説明

結晶型キャンディ

【課題】冷涼感かつ持続した発泡感を有する、今までにない変化に富んだ新規な食感の結晶型キャンディを提供すること。
【解決手段】キシリトールとその他の糖アルコールとを含む結晶型キャンディであって、発泡性成分10〜30重量%及び平均分子量が20万以上の多糖類0.001〜5重量%を含むことを特徴とする結晶型キャンディ。平均分子量20万以上の多糖類が、ヒアルロン酸及び/又はポリグルタミン酸及び/又はキサンタンガムであることが好ましい。また、発泡性成分が有機酸と炭酸塩及び/又は炭酸水素塩とを組み合わせたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な食感を有する結晶型キャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キャンディの世界においてキシリトールを主原料とした結晶型キャンディと非結晶型のキャンディを組み合わせたことを特徴とした商品が多数見受けられるようになり、一つのカテゴリーを築いている。それに伴いキシリトールを使用した結晶型キャンディに関していくつか考案されている。例えば、キシリトールと、該キシリトールに対する割合が重量比で0.06から0.50のソルビトールを含む配合物を加熱して溶融する溶融工程と、得られた溶融液をキシリトールの融点以下でその流動性を維持される温度に保持して、キシリトールの一部又は大部分が結晶化した流動体とする保温工程と、当該保温工程の温度で流動体を所望の形状に成型する成型工程と、得られた成型体を室温目で冷却する冷却工程とを経て、キシリトールの一部が非結晶状態の滑らかで適度の固さを有するキャンディを得ることを特徴とするキャンディの製造方法(特許文献1参照)、キシリトールとエリスリトールとを含有するキャンディであって、キシリトール含有量のエリスリトール含有量に対する重量比が99:1〜80:20である口中に冷涼感をもたらすキャンディ(特許文献2参照)、キシリトールと、エリスリトール及び/又はマンニトールとを含む配合物からなるキシリトール層と、キシリトールを含まないキャンディ材料からなるキャンディ層とを並列に配列してなるキャンディ(特許文献3参照)、単糖類、二糖類及びそれらを還元した、キシリトール以外の糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つを含有するキシリトールに、組成物全体中のキシリトール配合量の1.5から15重量%の食用有機酸を配合したことを特徴とする新規キャンディ組成物(特許文献4参照)、主成分のキシリトールに、単糖類、二糖類及びそれらを還元した糖アルコール類であって、ソルビトールを実質的に含まない糖アルコールから選ばれる少なくとも1つを主成分として含む結晶化制御物質を混合してなる結晶化制御されたキシリトール結晶部を備えたことを特徴とするキャンディ(特許文献5参照)が開示されている。しかしながら、これらの特許文献で開示されているのは、あくまでもキシリトールの結晶化をコントロールするのに、キシリトールとキシリトール以外の糖質との組み合わせであったり、キシリトールの甘苦さを抑えるために有機酸を添加したものであって、発泡感を有するキャンディ結晶型キャンディではない。
【0003】
また、発泡性成分を含有したキャンディとしては、例えば、発泡性成分及び糖類として糖アルコールのみを含有するキャンディであって、糖アルコール中のマルチトールの含有率が10〜25重量%であるキャンディが開示されている(特許文献6参照)。しかしながら、特許文献6に開示されているキャンディは、保存安定性及び生産性の良好な発泡性成分含有キャンディであり、口で舐めた場合に発泡感が持続するかは不明である。また、糖アルコール中のマルチトール含有量が規定されているだけであり、キシリトール由来の冷涼感を有する結晶型キャンディについても不明である。
【0004】
また、ポリグルタミン酸又はその塩を唾液分泌促進剤として、キャンディ等の食品組成物に含有することが開示されている(特許文献7参照)が、キシリトールを主成分とする結晶型キャンディについての記載はない。
【0005】
一方、キャンディ類とは、日本農林規格(昭和48年6月4日農林省告示1086号)により水分含量が6%以下のハードキャンディ類と、6〜20%のソフトキャンディ類に大別することが出来る。前者は硬質であるのに対し、後者は軟質であることが特徴である。両者とも主原料に砂糖、水飴等の糖質を用いる。近年では消費者の嗜好の多様化により、舐めることが大前提のハードキャンディにおいても多様なキャンディが求められており、例えば、ハードキャンディの中にジャムやクリーム等の流動性をもつものを封入した商品や、ハードキャンディとハードキャンディ以外の食品とを組み合わせ商品等、味や食感に工夫がなされたハードキャンディが人気を博している。しかしながら、消費者の嗜好を満足させるためには、さらなる新規な食感を有するものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3460187号公報
【特許文献2】特開2005−333934号公報
【特許文献3】特開2005−333946号公報
【特許文献4】特開2006−280214号公報
【特許文献5】特開2006−280215号公報
【特許文献6】特許第3809132号公報
【特許文献7】国際公開第2005/049050号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、冷涼感かつ持続した発泡感を有する、今までにない変化に富んだ新規な食感の結晶型キャンディの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
(1)キシリトールとその他の糖アルコールとを含む結晶型キャンディであって、発泡性成分10〜30重量%及び平均分子量が20万以上の多糖類0.001〜5重量%を含むことを特徴とする結晶型キャンディ、
」(2)平均分子量20万以上の多糖類が、ヒアルロン酸及び/又はポリグルタミン酸及び/又はキサンタンガムである前記(1)記載の結晶型キャンディ、
(3)発泡性成分が有機酸と炭酸塩及び/又は炭酸水素塩とを組み合わせたものである前記(1)又は(2)記載の結晶型キャンディ
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の結晶型キャンディは、口中で舐めた際に、キシリトールに由来する冷涼感を有し、かつ発泡感を持続して楽しむことができる、今までのキシリトール含有キャンディにはない変化に富んだ新規な食感の結晶型キャンディを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の結晶型キャンディは、キシリトールとその他の糖アルコールとを含む結晶型キャンディであって、発泡性成分10〜30重量%及び平均分子量が20万以上の多糖類0.001〜5重量%を含むことを特徴とする。
ここで、結晶型とは、キシリトールが結晶状態で存在していることをいう。また、本発明の結晶型キャンディは、水分値0.5〜5%の状態で結晶化しているキャンディをいう。なお、水分値は減圧乾燥法で測定した値である。
【0011】
また、「その他の糖アルコール」は、キシリトール以外の糖アルコールを示し、キシリトールの結晶化をコントロールするために使用される。その例としては、マルチトール、還元パラチノース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール等が挙げられ、このうち、ソルビトール、マンニトール、エリスリトールがキシリトールの結晶化をコントロールしやすいという理由から好ましい。
【0012】
本発明の結晶型キャンディにおける、前記キシリトール及び糖アルコールの合計の含有量は、70〜90重量%であり、効率よく冷涼感を奏する観点から、75〜85重量%が好ましい。
【0013】
また、本発明の結晶型キャンディにおいて、キシリトールとその他の糖アルコールとの合計の含有量に対するキシリトールの割合としては70〜95重量%が好ましく、より好ましくは75〜90重量%である。キシリトールの割合が95重量%を超える場合にはキシリトールが多すぎてその結晶化をコントロールするのが難しく、70重量%未満の場合には、その他の糖アルコールの量が多くなり、キシリトールの結晶化に時間がかかるため好ましくない。
【0014】
本発明の結晶型キャンディに用いられる発泡性成分としては、有機酸と炭酸塩又は炭酸水素塩との組み合わせが好ましい。ここで有機酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸等が挙げられる。炭酸塩又は炭酸水素塩として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム等が挙がられ、このうち炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが味の面から特に好ましい。
【0015】
なお、本発明の結晶型キャンディ中の発泡性成分の含有量は、好適な強さの発泡感を得る観点から、結晶型キャンディ中、有機酸と炭酸塩又は炭酸水素塩との合計量が、10〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜25重量%である。前記含有量が10重量%未満の場合には、本発明の目的とする冷涼感かつ持続した発泡感を有する食感は得られない。また、30重量%を超える場合には、キシリトールの結晶化をコントロールするのが難しくなる。
【0016】
本発明の結晶型キャンディに用いられる平均分子量が20万以上の多糖類とは、キシリトールが結晶化されたキャンディ中で発泡性成分に由来する発泡感を持続的に発揮させるために必要な成分である。平均分子量が20万以上の多糖類としては、増粘効果をもつ多糖類が好ましく、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラギーナン、ポリグルタミン酸、ヒアルロン酸等が挙げられ、その中でもポリグルタミン酸、ヒアルロン酸、キサンタンガムが好ましい。また、前記多糖類としては、塩でもよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩等が挙げられる。これらの多糖類は単独又は2種類以上併用して使用できる。
【0017】
また、前記多糖類は、処理方法によって様々な分子量のものに調整可能であるが、本発明の効果を得るためには、使用する多糖類の平均分子量は20万以上であり、より好ましくは20万〜1000万である。前記分子量が20万未満の場合は、本発明の目的とする冷涼感かつ持続した発泡感を有する食感を得るのが難しくなる。また、1000万以上の場合は、粘度が高くなりすぎるため、キシリトールの結晶化をコントロールするのが難しくなる。
【0018】
なお、本発明において、多糖類の平均分子量とは重量平均分子量を意味する。重量平均分子量の測定は、公知の方法に従って行えばよい。
【0019】
本発明の結晶型キャンディ中における平均分子量が20万以上の多糖類の含有量は、0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.01重量%〜2重量%である。前記含有量が0.001重量%未満の場合には、本発明の目的とする冷涼感かつ持続した発泡感を有する食感は得られない。また、前記含有量が5重量%を超える場合には、粘度が高くなりすぎるため、キシリトールの結晶化をコントロールするのが難しくなる。
【0020】
前記の構成を有する本発明の結晶型キャンディは、例えば、キシリトールとその他の糖アルコールを、加熱・溶解し、60〜80℃に冷却した後、その温度を保った状態で、発泡性成分及び平均分子量が20万以上の多糖類を添加した後よく攪拌し、キシリトールの結晶を析出させることで得ることができる。キシリトールの結晶を析出させた直後の結晶型キャンディは、流動性を有するので、所望の型に充填したあと、さらに静置し冷却固化することで、成型することができる。なお、具体的な製造手法については、特許文献1、2、3、4、5等に記載の公知の方法に従って行えばよい。
【0021】
以上のようにして得られる本発明の結晶型キャンディは、通常のハードキャンディやソフトキャンディ等と組み合わせてもよい。例えば、本発明の結晶型キャンディを公知のハードキャンディと同時に流し込むことで2層にしたり、ソフトキャンディのセンターに封入したり様々な組み方をとる態様も本発明の範囲に入る。
【実施例】
【0022】
次に実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、実施例、比較例の記載中、特に限らない限り、「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を表す。なお、以下の実施例及び比較例で得られた結晶型キャンディの水分値は0.5〜3.0%のものであった。
【0023】
(実施例1)
キシリトール70部、ソルビトール9部を加熱溶解して得られた組成物を70℃に冷却した後、その温度を保った状態で、炭酸水素ナトリウム10部、酒石酸10部、ポリグルタミン酸(平均分子量100万)1部を添加後、よく攪拌してキシリトールを結晶化させた後、任意の型にデポジットし、冷却することで結晶型キャンディを得た。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感かつ持続した発泡感(45秒間程度)を有する今までにない食感の結晶型キャンディを得た。
なお、発泡感の持続時間は、結晶型キャンディを一度舌でなめて、発泡感を感じてからその発泡感が消えるまでの時間とする。
【0024】
(実施例2)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれているソルビトールの代わりにマンニトールを用いて実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感かつ持続した発泡感を有する今までにない食感の結晶型キャンディを得た。
【0025】
(実施例3)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれているソルビトールの代わりにエリスリトールを用いて実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感かつ持続した発泡感を有する今までにない食感の結晶型キャンディを得た。
【0026】
(実施例4)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれているポリグルタミン酸の代わりにヒアルロン酸(平均分子量66万)を用いて実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感かつ持続した発泡感を有する今までにない食感の結晶型キャンディを得た。
【0027】
(実施例5)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれているポリグルタミン酸の代わりにキサンタンガム(平均分子量200万)を用いて実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感かつ持続した発泡感を有する今までにない食感の結晶型キャンディを得た。
【0028】
(比較例1)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれているポリグルタミン酸を含有させずに実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感と発泡感はあるものの、舌で舐めた際に生じる泡が短時間で消失してしまうため発泡感が持続せず(3秒程度)、本発明の目的とする結晶型キャンディではなかった。
【0029】
(比較例2)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれている発泡性成分の量を5重量%にして、実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感はあるものの、発泡感は弱く、本発明の目的とする結晶型キャンディではなかった。
【0030】
(比較例3)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれている発泡性成分の量を35重量%にして、実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。得られた結晶型キャンディは、冷涼感と発泡感はあるものの冷却するのに時間がかかるのと、舐めた際にくずれるような食感となり、本発明の目的とする結晶型キャンディではなかった。
【0031】
(比較例4)
実施例1で調製した結晶型キャンディに含まれているポリグルタミン酸の分子量を20万未満にして、実施例1と同様の方法で結晶型キャンディを調製した。冷却後に得られた結晶型キャンディは舐めた際に、冷涼感はあるものの、発泡感が持続しておらず(10秒程度)、本発明の目的とする結晶型キャンディではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリトールとその他の糖アルコールとを含む結晶型キャンディであって、発泡性成分10〜30重量%及び平均分子量が20万以上の多糖類0.001〜5重量%を含むことを特徴とする結晶型キャンディ。
【請求項2】
平均分子量20万以上の多糖類が、ヒアルロン酸及び/又はポリグルタミン酸及び/又はキサンタンガムである請求項1記載の結晶型キャンディ。
【請求項3】
発泡性成分が有機酸と炭酸塩及び/又は炭酸水素塩とを組み合わせたものである請求項1又は2記載の結晶型キャンディ。