説明

結合構造および掘削工具

【課題】保持部と、該保持部に対して着脱可能な接続部と、を備える結合構造において、その着脱作業を容易にする。
【解決手段】リテーナ25とリテーナ25を配設した固定溝23との間の間隙部に、リテーナ25の弾性変形に追従可能な弾性体24を設け、間隙部に介在物、異物などが侵入してリテーナ25が縮径できなくなるようなことがないようにし、結合構造(保持部4、接続部21)における着脱作業を容易にする。また、弾性体24をリテーナ25の弾性変形に追従可能なものとし、リテーナ25の状態に因らず、常にリテーナ25と固定溝23との間に介在物、異物などが侵入することを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部と、該保持部に対して着脱可能な接続部と、を備える結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二つの部材の接続部における結合構造として、一方の部材に係合部を備える嵌合孔を形成し、他方の部材に、嵌合孔に挿入可能な接続軸を設けるとともに、該接続軸に抜け止め手段として係合部に係合可能な突部を有する弾性変形可能なリテーナを設け、一方の部材に対して他方の部材を着脱可能とした結合構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この結合構造においては、リテーナの弾性力によってその外周に設けられた突部が係合部に係合し、固定されるようになっており、取り外す際には、嵌合穴に挿入された部材を後方から押圧することで、嵌合孔に沿うようにリテーナを縮径させ、取り外すことができるように構成されている。
【特許文献1】特開2004−278253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、弾性変形可能なリテーナと接続軸の間に、介在物、異物などが侵入すると、リテーナが縮径する際の障害となり、取り外しが困難となったり、作業の際に介在物、異物などを排除する作業が必要となったりする虞がある。
特に、特許文献1に示されている掘削爪は、地盤を掘削するものであり、リテーナと接続軸との間に土粒子や砂などが進入する可能性が高く、着脱作業が困難になる虞がある。
【0005】
本発明の課題は、保持部と、該保持部に対して着脱可能な接続部と、を備える結合構造において、その着脱作業を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、保持部と、該保持部に対して着脱可能な接続部と、を備える結合構造であって、
前記接続部は、前記保持部に対して挿入可能な接続軸と、
前記接続軸の周囲に周方向に沿って環状に形成された固定溝と、
前記固定溝の周囲に間隙部をおいて設けられ、径方向に弾性変形可能なリテーナと、
前記リテーナの外周面に径方向に突出するように形成され、前記保持部の内部に形成された係合部に係合可能な突部とを備え、
前記リテーナが縮径することで、前記突部が前記係合部に係合しない状態になり、前記保持部に対し着脱可能となるように構成され、
前記間隙部に、前記リテーナの弾性変形に追従可能な弾性体を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、リテーナとリテーナを配設した固定溝との間の間隙部に、リテーナの弾性変形に追従可能な弾性体を設けたので、間隙部に介在物、異物などが侵入してリテーナが縮径できなくなるようなことがなく、結合構造における着脱作業が容易になる。
また、弾性体はリテーナの弾性変形に追従可能であるので、リテーナの状態に因らず、常にリテーナと固定溝との間に介在物、異物などが侵入することを防ぐことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の結合構造であって、前記弾性体は、環状または帯状の弾性部材であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、製作時において、環状または帯状の弾性部材を固定溝に嵌め込むだけでよいので、製作の手間やコストを削減できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の結合構造であって、前記弾性体は、流動体から弾性を有する固体に変化する充填材を前記間隙部に充填して形成したものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、リテーナを取り付けた後でも容易に弾性体を配設できる。また、例えば、介在物、異物が侵入する虞のある場所で用いる結合構造のみに後から弾性体を配設することもできる。また、間隙部が複雑な形状であっても、容易かつ確実に弾性体を配設できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の結合構造を備える掘削工具であって、
地盤を掘削する掘削爪と、該掘削爪を保持する保持具とを備え、
前記掘削爪に前記接続部を形成するとともに、前記保持具に前記保持部を形成し、前記保持具が前記掘削爪を着脱可能に保持することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、地盤を掘削する掘削爪のように、土粒子や砂などの介在物、異物が多量に発生する環境で用いる場合において、リテーナとリテーナを配設した固定溝との間の間隙部に掘削時における土粒子や砂などが侵入してリテーナが縮径できなくなるようなことがなく、掘削爪の交換作業が容易になる。
また、弾性体はリテーナの弾性変形に追従可能であるので、リテーナの状態に因らず、常にリテーナと固定溝との間に土粒子や砂などが侵入することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リテーナとリテーナを配設した固定溝との間の間隙部に、リテーナの弾性変形に追従可能な弾性体を設けたので、間隙部に介在物、異物などが侵入してリテーナが縮径できなくなるようなことがなく、結合構造における着脱作業が容易になる。
また、弾性体はリテーナの弾性変形に追従可能であるので、リテーナの状態に因らず、常にリテーナと固定溝との間に介在物、異物などが侵入することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る結合構造は、部材どうしの結合部分に設けられるものであって、二つの部材を容易に着脱できるようにするものである。
ここではその一例として、本発明に係る結合構造を、図1に示すような地盤を掘削する掘削工具1における着脱可能な掘削爪2の結合部分に適用した例について説明する。
【0016】
掘削工具1は、地盤を掘削する掘削爪2と、この掘削爪2を保持する保持具3とを有し、掘削装置のオーガ(図示略)の先端部に接続され、オーガの回転に伴い回転するものである。図1に示すように、保持具3は、オーガの先端部に接続する際の接続部分となる軸部31と、軸部31の下部に形成された羽根形成部32と、羽根形成部32の外周に設けられた三枚のプロペラ状の羽根33,33,33と、羽根形成部32の下部に形成された先端爪34とを備えている。
【0017】
羽根33の下面には、羽根33の長さ方向に沿って3つの保持部4,4,4がそれぞれ形成されている。この保持部4は、結合構造の一部をなすものであって、図4に示すように、後述する掘削爪2の接続部21(接続軸22)を挿入可能な嵌合孔41が形成されており、掘削爪2を着脱自在に保持するものである。
【0018】
嵌合孔41は、羽根33の下面に開口部44を有し、この開口部44から挿入した掘削爪2の接続部21をちょうど収容できるように形成されている。この嵌合孔41の延在方向における略中央には、周方向に沿った環状の溝である係合部42が形成され、この部分が他の部分より拡径している。この係合部42には、保持部4に掘削爪2を取り付けた際に、掘削爪2の接続部21に設けられたリテーナ25の突部26が係合するようになっており、これによって保持部4に掘削爪2が保持されるようになっている。また、嵌合孔41における開口部44から係合部42までの内壁は、ここに配される接続部21の形状に合わせて多角形状に形成されており、接続部21とちょうど嵌合して嵌合孔41内で接続部21が回転しないように保持できるようになっている。
【0019】
また、嵌合孔41の上側には、嵌合孔41よりも小さい内径を有し、嵌合孔41に連通するとともに羽根33の上面に開口する押圧部材挿入孔43が形成されている。この押圧部材挿入孔43は、掘削爪2を保持部4から取り外す際に使用するものであって、羽根33の上面側の開口から適当な押圧部材を挿入し、接続部21の上端部を下方向へ押圧できるようになっている。
【0020】
このような保持部4に着脱可能に取り付けられる掘削爪2は、図2に示すように、結合構造の一部をなす保持部4に挿入される結合構造の他部をなす接続部21と、接続部21の先端に設けられ地盤に対して接触する掘削部27とを備えている。
【0021】
接続部21は棒状の接続軸22を備え、この接続軸22の周囲には、延在方向における所定幅にわたって周方向に沿った環状の固定溝23が形成されている。そして、この固定溝23に沿って環状に弾性体24が配され、弾性体24を挟んで固定溝23内にリテーナ25が配されている。
【0022】
リテーナ25は、例えば、金属のような弾性のある材質からなり、一部分が不連続となった環状、すなわち断面C字状に形成されている。このリテーナ25は、外部から力を加えることにより縮径させることが可能であるとともに、外部から力を加えない状態にすれば、自身の弾性力によってもとに戻るように拡径するようになっている。また、リテーナ25の外周面には、径方向に突出する突部26が、周方向に沿って連続して形成されており、保持部4の嵌合孔41に形成された係合部42に係合できるようになっている。なお、この突部26は、角がなく円弧状に形成されており、後述するように、着脱の際において嵌合孔41の形状に沿って案内されることで、リテーナ25が縮径するようになっている。
【0023】
図3に示すように、リテーナ25に外部から力が加わっていない状態における、突部26を除くリテーナ25の外径は、接続軸22の外径と略同じとされており、リテーナ25の外周面と接続軸22の外周面が同一面をなすようになっているとともに、突部26が接続軸22の外周面よりも外側に突出した状態となっている。また、リテーナ25に外部から力が加わっていない状態におけるリテーナ25の内径は、接続軸22における固定溝23が形成された部分の外径よりも大きく、固定溝23とリテーナ25の間には、その径の差の分だけ間隙部が形成されることとなり、この間隙部に弾性体24が配されている。
【0024】
弾性体24は、例えば、ゴムやウレタンフォームなどの弾性のある材質からなり、リテーナ25の裏面と固定溝23の表面に密着するように、固定溝23に沿って環状に配されている。この弾性体24は、外部から力が加わることによって弾性変形するリテーナ25に追従して変形可能とされていて、例えば、図4に示すように、リテーナ25が縮径するのにあわせて収縮し、図3に示すようにリテーナ25が元に戻るように拡径するのにあわせて膨張するようになっている。すなわち、弾性体24は、リテーナ25の状態に因らず常にリテーナ25の裏面と固定溝23の表面に密着した状態となるようにされ、リテーナ25と固定溝23の間に土粒子や砂などの介在物、異物が侵入することを防ぐようになっている。
【0025】
なお、固定溝23の深さは、突部26を含むリテーナ25の厚みと、収縮した状態の弾性体24の厚みとを足した厚みよりも深いものとされ、リテーナ25が縮径することで、突部26が固定溝23内に収容されて接続軸22の外周面から突出しない状態となることができるようにされている。
【0026】
以上のような構成を有する掘削工具1における保持具3に対する掘削爪2の着脱、すなわち、保持部4と接続部21を備える結合構造における保持部4に対する接続部21の着脱について説明する。
【0027】
図2,3に示すように、接続部21を備える掘削爪2を保持部4から取り外した状態においては、リテーナ25に外部から力が加わっておらず、リテーナ25の突部26を除く外径は接続軸22の外径と略同じ径となっており、突部26が接続軸22の外周面よりも外側に突出した状態となっている。この状態で掘削爪2の接続部21の接続軸22を保持部4の嵌合孔41に挿入すると、リテーナ25の突部26が嵌合孔41の開口部44の周縁に当接する。
【0028】
リテーナ25の突部26は角がなく円弧状に形成されており、さらに接続軸22を嵌合孔41に押し込むことで、突部26が開口部44の周縁に案内され、リテーナ25に径方向に沿った中心方向への力が働いてリテーナ25が縮径する。このとき、リテーナ25の縮径に追従して弾性体24も収縮した状態となる。そして、リテーナ25が縮径し、突部26の先端部における外径が嵌合孔41の内径と略等しくなると、接続軸22の全体が嵌合孔41に挿入されるようになる。
【0029】
縮径して嵌合孔41内に挿入されたリテーナ25は、その弾性力によって径方向に沿った外側方向への付勢力を発生し、突部26を嵌合孔41の内壁に押し付けた状態となる。この状態でさらに掘削爪2を押し込み、図4に示すように、突部26が周方向に沿った環状の溝である係合部42に達すると、リテーナ25が拡径して突部26が係合部42に係合し、掘削爪2が保持部4に保持されるようになっている。このとき弾性体24もリテーナ25の拡径に追従して膨張する。なお、この係合部42の深さは、突部26がリテーナ25の外周面から突出する幅と略等しく、縮径していたリテーナ25が嵌合孔41への挿入前と同じように拡径することができるようになっている。
【0030】
リテーナ25の突部26が係合部42に係合する位置では、接続軸22の先端部がちょうど嵌合孔41の奥側の端部に当接した状態となるとともに、接続軸22より径の大きい掘削部27が嵌合孔41の開口部44が形成された羽根33の下面に接した状態となり、これ以上掘削爪2が挿入方向へ移動しないようになる。
【0031】
以上のように接続部21を保持部4に結合することで、図1に示すように掘削爪2が保持具3に取り付けられる。そして、掘削爪2が接続された掘削工具1を、軸部31をオーガの下端部に固定し、オーガを回転させることにより掘削工具1にその回転力を伝達させ、掘削工具1を所定の回転方向に沿って回転させる。これにより、掘削工具1が先端爪34及び複数の掘削爪2,…により地盤を掘削しつつ、削られた土砂を三枚の羽根33,33,33及びオーガ等により攪拌しながら下から上に持ち上げて地盤に縦穴が形成されることとなる。
【0032】
掘削爪2を保持具3から取り外す際、すなわち、接続部21を保持部4から取り外す際には、図4に示すように、羽根33の上面に開口した押圧部材挿入孔43に適当な押圧部材を挿入して接続軸22の先端部を下方向へ押圧する。これにより、突部26が係合部42の周縁に案内され、リテーナ25に径方向に沿った中心方向への力が働いてリテーナ25が縮径する。このとき、リテーナ25と固定溝23との間隙部には弾性体24が配されていることから、地盤の掘削に伴って発生する土粒子や砂が間隙部に侵入することがなく、土粒子や砂などが介在することによりリテーナ25の縮径が困難になることがない。
【0033】
そして、リテーナ25が縮径し、突部26の先端部における外径が嵌合孔41の内径と略等しくなって突部26が係合部42に係合しない状態となると、掘削爪2の接続部21が保持部4の嵌合孔41から抜けるようになる。また、嵌合孔41から抜けた接続部21のリテーナ25は、図2,3に示すようにもとの径に拡径し、この拡径に合わせて弾性体24も膨張する。
【0034】
以上のことから、保持具3に形成された保持部4と掘削爪2に形成された接続部21が、保持具3に掘削爪2を着脱可能に取り付けるための結合構造をなす。そして、以上のような結合構造によれば、リテーナ25と固定溝23との間の間隙部に介在物や異物が侵入することがなく着脱が容易になる。特に、掘削爪2のように地盤の掘削に伴う土粒子や砂などの介在物、異物が多量に発生する環境で用いる場合には効果的である。
【0035】
なお、以上の実施形態においては、本発明の結合構造を掘削爪2の着脱部分に用いるとしたがこれに限られるものではなく、着脱可能なピンなど、一般的に着脱可能に構成される二つの部材の結合構造として適用可能である。
【0036】
また、弾性体24の形状を環状としたが、例えば、帯状としても良い。
さらに、弾性体24は、予め環状や帯状に形成されたゴムやウレタンフォームのような弾性部材を取り付けるものとしても良いし、リテーナ25を固定溝23に配した後に、時間経過とともに流動体から弾力性のある固体に変化する充填材(例えば、コーキング材のようなもの)を充填することで形成しても良い。
【0037】
また、リテーナ25の外周面に形成した径方向に突出する突部26は、周方向に沿って連続したものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、周方向に沿って配された不連続な突起としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した一実施の形態の構成を示す掘削工具の側面図である。
【図2】掘削爪の斜視図である。
【図3】掘削爪の接続部を示す側面図である。
【図4】保持部と接続部の接続部分を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 掘削工具
2 掘削爪
3 保持具
4 保持部(結合構造)
21 接続部(結合構造)
22 接続軸
23 固定溝
24 弾性体
25 リテーナ
26 突部
42 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部と、該保持部に対して着脱可能な接続部と、を備える結合構造であって、
前記接続部は、前記保持部に対して挿入可能な接続軸と、
前記接続軸の周囲に周方向に沿って環状に形成された固定溝と、
前記固定溝の周囲に間隙部をおいて設けられ、径方向に弾性変形可能なリテーナと、
前記リテーナの外周面に径方向に突出するように形成され、前記保持部の内部に形成された係合部に係合可能な突部とを備え、
前記リテーナが縮径することで、前記突部が前記係合部に係合しない状態になり、前記保持部に対し着脱可能となるように構成され、
前記間隙部に、前記リテーナの弾性変形に追従可能な弾性体を設けたことを特徴とする結合構造。
【請求項2】
前記弾性体は、環状または帯状の弾性部材であることを特徴とする請求項1に記載の結合構造。
【請求項3】
前記弾性体は、流動体から弾性を有する固体に変化する充填材を前記間隙部に充填して形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の結合構造。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の結合構造を備える掘削工具であって、
地盤を掘削する掘削爪と、該掘削爪を保持する保持具とを備え、
前記掘削爪に前記接続部を形成するとともに、前記保持具に前記保持部を形成し、前記保持具が前記掘削爪を着脱可能に保持することを特徴とする掘削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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