説明

結晶ドメインを有するポリマー、非晶質ポリウレタン及びシラン化合物からの接着剤

2成分からの接着剤が記載され、ここで、第1の成分は少なくとも2種の異なるポリマーを含有し、そのうち少なくとも1種はカルボキシル基を有する。前記ポリマーの少なくとも1種は、結晶ドメインを形成することができるポリマー及びエチレンと酢酸ビニルからのコポリマーから選択されており、そして第2のポリマーは非晶質ポリウレタンであり、ここで、第1のポリマー対第2のポリマーの質量比は2:8〜8:2である。前記第2の成分は、カルボキシル基に対して反応性の少なくとも1種のシラン化合物を含有する。接着剤は、高い気候変動安定性を有する、自動車製造用のフィルム積層された成形部材を製造するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、2成分からの接着剤に関し、ここで、第1の成分は少なくとも2種の異なるポリマーを含有し、そのうち該ポリマーの少なくとも1種はカルボキシル基を有し、かつ、そのうち第1のポリマーは、結晶ドメインを形成することができるポリマー、エチレンと酢酸ビニルからのコポリマー及びそれらの混合物から選択されており、そして第2のポリマーは非晶質ポリウレタンであり、かつ、ここで、第2の成分は、カルボキシル基に対して反応性の少なくとも1種のシラン化合物を含有する。接着剤は、高い気候変動安定性を有する、自動車製造用のフィルム積層された成形部材を製造するために使用することができる。本発明はまた、本発明による接着剤を使用した、自動車製造用のフィルム積層された成形部材の製造法に関する。
【0002】
車両に取り付ける複合体の製造のために、例えば自動車の内装部材の製造のために、適したプラスチックフィルムが、例えばプラスチック、金属又は繊維金属からの形作られたボディに、接着剤によって永続的に施与される。このために、ポリウレタンを基礎とする水性分散液接着剤を使用することができる。応用技術的な特性を改善するために、頻繁にイソシアネートが架橋剤として使用されてきた。所望されるのはイソシアネート不含の系である。WO2008/006733から、添加剤としてシラン化合物を有する水性ポリウレタン接着剤が知られている。公知の接着剤分散液は、なおあらゆる点で、殊に気候−及び温度負荷挙動に関して最適ではない。
【0003】
自動車において使用される形作られた複合体は、変動する気候−及び温度負荷に頻繁に晒されている。その際、なかでも、成形部材の撓曲又は屈曲の範囲において、時とともに接着が早く損なわれる可能性があり、そして積層されたポリマーフィルムが、所々で成形部材から剥離する可能性がある。それゆえ、所望されているのは、高い気候変動安定性を有する接着剤である。
【0004】
本発明の課題は、工業積層用のポリウレタン分散液の応用技術的な特性を、殊に、車両における取り付け部材の良好な気候−及び温度負荷挙動に関してさらに改善することであった。
【0005】
本発明の対象は、第1の水性成分から、そして第2の成分からの接着剤であり、
ここで、第1の成分は、少なくとも1種の第1のポリマーと、該第1のポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のポリマーを含有し、
ここで、第1のポリマーは、結晶ドメインを形成することがきるポリマー(以下では結晶ポリマーとも呼ぶ)、エチレンと酢酸ビニルからのコポリマー及びこれらのポリマーの混合物から選択されており、
そして第2のポリマーは非晶質ポリウレタンであり、かつ、
ここで、双方のポリマーの少なくとも1種はカルボキシル基を有し、
ここで、第1のポリマー対第2のポリマーの質量比は2:8〜8:2であり、かつ、
ここで、第2の成分は、カルボキシル基に対して反応性の少なくとも1種のシラン化合物を含有する。第1のポリマーは、殊に、単独で使用される第2のポリマーと比べて、接着剤を用いて製造されたフィルム積層された成形部材の気候変動安定性を高めるポリマーである。
【0006】
2つの成分は、好ましくは、基材に使用する前まで別々に保持され、そして使用直前になって初めて互いに混合される。
【0007】
本発明の対象はまた、本発明による接着剤を、高い気候変動安定性を有する自動車製造用のフィルム積層された成形部材の製造のために、もしくは自動車製造用のフィルム積層された成形部材の気候変動安定性を高めるために使用することである。
【0008】
高い気候変動安定性は、気候変動試験の1回より多い試験サイクル後に、好ましくは5回より多い又は10回より多い試験サイクル後に、特に有利には20回より多い試験サイクル後に(1回のサイクルは、90℃及び湿度80%での4hの貯蔵、−30℃への2hの冷却、−30℃及び相対湿度10%での4hの貯蔵及び90℃への2hの加熱)、例えば、BMW試験 PR 308.2(2006−04)"Klimatische Pruefung von Klebeverbindungen(接着接合部の耐候試験)"に従って、試験体に接着された軟質PVCフィルムのはっきりと見える剥離が生じていないことを意味する。
【0009】
結晶ドメインを形成することができるポリマーは、室温(20℃)で純粋な形態においてポリマー膜として存在する場合に結晶ドメインを有するポリマーである。その際、ポリマー膜は、完全に又は部分的に結晶ドメインから成り、すなわち、それは完全には非晶質ではない。結晶ドメインが存在していることは、DSC測定によって、例えばクリスタリットの溶融エンタルピーの測定によって確認可能である。
【0010】
好ましくは、第1のポリマーは、ポリマー膜として存在する場合に少なくとも20J/gの溶融熱を有するポリマーである。好ましくは、第1のポリマーは、純粋な状態において結晶性であり、かつ、30〜150℃の範囲の融点を有する。
【0011】
1つの実施形態において、第1のポリマーは、
(i)ポリエステルジオールから誘導された単位を有する、結晶ドメインを形成するポリウレタンと
(ii)エチレン/酢酸ビニルコポリマー
から成る群から選択されており、
ここで、第2のポリマーは、好ましくは、ポリエーテルジオールから誘導された単位を有する非晶質ポリウレタンである。
【0012】
1つの実施形態において、第1のポリマーは結晶ポリウレタンであり、かつ、ポリエステルジオールから誘導された単位を有し、そして第2のポリマーは非晶質ポリウレタンであり、かつ、ポリエーテルジオールから誘導された単位を有し、ここで、双方のポリウレタンの少なくとも1種はカルボキシル基を有し、かつ、ポリエステルジオールから誘導された全ての単位の合計対ポリエーテルジオールから誘導された全ての単位の合計の質量比は、好ましくは2:9〜7:2である。
【0013】
好ましくは、接着剤の第1の成分は、
(a)(i)ポリエステルジオールから誘導された単位を有し、かつ、ポリエーテルジオールから誘導された単位を有さない、結晶ドメインを形成するポリウレタン及び(ii)エチレン/酢酸ビニルコポリマー又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の第1のポリマー20〜80質量部、好ましくは40〜70質量部、
(b)ポリエーテルジオールから誘導された単位を有し、かつ、ポリエステルジオールから誘導された単位を有さない、少なくとも1種の非晶質ポリウレタン20〜80質量部及び
(c)(a)及び(b)とは異なるさらに別のポリマー、例えばポリ酢酸ビニル、ポリアクリレートコポリマー分散液又はスチレン/ブタジエン分散液0〜50質量部、好ましくは10〜40質量部を含有する。
【0014】
好ましくは、第1のポリマーはポリウレタンであり、かつ
a)ジイソシアネート、
b)500より大きい〜5000g/モルの分子量を有するポリエステルジオール、
c)カルボン酸基を有するジオール、及び
d)任意に、a)〜c)とは異なる、アルコール性ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基及びイソシアネート基から選択される反応性基を有する、さらに別の1価化合物又は多価化合物から合成されている。
【0015】
有利なのは、ポリエステル単位がポリマーの80〜90質量%の割合を占めるポリウレタンである。
【0016】
好ましくは、第2のポリマーはポリウレタンであり、かつ
a)ジイソシアネート、
b)240〜5000g/モルの分子量を有するポリエーテルジオール、
c)カルボン酸基を有するジオール、及び
d)任意に、a)〜c)とは異なる、アルコール性ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基及びイソシアネート基から選択される反応性基を有する、さらに別の1価化合物又は多価化合物から合成されている。
【0017】
有利なのは、ポリエーテル単位がポリマーの70〜80質量%の割合を占めるポリウレタンである。
【0018】
好ましくは、第2のポリマーのポリエーテルジオールは、ポリテトラヒドロフラン及びポリプロピレンオキシドから選択されている。好ましくは、第1のポリマーのポリエステルジオールは、2価アルコールと2価カルボン酸との反応生成物及びラクトンベースのポリエステルジオールから選択されている。
【0019】
好ましくは、ポリウレタンは、それぞれ、少なくとも40質量%が、特に有利には少なくとも60質量%が及び極めて有利には少なくとも80質量%が、ジイソシアネート、ポリエーテルジオールもしくはポリエステルジオールから合成されている。有利には、第1のポリウレタンは、ポリエステルジオールを、該第1のポリウレタンを基準として、10質量%より多い量で、特に有利には30質量%より大きい量で、殊に40質量%より大きい量又は50質量%より大きい量で、極めて有利には60質量%より大きい量で含有する。有利には、第2のポリウレタンは、ポリエーテルジオールを、該第2のポリウレタンを基準として、10質量%より多い量で、特に有利には30質量%より大きい量で、殊に40質量%より大きい量で又は50質量%より大きい量で、極めて有利には60質量%より大きい量で含有する。
【0020】
1つの実施形態において、第1の成分は、固形分を基準として、少なくとも40質量%のポリウレタン(非晶質ポリウレタンもしくは非晶質及び結晶ポリウレタンからの混合物)を含有する。さらに別の実施形態において、第1の成分は、固形分を基準として、10〜75質量部のエチレン/酢酸ビニルコポリマーを第1のポリマーとして含有する。
【0021】
好ましくは、少なくとも第1のポリウレタンは、純粋な状態において結晶性である。第1のポリウレタンは、好ましくは、30℃より大きく、殊に40℃より大きく、特に有利には50℃より大きいか、あるいはむしろ60℃より大きいか又は70℃より大きい融点を有する;一般的に、融点は、150℃より大きくなく、殊に100℃より大きくない。それゆえ、融点は、殊に、30〜150℃の範囲に、特に有利には40〜150℃の範囲に、及び極めて有利には50〜100℃の範囲に、及び殊に50〜80℃の範囲にある。第2のポリウレタンは、純粋な状態において非晶質である。第1のポリウレタンは、好ましくは、20J/gを上回る溶融エンタルピーを有する。融点及び溶融エンタルピーの測定は、その際、示差走査熱分析の方法により行われる。測定は、該測定前に強制空気循環炉内で40℃にて72時間乾燥させた200μmの厚さのポリウレタン膜を用いて行われる。測定の準備のために、ポリウレタン約13mgが平なべに充たされる。平なべは閉ざされ、試料は120℃に加熱され、20K/分で冷却され、そして20℃にて20時間、調温される。そのようにして準備された試料は、DIN53765に従ったDSC法により測定され、その際、該試料は20K/分で加熱される。溶融温度として、DIN53765に従ったピーク温度が利用され、溶融エンタルピーは、DIN53765の図4に示される通りに算出される。
【0022】
適したジイソシアネートは、例えば、式X(NCO)2のものであり、ここで、Xは、C原子4〜15個を有する脂肪族炭化水素基、C原子6〜15個を有する脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基又はC原子7〜15個を有する芳香脂肪族炭化水素基を表す。そのようなジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4'−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4'−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナト−シクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、例えばトランス/トランス異性体、シス/シス異性体及びシス/トランス異性体ならびに、これらの化合物から成る混合物である。そのようなジイソシアネートは市販されている。
【0023】
これらのイソシアネートの混合物として、特に、ジイソシアナトトルエン及びジイソシアナト−ジフェニルメタンのそれぞれの構造異性体の混合物が重要であり、殊に、2,4−ジイソシアナトトルエン80モル%及び2,6−ジイソシアナトトルエン20モル%からの混合物が適している。さらに、芳香族イソシアネート、例えば2,4−ジイソシアナトトルエン及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエンと、脂肪族イソシアネート又は脂環式イソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート又はIPDIとの混合物が特に好ましく、その際、脂肪族イソシアネート対芳香族イソシアネートの有利な混合比は1:9〜9:1、殊に1:4〜4:1である。
【0024】
ポリウレタンの合成のために、化合物として、前出の化合物以外に、遊離イソシアネート基に加えて、さらに別のキャップされたイソシアネート基、例えばウレトジオン基を有するイソシアネートも使用することができる。
【0025】
良好なフィルム形成及び弾性に鑑み、ポリエステルジオールとして及びポリエーテルジオールとして、主として、500超え5000g/モルまで、好ましくは約1000〜3000g/モルの分子量を有する、比較的高分子量のジオールが考慮に入れられる。これは数平均分子量Mnである。Mnは、末端基(OH価)の数の決定によって判明する。
【0026】
ポリエステルジオールは、例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,4th edition,volume 19の第62頁〜第65頁から公知である。有利には、2価アルコールと2価カルボン酸との反応によって得られるポリエステルジオールが使用される。遊離ポリカルボン酸の代わりに、相応するポリカルボン酸無水物又は低級アルコールの相応するポリカルボン酸エステル又はそれらの混合物も、ポリエステルポリオールの製造のために使用することができる。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族又は複素環式であってよく、かつ、場合により、例えばハロゲン原子によって置換されていてよく及び/又は不飽和であってよい。これに関する例として、以下のものが挙げられる:スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、二量体脂肪酸。有利なのは、一般式HOOC−(CH2y−COOH[式中、yは1〜20の数であり、有利には2〜20の偶数である]のジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジカルボン酸である。
【0027】
2価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、例えば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、そのうえ、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコールが考慮に入れられる。有利なのは、一般式HO−(CH2x−OH[式中、xは1〜20の数、有利には2〜20の偶数である]のアルコールである。これに関する例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール及びドデカン−1,12−ジオールである。さらに有利なのはネオペンチルグリコールである。
【0028】
ポリエステルジオール又はポリエーテルジオールに加えて、場合により、例えば、ホスゲンと、ポリエステルポリオールのための合成成分として挙げられる低分子量アルコールの過剰量との反応によって得られることができるようなポリカーボネート−ジオールも併用してよい。
【0029】
場合により、ラクトンベースのポリエステルジオールも使用してよく、これは、ラクトンの単独重合体又は混合重合体、有利には、適した二官能性の開始剤分子にラクトンが付加した、末端ヒドロキシル基を有する生成物である。ラクトンとして、有利には、一般式HO−(CH2z−COOH[zは1〜20の数であり、かつ、メチレン単位のH原子はC1〜C4−アルキル基によっても置換されていてよい]の化合物に由来するものが挙げられる。例は、e−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、g−ブチロラクトン及び/又はメチル−e−カプロラクトンならびにそれらの混合物である。適した開始剤成分は、例えば、上でポリエステルポリオールのための合成成分として挙げられた低分子量の2価アルコールである。ε−カプロラクトンの相応する重合体が特に有利である。低級ポリエステルジオール又はポリエーテルジオールも、ラクトン重合体を製造するための開始剤として使用されていてよい。ラクトンのポリマーの代わりに、ラクトンに相応するヒドロキシカルボン酸の相応する化学的に等価な重縮合物も使用してよい。
【0030】
ポリエーテルジオールは、殊に、例えばBF3の存在での、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンそれ自体による重合によって、又はこれらの化合物を、場合により混合して又は順々に、反応性水素原子を有する開始成分、例えばアルコール又はアミン、例えば、水、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン又はアニリンへ付加することによって得ることができる。特に有利なのは、分子量240〜5000、及びなかでも500〜4500のポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフランである。有利なのは、20質量%未満でエチレンオキシドから成るポリエーテルジオールである。
【0031】
場合により、ポリヒドロキシオレフィン、有利には2個の末端ヒドロキシル基を有するもの、例えばα,ω−ジヒドロキシポリブタジエン、α,ω−ジヒドロキシポリメタクリルエステル又はα,ω−ジヒドロキシポリアクリルエステルも、モノマー(c1)として併用することができる。かかる化合物は、例えばEP−A622378から公知である。さらに別の適したポリオールは、ポリアセタール、ポリシロキサン及びアルキド樹脂である。
【0032】
ポリウレタンの硬度及び弾性率は、必要であるならば、ジオールとして、ポリエステルジオールに加えて、もしくはポリエーテルジオールに加えてなお、それらとは異なる、約60〜500、好ましくは62〜200g/モルの分子量を有する低分子量のモノマージオールを使用した場合に高められることができる。低分子量のモノマージオールとして、なかでも、ポリエステルポリオールの製造のために挙げられた短鎖アルカンジオールのための合成成分が使用され、ここで、C原子2〜12個及び偶数のC原子を有する非分枝鎖ジオールならびにペンタン−1,5−ジオール及びネオペンチルグリコールが有利である。例は、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、例えば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、そのうえ、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコールが考慮に入れられる。有利なのは、一般式HO−(CH2x−OH[式中、xは1〜20の数、有利には2〜20の偶数である]のアルコールである。これに関する例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール及びドデカン−1,12−ジオールである。さらに有利なのはネオペンチルグリコールである。
【0033】
有利には、ポリエステルジオールもしくはポリエーテルジオールの割合は、全てのジオールの全量を基準として、10〜100モル%であり、かつ、低分子量のモノマージオールの割合は、全てのジオールの全量を基準として 0〜90モル%である。特に有利には、ポリマージオール対モノマージオールの比は0.1:1〜5:1、特に有利には0.2:1〜2:1である。
【0034】
ポリウレタンの水分散性を達成するために、ポリウレタンは、少なくとも1個のイソシアネート基又はイソシアネート基に対して反応性の少なくとも1個の基及び、そのうえまた少なくとも1個の親水基又は親水基に変えられうる少なくとも1個の基を有するモノマーを付加的に合成成分として含有してよい。以下の文章において、"親水基又は潜在的親水基"との用語は、"(潜在的)親水基"と略される。(潜在的)親水基はイソシアネートと、ポリマー主鎖の合成に利用されるモノマーの官能基よりずっと緩慢に反応する。全ての合成成分の全量の中で(潜在的)親水基を有する成分の割合は、一般的に、(潜在的)親水基のモル量が、全てのモノマーの質量を基準として、30〜1000、有利には50〜500及び特に有利には80〜300ミリモル/kgになるように計量される。
【0035】
(潜在的)親水基は、非イオン性親水基、又は有利には(潜在的)イオン性親水基であってよい。非イオン性親水基として、殊に、好ましくは5〜100個、有利には10〜80個のエチレンオキシド繰り返し単位からのポリエチレングリコールエーテルが考慮に入れられる。ポリエチレンオキシド単位の含有率は、全てのモノマーの質量を基準として、一般的に0〜10質量%、有利には0〜6質量%である。非イオン性親水基を有する有利なモノマーは、エチレンオキシド少なくとも20質量%を有するポリエチレンオキシドジオール、ポリエチレンオキシドモノオールならびにポリエチレングリコールと、末端でエーテル化されたポリエチレングリコール基を有するジイソシアネートからの反応生成物である。そのようなジイソシアネートならびにそれらの製造法は、特許文献US−A3,905,929及びUS−A3,920,598に記されている。
【0036】
イオン性親水基は、なかでも、アニオン性基、例えばアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形態のスルホネート基、カルボキシレート基及びホスフェート基ならびにカチオン性基、例えばアンモニウム基、殊にプロトン化された第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基である。潜在的イオン性親水基は、なかでも、単純な中和反応、加水分解反応又は第4級化反応によって、上記のイオン性親水基に変えられうるようなもの、つまり、例えばカルボン酸基又は第3級アミノ基である。(潜在的)イオン性モノマーは、例えばUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,4th edition,volume 19の第311頁〜第313頁に、及び、例えばDE−A149574に詳しく記載されている。
【0037】
(潜在的)カチオン性モノマーとして、なかでも、第3級アミノ基を有するモノマーが、特に実際の上で重要であり、例えば:トリス−(ヒドロキシアルキル)−アミン、N,N'−ビス(ヒドロキシアルキル)−アルキルアミン、N−ヒドロキシアルキル−ジアルキルアミン、トリス−(アミノアルキル)−アミン、N,N'−ビス(アミノアルキル)−アルキルアミン、N−アミノアルキル−ジアルキルアミン、ここで、これらの第3級アミンのアルキル基及びアルカンジイル単位は、互いに無関係に、C原子1〜6個から成る。さらに、例えば、アミン窒素に結合された2個の水素原子を有するアミン、例えばメチルアミン、アニリン又はN,N'−ジメチルヒドラジンのアルコキシル化によって、それ自体通常の方法で得られるような、好ましくは2個の末端ヒドロキシル基を有する、第3級窒素原子を有するポリエーテルが考慮に入れられる。そのようなポリエーテルは、一般的に500乃至6000g/モルの間にある分子量を有する。これらの第3級アミンは、酸、有利には強鉱酸、例えばリン酸、硫酸、ハロゲン化水素酸又は強い有機酸を用いてか、又は適した第4級化剤、例えばハロゲン化C1〜C6−アルキルあるいはハロゲン化ベンジル、例えば臭化物又は塩化物との反応によって、アンモニウム塩に変えられる。
【0038】
(潜在的)アニオン性基を有するモノマーとして、通常、少なくとも1個のアルコール性ヒドロキシル基又は少なくとも1個の第1級アミノ基又は第2級アミノ基を有する、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族又は芳香族のカルボン酸及びスルホン酸が考慮に入れられる。有利なのは、例えばUS−A3,412,054にも記載されているような、ジヒドロキシアルキルカルボン酸、なかでもC原子3〜10個を有するものである。殊に、一般式(c1)
【化1】

[式中、R1及びR2はC1〜C4−アルカンジイル(単位)であり、かつ、R3はC1〜C4−アルキル(単位)である]の化合物及び、なかでもジメチロールプロピオン酸(DMPA)が有利である。さらに、相応するジヒドロキシスルホン酸及びジヒドロキシホスホン酸、例えば2,3−ジヒドロキシプロパンホスホン酸が適している。
【0039】
その他に、DE−A3911827から公知である、少なくとも2個のカルボキシレート基を有し、500超え10000g/モルまでの分子量を有するジヒドロキシル化合物が適している。それらは、ジヒドロキシル化合物と、テトラカルボン酸二無水物、例えばピロメリト酸二無水物又はシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物との、重付加反応における2:1〜1.05:1のモル比での反応によって得られる。ジヒドロキシル化合物として、殊に、鎖長延長剤として挙げられるモノマー(b2)ならびにジオール(b1)が適している。
【0040】
ポリウレタンの少なくとも1種、好ましくは第1のポリウレタンのみならず第2のポリウレタンもカルボキシル基を有する。カルボキシル基は、少なくとも1個のアルコール性ヒドロキシル基又は少なくとも1個の第1級又は第2級アミノ基を有する、上で挙げられた脂肪族、脂環式、芳香脂肪族又は芳香族のカルボン酸によってポリウレタンに導入することができる。有利なのは、ジヒドロキシアルキルカルボン酸、なかでもC原子3〜10個を有するもの、殊にジメチルロールプロピオン酸である。
【0041】
イソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するさらに別のモノマーとして、アミノカルボン酸、例えばリシン、β−アラニン又はDE−A2034479に挙げられた、脂肪族のジ第1級ジアミンのα,β−不飽和カルボン酸あるいはスルホン酸への付加物が考慮に入れられる。かかる化合物は、例えば、式(c2)
H2N−R4−NH−R5−X (c2)
[式中、R4及びR5は、互いに無関係に、C1〜C6−アルカンジイル単位、有利にはエチレンであり、かつ、XはCOOH又はSO3Hである]に従う。式(c2)の特に有利な化合物は、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンカルボン酸ならびにN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸もしくは相応するアルカリ金属塩であり、ここで、Naが対イオンとして特に有利である。さらに特に有利なのは、例えばDE−B1954090に記載されているような、上記脂肪族のジ第1級ジアミンの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸への付加物である。
【0042】
潜在的イオン性基を有するモノマーが使用される場合は、該モノマーのイオン形態への変換は、イソシアネート重付加の前、その間、しかしながら、好ましくはイソシアネート重付加の後に行ってよく、それというのも、イオン性モノマーは、反応混合物中に頻繁に難溶であるからである。中和剤は、例えば、アンモニア、NaOH、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロピルアミン(TIPA)又はモルホリン、もしくはその誘導体である。特に有利には、スルホネート基又はカルボキシレート基は、それらと、対イオンとしてのアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンとの塩の形態で存在する。
【0043】
場合によりポリウレタンの成分でもある多価モノマーは、一般的に架橋又は鎖長延長に利用される。それらは、一般的に、2価より多い非フェノール性アルコール、2個以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するアミンならびに1個以上のアルコール性ヒドロキシル基に加えて1個以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有する化合物である。ある特定の分枝度又は架橋度の調節に役立ちうる、2より多い原子価を有するアルコールは、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン又は糖類である。そのうえ、ヒドロキシル基に加えて、イソシアネートに対して反応性のさらに別の基を有するモノアルコール、例えば、1個以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するモノアルコール、例えばモノエタノールアミンが考慮に入れられる。2個以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミンは、なかでも、鎖長延長もしくは架橋が水の存在で行われるべき場合に使用され、それというのも、アミンは、通例、アルコール又は水より迅速にイソシアネートと反応するからである。これは、架橋されたポリウレタン又は高い分子量を有するポリウレタンの水性分散液が所望される場合に頻繁に必要とされる。かかる場合には、イソシアネート基を有するプレポリマーが製造され、これらが速やかに水に分散され、かつ、引き続きイソシアネートに対して反応性の複数のアミノ基を有する化合物の添加によって連鎖延長又は架橋されるようにして行われる。このために適したアミンは、一般的に、第1級アミノ基及び第2級アミノ基の群から選択される少なくとも2個のアミノ基を含有する、32〜500g/モル、好ましくは60〜300g/モルの分子量範囲の多官能性アミンである。これに関する例は、ジアミン、例えばジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水化物又はトリアミン、例えばジエチレントリアミン又は1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタンである。アミンは、ブロックされた形態で、例えば、相応するケチミン(例えばCA−A1129128を参照のこと)、ケタジン(例えばUS−A4,269,748を比較のこと)又はアミン塩(US−A4,292,226を参照のこと)の形態でも使用することができる。例えばUS−A4,192,937で使用されるようなオキサゾリジンも、プレポリマーの鎖長延長のための、本発明によるポリウレタンの製造のために使用することができるキャップされたポリアミンを表す。そのようなキャップされたポリアミンが使用される場合、これらは、一般的に、プレポリマーと水の不在で混合され、かつ、この混合物は、引き続き、分散水又は分散水の一部と混合されることから、加水分解により相応するポリアミンが遊離される。有利には、ジアミンとトリアミンの混合物、特に有利にはイソホロンジアミン(IPDA)とジエチレントリアミン(DETA)の混合物が使用される。ポリウレタンは、全ての合成成分の全量を基準として、イソシアネートに対して反応性の少なくとも2個のアミノ基を有するポリアミンを、好ましくは1〜30モル%、特に有利には4〜25モル%含有する。同じ目的のために、2価より高いイソシアネートも使用することができる。市販の化合物は、例えば、イソシアヌレート又はヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットである。
【0044】
場合により併用される1価モノマーは、モノイソシアネート、モノアルコール及びモノ第1級アミン及びモノ第二級アミンである。一般的に、それらの割合は、モノマーの全体のモル量を基準として、最大10モル%である。これらの単官能性の化合物は、通常、さらに別の官能基、例えばオレフィン基又はカルボニル基を有し、かつ、ポリウレタンの分散もしくは架橋又はさらに別の重合類似反応を可能にする官能基をポリウレタンに導入するのに利用される。このために、モノマー、例えばイソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)及びアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリラートが考慮に入れられる。
【0045】
ポリウレタン化学の分野では、ポリウレタンの分子量が、互いに反応性のモノマーの割合ならびに1分子当たりの反応性官能基の数の算術平均の選択によって、どのように調節されうるか一般的に公知である。通常は、成分ならびに該成分のそれぞれのモル量は、
A イソシアネート基のモル量と
B ヒドロキシル基のモル量及びイソシアネートと付加反応において反応しうる官能基のモル量の合計
の比A:Bが、0.5:1〜2:1、有利には0.8:1〜1.5、特に有利には0.9:1〜1.2:1になるように選択される極めて有利には、比A:Bは、できる限り1:1に近い。使用されるモノマーは、平均して、通常1.5〜2.5個、有利には1.9〜2.1個、特に有利には2.0個のイソシアネート基もしくはイソシアネートと付加反応において反応しうる官能基を有する。
【0046】
ポリウレタンを製造するための合成成分の重付加は、好ましくは、180℃まで、有利には150℃までの反応温度にて常圧下で又は自己圧下で行われる。ポリウレタンもしくはポリウレタン水性分散液の製造は、当業者に公知である。
【0047】
本発明の意味におけるエチレン/酢酸ビニルは、主として、すなわち、50質量%より多くが、好ましくは少なくとも60質量%より多くが、あるいはむしろ100質量%がエチレン−及び酢酸ビニルモノマーから合成されているコポリマーである。その際、エチレン/酢酸ビニルの質量比は、好ましくは1以下、殊に0.66より小さいか又は0.4より小さい。さらに別のモノマーは、例えば、0〜50質量%未満、殊に1〜35質量%未満の量のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであってよい。
【0048】
ポリウレタン及びエチレン/酢酸ビニルコポリマーは、好ましくは水性分散液として存在し、かつ、この形態で使用される。
【0049】
本発明による接着剤中で使用されるシラン化合物は、好ましくは、式
【化2】

[式中、R1〜R4は、互いに無関係に、有機基又はヒドロキシ基であり、ただし、基R1〜R4の少なくとも2個は、ヒドロキシ基及びアルコキシ基から選択される基であり、かつ、残りの基R1〜R4の少なくとも1個は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、酸基、酸無水物基、カルバメート基、イソシアネート基、ヒドロキシル基及びエポキシ基から選択される少なくとも1個の官能基を含有する有機基である]を有する。
【0050】
好ましくは、基R1〜R4の2個又は3個、特に有利には3個は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基である。一般的に、それらはアルコキシ基であり、後になってからの使用に際して、アルコキシ基は加水分解してヒドロキシ基を形成し、該基は、次いでさらに反応するかもしくは架橋する。殊に、C1〜C9アルコキシ基、好ましくはC1〜C6アルコキシ基、特に有利にはC1〜C3アルコキシ基が重要であり、極めて有利には、メトキシ基又はエトキシ基、殊にメトキシ基が重要である。
【0051】
残りの基R1〜R4は、分子量が一般的に500g/モル未満、殊に200g/モル未満、特に有利には150g/モル未満もしくは100g/モル未満である有機基である。残りの基R1〜R4は、例えば、脂肪族又は芳香族の炭化水素基又は、脂肪族構成成分、それに脂環式構成成分のみならず、芳香族構成成分も有する炭化水素基であってよい。残りの基R1〜R4の少なくとも1個は、第1級アミノ基又は第2級アミノ基、酸基、酸無水物基、カルバメート基、ヒドロキシル基、イソシアネート基又はエポキシ基から選択される少なくとも1個の官能基を含有する有機基である。官能基として特に有利なのは、第1級アミノ基又は第2級アミノ基、エポキシ基、殊にグリシジル基、又はカルバメート基である。特に有利なのは、エポキシ基、殊にグリシジル基である。残りの基R1〜R4は、複数の官能基、例えば2個の第1級アミノ基、2個の第2級アミノ基又は第1級アミノ基と第2級アミノ基を含有してもよい。
【0052】
有利なシランの場合、基R1〜R4の3個は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基(好ましくはアルコキシ基、上記を参照のこと)であり、かつ、残りの1個の基は、少なくとも1個の官能基を有する有機基である。同様に有利なのは、基R1〜R4の2個が、ヒドロキシ基又はアルコキシ基(好ましくはアルコキシ基、上記を参照のこと)であり、かつ、残りの2個の基が、それぞれ、少なくとも1個の官能基を有する有機基であるシランである。特に有利なのは、それぞれC原子1〜5個をアルキル基中に及びアルコキシ基中に有するグリシドキシアルキルトリアルコキシシランである。シランとして考慮されるのは、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、N−トリメトキシシルメチル−O−メチルカルバメートである。
【0053】
適したシランは、殊に低分子であり、そして5000g/モルより低い、殊に2000g/モルより低い、特に有利には1000g/モルより低い、及び極めて有利には500g/モルより低い分子量を有する;分子量は、一般的に50g/モルより高く、殊に100g/モル、もしくは150g/モルより高い。
【0054】
シラン化合物は、好ましくは、ポリウレタン100質量部につき、0.2質量部より多い量で、殊に1質量部より多い量で、又は2質量部より多い量で、かつ、ポリウレタン100質量部につき、好ましくは最大30質量部の量で、殊に最大20質量部の量で、特に有利には最大10質量部の量で使用される。
【0055】
第1の接着剤成分の主成分は、結合剤としての第1と第2のポリマーの混合物である。第1の接着剤成分は、固形分、すなわち、水を含まないか又はそれ以外の、21℃及び1barにて液状の溶剤を基準として、好ましくは少なくとも20質量%が、特に有利には少なくとも30質量%が、極めて有利には少なくとも40質量%が、及び殊に少なくとも50質量%が、もしくは少なくとも70質量%が、第1と第2のポリマーの混合物から成る。第1の接着剤成分は水性であり、すなわち、それは水を、主たる又は唯一の溶剤又は分散剤として含有する。
【0056】
第1の接着剤成分は、乾燥に際して逃れる水又はそれ以外の溶媒は別として、第1と第2のポリマーの混合物からのみ成っていてよい。それは、さらに別の添加剤、例えば、さらに別の結合剤、安定化剤、充填剤、増粘剤、湿潤助剤、消泡剤、架橋剤、老化防止剤、殺菌剤、顔料、可溶性染料、艶消剤及び中和剤も含有していてよい。さらに別の添加剤は、簡単な方法で、第1と第2のポリマーの混合物に、もしくは該混合物の水性分散液に加えてよい。安定化剤として、基本的に、水性分散液の場合に通常使用されるような安定化剤が適している。貯蔵安定性のポリマー分散液組成物をもたらすのは、湿潤剤、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンならびにそれらの混合物を包含する群から選択される安定化剤である。本発明の対象は、それゆえまた、上で記載したような接着剤において、少なくとも1種のさらに別の添加剤を含有し、該添加剤が、さらに別の結合剤、安定化剤、充填剤、増粘剤、湿潤助剤、消泡剤、架橋剤、老化防止剤、殺菌剤、顔料、可溶性染料、艶消剤及び中和剤から選択されていることを特徴とする接着剤である。
【0057】
第1及び第2のポリマーとの混合物において使用することができる、さらに別の結合剤として、殊にラジカル重合ポリマーが、好ましくはその水性分散液の形態で考慮される。そのようなポリマーは、好ましくは少なくとも60質量%が、C1〜C20アルキル(メタ)アクリレート、C原子20個までを含有するカルボン酸のビニルエステル、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、C原子1〜10個を含有するアルコールのビニルエーテル、C原子2〜8個及び二重結合1個又は2個を有する脂肪族炭化水素又はこれらのモノマーの混合物から選択される、いわゆる主モノマーから成る。ポリマーとして殊に言及されるべきものは、60質量%より多くが、C1〜C20アルキル(メタ)アクリレートから構成されているポリマー(略してポリアクリレート)、又は60質量%より多くが、スチレンと1,3−ブタジエンから成るポリマー(スチレン/ブタジエンコポリマー、殊にカルボキシル化されたスチレン/ブタジエンコポリマー)である。カルボキシル化されたスチレン/ブタジエンコポリマーは、スチレン、ブタジエンと、少なくとも1個のカルボキシル基、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸等、好ましくはアクリル酸を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーから形成されている。
【0058】
特別な実施形態において、接着剤は、第1と第2のポリマーに加えてさらに別の種類の結合剤を含有しない。他の実施形態において、接着剤は、全ての接着剤ポリマーの総量を基準として、第1と第2のポリマーとは異なるさらに別の結合剤、好ましくはポリアクリレート及び/又はスチレン/ブタジエンコポリマーを10〜50質量部又は20〜50質量部、又は30〜50質量部含有する。
【0059】
接着剤のさらに別の成分は、例えば、さらに別の架橋剤であってよい。考慮されるのは、例えば、化学的にブロックされたイソシアネート、カプセル化されたイソシアネート、カプセル化されたウレトジオン、ビウレットあるいはアロファネート又はカルボジイミド基を有する化合物である。付加的な架橋剤は、ポリウレタンに結合されていてよいが、しかし、ポリウレタン中に溶解又は分散されている化合物であってもよい。接着剤は、所望の特性を達成するために、さらに別の架橋剤を必要とせず、それゆえ、好ましくは、接着剤は、さらに別の架橋剤も含有しない。
【0060】
特に好ましいのは、有機溶剤を含まない、殊に、いわゆるVOC(Volatile Organic Compounds)を含まない及び/又は可塑剤を含まない組成物である。可塑剤も有機溶剤も、環境毒性的及び労働衛生学的な見地から有害である。可塑剤は表面上で流動し、かつ、接着を損傷させるか又は表面を粘着性のものにし、その結果、接着ラインの汚れにつながる可能性がある。溶剤も所望されておらず、それというのも、溶剤は、一方では、加熱に際して及び接着剤の塗布に際して付加的なリスクポテンシャルを伴う可能性があるからであり、また溶剤は、他方では、同様に流動し、かつ、長い時間にわたって環境及び、接着剤と接触する材料に放出される可能性があり、かつ、これらに悪い影響を及ぼすか、もしくは接着を損傷させる可能性があるからである。それゆえ、第1の接着剤成分は、好ましくは、水を唯一の溶媒としてもしくは唯一の分散媒として有する純粋に水性系である。固形分、すなわち、水又はそれが以外の、21℃及び1barにて液状の物質を除く全ての成分の含有率は、好ましくは20〜80質量%である。
【0061】
本発明の対象はまた、上で記載した本発明による接着剤を製造するための、少なくとも1種の第1のポリマーと、該第1のポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のポリマーを含有し、ここで、第1のポリマーは、結晶ドメインを形成することがきるポリマー及びエチレンと酢酸ビニルからのコポリマーから選択されており、そして第2のポリマーは非晶質ポリウレタンであり、かつ、ここで、双方のポリマーの少なくとも1種はカルボキシル基を有し、ここで、第1のポリマー対第2のポリマーの質量比は2:8〜8:2である組成物の使用である。本発明の対象はまた、高い気候変動安定性を有する、自動車製造用のフィルム積層された成形部材を製造するための、上で記載した本発明による接着剤の使用である。
【0062】
本発明による接着剤は、2成分(2K)接着剤として使用することができる。2K接着剤の場合、使用前に、なおさらに別の添加剤、一般的に架橋剤、本件の場合、シランが添加される。特に適しているのは、殊に、大面積のフレキシブルな第1の基材を第2の基材としての固形成形体(festen Formkoerper)に永続的な接着を行うことによって複合体を製造するための、積層用接着剤としての本発明による接着剤である。大面積の第1の基材は、殊に、ポリマーフィルム、紙、金属フィルム、単板及び天然繊維又は合成繊維からの繊維不織布から選択されている。それらは、互いに接着されるか、又は好ましくは、固形成形体、例えば、金属、塗装金属、木材、木質材料、繊維材料又はプラスチック製の成形部材と接着される。
【0063】
本発明の対象はまた、殊に自動車製造用の、フィルム積層された成形部材の製造法であって、ここで
a)上記の本発明による第1の接着剤成分と上記の本発明による第2の接着剤成分、ポリマーフィルム及び例えば自動車への取り付けのために予定される成形部材を用立てし、
b)接着剤成分を混合し、そしてポリマーフィルム及び/又は成形部材に適用し、かつ
c)引き続きポリマーフィルムを、加圧及び/又は温度上昇下で成形部材と接着する。
【0064】
本発明による製造された複合体は、第1の基材と接着剤層の間に及び/又は第2の基材と接着剤層の間に、付加的にプライマー層を接着改善のために有していてよい。接着されるべき基材又は成形部材は、接着促進剤で前処理されていてよい。しかし、本発明による接着剤のすでに良好な接着特性に基づき、プライマーの使用は、必ずしも必要ではない。
【0065】
第1の基材として特に有利なのはポリマーフィルムである。ポリマーフィルムとは、殊に、0.05ミリメートル〜5ミリメートルの厚さの、巻き取り可能であるフレキシブルな平面的なプラスチックと解される。そのため、1mm以下の厚さの厳密な意味における"フィルム"に加えて、一般には、トンネル、屋根又はスイミングプールをシールするために、一般には1〜3mmの厚さで、特殊なケースでは、それどころか最大5mmまでの厚さで使用されるシール用シートとも解される。そのようなプラスチックフィルムは、通常、延展成形、流し込み成形、カレンダー成形又は押出成形によって製造され、かつ、一般にはロール状で市販されているか又は現場で製造される。それらは単層又は多層で構成されていてよい。ポリマーフィルムのプラスチックは、好ましくは熱可塑性プラスチック、例えば、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、殊に軟質PVC、ポリアセテート、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ASA(アクリロニトリル/スチレンアクリル酸エステルコポリマー)、PUR(ポリウレタン)、PA(ポリアミド)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、又はそれらのプラスチックアロイであり、殊に、発泡されたPVCフィルム及び発泡された熱可塑性ポリオレフィンフィルム(TPO)でもある。特に有利なのはPVC及び熱可塑性ポリオレフィンフィルム(TPO)である。
【0066】
成形部材は、合成繊維又は天然繊維又はチップから構成されている成形部材であってもよく、それは結合剤によって結合されて成形部材を形成している;殊に、プラスチック、例えばABSからの成形部材も適している。成形部材は、任意の形状を有していてよい。
【0067】
接着剤による基材及び成形部材のコーティングは、通常の塗布法に従って、例えば、噴霧塗布、刷毛塗布、ブレード塗布、ダイ塗布、ロール塗布又は流し込み塗布によって行ってよい。有利なのは噴霧塗布である。
【0068】
施与される接着剤量は、接着剤を基準として、好ましくは0.5〜100g/m2、特に有利には2〜80g/m2、極めて有利には10〜70g/m2である。好ましくは、接着されるべき基材のみが、例えばフィルムのみが、又は成形部材のみが片面でコーティングされる。しかしながら、接着されるべき2つの単位、すなわち、フィルムと成形部材のコーティングも考慮される。コーティング後に、乾燥は通常、好ましくは室温又は80℃までの温度で行われ、水又はそれ以外の溶剤が除去される。
【0069】
1つ又は2つの接着剤成分でコーティングされた基材又は成形部材は、接着前に貯蔵することができる。フレキシブルな基材は、例えばロールで巻き取ることができる。接着のために、接着されるべき部材が組み合わされる。接着剤は、熱により活性化される。接着剤層における温度は、好ましくは少なくとも30℃又は少なくとも50℃、例えば30〜200℃、又は50〜180℃又は60〜80℃である。接着は、好ましくは加圧下で行われる。このために、例えば、接着されるべき部材は、少なくとも0.005又は少なくとも0.01又は少なくとも0.08N/mm2、例えば0.005〜5N/mm2又は0.01〜0.8N/mm2の圧力により互いに押し付けてよい。押圧力は、例えば、フィルムと基材間の負圧をかけることによって及び/又は空気圧によって作り出してよい。
【0070】
得られる複合体は、高められた温度でも(熱安定性)又は激しく変動する気候条件下でも(気候安定性)高い機械的強度を有することによって際立っている。
【0071】
本発明による方法は、車両用の取り付け部材を製造するために特に重要である特に有利なのは、本発明による接着剤を、自動車の内装部材を製造するために使用することである。そのような内装部材の例は、ドア内張り、配電盤、計器盤、リヤパネル(Hutablagen)、ルーフパネルライニング(Fertighimmel)、スライディングルーフパネルライニング(Shiebehimmel)、センターコンソール、グローブボックス、サンバイザー、ピラー、ドアハンドル及び肘掛け、フロアアセンブリ、ロードフロアアセンブリ及びトランクアセンブリならびにライトバン及びトラックの仮眠コーナーの壁及び後部の壁である。このために、殊に真空深絞り法又はプレス積層が封止法において用いられる。真空深絞り法の場合、接着剤が成形体に塗布される。引き続き、場合により曝気が、例えば室温で又は好ましくは最大40℃にて乾燥ダクト内で行われる。一般には、接着されるべきフィルム、例えば空気不浸透性材料からの装飾フィルムが、フレーム内に気密固定される。フィルムの下には下型が存在し、該下型の上に成形体が置かれる下型及び成形体は、貫通部を有しているか、もしくは空気浸透性である。装置は、下に向かってさらに気密シールされている。この装置から空気を抜くと、それからフィルムは、その表面にかかる圧力下で成形体に精確に一致する。フィルムは、真空、もしくは負圧を印加する前に加熱される。フィルムは、作り出される真空、もしくは負圧ゆえに空気不浸透性である。プレス積層法の場合、接着剤は同様に、成形体及び場合により接着されるべきフィルムに、しかしながら、少なくとも成形体に塗布される。引き続き、場合により曝気が、一般には室温で又は好ましくは最大40℃にて乾燥ダクト内で行われる。成形体とフィルムとの接着は、熱活性化後に、接合及び圧着させながら行われる。ここで利用されるフィルムは、頻繁にプラスチック装飾フィルムであり、かつ、表面構造を有していてよい。プラスチックフィルム上のこの表面構造は、例えば、接着の前、接着の間又は接着後に型付けしてよい。
【0072】
実施例
全てのパーセント値は、他に記載がない場合、質量値である。含有率の値は、水溶液又は分散液中での含有率に関する。粘度の測定は、DIN EN ISO 3219に従って、23℃の温度で、回転粘度計を用いて行ってよい。
【0073】
使用物質:
シラン:Geniosil(R)GF 80として入手可能な3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Wacker−Chemie GmbH)
結晶ポリウレタン:
Luphen(R)D 207 E;BASF SEより工業積層用に市場に出されている、ポリエステルジオールから誘導された単位を有するポリエステル−ポリウレタン−エラストマーの水性分散液。分散液のフィルム化後、結晶ドメインを含有するポリマー膜が生じる。固形分45質量%;pH6.5〜8.5;粘度50〜180mPas(23℃、250s-1)。
【0074】
非晶質ポリウレタン、PU−1:
分子量Mn約2000を有するポリ(テトラヒドロフラン)、ジメチロールプロピオン酸、イソホロンジイソシアネート及びイソホロンジアミンから製造され、トリエチルアミンで中和されたポリウレタンの分散液。分散液のフィルム化後、結晶ドメインを含有しないポリマー膜が生じる。固形分50質量%;K値40、粘度68mPas、pH6.8(23℃)。
【0075】
非晶質ポリウレタン、PU−2:
分子量Mn約2000を有するポリ(プロピレンオキシド)、ジメチロールプロピオン酸、ネオペンチルグリコール、トリレンジイソシアネートから製造され、NaOHで中和されたポリウレタンの分散液。分散液のフィルム化後、結晶ドメインを含有しないポリマー膜が生じる。固形分40質量%;K値47、粘度167mPas、pH7.6。
【0076】
エチレン/酢酸ビニルコポリマー:
Airflex(R)EP 17;エチレン/酢酸ビニルコポリマーの60質量%の分散液;
粘度3800+-1000mPas(ブルックフィールドRVT、スピンドル3、20rpm);
pH4〜5(23℃)。
【0077】
接着剤の製造:
分散液成分(第1表を参照のこと)を攪拌容器に装入し、そしてシランを引き続き攪拌導入した。Vで表される接着剤は、本発明によらない比較組成物である。
【0078】
【表1】

【0079】
気候変動試験における安定性の試験
接着剤(湿性)100〜110g/m2を、自動車室内部材の製造に使用されるABS(Sabic、Cycolac G360 standard black)から成る成形部材(Rocholl GmbH、grain finish:Ford Flour Grain 89/030、40μm)に、圧縮空気噴射装置(Krautzberger GmbH、HS−25 HVLP)によって適用し、そして室温にて90分間乾燥した。成形部材は断面がV形である。外側エッジの長さは200mmであり、幅の長さは145mmである。外側エッジの真ん中における角度は105℃である。軟質PVC(Benecke Kaliko社、Yorn(R)、Material No.V3569838Z1750A、色:黒、厚さ:1.2mm、長さ:160mm)からのフィルムを、ABS基材に積層した。熱活性化による積層を、真空深絞り積層法において、熱成形−上押しプレス(Buerkle社、model Lamp 0909/60)を用いて行った。80秒の予熱時間及び60秒にわたる真空の印加後に、4.5barにて45秒間、121℃のプレス温度にて積層した。
【0080】
積層した成形部材を、気候試験用キャビネット(Weiss Umwelttechnik GmbH、SB/22/300/40)内で以下の試験サイクルに供した:
1)90℃で4時間の貯蔵(相対湿度80%)
2)−30℃への2時間の冷却
3)−30℃で4時間の貯蔵(相対湿度10%)
4)90℃への2時間の加熱
完全なテストサイクルが行きわたった後に、複合体について、基材からの軟質PVCフィルムの剥離を調べる。試験サイクルを、最初の剥離がはっきりと見えるようになるまで繰り返す。評価のために、剥離のない複合体が耐え抜く試験サイクルの最大数を記録する。結果は、第2表にまとめられている。
【0081】
【表2】

【0082】
第2表は、複合体が、気候変動安定性に関して、比較組成物より明らかに良好な挙動を有することから、本発明による接着剤の利点を明らかに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水性成分からと、第2の成分からの接着剤であって、ここで、該第1の成分は、少なくとも1種の第1のポリマーと、該第1のポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のポリマーを含有し、
ここで、該第1のポリマーは、結晶ドメインを形成することがきるポリマー、エチレンと酢酸ビニルからのコポリマー及びそれらの混合物から選択されており、
かつ、該第2のポリマーは非晶質ポリウレタンであり、
かつ、ここで、双方のポリマーの少なくとも1種はカルボキシル基を有し、
ここで、該第1のポリマー対該第2のポリマーの質量比は2:8〜8:2であり、かつ、
ここで、該第2の成分は、カルボキシル基に対して反応性の少なくとも1種のシラン化合物を含有する、該第1の水性成分からと、該第2の成分からの接着剤。
【請求項2】
前記第1のポリマーが、ポリマー膜として存在する場合、少なくとも20J/gの溶融熱を有することを特徴とする、請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
前記第1のポリマーが、ポリエステルジオールから誘導された単位を有する、結晶ドメインを形成するポリウレタン及びエチレン/酢酸ビニルコポリマーから成る群から選択されていることと、前記第2のポリマーが、ポリエーテルジオールから誘導された単位を有する非晶質ポリウレタンであることを特徴とする、請求項1又は2記載の接着剤。
【請求項4】
前記第1のポリマーがポリウレタンであり、かつ、ポリエステルジオールから誘導された単位を有し、そして前記第2のポリマーがポリウレタンであり、かつ、ポリエーテルジオールから誘導された単位を有し、
かつ、ここで、双方のポリウレタンの少なくとも1種がカルボキシル基を有し、
ここで、ポリエステルジオールから誘導された全ての単位の合計対ポリエーテルジオールから誘導された全ての単位の合計の質量比が2:9〜7:2であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項5】
前記第1の成分が、
(a)(i)ポリエステルジオールから誘導された単位を有し、かつ、ポリエーテルジオールから誘導された単位を有さない、結晶ドメインを形成するポリウレタン及び(ii)エチレン/酢酸ビニルコポリマー又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の第1のポリマー20〜80質量部、
(b)ポリエーテルジオールから誘導された単位を有し、かつ、ポリエステルジオールから誘導された単位を有さない、少なくとも1種の非晶質ポリウレタン20〜80質量部及び
(c)(a)及び(b)とは異なるさらに別のポリマー0〜50質量部
を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項6】
前記第1のポリマーが、
a)ジイソシアネート、
b)500より大きい〜5000g/モルの分子量を有するポリエステルジオール、
c)カルボン酸基を有するジオール、及び
d)任意に、a)〜c)とは異なる、アルコール性ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基及びイソシアネート基から選択される反応性基を有する、さらに別の1価化合物又は多価化合物から合成されるポリウレタンであり、
かつ、前記第2のポリマーが、
a)ジイソシアネート、
b)240〜5000g/モルの分子量を有するポリエーテルジオール、
c)カルボン酸基を有するジオール、及び
d)任意に、a)〜c)とは異なる、アルコール性ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基及びイソシアネート基から選択される反応性基を有する、さらに別の1価化合物又は多価化合物から合成されている
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項7】
前記第2のポリマーが、ポリエーテルジオールから誘導された単位を有するポリウレタンであり、かつ、該ポリエーテルジオールが、ポリテトラヒドロフラン及びポリプロピレンオキシドから選択されていることと、前記第1のポリマーがポリウレタンであり、かつ、ポリエステルジールから誘導された単位を有し、かつ、該ポリエステルジオールが、2価アルコールと2価カルボン酸との反応生成物及びラクトンベースのポリエステルジオールから選択されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項8】

【化1】

[式中、R1〜R4は、互いに無関係に、有機基又はヒドロキシ基であり、ただし、基R1〜R4の少なくとも2個は、ヒドロキシ基及びアルコキシ基から選択される基であり、かつ、残りの基R1〜R4の少なくとも1個は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、酸基、酸無水物基、カルバメート基、イソシアネート基、ヒドロキシル基及びエポキシ基から選択される少なくとも1個の官能基を含有する有機基である]を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項9】
前記基R1〜R4の2個又は3個がアルコキシ基であることを特徴とする、請求項8記載の接着剤。
【請求項10】
前記シラン化合物が、それぞれC原子1〜5個をアルキル基中に及びアルコキシ基中に有するグリシドキシアルキルトリアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項11】
ポリマー100質量部につき、0.2質量部より多く、かつ、最大30質量部の前記シランを使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項12】
少なくとも1種のさらに別の添加剤を含有し、該添加剤が、さらに別の結合剤、安定化剤、充填剤、増粘剤、湿潤助剤、消泡剤、架橋剤、老化防止剤、殺菌剤、顔料、可溶性染料、艶消剤及び中和剤から選択されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項13】
前記ポリウレタンが水に分散されており、したがって、水性ポリウレタン分散液であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項14】
前記第1のポリマーが、純粋な状態において結晶性ポリウレタンであり、かつ、30〜150℃の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項15】
高い気候変動安定性を有する、自動車製造用のフィルム積層された成形部材を製造するための、請求項1から14までのいずれか1項記載の接着剤の使用。
【請求項16】
自動車製造用のフィルム積層された成形部材の製造法であって、
ここで
a)請求項1から14までのいずれか1項記載の第1の接着剤成分と第2の接着剤成分、ポリマーフィルム及び自動車への取り付けのために予定される成形部材を用立てし、
b)接着剤成分を混合し、そしてポリマーフィルム及び/又は成形部材に適用し、かつ
c)引き続きポリマーフィルムを、加圧及び/又は温度上昇下で成形部材と接着する、
自動車製造用のフィルム積層された成形部材の製造法。
【請求項17】
フレキシブルなフィルムが請求項1から14までのいずれか1項記載の接着剤により接着されている、固形成形体からの複合体。

【公表番号】特表2012−523487(P2012−523487A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505110(P2012−505110)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054142
【国際公開番号】WO2010/118948
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】