説明

経皮拡張器

【課題】身体内腔内への大径の操作経路を創造すべく、組織開口部の半径方向の漸増的な拡張を可能にする拡張用具を提供する。
【解決手段】本発明に係る経皮拡張器具10は、多様な目的のために患者身体の様々な標的部位に、経皮穿通孔を形成及び拡張するのに有用である。経皮拡張器具10は、拡張プローブ12と、プランジャー14と、少なくとも1つの拡張セグメント16とを含む。プランジャー14は、各拡張セグメント16を前記拡張プローブ12に沿って前記穿通孔まで移動させ、前記拡張プローブ16によって前記穿通孔を拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、身体内腔への経皮アクセスを容易にするための医療デバイスに関し、より詳しくは、身体内腔内への大径の操作経路を創造すべく、組織開口部の漸増的な半径方向の拡張を可能にする拡張用具又は拡張器具の創出及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の医療では、中空の身体器官、組織、体腔などへの経皮的アクセスを必要とすることが多い。「最小侵襲又は低侵襲」外科手術の場合、経皮的アクセスは通常は、小さなアクセス孔から適切なカニューレ、器具、チューブなどを挿入することによって行われる。初期のアクセスは通常は、針又はトロカールで、皮膚及び中間にある任意の身体構造に孔を開けることによって実施される。しかしながら、針又はトロカールが組織に過度の損傷を与えることなく所望の穿通を達成することができるように、初期の穿刺孔は通常は非常に小さく形成される。したがって、所望の医療処置の実施を可能にするのに十分な直径を有する操作経路を提供するためには、前記初期のアクセス孔をその後に拡張する必要がある。
【0003】
そのような拡張を達成するための1つの一般的な方法としては、直径が漸増するように形成された1つ以上の拡張ロッドを、穿刺孔から身体器官、組織又は体腔へ連続的に導入する方法がある。初期の針穿刺孔又はカニューレ穿刺孔から柔軟な案内ワイヤが導入される場合は、この方法は、セルジンガー(Seldinger)法と呼ばれる。
【0004】
この方法は、比較的小さなデバイス(例えば、約6フレンチのカテーテル(1フレンチ(F)は、0.079インチの直径に等しい))を配置する場合には非常に効果的であるが、より大きな拡張を必要とする場合は、交換する拡張器の数が増加するため、非常に時間がかかる。さらに、穿通される身体構造は比較的弛緩性の膜又は壁を含むことが多いので、より大きな拡張器を用いて穿通すると、筋膜剥離、すなわち、周囲の組織構造からの膜又は壁の陥入及び分離が生じる場合がある。このような問題は、穿通される器官、組織又は体腔が疾患を有する場合に悪化する可能性があり、例えば、疾患により膜又は壁が厚く又は硬くなって、前記組織と軸方向に係合する拡張器による穿通に耐える。
【0005】
拡張過程中における内部の身体器官又は構造の筋膜剥離を防止するための1つの方法としては、穿通及び拡張部位の周囲に配置される別個の固定用器具を使用する方法がある。コープ博士(Dr. Cope)によって開発されたこの方法は、身体器官をその周囲の筋膜により強固に結合させるために、初期の穿刺部位の末梢部に複数の別個のアンカー又はトグルを留置する。前記アンカーは、別の穿刺孔によって画定された経路を通じて延びる縫合糸の先端に取り付けられている。前記縫合糸は、中空の器官の壁を筋膜に対して保持するために張力がかけられ、その後、体外で固定される。この方法は概ね適切であるが、アンカー毎に別個の挿通孔を形成し、その後、各アンカーを所定の位置で縫合する必要がある。そのため、この方法は、比較的時間やコストがかかる上に、患者により大きな苦痛を与える恐れがある。
【0006】
アンカー方法の使用の有無に関わらず、直径が連続的に増加するに形成された拡張器を使用する場合のさらなる問題としては、拡張された穿通孔から体液及び体物質が漏出することがある。そのような漏出は、前記拡張器が所定の位置にある間は抑制することができるが、拡張器を除去すると、前記流体が穿通された器官、組織又は体腔から漏出して、穿刺経路上の他の身体構造を汚染する場合がある。例えば、胆嚢は肝臓と部分的に結合しているため、胆嚢への経皮アクセスは通常は、経肝的に行われる。腹膜経由アクセスは、胆嚢の未結合の壁を介して行われるが、胆汁が腹膜に漏出する可能性が高い。腹膜経由アクセスは、その他の点では、例えば、肝臓に損傷を与える可能性を避けられるなどのいくつもの理由により好ましいが、胆嚢の未結合の壁を貫通するのは困難であるため、及び、従来の拡張方法に付随する胆汁漏出のより高いリスクのために、腹膜経由アクセスは禁忌とされている。
【0007】
これらの理由により、身体の中空の器官、組織及び体腔内への経皮穿通孔を形成及び拡張するための改良された方法及び装置を提供することが求められている。この装置及び方法は、穿通された器官、組織又は体腔の陥入及び筋膜剥離のリスクを減少させつつ、経皮アクセス穿通孔を、約20F、24F及びそれ以上の非常に大きな直径を含む事実上あらゆる直径まで拡張するのに適したものでなければならない。この方法は、関連する侵襲的処置を実施するのに必要な時間及び複雑性のさらなる増加を最小限にすべきであり、とりわけ、人体の器官、組織又は体腔を周囲の筋膜に固定するための補助的な穿通が必要となるのを避けるべきである。この方法はさらに、複雑になるのを避けるべきあり、所望の拡張を達成するのに必要な拡張機構の数を減少させることが好ましい。前記方法はまた、侵襲的処置に伴う患者の苦痛を軽減すべきであり、身体の器官、組織又は体腔へアクセスするための経皮穿通孔の形成を必要とする事実上あらゆるタイプの侵襲的処置に適合すべきである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
当業者が直面する上述の課題及び困難を解決すべく、本発明は経皮拡張器を提供する。本発明の一態様では、本発明に係る経皮拡張器具は、拡張プローブと、少なくとも1つの拡張セグメントと、プランジャーとを含む。前記拡張プローブは、患者身体内の標的位置に通じる経皮穿通孔に挿入され前記穿通孔を拡張するためのものである。前記拡張プローブは、近位端に設けられたハンドル及びテーパ状の遠位端を有し、前記両端間に所定の長さを規定する。前記プランジャーは、近位端に設けられたハンドル、遠位端及び前記遠位端の近位に設けられたキャッチ部を有し、前記両端間に所定の長さを規定する。前記プランジャーは、前記拡張プローブと摺動自在に係合する。前記少なくとも1つの拡張セグメントは、テーパ状の遠位端を有し、初期位置にあっては、前記プランジャーの一部及び前記拡張プローブを中心として同軸的に配置される。前記プランジャーを前記拡張セグメントから引き出した後、前記プランジャーを介して前記拡張セグメントに力を加えると、前記キャッチ部が前記少なくとも1つの拡張セグメントを、前記拡張プローブの前記遠位端の近位に位置する最終位置まで、前記拡張プローブの前記長さに沿って移動させる。それにより、前記前記拡張セグメントの前記テーパ状の遠位端が前記穿通孔に挿入され、前記穿通孔を前記拡張プローブのみのときよりも大きく拡張する。多くの実施形態は、互いに入れ子状をなして同軸的に配置された複数の拡張セグメントを含む。前記拡張プローブ及び前記プランジャーは、穿通デバイスの挿入を可能にするために、両者の組合せ体の長手方向中心軸を通る中心ルーメンを形成するように構成される。
【0009】
他の実施形態では、前記経皮拡張器具は、サイズの小さいものから大きいものへ順に、その内側の拡張セグメント或いは前記拡張プローブを中心として同軸的に配置された複数の円筒状の拡張セグメントを含む。前記各拡張セグメントは、前記穿通孔の拡張を可能にすべく、前記キャッチ部に順々に係合されて前記遠位端に向かって移動させられる。
【0010】
別の実施形態では、本発明に係る経皮拡張器具は、患者身体内の標的位置に通じる経皮穿通孔に挿入され前記穿通孔を拡張するように構成されたテーパ状の遠位端を有する移動可能な拡張セグメントを備える。前記経皮拡張器具は、前記経皮穿通孔への初期の挿入及び前記経皮穿通孔の初期の拡張のためのテーパ状の遠位端を有する拡張プローブも備える。前記拡張プローブは、前記移動可能な拡張セグメントの内側に同軸的に配置され、前記移動可能な拡張セグメントと解放可能に係合して前記拡張セグメントを初期の位置から前記経皮穿通孔内の使用位置まで移動させる機構を有する。
【0011】
さらなる別の実施形態では、本発明に係る経皮拡張器具は、直径方向に順に、互いに入れ子状をなして同軸的に配置された複数の拡張セグメントを備える。前記経皮拡張器具は、患者身体内の標的位置に通じる前記経皮穿通孔に最初に挿入され前記穿通孔を最初に拡張するための拡張プローブも備える。前記拡張プローブは、前記各移動可能な拡張セグメントを小さいものから大きいものへ順に解放可能に係合し、前記各移動可能な拡張セグメントを前記拡張プローブに沿って前記穿通孔内に順々に移動させる機構を有し、前記各拡張セグメントを前記穿通孔内に挿入することにより前記穿通孔を拡張する。
【0012】
本発明の他の目的、利点及び用途は、添付図面を参照して行われる本発明の好適な実形態に対する以下の説明から明確になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、多様な目的のために患者身体の様々な標的部位に、経皮穿通孔を形成及び拡張するのに有用である。初期の穿通孔は非常に小さく形成され、一般的には約7F以下であり、より一般的には約3F以下であり、多くの場合は20GA(ゲージ;0.035インチ)以下である。前記穿通孔はその後、より大きな直径の穿通孔の形成に特に有用な本発明によって、一般的には約10〜30フレンチ(French:F)、典型的には約12〜28F、通常は約14〜24Fの範囲の最終的な直径を有する所望の最終サイズまで拡張される。
【0014】
前記穿通孔の目的は、排液、臓器内への薬物投与、灌流、吸引などでもあり得るが、通常は、例えば低侵襲外科処置用の、比較的大きな手術器具又は作業用カテーテルを導入することにある。前記処置としては、腹腔鏡検査、管のバルーン拡張、ステントの留置、尿路及び胆管からの胆石除去、結腸内視術などのオストミー処置、気管開口などがある。前記穿通孔の他の一般的な目的としては、例えば空腸オストミー又は胃オストミーを介した、胃腸管への栄養剤の直接投与がある。経皮穿通孔の標的部位は、通常は、例えば、胆嚢、胃、膀胱、子宮、腎臓、肺及び気管の一部、直腸、腹膜などの、中空の身体器官又は体腔の内部である。また、前記標的部位は、固形組織や固形器官(例えば、固形癌や腫瘍)の内部にも位置し得る。本発明に係る器具の長さ及び柔軟性は、アクセスする位置に応じて大幅に変更することができる。
【0015】
本発明に係る経皮拡張器具又は用具は、細長い拡張プローブ、プランジャー、少なくとも1つの拡張セグメント、及び随意的に分割可能な鞘を含む。前記拡張プローブ及び前記プランジャーは互いに摺動自在であり、前記経皮拡張器具の中心軸を通る通路を規定する軸状ルーメンを共に画定する。前記経皮拡張器具は、近位端及び遠位端を有し、特定の用途に応じて、一般的に柔軟性又は剛性の構造を有する。剛性又は半剛性の構成要素は、一般的に、ほぼ直線的な経路に沿って標的器官に近づくことができる場合に用いられる。一方、より柔軟な機器は、前記アクセス経路がより大きく蛇行している場合に用いられる。
【0016】
前記機器の長さは変更可能であり、前記長さが短い場合の実施形態は、典型的には約7〜12cmの範囲の長さを有し、例えば胃や気管などの皮膚付近の標的部位へのアクセスに適している。前記長さが長い場合の実施形態は、約15〜25cmの範囲の長さを有し、例えば腎臓などのより遠い標的部位へのアクセスに適している。前記長さがさらに長い場合の実施形態は、約30〜50cmの範囲又はそれ以上の長さを有し、最も遠い管や身体部位へのアクセスに用いられる。
【0017】
前記経皮拡張器具をその標的部位に向けて経皮的に前進させる際に、皮膚及びその下の組織や器官などに孔を空けるために、随意的に、鋭利な先端を有する穿通デバイスが前記機器と併用される。好都合なことに、前記拡張プローブ及び前記プランジャーによって形成された前記軸状ルーメンが、針、スタイレット又はトロカールの形態の前記穿通デバイスを導入するための通路を提供する。前記穿通デバイスは、前記鋭利な先端が前記経皮拡張器具の前記遠位端から露出するように、前記軸状ルーメン内に配置される。前記経皮拡張器具は、その後、前記標的部位に向けて経皮的に前進させられ、前記穿通デバイスは、前記穿通孔を半径方向に拡張する前に取り出される(詳細については後述する)。
【0018】
穿刺孔が事前に形成されていない場合は、鋭利な先端又は皮膚に孔を空けるための他の手段が必要になる。本発明は、しかしながら、従来の技術及び器具を使用して初期の比較的小さい直径の穿刺孔を形成する場合にも有用である。典型的には、前記穿刺孔は非常に小さい針を使用して形成される。ある場合には、前記初期の穿刺孔に、本発明に係る拡張プローブ(鋭利な先端を有していない)を直接的に導入することも可能である。より一般的には、前記初期の穿刺孔はその後、微小軸拡張と併用されるセルジンガー(Seldinger)法などの従来の技術及び器具を使用して、中程度の直径まで拡張される。拡張された中程度の直径は、典型的には約3〜8Fの範囲であり、より典型的には約5〜7Fの範囲である。本発明に係る前記経皮拡張器具はその後、部分的に拡張された穿通孔に、典型的には、柔軟性のガイドワイヤ又は前記穿通孔を維持するために留置しておいた他の部材越しに導入される。前記アクセスルーメンの所望の最終的な直径を得るために、前記穿通孔はその後、単数又は複数の拡張セグメントの軸方向導入によって拡張される。
【0019】
前記拡張プローブは、それ自身が、前記標的部位に孔を空けた後の前記小孔の第1の拡張ステップを実施する。前記拡張プローブは、近位端がハンドルで終端し、遠位端がテーパ状のカニューレで終端する。前記拡張プローブは、一般的に、環状断面を有するカニューレの形状を成している。しかしながら、前記カニューレの長さ部の特定部分において、互いに対向する円弧部分(cylindrical sectors)が除去されており、結果として、2つの互いに対向する断面弓状の長さ部が得られる。前記2つの互いに対向する断面弓状の長さ部は、前記プランジャーと係合する摺動自在レールを形成する。前記摺動自在レールは、前記プランジャーが、前記2つの構成要素(拡張プローブ及びプランジャー)を通る長手方向中心軸に沿って、前記拡張プローブに対して長手方向に摺動することを可能にする。
【0020】
また、前記プランジャーも、近位端がハンドルで終端する。前記プランジャーのハンドルは、多くの実施形態では、前記拡張プローブのハンドルと同様であり得る。前記プランジャーは一般的に、カニューレの形状を成しており、遠位端が開口ルーメンで終端する。前記遠位端の近位には、前記拡張セグメントの少なくともいくつかと係合するようにデザインされたリッジ又はキャッチ部が設けられる。また、前記プランジャーは、前記拡張プローブと同様の、互いに対向する断面弓状の構造を有する。前記断面弓状の長さ部は、前記2つの構成要素の一方を他方に対して、長手方向軸を中心にして90度回転させることを可能にする。このことにより、前記2つの構成要素の両方の、互いに対向する弧状の長さ部を、それぞれ互いに摺動的に係合させることを可能にする。前記2つの構成要素の組合せ体は、前記2つの構成要素の中心軸を通り、その中に前記穿通デバイスを挿入可能な単一の摺動自在ルーメンを効率的に創出する。
【0021】
少なくとも1つの、多くの場合は複数の、拡張セグメントが用いられる。各拡張セグメントは、その内側の拡張セグメント、或いは前記拡張プローブ/プランジャー組合せ体のカニューレ部分を中心として、互いに同軸的に積層される。また、前記拡張セグメントは一般的に、カニューレの形状を成している。各拡張セグメントの遠位端は一般的に、テーパ状に形成されている。一方、各拡張セグメントの近位端は多くの場合は、前記遠位端の勾配よりもはるかに急勾配のテーパ状に形成されている。前記遠位端は、前記拡張セグメントの患者の生体構造を通る前進を容易にするために、テーパ状に形成されている。これに対して、前記近位端のテーパは、異なる機能を果たす。具体的には、前記近位端の前記テーパでの前記カニューレの側壁は、剛性があり、圧縮力を受けたときに座屈に耐えるように作成される。前記拡張セグメントは、圧縮荷重下で座屈するのではなく、圧縮力が加えられた方向に移動する。しかしながら、前記近位端の前記テーパの前記側壁は、前記近位端でのルーメンの出口直径よりも若干大きい直径を有する部材の通過を可能にする。前記ルーメンの前記テーパ状の側壁は、直径が若干大きい部材が通過する際に、ワイパーシールと同様の方法で外側に曲がることができる。
【0022】
各拡張セグメントは、前記拡張プローブ/プランジャーの組合せ体の長さよりも一般的に短い長さを有し、前記組合せ体の外径よりも大きい外径を有する。上述したように、多くの場合では、実施される医療処置は、漸増的な拡張を提供するために、連続的に増加する直径を有する2つ以上の拡張セグメントを使用する。しかし、ある処置では、前記小孔を半径方向に所望の最終直径まで拡張するためには、単一の拡張セグメントの直径で十分である。典型的には、最も大きい前記拡張セグメントの外径は、前記拡張プローブ/プランジャーの組合せ体の直径よりも少なくとも2倍大きく、通常は少なくとも3倍大きく、多くの場合は5倍以上大きい。前記各構成要素の長手方向の摺動運動を補助するために、並びに、穿通をさらに容易にするために、任意の前記構成要素の外面は、完全に又は部分的に潤滑剤でコーティングされる、或いは例えばポリエチレンなどの潤滑性ポリマーから製造される。
【0023】
随意的な分割可能な外側の鞘を設けることができる。前記鞘は、最も外側に同軸的に配置された拡張セグメントとして機能を果たす。前記外側の鞘を設けた場合は、前記鞘は、前記経皮拡張器具から取り外し可能であるべきであり、そのため、前記小孔内にそのまま留置されるようにデザインされる。手術器具又はカテーテルなどの適切な器具を、その後、前記外側の鞘の前記ルーメンを通して患者の体内へ挿入することができる。前記外側の鞘は、その後、縦方向に分割され、前記手術器具又はカテーテルの後退又は除去を必要とすることなく取り出される。
【0024】
図1を参照して、本発明の原理に従って構成された経皮拡張器具又は用具10が、胃腸チューブ配置用具としての第1の例示的な実施形態に説明されている。前記器具10は、拡張プローブ12と、プランジャー14と、少なくとも1つの拡張セグメント16とを含む。ハンドル18が、拡張プローブ12及びプランジャー14の各々に設けられている。添付図面では、2つのハンドル18は同様の形をしているが、これは本発明の限定を意味するものではない。実際は、より容易な把持、より容易な操作、又は当業者に理解される他の望ましい特性若しくは機能を可能にするために、各ハンドルは異なる構造を有することが望ましいであろう。
【0025】
図2を参照して、前記器具10の他の構成要素から分離された拡張プローブ12が示されている。拡張プローブ12の近位端20は、前述したように、ハンドル18として構成され得る。遠位端22は、緩やかなテーパ24の形状に構成され得る。テーパ24は、前記用具10の患者の生体構造を通る前進を容易にするようにデザインされている。拡張プローブ12は、一般的に、拡張プローブ12の長手方向軸を通って延びるルーメン26を有するカニューレの形状を成している。しかしながら、添付図面に見ることができるように、拡張プローブ12の特定の部分で、互いに対向する円弧部分(cylindrical sectors)が、拡張プローブ12から除去されている。結果として得られた構造は、この実施形態では、プランジャー14を摺動自在に案内するためのレールとしての役割を果たす、2つの互いに対向する、円筒の4分の1形状で断面弓状の長さ部28を形成する。
【0026】
図3は、前記器具10の他の構成要素から分離されたプランジャー14を示す。プランジャー14の近位端30も、ハンドル18として構成され得る。また、遠位端32も設けられている。遠位端32の近位には、この図示した実施形態では裁頭円錐形状のキャッチ部34が設けられている。プランジャー14は、プランジャー14の長手方向軸を通って延びるルーメン36を有するカニューレを形成する。また、プランジャー14は、拡張プローブ12と同様の断面形状を有しており、2つの互いに対向する、円筒の4分の1形状で断面弓状の長さ部38が、拡張プローブ12の断面弓状の長さ部28と係合するために設けられている。
【0027】
拡張プローブ12及びプランジャー14の2つの構成要素を組合せると、図4に示すような摺動自在サブアセンブリ40が構成される。添付図面に見ることができるように、プランジャー14は拡張プローブ12に係合され、2つの終端位置の間で摺動自在である。さらに、図2に見ることができるように、拡張プローブ12のハンドル18を通るルーメン26の断面形状は、プランジャー14の2つの互いに対向する、円筒の4分の1形状で断面弓状の長さ部38を受け入れるように構成されている。もちろんこの図示した実施形態では、製造中は、ハンドル18を固定する前に、前記構成要素を互いに係合させるであろう。しかし、このことは、当業者に理解されるであろう。他の実施形態では、後述するように、前記プランジャーは、目的とする機能の実施後に取り外し可能に作成することができる。
【0028】
図5は、図4のA−A線断面図であり、前記サブアセンブリを示している。この図は、2つの互いに対向する、拡張プローブ12の円筒の4分の1形状で断面弓状の長さ部28と、それに対応するプランジャー14の2つの互いに対向する、円筒の4分の1形状で断面弓状の長さ部38を明確に示している。この図から、前記2つの構成要素が互いに対してどのように摺動するか、及び、前記2つの構成要素が、同軸上に配置されたルーメン26及び36の一部同士を互いに組合せたルーメン42をどのようにして共同で形成するかを、当業者は理解できるであろう。簡単に上述したように、前記2つの構成要素の一方又は両方は、両者の間の摩擦を減少させるために、滑らかになるように作成される又は潤滑性ポリマーから製造される。
【0029】
図6は、代表的な拡張セグメント16の切欠図である。各拡張セグメント16は、一般的に、カニューレである。各拡張セグメント16の遠位端44は、例えば直線状テーパ46を形成するように緩やかにテーパされる。一方、近位端は、例えば、内側に窪んだテーパ48を形成するようにテーパされることが多い。直線状テーパ46は、前記器具10の患者の生体構造を通る前進を容易にするように、及び直線状テーパ46が患者に挿入された際に前記小孔を伸長又は拡張するようにデザインされている。したがって、直線状テーパ46の特有の形状は不可欠な形状ではないが、このように形成することにより、直線状テーパ46を前進させた際の前記小孔の漸進的な{ぜんしん てき}拡張が可能となる。2つのテーパ46及び48の間の長さ部は、一般的に、他の拡張セグメントとの間、又は拡張セグメント16と拡張プローブ12との間の摺動を容易にするために、円筒状に形成されている。窪んだテーパ48は、後述するように、或る所望の程度の柔軟性を有するように、円筒部分から先端へ向かって壁厚が急激に変化するようにデザインされている。具体的には、窪んだテーパ部48での拡張セグメント16の側壁は、剛性があり、圧縮力を受けたときに座屈に耐えるようにデザインされている。拡張セグメント16は、圧縮荷重下で座屈するのではなく、圧縮力が加えられた方向へ移動させられる。
【0030】
図7、8及び9は、前記器具10の様々な係合状態を示す拡大断面図である。拡張プローブ12に関連するハンドル18が、図7に示されている。複数の拡張セグメント16が示されており、説明を容易にするために、16a、16b、16cとラベルしている。この実施形態では、3つの拡張セグメントが示されているが、前記拡張セグメントの前記3つの数は、本発明を限定するものではない。前記数に関わらず、図7から明確に分かるように、各拡張セグメントは、拡張プローブ12を中心として互いに積層されて又は入れ子状をなして同軸的に配置されている。したがって、直径が連続的に増加するように形成された各拡張セグメントは、その内側の拡張セグメントを包む。各拡張セグメントは、その中心軸に沿って摺動することができ、それらの間の摩擦を減少させるために、滑らかになるように作成される又は摺動性ポリマーから製造される。
【0031】
明確にするために、図7は寸法通りではない。図7は、前記構成要素の相対的な移動を示すためのものであり、前記用具の長手方向軸の沿った実際の配置を必ずしも示しているわけではない。このことを踏まえて説明すると、プランジャー14の遠位端22が、拡張プローブ12の断面環状の部分と当接しているのを見ることができる。キャッチ部34は、拡張セグメント16aの中心内径又はルーメン内に位置している。したがって、前記拡張セグメントが、前記拡張プローブ及び前記プランジャーの一部の外側に、同軸的に配置されていることが理解できるであろう。この位置は、どの拡張セグメント16も用具10の遠位端に向かって移動させられていない、初期の状態と考えられる。前記器具を実際にこの状態にすると、両方のハンドル18は物理的に接触する(図1に実際に示すような、両方のハンドル18が互いに離れている状態にはならない)。このとき、拡張セグメント16a、16b及び16cは、図示したように、拡張プローブ12のハンドル18の近位に位置する。
【0032】
ハンドル18が互いに離れるようにプランジャー14を引いて後退させると、拡張セグメント16a内に同軸的に配置されていたプランジャー14は、拡張セグメント外に移動させられる。窪んだテーパ48の構造及びキャッチ部34の形状に起因して、窪んだテーパ48での拡張セグメント16aの側壁は、ワイパーシールと同様な方法で外側に曲がることができる。したがって、キャッチ部34の比較的容易な通過及び離脱を可能にする。一方、図8を参照して、プランジャー14のハンドル18を拡張プローブ12のハンドル18に向かって押してプランジャー14を移動させると、キャッチ部34の遠位側の縁部に位置するフランジ50が、拡張セグメント16aの近位側の端部52と接触する。窪んだテーパ部48は、剛性があり、圧縮力を受けたときに座屈するのではなく座屈に耐えるようにデザインされているので、拡張セグメント16aは、矢印54の方向へ又は前記器具10の遠位端に向かって移動させられる。
【0033】
このプロセスは繰り返して行うことが可能であり、このプロセスを繰り返すことにより、拡張セグメント16a、16b及び16cを順々に移動させることができる。図9は、前記複数の拡張セグメントの各々を、拡張プローブ12に沿って遠位方向に移動させた状態を示す。図9に見ることができるように、各拡張セグメントは窪んだテーパ部48を有しており、窪んだテーパ部48は、各拡張セグメント16a、16b及び16cの前記各端部をキャッチ部34のフランジ50に係合させることができるように形成されている。上記の構成は、プランジャー14が、拡張セグメント16を順々に、拡張プローブ12の前記長さ部分に沿って長手方向に操作することができることを意味する。各拡張セグメントが順々に連続的に移動させられるという点において上記説明に従って機能する限りは、他の可能な構成も想定される。
【0034】
以上、前記構成要素及びそれらの操作について説明した。多くの場合、実施される医療処置において、漸増的な拡張を提供するために、連続的に増加する直径を有する2つ以上の拡張セグメントを使用することは、当業者であれば理解できるであろう。しかし、ある処置では、前記小孔を半径方向に所望の最終直径まで拡張するためには、単一の拡張セグメントの直径で十分である。典型的には、最も大きい前記拡張セグメントの外径は、前記拡張プローブ/プランジャーの組合せ体の直径よりも少なくとも2倍大きく、通常は少なくとも3倍大きく、多くの場合は5倍以上大きい。
【0035】
多くの実施形態では、前記複数の拡張セグメントは、個別に順々に移動させられるように作成されている。したがって、前記各拡張セグメント用の係合の目印を設けることが望ましい。例えば、各拡張セグメントを順々に係合させるために前記プランジャーを操作する距離を示す目印が、前記プランジャーに設けられる。代わりの実施形態では、前記キャッチ部が次に移動させる前記拡張セグメントの内部から離脱したことを知らせる可聴{かちょう しき}クリック又は他の音を利用する。他の方法としては、次の拡張セグメントが配置可能であることを知らせる移動止め(detent)又は他の機構の設置を挙げることができる。
【0036】
他の実施形態では、外側の鞘が設けられる。前記外側の鞘は、単純に、最も外側に同軸的に配置される拡張セグメントであり得る。しかし、外側の鞘は、前記器具の他の部分から取り外し可能にすることができる。この構造の利点は、前記器具10を患者身体の標的位置に配置させることができ、前記鞘を前記ハンドルから(例えばルーアフィッティング(luer fitting)やねじ切りされたコネクタなどの適切な連結具から)分離することにより、前記鞘を前記穿通孔内に移動させ、前記鞘を前記小孔内に前進させることである。前記鞘が前記穿通部位に留置されると、前記器具は、前記鞘の妨げになることなく、取り出される。この構造は、前記鞘によって、前記小孔の完全に拡張した状態を維持することができるので、その後に医療器具を挿入することが可能となる。前記鞘は、(例えば二等分に)分割するための1つ以上の弱くした線に沿って縦方向に分割可能に構成することができ、その後、前記小孔を通って患者内に留置された医療器具の妨げになることなく取り出される。
【0037】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「含む(comprising)」という用語は、包含的又は無制限を意味するものであり、追加的な未記載の構成要素、組成要素、又は方法ステップを排除するものではない。
【0038】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。細部の実施にあたっては、本発明の精神と範囲から逸脱しない範囲内で、上記の実施形態に種々な変更及び修正を加えることが可能である。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】完全なアセンブリとして示された本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したアセンブリの或る構成要素を示す斜視図である。
【図3】図1に示したアセンブリの別の構成要素を示す斜視図である。
【図4】図2及び図3に示した構成要素を組立ててサブアセンブリを構成した状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示したサブアセンブリのA−A線断面図である。
【図6】図1に示したアセンブリの第3の構成要素を示す切断図である。
【図7】図1に示したアセンブリの様々な係合段階を示す断面図である。
【図8】図1に示したアセンブリの様々な係合段階を示す断面図である。
【図9】図1に示したアセンブリの様々な係合段階を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮拡張器具であって、
近位端に設けられたハンドル及びテーパ状の遠位端を有し、前記両端間に所定の長さを規定し、患者身体内の標的位置に通じる経皮穿通孔に挿入され前記穿通孔を拡張する拡張プローブと、
近位端に設けられたハンドル、遠位端及び前記遠位端の近位に設けられたキャッチ部を有し、前記両端間に所定の長さを規定し、前記拡張プローブと摺動自在に係合するプランジャーと、
テーパ状の遠位端を有し、初期位置にあっては、前記プランジャーの一部及び前記拡張プローブを中心として同軸的に配置された少なくとも1つの拡張セグメントとを含み、
前記プランジャーを前記拡張セグメントから引き出した後、前記プランジャーを介して前記拡張セグメントに力を加えると、
前記キャッチ部が、前記少なくとも1つの拡張セグメントを、前記拡張プローブの前記遠位端の近位に位置する最終位置まで前記拡張プローブの前記長さに沿って移動させ、
それにより、前記拡張セグメントの前記テーパ状が遠位端を前記穿通孔に挿入され、前記穿通孔を前記拡張プローブのみのときよりも大きく拡張するようにしたことを特徴とする経皮拡張器具。
【請求項2】
請求項1に記載の器具であって、
互いに入れ子状をなして同軸的に配置された複数の拡張セグメントを含むことを特徴とする器具。
【請求項3】
請求項1に記載の器具であって、
前記拡張プローブ及び前記プランジャーは、両者の組合せ体の長手方向中心軸を通る中心ルーメンを形成するように構成されることを特徴とする器具。
【請求項4】
請求項1に記載の器具であって、
穿通デバイスを含むことを特徴とする器具。
【請求項5】
請求項1に記載の器具であって、
サイズの小さいものから大きいものへ順に、その内側の拡張セグメント或いは前記拡張プローブを中心として同軸的に配置された複数の円筒状の拡張セグメントを含み、
前記各拡張セグメントは、前記穿通孔の拡張を可能にすべく、前記キャッチ部に順々に係合されて前記遠位端に向かって移動させられることを特徴とする器具。
【請求項6】
経皮拡張器具であって、
患者身体内の標的位置に通じる経皮穿通孔に挿入され前記穿通孔を拡張するように構成されたテーパ状の遠位端を有する移動可能な拡張セグメントと、
前記経皮穿通孔への初期の挿入及び前記経皮穿通孔の初期の拡張のためのテーパ状の遠位端を有し、前記移動可能な拡張セグメントの内側に同軸的に配置され、かつ、前記移動可能な拡張セグメントと解放可能に係合して前記拡張セグメントを初期の位置から前記経皮穿通孔内の使用位置まで移動させる機構機構を有する拡張プローブと
を含むことを特徴とする器具。
【請求項7】
請求項6に記載の器具であって、
サイズの小さいものから大きいものへ順に、その内側の拡張セグメント或いは前記拡張プローブを中心として同軸的に配置された複数の円筒状の拡張セグメントを含み、
前記各拡張セグメントは、前記穿通孔の拡張を可能にすべく、前記キャッチ部に順々に係合され前記遠位端に向かって移動させられることを特徴とする器具。
【請求項8】
経皮拡張器具であって、
直径方向に順に、互いに入れ子状をなして同軸的に配置された複数の拡張セグメントと、
患者身体内の標的位置に通じる前記経皮穿通孔に最初に挿入され前記穿通孔を最初に拡張するための拡張プローブとを含み、
前記拡張プローブが、前記各移動可能な拡張セグメントを小さいものから大きいものへ順に解放可能に係合し、前記各移動可能な拡張セグメントを前記拡張プローブに沿って前記穿通孔内に順々に移動させる機構を有し、
前記各拡張セグメントを前記穿通孔内に挿入することにより前記穿通孔を拡張するようにしたことを特徴とする器具。
【請求項9】
請求項8に記載の器具であって、
最も外側の前記拡張セグメントの周囲に互いに同軸的に配置された外側の鞘を含み、
前記鞘が、前記穿通孔内の所定位置に留置することができるように前記器具の他の部分から取り外すことができ、それを通して医療機器を前記患者身体内まで送達させることができ、かつ、前記患者身体内に留置された前記医療機器の妨げになることなく前記穿通孔から後で取り出すことができるように縦方向に分割することができるように構成されことを特徴とする器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−535080(P2009−535080A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507200(P2009−507200)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051137
【国際公開番号】WO2007/125440
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】