共重合体、およびそれらのジブロック類似体が挙げられる。これらの材料はすべて、本発明による賦形剤であると理解される。
【0023】
本発明の文脈において有用であると考えられるアクリレートポリマーは、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリレート、共重合可能な二次モノマーおよび官能基を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも2種以上の模範的な成分を含んでなる共重合体または三元重合体から成ることが好ましい。適切なモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリルアミド、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸2―エチルヘキシル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸t−ブチルアミノエチル、メタクリル酸t−ブチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0024】
ポリイソブチレンは、感圧接着剤に使用されることが多い弾性重合体である。ポリイソブチレンは、その分子構造により、化学安定性および高い耐老化性を備えている。ポリイソブチレンは、パッチの接着剤層において主要な基本ポリマーとしておよび/または粘着付与剤として使用することができる。主要な基本ポリマーとして、ポリイソブチレンは、皮膚に対して比較的弱い粘着力を示し、接着剤に粘着付与剤を添加することを必要とすることが多い。そのような粘着付与剤は、低分子量のポリイソブチレン、またはロジンエステル樹脂でもよい。
シリコーンポリマー、すなわちポリシロキサン、の具体例としては、2種類の主要成分、すなわち、ポリマー、またはゴム、および粘着性樹脂をベースとするシリコーン感圧接着剤が挙げられる。ポリシロキサン接着剤は、前記ゴム、通常は高分子量ポリジオルガノシロキサンと、前記樹脂とを架橋して、適当な有機溶媒中において縮合反応を介して三次元ケイ酸塩構造を形成することによって調製することができる。
さらに、前記接着剤層は、任意に、1種以上のさらなる賦形剤または成分、例えば透過促進剤、可塑剤、添加剤、安定剤、染料、希釈剤、粘着剤、顔料、担体、不活性充填剤、酸化防止剤、賦形剤、ゲル化剤、抗刺激剤、およびパッチを作製する際に有用であることが一般に知られている他の賦形剤を含有していてもよい。好ましい実施態様のうちの1つによれば、前記接着剤層の性質は、実質的に低刺激性である。
【0025】
前記裏層は、織物、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル、テレフタル酸ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、テレフタル酸ポリブチレン、ポリウレタン、コート紙、アルミニウムなど、またはこれらの任意の組み合わせを含んでなる閉塞性または非閉塞性材料でよい。構造的には、前記裏層は、モノリシック材または積層材でよい。前記裏層の好適な厚みは、前記裏層を構成する材料に応じて、約5〜約500μmであることが好ましい。前記裏層が主にポリマー材料からできている場合、前記裏層の厚みは、好ましくは約250μm以下、さらに好ましくは約150μm以下でなければならない。好ましい実施態様のうちの1つによれば、前記裏層の性質およびその厚みは、前記裏層が実質的に透過性となるように選択される。
【0026】
放出ライナーは、一般に、裏層と同じ種類の材料で構成されていてもよい。ただし、接着剤層と接触しなければならないその表面は、貼付の際に容易に剥離することができるように、シリコン処理を施されていなければならない。また、放出ライナーは、前記裏層よりも厚みがあり、前記裏層よりも柔軟性が低くてもよい。
マトリクスパッチの有用な任意の特徴についてのさらなるガイダンスは、例えば米国特許第4,588,580号、5,985,317号、5,783,208号、5,626,866号、5,227,169号から得ることができる。これらの文献の開示内容は、本願明細書に援用される。
【0027】
他の実施態様によれば、本発明の組成物は、保有パッチとして作製される。保有層を形成する液状または半固体状の賦形剤または賦形剤の混合物内に、前記アレルゲンが内包されていることが好ましい。前記保有層は、裏層と、多孔性または透過性の膜との間に位置する。前記膜は、パッチシステムの物理的完全性を保証し、また、内包された生物活性原料の放出の制御に寄与することもある。従って、前記膜は、本実施態様におけるパッチの重要な要素を形成する。
【0028】
当業者らは、前記膜として使用できる様々な材料を認識できるであろう。例えば、前記膜は、前記膜へと運ばれる前記保有層のアレルゲンおよび他の成分に対して本質的に透過性がある材料でできた稠密または均質な膜でもよい。あるいは、前記膜は、アレルゲンを透過させることができる材料で孔が充填された細孔性材料でできていてもよい。また、前記膜は、特定のポリマー材料でできた層でもよい。例えば、前記膜は、一定量のエチレン酢酸ビニル共重合体を含有していてもよい。稠密な膜の場合、前記保有層から前記膜へと移動する活性化合物分子は、通常、膜材料中に溶解および拡散する。細孔性材料の場合、活性成分が孔を通じて膜へと拡散する。稠密な膜を作製するための材料の例は、米国特許第3,598,122号および4,650,484号に記載されている。細孔膜を作製するための材料の例は、米国特許第3,797,494号および4,031,894号に記載されている。
【0029】
前記保有層は、液状または半固体状の担体中に分散または溶かされたアレルゲンを含んでなる。適当な液状の担体は、生理的に許容できる液体溶剤、例えば水、エタノール、アセトン、プロパノール、イソプロパノール、鉱油、シリコーン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、液糖、ワックス、石油またはグリセロールをベースとしてもよい。これらの液体溶剤は、任意に、共溶媒と組み合わせてもよい。前記液状担体の粘度は、増粘剤またはゲル化剤を添加することによって高めることができる。任意に、前記保有層組成物は、皮膚溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、軟膏、クリーム、ペースト、泡、スプレーなどの一般的な調製方式と同様にして調製することができる。前記粘度が前記保有層が半固体状になるぐらい十分高ければ、放出制御膜の無いパッチをデザインすることさえ可能となり得る。前記保有層を作製するのに有用な溶媒、共溶媒、増粘剤、ゲル化剤および任意の他の薬理学的に不活性な材料は、本発明による賦形剤であると理解される。
【0030】
図2は、保有システムを示す接着パッチの一例の概略断面図を示している。接着パッチ(5)は、裏層(2)と、感圧接着剤層(6)とを含んでなる。剥離可能な放出ライナー(4)は、保管および取扱時に、特に接着剤層を保護する。前記放出ライナー(4)は、パッチが貼付される前に取り除かれる。半固体状または液状の保有層(7)は、前記接着剤層(6)と前記放出ライナー(4)との間に位置しており、前記接着剤層(6)は、前記保有層(7)よりも大きな面積を有し、前記保有層(7)の面積全体を覆っている。前記パッチ(5)は、アレルゲンに対して透過性がある膜(8)をさらに含んでなる。前記各種層を構成するのに使用され得る材料に関する選択肢は多いため、前記図面における層同士の相対的な厚みは、一例に過ぎない。さらに、前記図面における層は、いずれも厚みを拡大して示してある。
【0031】
他の実施態様におけるパッチのデザインは、ヒドロゲルパッチである。ヒドロゲルとは、親水性ポリマーのごとき、水とゲル化剤との混合物である。一般に、ヒドロゲルは、水溶液を柔軟で安定した形状に維持するポリマー鎖の三次元格子を形成する。好ましいヒドロゲルは、一般に水性であり且つアルコールおよび/または油を含有していてもよい担体液体全体にわたって実質的に均一に分散されたゲル化剤を含有する。
【0032】
保有型パッチまたはヒドロゲル型パッチの場合、保有層またはヒドロゲル自体は、必ずしも、皮膚に対する十分な粘着力を与えるのに十分な粘着性を備えているとは限らない。これらの場合、活性成分を含有していないさらなる接着剤層を、前記ヒドロゲルまたは液体保有層の周りに、例えば接着剤の輪の形で配置すること、または、前記接着剤層の面積を前記保有層の面積よりも大きくすることによって、前記保有層またはヒドロゲルの周縁が前記接着剤層によって環状に囲まれるようにすることが好ましい。他の好ましい実施態様によれば、前記接着剤の性質は、実質的に低刺激性である。
保有型パッチおよびヒドロゲル型パッチのための適当な裏層およぶ放出ライナーの選択には、マトリクス型パッチに関連して前述したのと同じ一般原則が適用される。
【0033】
パッチのデザインがマトリクス型、保有型またはヒドロゲル型パッチのいずれであっても、パッチの形状は、正方形、長方形、円形、楕円形を示すかまたは不規則な形状を有するように選択することができる。皮膚と接触する前記パッチの面積は、好ましくは約1〜約400cm、さらに好ましくは約2〜約200cmの範囲内で選択される。さらなる好ましい実施態様において、前記パッチの皮膚と接触する面積は、それぞれ、約4〜約100cm、約5〜約80cm、約10〜約50cm、または約15cmである。
とりわけ保有型またはヒドロゲル型パッチの場合、さらに潜在的にマトリクス型パッチの場合も、前記パッチは、アレルゲンを皮膚内に放出するように構成された放出領域を示してもよい。前記放出領域は、前記パッチの皮膚と接触する面積全体よりも小さい。これは、例えば、液体保有層、ヒドロゲルまたはアレルゲン含有マトリクス層の粘着力が、皮膚への粘着を保証するには不十分であり、かつ、パッチの近位側(すなわち、皮膚と接触する部分)が、より粘着性はあるが実質的にアレルゲンを含有しない放出領域の周りの部分を示す実施態様における場合である。関連する実施態様において、前記放出領域の少なくとも一部は、前記感圧接着剤層で(近位側が)覆われていない。
これらの場合、パッチの皮膚と接触する面積全体が、前記放出領域の約200%を超えないことが好ましい。パッチの皮膚と接触する面積全体と前記放出領域との差分が、それぞれ、前記放出領域の約100%未満、または約75%未満、または約50%未満であることがさらに好ましい。前記放出領域自体は、好ましくは約0.5〜約200cm、さらに好ましくは約0.5〜約50cmまたは約1〜約25cmの面積を有する。
【0034】
さらなる実施態様によれば、本発明の組成物は、接着パッチよりも皮内送達器具としてデザインされる。前記接着パッチが、熱エネルギー、機械エネルギー、電気エネルギー、超音波エネルギーまたは磁気エネルギーを利用することなくアレルゲンが前記組成物から放出され、皮膚に吸収されることを意味する受動的送達システムであるのに対し、皮内送達器具は、一般に、そのようなエネルギーを利用する能動的送達システムである。
例えば、電気パルスを利用して活性分子を皮膚内へと運ぶ方法および送達器具は、米国特許第5,019,034号、5,387,189号、6,148,232号および5,318,514号から、それら自体が周知である。これらの文献の開示内容は、本願明細書に援用される。前記方法は、皮膚電気穿孔法(エレクトロポレーション)とも呼ばれる。
【0035】
他の実施態様では、例えば米国特許第5,885,211号に開示されているように、抗原の皮内送達に摩耗熱を利用している。前記文献の開示内容は、本願明細書に援用される。さらに他の実施態様では、例えば米国特許第6,334,856号に開示されているように、極微針を備えた送達器具を利用することができる。前記文献の開示内容も本願明細書に援用される。任意に、例えば米国特許第6,041,253号に記載されているように、超音波を電場と組み合わせて使用することによって、皮膚内へのアレルゲンの送達を図ることができる。前記文献の開示内容も本願明細書に援用される。
【0036】
他の実施態様において、本発明の組成物は、液体、ゲル、スプレーまたは泡として調製される。本願明細書において使用される液体製剤は、前記組成物の少なくともコヒーレント(すなわち連続)相の液体状態を特徴とする。前記液体が溶液である場合、前記液体は、同時にコヒーレントでもある1相のみを含んでなる。あるいは、液体製剤は、連続相内に分散され且つ液体であってもなくてもよい1種以上のさらなる相をさらに含んでいてもよい。例えば、懸濁液は、分散された固相を含んでなる液体であり、そして乳濁液は、分散された液相を含んでなる液体である。
皮膚投与用液体組成物のための賦形剤および製法は、一般に当業者には知られている。そのような組成物にとって好ましい液状成分とは、水、エタノールおよびイソプロパノールである。任意に、1種以上の有機共溶媒を含有させてもよい。その化学的性質に応じて、アレルゲンを、液相中に溶解、コロイド状に分散または浮遊させてもよい。アレルゲンを、溶解またはコロイド状に分散した状態で含有させることが好ましい。
【0037】
前記液体組成物を調製するためのさらなる任意の賦形剤としては、薬学的に許容できる増粘剤、ゲル化剤、界面活性剤、共界面活性剤、安定剤、着色剤、酸、塩基および緩衝塩のごときpH調整剤、脂質、油、防腐剤、糖類、糖アルコール、生体接着剤、フィルム形成ポリマー、可塑剤、および透過促進剤が挙げられる。好ましい実施態様の1つにおいて、液体組成物は、メタクリレート共重合体のごとき少なくとも1種のフィルム形成ポリマーと、任意に、前記フィルム形成ポリマーの機械的性質を調整するための可塑剤とを含んでなる。前記フィルム形成賦形剤を含有することにより、前記組成物は、投与されて液状成分が蒸発または吸収された後、皮膚の上に薄い軟質フィルムを形成し、このフィルムからアレルゲンが連続して皮膚内に放出される。前記組成物の粘度が十分に低ければ、有利なことに、前記組成物をスプレーの形態で提供および投与することができる。
【0038】
他の実施態様において、本発明の組成物は、ゲルとして調製される。本願明細書において使用されるゲルは、粘弾性特性を有する半固体材料である。ゲルは、低い機械的せん断応力を受けたときには弾性固体材料のように振る舞うが、高いせん断応力を受けたときには粘稠液のように振る舞う。降伏点または降伏応力は、ゲルが塑性的に変形し始める閾値を規定する。
【0039】
皮膚投与用ゲル組成物のための賦形剤および製法は、一般に当業者には知られている。賦形剤の選択は、どの種類のゲル処方が選択されるかにも依存する。選択可能な種類のゲルとしては、例えば、化学的または物理的に架橋された親水コロイドと水とをベースにした粘弾性ヒドロゲルのごとき透明な単相ゲル、ワセリンベースのゼリーのごとき親油性ゲルまたは軟膏、および親水(通常は水)相と親油(通常は油)相とを含んでなる水中油型または油中水型クリームのごとき半固形乳剤が挙げられる。
また、周知のように、製剤は、アレルギー検査のために使用してもよい。すなわち、アレルゲンを皮膚に投与して、患者の皮膚の反応を観察し、特定の患者が特定のアレルゲンに対してアレルギーがあるかどうかを判断するためのアレルギー検査パッチまたは相当する試験器具として使用することができる。
【0040】
本発明のさらなる主要な態様において、抗原に対するアレルギーに苦しむ患者を治療する方法が提供される。前記方法は、(a)皮膚の選択領域を前処理する工程と、(b)前記皮膚の前処理された領域に医薬品組成物を投与する工程とを含んでなる。前記医薬品組成物は、上記と同じ特徴を有する組成物である。とりわけ、前記組成物は、抗原と少なくとも1種の賦形剤とを含んでなり、そして前記抗原は、天然アレルゲン、改質天然アレルゲン、合成アレルゲン、組み換えアレルゲン、アレルゴイド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
前記組成物の投与のためにも選択される前記皮膚領域の前処理は、皮膚が刺激されおよび/または表皮の角化上皮層(角質層)が少なくとも部分的に破壊または除去されるように行われることが好ましい。例えば、皮膚の前処理は、ラビング、有機溶媒の投与、ケラチン分解剤の投与、脱毛、剥離(abrasion)、切除(ablation)、エレクトロポレーション、マイクロポレーション、テープストリッピング、またはこれらの任意の組み合わせから成っていてもよい。
【0041】
好ましい実施態様の1つにおいて、前記前処理は、選択された皮膚領域の表皮が少なくとも部分的に脱角質化される、すなわち、角質化層が完全にまたは部分的に除去されるように行われる。特に好ましいのは、テープストリッピングを利用して部分的または完全な脱角質化を行うことである。あるいは、他の機械的手段、例えばかみそりの刃または刃を備えた他の器具、または研磨紙(紙やすり)を利用して、前記角質化層を除去してもよい。
【0042】
本願明細書において使用されるテープストリッピングは、皮膚へ粘着材料を貼付した後剥離することと理解され、このテープストリッピングにより、角質層のケラチンの少なくとも一部が除去される。粘着材料の種類によっては、角質化層のかなりの部分、またはすべて、を除去するのに、テープストリッピングを2回以上連続して行わなければならない。皮膚の前処理に使用することができる粘着材料の例としては、フェーシャルストリップワックスシートのごとき粘着テープおよびワックスが挙げられる。好ましい実施態様において、前記前処理は、粘着テープを使用して少なくとも2回、さらに好ましくは少なくとも3回のテープストリッピングが行われる。
理論に縛られたくはないが、前記前処理には、とりわけテープストリッピングの場合、本発明の方法の効果に寄与する少なくとも2つの重要な効果があると考えられている。まず第一に、外部から投与されたアレルゲンの侵入に対する皮膚の最も重要な障壁を形成する角質化層の前記少なくとも部分的な崩壊は、アレルゲンの皮膚または経皮透過の増大をもたらす。その結果、アレルゲン分子は、表皮の基底層内に存在するランゲルハンス細胞にアクセスし易くなる。ランゲルハンス細胞は、皮膚を通じて体内に侵入するアレルゲンを局所リンパ節内に存在するTリンパ球に与えるので、そのようなアレルゲンに対する免疫反応において重要な役割を果たす。
【0043】
第二に、前記前処理には、それ自体、免疫活性化作用があると考えられている。皮膚保護機能の部分的または完全な崩壊は炎症を引き起こし、この炎症がランゲルハンス細胞とケラチン生成細胞とを活発にし、表皮機能を回復させる。さらに具体的には、前記崩壊は、腫瘍壊死因子アルファ、インターロイキン−1、およびケラチン生成細胞による顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子のごとき炎症性サイトカインの分泌をもたらす一連の分子事象を引き起こすことがあると考えられている。とりわけ腫瘍壊死因子およびIL−1の分泌は、表皮から局所リンパ節へのランゲルハンス細胞の移動を促進する。
【0044】
さらなる好ましい実施態様において、本発明の方法は、前述のような医薬品組成物の任意特徴のうちの1つ以上を利用して行われる。
【0045】
他の好ましい実施態様において、前記方法は繰り返し行われる。すなわち、前記前処理工程とアレルゲンを含んでなる組成物の投与の両方が繰り返し行われる。規則的または不規則な投与間隔が選択される際の基となる投与計画は、特定の患者の病気または疾患の重症度、組成物中に含有されるアレルゲンに対する患者の免疫学的感受性、治療的介入の段階、製剤の種類などを考慮に入れるべきである。一般に、前記前処理および組成物の投与は、約1日に1回〜約1年に1回の頻度で行われる。好ましい投与計画としては、とりわけ、1日おき、週に3回、週に2回、週に1回、および2週間に1回の投与が挙げられる。
【0046】
投与は、治療の過程において、任意に1回〜100回の間で繰り返してもよい。そのような治療過程において、5〜約20回、連続的に投与することがさらに好ましい。そのような治療過程は、一般に約1週間〜約6ヶ月間、さらに好ましくは約2週間〜約5ヶ月間、例えば約1ヶ月間、約6週間、約2ヶ月間、または約3ヶ月間にわたる。
治療過程は、生活環境の中で症状を誘発するアレルゲンに暴露される期間の前、後またはその期間中、例えば、花粉アレルギーを持つ患者にとっては花粉の季節の前、後またはその期間中、またはイエダニアレルギーを持つ患者にとっては秋期および冬期の前、後またはその期間中、に始めてもよい。
治療過程において、症状毎のアレルゲンの投与量または効力は実質的に一定のままでよいが、時間とともに調節、とりわけ増加させてもよい。前記組成物が接着パッチの形態である場合、投与量の増加は、投与するパッチに含ませるアレルゲンの量を増やすことによって、または、前処理および投与のエピソード毎に投与されるパッチの数を増やすことによって行ってもよい。
これらの投与計画のうちの1つに従って数週間または数ヶ月間行った治療の良い効果を維持するために、例えば約1ヶ月に1回、約2ヶ月に1回、約3ヶ月に1回、約6ヶ月に1回、または約1年に1回というように投与の頻度を減らして引き続き治療を続けることも有効である。
【0047】
前記組成物が接着パッチとして調製される場合、パッチの装着時間は、約1分間〜約14日間、さらに好ましくは約1時間〜約7日間の範囲内で選択されるべきである。さらなる好ましい実施態様において、前記装着時間は、約4時間〜約2日間、または約5〜約9時間(例えば一晩)、または約1日間、または約2日間である。
前記組成物は、前処理された皮膚に対して、前処理後約6時間以内に投与されることが好ましい。前処理後約4時間、2時間、1時間、30分以内、とりわけ約10分経たずに投与されることがさらに好ましい。
【0048】
さらなる好ましい実施態様によれば、前処理および本発明の組成物の投与のために選択される皮膚領域は、投与ごとに変えられる。さらに好ましくは、初めの前処理および投与に使用された選択皮膚領域は、前記初めの前処理後少なくとも約3日間の選択期間内は、その後の前処理および投与に使用されない。他の実施態様において、そのような選択期間は、それぞれ、少なくとも約1週間、約10日間、約2週間、約3週間、または約1ヶ月間である。
本発明の方法による前処理および投与のための皮膚領域が選択される身体部位は、適度に毛で覆われていて、過度に発汗の影響を受けない部位が好ましい。これは、本発明の組成物が接着パッチの形態にある実施態様の場合に特に考慮される。潜在的に好適である部位の例としては、腕、特に上腕、胸部、腹部、およびいくつかの制限はあるが大腿部および臀部も挙げられる。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、アレルギー治療薬を製造するための前述のごとき医薬品組成物の使用を提供する。さらに、本発明は、皮膚の選択領域を前処理するための手段と、本願明細書において規定されるがごとき医薬品組成物との組み合わせの、アレルギー治療薬を製造するための使用を提供する。この使用の特に好ましい実施態様によれば、皮膚の選択領域を前処理するための前記手段は、テープストリッピングのための手段、とりわけ粘着テープであり、そして前記医薬品組成物は、接着パッチの形態で提供される。前記医薬品組成物および治療法に関連して前述したようなさらなる任意の特徴は、本願明細書において規定される前記使用にも同様に適用される。
【0050】
本発明のさらなる主要な態様において、本願明細書において前述した組成物と、皮膚の選択領域の前処理を行い、それに続いて前記皮膚の前処理された領域に前記組成物を投与するための印刷された指示とを含んでなる医薬品キットが提供される。好ましい実施態様において、前記指示において規定される前処理は、前記治療法に関連して前述したのと同じ特徴を有する。特に、前記前処理が選択皮膚領域の部分的または完全な脱角質化から成ることが好ましく、前記脱角質化はテープストリッピングとして行われることが好ましい。また、前記指示は、前述の治療法の任意または好ましい特徴のいずれかを含んでいてもよい。
【0051】
有利なことに、前記キットは、前記組成物および前記指示だけでなく、前記皮膚の前処理を行うための手段も含んでいてもよい。この手段は、粘着テープまたはストリッピングワックスの形態で提供されてもよい。さらなる実施態様において、(a)減感作療法に好適な少なくとも1種のアレルゲンを含んでなる接着パッチの形態にある医薬品組成物と、(b)人間の皮膚の選択領域をテープストリッピングによって前処理するのに好適かつ適している少なくとも一つの粘着テープと、(c)前記皮膚の選択領域のテープストリッピングによる前処理を行い、それに続いて前記皮膚の前処理された領域に前記パッチを貼付するための印刷された指示とを含んでなる医薬品キットが提供される。任意に、前記キットは、複数のパッチを含んでいてもよい。前記医薬品組成物および治療法に関連して前述したようなさらなる任意の特徴は、本願明細書において規定される前記キットにも同様に適用される。
【0052】
前記医薬品組成物およびキットは、本発明によれば、アレルギーに苦しむ患者の治療に使用される。本願明細書において使用されるアレルギーは、アトピー性またはIgE媒介過敏症とも呼ばれる、潜在性または顕性1型過敏症の任意の形態を含むと理解される。この種類の過敏症は、一般に、免疫グロブリンE(IgE)を介したマスト細胞および好塩基球の過剰活性化を特徴とする。前記過剰活性化は、全身性炎症反応を引き起こす可能性があり、前記全身性炎症反応は、鼻水から生命にかかわるアナフィラキシー性ショックまでの様々な軽度、中等度および重度の症状を引き起こす可能性がある。
【0053】
アレルゲンに対する1型過敏性反応と、異物に対する正常な体液性応答反応との決定的な違いとは、過敏性の場合、形質細胞は、通常は新規抗原に対して作用するM型または認識済みの抗原に対して分泌されるG型よりもE型の免疫グロブリンを主に分泌することであると考えられている。IgEは、双方ともに急性炎症反応に関与するマスト細胞および好塩基球の表面上でFc受容体と結合する。その分泌時に、IgEは、マスト細胞または好塩基球上でFc受容体と結合することによって、アレルゲンに対して前記細胞を感作する。同じアレルゲンによるその後の暴露によってIgEの再活性化が生じ、これにより、恐らく共刺激シグナルとの組み合わせで、感作されたマスト細胞または好塩基球の脱顆粒が始まる。顆粒は、ヒスタミンおよび他の炎症性化学伝達物質、例えばサイトカイン、インターロイキン、ロイコトリエンおよびプロスタグランジンを、血管拡張、粘液分泌、神経刺激および平滑筋収縮のごときいくつかの全身的作用を引き起こす周囲組織内に放出する。これにより、急性アレルギー状態の典型的な症状、例えば鼻漏、かゆみ、呼吸困難およびアナフィラキシーが生じる。個人、特定のアレルゲンおよび/または前記アレルゲンが生体に侵入する経路によって、症状は、全身に及んだり、特定の器官または身体部位に限定される。急性反応の化学伝達物質が鎮静化した後、他の白血球、例えば好中球、リンパ球、好酸球およびマクロファージの初期部位への移動のため、晩期反応が生じる可能性がある。反応は、通常、元の反応後4〜6時間見られ、1〜2日間続くことがある。マスト細胞からのサイトカインは、長期効果の持続にも関与することがある。
【0054】
アレルギー性疾患は、それらが関連する主症状によって分類することもできる。例えば、本発明は、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)、通年性アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、およびそれらの組み合わせ、例えば鼻副鼻腔炎;喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎;アトピー性皮膚炎、じんましん;およびあらゆる形態の食物アレルギー、またはハウスダストアレルギー、または本願明細書に記載されたいずれかのアレルゲンに対するアレルギーに苦しむ患者の治療を含んでなる。
【0055】
本発明の範囲は、何の制限も無くあらゆるアレルギー患者の治療にまで及ぶが、アレルギーは持っていないがアレルギーを発症する危険性があるあらゆる個人の予防的治療にも及ぶ。そのような危険性は、一般的なアレルゲンへの高レベルの暴露のごとき環境要因、あるいは、例えば高親和性IgE受容体β鎖、IL−4およびCD14遺伝子の多型によって、遺伝的に決定されたりまたはされないこともある個人の体質に基づくことがある。さらなる好ましい実施態様において、本発明の方法は、アレルギー性疾患をすでに発症しているまたはアレルギーを発症する危険性が高い小児患者の予防的または治癒的治療のために使用される。他の実施態様によれば、本発明の方法は、そのような小児患者の親の予防的または治癒的治療のために使用される。
【0056】
本発明は、WHO方針説明書、アレルゲン免疫療法:アレルギー疾患のための治療ワクチン(ジュネーブ、1997年1月27〜29日)に示されているような、一般に認められた基準によれば慣用の減感作療法(とりわけ皮下投与減感作療法)の対象となるすべてのアレルギー患者の治療に特に好適であるが、本発明は、その優れた安全性および耐性により、特定の危険因子または相対的禁忌の存在のために慣用の減感作療法を受けることができなかった患者の多くにも好適であるという利点がある。
これは、本発明の方法が慣用の減感作療法よりもはるかに安全であるためである。皮下免疫療法、すなわち、アレルギー患者へのアレルゲンの皮下注射の主な欠点とは、アレルギー副作用である。これらの副作用は、注射箇所に限定されることがある。これらの副作用は、皮下組織および真皮に存在するマスト細胞上のアレルゲン架橋表面結合IgEによって引き起こされ、マスト細胞脱顆粒およびそれに続くアレルギー性炎を引き起こす。しかしながら、前記アレルギー副作用は、全身に及ぶこともある。全身性副作用は、細い皮下血管に間違えて注入されたアレルゲンまたは皮下血管中に拡散したアレルゲンによって引き起こされる。そこから、アレルゲンは、マスト細胞上の表面IgEと再度結合できてマスト細胞脱顆粒を引き起こす他の器官、例えば肺や離れた皮膚部位へと運ばれ、喘息またはじんましんを引き起こすことがある。しかしながら、最も懸念されるアレルギー副作用は、血中の好塩基性顆粒球上の表面IgEと結合したアレルゲンによって引き起こされる。好塩基球の脱顆粒は、死に至る可能性があるアレルギー性ショック、いわゆるアナフィラキシー性ショックを引き起こす。
【0057】
本発明によるアレルゲンの経皮投与は、前記副作用のいずれとも関連していないと考えられている。表皮にはマスト細胞が全く存在しないため、局所的副作用は生じない。また、表皮には血管が全く存在しないため、アレルゲンが血液の循環に達することは無く、よって全身性アレルギー副作用が回避される。
従って、本発明のさらなる実施態様は、下記危険因子、すなわち、重度の免疫病および免疫不全症、悪性腫瘍、重度の精神的疾患、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはAT−II拮抗薬による治療;薬物療法で制御できない重度の喘息および/または不可逆的気道閉塞;エピネフリンによる副作用の危険性を高める重大な心臓血管疾患;5歳未満の子供、のいずれかを示す患者が、本願明細書に記載されるように治療されることを定める。
【0058】
本発明の方法のさらなる利点とは、患者にとって慣用の皮下減感作療法よりもはるかに便利であること、および、患者の多くが痛いまたは不快だと感じる注射を必要としないことである。従って、その使用は、注射療法にうまく適合できない患者にとっても非常に有望である。
本発明の方法のさらなる利点とは、本発明の方法は患者による自己投与に好適であり、それ故に診療所への頻繁な訪問が不要であるので、慣用の皮下減感作療法よりも潜在的に費用効率が高いことである。
【0059】
以下、本発明を下記実施例を用いてさらに詳しく説明する。下記実施例は、本発明の範囲を限定しようとするものであると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0060】
1パッチ当たり計100μgの草花粉抽出物(主な草花粉アレルゲンをそれぞれ約2μg)を含有する接着パッチを以下のようにして作製した。5,000〜7,000のタンパク質窒素単位(PNU/g)または200IR/g(生物学的単位)の比活性度を有する草花粉抽出物を、ワセリン(医薬品等級:1パッチ当たり1.5ml)と混ぜ合わせた。得られた混合物を、片面に穿孔を有する、大きさが3.2cm × 5cmであるポリエチレンパウチに詰めて密封した。その後、各パウチの穿孔の無い面を、大きさが6cm × 9cmの一片の市販の医療用粘着テープ(Hydrofilm(登録商標)、Paul Hartmann AG、Heidenheim、Germany)に取り付けた。各パッチを一片の保護箔で覆い、ペーパーパウチに密封した。
【0061】
臨床研究において、花粉症に苦しむ20人の患者を、前記パッチで治療した。治療は、花粉の季節の前に始めた。投与用として、各個人の上腕の、面積が約4cm × 4cmである損傷の無い皮膚領域を選択した。前記領域を、一片の家庭用粘着テープ(Tesafilm(登録商標)、Beiersdorf AG、Hamburg、Germany)で覆った。その後、前記粘着テープを剥がした。このテープストリッピング手順を5回繰り返した。その後、前処理された皮膚領域に、前述のような草花粉抽出物を含んでなる接着パッチを貼付した。48時間後、前記パッチを取り除いた。この前処理およびパッチ貼付手順を、各個人が計12枚のパッチを受けるまで、1週間間隔で繰り返した。
【0062】
花粉アレルギーの重症度を、前記処理の前後に、草花粉抽出物を用いた鼻粘膜誘発試験(NPT)によって評価した。前記誘発試験は、例えばReichelmann H, Bachert C, Goldschmidt O, Hauswald B, Klimek L, Schlenter WW, Tasman AJ, Wagenmann M. Position statement. Allergo J (2002) 11:29〜36に先述されている鼻粘膜誘発試験に基づく適合法に従って行った。
【0063】
要約すると、前記試験の第1工程では、誘発の前に、患者の症状スコアを0〜12の尺度を用いて記録した。その後、鼻腔用スプレーボトルを用いて、プラシーボ溶液を負の対照として各鼻孔内に噴霧した。次の工程において、草花粉抽出物の1:1000希釈物を各鼻孔内に噴霧し、10分後、患者の症状スコアを再度評価した。その後、1:100希釈物を同じように投与し、続いて1:10希釈物を投与し、最後に約100RIの活性度を有する不希釈花粉アレルギー溶液を投与した。前記各投与の後で、スコアの評価を行った。
その結果、図3に示されるように、NPTスコアが処理後に大幅に向上することが観察された。前記図のx軸は、試験に使用されたアレルゲン溶液の投与量すなわち希釈率を示し、左端の1:1000から右端の1(不希釈)に及ぶ。y軸は、NPTスコア、すなわち、症状の重症度についてのスコアを示す。前記図中の箱は、25%および75%パーセンタイルを示し、箱内の線は平均値を示し、ウィスカーは5%および95%パーセンタイルを示し、そして点は外れ値を示す。空の箱およびそれらに関連する線、ウィスカーおよび点が、処理前のNPTスコアに関連するのに対し、黒塗りの箱およびそれらに関連する要素は、処理後の結果を示す。要約すると、NPTスコアは、処理後に著しく向上しており(p<0.05)、減感作の成功を示している。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】マトリックス型のデザインを有する接着パッチの一例の断面を示す図である。
【図2】保有システムを示す接着パッチの一例の断面を示す図である。
【図3】20人の患者の各々に週1回の間隔で投与された12枚の接着パッチの、アレルギー症状の重症度(NPTスコア)に対する効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルゲンと少なくとも1種の賦形剤とを含んでなる経皮投与用医薬品組成物。
【請求項2】
前記アレルゲンが、天然アレルゲン、改質天然アレルゲン、合成アレルゲン、組み換えアレルゲン、アレルゴイド、およびこれらの混合物またはこれらを組み合わせたものからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アレルゲンは、植物の花粉、塵埃、動物の鱗屑、イエダニ、真菌胞子、食物、あるいはアリ、ハチまたはスズメバチの毒、あるいはそれらの修飾体またはそれらの組み換えまたは合成類似体である、かまたは、これらから得られる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アレルゲンは、天然タンパク質またはその断片、組み換えタンパク質、融合タンパク質、天然ペプチドまたはその断片、組み換えペプチド、化学アレルゲン、アレルゲンによく似た合成化合物、または化学的または物理的に変化したアレルゲンである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
接着パッチ、皮内送達器具、液体、ゲル、スプレーまたは泡として調製される、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記接着パッチは、皮膚内にアレルゲンを放出するように構成された放出領域を示し、そして前記放出領域の面積は約0.5〜約50cmである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記接着パッチは、実質的に閉塞性の裏層を含んでなる、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記接着パッチは、実質的に低刺激性である感圧接着剤層を含んでなる、請求項5〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記放出領域の少なくとも一部は、前記感圧接着剤層で覆われていない、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
液状または半固体状である保有区画を含んでなり、そして前記アレルゲンは前記保有区画内に組み込まれる、請求項5〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
単位用量当たりのアレルゲンの含有量は、約0.1〜約1,000μgである、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物と、皮膚の選択領域の前処理を行い、それに続いて前記皮膚の前処理された領域に前記組成物を投与するための印刷された指示とを含んでなる医薬品キット。
【請求項13】
前記前処理は、前記皮膚の選択領域の部分的または完全な脱角質化をもたらす、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記前処理は、テープストリッピングを含んでなる、請求項12または13に記載のキット。
【請求項15】
前記皮膚の選択領域を前処理するための手段をさらに含んでなる、請求項12〜14のいずれかに記載のキット。
【請求項16】
前記皮膚の選択領域を前処理するための手段は、粘着テープである、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
(a)皮膚の選択領域を前処理する工程と、
(b)前記皮膚の前処理された領域に医薬品組成物を投与する工程と、
を含んでなる、抗原に対するアレルギーに苦しむ患者を治療する方法において、
前記医薬品組成物は、抗原と少なくとも1種の賦形剤とを含んでなり、そして前記抗原は、天然アレルゲン、改質天然アレルゲン、合成アレルゲン、組み換えアレルゲン、アレルゴイド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする前記方法。
【請求項18】
前記医薬品組成物は、請求項2〜11のいずれかに記載の組成物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記前処理は、前記皮膚の選択領域の部分的または完全な脱角質化をもたらす、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記前処理は、テープストリッピングを含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アレルギー治療薬を製造するための、抗原と少なくとも1種の賦形剤とを含んでなる医薬品組成物の使用において、前記医薬品組成物は経皮投与に適している、ことを特徴とする前記使用。
【請求項22】
アレルギー治療薬を製造するための、
(a)皮膚の選択領域を前処理するための手段と、
(b)経皮投与に適した医薬品組成物であって、抗原と少なくとも1種の賦形剤とを含んでなる医薬品組成物と、
の組み合わせの使用。
【請求項23】
前記医薬品組成物は、請求項2〜11のいずれかに記載の組成物である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記前処理は、前記皮膚の選択領域の部分的または完全な脱角質化をもたらす、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
前記前処理は、テープストリッピングを含んでなる、請求項24に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−516718(P2009−516718A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541645(P2008−541645)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011262
【国際公開番号】WO2007/059979
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508072291)ウニベルジテート チューリッヒ (2)
【Fターム(参考)】