説明

結合ペルオキシダーゼ模倣物及びその使用

2つ又はそれより多いモノマーを服務マルチマーペプチド模倣物が開示される。当該モノマーは、環状構造、柔軟性リンカー及びマルチマーモチーフを含む環外ペプチドを含む。当該モノマー、モノマーコーディング核酸分子、当該核酸分子を含む組換え発現ベクター及び組換え発現ベクターを含む宿主細胞の使用が開示される。薬剤、毒素、核酸分子、放射性核種又は検出可能な化合物を細胞に送達する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、検出アッセイにおいて、治療剤として及び他の応用におけるモノクローナル抗体の置換物として使用可能なペルオキシダーゼ模倣物に関する。
発明の背景
この出願は、引用により本明細書に編入される2004年2月20日に出願された米国仮出願連続番号60/546,224に対して優先権を主張する。
【0002】
モノクローナル(mAb)抗体技術及び特定の結合活性を有するそのような蛋白質の様々な用途はよく知られている。例えば、mAbsは治療剤、イメージング剤、診断試薬及び親和性基質として使用される。
【0003】
ストレプトアビジンは、ビタミンD−ビオチンとの極めて安定な非共有結合を提供する蛋白質アビジンに極めて密接に関連した蛋白質である。アビジン自体は、ほんの稀にしか発現されない極めて高度に特化された蛋白質である。他方、ストレプトアビジンは、種ストレプトマイセスにおいて、ストレプトマイセスアビジニにおいて容易に発現される。ストレプトアビジンは水溶性ビタミンD−ビオチン(ビタミンH)に特異的に結合する。アビジンと同様に、ストレプトアビジンも、妨害されていないビオチンを含む如何なる分子に対しても迅速且つほぼ不可逆的に顕著に高い親和性をもって結合する。ストレプトアビジンは、アビジンとは異なり、糖質フリーであり、即ち、その類似の分子構造のために、例えばX線結晶解析研究に、より適しており、そして低下した(reduced)非特異的結合のために様々な他の検出技術に、より適している。
【0004】
ストレプトアビジン遺伝子は、エシェリヒアコリにおいてクローン化されて発現された(Sano and Cantor,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87(1):142−146,1990;Agarana,et al.,Nucleic Acids Res.14(4):1871−1882,1986)。ストレプトアビジン及びその末端削除形態と、様々な蛋白質、例えば一本鎖抗体の融合構築物も、エシェリヒアコリにおいて発現され(Sano and Cantor,Biotechnology(NY)9(12):1378−1381,1991;Sano and Cantor,Biochem.Biophys.Res.Commun.176(2)571−577,1991;Sano et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(5):1534−1538,1992;Walsh and Swaisgood,Biotech.Bioeng.44:1348−1354,1994;Le et al.,Enzyme Microb.Technol.16(6):496−500,1994;Dubel,et al.,J.Immunol.Methods 178(2):201−209,1995;Kipriyanov,et al.,Hum.Antibodies Hybridoma 6(3):93−101,1995;Kipriyanov,et al.,Protein Eng.9(2):203−211,1996;Ohno et al.,Biochem.fol Med.58(2):227−233,1996;Ohno and Meruelo,DNA Cell Biol.15(5):401−406,1996;Pearce,et al.,Biochem.Mol.Biol.Int.42(7):2497−2502,1998)、そして他の生物においても発現された(Karp,et al.,Biotechniques 20(3):452−459,1996)。
【0005】
米国特許番号5,328,985は、ストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質を記載する。プロテインA(Sp A)はスタフィロコッカスアウレウスの細胞壁成分である。プロテインAは、イムノグロブリン、主に哺乳類種のIgGと特異的に相互作用することが示された。米国特許5,328,985の蛋白質のもっとも本質的な特徴は、ビオチンとIgGへの結合能力である。本発明においては、当該テトラマーが細胞結合ドメイン並びにビオチン結合ストレプトアビジンを含む。好ましい態様においては、細胞結合ドメインが細胞表面受容体を結合する抗体のCDRペプチドからなる。
【0006】
米国特許番号6,391,590は、ストレプトアビジン−メタロチオネインキメラ蛋白質に関する。メタロチオネイン蛋白質は、様々な多様性をもって様々な重金属を結合することができる。米国特許6,391,590の蛋白質のもっとも本質的な特徴は、ビオチンと重金属の両方に結合する能力である。
【0007】
米国特許番号6,413,934は、二次機能ドメインを有するストレプトアビジン変異体に関する。この特許においては、二次機能ドメインがストレプトアビジン配列中に挿入される。本発明においては、細胞結合ドメインが分離されるが、リンカー配列を通してストレプトアビジンに連結される。
【0008】
米国特許番号6,451,995は、抗ガングリオシドGD2抗体の単鎖FV(scFv)ポリヌクレオチド又はペプチド構築物に関する。この特許は、このsvFvをストレプトアビジン又はプロドラッグ変換酵素に接続する方法も記載する。ガングリオシドは、ほとんどの細胞膜の外部表面上に見いだされる酸性のグリコスフィンゴリピドである。多くの腫瘍において、異常なグリコリピッドの組成及び構造が存在する。ジシアロガングリオシドGD2は、神経芽腫、骨肉腫及び他の柔組織肉腫、髄芽腫、ハイグレード星状細胞腫、メラノーマ、及び小細胞肺癌を含む広い範囲のヒト腫瘍において見いだされてきた。本発明においては、細胞結合ドメインが細胞表面上の受容体(蛋白質)に結合する。
【0009】
米国特許番号6,497,881は、毒素又は核酸及び抗体の非共有複合体を形成するための送達システムとして使用することができる、ストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質に関する。本発明においては、当該テトラマーを毒素又は核酸又は抗体の付加のためのカップリングなしに癌のための治療剤として使用することができる。
【0010】
米国特許出願20030095977は、ストレプトアビジンとscFv融合に関する。この特定の出願においては、抗体と抗原結合断片も融合蛋白質中の二次成分に関してクレームされた。抗体断片は、「抗体に由来する断片又は抗体に関係する断片」であって、抗原を結合し、そしていくつかの態様においては、例えばガラクトース残基の取り込みにより、浄化(clearance)及び摂取(uptake)を促進させる構造上の特徴を呈するように誘導してよい。これは、例えば、F(ab),F(ab)’,scFv,軽鎖可変領域(VL)、重鎖可変領域(VH)、及びそれらの組み合わせを含む。米国特許出願20030095977は、抗体の単鎖CDRに由来する短いアミノ酸配列(5−8アミノ酸残基)を使用することを教示していない。
発明の概要
本発明は、2つ又はそれより多いモノマーを含むマルチマーペプチド模倣物に関する。当該モノマーは、環状構造、柔軟性リンカー配列及びマルチマー化モチーフを含む環外(exocyclic)ペプチドを含む。
【0011】
本発明は、さらに、そのようなモノマーをコードする核酸分子、そのような核酸分子を含む組換え発現ベクター及びそのような組換え発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明は、薬剤、毒素、核酸分子、放射性核種又は検出可能な化合物を細胞に送達する方法にも関する。当該方法は、細胞を2つ又はそれより多いモノマーを含むマルチマーペプチド模倣物に接触させる工程を含む。当該モノマーは、環状構造、柔軟性リンカー配列及びマルチマー化モチーフを含む環外ペプチドを含む。上記細胞は、マルチマー蛋白質のモノマーの環外ペプチド内に存在するアミノ酸配列に結合する蛋白質を発現する。
【0012】
本発明は、さらに、マルチマーペプチド模倣物を生産するための、環状構造、柔軟性リンカー配列及びマルチマー化モチーフを含む環外ペプチドを含むモノマーの使用にも関する。
【0013】
本発明は、細胞結合ドメイン及びビオチン結合ストレプトアビジンコア配列を有する精製された組換え蛋白質にも関する。当該細胞結合ドメインは、異種ポリペプチドの活性ドメインを含み、そして柔軟性リンカーによりストレプトアビジン分子のN末端に融合される。
【0014】
本発明は、そのような蛋白質を含むテトラマー蛋白質複合体にも関する。
発明の詳細な説明
結合ペプチド模倣物(BIP)は、抗体を置き換えるためにデザインされた小蛋白質の、構築物を含み、そしてさらにマルチマーの形成を促進するモチーフをさらに含む、環外ペプチドである。上記BIPは、3つの異なる部分を含む:1)約5−20のアミノ酸残基、好ましくは5−12アミノ酸残基を含む、環外ペプチド模倣物(ePm)の小ループ、2)4−20のアミノ酸残基、好ましくは5−12アミノ酸残基を含む、マルチマー化モチーフによる干渉なしに蛋白質の結合のために環外模倣物の正確な位置取りを可能にさせる柔軟なリンカー、及び3)マルチマー複合体の形成及び他の分子への非共有結合において機能する小蛋白質モチーフ。
【0015】
本発明のBIPsは、検出可能な結合分子、検出、定量及びプロファイリングアッセイにおいて有用なものを生産するための、有用で便利な構築物を提供する。さらに、発明のBIPsは、モノマー形態を超える改善された活性を提供し、それによりモノマー抗体の活性にアプローチする、小さくて生物学上活性な制約された(constrained)ペプチドのマルチマー形態を生産するための便利な手段を提供する。
【0016】
CDR技術はよく知られており、引用により本明細書に編入される米国特許5,334,702,米国特許5,663,144、及び米国特許5,919,764に記載された。抗体分子は、相補性決定領域(CDRs)と呼ばれる6つの可変ループによりそれらの抗原に結合する。重鎖からのCDR3は、しばしばその特異性に介在する。制約された環状CDR模倣物のデザインのための一般的方法論は、Williamsら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1989 86:5537−5541)、Sargoviら(Science 1991 253:792−795)及びMuraliら(Immunol.Res.1998 17:163−169)により記載される。一般に、CDRsは環状になるように制約されて芳香族残基により修飾された6から15マーのペプチドである。CDR模倣物は小分子(約1kDa)であり、特異性、親和性及び生物活性に関してそれらのお役抗体を模倣することができる。CDR模倣物の環状形態は、約5から13の制約されたアミノ酸を含む。
【0017】
本発明における使用のためのCDRs及びCDR模倣物のデザインにおける重要な工程は、活性に重要な残基の描写(delineation)である。これは、一般的には、異なる長さのオリジナル抗体又は受容体又はリガンドの生物活性ドメインからアナログのセットを最初に合成し、そして完全な活性及び部分的な活性に関して最小の鎖の長さを確認する(establishing)ことにより、達成される。最小の鎖の長さが確認されたなら、各側鎖を系統的に変更することにより、各位置の電荷、立体容積、疎水性、芳香性、及びキラル性(chirality)の重要性を決定することができる。大きなセットのアナログの特性を評価した後で、結合に関与する官能基及びコンフォメーション上の特徴を同定することができる。異なるコンフォメーション上制約されたアナログを次に開発することができる。ペプチドを制約するための様々な手段が開発された。
【0018】
一つの手段は、コンフォメーション上制約されたアミノ酸を導入することを含む。Hruby(Life Sci.1982 31:189−199)は、ビルトインコンフォメーション制約物による多数のアミノ酸及びジペプチド誘導体の合成、並びに生物活性ペプチドへのそれらの取り込みを記載する。Prasadら(Biopolymers 1995 35:11−20)も、α−炭素における水素原子をメチル基で置き換えることによりジアルキルアミノ酸を生産してアミノ酸ユニットのコンフォメーションを制約する方法を記載する。米国特許6,022,523は、引用により本明細書に編入され、C−α及びC−βの原子において二重結合を導入することによりアミノ酸のコンフォメーショナルな自由度を制限する方法を記載する。
【0019】
ペプチドを制約するための別の手段は、共有架橋結合の導入を含む。共有架橋結合の導入によるペプチドバックボーンの制約は、非通常のアミノ酸を取り込むよりも、より劇的な効果を提供する。マクロ環状化は、しばしば、N末端とC末端の間、側鎖とN又はC末端の間、あるいは2つの側鎖の間にアミド結合を形成することにより達成される。4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酢酸、第1の生成ジアルキル−ベンジル結合剤により誘導されたポリスチレン樹脂上のFmoc/t−ブチル固相手法により合成された側鎖保護ペプチドのヘッドツーテイル環状化は、Sheppard,R.C.(Int.J.Peptide Res.1982 20:451−454)に記載された。さらに、類似の結合剤、4−(4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ)−ブチル酸(HAMA)が、これらの酸に感受性が高いリンカーを用いたペプチドの断片濃縮化及び固相合成において最近用いられた(In Peptides,E.Giralt and D.Andreu eds,ECOM,Leiden,The Netherlands 1991,131−133)。Schillerにより記載されたエンケファリン類似体は、D−lys残基のe−アミノ酸の、LeuのC末端バックボーンのカルボキシル酸基への共有結合が高度に有力で重要なμ受容体選択性を伴う16員環を生成する、側鎖のバックボーンへの共有環状化の例を提供する(Shiller et al.J.Pep.Prot.Res.1985 25:171−177)。BOP−試薬及びカルボジイミド/1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾルの組合わせも環状ペプチドの形成に有用であると報告された(Felix,A.M.Int.J.Pep.Prot.Res.1988 31:231−238)。Degradoらも、m−アミノメチル安息香酸をリンカーとして用いたGP IIb/IIaの生物学上活性な環状化されたペプチドアナログを開発した(米国特許6,022,523)。
【0020】
ジスルフィドは、特定の位置におけるシステインの導入による酸化によっても形成することができる。例えば、Romani,S.(Int.J.Pep.Prot.Res.1987 29:107−117)は、アゾジカルボキシル酸のジ第三ブチルエステルの助けを借りて非対称のジスルフィドが構築できることを証明した。Ploux,O.(Int.J.Pep.Prot.Res.1987 29:162−169)も、3S−3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル基のチオール置換による非対称ジスルフィドの形成のための方法を記載する。
【0021】
米国特許番号6,100,377は、引用により本明細書に編入され、芳香族が修飾された環外ペプチドを如何にして作成して使用するかを記載する。その中に記載されたペプチドは、CDRが機能する様式にて機能するCDR配列に合わせて設計された(modeled on)配列及び蛋白質のN及びC末端を含む環外配列を含む環状部分を含む。当該分子は、両方の末端の残基の以外の残基の間での内部結合により環状化される。環状部分の位置部ではない残基を、環外部分又は配列と呼ぶ。米国特許6,100,377においては、少なくとも一つの環外配列が芳香族アミノ酸残基を含む。
【0022】
本発明によれば、柔軟性リンカー及びマルチマー化モチーフ又は結合モチーフを含む環外部分を含む環外ペプチドが提供される。発明の環外ペプチドは一つ又は二つの環外配列を中に芳香族アミノ酸残基を含んでよい。環状部分は、非末端の残基と別の非末端残基であってもなくてもよいペプチド残基の間のジスルフィド結合により形成される。環状内のアミノ酸は結合ファーマコフォアを規定するが、環外残基は抗体のフレームワーク領域を模倣し(即ち、ループのコンフォメーションをサポートして環外構築物のためにフレームワークを提供する)、そして柔軟性リンカー及びマルチマー化モチーフ又は結合モチーフを含む。柔軟性リンカーは一般に4−20アミノ酸残基である。いくつかの態様において、それは、4、5、6、7、8、9、10、又は11アミノ酸残基である。いくつかの態様において、それは、12、13、14、1、16、17、18、19、又は20アミノ酸残基である。
【0023】
マルチマー化モチーフ又は結合モチーフの例は、ストレプトアビジン、ビメニン及び類似のトリマー化又はテトラマー化モチーフを含む。いくつかの態様において、テトラマー化モチーフは、ロイシンジッパーモチーフ、ヒト血小板因子モチーフ、ヒトスーパーオキシドジスムターゼモチーフ、又はp53テトラマー化ドメインである。いくつかの態様において、マルチマー化モチーフ又は結合モチーフは、ストレプトアビジン又はそのマルチマー化断片を含む。好ましくは、あるいは、ストレプトアビジンのマルチマー化断片は、それらのビオチン結合能力を保持する。いくつかの態様において、マルチマー化モチーフ又は結合モチーフは、マルチマー化モチーフを含むP53腫瘍サプレッサー又はその断片である(Lee,W.et al.,(1994)Nature Struct.Biol.1,877−890,引用により本明細書に編入される)。いくつかの態様において、マルチマー化モチーフ又は結合モチーフは、マルチマー化モチーフを含むヒト血小板因子又はその断片である(Zhang et al.,Biochem(1994)V33,pp:8361−6,引用により本明細書に編入される)。いくつかの態様において、マルチマー化モチーフ又は結合モチーフは、融合物としてエシェリヒアコリのマルトース結合蛋白質に対して、表面活性剤蛋白質Dのネック領域をC1q B鎖の球状のヘッド領域によりトリマー化することを含む(Kishore et al.,J.Immunol 166:559−565,201,引用により本明細書に編入される)。いくつかの態様において、マルチマー化モチーフ又は結合モチーフは、ビメンチン又はその断片を含む(Rogers et al.,J Struct Biol.1996 Jul−Aug:117(1):55−69、引用により本明細書に編入される)。これらの蛋白質のモチーフは、環状ペプチドのマルチマー形成の製造を助けるために2つ又はそれより多い環状ペプチドを接続し、それにより、より活性なペプチドを生産するために使用される。あるいは、小蛋白質のモチーフを用いることにより、環外ペプチドを検出用プローブに非共有結合させる。
【0024】
いくつかの態様において、発明の環外ペプチドの環部分の配列は、抗体の可変領域に相当する。ほんの百ほどの集団しか有さない(having only one hundreth the mass)ままにそれが設計される抗体、リガンド又は受容体の結合活性を模倣するBIPを構築するために、抗体、受容体又はリガンドからの短いペプチドを環外ペプチドの環部分内に巧みに操作することができる。抗体の多様なレパートリーを確立することと比較して、BIPsの多様なレパートリーは、ランダム化されたループ領域、柔軟なリガンド及び結合モチーフ又はマルチマー化モチーフを含むファージディスプレイライブラリーを用いて相対的に簡単に生成することができる。ファージライブラリーは、即ち、標的分子、例えば、抗原、リガンド又は受容体に結合するループ領域を用いてBIPsを同定するために作動(panned)することができるBIPsのライブラリーを生じさせ得る。あるいは、BIPsを有機化学修飾を用いるか又は用いずに合成により創製することができる。いくつかの態様において、発明の環外ペプチドの環部分の配列は、癌マーカー、治療標的又はイメージング標的として使用することができる蛋白質、例えばHer2,EGFR,VEGF,CEA,PSA,HER3,HER4,CD−20,TNF−α,IL−1,TNFR,FAS,RANKL/TRANCE,OPG,CD40,CD28,CD3,CD4,IL−4及びIL−13に対して結合する抗体の可変領域に相当する。
【0025】
いくつかの態様において、発明の環外ペプチドの環部分の配列は、蛋白質結合に関与する受容体又は他の蛋白質の領域に相当する。そのような領域は、それらのリガンドに結合する能力を保持する。
【0026】
BIPsはN又はC末端において他のドメインに融合させることができる。検出器(detector)のBIPs(dBIP)は環外ペプチドを固相支持体、例えばマイクロプレート又はチップに付着させるためにリンクされるテイルドメインを有する。増幅BIPs(aBIP)は環外ペプチドに対してリンクされる増幅可能鋳型を含むドメインを有する。
【0027】
BIPsはマルチマー化ドメイン又は結合ドメインを含むため、環外ペプチドのマルチマー化形態(mBIP)を製造するために使用することができる。環外ペプチドのモノマー形態は限られた親和性しか有さず、そして修飾により親和性を改善するには困難がある。マルチマーによりより高次の形態のBIPを提供することにより、当該分子の親和性はモノクローナル抗体の親和性に接近するかもしれない。従って、mBIPsは治療の適用及び診断の適用においてモノクローナル抗体に取って代わることができる。
【0028】
BIPsは検出及び定量アッセイ、例えば免疫−PCR、免疫−RCA、免疫−aRNA並びに抗体を用いる他のあらゆるアッセイにおいて使用することができる。同様に、BIPsは、生物学上の重要性を有することが知られている蛋白質−蛋白質の相互作用を増強するか又は阻害する化合物を同定するために薬剤スクリーニングアッセイにおいて使用することができる。2つの蛋白質を試験化合物の存在下で互いに接触させることができる。BIPsは、蛋白質−蛋白質の相互作用が増強されるかあるいは破壊されるかを決定するために使用することができる。
【0029】
BIPsは、蛋白質−蛋白質の相互作用をマップするためにも使用することができる。例えば、蛋白質に対して特異性の高い、蛍光により標識されたか又は染色されたBIPsを、蛋白質−蛋白質の相互作用に関与する蛋白質上の部位を決定するために使用することができ、即ち薬剤標的を示す。
【0030】
多様なディスプレイ技術を用いて、標的分子上の同じ部位に結合する多数のBIPsを同定することができる。異なるBIPsの比較は、エピトープとの相互作用に関与するスキャフォールド基及び官能基への洞察(insight)を提供する。この情報は、正確に配置された官能基又はファーマコフォアを備えた小さな薬剤の開発において使用可能である。
【0031】
ペプチドから薬剤様分子への翻訳が成功するには、2つの重要な条件:1)制約された
ペプチド内のコンフォメーショナルな柔軟性、及び2)適切なスキャフォールド及びサイズの見積もり、を見たさなければならない。
【0032】
多様なディスプレイ、続く競合結合アッセイは、異なる側鎖基により同時にファーマコフォアをサンプリングするための唯一の様式を提供する。競合結合制約されたBIPsのグループから得られた1セットのファーマコフォアを、ペプチド結合表面を小薬剤様分子へ翻訳するために使用する。翻訳は、コンピューターデータベース検索(例えば、距離幾何学制約)の組み合わせ及び生化学/生物学(例えば、相補結合エピトープ)分析により達成される。7−8よりも多いアミノ酸を含む未制約ペプチドはこのアプローチにおいて使用できない。
【0033】
BIPsの薬剤リードへの翻訳は、以下の基本工程を含む。第1に、上記環外ペプチドはスキャフォールド距離の境界を規定するおおよその環状サイズを提供する。合成のために影響を受けやすいスキャフォールドの異なる種類を選択し、並びに許容された境界内に適合するように、化学データベース検索を使用することができる。第2に、結合に関して互いに競合するペプチドのグループから同定された1セットのファーマコフォアを、コンセンサス、交差相関性(例えば、一つの位置における天然極性電荷がファージ内の極性荷電された官能基により補償されたかもしれない)、3次元空間の相対的配置及び結合相補性(標的蛋白質に対しての抗体ミラー結合エピトープとして)に関して分析する。最後に、第3の工程は、化学データベース、例えば、MDL,ACD又はメイブリッジケミカルライブラリーの素早い検索(距離及びコンフォメーション制約により)から、これ(ポテンシャル薬剤様分子)を同定することである。生化学/生物学アッセイにより確認されたヒットが、コンビナトリアル化学又は他の慣用の手段の何れかにより改善され得る。
【0034】
発明は、テトラマー構造をそのようなペプチドに巧みに操作することにより細胞標的ペプチドの親和性及び機能を改善する方法に関する。一つの態様において、そのようなテトラマーは、高い親和性をもって標的細胞に結合し、そしてさらにビタミンビオチンが標的細胞により利用されることを拒絶することにより、標的細胞の成長を阻害する。別の態様において、テトラマーはビオチン化された化合物、例えば、薬剤、毒素、核酸、放射性核種又は他の検出可能な因子(agent)に連結させることができる。テトラマーは、薬剤、毒素、核酸、放射性核種又は他の検出可能な因子を標的とされた細胞に運ぶ。当該核酸は、例えば、DNA又はRNAであり得て、それはテトラマー蛋白質のビオチン結合部位に結合したビオチン化一本鎖核酸であり得る。別の態様において、当該核酸は、相補三重鎖をビオチン化一本鎖核酸と形成する二重鎖核酸であり得て、次にビオチン結合部位に結合する。
【0035】
化学治療剤の例は、一般的な細胞障害性又は細胞増殖抑制性の薬剤、例えば、メトトレキセート(アメトプテリン)、ドクソルビシン(アドリマイシン)、ダウノルビシン、サイトシナラビノシド、エトポシド、5−フルオロウラシル、メルファラン、クロラムブシル、及びシス−プラチンを含む。
【0036】
毒素の例は、限定ではないが、リシン(ricin)、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、クロストリジウムパーフィンゲンスホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵臓リボヌクレアーゼ(BPR)、マリカヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルス蛋白質(PAP)、アブリン(abrin)、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒液因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン(modeccin)、ビスクミン及びボルケンシン(volkensin)を含む。
【0037】
本発明に従いデザインされて発現されるキメラ蛋白質は、ストレプトアビジンのビオチン結合特性と、ペプチド結合ドメインに帰する特異的細胞標的結合特性を含む分子である。両サブドメインの特性は混合されて完全なビオチン結合能力を所有する新規の組換えテトラマー誘導体を提供し、テトラマーあたり一つ又はそれより多い細胞標的を結合し、そしてビオチンが標的細胞により利用されることを阻止することができる。テトラマーのビスクミン結合能力は、ビオチン化された分子を標的細胞に運ぶために使用することができる。
【0038】
発明の方法は、ストレプトアビジン−プロテインA融合蛋白質;細胞表面蛋白質に特異的な抗体、抗体による結合の後にエンドサイトーシスを経る:及びいくつかの標的物質、例えばビオチン化多剤耐性(mdr)遺伝子産物、プロドラッグ、毒素又は核酸の間に複合体を形成し;ビオチン結合部位に結合しない毒素から複合体を単離し;そして標的細胞を複合体に暴露することにより標的物質が細胞に入る工程に関する。
【0039】
本発明の一つの側面は、2つの独立の生物学上の認識特異性を有する組換えストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質である。本発明の別の側面は、エシェリヒアコリにおいてストレプトアビジンを発現してストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質の発現を許容するクローン化されたストレプトアビジン遺伝子のための発現系である。本発明の別の側面は、プラスミドpRIT11中にコードされたプロテインA遺伝子をストレプトアビジン含有キメラ蛋白質pTSA−18Fのための発現ベクターに挿入することにより、ストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質のための発現ベクターpTSAPA−2の構築である。本発明の別の側面は、pTSAPA−2によりコードされたストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質のアミノ酸組成である。本発明の別の側面は、T7発現系を用いたストレプトアビジンとプロテインAとの遺伝子融合物の発現である。本発明のまた別の側面は、ストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質の精製方法である。本発明の別の側面は、抗体含有ストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質と様々な生物学上の材料とのコンジュゲーションの方法である。本発明のまた別の側面は、抗体含有ストレプトアビジン−プロテインAキメラ蛋白質の、ビオチンを含むと様々な生物学上の材料への取り込みである。本発明のまたさらに別の側面は、抗体材料を組織に導入し、抗体を組織から取り出すか又は組織を抗体で標識する方法である。
【0040】
いくつかの態様において、上記テトラマーは、2、3また4つの異なるCDR−ベースのペプチド模倣物を有する。いくつかの態様において、当該テトラマーの各モノマーは、異なるCDR−ベースのペプチド模倣物を有する。いくつかの態様において、当該テトラマーは、2つの異なるCDR−ベースペプチド模倣物を含む。
【0041】
CDR−ベースのペプチド模倣物は、好ましくは、ヒト化された配列を含む。
実施例
序論
AHNPは、抗−HER2 rhumAb 4D5のCDR−H3ループの構造に由来するペプチド模倣物である。ストレプトアビジンに融合されたAHNPをコードするキメラDNA構築物をエシェリヒアコリにおいて発現させて、組換え融合蛋白質(ASA)として精製した。ストレプトアビジンと同様に、精製された融合蛋白質は、テトラマー構造を形成して、ビオチンに結合した。さらに、融合蛋白質はHer2に結合して、Her2過剰発現細胞の増殖並びにHer2形質転換細胞により誘導された腫瘍の成長を阻害した。これらのデータは、この融合蛋白質、ASAが、AHNPペプチドとストレプトアビジンの両方からの生物物理的特徴を受け継ぎながら、Her2/neu−関連腫瘍の診断及び治療において抗体−代理分子として使用可能であることを示唆する。さらに、これらの研究は、単価のペプチド模倣物が組織化されたオリゴマー化によりより機能的になり得る一般原理を確立した。
【0042】
Her2/neu(Neu,c−Erb2)は、表皮成長因子受容体(EGFR)のメンバー又はチロシンキナーゼ受容体のHERファミリーであって、HER1(EGFR,c−erbB1),HER3(c−erbB3),及びHER4(c−erbB4)も含む。Her2/neuは、多くの乳癌及び卵巣癌、肺腫瘍並びに膵臓の腫瘍の表面上で発現される。Her2/neuが悪性腫瘍の表現型を媒介することにおいて支配的な役割を担うことを、広範囲の研究が示した。目的とされた治療法の開発が、her2/neuに対する抗体の開発とともに開始した。抗−HER2抗体の「trastuzumab」(Herceptin;Genentech,サンフランシスコ)が、Her2を過剰発現する進行性乳癌の患者においていくらかの効果を示し、そしてFDAにより乳癌を治療することを是認された。当該抗体は、Her2系の構成的成長シグナリング特性をアンタゴナイズし、免疫細胞が攻撃することに協力し、そして腫瘍標的を殺し、そして化学治療誘導細胞障害性を増大させることが示された。
【0043】
腫瘍の治療のための完全長の抗体の使用に対していくつかの重要な制限が存在する。例えば、市販品のための高出費及び腫瘍細胞への限定された透過性が重要な障害である。これらの問題を克服するために、一つの解決は、小さな抗体に由来するペプチドを使用することである。最近、HER2結合ペプチド模倣物(BiPと短縮される)AHNP(配列番号:1 FCDGFYACYMDV)がデザインされた。AHNPは、抗−HER2 rhumAb 4D5のCDR−H3ループの構造に由来し、そしてインビボ及びインビトロにおいて、モノクローナル抗体に比較して類似であるが遥かに低い親和性にてHER2チロシンキナーゼを無力化する活性を証明した。これらの特性は、類似の抗体−模倣ペプチド模倣物が腫瘍治療のための薬剤として機能する可能性を示唆する。
【0044】
当該AHNPペプチドは、極めて高い親和性(Kd〜10−15M)にてビオチンに結合するストレプトマイセスアビジンにより生産されるテトラマー蛋白質であるストレプトアビジンに組換えにより融合された。そうすることにより、Her2−結合マルチマーBiPが創製されて、ASAと命名された。ストレプトアビジン−ビオチン系は、相互作用の強度及び蛋白質並びにDNA/RNAの両方のビオチン化の容易性のために多くの応用において適用されてきた。ASAはHer2を結合する能力及びインビトロ並びにインビボにおいてHer2形質転換された細胞の増殖を抑圧する能力を所有する。これらの研究は、多価である分子のように抗体の新規な形成を創製して、関連するCDRが使い捨てられた際にスキャフォールドの構造を創製する原理として作用する。
実験プロトコル
細胞系
T6−17及びNR6細胞を、10%熱不活性化されたウシ胎児血清、L−グルタミン(2mM),ペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を追加されたDMEM培地中で、37℃において、加湿した5%CO2雰囲気にて生育させた。
プラスミドの構築
ストレプトアビジンとAHNP−融合蛋白質をそれぞれT7プロモーター及びlacIQの制御下で発現させるために、2つのプラスミド、pKMSHとpKMASHを構築した。以下のプライマーをストレプトアビジンのクローン化又は融合に使用した:
プライマー19 配列番号:2
【0045】
【化1】

【0046】
及び
プライマー3−2dch 配列番号:3
【0047】
【化2】

【0048】

をAHNP融合蛋白質ASAのために、
プライマー1 配列番号:4
【0049】
【化3】

【0050】
、及び
プライマー2 配列番号:5
【0051】
【化4】

【0052】
及び
プライマー3−2dch 配列番号:3。
増幅されたDNAsをpCR2.1ベクターに対してTAクローニングキット(インビトロジェン)を用いて連結し、NdeIとHindIIIにより消化し、次に、それぞれpTE21(a)+(インビトロジェン)の同じ制限部位に挿入した。
融合蛋白質の生産と環状化及び精製
pKMSH又はpKMASHの何れかを有するエシェリヒアコリBL21 Origami LysS(Novergen)を、50μg/mlのアンピシリンと共に25℃において生育させた。600nmにおけるODが0.4に達したら、0.5mMのイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によりストレプトアビジンとASAを誘導することにより、発現させ、そして37℃において2.5時間培養した。これらの蛋白質は不溶性であり、封入体の中に存在した。細胞を音波処理した後に、沈殿物(封入体フラクション)を10,000Xgにおける30分間の遠心分離により得て、次に、沈殿物を6Mグアニジン−HCl及び1mMのDTTを10mg/mlにて含む100nMのTris−HCl(pH7.5)により可溶化した。上清を10,000Xgにて30分間の遠心分離により得て、次に、1mMの還元型グルタチオン及び0.1mM酸化型グルタチオンを含む100mMのTris−HCl(pH7.5)の20倍の容量に対して希釈した。希釈後に、上清を10,000Xgにおける30分間の遠心分離により得て、次に、45分間4℃において100mMのTris−Cl(pH7.5)及び300mMのNaClを含むバッファーAにより平衡化されていた1mlのTalon樹脂(CLONTECH)と共にインキュベートした。当該樹脂をカラムに詰め、そして20mlのバッファーAにより洗浄し、次に、30mMイミダゾールを追加されたバッファーA10mlにより洗浄した。ストレプトアビジン又はASAを、250mMのイミダゾールを含むバッファーAにより溶出した。当該フラクションをPBSに対して透析した。あるいは、不溶性融合蛋白質も、8M尿素により可溶化して、Ni−NTAアガロースカラム(Quiagen)により精製し、そして透析バッファー中での尿素の段階的還元によりリフォールドさせた。
AMSによる蛋白質のアルキル化によるジスルフィド結合形成の測定
ASAのジスルフィド結合形成を測定した。スルフィドリル−特異性試薬4−アセタミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルフォン酸(AMS;モリキュラープローブ社)を用いてサンプルのアルキル化を実施した。誘導後に、個別培養系(single culture)の4つの100μlアリコート又は2μgの精製蛋白質を含む100μlのアリコートを調製した。ジチオスレイトール(DTT)をこれらのアリコートのうちの2つに100mM最終濃度にて加え(DTT−処理された対照サンプル)、10分間100℃においてインキュベートした。4つ全てのアリコートを次にトリクロロ酢酸(TCA,10%W/V)を用いて10分間で4℃において沈殿させた。沈殿した蛋白質を10,000Xgにて15分間の遠心分離により回収し、そして次に、氷冷アセトン250μlにより1回洗浄した。次に、10,000Xgにて15分間の遠心分離により沈殿物を得て、空気乾燥し、それらのうちの2つの前にDTT処理された方を、150mMのTris−Cl(pH7.5),2%のSDS(W/V)及び15mMのAMSを含む20μlのアルキル化カクテルに懸濁した。他方の2つの沈殿物を、AMSを含まないアルキル化カクテル20μlに懸濁した。室温において1時間のインキュベーション後に、2−メルカプトエタノールを欠く20μlのSDS−PAGEサンプルバッファー(2X)を全てのサンプルに加え、次にSDS−PAGEにより分析して、抗ストレプトアビジン抗体コンジュゲートHRP(Zymed Laboratories)によりイムノブロットした。
MTTアッセイ
MTTアッセイは細胞成長を測定するための修飾された方法として使用されてきた。T6−17細胞又はNR6細胞を、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレートをコートした96ウエルプレートに植えた(50μl/ウエル、800細胞/ウエル又は1200細胞/ウエル)。次に、ストレプトアビジン又はASA又はAHNPペプチドを(50μl/ウエル、0.69μM又は6.9μM)、37℃において、加湿した5%CO2雰囲気にて48時間インキュベートした。全部で25μlのMTT溶液(PBS中5mg/ml)を各ウエルに加え、そして37℃において2時間のインキュベーション後に、100μlの抽出バッファー(20% w/v SDS,50% N,N−ジメチルフォルムアミド、pH4.7)を加えた。37℃における一晩のインキュベーションの後に、5700nmにおける光学密度を、ELISAリーダーを用いて測定した。
エンザイムリンクドイムノソルベントアッセイ(ELISA)
ASAのビオチン及びHer2への結合を、修飾されたELISAアッセイにより測定した。ELISAは室温(RT)又は4℃において実施した。精製されたストレプトアビジン又はASA(0−1.1μg/ウエル)をビオチンコートされたELISAプレート(Pierce)上に1時間4℃においてPBS中で固定化した。過剰な蛋白質は洗い流し、次に、PBS中のHer2のエクトドメインとヒトIgG(Xcyte Therapeutic,シアトル、WA)(50ng/ウエル)のFcから構成される精製されたHer2−ヒトFc融合蛋白質を各ウエルに加え、そして4℃においてインキュベートした。3時間インキュベーション後に、プレートを6回0.1%Tween20を含むPBSにより洗浄し(PBS−T;150μl/ウエル)そして抗−Her2抗体をPBS中において加えた(1:500希釈;50μl/ウエル)。さらに1時間インキュベーション後に、プレートをPBSにより洗浄(200μl/ウエル)し、そして抗−マウスIgG抗体コンジュゲートHRPをPBS中において加えた(1:5000希釈;50マウスl/ウエル)。最後に、プレートをPBSにより6回洗浄(200μl/ウエル)し、そして結合した抗−マウスIgG抗体−HRPを、3,3’,5,5’−テトラメチルベンゼン(1タブレット/10ml溶液;シグマ)をリン酸−クエン酸バッファー(103mMリン酸水素二ナトリウム、24mMクエン酸、pH5.0;シグマ)中に含む基質溶液(100μl/ウエル)を用いて発色させた。反応を暗黒にて2分間室温において進行させ、そして2MのHSO(50μl/ウエル)により停止させた。上記プレートのA450nm値をELISAリーダーを用いて測定した。結合したストレプトアビジンを同じ方法により、PBS中の抗−ストレプトアビジン−HRP(1:500希釈;50μl/ウエル)を用いて検出した。
マウス
NCR同型接合無胸腺(ヌード)マウス(6週〜8週齢)をナショナルキャンサーインスティチュートから購入した。腫瘍を誘導するため、10の形質転換されたT6−17細胞を100μlのPBSに懸濁して、各動物のわき腹(flank)に皮下注射した。動物を、ペンシルバニア大学のインスティチューショナルアニマルケアアンドユースコミッティのガイドライン(IACUC)に従って維持した。腫瘍の体積を式:*長さ*幅*高さ/6により計算した。
結果と考察
AHNP融合蛋白質ASAのデザイン
ストレプトアビジンのコア配列をコードする配列をpET21(a)+のNdeI及びHindIII制限部位に挿入することにより、プラスミドpKMSHを構築した(図1)。pKMSHを次にAHNP−ストレプトアビジン融合蛋白質の発現ベクターの構築のためのプラットフォームとして用いた。融合蛋白質ASAは。4つの個別のドメイン/ユニット:1)Her2に結合するAHNPペプチド;2)AHNPペプチドを抗原に暴露することを補助するかもしれない柔軟性11アミノ酸リンカー(配列番号:6 GGGGSRSNSSS);3)テトラマーを形成してビオチンに結合することができるストレプトアビジンコア;及び4)4アミノ酸リンカー(配列番号:7 NSSS)と蛋白質の精製を促進するための上記融合物のC末端に配置されたHis−タグ部分からなる。この融合蛋白質発現ベクターを構築するために、AHNPとストレプトアビジンをコードする2つの一本鎖オリゴヌクレオチドをプライマーとして作成して、次にPCRをpET21(a)+のNdeI及びHindIII制限部位に挿入した(pKMASH;図1)。将来のAHNP配列の置換の便宜のために、AHNPのN末端でリンカーの内側に2つの制限部位(SalIとBglII)を設計した。
【0053】
ストレプトアビジンのN末端を蛋白質の表面に暴露する。即ち、AHNP部分はテトラマーの表面上にとどまらせるべきであり、そして抗原(Her2蛋白質)に接近可能であるべきである。ストレプトアビジンは内部にシステインを有さないため、AHNPを制約するためにデザインされるジスルフィド結合は破壊されるべきでない。ストレプトアビジンのこれら理想的な特性は、抗体を模倣する機能性ペプチド融合蛋白質をデザインすることを容易にするかもしれない。
エシェリヒアコリ内のASAの発現と精製
ASAとSAのペリプラズム発現を試みたが、これらの蛋白質はペリプラズムフラクションにおいてさえも不溶性の封入体を形成して、結果物は極めて低収量であった。あるいは、エシェリヒアコリBL21株(origami pLysS)をpKMSH又はpKMASHにより形質転換することにより、サイトプラズム内で組換え蛋白質を発現させた。全細菌細胞溶解物のSDS−PAGE分析によれば、蛋白質は効率よく発現された(レーン2;図2、パネルA)。SAは可溶性蛋白質として発現されたが、ASAは不溶性であり、封入体を形成した(レーン4;図2、パネルA)。不溶性ASAフラクションを細胞溶解物から単離し、そして如何なるジスルフィド結合もスルフィドリル基に還元される条件下でGdn−HCl中に溶解した。結果の溶液を20倍の容量のリフォールディング溶液にて希釈することにより、発現された蛋白質がリフォールドしてジスルフィド結合を正確に形成することを許容させた。リフォールドされた蛋白質は酸化条件下でCO2+樹脂により精製したが、AHNPペプチドは酸化された環状形態であるべきである。この精製手法において、蛋白質の収量は極めて低かった(1mg/10L培養された細胞)が、なぜなら、全蛋白質のほとんどがリフォールド工程の間に沈殿したからであった。ストレプトアビジン融合蛋白質のリフォールド工程における高濃度の蛋白質の使用は分子間ジスルフィド結合の形成を引き起こして沈殿を導くとの報告があった。即ち、リフォールド工程における低濃度の蛋白質の使用は最終収量を改善するために助けとなるかもしれない。精製後、ストレプトアビジンとASAの両者のSDS−PAGEは、蛋白質をSDS存在下で100℃にて加熱したときに、約16kDaの単一バンドを示した(レーン1、3;図2、パネルB)。これらの条件下では、ストレプトアビジンが2つのサブユニットに解離する。ASAはストレプトアビジンよりも高い位置に観察されたが、追加のAHNP,Hisタグ及びリンカー配列のためである。マイルドな条件(55℃)下では、ストレプトアビジンとASAがSDS−PAGE上で単一のバンドとして約64kDaの位置に出現したことから(レーン2、4;図2、パネルB)、これらの蛋白質がテトラマーを形成することを示す。
【0054】
ASAにおいては、AHNP配列の2つのシステインの間にジスルフィド結合がデザインされた。ジスルフィド結合の形成は、生物活性を得るための正確な蛋白質のリフォールドのために重要である。抗体に由来する蛋白質においては、ジスルフィド結合が抗原への結合のために必要な構造フレームを維持するために必須の役割を担う。ジスルフィド結合の形成は、模倣物ペプチドを制約するのに必須である。融合蛋白質が必要なジスルフィド結合を形成するか否かを研究するため、スルフィドリル−アルキル化試薬4−アセタミド−4’−マレイミジラチルベン−2,2’−ジスルフォン酸(AMS,Mr約500Da)を選択した。AMSは還元された蛋白質において遊離のチオール基に共有結合することから、それらの分子質量を増加させて、如何なるそれ以上の酸化も阻止する。AMSインキュベーション後に、与えられたポリペプチドの還元形態と酸化形態を非還元SDS−PAGEにより分離することができ、還元形態はより高分子量の位置に移動する。図3に示されるとおり、細菌中で発現された未加工の(raw)ASAは、DTT処理とは別に、還元されないしAMSには結合しなかった。これは予想外であったが、なぜなら、エシェリヒアコリの還元環境は良く知られているからである。しかしながら、AMSはジチオスレイトール(DTT)により前処理されたときのみ、精製されたASA融合蛋白質に結合した。データは、上記精製手法が蛋白質中でジチオスレイトール結合形成を容易にすることが可能であったことを示唆する。ストレプトアビジンはシステインを持たないので、AMSはSDS−PAGE上のストレプトアビジンの移動度に影響しなかった(図3、パネルC)。
ASAの結合分析
ASA融合蛋白質がビオチン並びにHer2に結合するか否かを試験した。ビオチンを結合するそれらの能力を試験するために、ストレプトアビジンとASAをビオチンコートされたELISAプレートウエルに添加し、そしてHRP−コンジュゲートされた抗−ストレプトアビジン抗体をELISAにおける検出用抗体として用いた。ストレプトアビジンとASAは共に用量依存性様式にてビオチンに結合した(図4、パネルA)。ASAとストレプトアビジンを次にビオチンコートされたELISAプレート上にコートされて、Her−Fcとインキュベートされた。マウス抗−Her2抗体(4D5)とHRP−コンジュゲート抗−マウスIgG抗体により、結合したHer2−Fcを検出した。ASAは用量依存性様式にてHer2−Fc融合物に結合できたが、ストレプトアビジンは高濃度においてもHer2−ひとFc融合蛋白質に結合しなかった(図4、パネルB)。これらのデータは、ASAがHer2とビオチンの両者に対しての結合活性を保持していることを示唆した。
ASAの生物活性
次に、AHNP融合ASAがミトコンドリア生存性に関してのMTTアッセイにより判定されるようにHer2/neu−形質転換細胞の増殖を阻害できるか否かを分析した。Her2受容体を過剰発現するT6−17細胞系において、2つの異なる濃度におけるASA融合蛋白質の処理は、用量依存性様式において細胞増殖の20−50%阻害をもたらした(図5、パネルA)。阻害作用は対照のNR6細胞系において観察されなかった(図5、パネルB)。22アミノ酸リンカーを伴う別のAHNP融合蛋白質は、ストレプトアビジン対照に匹敵する様式にて、これらの2つの細胞系に対してほとんど何の成長阻害効果も示さなかった。これらのデータは、ASA融合蛋白質がHer2過剰発現細胞の増殖を特異的に阻害し、そしてその活性がリンカーのサイズにより影響されるかもしれないことを示唆する。しかしながら、AHNPペプチドよりもモル濃度において約10倍多いASAがインビトロにおいて50%の細胞成長阻害を達成するのに必要であった。
インビボ活性
ヒトHer2/neu(ref)の過剰発現により、T6−17細胞を形質転換した。ヌードマウスに対して皮下において導入した後に、触知できる腫瘍が約48−72時間後に出現した。一つの実験においては、動物をストレプトアビジン又はASAの何れかで処置した(11.25mg/kg/週)。処置は0日目から開始し、そして各週の3回の皮下注射を動物に供給した。ASAにより処置は7日目までに触知可能な腫瘍の出現を阻止し、14日目において腫瘍サイズを62%減少させた(図6パネルA)。第2の実験においては異なる投与経路によっても処置をマウスに与え、触知可能な腫瘍が出現してから2日後に腹腔内処置を開始した(約2立方mm)(図6、パネルB)。ASAを15mg/kg/週の用量にて与え、3回の注射に分割した。再び、14日目に、我々は、媒質対照群に比して、ASA群において腫瘍サイズの約47.6%の減少を観察した。おもしろいことに、ASAのビオチン結合形態が平行実験の腫瘍成長の阻害において効果の低下を示した(14日目に腫瘍サイズが28.8%減少)。予想外に、4D5scFvによる処置は10日後の腫瘍成長の顕著な抑圧を解明にしなかった。
考察:
抗体からのCDR領域を制約することにより抗体模倣物を創製するCDRのアプローチが以前に確立された。CDRペプチドは抗体よりも遥かに小さいが、抗体のように抗原に対する結合親和性と生物活性を保持する。しかしながら、ペプチドはインビボにおいて極めて短い半減期しか有さない(約2週間)し、循環系からの迅速な浄化(clearance)は薬剤としてのそれらの用途を制限する。
【0055】
低い親和性リガンドの結合を改善するための実用的なアプローチとして、マルチマー化が多数の研究者により追求された。ファージライブラリーからのHer2−結合ペプチドに関して、ペンタマースキャフォールドが以前に探索された。本発明によれば、機能性テトラマーペプチド融合蛋白質ASAがデザインされて本明細書に記載される。この蛋白質は、エシェリヒアコリ発現系から首尾よく合成されて精製された後に、Her2とビオチンの両方に結合して、Her2発現細胞の細胞増殖を阻害した。
【0056】
ストレプトアビジンはいくつかの理由によりAHNPのテトラマースキャフォールドとして選択された。第1に、ストレプトアビジン融合物は、他の機能性環状ペプチドに関して構築が成功している。第2に、ビオチンへの高い親和性にて、融合蛋白質がビオチン化治療剤(例えば、細胞毒素)又は標識試薬をHer2に発現により腫瘍細胞に運ぶことができる。そのような戦略は抗体−ストレプトアビジンコンジュゲート上で試験されてきたが、結果は抗体の大きなサイズのため変化する。さらに、当該融合物は、ビオチン−ストレプトアビジン系を利用するアッセイにおいて抗体を置換するためにも使用することができる。第3に、ストレプトアビジンのインビボ薬力学が患者においてさえもよく研究されている。ストレプトアビジン自体は約12時間の血清半減期、AHNPペプチドよりも改善された浄化を示した。
【0057】
AHNP−ストレプトアビジン融合構築物ASAは、組換え発現されてリフォールドされた後にテトラマーを形成し、Her2に関して高い親和性を示した(ASA:AHNP=35nM(モノマー):350nM)。ASAはインビトロにおいてAHNPペプチドに比べて低い増殖阻害活性しか示さなかったが、インビボにおいては腫瘍の成長を減少することにおいて約30倍過剰のAHNPに匹敵する活性に到達した。
【0058】
ASAのビオチン結合能力は、腫瘍を抑圧するようにそのインビボ活性に影響するらしい。必須ビタミンとして、ビオチンは、細胞の代謝、特に脂肪酸の合成と糖新生に必須のいくつかのカルボキシラーゼとデカルボキシラーゼ(例えば、ピルビン酸カルボキシラーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ等)のためのコエンザイムとして機能する。ビオチンがうろこ状の細胞カルシノーマを有する患者に対して投与されたとき、腫瘍の周囲又は中のビオチンの蓄積は、腫瘍に局在することも示唆されている。
【0059】
ASAは、ビオチンに結合させることによりビオチン要求性代謝を干渉して、それが利用されることからを封鎖する(sequester)。脂肪酸合成酵素はビオチンが関与する脂肪酸合成に必須の酵素であって、多くの種類の癌細胞において発現が上昇することが報告された(乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、及び前立腺癌)。ヒトの乳癌細胞においては、脂肪酸合成酵素の阻害剤が、脂肪酸合成阻害及びDNA合成阻害により進行する事象であるアポトーシスを誘導することが報告された。
【0060】
要約すると、機能性抗−Her2ペプチドをテトラマー化するための蛋白質工学のアプローチが記載される。ASAはビオチンに結合することができるから、ビオチン化された治療剤、例えば毒素又は重金属を運んで、そのインビボ活性を増強するかもしれない。この組換え融合蛋白質を治療に使用することに加えて、ASAは抗体を置き換える腫瘍イメージング試薬として使用してよい。もっとも成功した2段階腫瘍イメージング法においては、上記抗体を前標的工程において使用され得る前に最初にストレプトアビジンに連結しなければならない。ASAはストレプトアビジンを完全なビオチン結合活性を有し、そのような2工程系と完全に対等である。
配列番号:8 ASA
【0061】
【化5】

【0062】
配列番号:9 完全長ストレプトアビジン
【0063】
【化6】

【0064】
配列番号:1 AHNP
【0065】
【化7】

【0066】
配列番号:10 AHNPY
【0067】
【化8】

【0068】
配列番号:11 リンカー配列
【0069】
【化9】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、AHNP融合蛋白質(ASA)とストレプトアビジン(SA)発現ベクターの構築の例示を示す。
【図2】図2のパネルA及びBは、融合蛋白質ASAとストレプトアビジンの発現と精製のデータを示す。(パネルA)IPTGによるASA発現の誘導。矢印は、発現されたASAの位置を示す。レーン1、未誘導の細胞の全蛋白質(U);レーン2、誘導された細胞の全蛋白質(I);レーン3、誘導された細胞の可溶性フラクション(S);レーン4、誘導された細胞の不溶性フラクション(IS)。(パネルB)CO2+カラムにより精製されたASA及びストレプトアビジン。レーン1及び3、精製された蛋白質を5分間沸騰水中でSDS,DTT及び2MEの存在下で加熱した;レーン2及び4、サンプルを5分間55℃においてSDSとDTTの存在下で2MEなしで加熱した。レーン1及び2、ストレプトアビジン:レーン3及び4、ASA。
【図3】図3のパネルA、B及びCは、ASA融合蛋白質及びストレプトアビジン内でのジスルフィド結合形成を示すデータである。AMS−アルキル化を用いることによりジスルフィド結合がエシェリヒアコリBL21 LysEの細胞質内で生産されたASA中(パネルA)及びリフォールディング後(パネルB)に形成されたか否かを研究した。同じ方法を用いることによりリフォールドされたストレプトアビジンも研究した。アルキル化された形態とアルキル化されない形態を非還元SDS−PAGE中のそれらの異なる移動度により分離し、そして抗ストレプトアビジン抗体を用いて釣り上げるウエスタンブロットにより可視化した。
【図4】図4のパネルA及びBは、ビオチンとHer2−Fcの結合能力に関する組換え蛋白質のELISA分析のデータを示す。パネルA:ストレプトアビジン又はASAをビオチンコートされたプレート上に固定した。結合した蛋白質を抗−ストレプトアビジン抗体−HRPを用いて検出した。パネルB:ビオチンコートされたプレート上のストレプトアビジン又はASAの固定化の後に、Her2−ヒトFc融合物を各プレートに加え、そして結合した融合蛋白質を抗−Her2−抗体及び抗マウスIgG−HRPを用いて検出した。この実験で用いられたストレプトアビジン又はASA融合蛋白質の量は:ウエル1:0;2:0.11ng;3:1.1ng;4:11ng;5:110ng;6:1100ngであった。
【図5】図5のパネルA及びBは、ASAによる細胞増殖の阻害を示す。ASA処理、又はストレプトアビジンとペプチドAHNPによる処理のT6−17(Her2形質転換された細胞、パネルA)又はNR6(対照細胞、パネルB)に対する効果を示した。ポリ−HEMAプレート(T6−17に関して)又は標準の組織培養プレート(NR6に関して)上で実施された標準MTTアッセイにより、細胞増殖を測定した。
【図6】図6のパネルA及びBは、ASAによる腫瘍成長の阻害を示す。100万のT6−17細胞をヌードマウスに皮下注射することにより、腫瘍の成長を誘導した。パネルA.0日から開始したASAの処理。パネルB.腫瘍が触知できて2日後から処理を開始した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ又はそれより多いモノマーを含むマルチマーペプチド模倣物であって、上記モノマーは環状構造、柔軟性リンカー配列及びマルチマーモチーフを含む環外ペプチドを含む、マルチマーペプチド模倣物。
【請求項2】
マルチマーモチーフがテトラマーモチーフである、請求項1記載のマルチマーペプチド模倣物。
【請求項3】
マルチマーモチーフが、ストレプトアビジン、その断片、ビメニン、その断片、ロイシンジッパーモチーフ、ヒト血小板因子モチーフ、ヒトスーパーオキシドジスムターゼモチーフ、及びp53テトラマー化ドメインからなる群から選択される、請求項1記載のマルチマーペプチド模倣物。
【請求項4】
マルチマーペプチド模倣物がストレプトアビジン又はその断片であるマルチマーモチーフを含み、そしてマルチマーモチーフが、ビオチン化された薬剤、ビオチン化された毒素、ビオチン化された核酸分子、ビオチン化された放射性核種又はビオチン化された検出可能化合物に結合している、請求項3記載のマルチマーペプチド模倣物。
【請求項5】
柔軟性リンカーが4−20のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のペプチド模倣物。
【請求項6】
柔軟性リンカーが5−12のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のペプチド模倣物。
【請求項7】
柔軟性リンカーが10のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のペプチド模倣物。
【請求項8】
マルチマーペプチド模倣物が、Her2,EGFR,VEGF,CEA,PSA,HER3,HER4,CD−20,TNF−α,IL−1,TNFR,FAS,RANKL/TRANCE,OPG,CD40,CD28,CD3,CD4,IL−4及びIL−13に対して結合する、請求項1記載のペプチド模倣物。
【請求項9】
環状構造、柔軟性リンカー配列及びマルチマーモチーフを含む環外ペプチドを含むモノマーをコードする核酸分子。
【請求項10】
請求項9記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項11】
請求項10記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
薬剤、毒素、核酸分子、放射性核種又は検出可能な化合物を細胞に送達する方法であって、細胞を、請求項4記載のマルチマーペプチド模倣物に接触させる工程を含むが、その際、上記細胞がマルチマー蛋白質のモノマーの環外ペプチド内に存在するアミノ酸配列に結合する蛋白質を発現する、方法。
【請求項13】
マルチマーペプチド模倣物を生産するための、環状構造、柔軟性リンカー配列及びマルチマー化モチーフを含む環外ペプチドを含むモノマーの使用。
【請求項14】
細胞結合ドメイン及びビオチン結合ストレプトアビジンコア配列を有する精製された組換え蛋白質であって、但し、細胞結合ドメインは異種ポリペプチドの活性ドメインを含み、そして細胞結合ドメインは柔軟性リンカーによりストレプトアビジン分子のN末端に融合される、組換え蛋白質。
【請求項15】
異種ポリペプチドが、抗体、細胞表面受容体のリガンド、細胞接着配列、及び抗原からなる群から選択される、請求項14記載の蛋白質。
【請求項16】
異種ポリペプチドが、Her2,EGFR,VEGF,CEA,PSA,HER3,HER4,CD−20,TNF−α,IL−1,TNFR,FAS,RANKL/TRANCE,OPG,CD40,CD28,CD3,CD4,IL−4及びIL−13に対して結合する、請求項14記載の蛋白質。
【請求項17】
配列番号:9のアミノ酸残基38及び163を含むストレプトアビジン野生型ポリペプチドに細胞結合ドメインが融合された、請求項14記載の蛋白質。
【請求項18】
配列番号:9のアミノ酸残基41及び163を含むストレプトアビジン野生型ポリペプチドに細胞結合ドメインが融合された、請求項14記載の蛋白質。
【請求項19】
細胞結合ドメインが配列番号:1を含む、請求項14記載の蛋白質。
【請求項20】
細胞結合ドメインが配列番号:10を含む、請求項14記載の蛋白質。
【請求項21】
細胞結合ドメインが配列番号:11を含むリンカー配列を含むリンカーによりストレプトアビジン又はその断片に接続された、請求項14記載の蛋白質。
【請求項22】
ストレプトアビジン又はその断片が、ビオチン化された薬剤、ビオチン化された毒素、ビオチン化された核酸分子、ビオチン化された放射性核種又はビオチン化された検出可能化合物に結合している、請求項14記載の蛋白質。
【請求項23】
請求項14記載の蛋白質を含むテトラマー蛋白質複合体。
【請求項24】
薬剤、毒素、核酸分子、放射性核種又は検出可能な化合物を細胞に送達する方法であって、細胞を、請求項23記載の蛋白質を含むテトラマー蛋白質に接触させる工程を含むが、その際、上記細胞がマルチマー蛋白質のモノマーの環外ペプチド内に存在するアミノ酸配列に結合する蛋白質を発現する、方法。
【請求項25】
テトラマー蛋白質を生産するための請求項14記載の蛋白質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−528725(P2007−528725A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554264(P2006−554264)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/005383
【国際公開番号】WO2005/081898
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】