経皮カテーテル給送式血管内閉塞器具
【課題】ディスク形状部と円筒形胴部との間の可撓性が高められ、ディスク形状部が開口によく整合し、特に単一ディスクの閉塞器具の保持性が改良された閉塞器具の提供。
【解決手段】網組みされた管状金属織製品で構成された血管閉塞器具10。金属織製品は、予め設定された拡張形状を有し、生体器官または体内通路における異常開口の閉塞を行うための形状付与がなされ、カテーテルを通して処置部位まで給送するために細長い縮小形状を有する。金属織製品は記憶特性を有し、拘束消失時に前記予設定拡張形状に戻る傾向がある。血管閉塞器具は、金属織製品から成る円筒形胴部12に隣接する少なくとも1つのディスク形状部14を含むと共に円筒形胴部とディスク形状部の間の移行直径部分(H)を有し、これは円筒形胴部およびディスク形状部の直径よりもかなり小さい。
【解決手段】網組みされた管状金属織製品で構成された血管閉塞器具10。金属織製品は、予め設定された拡張形状を有し、生体器官または体内通路における異常開口の閉塞を行うための形状付与がなされ、カテーテルを通して処置部位まで給送するために細長い縮小形状を有する。金属織製品は記憶特性を有し、拘束消失時に前記予設定拡張形状に戻る傾向がある。血管閉塞器具は、金属織製品から成る円筒形胴部12に隣接する少なくとも1つのディスク形状部14を含むと共に円筒形胴部とディスク形状部の間の移行直径部分(H)を有し、これは円筒形胴部およびディスク形状部の直径よりもかなり小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義の概念で云えば、一定の医学的異常を治療する血管内器具に関わり、より具体的には、生体の循環系内で血流の阻止が望まれるいずれかの部位で、選択的に血管を閉塞させるための血管内閉塞器具に関するものである。本発明により製造された器具は、カテーテルまたは類似器械を介して患者の体内の血管系内の遠隔部位へ給送するのに特に適している。その場合、閉塞されるべき通路は、軸線と、その軸線に対してほぼ直角に他の血管の血管壁に開く少なくとも1開口とを有する。
【背景技術】
【0002】
極めて様々な血管内器具が様々な医療処置に使用される。一定の血管内器具、例えばカテーテルや案内ワイヤは、通常、患者の体内の特定部位、例えば血管系内の選択部位に流体その他の医療器具を単に送達するだけのために使用される。他の、より複雑な器具は、特定の異常を処置するために使用されることが多い。例えば、それらの器具とは、血管の閉塞除去や中隔欠損その他類似の異常の処置に使用される器具である。
一定の状況下では、患者の血管、房(室)、経(通)路、穴(欠損部)、内(体)腔を閉塞させて、血流の通過を阻止する必要が生じよう。
【0003】
血管系内の種々の部位で血管を閉塞させるための機械式の塞栓形成器具は、技術的に周知であり、市販もされている。アムプラッツ(Amplatz)による特許第6123715号およびコトゥラ(Kotula)による特許第5725552号には、ニチノールによる金属織製品(しょくせいひん)である血管内閉塞器具が開示されているが、これらの器具は、拡張形状になるように型内で熱硬化させたもので、圧縮して処置部位へカテーテルを介して給送でき、給送カテーテルから強制送出されると、血管内で自己拡張し、処置部位で血流を遮断する。これらの器具の種々の設計および形状の詳細や、これらの器具の製造および使用方法は、前記特許に詳細に説明されており、ここに引用することで該特許は本明細書に取り入れられるものである。
【0004】
アムプラッツおよびコトゥラによる閉塞器具は、十分に役に立つとはいえ、改良できる点も多々ある。アムプラッツの特許5,725,552には、図6A〜Cおよび図11〜18に2つの閉塞器具が記載されているが、それらの各々は、一端または両端にディスク部を有する。これらの器具は、更に、円筒部を有し、該円筒部が、ディスクの最大直径より小さい直径を有し、ディスク平面に対し概ね直角の軸線を有するように延びている。この先行技術の一例が図1A、図1B、図2に示されている。
【0005】
先行技術のこれらの器具は、円筒部とディスク部との間に曲げに対する可撓性が欠けているため、必ずしも相互に整合せず、解剖学的な条件にも整合しない。こうしたことは、閉塞すべき開口を有する血管壁が、閉塞すべき血管の軸線に対し完全には直角でない場合に起こる。2ディスクを有する閉塞器具を、例えば心室中隔欠損(VSD)、心房中隔欠損(ASD)、卵円孔開存症(PFO)その他に使用する場合、壁部は、閉塞すべき通路または開口と直角ではない。こうした場合、先行技術による器具では、ディスクを整合させようとしても、可撓性が欠けているため、ディスクの各部分が、血流を阻止するはずの目標血管壁より遠くへ延びてしまったり、ディスク部分と血管壁との間に隙間が生じてしまう。
【0006】
アムプラッツとコトゥラの特許による単一ディスクの公知器具は、展開した場合、拘束を解かれて自己拡張した状態では、円筒部直径が閉塞される血管の直径より大きくなるように寸法付けられているために、所定位置に保持される。これによって、より大きく拡張しようとするニチノール織製品(しょくせいひん)の作用による荷重が、生体の内腔組織に加えられ、器具が所定位置に固定される。閉塞すべき血管の直径の推定が精密でないこと、円筒部が圧力変化に応じてたわんだり展開したりする能力に欠けること、円筒部の移動性がかけていることのために、保持力が、時には、器具を所定位置に保持するには不十分となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ディスク形状部と円筒直径との間の可撓性が高められ、開口によりよくディスク形状部が整合するようにされ、器具の保持、特に単一ディスクの閉塞器具の保持が改良された改良型の閉塞器具が得られれば、好適である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血管、内腔、通(経)路、洞であって、軸線と、その軸線に対してほぼ直角(プラスまたはマイナス45度)の他の血管壁に開いている少なくとも1開口とを有するものを選択的に閉塞させるのに好適である。無制約にそのような条件に合う一例は、動脈管開存症(以下、PDAと称する)である。別の例は、血管、内腔、通路、穴であって、一方の血管から他方の血管へ血液が流れるもの、例えば心房中隔欠損症(以下、ASDと称する)、または、心室中隔欠損症(以下、VSDと称する)である。更に別の例として、動静脈瘤(AVF)または動静脈奇形(AVM)を挙げることができる。
【0009】
これらの血管内器具を弾発性金属編組物で形成する場合、複数の弾発性ストランドが用意され、ワイヤが編組により形成され弾発性金属編組物が作られ、この編組物が、熱処理により目標形状に事実上硬化させられる。この編組物は、次に成形部材の成形面に概ね合致するように変形され、成形部材の成形面に接触させられ、高温で熱処理される。熱処理の時間および温度は、編組物が変形状態を事実上保持できるように選択される。熱処理後、編組物は、成形部材から取り外され、変形状態の形状を事実上保持することになる。このように処理された編組物は、患者の体内の通路内へカテーテルを介して配置できる医療器具の拡張状態を規定する。
【0010】
本発明の複数実施例は、先行技術の医療器具に比較すると、解剖学的な特定条件を有する血管を閉塞するため、特定の形状面での改良がなされている。本発明の器具は、金属製編組物で形成され、拡張形状と縮小形状とを有する。使用時には、案内カテーテルを患者体内の通路に挿入し前進させ、生理学的異常の治療のため、治療部位に隣接してカテーテル先端部を配置できる。予め定められた形状に形成され、既述の工程で作られた医療器具は、縮小させてカテーテル内腔へ挿入できる。器具は、カテーテル内を強制通過させられ、カテーテル先端部から送出されると、その記憶特性により治療部位で拡張状態に事実上復元される。実施例のうちの第1実施例によれば、概ね細長の医療器具は、中間の概ね円筒形の部分と1対の拡径ディスク部分とを有し、1つの拡径ディスク部分が各々円筒部のどちらかの端部に配置されている。別の実施例では、医療器具は、概ね鐘形であり、テーパー付き第1端部とディスク状の拡径第2端部とを有する細長の円筒部を備えており、該第2端部は、血管内に配置された場合、血管、通路、腔、洞の軸線に対して概ね直角に配向される編組ディスクを形成する。
【0011】
この発明性ある器具では、ディスク部/中間円筒部間の可撓性が、両部分間の移行部直径を極めて小さくすることによって改善され、移行部直径が中間円筒部の直径より、はるかに小さくなされている。この小さい移行部直径により、ディスクは、この直径部を中心として容易にたわむことができ、開口を有する血管壁に配向でき、閉塞すべき内腔の軸線と内腔への開口を含む壁部との間の広範囲の解剖学的に異なる状態に適応することができる。
小直径の移行部を器具の中間円筒部の端部に形成した凹部内に引込めることによって、血管内に器具を正確に配置する作業が、過度に危険なことではなくなった。凹部に引込めることによって、ディスクと円筒部とは、自由スペース内にあるときに接近位置に保持できることになり、また器具が機能している間には、ディスクと円筒部との離間を僅かにすることができる。
【0012】
改良型の単一ディスク器具は、また先行技術に比較すると、編組構造物の中間円筒部の一部に縫着または固定された可撓性ニチノールの形状記憶ワイヤを付加することによって保持力が改善される。ワイヤは弾発性のある鉤状端部を有し、該鉤状端部が、配置時には器具の中間円筒部表面から外方へ延びて血管壁に反転可能に係合され、ディスク端部方向への器具の運動に抵抗するように設計されている。この鉤状端部は、返しを有しておらず、鉤のとがった端部の方向とは逆方向(ディスクから離れる方向)へ器具を移動させることで器具を再配置できる。器具は、また、配置後、カテーテル先端部内へ引き戻す際には、鉤を弾発的に真直化して給送カテーテル内に引き戻すことができる。これらの鉤状ワイヤは、閉塞すべき血管よりも中間円筒部の直径を大きく寸法づけすることによって得られる器具保持力に、付加的な保持力を加えるために役立つ。
【0013】
本発明は、患者の体内の脈管系、例えば血管、通路、内腔、組織を貫通する穴、洞等内に使用するための、改良型経皮カテーテル用血(脈)管内閉塞器具を提供する。本発明の医療器具の形成時には、金属編組物が、複数ストランド間で予め決められた相対配向を有する多数のワイヤストランドで形成される。
金属ストランドは、2組の事実上平行で概ね螺旋状のストランドを形成し、一方の組のストランドは、一つの「方角」(hand)を有し、つまり一方の方向に回旋し、他方の組は反対方向に回旋する。こうすることで、繊維産業で管状編組物として知られる概ね管状の織製品が形成される。既述のアムプラッツおよびコトゥラによる特許は医療器具および医療器具の製造方法を詳細に説明しているので、これ以上の詳しい説明は不要である。
【0014】
ワイヤストランドのピッチ(すなわち、ワイヤの巻きと編組物の軸線との間の角度)と編組物のピック(すなわち、単位長さ当りのワイヤの交差数)は、特定用途で望むように調節できる。本発明の方法で使用される金属織製品のワイヤストランドは、弾発性を有し、かつ、事実上目標形状に固定できるように熱処理可能な材料で形成すべきである。この目的に適した材料には、当分野でエルゲロイ(Elgeloy)と呼ばれる低−熱膨張性のコバルト基合金、ヘインズ・インターナショナル社からハステロイの商品名で市販されているニッケル基の超耐熱性「超合金」、インターナショナル・ニッケル社からインコロイの名称で販売されている熱処理可能のニッケル基合金、異なる数等級のステンレス鋼が含まれる。ワイヤに適当な材料を選択する際の重要な要素は、ワイヤが、予め定めた熱処理を受けた時に成形面(後述する)により生じる適当量の変形を維持することである。
【0015】
これらの条件に合致する1組の材料は、いわゆる形状記憶合金である。本発明の方法に使用するのに特に好ましい1形状記憶合金はニチノールである。Ni−Ti合金類は、また極めて弾性的であり、「超弾性的」または「擬似弾性的」と言われる。本発明の器具は、給送カテーテルを縮小形態で通過した後に配置されるため、この弾性によって当初の拡張形状への復元が助けられる。
本発明に合わせて医療器具を形成する場合、金属織製品の適当な寸法の一片が、例えばワイヤストランドを編んで長尺の管状編組物にされた、より大きい織製品片から切り取られる。織製品を目標寸法に切り取る際には、繊維がほつれないように注意せねばならない。
【0016】
編組物を切り取る前に、所望長さの編組物端部を互いにはんだ付け、硬ロウ付け、溶接するか、または、何か(例えば、生体親和性のセメント状有機材料)を付加することができる。
適当な寸法の金属織製品片が得られたら、織製品片を成形部材の成形面に概ね合致するように変形させる。金属織製品のストランドの相対位置は、織製品の変形により再配向され、初期状態から再配向された第2配置形状に変わる。成形部材の形状は、拘束されない場合の医療器具の事実上目標形状に織製品を変形するように選択すべきである。
【0017】
成形部材が金属織製品と組み合わされ、織製品が該部材の成形面に概ね合致するようにされると、成形面に接触したまま織製品は熱処理される。ニチノールを目標形状に設定する適当な熱処理は、技術的に周知である。ニチノール織製品を、製造される器具の軟度または硬度に応じて約500°C〜約550°Cで約1分〜約30分の間維持することによって、織製品は変形状態に設定される傾向があること、つまり織製品が成形部材の成形面に合致することが判明した。より温度が低い場合には、熱処理時間は、より長くさかとげ(例えば350°Cの場合は約1時間)、より高温の場合は、より短くなる(例えば約900°Cでは約30秒)傾向がある。
熱処理後、織製品は、成形部材から外されるが、その形状は変形状態に事実上維持される。
【実施例1】
【0018】
図5A、図5Bは、本発明による医療器具10の一実施例を示したものである。この器具10は、概ね円筒形の部分12と、外方へ延びる前端のディスク14とを有する。円筒部12は、閉塞させる血管より幾分大きく(約10〜30%)寸法付けされている。この寸法付けは、器具が所定位置からずれないように係留する1要素を得る意図のものである。器具のディスク部14は、開口を取り囲む隣接壁部に当てがって、器具が円筒部の方向へ移動するのを防止し、かつ開口を密閉するのを補助する目的のものである。
【0019】
先行技術に比して改良点は、移行部直径Hとディスク直径Aとを有し、円筒部12とディスク部14との間のこの移行部直径Hが、円筒部の直径Bよりも小さいことである。この小移行部直径により、壁部が正確に直角ではない(直角±45度)開口を有する血管壁に容易にディスク部を配向することができる。加えて、直径Hの移行部が円筒部端部の凹部内に引込められることにより、器具は、ディスク/円筒部間の張力を維持するためのばね部材に似た作用によって、配置されている部位の解剖学的な形状に順応することが可能になる。ディスクと円筒部との間隔が器具の性能に影響することはないだろう。
【0020】
この器具に特に適する1つの用途は、開口により他の血管に接続され、開口周囲に壁部を有する血管、通路、内腔、洞を閉塞させることである。技術的に周知のそのような1つの異常は動脈管開存症(PDA)であり、これは、2つの血管、最も普通には大動脈と心臓に隣接する肺動脈とが内腔間に血流シャントを有する状態である。血液は、通路を介してこれら2血管の間を直接に流れることができ、患者の血管を通る正常な血流を往々にして阻害する。その他の体内の生理学的な条件は、血管を流れる血流を阻止するために血管を閉塞するのが望ましい場合である。この器具の実施例は、解剖学的条件が設計に相応する血管系のどこでも使用できる。
【0021】
図5A、図5Bと関連して以下で、より詳しく説明するが、円筒部12は、閉塞させる血管内で展開するようにされる一方、ディスク14は閉塞される血管と関連する開口を囲む壁部に隣接配置される。金属織製品は、基端側のディスク端部把持手段16から、半径方向外方へは最大ディスク直径Aまで延び、半径方向内方へは移行部直径Hまで戻っている。移行部は、先端側に向って距離Jだけ延び、これにより織製品は、ディスクへ向って直径Kの逆円錐形部を形成し、ここから織製品はディスクと平行にディスクから間隔をおいて半径方向外方へ直径Bまで延びている。織製品は、先端方向へ距離Dにわたり円筒部直径Bを維持し続け、次いで角度Cのテーパ面を経て円筒部全長Gが形成される。先端部把持手段18と基端部把持手段16とは編組ワイヤ端部を、ほつれないように保持している。基端部把持手段16は、またねじ部を有し、このねじ部が、給送手段(図示せず)、例えば端部に前記ねじ部に合うねじ部を有するケーブルまたは軸部に逆転可能に連結される。
【0022】
閉塞される血管の軸線と非直角の血管の壁部に対するディスクの可撓性および順応性は、移行部の小直径Hに対するディスク最大直径Aの比、すなわち、A/H比によって改善される。図1Aおよび図1Bの先行技術による器具の場合、この比は約1.9であるが、図5Aおよび図5Bの改良型の設計では3〜30の範囲、好ましくは約10から20〜25までの範囲である。先行技術の設計では、ディスク移行部直径Hに対する円筒部12の直径Bの比は1.0だが、これは、移行部直径が縮径されていないからである。改良型の設計では、B/H比は2〜25の範囲、好ましくは10〜20の範囲である。この比の改良により、血管壁に対するディスクの整合に、あるいは又閉塞させるべき血管に対する円筒部の整合に要する曲げ力が低減される。
【0023】
移行部直径Hは、この直径Hの約2〜5倍の長さJを有する。この長さJは、図5Aに示されているように、ディスク内面と円筒部基端壁との僅かな間隔Eを可能にするのに必要な長さである。こうすることによって、器具の適合性が改善され、器具の密閉能が改善される。移行部直径Hが長さJを有するようにするために、織製品は、円筒部基端壁が角度Lの円錐面を形成するように付形される。この円錐面により、使用者は、円錐面を平坦化することでディスク近辺から円筒部を移動させて、基端側の円筒部外径により器具を保持させるための半径方向拡張力が増大する。加えて、円錐面は、ばねとして作用することで、ディスクと円筒部とが離間する場合、ディスクと円筒部との間に軸方向張力が生じ、閉塞されている血管壁内に鉤20が係合状態に保たれ、器具の保持が改善される。
【0024】
図5A、図5Bに示されているように、係合鉤20は、好ましくはニチノール・ワイヤを熱硬化させ、各端部が鉤状になり、また互いに結合された2個の鉤が得られるように、ワイヤ長さの中間部に約180度の屈曲部を設けたものである。あるいはまた、これらの鉤は、器具の一部とすることもできるだろう。すなわち、編組構造物の個々のワイヤを分離して鉤に形成することもできるだろう。鉤は、端部がディスク方向に向けられ、器具の円筒部12の編組織製品に何らかの公知手段により縫着22または固定される。鉤20のワイヤは、好ましくは直径約0.177mm(0.007インチ)、長さ3mmであり、まっすぐに伸ばした形状で給送カテーテル内へ装入する場合、前方、後方どの向きに装入する場合も、十分にたわみ可能である。
【0025】
器具は、これらの鉤を幾つ備えていてもよいが、好ましくは3対備えるのがよい。鉤の数は6〜12の範囲が好ましいだろう。鉤は、鉤を組織に係合させる方向で血管内での器具の動きに抗することにより器具の保持を助ける。鉤20は、その開放端部とは逆方向へ器具が動くことで係合が逆になるようには、とげ状部が付されていない。血管用のグラフトに適した技術は他の形式の鉤の多くの実施例を有しており、それらを血管内にインプラント可能な器具に組み込むことも可能である。
当業者には、血管用器具による閉塞処置を迅速化するためには、血管用器具に、適当な血栓形成剤をコーティングするか、ポリエステル繊維を充填するか、ワイヤストランド数を増して編組できることが、理解されよう。先行技術の器具では、好ましくは、編組器具内にポリエステル繊維(図6の符号303)が用いられた。この繊維は、カテーテルを介して給送する際、血管用器具と共に容易に縮小させられる。編み込まれた繊維は、凝血に付加されることで、血管用器具が閉塞部を形成する際、血管用器具内に凝血をしっかりと拘束する。
【0026】
図6に示した給送手段28は、PDA(動脈管開存症)閉塞器具10をカテーテルの内腔または長尺の導入用鞘を通して強制送出し、器具10を患者の体内の通路内に配置するのに使用できる。器具がカテーテルの先端部を出て拡張されても、依然として器具は給送カテーテルにより保持される。血管内で器具10の適切な位置が確認されると、給送手段28の軸が、その軸線を中心として回転され、送出手段のねじ端部から把持手段16が外される。もちろん、ねじ結合は、解剖学的な状況や治療部位へのアクセスの所望のまたは利用可能な手段に応じて器具のどちらの端部で行ってもよかろう。
【0027】
本発明の閉塞器具の製造に使用される管状編組物は、直径0.050〜0.127mm(0.002〜0.005in.)の範囲、好ましくは0.076〜0.088mm(0.003〜0.0035in.)の範囲のワイヤ、PDA用の器具の場合は、好ましくは直径0.088mm(0.003in.)のワイヤを用いることができる。管状編組物のワイヤ数は、36〜144、好ましくは72〜144の範囲だが、PDA用の器具の場合は、好ましくは144である。編組物のピック数は、30〜100、好ましくは50〜80、PDA用器具の場合は、好ましくは70である。
円筒部12およびディスク14の寸法と器具の長さとは、異なる寸法の血管通路、腔、洞に応じて望むように変更できる。以下の表は、選択した器具ごとの寸法範囲を単位mmで示したものである。
【0028】
【表1】
【0029】
給送手段にPDA用器具を取り付けた状態で維持することにより、操作者は、器具が初回の試みで適所に配置できなかったことが分かれば、送出鞘内へ器具を引込めて再位置決めすることができる。また、ねじ取り付けによって、操作者は、器具10が給送カテーテルの先端部から出て展開する形式を制御することができる。後述するように、器具が給送カテーテルから送出されると、織製品が熱処理によって硬化された好ましい展開形状に弾発的に復元する傾向がある。器具が、その形状に弾発的に戻る場合、カテーテル先端部に作用して、カテーテル端部より前方へ事実上強制される傾向がある。このばね作用の結果、器具が不適切な位置に配置されることが考えられる。ねじ把持手段16によって、操作者は、器具の展開中、器具を保持し続けることができるので、器具のばね作用を制御でき、器具が適切に配置されるように展開を制御することができる。
【0030】
図6に示した器具は、ワイヤの両端の中空内側把持部材23と、基端側および先端側の外側把持部材21,26とを有するように構成できるが、この構成は任意であって、必要条件とは見なされない。ワイヤ端部24は、内側と外側の把持部材21,26の間にスエージ加工によりクリンプされるが、把持部材間で接着または溶接してもよい。内側クランプ部材は、管状で、プッシュワイヤ27が自由通過できる内径を有するように寸法付けされている。先端部の外側把持部材26は、スエージ加工前に、内側把持部材を取り囲む編組ワイヤ端部24を収容するのに十分な内径を有するように寸法づけされている。先端部の外側把持部材26は、両内側把持部材を通して挿入されるプッシュワイヤ27からの押し込み力を受け取るように、中実(閉鎖端部)に形成されている。
【0031】
基端側の外側把持部材21は、雄ねじを有するように示され、給送手段28に逆転可能に連結されている。給送手段28は、好ましくは、ぺバックス(Pebax)等のナイロン・ブロック共重合体製であり、ぺバックス製の内管押し出し品が約0.025mm(0.001in.)のワイヤ編組物で覆われ、更に、該編組物が別のぺバックス外層で覆われている。給送カテーテル/鞘29も器具10および給送手段28を通すことができるように直径を大きくされている以外は、類似の構成でよい。このような構成は、可撓性やトルクの伝達を必要とする血管内用カテーテルでは、典型的な構成である。
【0032】
任意の選択肢として、給送カテーテル/鞘29に厚さ約0.025mm(0.001in.)のPTFE層を設けることで、摩擦が低減され、器具の通過が容易にされる。中空の給送手段は、0.20〜3.55mm(0.008〜0.14in.)のステンレス鋼製プッシュワイヤ27が給送手段と基端側把持手段とを通過し、かつ先端側把持手段に接触し、それよにり先端部把持手段を基端側把持手段から押し離し、器具を伸張させ得るように寸法付けされているが、この給送手段によって、鉤からの解除と、給送鞘29内への器具の再収容とが容易にされている。プッシュワイヤ27の先端部と先端部内側把持手段23とは、ねじ結合または他の逆転可能な手段によって結合されるように設計でき、それによって、ワイヤが偶然に先端部内側把持手段23の近くに位置決めされることがないように保証される。
【0033】
また給送手段28とプッシュワイヤ27との間に配置されたばねは、先端部外側把持手段26に抗してプッシュワイヤを保持できるように予め処置されている。給送手段28が器具10の基端部を制御し続け、プッシュワイヤ27が器具の先端部に押し出し力を作用できることで、器具は、目標長さに伸張もできれば、自己拡張や縮小もできる。このため、プッシュワイヤを押し込んで器具を先端方向へ強制的に押進させることで容易に鉤を解離させ、再位置決めすることが助けられる。これによって、また解剖学的に器具に不適切な寸法付けが行われているような場合に必要となるであろう鞘29内への器具の引き戻しも助けられる。
【0034】
図7A〜図7Cには、既に概説した医療器具10が、開口を囲む壁部を有する血管を閉塞するのに、どのように使用されるかを略示したものである。閉塞されるこの開口は、血管、通路、内腔、洞へ通じている。器具10は、給送のため縮小形状にされ、給送手段28に取り付けられて、給送カテーテル29を通過して、図7Aに示されているように、血管壁31の開口30に隣接するところまで挿入された給送カテーテル先端部に達する。給送手段28は、先端方向へ前進させられる一方、給送カテーテル29は引き止められ、器具10の先端部がカテーテル29から強制送出され、弾性的に自己拡張させられ、事実上、あらかじめ決められた熱硬化された成形状態に復元され、血管壁に接触する。
【0035】
この時点で、カテーテル29の先端部は、拡張力に対し反作用を生じ、図7Bに見られるように、少し基端側に移動する。鉤20は血管壁に接触し始め、器具を所定位置に係合される。先端に配置する必要があれば、鉤をその方向へ解除し、配置できる。図7Cでは、器具は、カテーテルから完全に送出されているが、まだ給送手段28に結合されたままである。この図から分かるように、ディスク14は、小直径部分Hを中心として旋回することによって血管壁31と自己整合する。器具が目標位置に配置されると、給送手段28は、基端部把持手段16のところで、ねじ結合を解除する方向に回転させられ、解離される。
【0036】
円筒部12は、血管内腔と摩擦接触して、血管が閉塞されるように寸法付けされるべきである。器具10は、次いで、円筒部/血管内腔間の摩擦と血管壁に係合される鉤20との組み合わせによって所定位置に保持されよう。比較的短時間にわたり、血栓が器具内および器具上に形成され、血管が血栓により閉塞されよう。当業者は、器具による閉塞を迅速化するために、器具に適当な血栓形成剤をコーティングしたり、ポリエステル繊維を添加したり、ワイヤストランド数を増して編成することが可能なことが分かるだろう。
肺血管閉塞疾患および肺房高血圧症(pulmonary atrial hypertension)は成人期に発症する。危険なシャントを有する心房中隔欠損(ASD)患者は、理想的には5歳の折に手術するのがよく、それ以後の年齢の場合は、いつでも診断の時点に手術するのがよい。欠損の正確な解剖学的形状は、2次元心エコー法およびカラーフロー・ドップラー法が現れてから、可視化できるようになった。使用すべきASD閉塞器具の寸法は、欠損部の寸法に対応させることになろう。
【実施例2】
【0037】
図2〜図4には、ASD治療用の本発明による医療閉塞器具の別の一好適実施例が示されている。この器具300も、卵円孔開存症(以下PFOと記す)として技術的に周知の欠損、または心室中隔欠損症(VSD)を閉塞するのに好適と思われる。図2〜図4を見ると、解放された非伸張状態の器具300は2つのディスク302,304を有し、該ディスクは、短い円筒部306を介して結合され、間隔をおいて整合する位置を占めている。円筒部306の長さは、好ましくは心房中隔の厚さとほぼ等しく、2〜20mmの範囲である。基端側ディスク302と先端側ディスク304とは、器具の外れを防止するのに十分な、シャントより大きい外径を有するのが好ましい。基端側ディスク302は、比較的平らな形状を有するが、先端側ディスク304は、基端部方向へ椀状に延び、基端側ディスク302を幾分覆うようになっている。
【0038】
先行技術に対するこの器具設計の改良点は、図2の器具の断面図である図3に示されている。先行技術の設計では、短い円筒部306の織製品が、短い円筒部の直径のところで各ディスク内壁の織製品と結合されていた。本発明の改良型器具設計では、短い円筒部が小直径部309のところでディスク壁と結合されており、しかも、この小直径部の直径は、ディスク直径よりはるかに小さい短尺円筒部直径よりも、はるかに小さい。このことによって、器具は、小直径部309を中心として容易に旋回可能であり、開口と直角でない(或る角度をなす)血管壁構造に整合できる。
【0039】
この編組みされた金属織製器具300の端部は、既述のように、溶接されるか、または把持手段308,310によって結束され、ほつれが防止されている。もちろん、これらの端部は、当業者には周知の別の手段によってまとめ合わせてもよい。基端部でワイヤストランドを結束している把持手段310は、また給送手段に器具を結合する役割も有する。図示の実施例では、把持手段310は、概ね円筒形であり、金属織製器具の端部を受容するための孔を有し、金属織製器具を含むワイヤが互いに移動することを事実上防止している。把持手段310は、また孔内に雌ねじを有する。このねじ孔は、給送手段28のねじ付き先端部を受容し、ねじ結合するようにされている(図6)。
【0040】
この本発明例に係るASD閉塞用器具300は、既述の方法で製造するのが好ましい。器具300は、好ましくは、0.127mm(0.005インチ)のニチノール・ワイヤメッシュ製である。このワイヤメッシュの編組は、28ピック/インチ(25.4mm当り)で、72ワイヤ・キャリヤーを有するメイポール編組機を用い、約64度のシールド角度で行うことができる。ASD器具300の剛度は、ワイヤ寸法、シールド角度、ピック寸法、ワイヤ・キャリヤーの数、熱処理工程のどれかを変更することで、増減できる。
当業者は、以上の説明から、成形型のキャビティがASD器具の目標形状と合致せねばならないことが分かるだろう。改良型の場合、成形型は、小直径部309を形成するような付形を必要とする。
【0041】
図8A〜図8Cには、ASD用器具の変形形態が示されている。基端側ディスク302´は先端側ディスク304´の鏡像である。基端側およびと先端側ディスク302´,304´の間隔は、円筒部306´の長さ未満である。図8Bに示されているように、ディスクの椀形によって、閉塞器具300´/心房中隔間の完全な接触が保証される。これにより、内皮組織の新しい心内膜層が閉塞器具300´上に形成され、それによって細菌性心内膜炎の危険が低減される。
器具による血管の閉塞を迅速化するために、器具は、適当な血栓形成剤でコーティングされるか、ポリエステル繊維を添加されるか、ワイヤストランドの数を増して編組されるかすることができる。ポリエステル繊維303,303´(図4および図8Cに示す)は、凝血過程を加速するために、任意に編組物内へ添加される。この繊維は、カテーテルを介して給送する際、容易に器具と共に縮小し、ディスク、中間部、複数部分の組み合わせのいずれか内へ添加することができる。凝血に付着することで編み混ぜられるこの繊維は、器具が閉塞部を形成する時に、凝血をしっかりと器具内に拘束する。
【0042】
以下では、器具の使用の仕方を、図7Cの給送手段と図9および図10とについて詳説する。器具は、2次元心エコー法およびカラーフロー・ドップラー法を用いて適切に送出かつ配置できる。図7Cの給送手段28は、適切などのような形状でもよい。従来型の案内ワイヤに似た細長の可撓性金属シャフトを含むのが好ましいが、図6について説明したワイヤ27に似た中空軸でもよい。給送手段28は、ASD閉塞器具300を小直径の円筒管、例えば展開用の給送カテーテル29の内腔25を通して前進させるのに使用される。ASD用器具300´は、伸張させて細長い形状体として内腔25内へ装入される。器具は、処置の際に内腔25内に挿入することができるが、本発明の器具は縮小状態に維持される間に永久変形することはないので、製造工場で予め挿入して前組み立てすることもできる。
【0043】
図10は、ディスク302´,304´が、中隔318の、厚さの異なる対向壁部に非平行状態でぴったりと接触できること、また中間の円筒部306´がASDを画成する壁部に対し拡張している様子を示している。図10は、心臓内のASKを閉塞する本発明の器具300´を示している。
大腿静脈から進入して、給送カテーテル29はASDを通過する。器具300´は、給送カテーテル内を前進させられ、先端側ディスク304´が給送カテーテル端部を出て拘束を解かれ、左心房内でディスク形状に復元される。
給送カテーテル29は、その後でASDを通って基端方向に引き戻され、給送手段28が静止保持され、中隔318に対し先端側ディスク304´が当て付けられる。給送カテーテル29は、次いで更に中隔318から引き離され、基端側ディスク302´が給送カテーテル29を出て拡張し、予め決められた拡張ディスク形状に弾発的に復元できる。このようにして、ASD用器具300´が配置され、それによって先端側ディスク304´が中隔318の一方の側を押圧するのに対し、基端側ディスク302´が中隔318の他方の側を押圧するようにされる。
【0044】
閉塞能を高めるため、器具にはポリエステル繊維303´(図8C参照)を添加することができる。器具が初回に不適切な展開をした幾つかの例では、器具300´は、給送手段28を基端方向に引張ることで元に戻され、それによって器具300´が給送カテーテル29内へ引き込められ、欠損部に対し器具300´を配置する次の試みに備えられる。
ASD閉塞器具300´が適切に配置された場合、医師は、給送手段28を回転させ、給送手段28を閉塞器具300´の把持手段310´から外す。把持手段310´のねじは、給送手段28を回転させることで、給送手段が閉塞器具300´の把持手段310´から外れるようにしたもので、単に閉塞器具300´を回転させるだけのものではない。既述のように、別の実施例では、適切な位置決めが保証されるように、操作者には、器具の展開中、器具の保持またはばね作用の制御が可能である。
【0045】
広義の概念で云えば、本発明方法は、患者の生理学的異常を治療する方法を更に含む。この方法にしたがって、異常の治療に適した医療器具が選択されるが、該医療器具は、事実上既述の複数実施例の1つによるものでよい。例えば、動脈管開存症が治療される場合は、図5A、図5B、図6のPDA閉塞器具10を選択できる。適切な医療器具が選択されると、カテーテルが患者の体内の通路内に挿入され、カテーテル先端部が、目標治療部位に隣接して、例えばPDAの経路または通路の直近に(または内部にさえ)配置できる。
【0046】
医療器具は、縮小させた形状でカテーテル内腔へ挿入できる。器具の縮小形状は、カテーテル内腔を容易に通過でき、かつカテーテル先端部から送出されて正しく展開するのに適当な形状であれば、どのような形状でもよい。例えば図2、図3、図4、図5A、図5B、図6、図8A〜図8Cに示した器具は、比較的細長の縮小形状を有するが、その場合、器具は、図4および実施例8Cに示すように、その軸線に沿って伸ばされる。この縮小形状は、器具を、概ねその軸線に沿って伸張させることで、例えば手で把持手段301,310を掴んで引き離すことで簡単に得ることができるが、その場合、器具の拡張直径部302,304は、器具軸線へ向って内方へ収縮する傾向がある。図2および図3のPDA閉塞器具10も、また多くの点で同じ形式で操作され、概ね器具軸線に沿って張力を加えることでカテーテル内へ挿入されるように縮小形状にすることができる。この点で、これらの器具10,300は、軸線方向張力によって直径が収縮する傾向がある「中国式手錠」(Chinese handcuffs)に似ていなくはない。
【0047】
医療器具は、縮小されカテーテルへ挿入されると、カテーテル内腔に沿ってカテーテル先端部へ向けて強制移動させられる。この移動は、カテーテルに沿って器具を強制移動させるように取り外し可能に器具に結合された給送手段または類似部材を用いて行われる。目標治療部位近くに位置させたカテーテル先端部から器具が送出され始めると、器具は、予め設定された拡張形状に弾発的に事実上完全に復元する傾向がある。超弾性合金、例えばニチノールが、この用途に特に有用な訳は、著しく弾性変形された後で容易に特定形状に戻る能力があるからである。このため、カテーテル先端部から医療器具が単に送出されるだけで、治療部位で器具が適正に展開する傾向が得られる。
【0048】
器具が弾発的に当初の拡張形状(すなわち、カテーテルを通過するための縮小形状以前の形状)に戻る傾向があるとはいえ、当初の形状に常に完全に戻るわけではないことを理解すべきである。例えば図5Aの円筒部12の場合、拡張形状での最大外径は、配置される内腔の内径と少なくとも等しいかまたは好ましくは該内径より大きく寸法付けられている。この器具が、より小さい内腔を有する血管内に配置された場合、内腔は、器具が完全に当初形状に戻るのを妨げるだろう。それでも、器具は適宜に拡張して、既述のように、内腔の内壁に接触することにより血管内に座着するだろう。
器具、例えば既述の器具10,300が、患者の体内で永久的に通路閉塞に使用される場合には、給送手段(例えば図6の例)を、器具との逆転可能の結合部を逆回転させることで簡単に解離し、カテーテルと給送手段とを患者の体内から引き出すことができる。こうすることで、医療器具は、患者の血管系内に配置されたままとなり、患者の体内で血管その他の通路を閉塞することができる。
【0049】
以上、本発明の一好適例について説明したが、本発明の精神および特許請求の範囲の枠を逸脱することなく、種々の改変、改造、変形が可能であることを理解すべきである。
例えば、2重ディスク構成の場合、器具の一方の端部のみが、ディスク/隣接中間円筒部間に小さい移行部直径を有するのが望ましいことが予想される。また、中間円筒部または円筒部が一方のまたは双方のディスクと非同心的でよいことも予想される。更に、円筒部は、本発明の範囲を逸脱することなく、バレル形状、凹状、凸状、テーパ状、これらの形状の組み合わせのいずれかであってよいことも予想される。同じように、円筒部の先端および基端部は、説明した逆円錐形とは異なる形状を有するようにして、しかも既述の利点が失われないようにすることもできるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】図1Bと共に示す、先行技術による単一ディスク型閉塞器具。
【図1B】図1Aと共に示す閉塞器具。
【図2】先行技術による別の器具の拡大側面図。
【図3】図2の器具に類似する器具の断面図で、解剖学的な相違に整合するように融通性を持たせた発明性のある改良型変更態様を示した図。
【図4】先行技術によるASD用器具の側面図で、器具を伸張させ、ポリエステル繊維を添加した状態を示す図。
【図5A】図5Bと共に示す、本発明による単一ディスク型器具の断面図。
【図5B】図5Aと共に示す、本発明による単一ディスク型器具。
【図6】別の単一ディスク型器具および給送装置の部分分解組立図。
【図7A】図5の単一ディスク型閉塞器具の配置段階を、図7B、図7Cと共に、順次示す図。
【図7B】図5の単一ディスク型閉塞器具の配置段階を、図7A、図7Cと共に、順次示す図。
【図7C】図5の単一ディスク型閉塞器具の配置段階を、図7A、図7Bと共に、順次示す図。
【図8A】本発明により製造されたASDまたはVSD用の2重ディスク型閉塞器具を予め付与された形状で示す(等直径の2ディスクが、間隔をおいて向き合っている)。
【図8B】図8Aに示した器具の断面図で、解剖学的相違に整合し可撓性を有するように改良されたディスクの本発明による変形形態を示す。
【図8C】図8A、図8Bと共に示す本発明による変形形態を示す。
【図9】図2〜図4に示したASD用器具の部分側断面図で、患者の心臓のASD内に配置した状態を示す。
【図10】本発明閉塞器具の断面図(壁部に整合するディスクによりVSDが閉塞された様子を示す)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義の概念で云えば、一定の医学的異常を治療する血管内器具に関わり、より具体的には、生体の循環系内で血流の阻止が望まれるいずれかの部位で、選択的に血管を閉塞させるための血管内閉塞器具に関するものである。本発明により製造された器具は、カテーテルまたは類似器械を介して患者の体内の血管系内の遠隔部位へ給送するのに特に適している。その場合、閉塞されるべき通路は、軸線と、その軸線に対してほぼ直角に他の血管の血管壁に開く少なくとも1開口とを有する。
【背景技術】
【0002】
極めて様々な血管内器具が様々な医療処置に使用される。一定の血管内器具、例えばカテーテルや案内ワイヤは、通常、患者の体内の特定部位、例えば血管系内の選択部位に流体その他の医療器具を単に送達するだけのために使用される。他の、より複雑な器具は、特定の異常を処置するために使用されることが多い。例えば、それらの器具とは、血管の閉塞除去や中隔欠損その他類似の異常の処置に使用される器具である。
一定の状況下では、患者の血管、房(室)、経(通)路、穴(欠損部)、内(体)腔を閉塞させて、血流の通過を阻止する必要が生じよう。
【0003】
血管系内の種々の部位で血管を閉塞させるための機械式の塞栓形成器具は、技術的に周知であり、市販もされている。アムプラッツ(Amplatz)による特許第6123715号およびコトゥラ(Kotula)による特許第5725552号には、ニチノールによる金属織製品(しょくせいひん)である血管内閉塞器具が開示されているが、これらの器具は、拡張形状になるように型内で熱硬化させたもので、圧縮して処置部位へカテーテルを介して給送でき、給送カテーテルから強制送出されると、血管内で自己拡張し、処置部位で血流を遮断する。これらの器具の種々の設計および形状の詳細や、これらの器具の製造および使用方法は、前記特許に詳細に説明されており、ここに引用することで該特許は本明細書に取り入れられるものである。
【0004】
アムプラッツおよびコトゥラによる閉塞器具は、十分に役に立つとはいえ、改良できる点も多々ある。アムプラッツの特許5,725,552には、図6A〜Cおよび図11〜18に2つの閉塞器具が記載されているが、それらの各々は、一端または両端にディスク部を有する。これらの器具は、更に、円筒部を有し、該円筒部が、ディスクの最大直径より小さい直径を有し、ディスク平面に対し概ね直角の軸線を有するように延びている。この先行技術の一例が図1A、図1B、図2に示されている。
【0005】
先行技術のこれらの器具は、円筒部とディスク部との間に曲げに対する可撓性が欠けているため、必ずしも相互に整合せず、解剖学的な条件にも整合しない。こうしたことは、閉塞すべき開口を有する血管壁が、閉塞すべき血管の軸線に対し完全には直角でない場合に起こる。2ディスクを有する閉塞器具を、例えば心室中隔欠損(VSD)、心房中隔欠損(ASD)、卵円孔開存症(PFO)その他に使用する場合、壁部は、閉塞すべき通路または開口と直角ではない。こうした場合、先行技術による器具では、ディスクを整合させようとしても、可撓性が欠けているため、ディスクの各部分が、血流を阻止するはずの目標血管壁より遠くへ延びてしまったり、ディスク部分と血管壁との間に隙間が生じてしまう。
【0006】
アムプラッツとコトゥラの特許による単一ディスクの公知器具は、展開した場合、拘束を解かれて自己拡張した状態では、円筒部直径が閉塞される血管の直径より大きくなるように寸法付けられているために、所定位置に保持される。これによって、より大きく拡張しようとするニチノール織製品(しょくせいひん)の作用による荷重が、生体の内腔組織に加えられ、器具が所定位置に固定される。閉塞すべき血管の直径の推定が精密でないこと、円筒部が圧力変化に応じてたわんだり展開したりする能力に欠けること、円筒部の移動性がかけていることのために、保持力が、時には、器具を所定位置に保持するには不十分となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ディスク形状部と円筒直径との間の可撓性が高められ、開口によりよくディスク形状部が整合するようにされ、器具の保持、特に単一ディスクの閉塞器具の保持が改良された改良型の閉塞器具が得られれば、好適である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血管、内腔、通(経)路、洞であって、軸線と、その軸線に対してほぼ直角(プラスまたはマイナス45度)の他の血管壁に開いている少なくとも1開口とを有するものを選択的に閉塞させるのに好適である。無制約にそのような条件に合う一例は、動脈管開存症(以下、PDAと称する)である。別の例は、血管、内腔、通路、穴であって、一方の血管から他方の血管へ血液が流れるもの、例えば心房中隔欠損症(以下、ASDと称する)、または、心室中隔欠損症(以下、VSDと称する)である。更に別の例として、動静脈瘤(AVF)または動静脈奇形(AVM)を挙げることができる。
【0009】
これらの血管内器具を弾発性金属編組物で形成する場合、複数の弾発性ストランドが用意され、ワイヤが編組により形成され弾発性金属編組物が作られ、この編組物が、熱処理により目標形状に事実上硬化させられる。この編組物は、次に成形部材の成形面に概ね合致するように変形され、成形部材の成形面に接触させられ、高温で熱処理される。熱処理の時間および温度は、編組物が変形状態を事実上保持できるように選択される。熱処理後、編組物は、成形部材から取り外され、変形状態の形状を事実上保持することになる。このように処理された編組物は、患者の体内の通路内へカテーテルを介して配置できる医療器具の拡張状態を規定する。
【0010】
本発明の複数実施例は、先行技術の医療器具に比較すると、解剖学的な特定条件を有する血管を閉塞するため、特定の形状面での改良がなされている。本発明の器具は、金属製編組物で形成され、拡張形状と縮小形状とを有する。使用時には、案内カテーテルを患者体内の通路に挿入し前進させ、生理学的異常の治療のため、治療部位に隣接してカテーテル先端部を配置できる。予め定められた形状に形成され、既述の工程で作られた医療器具は、縮小させてカテーテル内腔へ挿入できる。器具は、カテーテル内を強制通過させられ、カテーテル先端部から送出されると、その記憶特性により治療部位で拡張状態に事実上復元される。実施例のうちの第1実施例によれば、概ね細長の医療器具は、中間の概ね円筒形の部分と1対の拡径ディスク部分とを有し、1つの拡径ディスク部分が各々円筒部のどちらかの端部に配置されている。別の実施例では、医療器具は、概ね鐘形であり、テーパー付き第1端部とディスク状の拡径第2端部とを有する細長の円筒部を備えており、該第2端部は、血管内に配置された場合、血管、通路、腔、洞の軸線に対して概ね直角に配向される編組ディスクを形成する。
【0011】
この発明性ある器具では、ディスク部/中間円筒部間の可撓性が、両部分間の移行部直径を極めて小さくすることによって改善され、移行部直径が中間円筒部の直径より、はるかに小さくなされている。この小さい移行部直径により、ディスクは、この直径部を中心として容易にたわむことができ、開口を有する血管壁に配向でき、閉塞すべき内腔の軸線と内腔への開口を含む壁部との間の広範囲の解剖学的に異なる状態に適応することができる。
小直径の移行部を器具の中間円筒部の端部に形成した凹部内に引込めることによって、血管内に器具を正確に配置する作業が、過度に危険なことではなくなった。凹部に引込めることによって、ディスクと円筒部とは、自由スペース内にあるときに接近位置に保持できることになり、また器具が機能している間には、ディスクと円筒部との離間を僅かにすることができる。
【0012】
改良型の単一ディスク器具は、また先行技術に比較すると、編組構造物の中間円筒部の一部に縫着または固定された可撓性ニチノールの形状記憶ワイヤを付加することによって保持力が改善される。ワイヤは弾発性のある鉤状端部を有し、該鉤状端部が、配置時には器具の中間円筒部表面から外方へ延びて血管壁に反転可能に係合され、ディスク端部方向への器具の運動に抵抗するように設計されている。この鉤状端部は、返しを有しておらず、鉤のとがった端部の方向とは逆方向(ディスクから離れる方向)へ器具を移動させることで器具を再配置できる。器具は、また、配置後、カテーテル先端部内へ引き戻す際には、鉤を弾発的に真直化して給送カテーテル内に引き戻すことができる。これらの鉤状ワイヤは、閉塞すべき血管よりも中間円筒部の直径を大きく寸法づけすることによって得られる器具保持力に、付加的な保持力を加えるために役立つ。
【0013】
本発明は、患者の体内の脈管系、例えば血管、通路、内腔、組織を貫通する穴、洞等内に使用するための、改良型経皮カテーテル用血(脈)管内閉塞器具を提供する。本発明の医療器具の形成時には、金属編組物が、複数ストランド間で予め決められた相対配向を有する多数のワイヤストランドで形成される。
金属ストランドは、2組の事実上平行で概ね螺旋状のストランドを形成し、一方の組のストランドは、一つの「方角」(hand)を有し、つまり一方の方向に回旋し、他方の組は反対方向に回旋する。こうすることで、繊維産業で管状編組物として知られる概ね管状の織製品が形成される。既述のアムプラッツおよびコトゥラによる特許は医療器具および医療器具の製造方法を詳細に説明しているので、これ以上の詳しい説明は不要である。
【0014】
ワイヤストランドのピッチ(すなわち、ワイヤの巻きと編組物の軸線との間の角度)と編組物のピック(すなわち、単位長さ当りのワイヤの交差数)は、特定用途で望むように調節できる。本発明の方法で使用される金属織製品のワイヤストランドは、弾発性を有し、かつ、事実上目標形状に固定できるように熱処理可能な材料で形成すべきである。この目的に適した材料には、当分野でエルゲロイ(Elgeloy)と呼ばれる低−熱膨張性のコバルト基合金、ヘインズ・インターナショナル社からハステロイの商品名で市販されているニッケル基の超耐熱性「超合金」、インターナショナル・ニッケル社からインコロイの名称で販売されている熱処理可能のニッケル基合金、異なる数等級のステンレス鋼が含まれる。ワイヤに適当な材料を選択する際の重要な要素は、ワイヤが、予め定めた熱処理を受けた時に成形面(後述する)により生じる適当量の変形を維持することである。
【0015】
これらの条件に合致する1組の材料は、いわゆる形状記憶合金である。本発明の方法に使用するのに特に好ましい1形状記憶合金はニチノールである。Ni−Ti合金類は、また極めて弾性的であり、「超弾性的」または「擬似弾性的」と言われる。本発明の器具は、給送カテーテルを縮小形態で通過した後に配置されるため、この弾性によって当初の拡張形状への復元が助けられる。
本発明に合わせて医療器具を形成する場合、金属織製品の適当な寸法の一片が、例えばワイヤストランドを編んで長尺の管状編組物にされた、より大きい織製品片から切り取られる。織製品を目標寸法に切り取る際には、繊維がほつれないように注意せねばならない。
【0016】
編組物を切り取る前に、所望長さの編組物端部を互いにはんだ付け、硬ロウ付け、溶接するか、または、何か(例えば、生体親和性のセメント状有機材料)を付加することができる。
適当な寸法の金属織製品片が得られたら、織製品片を成形部材の成形面に概ね合致するように変形させる。金属織製品のストランドの相対位置は、織製品の変形により再配向され、初期状態から再配向された第2配置形状に変わる。成形部材の形状は、拘束されない場合の医療器具の事実上目標形状に織製品を変形するように選択すべきである。
【0017】
成形部材が金属織製品と組み合わされ、織製品が該部材の成形面に概ね合致するようにされると、成形面に接触したまま織製品は熱処理される。ニチノールを目標形状に設定する適当な熱処理は、技術的に周知である。ニチノール織製品を、製造される器具の軟度または硬度に応じて約500°C〜約550°Cで約1分〜約30分の間維持することによって、織製品は変形状態に設定される傾向があること、つまり織製品が成形部材の成形面に合致することが判明した。より温度が低い場合には、熱処理時間は、より長くさかとげ(例えば350°Cの場合は約1時間)、より高温の場合は、より短くなる(例えば約900°Cでは約30秒)傾向がある。
熱処理後、織製品は、成形部材から外されるが、その形状は変形状態に事実上維持される。
【実施例1】
【0018】
図5A、図5Bは、本発明による医療器具10の一実施例を示したものである。この器具10は、概ね円筒形の部分12と、外方へ延びる前端のディスク14とを有する。円筒部12は、閉塞させる血管より幾分大きく(約10〜30%)寸法付けされている。この寸法付けは、器具が所定位置からずれないように係留する1要素を得る意図のものである。器具のディスク部14は、開口を取り囲む隣接壁部に当てがって、器具が円筒部の方向へ移動するのを防止し、かつ開口を密閉するのを補助する目的のものである。
【0019】
先行技術に比して改良点は、移行部直径Hとディスク直径Aとを有し、円筒部12とディスク部14との間のこの移行部直径Hが、円筒部の直径Bよりも小さいことである。この小移行部直径により、壁部が正確に直角ではない(直角±45度)開口を有する血管壁に容易にディスク部を配向することができる。加えて、直径Hの移行部が円筒部端部の凹部内に引込められることにより、器具は、ディスク/円筒部間の張力を維持するためのばね部材に似た作用によって、配置されている部位の解剖学的な形状に順応することが可能になる。ディスクと円筒部との間隔が器具の性能に影響することはないだろう。
【0020】
この器具に特に適する1つの用途は、開口により他の血管に接続され、開口周囲に壁部を有する血管、通路、内腔、洞を閉塞させることである。技術的に周知のそのような1つの異常は動脈管開存症(PDA)であり、これは、2つの血管、最も普通には大動脈と心臓に隣接する肺動脈とが内腔間に血流シャントを有する状態である。血液は、通路を介してこれら2血管の間を直接に流れることができ、患者の血管を通る正常な血流を往々にして阻害する。その他の体内の生理学的な条件は、血管を流れる血流を阻止するために血管を閉塞するのが望ましい場合である。この器具の実施例は、解剖学的条件が設計に相応する血管系のどこでも使用できる。
【0021】
図5A、図5Bと関連して以下で、より詳しく説明するが、円筒部12は、閉塞させる血管内で展開するようにされる一方、ディスク14は閉塞される血管と関連する開口を囲む壁部に隣接配置される。金属織製品は、基端側のディスク端部把持手段16から、半径方向外方へは最大ディスク直径Aまで延び、半径方向内方へは移行部直径Hまで戻っている。移行部は、先端側に向って距離Jだけ延び、これにより織製品は、ディスクへ向って直径Kの逆円錐形部を形成し、ここから織製品はディスクと平行にディスクから間隔をおいて半径方向外方へ直径Bまで延びている。織製品は、先端方向へ距離Dにわたり円筒部直径Bを維持し続け、次いで角度Cのテーパ面を経て円筒部全長Gが形成される。先端部把持手段18と基端部把持手段16とは編組ワイヤ端部を、ほつれないように保持している。基端部把持手段16は、またねじ部を有し、このねじ部が、給送手段(図示せず)、例えば端部に前記ねじ部に合うねじ部を有するケーブルまたは軸部に逆転可能に連結される。
【0022】
閉塞される血管の軸線と非直角の血管の壁部に対するディスクの可撓性および順応性は、移行部の小直径Hに対するディスク最大直径Aの比、すなわち、A/H比によって改善される。図1Aおよび図1Bの先行技術による器具の場合、この比は約1.9であるが、図5Aおよび図5Bの改良型の設計では3〜30の範囲、好ましくは約10から20〜25までの範囲である。先行技術の設計では、ディスク移行部直径Hに対する円筒部12の直径Bの比は1.0だが、これは、移行部直径が縮径されていないからである。改良型の設計では、B/H比は2〜25の範囲、好ましくは10〜20の範囲である。この比の改良により、血管壁に対するディスクの整合に、あるいは又閉塞させるべき血管に対する円筒部の整合に要する曲げ力が低減される。
【0023】
移行部直径Hは、この直径Hの約2〜5倍の長さJを有する。この長さJは、図5Aに示されているように、ディスク内面と円筒部基端壁との僅かな間隔Eを可能にするのに必要な長さである。こうすることによって、器具の適合性が改善され、器具の密閉能が改善される。移行部直径Hが長さJを有するようにするために、織製品は、円筒部基端壁が角度Lの円錐面を形成するように付形される。この円錐面により、使用者は、円錐面を平坦化することでディスク近辺から円筒部を移動させて、基端側の円筒部外径により器具を保持させるための半径方向拡張力が増大する。加えて、円錐面は、ばねとして作用することで、ディスクと円筒部とが離間する場合、ディスクと円筒部との間に軸方向張力が生じ、閉塞されている血管壁内に鉤20が係合状態に保たれ、器具の保持が改善される。
【0024】
図5A、図5Bに示されているように、係合鉤20は、好ましくはニチノール・ワイヤを熱硬化させ、各端部が鉤状になり、また互いに結合された2個の鉤が得られるように、ワイヤ長さの中間部に約180度の屈曲部を設けたものである。あるいはまた、これらの鉤は、器具の一部とすることもできるだろう。すなわち、編組構造物の個々のワイヤを分離して鉤に形成することもできるだろう。鉤は、端部がディスク方向に向けられ、器具の円筒部12の編組織製品に何らかの公知手段により縫着22または固定される。鉤20のワイヤは、好ましくは直径約0.177mm(0.007インチ)、長さ3mmであり、まっすぐに伸ばした形状で給送カテーテル内へ装入する場合、前方、後方どの向きに装入する場合も、十分にたわみ可能である。
【0025】
器具は、これらの鉤を幾つ備えていてもよいが、好ましくは3対備えるのがよい。鉤の数は6〜12の範囲が好ましいだろう。鉤は、鉤を組織に係合させる方向で血管内での器具の動きに抗することにより器具の保持を助ける。鉤20は、その開放端部とは逆方向へ器具が動くことで係合が逆になるようには、とげ状部が付されていない。血管用のグラフトに適した技術は他の形式の鉤の多くの実施例を有しており、それらを血管内にインプラント可能な器具に組み込むことも可能である。
当業者には、血管用器具による閉塞処置を迅速化するためには、血管用器具に、適当な血栓形成剤をコーティングするか、ポリエステル繊維を充填するか、ワイヤストランド数を増して編組できることが、理解されよう。先行技術の器具では、好ましくは、編組器具内にポリエステル繊維(図6の符号303)が用いられた。この繊維は、カテーテルを介して給送する際、血管用器具と共に容易に縮小させられる。編み込まれた繊維は、凝血に付加されることで、血管用器具が閉塞部を形成する際、血管用器具内に凝血をしっかりと拘束する。
【0026】
図6に示した給送手段28は、PDA(動脈管開存症)閉塞器具10をカテーテルの内腔または長尺の導入用鞘を通して強制送出し、器具10を患者の体内の通路内に配置するのに使用できる。器具がカテーテルの先端部を出て拡張されても、依然として器具は給送カテーテルにより保持される。血管内で器具10の適切な位置が確認されると、給送手段28の軸が、その軸線を中心として回転され、送出手段のねじ端部から把持手段16が外される。もちろん、ねじ結合は、解剖学的な状況や治療部位へのアクセスの所望のまたは利用可能な手段に応じて器具のどちらの端部で行ってもよかろう。
【0027】
本発明の閉塞器具の製造に使用される管状編組物は、直径0.050〜0.127mm(0.002〜0.005in.)の範囲、好ましくは0.076〜0.088mm(0.003〜0.0035in.)の範囲のワイヤ、PDA用の器具の場合は、好ましくは直径0.088mm(0.003in.)のワイヤを用いることができる。管状編組物のワイヤ数は、36〜144、好ましくは72〜144の範囲だが、PDA用の器具の場合は、好ましくは144である。編組物のピック数は、30〜100、好ましくは50〜80、PDA用器具の場合は、好ましくは70である。
円筒部12およびディスク14の寸法と器具の長さとは、異なる寸法の血管通路、腔、洞に応じて望むように変更できる。以下の表は、選択した器具ごとの寸法範囲を単位mmで示したものである。
【0028】
【表1】
【0029】
給送手段にPDA用器具を取り付けた状態で維持することにより、操作者は、器具が初回の試みで適所に配置できなかったことが分かれば、送出鞘内へ器具を引込めて再位置決めすることができる。また、ねじ取り付けによって、操作者は、器具10が給送カテーテルの先端部から出て展開する形式を制御することができる。後述するように、器具が給送カテーテルから送出されると、織製品が熱処理によって硬化された好ましい展開形状に弾発的に復元する傾向がある。器具が、その形状に弾発的に戻る場合、カテーテル先端部に作用して、カテーテル端部より前方へ事実上強制される傾向がある。このばね作用の結果、器具が不適切な位置に配置されることが考えられる。ねじ把持手段16によって、操作者は、器具の展開中、器具を保持し続けることができるので、器具のばね作用を制御でき、器具が適切に配置されるように展開を制御することができる。
【0030】
図6に示した器具は、ワイヤの両端の中空内側把持部材23と、基端側および先端側の外側把持部材21,26とを有するように構成できるが、この構成は任意であって、必要条件とは見なされない。ワイヤ端部24は、内側と外側の把持部材21,26の間にスエージ加工によりクリンプされるが、把持部材間で接着または溶接してもよい。内側クランプ部材は、管状で、プッシュワイヤ27が自由通過できる内径を有するように寸法付けされている。先端部の外側把持部材26は、スエージ加工前に、内側把持部材を取り囲む編組ワイヤ端部24を収容するのに十分な内径を有するように寸法づけされている。先端部の外側把持部材26は、両内側把持部材を通して挿入されるプッシュワイヤ27からの押し込み力を受け取るように、中実(閉鎖端部)に形成されている。
【0031】
基端側の外側把持部材21は、雄ねじを有するように示され、給送手段28に逆転可能に連結されている。給送手段28は、好ましくは、ぺバックス(Pebax)等のナイロン・ブロック共重合体製であり、ぺバックス製の内管押し出し品が約0.025mm(0.001in.)のワイヤ編組物で覆われ、更に、該編組物が別のぺバックス外層で覆われている。給送カテーテル/鞘29も器具10および給送手段28を通すことができるように直径を大きくされている以外は、類似の構成でよい。このような構成は、可撓性やトルクの伝達を必要とする血管内用カテーテルでは、典型的な構成である。
【0032】
任意の選択肢として、給送カテーテル/鞘29に厚さ約0.025mm(0.001in.)のPTFE層を設けることで、摩擦が低減され、器具の通過が容易にされる。中空の給送手段は、0.20〜3.55mm(0.008〜0.14in.)のステンレス鋼製プッシュワイヤ27が給送手段と基端側把持手段とを通過し、かつ先端側把持手段に接触し、それよにり先端部把持手段を基端側把持手段から押し離し、器具を伸張させ得るように寸法付けされているが、この給送手段によって、鉤からの解除と、給送鞘29内への器具の再収容とが容易にされている。プッシュワイヤ27の先端部と先端部内側把持手段23とは、ねじ結合または他の逆転可能な手段によって結合されるように設計でき、それによって、ワイヤが偶然に先端部内側把持手段23の近くに位置決めされることがないように保証される。
【0033】
また給送手段28とプッシュワイヤ27との間に配置されたばねは、先端部外側把持手段26に抗してプッシュワイヤを保持できるように予め処置されている。給送手段28が器具10の基端部を制御し続け、プッシュワイヤ27が器具の先端部に押し出し力を作用できることで、器具は、目標長さに伸張もできれば、自己拡張や縮小もできる。このため、プッシュワイヤを押し込んで器具を先端方向へ強制的に押進させることで容易に鉤を解離させ、再位置決めすることが助けられる。これによって、また解剖学的に器具に不適切な寸法付けが行われているような場合に必要となるであろう鞘29内への器具の引き戻しも助けられる。
【0034】
図7A〜図7Cには、既に概説した医療器具10が、開口を囲む壁部を有する血管を閉塞するのに、どのように使用されるかを略示したものである。閉塞されるこの開口は、血管、通路、内腔、洞へ通じている。器具10は、給送のため縮小形状にされ、給送手段28に取り付けられて、給送カテーテル29を通過して、図7Aに示されているように、血管壁31の開口30に隣接するところまで挿入された給送カテーテル先端部に達する。給送手段28は、先端方向へ前進させられる一方、給送カテーテル29は引き止められ、器具10の先端部がカテーテル29から強制送出され、弾性的に自己拡張させられ、事実上、あらかじめ決められた熱硬化された成形状態に復元され、血管壁に接触する。
【0035】
この時点で、カテーテル29の先端部は、拡張力に対し反作用を生じ、図7Bに見られるように、少し基端側に移動する。鉤20は血管壁に接触し始め、器具を所定位置に係合される。先端に配置する必要があれば、鉤をその方向へ解除し、配置できる。図7Cでは、器具は、カテーテルから完全に送出されているが、まだ給送手段28に結合されたままである。この図から分かるように、ディスク14は、小直径部分Hを中心として旋回することによって血管壁31と自己整合する。器具が目標位置に配置されると、給送手段28は、基端部把持手段16のところで、ねじ結合を解除する方向に回転させられ、解離される。
【0036】
円筒部12は、血管内腔と摩擦接触して、血管が閉塞されるように寸法付けされるべきである。器具10は、次いで、円筒部/血管内腔間の摩擦と血管壁に係合される鉤20との組み合わせによって所定位置に保持されよう。比較的短時間にわたり、血栓が器具内および器具上に形成され、血管が血栓により閉塞されよう。当業者は、器具による閉塞を迅速化するために、器具に適当な血栓形成剤をコーティングしたり、ポリエステル繊維を添加したり、ワイヤストランド数を増して編成することが可能なことが分かるだろう。
肺血管閉塞疾患および肺房高血圧症(pulmonary atrial hypertension)は成人期に発症する。危険なシャントを有する心房中隔欠損(ASD)患者は、理想的には5歳の折に手術するのがよく、それ以後の年齢の場合は、いつでも診断の時点に手術するのがよい。欠損の正確な解剖学的形状は、2次元心エコー法およびカラーフロー・ドップラー法が現れてから、可視化できるようになった。使用すべきASD閉塞器具の寸法は、欠損部の寸法に対応させることになろう。
【実施例2】
【0037】
図2〜図4には、ASD治療用の本発明による医療閉塞器具の別の一好適実施例が示されている。この器具300も、卵円孔開存症(以下PFOと記す)として技術的に周知の欠損、または心室中隔欠損症(VSD)を閉塞するのに好適と思われる。図2〜図4を見ると、解放された非伸張状態の器具300は2つのディスク302,304を有し、該ディスクは、短い円筒部306を介して結合され、間隔をおいて整合する位置を占めている。円筒部306の長さは、好ましくは心房中隔の厚さとほぼ等しく、2〜20mmの範囲である。基端側ディスク302と先端側ディスク304とは、器具の外れを防止するのに十分な、シャントより大きい外径を有するのが好ましい。基端側ディスク302は、比較的平らな形状を有するが、先端側ディスク304は、基端部方向へ椀状に延び、基端側ディスク302を幾分覆うようになっている。
【0038】
先行技術に対するこの器具設計の改良点は、図2の器具の断面図である図3に示されている。先行技術の設計では、短い円筒部306の織製品が、短い円筒部の直径のところで各ディスク内壁の織製品と結合されていた。本発明の改良型器具設計では、短い円筒部が小直径部309のところでディスク壁と結合されており、しかも、この小直径部の直径は、ディスク直径よりはるかに小さい短尺円筒部直径よりも、はるかに小さい。このことによって、器具は、小直径部309を中心として容易に旋回可能であり、開口と直角でない(或る角度をなす)血管壁構造に整合できる。
【0039】
この編組みされた金属織製器具300の端部は、既述のように、溶接されるか、または把持手段308,310によって結束され、ほつれが防止されている。もちろん、これらの端部は、当業者には周知の別の手段によってまとめ合わせてもよい。基端部でワイヤストランドを結束している把持手段310は、また給送手段に器具を結合する役割も有する。図示の実施例では、把持手段310は、概ね円筒形であり、金属織製器具の端部を受容するための孔を有し、金属織製器具を含むワイヤが互いに移動することを事実上防止している。把持手段310は、また孔内に雌ねじを有する。このねじ孔は、給送手段28のねじ付き先端部を受容し、ねじ結合するようにされている(図6)。
【0040】
この本発明例に係るASD閉塞用器具300は、既述の方法で製造するのが好ましい。器具300は、好ましくは、0.127mm(0.005インチ)のニチノール・ワイヤメッシュ製である。このワイヤメッシュの編組は、28ピック/インチ(25.4mm当り)で、72ワイヤ・キャリヤーを有するメイポール編組機を用い、約64度のシールド角度で行うことができる。ASD器具300の剛度は、ワイヤ寸法、シールド角度、ピック寸法、ワイヤ・キャリヤーの数、熱処理工程のどれかを変更することで、増減できる。
当業者は、以上の説明から、成形型のキャビティがASD器具の目標形状と合致せねばならないことが分かるだろう。改良型の場合、成形型は、小直径部309を形成するような付形を必要とする。
【0041】
図8A〜図8Cには、ASD用器具の変形形態が示されている。基端側ディスク302´は先端側ディスク304´の鏡像である。基端側およびと先端側ディスク302´,304´の間隔は、円筒部306´の長さ未満である。図8Bに示されているように、ディスクの椀形によって、閉塞器具300´/心房中隔間の完全な接触が保証される。これにより、内皮組織の新しい心内膜層が閉塞器具300´上に形成され、それによって細菌性心内膜炎の危険が低減される。
器具による血管の閉塞を迅速化するために、器具は、適当な血栓形成剤でコーティングされるか、ポリエステル繊維を添加されるか、ワイヤストランドの数を増して編組されるかすることができる。ポリエステル繊維303,303´(図4および図8Cに示す)は、凝血過程を加速するために、任意に編組物内へ添加される。この繊維は、カテーテルを介して給送する際、容易に器具と共に縮小し、ディスク、中間部、複数部分の組み合わせのいずれか内へ添加することができる。凝血に付着することで編み混ぜられるこの繊維は、器具が閉塞部を形成する時に、凝血をしっかりと器具内に拘束する。
【0042】
以下では、器具の使用の仕方を、図7Cの給送手段と図9および図10とについて詳説する。器具は、2次元心エコー法およびカラーフロー・ドップラー法を用いて適切に送出かつ配置できる。図7Cの給送手段28は、適切などのような形状でもよい。従来型の案内ワイヤに似た細長の可撓性金属シャフトを含むのが好ましいが、図6について説明したワイヤ27に似た中空軸でもよい。給送手段28は、ASD閉塞器具300を小直径の円筒管、例えば展開用の給送カテーテル29の内腔25を通して前進させるのに使用される。ASD用器具300´は、伸張させて細長い形状体として内腔25内へ装入される。器具は、処置の際に内腔25内に挿入することができるが、本発明の器具は縮小状態に維持される間に永久変形することはないので、製造工場で予め挿入して前組み立てすることもできる。
【0043】
図10は、ディスク302´,304´が、中隔318の、厚さの異なる対向壁部に非平行状態でぴったりと接触できること、また中間の円筒部306´がASDを画成する壁部に対し拡張している様子を示している。図10は、心臓内のASKを閉塞する本発明の器具300´を示している。
大腿静脈から進入して、給送カテーテル29はASDを通過する。器具300´は、給送カテーテル内を前進させられ、先端側ディスク304´が給送カテーテル端部を出て拘束を解かれ、左心房内でディスク形状に復元される。
給送カテーテル29は、その後でASDを通って基端方向に引き戻され、給送手段28が静止保持され、中隔318に対し先端側ディスク304´が当て付けられる。給送カテーテル29は、次いで更に中隔318から引き離され、基端側ディスク302´が給送カテーテル29を出て拡張し、予め決められた拡張ディスク形状に弾発的に復元できる。このようにして、ASD用器具300´が配置され、それによって先端側ディスク304´が中隔318の一方の側を押圧するのに対し、基端側ディスク302´が中隔318の他方の側を押圧するようにされる。
【0044】
閉塞能を高めるため、器具にはポリエステル繊維303´(図8C参照)を添加することができる。器具が初回に不適切な展開をした幾つかの例では、器具300´は、給送手段28を基端方向に引張ることで元に戻され、それによって器具300´が給送カテーテル29内へ引き込められ、欠損部に対し器具300´を配置する次の試みに備えられる。
ASD閉塞器具300´が適切に配置された場合、医師は、給送手段28を回転させ、給送手段28を閉塞器具300´の把持手段310´から外す。把持手段310´のねじは、給送手段28を回転させることで、給送手段が閉塞器具300´の把持手段310´から外れるようにしたもので、単に閉塞器具300´を回転させるだけのものではない。既述のように、別の実施例では、適切な位置決めが保証されるように、操作者には、器具の展開中、器具の保持またはばね作用の制御が可能である。
【0045】
広義の概念で云えば、本発明方法は、患者の生理学的異常を治療する方法を更に含む。この方法にしたがって、異常の治療に適した医療器具が選択されるが、該医療器具は、事実上既述の複数実施例の1つによるものでよい。例えば、動脈管開存症が治療される場合は、図5A、図5B、図6のPDA閉塞器具10を選択できる。適切な医療器具が選択されると、カテーテルが患者の体内の通路内に挿入され、カテーテル先端部が、目標治療部位に隣接して、例えばPDAの経路または通路の直近に(または内部にさえ)配置できる。
【0046】
医療器具は、縮小させた形状でカテーテル内腔へ挿入できる。器具の縮小形状は、カテーテル内腔を容易に通過でき、かつカテーテル先端部から送出されて正しく展開するのに適当な形状であれば、どのような形状でもよい。例えば図2、図3、図4、図5A、図5B、図6、図8A〜図8Cに示した器具は、比較的細長の縮小形状を有するが、その場合、器具は、図4および実施例8Cに示すように、その軸線に沿って伸ばされる。この縮小形状は、器具を、概ねその軸線に沿って伸張させることで、例えば手で把持手段301,310を掴んで引き離すことで簡単に得ることができるが、その場合、器具の拡張直径部302,304は、器具軸線へ向って内方へ収縮する傾向がある。図2および図3のPDA閉塞器具10も、また多くの点で同じ形式で操作され、概ね器具軸線に沿って張力を加えることでカテーテル内へ挿入されるように縮小形状にすることができる。この点で、これらの器具10,300は、軸線方向張力によって直径が収縮する傾向がある「中国式手錠」(Chinese handcuffs)に似ていなくはない。
【0047】
医療器具は、縮小されカテーテルへ挿入されると、カテーテル内腔に沿ってカテーテル先端部へ向けて強制移動させられる。この移動は、カテーテルに沿って器具を強制移動させるように取り外し可能に器具に結合された給送手段または類似部材を用いて行われる。目標治療部位近くに位置させたカテーテル先端部から器具が送出され始めると、器具は、予め設定された拡張形状に弾発的に事実上完全に復元する傾向がある。超弾性合金、例えばニチノールが、この用途に特に有用な訳は、著しく弾性変形された後で容易に特定形状に戻る能力があるからである。このため、カテーテル先端部から医療器具が単に送出されるだけで、治療部位で器具が適正に展開する傾向が得られる。
【0048】
器具が弾発的に当初の拡張形状(すなわち、カテーテルを通過するための縮小形状以前の形状)に戻る傾向があるとはいえ、当初の形状に常に完全に戻るわけではないことを理解すべきである。例えば図5Aの円筒部12の場合、拡張形状での最大外径は、配置される内腔の内径と少なくとも等しいかまたは好ましくは該内径より大きく寸法付けられている。この器具が、より小さい内腔を有する血管内に配置された場合、内腔は、器具が完全に当初形状に戻るのを妨げるだろう。それでも、器具は適宜に拡張して、既述のように、内腔の内壁に接触することにより血管内に座着するだろう。
器具、例えば既述の器具10,300が、患者の体内で永久的に通路閉塞に使用される場合には、給送手段(例えば図6の例)を、器具との逆転可能の結合部を逆回転させることで簡単に解離し、カテーテルと給送手段とを患者の体内から引き出すことができる。こうすることで、医療器具は、患者の血管系内に配置されたままとなり、患者の体内で血管その他の通路を閉塞することができる。
【0049】
以上、本発明の一好適例について説明したが、本発明の精神および特許請求の範囲の枠を逸脱することなく、種々の改変、改造、変形が可能であることを理解すべきである。
例えば、2重ディスク構成の場合、器具の一方の端部のみが、ディスク/隣接中間円筒部間に小さい移行部直径を有するのが望ましいことが予想される。また、中間円筒部または円筒部が一方のまたは双方のディスクと非同心的でよいことも予想される。更に、円筒部は、本発明の範囲を逸脱することなく、バレル形状、凹状、凸状、テーパ状、これらの形状の組み合わせのいずれかであってよいことも予想される。同じように、円筒部の先端および基端部は、説明した逆円錐形とは異なる形状を有するようにして、しかも既述の利点が失われないようにすることもできるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】図1Bと共に示す、先行技術による単一ディスク型閉塞器具。
【図1B】図1Aと共に示す閉塞器具。
【図2】先行技術による別の器具の拡大側面図。
【図3】図2の器具に類似する器具の断面図で、解剖学的な相違に整合するように融通性を持たせた発明性のある改良型変更態様を示した図。
【図4】先行技術によるASD用器具の側面図で、器具を伸張させ、ポリエステル繊維を添加した状態を示す図。
【図5A】図5Bと共に示す、本発明による単一ディスク型器具の断面図。
【図5B】図5Aと共に示す、本発明による単一ディスク型器具。
【図6】別の単一ディスク型器具および給送装置の部分分解組立図。
【図7A】図5の単一ディスク型閉塞器具の配置段階を、図7B、図7Cと共に、順次示す図。
【図7B】図5の単一ディスク型閉塞器具の配置段階を、図7A、図7Cと共に、順次示す図。
【図7C】図5の単一ディスク型閉塞器具の配置段階を、図7A、図7Bと共に、順次示す図。
【図8A】本発明により製造されたASDまたはVSD用の2重ディスク型閉塞器具を予め付与された形状で示す(等直径の2ディスクが、間隔をおいて向き合っている)。
【図8B】図8Aに示した器具の断面図で、解剖学的相違に整合し可撓性を有するように改良されたディスクの本発明による変形形態を示す。
【図8C】図8A、図8Bと共に示す本発明による変形形態を示す。
【図9】図2〜図4に示したASD用器具の部分側断面図で、患者の心臓のASD内に配置した状態を示す。
【図10】本発明閉塞器具の断面図(壁部に整合するディスクによりVSDが閉塞された様子を示す)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小可能な医療器具において、
基端部および先端部を有する管状金属織製品になるように織製された複数の金属ストランドを含み、
各端部が、前記管状金属織製品に取着された各端部を固定する手段を有し、それによって前記ストランドを集束して、前記ストランドのほどけを防ぎ、
前記管状金属織製品が、生体器官の異常開口用閉塞体を作るような形状の予め設定された拡張形状を有し、
前記予め設定された拡張形状が、基端部および先端部のうちの少なくとも一方に設けられた第1直径のディスク形状部と、第2直径を有する隣接円筒形状部とを有しており、
前記ディスク形状部と円筒形状部が移行部により連結され、該移行部の直径が第1および第2直径よりも小さくなされており、
前記医療器具が、患者の体内通路を通して給送できるように、より小さな横断面寸法になるよう変形可能であり、
前記金属織製品が記憶特性を有し、それにより前記医療器具が、拘束を解かれた時に、前記予め設定された拡張形状に復元する傾向がある縮小可能な医療器具。
【請求項2】
前記各端部を固定する手段が、給送手段に対して回転式に取着するためのねじ孔を有する請求項1に記載された医療器具。
【請求項3】
前記管状金属織製品に形成された前記ディスク形状部および前記円筒形状部のうちの少なくとも一方の内部に保持された閉塞用繊維を任意に含む請求項2に記載された医療器具。
【請求項4】
前記金属ストランドが、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金およびコバルト・クロム・ニッケル合金から成る群から選択された材料を含む請求項1に記載された医療器具。
【請求項5】
前記ディスク形状部と前記円筒形状部のうちの少なくとも一方の内部に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項4に記載された医療器具。
【請求項6】
前記ディスク形状部と前記円筒形状部のうちの少なくとも一方の内部に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項1に記載された医療器具。
【請求項7】
前記円筒形状部の端部が凹状テーパ面を有する請求項1に記載された医療器具。
【請求項8】
前記管状金属織製品の中空部分内に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項7に記載された医療器具。
【請求項9】
前記医療器具が、図5Aに示され、かつ、明細書中の表1に記載された寸法を有する請求項1に記載された医療器具。
【請求項10】
前記金属ストランドが、0.050〜0.127mm(0.002〜0.005インチ)の直径を有し、前記金属織製品が、36〜144の範囲の複数ストランドを含む請求項1に記載された医療器具。
【請求項11】
縮小可能な医療器具において、
複数の編組みされた金属ストランドと、基端部および先端部を有する管状金属織製品とを含み、
各端部が、前記管状金属織製品に取着された把持手段を有し、それによって前記金属ストランドを集束して、前記金属ストランドのほどけを防ぎ、
前記医療器具が、患者の体内通路を通して給送可能な縮小形状と、生体器官における異常開口の閉塞を行うための、2重ディスク形状の予め設定された拡張形状とを有し、
前記医療器具が、その拡張形状状態で、2つの拡張されたディスク形状端部と、該2つのディスク形状端部間に設けた縮径中間円筒部とを有し、
前記ディスク形状端部と前記縮径中間円筒部とが、前記ディスク形状端部および前記縮径中間円筒部よりも小直径の縮径部によって連結されている縮小可能な医療器具。
【請求項12】
拡張された各ディスク形状端部が内壁と外壁を有し、前記拡張されたディスク形状端部のうちの少なくとも1つの内壁が概ね凹状である請求項11に記載された医療器具。
【請求項13】
各端部を固定する前記手段が、給送手段に回転式に取着するためのねじ孔を有する請求項11に記載された医療器具。
【請求項14】
前記2重ディスク形拡張形状によって形成される中空の中央部分内に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項7、請求項11、請求項12および請求項13のうちのいずれか1項に記載された医療器具。
【請求項15】
前記円筒形状部に設けされた複数の鉤部材を更に含む請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された医療器具。
【請求項16】
縮小可能な医療器具において、
複数の編組みされた金属ストランドと、基端部および先端部を有する管状金属織製品とを含み、
各端部が、前記金属織製品に取着された把持手段を有し、それによって前記金属ストランドを集束して、前記金属ストランドのほどけを防ぎ、
前記管状金属織製品が、生体器官における異常開口の閉塞を行うための形状付与による予め設定された拡張形状を有し、
前記予め設定された拡張形状が、患者の体内通路を通して給送できるように、より小さな横断面寸法に変形可能であり、
また、前記予め設定された拡張形状が、拡径された2つのディスク形状部分と縮径中間円筒部とを含み、
前記中間部が、患者の心房中隔の厚さとほぼ等しい長さを有し、
前記縮径中間円筒部とディスク形状部が、これら両者方よりも小さな直径を有する連結部によって連結されており、
前記金属織製品が記憶特性を有し、それによって、医療器具が、拘束解除時に、前記予め設定された拡張形状に復元される傾向を有する縮小可能な医療器具。
【請求項17】
前記連結部が、前記縮径中間円筒部内に少なくとも部分的に引っ込んでいる請求項16に記載された医療器具。
【請求項18】
前記把持手段が、給送手段のねじ端部を回転式可能に受容するようになされたねじ孔を有する請求項16に記載された医療器具。
【請求項19】
前記縮径中間円筒部と前記ディスク形状部のうちの一方の内部に収容された閉塞用繊維品を更に含む請求項16に記載された医療器具。
【請求項20】
前記金属ストランドが、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金およびコバルト・クロム・ニッケル合金から成る群から選択された材料を含む請求項16に記載された医療器具。
【請求項21】
前記金属ストランドが、0.05〜0.127mm(0.002〜0.005インチ)の直径を有し、前記金属織製品が36〜144の範囲の複数ストランドを含む請求項20に記載された医療器具。
【請求項1】
縮小可能な医療器具において、
基端部および先端部を有する管状金属織製品になるように織製された複数の金属ストランドを含み、
各端部が、前記管状金属織製品に取着された各端部を固定する手段を有し、それによって前記ストランドを集束して、前記ストランドのほどけを防ぎ、
前記管状金属織製品が、生体器官の異常開口用閉塞体を作るような形状の予め設定された拡張形状を有し、
前記予め設定された拡張形状が、基端部および先端部のうちの少なくとも一方に設けられた第1直径のディスク形状部と、第2直径を有する隣接円筒形状部とを有しており、
前記ディスク形状部と円筒形状部が移行部により連結され、該移行部の直径が第1および第2直径よりも小さくなされており、
前記医療器具が、患者の体内通路を通して給送できるように、より小さな横断面寸法になるよう変形可能であり、
前記金属織製品が記憶特性を有し、それにより前記医療器具が、拘束を解かれた時に、前記予め設定された拡張形状に復元する傾向がある縮小可能な医療器具。
【請求項2】
前記各端部を固定する手段が、給送手段に対して回転式に取着するためのねじ孔を有する請求項1に記載された医療器具。
【請求項3】
前記管状金属織製品に形成された前記ディスク形状部および前記円筒形状部のうちの少なくとも一方の内部に保持された閉塞用繊維を任意に含む請求項2に記載された医療器具。
【請求項4】
前記金属ストランドが、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金およびコバルト・クロム・ニッケル合金から成る群から選択された材料を含む請求項1に記載された医療器具。
【請求項5】
前記ディスク形状部と前記円筒形状部のうちの少なくとも一方の内部に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項4に記載された医療器具。
【請求項6】
前記ディスク形状部と前記円筒形状部のうちの少なくとも一方の内部に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項1に記載された医療器具。
【請求項7】
前記円筒形状部の端部が凹状テーパ面を有する請求項1に記載された医療器具。
【請求項8】
前記管状金属織製品の中空部分内に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項7に記載された医療器具。
【請求項9】
前記医療器具が、図5Aに示され、かつ、明細書中の表1に記載された寸法を有する請求項1に記載された医療器具。
【請求項10】
前記金属ストランドが、0.050〜0.127mm(0.002〜0.005インチ)の直径を有し、前記金属織製品が、36〜144の範囲の複数ストランドを含む請求項1に記載された医療器具。
【請求項11】
縮小可能な医療器具において、
複数の編組みされた金属ストランドと、基端部および先端部を有する管状金属織製品とを含み、
各端部が、前記管状金属織製品に取着された把持手段を有し、それによって前記金属ストランドを集束して、前記金属ストランドのほどけを防ぎ、
前記医療器具が、患者の体内通路を通して給送可能な縮小形状と、生体器官における異常開口の閉塞を行うための、2重ディスク形状の予め設定された拡張形状とを有し、
前記医療器具が、その拡張形状状態で、2つの拡張されたディスク形状端部と、該2つのディスク形状端部間に設けた縮径中間円筒部とを有し、
前記ディスク形状端部と前記縮径中間円筒部とが、前記ディスク形状端部および前記縮径中間円筒部よりも小直径の縮径部によって連結されている縮小可能な医療器具。
【請求項12】
拡張された各ディスク形状端部が内壁と外壁を有し、前記拡張されたディスク形状端部のうちの少なくとも1つの内壁が概ね凹状である請求項11に記載された医療器具。
【請求項13】
各端部を固定する前記手段が、給送手段に回転式に取着するためのねじ孔を有する請求項11に記載された医療器具。
【請求項14】
前記2重ディスク形拡張形状によって形成される中空の中央部分内に保持された閉塞用繊維を更に含む請求項7、請求項11、請求項12および請求項13のうちのいずれか1項に記載された医療器具。
【請求項15】
前記円筒形状部に設けされた複数の鉤部材を更に含む請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された医療器具。
【請求項16】
縮小可能な医療器具において、
複数の編組みされた金属ストランドと、基端部および先端部を有する管状金属織製品とを含み、
各端部が、前記金属織製品に取着された把持手段を有し、それによって前記金属ストランドを集束して、前記金属ストランドのほどけを防ぎ、
前記管状金属織製品が、生体器官における異常開口の閉塞を行うための形状付与による予め設定された拡張形状を有し、
前記予め設定された拡張形状が、患者の体内通路を通して給送できるように、より小さな横断面寸法に変形可能であり、
また、前記予め設定された拡張形状が、拡径された2つのディスク形状部分と縮径中間円筒部とを含み、
前記中間部が、患者の心房中隔の厚さとほぼ等しい長さを有し、
前記縮径中間円筒部とディスク形状部が、これら両者方よりも小さな直径を有する連結部によって連結されており、
前記金属織製品が記憶特性を有し、それによって、医療器具が、拘束解除時に、前記予め設定された拡張形状に復元される傾向を有する縮小可能な医療器具。
【請求項17】
前記連結部が、前記縮径中間円筒部内に少なくとも部分的に引っ込んでいる請求項16に記載された医療器具。
【請求項18】
前記把持手段が、給送手段のねじ端部を回転式可能に受容するようになされたねじ孔を有する請求項16に記載された医療器具。
【請求項19】
前記縮径中間円筒部と前記ディスク形状部のうちの一方の内部に収容された閉塞用繊維品を更に含む請求項16に記載された医療器具。
【請求項20】
前記金属ストランドが、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金およびコバルト・クロム・ニッケル合金から成る群から選択された材料を含む請求項16に記載された医療器具。
【請求項21】
前記金属ストランドが、0.05〜0.127mm(0.002〜0.005インチ)の直径を有し、前記金属織製品が36〜144の範囲の複数ストランドを含む請求項20に記載された医療器具。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−18150(P2009−18150A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337174(P2007−337174)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506226692)エイジーエイ メディカル コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506226692)エイジーエイ メディカル コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
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