説明

経管腔的外科手術システム

管腔を経由して最小の侵襲的な医療的処置を施すためのシステムであって、当該システムは、フレキシブルな状態のときに、管腔と体内組織に設けた切開部を通って体内空腔の中へ進むことができる細長い支持部材を備えている。この細長い支持部材は体内空腔の中で剛な状態へ変換するこができるようになっている。この細長い支持部材は、一対の処置ツール・カニユ―レを保持するフレームを支持しており、この処置ツール・カニユ―レの各々は体内空腔の中で処置をするために使用することができる処置ツールを受け入れるための空腔を有している。このフレームは、処置ツール・カニユ―レを所定の方向に方向づけるために展開可能になっており、このフレームによって、処置ツールが体内空腔の中の共通する場所に配置され、協調して処置を行なうことができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔を経由してアクセスし、腹膜腔内において外科手術を行う際に使用する装置およびその使用方法の分野に関係する。
【背景技術】
【0002】
腹腔内における外科手術は、通常開腹外科手術または腹腔鏡を使用した手術によって行われる。このような手術では、皮膚、その下にある筋肉、および腹膜細胞を切開することが必要になり、そのため手術後の傷及び/又は腹部ヘルニアの問題が潜在的に存在する。管腔を経由して腹腔にアクセスするシステムおよび技術は、皮膚、その下にある筋肉、および腹膜細胞を切開する必要がないという点において有利である。このようなシステムを使用する場合、食道、胃、あるいは腸に(例えば、口や直腸を経由して)挿入されるアクセス装置を使用することによって腹膜腔内へアクセスすることができるようになる。その場合、器具はアクセス装置を通り、食道、胃、あるいは腸の壁に設けた切開を経由して腹膜腔内へ進むことになる。その他の管腔を経由したアクセス方法として、膣腔を経由したアクセスも同様に利用することが可能である。
【発明の開示】
【0003】
本件出願人が先に出願した米国仮出願No. 11/528,009 (以下‘009出願と呼ぶ)「胃を経由した外科手術器具およびその使用方法」(出願日:2006年9月27日)には、管腔を経由し患者の腹膜腔内へアクセスする際に使用される、経管腔外科手術アクセス用カニューレの種々の実施例が説明されている。経口による手術の場合、アクセス用カニューレ10(図1参照)の先端部は、口腔内を進み食道を通過して胃または腸に到達する。器具はカニューレの中を通り、胃又は腸壁に、腹膜腔内へアクセスするための切開部を形成するために使用される。アクセス用カニューレ10は、胃壁の内面および外面を挟んで配置される膨張可能なアンカー12a,
12bによって切開部に固定される。腹膜腔内に作業空間を作り出すために、アクセス用カニューレを通じて注入ガスが腹膜腔内へ導入される。アクセス用カニューレには、切開部を通じてシーリングされたアクセスを可能とするためのバルブまたはシールを備えるようにすることもでき、これによって注入したガスの圧力を損失することなく腹膜腔内への器具の無菌経路を形成することができるようになる。アクセス用カニューレ10は、編組を埋め込んだ高分子材料(例えば、ポリウレタン)でてきたフレキシブルなチューブで構成することができる。別の実施例では、もっと剛性の高いアクセス用カニューレを使用することもできる。‘009出願(ここで引用することにより、本出願に組み入れられるものである。)には、アンカー部、胃のような体内壁に切開を形成するための要素、および閉鎖用器具などを含め、アクセス用カニューレ・システムに関する種々の追加コンポーネントが説明されている。
【0004】
この明細書では、処置用カニューレと腹膜腔内へのアクセスを実現するために使用されているアクセス用カニューレと一緒に使用されるサポート・システムが説明されている。例えば、アクセス用カニューレ10が一旦口腔および胃の中へ入れられ、アンカー12a,
12bを使用することによって胃壁の切開部に固定されると、後で説明するタイプの処置用カニューレと保持システムがアクセス用カニューレを通り、腹膜腔内へ導入される。
【0005】
ある種の処置においては、腹腔鏡外科手術または開腹外科手術において行われるアプローチの方向と同じ方向から外科医が腹膜腔内にある外科手術のターゲットにアプローチすることができるようにして、外科医が経管腔的外科手術を行うことには利点がある。例えば、特定の手術において、腹腔鏡外科手術または開腹外科手術を行う場合に、処置場所の前方へアプローチするようにしているのであれば、外科医が前方からの視野をもって処置場所にアプローチすることは、たとえ経管腔的外科手術の場合であっても望ましいものである。添付した図面に示したシステムでは、経管腔的アクセスによって、ここで説明したアプローチが可能となるようになっている。従って、外科医は経管腔的外科手術と腹腔鏡外科手術または開腹外科手術の間の切替えを容易にかつ直感的に行うことができる。
【0006】
一般的に、ここで開示する実施例には、少なくとも1つの処置用カニューレまたは手術場所にまで器具を導入するためのカニューレが含まれている。保持システムは、処置用カニューレを体内にしっかりと保持する。
【0007】
図2Aおよび2Bには、経管腔的外科手術システムの1つの実施例が示されており、これには処置器具システム22と保持システム24が含まれている。これらの図は、胃壁に設けた切開部(図示せず)を通じて腹腔の中で展開された処置器具システム22と保持システム24を含む患者の腹膜腔を示したものである。使用に当たって、保持システム24は、外科医が思い通りに処置器具システム22の器具を進めることができるように、処置器具システム22を体内で支えるための作業台の一種を形成する。従って、例えば、外科手術または腹腔鏡外科手術を行うときに、その処置が処置場所の前方からアプローチする場合には、術者は、図2Aに示すように、保持システム24を腹壁Wに隣接させて配置することができる。
【0008】
保持システム24は、前述したような経管腔的アクセスを行うために、胃Sまたはその他の細長い器官(例えば、腸や膣)のような人体組織に設けた切開部から伸びた細長いシャフトまたはスパイン26(脊柱状管)を備えている。好適な実施例では、シャフト26は、図1に示すようなタイプのアクセス用カニューレ10の中に配置されている。シャフト26は、管腔と人体組織を通過でき、腹膜腔内で操作ができる程度の十分なフレキシブルさを有すると共に、一旦所定の位置に配置された状態においては、自立して姿勢を維持できる程度の剛性を有していることが望ましい。ある実施例においては、シャフト26は、シャフト26に剛性を付与するために張力を掛けて配置された張力ケーブルを備えており、複数のスパイン要素28から構成された棒状体を形成している。以下に詳細に説明するように、スパイン要素28は、シャフト26を希望する場所に配置することができる曲線形状にすることができる形状となっている。シャフト26には、処置場所に向かって伸びた内視鏡(図示せず)を支持するための内腔またはそれに類した構造を有している。
【0009】
処置器具システム22には、一または複数の処置用カニューレ30a,30bが備えられており、その各々の先端または先端近傍には開口部152が備えられている。処置用カニューレ30a,
30bには、図示するように、曲げられた先端部分が備えられており、この部分は、プル・ワイヤ、マンドレル、あるいは変形カテーテルの技術分野において公知となっているその他の変形機構と、導入器、およびガイド・ワイヤを利用することによって、追加的にあるいは代替的に所定の方向へ変形できるようになっている。
【0010】
処置器具32(例えば、鉗子、内視鏡、縫合せ装置、ステープラ等)は処置用カニューレ30a, 30bを通って伸縮可能になっており、腹膜腔内の目標とする場所に配置できるようになっている。図2に良く分かるように描かれているように、二つの処置用カニューレ30a,
30bは二つの処置器具32を同時に使用することができるようになるので有用である。処置用カニューレ30a, 30bは、同じアクセス用カニューレ10(図1参照)の中を経由して腹膜腔内へ導入される。そして、アクセス用カニューレ10の中を一または複数のシャフト26が伸び、あるいは、これらのシャフト26が分かれて配置された複数のカニューレ10の中を伸び、処置用カニューレ30a,
30bは、シャフト26の内腔を通るようになっている(図3参照のこと)。
【0011】
カップリング34は、処置器具システム22と保持システム24を対にして結合するものである。カップリング34は、処置用カニューレ30a, 30bをシャフト26に対にして結合するものであればどのようなタイプの装置であってもよい。図2Aおよび2Bの実施例では、カップリング34は、リンケージ36の形態を有しており、シャフト26を出た処置用カニューレが浮遊するようにすると共に、処置用カニューレ30a,
30bの相対的な方向を維持することができるという別の利点も有している。図2Bに良く分かるように描かれていることであるが、リンケージ36は、シャフト26に取り付けられた第一のマウント部38と、処置用カニューレ30a,
30bに取り付けられた第二のマウント部40a, 40bを備えている。リンケージ・バー42a, 42bは、第一のマウント部38と第二のマウント部40a, 40bに回動自在に結合されている。第二のリンケージ・バー44a,
44bは、第二のマウント部40a, 40bとピボット点46に回動自在に結合されている。図2Aと2Bからも分かるように、極端に違う方向からのアプローチ方向を使用して処置器具32を体内へ挿入しているにもかかわらず、施術者にとって慣れた方向からのアプローチ方法を採用して、処置場所までアクセスできるように、保持システム24は処置用カニューレ30a,
30bを配置するようになっている。処置用カニューレ30a, 30bが変形可能な特性を有しているため、これらの処置用カニューレ30a, 30bが、処置器具32を必要な場所に配置できるようにするために操作される。そして、このことは、操縦し、変形させるための特別な技術を備えた処置器具32を必要とすることなく実現されている。リンケージ36は、処置用カニューレ30a,
30bの処置場所に対する相対的な方向を維持するようになっている。
【0012】

図3は、第二の実施例に係る経管腔的外科手術システム100を示したものである。この経管腔的外科手術システム100は、ロッキング・スパイン102と一対の処置ツール・カニユーレ104を備えている。この経管腔的外科手術システム100は、図2A,
2Bの実施例と類似のものであるが、相違点は、処置ツール・カニユーレ104は保持システムのロッキング・スパイン102のシャフト内の内腔105を通っていることである。そしてこのことによって、経管腔的外科手術システム100が占有する空間を低減させた流線型のシステムを構成できるようになっている。内視鏡107もまた、ロッキング・スパイン102の中を通って伸びており、施術者は経管腔的外科手術システム100の先端部で行われている処置状況を観察することができるようになっている。処置器具32は処置ツール・カニユ―レ104を通って処置場所まで伸びている。処置器具32には、腹膜腔内で必要な処置を行うのに必要となる鉗子、開創器、その他の器具が備えられている。
【0013】
ロッキング・スパイン102は、好ましくは、図1において説明し、そして図9および10に示すようにアクセス用カニューレ10の中を通って体内へ挿入される。
【0014】
ロッキング・スパイン102は、腹膜腔内において操作できる程度の十分にフレキシブルなものであることが望ましく、また、更に一旦所定の場所に配置した後においては自立できる程度の剛性を有していることが望ましい。1つの実施例においては、ロッキング・スパイン102は張力ケーブルを備えた複数のスパイン要素から形成されたシャフトであり、この張力ケーブルにはシャフトに剛性を付与するために張力が掛けられている。スパイン要素は、ロッキング・スパイン102の先端部を所定の場所に配置するために必要な曲線を得ることができ、かつ処置場所に対向した方向に先端部を向けることができる形状を有している。ロッキング・スパイン102の詳細を図4に示す。図4を参照すると、ロッキング・スパイン102は、フレキシブルなシャフトを形成するために、一対のケーブル(図示せず)にネジ結合された複数のスパイン・セグメント106a,
106bで構成されている。各ケーブルは、ケーブルに張力を付与ために、図4に示すロック位置に動かすことができるロッキング・ハンドル108に連結されており、これによってロッキング・スパイン102に剛性を付与することができるようになっている。ロッキング・スパイン102をフレキシブルな状態になるように解放するために、ロッキング・ハンドル108は矢印Aで示す方向へ動くようになっている。複数のスパイン・セグメント106aは、中心軸に対して垂直な端面を有するシリンダ状セグメントである。これらの複数のスパイン・セグメント106aをケーブルで連結し、ロッキング・ハンドル108をロック状態にすることによって、比較的直線状のスパイン部分110が形成される。これとは別のスパイン・セグメント106bは角度のついた端面を有しており、この角度のついた端面を有するスパイン・セグメント106bの組合せを適切に選択し、図4に示すロック状態にすることによって、所定の曲げられた状態の端部部分112を形成するように組み立ることができるようになっている。
【0015】
図5Aは、一緒に組み立られた一組の角度のついた端面を有するスパイン・セグメント106bの斜視図を示したものである。各スパイン・セグメント106bは、中央の貫通穴114と、この中央の貫通穴114のまわりを取り囲むようにして配置された複数の周辺貫通穴116を備えている。スパインの直線状部分を形成するスパイン・セグメント106aの中にも類似のパターンの穴が設けられている。種々の異なった角度のついた端面を有するスパイン・セグメント106bによって、スパインの曲線状になった端部部分が形成される。所定の端面角度組み合わせたスパイン・セグメント106bのセットが、体内で行われる処置にとって最適な位置に、必要なツールを保持するスパインのオーバーオールな形状を作り出すことができるように、選択される。図4に示す実施例においては、スパイン・セグメント106bは、図示するように立体的な曲線を作り出すことができるように組み合わされている。
【0016】
スパイン・セグメント106a, 106bは、各スパイン・セグメントの周辺貫通穴116の一つを通るケーブルによって、連結されるようになっている。特定のスパイン・セグメント106bのケーブル118が通される周辺貫通穴116は、ロッキング・スパイン102がロッキング・スパインの特定の位置において正しい曲線を持つようにするために、そのセグメントの角度のついた端面が配置されるべき方向に基づいて選択される。従って、製造指示書には角度のついたスパイン・セグメント106bの順番がリスト・アップされており、各スパイン・セグメントには適用すべき端面の角度が決められている。そして、特定のセグメントにおける各ケーブルを受け入れるための周辺貫通穴116も指定されている。かかるリストにおける記入事項の例として、「セグメント#10,
角度15°、ケーブル#1は穴Aを通過、ケーブル#2は穴Dを通過」のように記載されている。
【0017】
スパイン・セグメント106a, 106bの中央の貫通穴114は、ロッキング・スパイン102の内腔105(図4参照)を形成するために整合するようになっている。
【0018】
図5Bは、凹状端面103aと103bを備えた別のスパイン・セグメント106cを示したものであり、隣接して配置されたスパイン・セグメントと入れ子状に一体化されるようになっている。スロット113は、凸状端面に設けられた嵌合リブ(図示せず)に適合するように、凹状端面103aに設けられており、セグメントの互いの相対的な回転の動きを最小化するために、組立時に使用されるセグメントの「キー」の機能を有する。
【0019】
図5Bに示す実施例では、中央の貫通穴114cには複数の丸い突起状部分115a, 115b, 115cが設けられており、この丸い突起状部分の各々は、中央の貫通穴114cを通る一又は複数の器具が当該丸い突起状部分に着座できるようなサイズ、配置となっている。この丸い突起状部分は、スパイン・セグメント106cの組立によって形成されるスパインの細長い内腔の内部の適切な位置に器具を保持し易くするものである。この実施例においては、ケーブル(図示せず)がネジ止めされ、中を通過する周辺貫通穴116cは、図示するようにペアとなって配置されている。これ以外の配置パターンも同じように適用することが可能である。
【0020】
図6は、図3に示す経管腔的外科手術システム100の先端部の斜視図を示したものであり、処置ツール・カニユ―レ104の先端部を示したものである。第一の実施例で説明したのと同じように、ここで説明する経管腔的外科手術システム100は、必要となる処置に適するように、処置ツール・カニユ―レ104を保持し方向づけるために、処置ツール・カニユ―レ104は、ロッキング・スパイン102と一緒になって機能するようになっている。リンケージ120は、ピボット点122において処置ツール・カニユ―レ104と回動自在に結合すると共に、処置ツール・カニユ―レ104をロッキング・スパイン102に組みつけている。リンケージ120は更に、処置ツール・カニユ―レ104の先端部分を支持し、その相対的な方向を維持するための保持構造としても機能するようになっている。第一の実施例において説明し、図3に示したのと同じように、リンケージ120はロッキング・スパイン102の先端部分に設けた回動自在のマウント部124に連結されている。他方の回動自在のマウント部125はロッキング・スパイン102の中を通って体外の位置まで伸びた引張ワイヤ127に連結されている。図8Aと図8Bに示された別の実施例では、回動自在のマウント部125は、ロッキング・スパイン102から縦方向に伸びた第三の縦の処置ツール・カニユ―レ104aの先端部分、あるいは同様に配置されたツール・シャフトに設けられている。別の実施例では、図9および図10に示すように、回動自在のマウント部124、125のいずれか、またはその両方は、処置ツール・カニユ―レ104a及び/又はロッキング・スパイン102に固定する代わりに、固定しないで自由空間に浮いた状態にしても良い。
【0021】
リンケージ120を、アクセス用カニューレ10の中を通ることができるようにするために、処置ツール・カニユ―レ104がロッキング・スパイン102の軸の延長上近くに来るように一直線状につぶれた状態にすることもできる。図6における破線は、一直線状につぶれた状態にあるリンケージ120と回動自在のマウント部122の配置形状を示すものである。リンケージ120が一直線状につぶれた状態にあるときには、二つの回動自在のマウント部122は隣り合って配置されるようになり、その結果、二つの処置ツール・カニユ―レ104は互いに隣り合うようにして方向付けられる。リンケージ120が展開した状態においては、二つの回動自在のマウント部122は約3−7インチ離れた位置に配置され、更に好ましくは、約4−6インチ離れた位置に配置されるようになる。
【0022】
リンケージ120を開かせると、処置ツール・カニユ―レ104は図3, 6, 及び8A-10に示すように配置され、処置ツール・カニユ―レ104の中に配置された処置器具32は処置場所(手術場所)に対向して配置されるようになる。図8A,
図8Bに示す実施例では、リンケージ120をアクセス用カニューレ10から取り出し、そして/または、リンケージ120を展開した状態にするために、縦方向の処置ツール・カニユ―レ104の先端部を先端の方向に向かって前へ進めることによってリンケージ120を展開することができるように成っている。一方、図6に示すリンケージ120では、引張ワイヤ127を引くことによって、リンケージ120を開いた状態に展開させることができるようになっている。これらとは別の実施例では、ピボット点122,
124, 125(回動自在のマウント部122, 124, 125)には、リンケージ120の展開を容易にするためにスプリングにより荷重をかけることができるようになっている。腹膜腔内でリンケージ120を展開させるために、ここで説明した展開機構の組合せ、あるいはここでは特に説明しなかった展開機構をも使用することができる。
【0023】
図11A−図11Cに示す別の実施例では、リンケージ120aには一対の部材130が備えられている。
【0024】
この部材130の各々は、処置ツール・カニユ―レ104の中の1つと第一のヒンジ132、及び中央に配置された開創器104b(あるいは、図8Aに示す処置ツール・カニユ―レ104aの如き縦方向のカニユ―レ)と第二のヒンジ134とによって取り付けられている。ヒンジ132は、処置ツール・カニユ―レ104上に取り付けたカラー136に取り付けるようにすることができ、ヒンジ134は開創器104b上に取り付けた類似のカラー138(図11B参照)に取り付けるようにすることができる。リンケージ120aが一直線状になってつぶれた状態にあるときには、一対の部材130は、図11Dに示すように先端側の方向へ伸びた状態になる。リンケージ120aを展開するために、中央に配置された開創器104bが付け根側へ引き込まれ、一対の部材130はヒンジ132、134の位置で回転するようになっている。
【0025】
図11Cを参照すると判るように、中央に配置された開創器104bは根元側部分140と先端側部分142から構成されている。根元側部分140は一本または複数本のケーブルに結合された多数のセグメント144から構成されており、先端部分142は短いセグメント146と開創器の器具片147から構成されている。開創器104bの中のケーブルは、ケーブルに張力を掛けたときに開創器104bが剛になり、そして体外でコントロールして、ケーブルにかけられた張力のバランスをかえることによって先端部分142が変形するようになっている。例えば、開創器104bは、処置ツール・カニユ―レ104の内の一つによって操作される器具で体内の組織を処置できるように、組織を開創器104bによって持ち上げるために、図11Cに示すように体内の組織に接近または離反するように変形することができるようになっている。
【0026】
別の引張ケーブル(図示せず)によって開創器の器具片147のあご状の部分を開閉する操作ができるようになっている。
【0027】
以上説明してきた実施例においては、処置ツール・カニユ―レ104の各々は、先端領域において予め決められた形状の曲線を有するようにすることが望ましい。このような曲線は、リンケージ120が展開されると、処置ツール・カニユ―レ104の中央の内腔126を通る処置器具32(図10A,
10B参照)が共通の処置場所にアクセスできるように、処置ツール・カニユ―レ104の方向を決めるものである。
【0028】
予め設定される形状は、多くの手法の内の一つの方法に基づいて設定される。例えば、予め設定された形状を有する領域は、セグメント化されたロッキング・スパイン102と同様に、セグメント化された構成となっている。そして、各セグメントの中を貫通するケーブルに張力が付与されると、図3、9、および10に示すように、個々のセグメントが処置ツール・カニユ―レ104が特定の形状を有するように形状設定されているので、当該カニユ―レが所定の方向を向くようになる。このような設計にすることにより、当該カニユ―レの全長をセグメント化することができ、あるいは先端部分をフレキシブルにするために、高分子のチューブで構成するようにすることもできる。あるいは、使用している途中に座屈しない程度の充分な剛性を持たせた、予め所定の曲線で形成して処置ツール・カニユ―レ104をつくることもできる。ステンレス鋼やその他の材料で作られた強化編組を、処置ツール・カニユ―レ104の剛な部分に相当するチューブの壁面を構成するために使用することもできる。
【0029】
図2A及び図2Bの実施例のように、処置ツール・カニユ―レ104の各々の先端部分には、処置器具の先端部分(処置器具そのもの)を配置し、操作するために、多方向に変形できるようになった領域を更に備えている。このようにすることによって、高度に緻密化した操舵可能な外科手術用器具の必要性を排除することができる。あるいは、フレキシブルなシャフトを備えた処置器具32(図10参照)を処置ツール・カニユ―レ104の中に配置し、処置器具32の操舵を処置ツール・カニユ―レ104を変形させることによって実現することもできる。処置器具32はフレキシブルなので、これをうまく使用できるようにするためには、処置器具32のシャフトに剛性を付与することが必要になる。処置中の処置ツール用シャフトの剛性を効果的に高めるために、処置器具32のシャフト部分を覆うようにして、スライドできる補剛性用のカニューレ33(図10参照)を処置ツール・カニユ―レ104の中から前方へ押し出すようにしても良い。このようにすることによって、座屈させることなく処置器具32を体内の組織に接触するように押し出すことができるようになる。補剛性用のマンドレル、補強カラー、あるいは編組(ブレイド)のようなその他の内部構造物を上述した目的のために使用することができる。
【0030】
好適な実施例においては、処置ツール・カニユ―レ104に変形を与える方法として、引張ワイヤ・システムを使用する方法がある。図7に示すように、引張ワイヤ128は、引張ワイヤ用の空腔を通って伸びており、好ましくはそれらは円周上90°の間隔で配置されている。引張ワイヤの先端部分は、所定の引張ワイヤを組み合わせて引くことによって、処置ツール・カニユ―レ104の先端部分を望む方向に変形させるために、処置ツール・カニユ―レ104の先端部分に固定されている。図11は、処置ツール・カニユ―レ104の動きのパターンの例として定義された円錐状の立体部分を破線V1で示したものである。また、処置ツール・カニユ―レ104の中にある処置器具32の動きのパターンとして定義された円錐状の立体部分を破線V2で示してある。引張ワイヤの操作は、体外に配置された操作端によって行なわれる。このような変形システムは、処置ツール・カニユ―レ104の中に備えられた処置器具32のハンドル152を操作することによって、施術者が処置ツール・カニユ―レ104の特定の一つを引張ワイヤを直感的に操作することによって所定の変形を実現できるようにしている。例えば、施術者が処置器具32の先端を下方へ動かしたいと思ったとすると、施術者は処置器具32のハンドル152を直感的に持ち上げることによって対応する処置ツール・カニユ―レ104を下方へ向けて変形させることができるようになっている。その結果、施術者は処置器具32を希望通りの場所に移動させることができる。
【0031】
図3には、処置ツール・カニユ―レ104の根元側から伸び、対応する変形システムに供給された引張ワイヤ128の根元部分が示されている。図示された変形システムは、制御用のジンバル148を示したものである。ジンバル148は、図12Aに示すように、作業台150に取り付けられている。使用時、作業台150は、患者の足元の上にセットしたり、あるいは手術台の一つまたは二つの側方レールに取付けられた支持台に固定したり、あるいはカートの上に置いて操作したりすることができる。どの場合であっても、作業台150は、外科医にとって都合のよい所であって、外科医が内視鏡の表示装置(図示せず)を見て処置状況を観察しながら、ハンドル152に直感的にアクセスできる場所に配置される。図12Bに示すように、このようなシステムを使用する場合、施術者に「コックピット」を提供することによって操作をより容易なものとすることができる。そして、この「コックピット」には、内視鏡107用の手元制御部と一緒に制御用のジンバル148を支持する作業台150に取付けた内視鏡の表示装置154が配置されている。
【0032】
外科医が処置器具32のハンドル153に自分の手をおいて楽な状態を作り出すことができるように、作業台150は設定されている。作業台150上では、処置器具32のハンドル153は約10−15インチ離れて配置することが望ましい。図13には、好適な制御用のジンバル148が示されている。制御用のジンバル148には、作業台150(図13には図示せず)に取付けられ、チューブ状のチャンネル170を備えたベース168が含まれている。C字状のマウント部172がベース168に結合されており、このC字状のマウント部172にはチューブ状のチャンネル170の空腔に連通した貫通穴174が設けられている。小さな改良点として、この貫通穴174を4つの独立した貫通穴174a-dによって構成することができ、この貫通穴174a-dは図19の実施例に示す引張ワイヤを通す穴として利用することができる。リング176は、ピボット・ベアリング178を介してC字状のマウント部172に回動自在に取付けられている。半球状ボール180はピボット点182においてリング176の内側に回動自在に取付けられている。4つの引張ワイヤ用ポート184がボール180の内面から外面に抜けるようにして設けられている。
【0033】
器具用ポート186には、先端側の開口部192と根元側の開口部194を有する側方チャンネル190が含まれている。処置ツール・カニユ―レ104から来た4本の引張ワイヤ128はチューブ状のチャンネル170を通って伸びており、その各々はボール180の狭い内部を通り、貫通穴174を通過するようになっている。そしてこの4本の引張ワイヤ128はボール180の4つの引張ワイヤ用ポート184のうちの対応する一つから出てくるようになっている。この引張ワイヤは、更に器具用ポート186の側方チャンネル190の中まで伸びており、その中においてアンカー196によって固定されている。
【0034】
器具用ポート186には、ボール180を起点にして伸びる空腔188が設けられている。処置器具32(図12A参照図13-図14には図示せず)のシャフト152は空腔188とボール180を通り、C字状のマウント部172に設けた貫通穴174を通り、更にチューブ状のチャンネル170と作業台150(図12A参照)を通って、対応する処置ツール・カニユ―レ104の中に入っている。処置器具32の操作端は、処置ツール・カニユ―レ104の先端から伸びて出ている。
【0035】
外科医にとって、処置器具32の先端の方向を変える必要が生じた場合、外科医は、その処置器具32のハンドル152を直感的に動かすことにより、処置ツール・カニユ―レ104の引張ワイヤを配置したジンバル148の動きに従って処置器具32の先端部分は変形するようになっている。ハンドル152の垂直方向の動きによって、ボール180はピボット点182の廻りに回転し、その結果、上側または下側の引張ワイヤ128に張力が作用し、処置ツール・カニユ―レ104(従って、処置器具32の先端部)が上方または下方に変形することになる。ハンドル152の横方向の動きによって、ボール180とリング176をピボット点178の廻りに回転し、その結果、側方の引張ワイヤ128の一つに張力が作用し、処置ツール・カニユ―レ104の横方向の曲げを変化させることになる。制御用のジンバル148は、垂直方向と横方向の変形を組み合わせて生じるようにすることもでき、図11Eに示したように360°の変形を可能としている。従って、施術者は処置ツール・カニユ―レ104の中で長手方向に処置器具32を前方へ進めたりあるいは引き戻したりすることができ、もし必要がある場合には、処置ツール・カニユ―レ104に対して処置器具32を軸廻りに回転させることもできる。
【0036】
制御用のジンバル148には、更に変形させることが必要になるまでの間、器具の方向を仮に固定することができるロック機構が備えられている。この機構は、施術者に、特定の場所で順番に使用される複数の器具の曲線(空間的位置)を固定させておくことを可能ならしめるものである。例えば、一旦、処置ツール・カニユ―レ104の方向がセットされると、そのカニューレを通じて第一の器具を使って、ある処置が行なわれる。別の器具を使って行なうその後の処置が行なわれるときには、処置ツール・カニユ―レ104を動かすことなく器具が交換される。このことによって、追加的な操縦を必要とすることなく、正しい位置へ第2の器具を進めることができる。
【0037】
1つの例示的なロック機構には、一対のロック・ネジ198が含まれる。図15Aの矢印で示すように、このロック・ネジ198をしっかり締めることによって、C字状のマウント部172をリング176をロックし、リング176をボール180にロックするようになっている。別の方式として、図15Bに示すように、単純な空気圧式のシャフト・ロック200をジンバルのピボット軸の各々に使用することもできる。空気圧式のシャフト・ロック200の代わりに、ソレノイドやそれに類似するデバイスを使用することも可能である。
【0038】
ジンバルの別の形式のものが、図16Aおよび図16Bに示されている。図示するように、コーン状の形状をした器具ポート202が処置ツール・カニユ―レの各々の根元に取り付けられている。そして、器具ポート202には、器具ポート202の中に入り込んでいる器具シャフト208の回りをシールするスリット206を有するダイヤフラム・シール204が備えられている。図16Aおよび図16Bには、まわりの状況を分かりやすくするために、器具シャフト208のハンドルだけが示されている。
【0039】
ジンバル210には、器具ポート202に取り付けられたカラー212とカラー212から放射状に飛び出た四つの翼部214が含まれている。引張ワイヤ128の各々は翼部214の1つと結合されている。ストラット216は翼部214を起点にして伸びており、スリーブ218に連結されている。そして、このスリーブ218を通って、器具シャフト208が伸びている。カラー212は器具ポート202に対して相対的に動くことができ、特にカラー212は自身の中心軸まわりに回転することができるようになっている。カラー212は、一または複数の張力のかかった引張ワイヤ128によって動かされる。そしてカラー212の動きは、処置ツール・カニユ―レ104の変形となって現れる。器具シャフト208はストラット216によってカラー212に結合されているので、施術者は、処置ツール・カニユ―レ104の先端部を思い通りの方向へ持っていくよう操作できるようにするために、器具シャフト208のハンドルを、ジョイスティックと同じような直感的な感覚で操作することができるようになっている。
【0040】
図17には別のタイプの経管腔的外科手術システム300が示されている。経管腔的外科手術システム300のほとんどの部分は、これまで説明してきたシステムと同じである。例えば、経管腔的外科手術システム300には図17に示すようなリンケージ120aが使用されており、また図13において説明したものと類似したシンバル・システムも使用されている。この経管腔的外科手術システム300は、施術者がジンバルの感度を調整することができるという点において先に説明した実施例とは異なる。言い換えれば、処置ツール・カニユ―レ104の変形の量が、施術者がジンバル・システムの範囲内において処置器具のハンドル152を動かした量に直接対応するように、あるいは、処置器具のハンドル152の動きの量よりも大きく、または少なくなるように、そのジンバルは細かく調整できるようになっている。
【0041】
図19はジンバル302を示したものであるが、このジンバル302の多くの技術的な特徴点は、図12および図13に示すジンバル148の技術的な特徴点と類似している。このような類似の特徴点の一つとして、フレーム304に結合させたベース168がある。4つの貫通穴174a-d(図19にはこれら4つの内の3つが見えている)がC字状のマウント部172に設けられており、この貫通穴の各々にはベース168を通って伸びる引張ワイヤが通されている。引張ワイヤは、フレーム304を通って配置されているケーブル・ハウジング175から貫通穴174a-dの中に供給されるようになっている。引張ワイヤの更に先端部分は、フレーム304から先端側に伸びた処置ツール・カニユ―レ104の中に入っている。
【0042】
リング176は、ピボット点178の位置においてC字状のマウント部172に回動自在に取り付けられている。そして、半球状のボール180はピボット点182の位置においてリング176の内側に取り付けられている。
【0043】
図19のジンバル302は、ジンバル302には微小調整装置306が備えられているという点において、図12および図13のジンバル148とは異なっている。先に説明したジンバル装置では、1つの処置ツール・カニユ―レ104の4つの引張ワイヤの終端がジンバル内に、各々90°離れた位置に結合されている。処置器具のハンドル152(図17参照)の動きによって、各引張ワイヤの張力が変えられるようになっており、それによって処置ツール・カニユ―レの先端部分を変形させ、処置ツール・カニユ―レの中にある処置ツールに所定の動きを生じさせるようになっている。図19に示す実施例においては、各引張ワイヤの終端点をジンバルの回転中心に近づけたり、離したりするように動かすことによって、各引張ワイヤのレバー・アームの効果が変えられるようになっている。引張ワイヤの終端点をジンバルの回転中心から離すように動かすことによって、処置器具のハンドル152の動きに対する処置ツール・カニユ―レ104の相対的な動きが増幅されるようになっている。そして、これとは逆に、引張ワイヤの終端点をジンバルの回転中心に近づけるように動かすことによって、処置器具のハンドル152の動きに対する処置ツール・カニユ―レ104の相対的な動きが減少するようになっている。半球状のボール180には、図21に示すような先端側面314と、図20に示すような平坦な基端側面316が設けられている。二つの面314と316の間を貫通して4つのスリット318a-dが伸びている。図20に示すように、4つの終端プレート308a-dが平坦な基端側面316に接触して摺動自在に配置されており、その終端プレート308a-dの各々には、引張ワイヤの終端310a-dが結合され、隣接して伸びた従動ピン312a-dが設けられている。終端プレート308a-dの各々の先端側に設けられたペグ317は、スリット318a-dの1つの中に収納されるようになっている。
【0044】
処置ツール・カニユ―レを変形させるために使用される各引張ワイヤは、スリット318a-dの1つを通って伸びており、摺動自在の4つの終端プレート308a-dの中の1つの終端310a-dへ繋がっている。図21は、ボール180の先端側面314を示したものであり、引張ワイヤの終端310a-dはスリット318a-dの中に配置された状態を示している。ここでは、引張ワイヤ自身は図示されていない。
【0045】
チューブ状の処置器具ポート320は、ボール180の基端側面316の中心位置に配置されている。リテーナー・キャップ322は、処置器具ポート320がリテーナー・キャップの中央の開口部324を通るようにして基端側面316をカバーしている。摺動自在の終端プレート308a-dは基端側面316とリテーナー・キャップ322の間に挟まれた状態になっている。図22は、ボール180から取外されたリテーナー・キャップ322を示したものである。リテーナー・キャップ322の先端側の面になる内側の面には、螺旋状の形状をしたスロット328を構成する螺旋状のリブ326が設けられている。終端プレート308a-dに設けられた従動ピン312a-dの各々は、この螺旋状の形状をしたスロット328の中に配置されるようになっている。リテーナー・リング330は処置器具ポート320に係合することによって、リテーナー・キャップ322、終端プレート308a-d、およびボールを一緒に保持し、従動ピン312a-dが螺旋状の形状をしたスロット328の中にとどまるようになっている。リテーナー・キャップ322は処置器具ポート320に対して、時計周りおよび反時計周りの方向に回転できるようになっている。リテーナー・キャップ322を回転させることによって、ジンバル・システムの感度が増加したり、低減したりするようになっている。特に、リテーナー・キャップ322を第一の方向へ回転させると、螺旋状のリブ326が従動ピン312a-dをスロット328の中を通ってリテーナー・キャップ322の外周側へ押し出すようになるので、終端プレート308a-dはスリット318a-dの中を半径方向外側へ摺動する。その結果、ジンバル・システムの感度が増加することになる。リテーナー・キャップ322を第二の方向へ回転させると、従動ピン312a-dがスロット328の中を通ってリテーナー・キャップ322の中心側へ動くようになるので、終端プレート308a-dはスリット318a-dの中を半径方向中心側へ摺動する。その結果、引張ワイヤの張力は緩められ、ジンバル・システムの感度が低減することになる。リテーナー・キャップ322のマーキング328と指針部330は、リテーナー・キャップ322が指針部330に対して指定された回転位置に置かれたときに、得られる感度のレベルを施術者に分かるようにするためのものである。
【0046】
ジンバルの感度を調整するための別の形態として、施術者は引張ワイヤの異なったワイヤに対して異なった感度レベルを設定するというオプションを選ぶこともできる。
【0047】
ここで説明したシステムは、上述したような方法によって当該システムを使用する施術者に使用方法を指示する使用説明書を含むキットとしてパッケージ化することが望ましい。
【0048】
図23は、胆嚢摘出手術のために使用される、図9および図10に示すシステムを図示したものである。このような手術においては、アクセス用カニューレ10は、経口的に配置されており、胃壁の左前方に設けた切開口を経由して腹膜腔の中へ入れられている。アクセス用カニューレ10は、前述したように胃壁の切開口に固定されている。ロッキング・スパイン102は腹膜腔の内部空間に導入され、図示するように処置場所に向けた方向に向くようにして剛性を付与(前述したようにケーブルに張力を適用することによって)される。肝臓の開創器35aは、胆嚢から離れるように肝臓を上方へ持ち上げ、かつ押しのけ、処置器具32の処置空間を設けるために使用される。処置器具32は、処置ツール・カニユ―レから出てきており、手術をするために使用される。処置ツール・カニユ―レ104は、処置器具32を操作する際に必要に応じて変形させられる。従来の腹腔鏡手術で、胆嚢摘出手術を行う場合、三つの外科手術ポート、又は切開口X(処置器具用ポート)、Y(内視鏡用ポート)、Z(処置器具用ポート)が必要であったが、ここで開示したシステムを使用すれば、外科医は内視鏡手術を行う場合と同じような視野で手術を行うことができる一方、より低侵襲的な手術を行うことができるようになる。
【0049】
ここで開示した実施例では、内視鏡手術や開腹手術による経験を有する外科医が直感的に処置器具を操作できるように、腹腔壁または腹腔壁近くに処置器具を配置するために、経管腔的外科手術においてロッキング・スパイン装置を使用している。ロッキング・スパインを使用することなくこの目的を達成することができるその他のシステムを使用することができ、これも本願の発明の範囲に含まれるものである。腹腔壁の内側に取り付けることができる経管腔的外科手術システム400を表した一つの例が図24に示されている。このシステムでは、ネジ402、T字状バー404、膨張可能なバルーン・アンカー、拡張可能な編組、あるいは胃壁Wの表面層に埋め込まれたこれらに類似したデバイスが使用されている。この実施例では、経管腔的外科手術システム400には、上述したような経管腔によって腹膜腔内へ導入された処置カニューレ406を支持する装置が含まれている。この例では、処置カニューレ406は、処置カニューレ406の先端部分410の方向を定めるためのガイド・リング408を通るか、これに係合している。その結果、処置ツール412は処置カニューレ406を通って、処置場所に至るようになっている。別の実施例として、経管腔的外科手術システムを支持し、保持し、そして/又は、腹腔の内壁近傍のような望ましい、都合の良い場所に処置器具を配置するために磁力を使用することもできる。このような実施例では、体内に磁石を有するカニューレを使用し、体外に外部磁石を使用する。更に、これとは別に、体外において鉄鋼または鉄のプレートと、磁性カニューレを使用し、この磁性カニューレを鉄鋼または鉄のプレートに引っ付けるようにしてもよい。
【0050】
何種類かの実施例についてこれまで説明してきたが、これらの実施例は例示としての代表的なものであり、これらに限定されるものではないことを理解すべきである。ここで説明したシステムは、与えられた機能を実行するために都合のよい実施例を示したものであり、これら以外にもその形態、および細部において違った器具やシステムも使用することができ、これらは本発明の範囲に含まれるものである。このことは、特にこれから開発されるであろう同じ技術分野に含まれる技術や用語に関しても当てはまるものである。更に別の実施例を生み出すために、ここで開示された実施例をいろいろな方法で組み合わせることも可能である。ここで引用した全ての特許、特許出願、刊行物は、優先件の主張の基礎とするものを含め、本明細書に組み入れられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、経管腔的外科手術に使用されるシステムであって、胃に設けられた切開口に固定されたアクセス・カニューレを示したものである。
【図2】図2Aは、腹腔の内部の状態を示す側面図であり、処置カニューレとその支持システムの第一の実施例を示したものである。図2Bは、腹腔の内部の状態を示す平面図(前方からの図)であり、図2Aの処置カニューレとその支持システムを示したものである。
【図3】図3は、別の処置カニューレとその支持システムの斜視図を示したものである。
【図4】図4は、図3に示したシステムのスパイン部の斜視図を示したものである。
【図5】図5Aは、図4に示したスパインの二つの要素の斜視図を示したものである。 図5Bは、図3に示したシステムの別のスパインの要素の斜視図を示したものである。
【図6】図6は、図3に示したシステムの処置ツール・カニユ―レ先端部とリンケージを示した斜視図である。
【図7】図7は、図6の7-7面に沿って切り取った切断面を示したものである。
【図8】図8Aと図8Bは、追加の処置器具カニューレを使用した、図3に示すシステムの先端部の上方からの斜視図と下方からの斜視図をそれぞれ示したものである。
【図9】図9は、図3のシステムの斜視図であって、アクセス用カニューレから伸び、更に長い処置ツール・カニユ―レから伸びた開創器を示したものである。
【図10】図10は、図3のシステムの斜視図であって、アクセス用カニューレから伸び、更に長い処置ツール・カニユ―レから伸びた開創器を示したものである。
【図11】図11Aは、スパイン、処置ツール・カニユ―レ、及び中央の開創器の組合せた別のリンケージ組立を示す上方からの斜視図である。図11B, 11Cは、図11Aのリンケージ組立の上方からの平面図および側方からの正面図を示したものである。図11Cでは、中央の開創器は下方に変形した状態で示されており、破線は開創器が上方へ変形した状態を示したものである。図11Dは、直線状に配置した図11Aのリンケージ組立の上方からの平面図を示したものである。図11Eは、図11Aと類似の斜視図であり、処置ツール・カニユ―レとそれに関係するツールの動きのパターンを例示したものである。
【図12】図12Aは、図3に示すシステムのユーザー・インターフェースの一実施例の斜視図を示したものである。図12Bは、図3に示すシステムの別のユーザー・インターフェースの一実施例の斜視図を示したものである。
【図13】図13は、ジンバル・システムの斜視図を示したものである。
【図14】図14は、ジンバル・システムの側方切断面を示したものである。
【図15】図15Aと図15Bは、二つのロック機構を例示した図13に示すジンバル・システムの斜視図を示したものである。
【図16】図16Aと図16Bは、別のジンバル・システムの斜視図を示したものである。
【図17】図17は、処置ツール・カニユ―レとその支持システムに係る第三の実施例の斜視図を示したものである。
【図18】図18は、図17に示すシステムの基端部の詳細な斜視図を示したものである。
【図19】図19は、図17に示す実施例のジンバル・システムを示したものである。
【図20】図20は、図19に示すジンバル・システムの分解図を示したものである。
【図21】図21は、図19に示すジンバル・システムのボールの先端側面の平面図を示したものである。
【図22】図22は、図21に示すボールの基端側面の平面図であり、移動させたキャップの斜視図を合わせて示したものである。
【図23】図23は、図2Bと類似の上方からの平面図を示したものであり、肝臓の手術に使用した図9および図10のシステムを示したものである。
【図24】図24は、腹腔を模式的に表したものであり、腹腔の内壁に取り付けられた別の支持システムを示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経管腔的外科手術システムにおいて、
フレキシブルな状態と剛な状態を有する細長い支持部材であって、経管腔によって体内腔の中へ入る長さに比例する支持部材と、
細長い支持部材が剛になることによって保持される拡張可能なフレームであって、展開された状態になるまで拡張することができるフレームと、
拡張可能なフレームに結合された少なくとも二つの処置ツール・カニユ―レであって、処置ツール・カニユ―レの各々は体内腔において処置を行うためのツールを受け入れるための空腔を備え、カニユ―レ内に配置されたツールを共通の処置場所へアクセスさせるために、展開された位置にある当該フレームによって、空腔を所定の位置に配置するようになっている処置ツール・カニユ―レとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記細長い支持部材は、ケーブルによって結合された複数のスパイン要素から構成されるセグメント化されたスパインを備え、当該支持部材は、ケーブルに張力を適用することによってフレキシブルな状態から剛な状態に移行することができることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記細長い支持部材は空腔を備え、前記処置ツール・カニユ―レは当該空腔を通って伸びていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記処置ツール・カニユ―レは、当該処置ツール・カニユ―レの先端部分に結合された複数の引張ワイヤを備え、当該引張ワイヤの少なくとも1つに張力を加えることによって当該先端部分が変形するようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記引張ワイヤはジンバルに結合された基端部を備え、当該ジンバルは当該引張ワイヤへ張力を付与するために多方向に動かすことができるようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記ジンバルは開口部を有するツール用ポートを有し、当該ジンバルはツール用ポートの動きによって可動になっており、当該ツール用ポートは、ツールの先端が処置ツール・カニユ―レの中を前へでていくときに、ツールの先端部を受けるようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記ツール用ポートは、ツール用ポートの中に配置されたツールのハンドルの動きによって可動になっていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記フレームは、少なくとも二つのフレーム部材を備え、当該フレーム部材の各々は処置ツール・カニユ―レに回動自在に結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
経管腔的に挿入可能なアクセス用カニューレと、
当該アクセス用カニューレに結合され、体内組織の壁に設けた切開部に当該アクセス用カニューレを保持するために膨張できるようになっているアンカーと、を更に備え、
当該アクセス用カニューレは、空腔と、細長い指示部材と、フレームおよび、フレームがつぶれた状態にあるときにアクセス用カニューレの空腔の中へ挿入できる処置ツール・カニユ―レを備えていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項4に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、前記システムは、更に
マウント部と、
マウント部に配置された一対のアクチュエータとを備え、
各処置ツール・カニユ―レの引張ワイヤは、当該アクチュエータの一つに結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記アクチュエータは、処置器具用ポートを備え、処置ツール・カニユ―レの一つの中に配置された処置ツールが、対応する当該処置器具用ポートの一つを通って伸び、処置器具用ポートの範囲内における処置ツールのハンドルの動きによって引張ワイヤを動かすことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10に記載の経管腔的外科手術システムにおいて、
前記マウント部は、外科手術テーブルに取付けられていることを特徴とするシステム。
【請求項13】
最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
フレキシブルな状態にある細長い支持部材を経管腔的に挿入し、体内組織に設けた切開部を通して体内空腔へ進めるステップと、
当該細長い支持部材をフレキシブルな状態から剛な状態へ変換するステップと、
細長い支持部材によって、体内空腔においてフレームを展開するステップであって、当該フレームは一対の処置ツール・カニユ―レに結合されているステップと、
処置ツール・カニユ―レの中で処置ツールの位置決めを行なうと共に、当該処置ツールを使って体内空腔において処置を行なうステップ
からなることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、当該方法が更に、処置ツール・カニユ―レを通って体内空腔内に伸びている処置ツールの位置を変えるために、処置ツール・カニユ―レの先端位置を変形させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、前記処置ツール・カニユ―レの先端位置を変形させるステップには、処置ツール・カニユ―レの先端部分に結合された引張ワイヤに張力を付与することが含まれる
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
前記処置ツール基端側部分がツール・ポートを通って伸び、
前記引張ワイヤはツール・ポートに結合されており、
前記処置ツール・カニユ―レを変形させるステップが処置ツールの基端側部分を操作することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
当該方法が、処置ツールの動きに対応して、処置ツール・カニユ―レの変形量を増幅させることができるようになっており、その増幅の程度を調整するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
処置ツール・カニユ―レを変形した位置でロックするステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
処置ツール・カニユ―レを変形させ、処置ツール・カニユ―レから処置ツールを取り出し、当該処置ツール・カニユ―レへ第二の処置ツールを挿入するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項13に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
前記管腔は、口、膣、直腸を含むグループの中から選択されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項13に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
剛な状態において、支持部材は、体内空腔中の目標とする場所へ向けて処置ツール・カニユ―レを方向付けるために、曲線状の姿勢を有することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
前記切開部は胃の中に設けられ、
前記曲線状の姿勢によって、前記支持部材が切開部から前方であってかつ上方に向けて伸びるようになることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
前記切開部は胃の中に設けられ、
前記曲線状の姿勢によって、処置ツール・カニユ―レの中の処置ツールを体内空腔中にある胆嚢にアクセスするための位置に配置することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項13に記載の最小の侵襲的な医療的処置を施すための方法であって、
フレームを展開することによって、処置ツール・カニユ―レの先端側開口部を体内空腔の中の目標とする場所に向けることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2009−534158(P2009−534158A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507760(P2009−507760)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/009936
【国際公開番号】WO2007/127199
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(505448947)シネコー・エルエルシー (15)
【Fターム(参考)】