説明

経編地及びその製造方法並びに経編地の編構造

【課題】強度に関して等方性を発揮することが可能な経編地を提供する。
【解決手段】経編地は、地組織と、挿入糸群14,16とを備える。挿入糸群14は、同種の4本の糸Y4a〜Y4dによって構成されている。挿入糸群16は、同種の4本の糸Y5a〜Y5dによって構成されている。糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dは、緯方向に1ウェール間隔で並んだ状態で、経編編成された地組織に、経方向に沿って挿入される。糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dは、それぞれ、全体として経方向に対して交差する方向に延びる部分14aと、全体として経方向に対して交差する方向に延びる部分14bと、全体として経方向に沿う方向に延びると共に部分14a,14bを接続する部分14cとを有する。糸Y4a〜Y4dのうち一の糸は、糸Y5a〜Y5dのうち対応する一の糸と厚さ方向から見て互いに重なり合っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経編地及びその製造方法並びに経編地の編構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状の緊締部を有する衣類(ガードル)が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。この緊締部は、その長手方向において、緊締力が相対的に強い部分と緊締力が相対的に弱い部分とが切り替わるように、経編機によって構成されている。緊締部のうち緊締力が相対的に強い部分は、着用者がガードルを着用したときに、着用者の大腿部の前方中央部に相当する箇所に位置している。緊締部のうち緊締力が相対的に弱い部分は、着用者がガードルを着用したときに、大腿部の前方中央部以外の部分であって大腿部を囲むように配置されている。そのため、緊締力が相対的に強い部分によって着用者の大腿四頭筋が強く緊締されると共に、緊締力が相対的に強い部分及び緊締力が相対的に弱い部分によって着用者の大腿部全体についても十分に緊締されるので、歩行に際して脚を大きく蹴ることができ、美しい体型を保つことができるようになっている。
【0003】
また、従来、緊締力が相対的に強い部分と緊締力が相対的に弱い部分とを有する衣類(ガードル)が知られている(例えば、下記特許文献2参照)。このガードルは、緊締力が相対的に強い部分及び緊締力が相対的に弱い部分が帯状であり且つカーブした連続パターンである経編地によって構成されている。ガードルにおいては、帯状であり且つカーブしている緊締力が相対的に強い部分及び緊締力が相対的に弱い部分がヒップの膨らみの下から脇腹にかけて設けられている。そのため、緊締力が相対的に強い部分及び緊締力が相対的に弱い部分によってガードルにヒップアップ機能が付与されるので、ヒップ形状を整えることができるようになっている。
【0004】
さらに、従来、ループが経方向に連綴される地編地と共に柄が編成されて構成された経編地が知られている(例えば、下記特許文献3参照)。この経編地は、ループに対して挿入された弾性糸の緯方向における振りが互いに異なる複数種類の地編領域を有しており、この複数種類の地編領域が経方向に繰り返して連続している。
【特許文献1】特開2007−113125号公報
【特許文献2】特許第3023354号公報(特開2000−008023号公報)
【特許文献3】登録実用新案第3136451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、経編地は、一般に、経方向及び緯方向における強度(伸長力の大きさ及び緊締力の大きさ)と比較して、経方向及び緯方向に対して交差する方向(斜め方向)での強度が小さい傾向にあった。つまり、従来の一般的な経編地は、強度に関して異方性を有するものであった。
【0006】
しかしながら、経編地の用途によっては、経編地の強度が方向によらず均等であること、すなわち、強度に関して等方的であることが好ましい場合がある。具体的には、ストレッチ性(伸縮性)が要求される、体に密着して着用する衣類(下着類)などが挙げられる。
【0007】
そこで、本発明は、強度に関して等方性を発揮することが可能な経編地及びその製造方法並びに経編地の編構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る経編地は、経編編成により地組織を構成する地糸と、経方向に沿って地組織に挿入され、地組織と共に編成されることにより、挿入組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1挿入糸による第1挿入糸群及び第1〜第Nの第2挿入糸による第2挿入糸群とを備え、第1〜第Nの第1挿入糸と第1〜第Nの第2挿入糸とは、緯方向に並んで配置され、第n(nは1〜Nの自然数)の第1挿入糸と第nの第2挿入糸とは、経方向において互いに近接しながら地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら地組織に編成される第2部分と、第1部分と第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、第nの第1挿入糸の屈曲部分と第nの第2挿入糸の屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る経編地の製造方法は、地糸を経編編成することで地組織を構成しつつ、第1挿入糸群となる第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1挿入糸及び第2挿入糸群となる第1〜第Nの第2挿入糸を、それぞれ経方向に沿って地組織に挿入して地組織と共に編成することで、挿入組織を構成する工程を備え、第1〜第Nの第1挿入糸と第1〜第Nの第2挿入糸とは、緯方向に並んで配置され、第n(nは1〜Nの自然数)の第1挿入糸と第nの第2挿入糸とは、経方向において互いに近接しながら地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら地組織に編成される第2部分と、第1部分と第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、第nの第1挿入糸の屈曲部分と第nの第2挿入糸の屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る経編地の編構造は、経編編成により地組織を構成する地糸と、経方向に沿って地組織に挿入され、地組織と共に編成されることにより、挿入組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1挿入糸による第1挿入糸群及び第1〜第Nの第2挿入糸による第2挿入糸群とを備え、第1〜第Nの第1挿入糸と第1〜第Nの第2挿入糸とは、緯方向に並んで配置され、第n(nは1〜Nの自然数)の第1挿入糸と第nの第2挿入糸とは、経方向において互いに近接しながら地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら地組織に編成される第2部分と、第1部分と第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、第nの第1挿入糸の屈曲部分と第nの第2挿入糸の屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る経編地及び経編地の製造方法並びに経編地の編構造では、第1〜第Nの第1挿入糸及び第1〜第Nの第2挿入糸が経方向に沿って地組織に挿入されており、第nの第1挿入糸と第nの第2挿入糸とが第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈している。そのため、経方向における経編地の強度が確保されることとなる。また、本発明に係る経編地及び経編地の製造方法並びに経編地の編構造では、第nの第1挿入糸の屈曲部分と第nの第2挿入糸の屈曲部分とが厚さ方向から見て互いに重なり合うように、第1〜第Nの第1挿入糸及び第1〜第Nの第2挿入糸がそれぞれ地組織に編成されている。そのため、第nの第1挿入糸と第nの第2挿入糸とがそれぞれの屈曲部分において地組織を介して接続され、第nの第1挿入糸の第1部分と第nの第2挿入糸の第2部分とによりあたかも斜め方向(経方向及び緯方向に対して交差する方向)に連続して延びるラインが形成されると共に、第nの第1挿入糸の第2部分と第nの第2挿入糸の第1部分とによりあたかも斜め方向に連続して延びるラインが形成されることとなる。従って、斜め方向及び緯方向における強度が確保されることとなる。その結果、強度に関して等方性を発揮することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る経編地は、経編編成により地組織を構成する地糸と、経方向に沿って地組織と共に編成されることにより、ルーピング組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1編糸による第1編糸群及び第1〜第Nの第2編糸による第2編糸群とを備え、第1〜第Nの第1編糸と第1〜第Nの第2編糸とは、緯方向に並んで配置され、第n(nは1〜Nの自然数)の第1編糸と第nの第2編糸とは、経方向において互いに近接しながら地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら地組織に編成される第2部分と、第1部分と第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、第nの第1編糸の屈曲部分と第nの第2編糸の屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る経編地の製造方法は、地糸を経編編成することで地組織を構成しつつ、第1編糸群となる第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1編糸及び第2編糸群となる第1〜第Nの第2編糸を、それぞれ経方向に沿って地組織と共に編成することで、ルーピング組織を構成する工程を備え、第1〜第Nの第1編糸と第1〜第Nの第2編糸とは、緯方向に並んで配置され、第n(nは1〜Nの自然数)の第1編糸と第nの第2編糸とは、経方向において互いに近接しながら地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら地組織に編成される第2部分と、第1部分と第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、第nの第1編糸の屈曲部分と第nの第2編糸の屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る経編地の編構造は、経編編成により地組織を構成する地糸と、経方向に沿って地組織と共に編成されることにより、ルーピング組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1編糸による第1編糸群及び第1〜第Nの第2編糸による第2編糸群とを備え、第1〜第Nの第1編糸と第1〜第Nの第2編糸とは、緯方向に並んで配置され、第n(nは1〜Nの自然数)の第1編糸と第nの第2編糸とは、経方向において互いに近接しながら地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら地組織に編成される第2部分と、第1部分と第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、第nの第1編糸の屈曲部分と第nの第2編糸の屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る経編地及び経編地の製造方法並びに経編地の編構造では、第1〜第Nの第1編糸及び第1〜第Nの第2編糸が経方向に沿って地組織と共に編成されており、第nの第1編糸と第nの第2編糸とが第1部分、第2部分及び屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈している。そのため、経方向における経編地の強度が確保されることとなる。また、本発明に係る経編地及び経編地の製造方法並びに経編地の編構造では、第nの第1編糸の屈曲部分と第nの第2編糸の屈曲部分とが厚さ方向から見て互いに重なり合うように、第1〜第Nの第1編糸及び第1〜第Nの第2編糸がそれぞれ地組織に編成されている。そのため、第nの第1編糸と第nの第2編糸とがそれぞれの屈曲部分において地組織を介して接続され、第nの第1編糸の第1部分と第nの第2編糸の第2部分とによりあたかも斜め方向(経方向及び緯方向に対して交差する方向)に連続して延びるラインが形成されると共に、第nの第1編糸の第2部分と第nの第2編糸の第1部分とによりあたかも斜め方向に連続して延びるラインが形成されることとなる。従って、斜め方向及び緯方向における強度が確保されることとなる。その結果、強度に関して等方性を発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、強度に関して等方性を発揮することが可能な経編地及びその製造方法並びに経編地の編構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る経編地10の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態に係る経編地10は、例えばKarl Mayer社製ジャカードラッシェル機RSJ5/1ELを用いて製造することができる。
【0018】
経編地10は、図1に示されるように、地組織12と、挿入糸群14,16とを備える。なお、各図の矢印Sは、経編地10の編み方向を示している。ただし、矢印Sで示す方向とは反対の方向に糸を供給することで経編地10を構成することもできる。
【0019】
地組織12は、経編地10の基礎となるものであり、経編地10の全面にわたって存在している。地組織12は、図2に示されるように、本実施形態において3種類の糸Y1〜Y3(地糸)によって構成されている。糸Y1,Y2としては、例えば、33デシテックス、26フィラメントのナイロン糸(東レ株式会社製Ny33T/26−2M94)を用いることができる。糸Y3としては、例えば、310デシテックスのポリウレタン糸(旭化成せんい株式会社製Roica(登録商標)310T−C804)を用いることができる。
【0020】
ここで、図2〜図4の組織図では、黒点が各コースのニードルヘッドの位置を表しており、黒点同士の緯方向の間隙はニードル間部を表している。また、図2〜図4の組織図では、緯方向に並んだ黒点の列が1つのコースを表しており、糸が矢印S方向に供給されるときに、各コースにおいてどのような編み方をされるかを、1本の糸によって示している。さらに、図2〜図4の組織図では、糸の編成をニードル間部の位置によって表す目的で、各糸がガイドバーに案内されて通過する最も右側のニードル間部を0とし、そこから順に左側に1,2,3・・・の番号を付与している(編機の種類によっては、0、2、4、6・・・と番号を付与するものもある)。
【0021】
糸Y1は、ジャカード筬J1のガイドバーに通糸される糸Y1aと、ジャカード筬J2のガイドバーに通糸される糸Y1bとを有している。糸Y1a,Y1bは、矢印S方向に給糸されることで、経編編成される。ここで、ジャカード筬J1,J2は、筬の運動とは別に、圧電素子(ピエゾ素子)等によって、各ガイドバーに対してニードル1つ分だけ緯方向に変位が与えられるようになっている。このジャカード筬J1,J2により、糸Y1a,Y1bは、互いに異なる組織として編成される。この糸Y1a,Y1bは、図2に示されるように、1ウェール間隔で隣り合っている。なお、図2において示される破線は、ジャカード筬J1,J2の圧電素子(ピエゾ素子)等によって緯方向に変位が与えられない場合の糸Y1の組織図を示すものである。
【0022】
具体的には、糸Y1aは、コースC1において番号1のニードル間部から番号2のニードル間部に移動し、コースC2において番号2のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC3において番号1のニードル間部から番号2のニードル間部に移動し、コースC4において番号1のニードル間部から番号0のニードル間部に移動し、コースC5において番号0のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC6において番号2のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC7において番号0のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC8において番号2のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC9において番号0のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC10において番号1のニードル間部から番号0のニードル間部に移動し、その後は以上を繰り返している。つまり、糸Y1aは、10コースを1つの繰り返し単位としている。この糸Y1aの編成は、「12/21/12/10/01/21/01/21/01/10//」と表すことができる。これにより、糸Y1aは、開き目(ループが交差しないで開いている状態)と閉じ目(ループが交差して閉じた形の編目が形成されている状態)とを交えたルーピング組織を構成する。
【0023】
また、糸Y1bは、コースC1において番号0のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC2において番号2のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC3において番号0のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC4において番号1のニードル間部から番号0のニードル間部に移動し、コースC5において番号1のニードル間部から番号2のニードル間部に移動し、コースC6において番号2のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC7において番号1のニードル間部から番号2のニードル間部に移動し、コースC8において番号1のニードル間部から番号0のニードル間部に移動し、コースC9において番号0のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC10において番号2のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、その後は以上を繰り返している。つまり、糸Y1bは、10コースを1つの繰り返し単位としている。この糸Y1bの編成は、「01/21/01/10/12/21/12/10/01/21//」と表すことができる。これにより、糸Y1bは、開き目と閉じ目とを交えたルーピング組織を構成する。なお、実際の地組織12では、糸Y1aと糸Y1bとが緯方向に1ウェール間隔で交互に並ぶと共に、緯方向に隣り合う糸Y1a,Y1b同士が絡み合っている。
【0024】
糸Y2は、筬GB3のガイドバーに通糸されて矢印S方向に給糸されることで、経編編成される。具体的には、糸Y2は、コースC1において番号1のニードル間部から番号2のニードル間部に移動し、コースC2において番号2のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC3において番号1のニードル間部から番号2のニードル間部に移動し、コースC4において番号1のニードル間部から番号0のニードル間部に移動し、コースC5において番号0のニードル間部から番号1のニードル間部に移動し、コースC6において番号1のニードル間部から番号0のニードル間部に移動し、その後は以上を繰り返している。つまり、糸Y2は、6コースを1つの繰り返し単位としている。この糸Y2の編成は、「12/21/12/10/01/10//」と表すことができる。これにより、糸Y2は、開き目と閉じ目とを交えたルーピング組織を構成する。なお、実際の地組織12では、複数の糸Y2が緯方向に1ウェール間隔で並ぶと共に、緯方向に隣り合う糸Y2同士が絡み合っている。
【0025】
糸Y3は、筬GB4のガイドバーに通糸されて矢印S方向に給糸されることで、糸Y1,Y2によって経編編成された編組織に、経方向に沿って挿入される。具体的には、糸Y3は、コースC1において番号2のニードル間部の位置でスイングインすると共に同じ位置でスイングアウトし、コースC2において番号1のニードル間部の位置でスイングインすると共に同じ位置でスイングアウトし、コースC3において番号2のニードル間部の位置でスイングインすると共に同じ位置でスイングアウトし、コースC4において番号0のニードル間部の位置でスイングインすると共に同じ位置でスイングアウトし、コースC5において番号1のニードル間部の位置でスイングインすると共に同じ位置でスイングアウトし、コースC6において番号0のニードル間部の位置でスイングインすると共に同じ位置でスイングアウトし、その後は以上を繰り返している。つまり、糸Y3は、6コースを1つの繰り返し単位としている。この糸Y3の編成は、「22/11/22/00/11/00//」と表すことができる。これにより、糸Y3は、ニードルループの間やシンカーループの間等に横たわったような状態、すなわち、糸Y1,Y2と絡み合い糸Y1,Y2に編成された状態となり、挿入組織を構成する。なお、実際の地組織12では、複数の糸Y3が緯方向に1ウェール間隔で並んでいる。
【0026】
挿入糸群14(第1挿入糸群)は、図3に示されるように、同種の4本の糸Y4a〜Y4d(第1〜第4の第1挿入糸)によって構成されている。糸Y4a〜Y4dとしては、例えば、78デシテックスのポリウレタン糸(旭化成せんい株式会社製Roica(登録商標)78T−C805)を用いることができる。
【0027】
糸Y4a〜Y4dは、それぞれ、筬GB5のガイドバーに通糸されて矢印S方向に給糸されることで、緯方向に1ウェール間隔で並んだ状態で、糸Y1,Y2によって経編編成された編組織に、経方向に沿って挿入される。具体的には、糸Y4aは、コースC1において番号5のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC2において番号4のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC3において番号5のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC4において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC5において番号4のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC6において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC7において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC8において番号4のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC9において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC10において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC11において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC12において番号0のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC13において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC14において番号0のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC15において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC16において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC17において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC18において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC19において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC20において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC21において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC22において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC23において番号4のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC24において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、その後は以上を繰り返している。つまり、糸Y4aは、24コースを1つの繰り返し単位としている。
【0028】
この糸Y4aの編成は、「55/44/55/33/44/22/33/44/33/11/22/00/11/00/22/11/22/11/33/22/33/22/44/33//」と表すことができる。これにより、糸Y4aは、ニードルループの間やシンカーループの間等に横たわったような状態、すなわち、糸Y1,Y2と絡み合い糸Y1,Y2に編成された状態となり、挿入組織を構成する。
【0029】
また、糸4aは、図3に示されるように、全体として蛇行形状を呈する。具体的には、糸4aは、コースC1からコースC3へと進むにつれて、全体として経方向に進み、コースC3からコースC12へと進むにつれて、全体として図面右方向に進み、コースC12からコースC14へと進むにつれて、全体として経方向に進み、コースC14からコースC24へと進むにつれて、全体として図面左方向に進んでいる。そのため、糸4aのうちコースC3〜C12における部分14a(第1部分)は全体として経方向に対して交差する方向に延びており、糸4aのうちコースC14〜C24における部分14b(第2部分)は全体として経方向に対して交差する方向に延びており、糸4aのうちコースC12〜C14における部分14c(屈曲部分)は全体として経方向に沿う方向に延びると共に部分14a,14bを接続する屈曲部分となっている。なお、糸Y4b〜Y4dについても同様である。
【0030】
挿入糸群16(第2挿入糸群)は、図3に示されるように、同種の4本の糸Y5a〜Y5d(第1〜第4の第2挿入糸)によって構成されている。糸Y5a〜Y5dとしては、例えば、78デシテックスのポリウレタン糸(旭化成せんい株式会社製Roica(登録商標)78T−C805)を用いることができる。
【0031】
糸Y5a〜Y5dは、それぞれ、筬GB6のガイドバーに通糸されて矢印S方向に給糸されることで、緯方向に1ウェール間隔で並んだ状態で、糸Y1,Y2によって経編編成された編組織に、経方向に沿って挿入される。具体的には、糸Y5aは、コースC1において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC2において番号0のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC3において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC4において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC5において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC6において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC7において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC8において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC9において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC10において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC11において番号4のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC12において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC13において番号5のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC14において番号4のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC15において番号5のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC16において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC17において番号4のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC18において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC19において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC20において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC21において番号3のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC22において番号1のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC23において番号2のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、コースC24において番号0のニードル間部の位置でスイングイン及びスイングアウトし、その後は以上を繰り返している。つまり、糸Y4aは、24コースを1つの繰り返し単位としている。
【0032】
この糸Y4aの編成は、「11/00/22/11/22/11/33/22/33/22/44/33/55/44/55/33/44/22/33/22/33/11/22/00//」と表すことができる。これにより、糸Y5aは、ニードルループの間やシンカーループの間等に横たわったような状態、すなわち、糸Y1,Y2と絡み合い糸Y1,Y2に編成された状態となり、挿入組織を構成する。
【0033】
また、糸5aは、図3に示されるように、全体として蛇行形状を呈する。具体的には、糸5aは、コースC1からコースC2へと進むにつれて、全体として経方向に進み、コースC2からコースC13へと進むにつれて、全体として図面左方向に進み、コースC13からコースC15へと進むにつれて、全体として経方向に進み、コースC15からコースC24へと進むにつれて、全体として図面右方向に進んでいる。そのため、糸5aのうちコースC2〜C13における部分15a(第1部分)は全体として経方向に対して交差する方向に延びており、糸5aのうちコースC15〜C24における部分15b(第2部分)は全体として経方向に対して交差する方向に延びており、糸5aのうちコースC13〜C15における部分15c(屈曲部分)は全体として経方向に沿う方向に延びると共に部分15a,15bを接続する屈曲部分となっている。なお、糸Y5b〜Y5dについても同様である。
【0034】
ここで、糸Y4a〜Y4d及び糸Y5a〜Y5dが地組織12に挿入された状態について、図4を参照しつつ説明する。まず、糸Y4a及び糸Y5aに着目すると、糸Y4aの部分14aと糸Y5aの部分16aとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに近接しながら地組織12に編成されている。糸Y4aの部分14bと糸Y5aの部分16bとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに離間しながら地組織12に編成されている。糸Y4aの部分14cと糸Y5aの部分16cとは、厚さ方向から見て互いに重なり合っている。そのため、糸Y4aの部分14cと糸Y5aの部分16cとの重なりの観点からは、糸Y4aと糸Y5aとが対応関係にあるといえる。なお、ここでいう「厚さ方向から見て互いに重なり合っている」とは、完全に重なり合って一致している場合のみならず、糸Y4aの部分14cが通過するニードル間部と糸Y5aの部分16cが通過するニードル間部とが一致している場合も広く含むものとする。
【0035】
続いて、糸Y4b及び糸Y5bに着目すると、糸Y4bの部分14aと糸Y5bの部分16aとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに近接しながら地組織12に編成されている。糸Y4bの部分14bと糸Y5bの部分16bとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに離間しながら地組織12に編成されている。糸Y4bの部分14cと糸Y5bの部分16cとは、厚さ方向から見て互いに重なり合っている。そのため、糸Y4bの部分14cと糸Y5bの部分16cとの重なりの観点からは、糸Y4bと糸Y5bとが対応関係にあるといえる。なお、ここでいう「厚さ方向から見て互いに重なり合っている」とは、完全に重なり合って一致している場合のみならず、糸Y4bの部分14cが通過するニードル間部と糸Y5bの部分16cが通過するニードル間部とが一致している場合も広く含むものとする。
【0036】
続いて、糸Y4c及び糸Y5cに着目すると、糸Y4cの部分14aと糸Y5cの部分16aとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに近接しながら地組織12に編成されている。糸Y4cの部分14bと糸Y5cの部分16bとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに離間しながら地組織12に編成されている。糸Y4cの部分14cと糸Y5cの部分16cとは、厚さ方向から見て互いに重なり合っている。そのため、糸Y4cの部分14cと糸Y5cの部分16cとの重なりの観点からは、糸Y4cと糸Y5cとが対応関係にあるといえる。なお、ここでいう「厚さ方向から見て互いに重なり合っている」とは、完全に重なり合って一致している場合のみならず、糸Y4cの部分14cが通過するニードル間部と糸Y5cの部分16cが通過するニードル間部とが一致している場合も広く含むものとする。
【0037】
続いて、糸Y4d及び糸Y5dに着目すると、糸Y4dの部分14aと糸Y5dの部分16aとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに近接しながら地組織12に編成されている。糸Y4dの部分14bと糸Y5dの部分16bとは、経方向(矢印S方向)に進むにつれて、互いに離間しながら地組織12に編成されている。糸Y4dの部分14cと糸Y5dの部分16cとは、厚さ方向から見て互いに重なり合っている。そのため、糸Y4dの部分14cと糸Y5dの部分16cとの重なりの観点からは、糸Y4dと糸Y5dとが対応関係にあるといえる。なお、ここでいう「厚さ方向から見て互いに重なり合っている」とは、完全に重なり合って一致している場合のみならず、糸Y4dの部分14cが通過するニードル間部と糸Y5dの部分16cが通過するニードル間部とが一致している場合も広く含むものとする。
【0038】
以上より、経編地10は、図1に示されるように、地組織12からなる領域Aと、地組織12及び挿入糸群14からなる領域B1と、地組織12及び挿入糸群16からなる領域B2と、地組織12及び挿入糸群14,16からなる領域Cを有することとなる。
【0039】
以上のような本実施形態においては、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dが経方向に沿って地組織12に挿入されており、糸Y4a〜Y4dが各部分14a〜14cによって全体として蛇行形状を呈していると共に、糸Y5a〜Y5dが各部分16a〜16cによって全体として蛇行形状を呈している。そのため、縦方向における経編地の強度が確保されることとなる。また、本実施形態においては、糸Y4aの部分14cと糸Y5aの部分16cとが厚さ方向から見て互いに重なり合い、糸Y4bの部分14cと糸Y5bの部分16cとが厚さ方向から見て互いに重なり合い、糸Y4cの部分14cと糸Y5cの部分16cとが厚さ方向から見て互いに重なり合い、糸Y4dの部分14cと糸Y5dの部分16cとが厚さ方向から見て互いに重なり合うように、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dがそれぞれ地組織12に挿入されて編成されている。そのため、糸Y4aの部分14cと糸Y5aの部分16cにおいて地組織12を介して接続され、糸Y4aの部分14aと糸Y5aの部分16bとによりあたかも斜め方向(経方向及び緯方向に対して交差する方向)に連続して延びるラインが形成されると共に、糸Y4aの部分14bと糸Y5aの部分16aとによりあたかも斜め方向に連続して延びるラインが形成されることとなる。糸Y4b〜Y4d,Y5b〜Y5dについても同様である。従って、斜め方向及び緯方向における強度が確保されることとなる。その結果、強度に関して等方性を発揮することが可能となる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、糸Y1,Y2として非弾性糸であるナイロン糸を使用していたが、他の非弾性糸としてポリエステル糸を用いてもよい。また、糸Y3〜Y5として弾性糸であるポリウレタン糸(スパンデックス糸)を使用していたが、他の弾性糸としてSCY(シングルカバーリングヤーン)やDCY(ダブルカバーリングヤーン)その他の伸縮性を有する糸を用いてもよく、また、弾性糸の外側に他の合成繊維を巻付けたカバリング弾性糸を用いることもできる。
【0041】
また、糸Y1,Y2の太さとしては、22デシテックス〜78デシテックスであると好ましく、28デシテックス〜44デシテックスであるとより好ましい。糸Y3の太さとしては、44デシテックス〜620デシテックスであると好ましく、78デシテックス〜470デシテックスであるとより好ましい。糸Y4,Y5の太さとしては、22デシテックス〜620デシテックスであると好ましく、44デシテックス〜390デシテックスであるとより好ましい。
【0042】
また、本実施形態においては、糸Y1,Y2によって地組織12のルーピング組織を構成し、糸Y3によって地組織12の挿入組織を構成していたが、糸Y1,Y2,Y3の全てをルーピング組織として地組織12を構成するようにしてもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、挿入糸群14を4本の糸Y4a〜Y4dによって構成し、挿入糸群16を4本の糸Y5a〜Y5dによって構成していたが、挿入糸群14,16を構成する糸の数は2本以上であればよい。
【0044】
また、本実施形態においては、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dは24コースを1つの繰り返し単位としていたが、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dが全体として蛇行形状を呈し、厚さ方向から見て互いに重なり合う部分と互いに重なり合わない部分とを有していれば、繰り返し単位としては24コースに限定されない。ただし、繰り返し単位のコース数が少なくなると、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5d全体としての緯方向における振り幅が小さくなる共に地組織12からなる領域Aの面積が小さくなるので、強度が増加する傾向にある。一方、繰り返し単位のコース数が多くなると、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5d全体としての緯方向における振り幅が大きくなると共に地組織12からなる領域Aの面積が大きくなるので、強度が減少する傾向にある。
【0045】
また、本実施形態においては、全体として蛇行形状を呈する糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dによって挿入組織を構成していたが、全体として蛇行形状を呈する糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dによってルーピング組織を構成するようにしてもよい。具体的には、例えば図5に示されるように、糸Y4a〜Y4dを「45/54/45/43/34/32/23/32/23/21/12/10/01/10/12/21/12/21/23/32/23/32/34/43//」で表される編成とし、糸Y5a〜Y5dを「01/10/12/21/12/21/23/32/23/32/34/43/45/54/45/43/34/32/23/32/23/21/12/10//」で表される編成とすることができる。図6に、これらの糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dが地組織12と共に編成された状態を部分的に示す。なお、この場合、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dのうち緯方向に隣り合う糸同士は絡み合っている。
【0046】
また、図3及び図4では経編地10の編み方向(矢印S方向)において全ての糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dが挿入組織を構成しており、図5及び図6では経編地10の編み方向(矢印S方向)において全ての糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dがルーピング組織を構成していたが、経編地10の編み方向(矢印S方向)においてルーピング組織と挿入組織とを切り替えるようにしてもよい。具体的には、例えば、糸Y4a〜Y4d,Y5a〜Y5dについて、コースC1〜C8を挿入組織、コースC9〜C16をルーピング組織、コースC17〜C24を挿入組織とすることも可能である。
【0047】
また、経編地10に模様を適宜入れてもよく、模様を入れなくてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例1〜2及び比較例1並びに図7〜図15に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
図1に示されるような、地組織12及び挿入糸群14,16によって構成される経編地10を用意した。この実施例1の経編地10においては、糸Y1a,Y1b,Y2として東レ株式会社製Ny33T/26−2M94を用い、糸Y3として日清紡績株式会社製Mo−78T−Rを用い、糸Y4,Y5として旭化成せんい株式会社製Roica(登録商標)155T−HSを用いた。また、ジャカード筬J1のガイドバーに通糸される糸Y1a及びジャカード筬J2のガイドバーに通糸される糸Y1bの編成を共に「01/10//」とし、筬GB3のガイドバーに通糸される糸Y2の編成を「12/21/12/10/01/10//」とし、筬GB4のガイドバーに通糸される糸Y3の編成を「22/11/22/00/11/00//」とした。また、18本の糸Y4により挿入糸群14とし、各糸Y4が全体として蛇行形状となると共に各糸Y4の1つの繰り返し単位が120コースとなるように、各糸Y4を筬GB5のガイドバーに通糸して編成した。また、18本の糸Y5により挿入糸群16とし、各糸Y5が全体として蛇行形状となると共に各糸Y5の1つの繰り返し単位が120コースとなるように、各糸Y5を筬GB6のガイドバーに通糸して編成した。そして、実施例1の経編地10を裁断して、幅(緯方向)2.5cm、長さ(経方向)20cmの試験片とした。
【0050】
続いて、この試験片を、JIS L 1018 8.15.1伸長弾性率A法(定伸長法) カットストリップ法を準用して、以下の条件で、経方向、緯方向及び斜め方向(試験片の表面編終わり方向を上にして45°右上がり方向)の各方向において、伸度が80%となるまで引き伸ばし、直ちに同じ速度で元の位置まで戻す操作を3回繰り返した。そして、試験片の引き伸ばし時に伸度が30%となったときにおける試験片の引張り力(伸長力)及び試験片の収縮時に伸度が30%となったときにおける試験片の引張り力(緊締力)を、上記操作の1回目及び3回目においてそれぞれ計測した。なお、伸度が30%となったときの伸長力及び緊締力を計測したのは、経編地10を用いて衣類(下着類)とした場合、着用時に伸度が30%を超えることが稀であることによる。
試験機 : 定速伸長形引張試験機
試験片幅 : 2.5cm
つかみ間距離 : 10cm
試験速度 : 30cm/min
初荷重 : 0cN
繰り返し回数 : 3回
伸長後の放置時間 : 0秒
元の位置まで戻した後の放置時間 : 0秒
【0051】
(実施例2)
実施例1の経編地10と比較して、4本の糸Y4により挿入糸群14とし、各糸Y4が全体として蛇行形状となると共に各糸Y4の1つの繰り返し単位が24コースとなるように、各糸Y4を筬GB5のガイドバーに通糸して編成し、また、4本の糸Y5により挿入糸群16とし、各糸Y5が全体として蛇行形状となると共に各糸Y5の1つの繰り返し単位が24コースとなるように、各糸Y5を筬GB6のガイドバーに通糸して編成した以外は、実施例1と同様の経編地10を用意した。そして、実施例2の経編地10を用いて、実施例1と同じ試験を行った。
【0052】
(比較例)
比較例の経編地においては、糸Y1a,Y1b,Y2として東レ株式会社製Ny33T/26−2M94を用い、糸Y3として旭化成せんい株式会社製Roica(登録商標)310T−SCRを用い、糸Y4として旭化成せんい株式会社製Roica(登録商標)44T−SCRを用い、糸Y5を用いなかった。また、ジャカード筬J1のガイドバーに通糸される糸Y1a及びジャカード筬J2のガイドバーに通糸される糸Y1bの編成を共に「21/12/21/01/10/01//」とし、筬GB3のガイドバーに通糸される糸Y2の編成を「21/23/21/12/10/12//」とし、筬GB4のガイドバーに通糸される糸Y3の編成を「11/33/11/22/00/22//」とし、筬GB5のガイドバーに通糸される糸Y4の編成を「11/22/00/11/00/22//」とした。そして、比較例の経編地を用いて、実施例1と同じ試験を行った。
【0053】
(試験結果)
試験結果を図7及び図8に示す。図7は、1回目の伸長力及び緊締力の値を示す表であり、図8は、3回目の伸長力及び緊締力の値を示す表である。そして、この試験結果に基づいて、1回目及び3回目の伸長力及び緊締力の、実施例1,2及び比較例における標準偏差をそれぞれ計算した(図9参照)。
【0054】
図9によれば、1回目及び3回目の伸長力及び緊締力のいずれにおいても、比較例の標準偏差が実施例1,2の標準偏差よりも大きくなっている。ここで得られる標準偏差は、経方向、斜め方向及び緯方向における伸長力の大きさ又は緊締力の大きさのばらつきを表すものであることを考慮すると、実施例1,2における経編地10は、経方向、斜め方向及び緯方向における伸長力の大きさ又は緊締力の大きさのばらつきが小さく強度に関して異方性が小さい(等方的である)といえることが確認された。一方、比較例における経編地は、経方向、斜め方向及び緯方向における伸長力の大きさ又は緊締力の大きさのばらつきが大きく、強度に関して異方性が大きいものといえることが確認された。なお、図9〜図13からも、実施例1,2における経編地30のばらつきの大きさよりも比較例における経編地のばらつきの大きさが大きいことが伺える。
【0055】
また、試験結果に基づいて、実施例1,2及び比較例における、1回目と3回目との伸長力の減少率及び緊締力の減少率を下記式(1)にて経方向、斜め方向及び緯方向についてそれぞれ計算した(図14及び図15参照)。なお、減少率が小さいほど経編地が繰り返しの伸縮に強く、減少率が大きいほど経編地が繰り返しの伸縮に弱いことを示す。 減少率[%]=(1回目の試験結果−3回目の試験結果)/1回目の試験結果×100・・・(1)
【0056】
図14及び図15によれば、実施例1,2では、経方向、斜め方向及び緯方向のいずれにおいても減少率がほぼ一定であるのに対し、比較例では、方向によって減少率が大きく違っている。そのため、実施例1,2における経編地10では、繰り返し伸縮した場合にいずれの方向にも同程度に伸びることとなり、繰り返し伸縮した後であっても強度に関して等方性を保つことができることが確認された。一方、比較例における経編地では、繰り返し伸縮した場合に特定の方向に伸びやすくなってしまい、繰り返し伸縮した後には強度に関して異方性がより大きくなってしまうことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本実施形態に係る経編地を示す平面図である。
【図2】図2は、地組織の組織図である。
【図3】図3は、糸Y4a〜Y4d及び糸Y5a〜Y5dの組織図である。
【図4】図4は、糸Y4a〜Y4d及び糸Y5a〜Y5dが地組織に挿入された状態を部分的に示す図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る他の例の経編地における糸Y4a〜Y4d及び糸Y5a〜Y5dの組織図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る他の例の経編地における糸Y4a〜Y4d及び糸Y5a〜Y5dが地組織と共に編成された状態を部分的に示す図である。
【図7】図7は、1回目の伸長力及び緊締力の値を示す表である。
【図8】図8は、3回目の伸長力及び緊締力の値を示す表である。
【図9】図9は、1回目及び3回目の伸長力及び緊締力の、実施例1,2及び比較例における標準偏差を示す表である。
【図10】図10は、横軸に経方向、斜め方向及び緯方向をとり、縦軸に1回目の伸長力をとったときの、実施例1,2及び比較例のそれぞれの試験結果を示す図である。
【図11】図11は、横軸に経方向、斜め方向及び緯方向をとり、縦軸に1回目の緊締力をとったときの、実施例1,2及び比較例のそれぞれの試験結果を示す図である。
【図12】図12は、横軸に経方向、斜め方向及び緯方向をとり、縦軸に3回目の伸長力をとったときの、実施例1,2及び比較例のそれぞれの試験結果を示す図である。
【図13】図13は、横軸に経方向、斜め方向及び緯方向をとり、縦軸に3回目の緊締力をとったときの、実施例1,2及び比較例のそれぞれの試験結果を示す図である。
【図14】図14は、横軸に経方向、斜め方向及び緯方向をとり、縦軸に減少率をとったときの、実施例1,2及び比較例のそれぞれの伸長力の減少率を示す図である。
【図15】図15は、横軸に経方向、斜め方向及び緯方向をとり、縦軸に減少率をとったときの、実施例1,2及び比較例のそれぞれの緊締力の減少率を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10…経編地、12…地組織、14…挿入糸群(第1挿入糸群)、14a…部分(第1部分)、14b…部分(第2部分)、14c…部分(屈曲部分)、16…挿入糸群(第2挿入糸群)、16a…部分(第1部分)、16b…部分(第2部分)、16c…部分(屈曲部分)、Y1〜Y3…糸(地糸)、Y4a〜Y4d…糸(第1〜第4の第1挿入糸)、Y5a〜Y5d…糸(第1〜第4の第2挿入糸)、A,B1,B2,C…領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経編編成により地組織を構成する地糸と、
経方向に沿って前記地組織に挿入され、前記地組織と共に編成されることにより、挿入組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1挿入糸による第1挿入糸群及び第1〜第Nの第2挿入糸による第2挿入糸群とを備え、
前記第1〜第Nの第1挿入糸と前記第1〜第Nの第2挿入糸とは、緯方向に並んで配置され、
前記第n(nは1〜Nの自然数)の第1挿入糸と前記第nの第2挿入糸とは、経方向において互いに近接しながら前記地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら前記地組織に編成される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、前記第1部分、前記第2部分及び前記屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、
前記第nの第1挿入糸の前記屈曲部分と前記第nの第2挿入糸の前記屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする経編地。
【請求項2】
地糸を経編編成することで地組織を構成しつつ、第1挿入糸群となる第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1挿入糸及び第2挿入糸群となる第1〜第Nの第2挿入糸を、それぞれ経方向に沿って前記地組織に挿入して前記地組織と共に編成することで、挿入組織を構成する工程を備え、
前記第1〜第Nの第1挿入糸と前記第1〜第Nの第2挿入糸とは、緯方向に並んで配置され、
前記第n(nは1〜Nの自然数)の第1挿入糸と前記第nの第2挿入糸とは、経方向において互いに近接しながら前記地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら前記地組織に編成される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、前記第1部分、前記第2部分及び前記屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、
前記第nの第1挿入糸の前記屈曲部分と前記第nの第2挿入糸の前記屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする経編地の製造方法。
【請求項3】
経編編成により地組織を構成する地糸と、
経方向に沿って前記地組織に挿入され、前記地組織と共に編成されることにより、挿入組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1挿入糸による第1挿入糸群及び第1〜第Nの第2挿入糸による第2挿入糸群とを備え、
前記第1〜第Nの第1挿入糸と前記第1〜第Nの第2挿入糸とは、緯方向に並んで配置され、
前記第n(nは1〜Nの自然数)の第1挿入糸と前記第nの第2挿入糸とは、経方向において互いに近接しながら前記地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら前記地組織に編成される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、前記第1部分、前記第2部分及び前記屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、
前記第nの第1挿入糸の前記屈曲部分と前記第nの第2挿入糸の前記屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする経編地の編構造。
【請求項4】
経編編成により地組織を構成する地糸と、
経方向に沿って前記地組織と共に編成されることにより、ルーピング組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1編糸による第1編糸群及び第1〜第Nの第2編糸による第2編糸群とを備え、
前記第1〜第Nの第1編糸と前記第1〜第Nの第2編糸とは、緯方向に並んで配置され、
前記第n(nは1〜Nの自然数)の第1編糸と前記第nの第2編糸とは、経方向において互いに近接しながら前記地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら前記地組織に編成される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、前記第1部分、前記第2部分及び前記屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、
前記第nの第1編糸の前記屈曲部分と前記第nの第2編糸の前記屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする経編地。
【請求項5】
地糸を経編編成することで地組織を構成しつつ、第1編糸群となる第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1編糸及び第2編糸群となる第1〜第Nの第2編糸を、それぞれ経方向に沿って前記地組織と共に編成することで、ルーピング組織を構成する工程を備え、
前記第1〜第Nの第1編糸と前記第1〜第Nの第2編糸とは、緯方向に並んで配置され、
前記第n(nは1〜Nの自然数)の第1編糸と前記第nの第2編糸とは、経方向において互いに近接しながら前記地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら前記地組織に編成される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、前記第1部分、前記第2部分及び前記屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、
前記第nの第1編糸の前記屈曲部分と前記第nの第2編糸の前記屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする経編地の製造方法。
【請求項6】
経編編成により地組織を構成する地糸と、
経方向に沿って前記地組織と共に編成されることにより、ルーピング組織を構成する第1〜第N(Nは2以上の自然数)の第1編糸による第1編糸群及び第1〜第Nの第2編糸による第2編糸群とを備え、
前記第1〜第Nの第1編糸と前記第1〜第Nの第2編糸とは、緯方向に並んで配置され、
前記第n(nは1〜Nの自然数)の第1編糸と前記第nの第2編糸とは、経方向において互いに近接しながら前記地組織に編成される第1部分と、経方向において互いに離間しながら前記地組織に編成される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する屈曲部分とをそれぞれ有し、前記第1部分、前記第2部分及び前記屈曲部分によって全体として蛇行形状を呈しており、
前記第nの第1編糸の前記屈曲部分と前記第nの第2編糸の前記屈曲部分とは、厚さ方向から見て互いに重なり合っていることを特徴とする経編地の編構造。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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