説明

結晶性ポリオール微粒子及びその調製方法

【課題】標的細胞もしくは組織への薬剤の送達において、アニオン荷電性薬剤を安定、かつ、効果的に担持できるキャリヤーを提供する。
【解決手段】結晶性ポリオールとカチオン性ポリマーの共存する水性溶液を凍結乾燥する工程を含む、表面にカチオン性ポリマーが固定化されている、結晶性ポリオール微粒子の調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性ポリオール微粒子に関し、具体的には、表面にカチオン性ポリマーが固定された結晶性ポリオールのナノ粒子、及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスに匹敵する数十nmスケールのナノ粒子は、哺乳動物内の腫瘍を狙って血流内を移動し、しかも血管壁を通過して健康な組織に入り込むことはほとんどなく、一方で、異常な血管の存在する腫瘍周辺に蓄積し易い傾向があることが知られている。このような作用を奏するナノ粒子の例として、本発明者らは特定のポリマーの自己組織化によって創り出されるポリマーミセルに抗腫瘍剤や核酸物質(遺伝子(プラスミドDNA)や遺伝子抑制RNA鎖(siRNA))を効果的に内包させることに成功し、薬剤内包ポリマーミセルを提供してきた(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US 7,125,546A
【特許文献2】EP 1621569A
【特許文献3】WO 2006/085664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、薬剤を送達すべき標的細胞もしくは組織の多様性を考慮するとさらに効果的な薬剤の送達に使用できる材料またはキャリヤーの開発は依然として必要であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、医療用薬剤の各種製剤を調製する際に通常、賦形剤または補助剤として使用されている一定の化合物をカチオン性ポリマーと共存させた水溶液を凍結乾燥すると、ナノサイズで粒度分布が狭く、かつ、プラスの表面電位を有する微粒子が提供できることを、ここに、見出した。さらに、このような微粒子は例えばアニオン荷電性の薬剤を安定に担持でき、しかも、担持した薬剤を標的へと、例えば腫瘍細胞に効果的に送達できることを確認した。
【0006】
したがって、本発明は、結晶性ポリオールとカチオン性ポリマーの共存する水性溶液を凍結乾燥する工程により得られる、表面にカチオン性ポリマーの固定された結晶性ポリオール微粒子の調製方法を提供する。
【0007】
本発明は、また、結晶性ポリオール微粒子であって、該結晶表面にカチオン性ポリマーが固定化されている、上記微粒子も提供する。
【0008】
このような微粒子は、限定されるものでないが、上述したとおり表面にアニオン荷電性の薬剤を安定、かつ、効果的に担持できるので各種医薬用薬剤のキャリヤーとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1(1)に係るマンニトール/PAsp(DET)ナノ粒子の粒子径(a)と表面電位(b)を表すグラフである。
【図2】本発明の実施例1(2)に係るマンニトール/PAsp(DET)/siRNAナノ粒子の粒子径(a)と表面電位(b)を表すグラフである。
【図3】本発明の実施例2(1)に係るマンニトール/PAsp(DET)/siRNAナノ粒子の粒子径(a)と表面電位(b)を表すグラフである。
【図4】本発明の実施例2(2)に係るマンニトール/PAsp(DET)/siRNAナノ粒子のRNAi活性を表すグラフである。
【図5】本発明の実施例3に係るトレハロース/PAsp(DET)ナノ粒子の散乱光強度(a)と粒子径(b)を表すグラフである。
【図6】本発明の実施例4に係るPEG/PAsp(DET)ナノ粒子の粒子径(a)と表面電位(b)を表すグラフである。
【図7】本発明の実施例5に係るマンニトール/PLysまたはマンニトール/PEIナノ粒子の散乱光強度(a)と粒子径(b)を表すグラフである。
【図8】本発明の実施例6に係るマンニトール/PEG−PAsp(DET)ナノ粒子の粒子径(a)と表面電位(b)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用する場合、各用語は特記されない限り当該技術分野で通常使用されている意味内容を有する。したがって、各用語の意味内容は、当業者に日常的に使用され、または参考にされている標準的または権威のある辞典類により確認できる。
【0011】
結晶性ポリオールは、後述する方法によって微粒子を形成できる水溶性の糖類、糖アルコール、ポリエチレングリコール等であり、本発明の目的を達成できるものであれば天然物、反合成品、合成品のいずれであってもよい。該当する場合には、医薬品の製造の許認可に関連する薬局法等により薬剤の賦形剤または補助剤として使用が認可されている水溶性の糖類、糖アルコール、ポリエチレングリコールが結晶性ポリオールとして好ましく使用できる。
【0012】
本明細書にいう結晶性または結晶とは、常温以上の温度で非多孔質の固体状態となり得、一方、狭い融点を示しうる性質またはそのような性質を有する固体をいう。限定されるものでないが、結晶性ポリオールとしては、マンニトール、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、ガラクトース、スクロース、マンノース、フルクトース、リポース、キシロース、デキストリン及びオキシエチレン単位が10〜2500のポリエチレングリコール(これらは、商品名マクロゴールとして市販されてもいる)、ものを挙げることができる。これらの結晶性ポリオールは、いずれの立体異性体であっても本発明で使用できるが、好ましくは、既に、当該技術分野で医薬の賦形剤または補助薬として使用されている立体異性体を選ぶのがよい。このような立体異性体としては、限定されるものでないが、D−マンニトール、D−ソルビトール、に準じた異性体または天然に産生されている異性体を挙げることができる。
【0013】
他方、カチオン性ポリマーとしては、ポリリシン、ポリアルギニン、スペルミン、スペルミジン、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ(ポリアミン修飾アスパルタイド)及びポリ(ポリアミン修飾グルタメート)、並びにこれらに由来するポリマー鎖のブロックとポリエチレングリコールに由来するポリマー鎖のブロックを含むブロック共重合体を挙げることができる。これらのカチオン性ポリマーの分子量は、理論的には限定されるものでないが、従来、核酸分子のキャリヤーとして使用されていたものについては、それらの使用例に従って選ぶことができる。
【0014】
薬剤の標的細胞への送達に使用することを考慮すると、これらのカチオン性ポリマーの中での好ましいものとしては、一般に細胞毒性の低いポリ(ポリアミン修飾アスパルタイド)、ポリ(ポリアミン修飾グルタメート)を挙げることができる。このようなカチオン性ポリアミノ酸としては、上述の特許文献2または3に記載されたポリアミノ酸誘導体を
具体的なものとしてあげることができるが、より好ましいものは下記式(1)で表されるポリマーである。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、
は、ヒドロキシル基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルケニルオキシ基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキニルオキシ基または炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキル置換イミノ基を表し、
は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキル基または炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキルカルボニル基を表し、
3a及びR3bは、相互に独立して、メチレン基またはエチレン基を表し、
4a及びR4bは、相互に独立して、下記の基:
−NH−(CHp1−〔NH−(CHq1−〕r1NH (i);
−NH−(CHp2−N〔−(CHq2−NH (ii);
−NH−(CHp3−N{〔−(CHq3−NH〕〔−(CHq4−NH〕r2H} (iii);及び
−NH−(CHp4−N{〔−(CHq5−N〔−(CHq6−NH} (iv)
よりなる群の同一もしくは異なる基から選ばれ、
ここで、p1〜p4、q1〜6、およびr1〜2は、それぞれ相互に独立して、1〜20の整数であり、
nは、0〜5,000の整数であり、
yは、0〜5,000の整数であり、
但し、R3a及びR3bがメチレン基の場合には、nは5以上であり、yはnより小さい整数である。
【0017】
また、これらのカチオン性ポリマーに由来するポリマー鎖のブロックとポリエチレングリコールに由来するポリマー鎖のブロックを含むブロックコポリマーの典型的なものとしては、下記式(2)で表されるポリマーを挙げることができる。
【0018】
【化2】

【0019】
式中、R、R3a、R3b、R4a、R4b、n及びyは、上記の式(1)について定義したのと同義であり、
は−S−S−または原子価結合であり、
は−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CHq1−L2b−であり、ここで、p1及びq1は、相互に独立して、1〜20の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOであり、
は、水素原子、または未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、そして
mは、30〜20,000の整数を表す。
【0020】
上記式(1)及び(2)における、アミン酸の反復単位の個数を表す、n及びyは、相互に独立して0〜5,000であることができるが、合成上の便宜を考慮すると、30〜300、好ましくは60〜150であることができる。
【0021】
また、式(2)で表されるブロックコポリマーも提供できる。式(2)において、式中、R、R3a、R3b、R4a、R4b、n及びyは、上記式(1)について定義し、上述したのと同義である。
【0022】
また、Lは−S−S−または原子価結合である。一方、Lは−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CHq1−L2b−であり、ここで、p1及びq1は、相互に独立して、1〜20の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOである。上記定義において、L及びLは、一緒になって一つの連結基となり得るように組み合わされる必要がある。例えば、Lが−NH−である場合、Lは−S−S−でなく、原子価結合である。−L−L−で好ましいのは、Lは−S−S−である場合の連結基を形成するものである。
【0023】
は、水素原子、または未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、これらの例示は、上記Rについて説明したものが適用される。エチレングリコール(またはオキシエチレン)の反復単位の数を表すmは、30〜20,000、好ましくは200〜2000、より好ましくは、500〜1000の整数を表す。なお、上記式中の各基、部分は記載されている方向性で以って結合しているものとする。
【0024】
上記のようなカチオン性ポリアミノ酸は、カチオン性基を含む部分に異なる複数のアミン官能基を有する側鎖を担持していることにより複数段階の酸解離定数(pKa)値を示し、例えば、生理条件であるpH7.4においては複数のアミン官能基が部分的にプロトン化状態にあり、例えば、核酸分子とポリイオンコンプレックス(PIC)を形成することができる。また、こうして形成されたPICはエンドソーム内(pH5.5)へ取り込
まれてpHが下がるとカチオン性ポリアミノ酸のプロトン化がさらに進行し、バッファー効果(プロトンスポンジ効果)、またはエンドソーム膜選択的膜傷害により効率よくエンドソームから細胞質へと移行することができ、低い細胞毒性での薬剤デリバリーを可能にするものと理解できる。したがって、このような複数段階のpKa値を示すカチオン性ポリマーが好ましく使用できる。
【0025】
理論により本発明の内容または技術的範囲が拘束されるものでないが、上記のような結晶性ポリオールと上記のようなカチオン性ポリマーを水性媒体中で共存させて前者を結晶化可能な状態におくと、結晶性ポリオール由来の結晶の表面(これは、ポリオールのヒドロキシル基の脱プロトン化によるアニオン荷電性を帯びる傾向にある)にカチオン性ポリマーが吸着されて当該結晶の成長が制御または阻害され、結果としてナノメーター(nm)オーダーでかつ、粒子の分散度が狭く、単分散状態にあるとも称しうる微粒子が提供できるものと理解されている。また、カチオン性ポリマーが上記のようなカチオン性ポリマーに由来するポリマー鎖のブロックとポリエチレングリコールに由来するポリマー鎖のブロックを含むブロックコポリマーであるとき、結晶性ポリオールと親和性であるポリエチレングリコール鎖の一部、または大部分が結晶性ポリオールの結晶内に取り込まれ、微結晶表面にはカチオン性ポリマーに由来するポリマー鎖が配置されている形態にあるものと理解できる。
【0026】
本発明にいう水性媒体または水性溶液の溶媒は、水、純水、脱イオン水、必要により水と混和性の有機溶媒(エタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、等)または緩衝剤を含む溶液であることができる。
【0027】
上記のような結晶性ポリオールの結晶表面にカチオン性ポリマーが「固定化されている」または「担持されている」とは、該結晶表面の性質がカチオン性ポリマーにより改変された性質が、純水中での穏和な撹拌処理では実質的に変化されず、つまり例えば、カチオン性ポリマーによりもたらされた該結晶または微粒子表面のゼータ(ζ)電位が実質的ないし有意な程度には変化せず、または一定のアニオン荷電性核酸分子(例えば、siRNA)を水性媒体中で結合できる状態にあることを意味する。こうして、該結晶または微粒子は、純水中で測定した場合に微粒子の平均粒子径が数μm以下、好ましくは、10〜1000nm、より好ましくは20〜500nmであり、特に好ましくは50〜200nmであり、表面のζ電位がプラス、好ましくは+10mV以上である。
【0028】
上記の如く本発明の微粒子は表面にカチオン荷電性を有するので、水性媒体中でアニオン荷電性の化合物または薬剤とポリイオンコンプレックスを形成できる。このようなアニオン荷電性化合物には、水性媒体中で該微粒子とポリイオンコンプレックスを形成でき、生体または臓器もしくは器官の特定部位に送達または結合したときそれら標的に何らかの有意な作用を及ぼす薬剤等であれば純粋な化合物もしくは複合体等の化合物の状態、またはタンパク質、脂質、ペプチド、核酸等の化合物の種類に関係なくいずれも包含される。特に、本発明で該微粒子に結合させることを強く企図するものは、限定されるものでないが、核酸およびその誘導体である。本発明の微粒子は、上述したように、上記特許文献1〜3に記載されるようなポリマーミセルのコア部分に実質的に薬剤が内包されるものでなく、微粒子表面に薬剤が吸着ないし結合されると理解できる。このように薬剤は、実質的に微粒子表面に存在すると理解できるにもかかわらず、薬剤が仮に小分子量の核酸であっても本発明の微粒子と生理的条件下で安定な会合体またはPICを提供できる。このような核酸は、プリンまたはピリミジン塩基、ペントース、リン酸からなるヌクレオチドを基本単位とするポリもしくはオリゴヌクレオチドを意味し、オリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、オリゴもしくはポリ一本鎖DNAおよびオリゴもしくはポリ一本鎖RNAを挙げることができ、また同一の鎖にRNAとDNAが混在したオリゴもしくはポリ2本鎖核酸、オリゴもしくはポリ1本鎖核酸も含まれる。また核酸に
含有されるヌクレオチドは天然型であっても、化学修飾された非天然型のものであってもよく、またアミノ基、チオール基、蛍光化合物などの分子が付加されたものであってもよい。限定されるものでないが、該核酸は、4〜20,000塩基、好ましくは10〜10,000塩基、さらに好ましくは18〜30塩基からなるものであることができる。また、機能もしくは作用を考慮すると、プラスミドDNA、siRNA、micro RNA、shRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマー及びリボザイムを挙げることができる。
【0029】
例えば、siRNAは標的とする遺伝子またはポリヌクレオチドに対し、公知の方法で設計されたすべてのものが本発明の微粒子と会合体またはPICを形成することができる。siRNAの鎖長は、二重鎖を構成する部分の長さが好ましくは15〜50塩基、より好ましくは18〜30塩基であることができ、当該技術分野で公知の化合物、また、それらと同様な作用または機能を有するすべてのヌクレオチドを包含する。限定されるものでないが、siRNAの具体例は、遺伝子療法の対象となりうる遺伝子を参照して設計することができる。このような遺伝子としては、限定されるものでないが、非小細胞肺癌等に関係のあるPKCα、悪性黒色腫等に関係のあるBCL−2、クローン病に関係のあるICAM−1、C型肝炎に関係のあるHCV、関節リュウマチもしくは乾癬に関係のあるTNFα、喘息に関係のあるアデノシンAI受容体、卵巣癌等に関係のあるc−raf kinase、膵臓癌等に関係のあるH−ras、冠動脈疾患に関係のあるc−myc、大腸癌に関係のあるPKA Ria、エイズに関係のあるHIV、固形癌に関係のあるDNAメチルトランスフェラーゼ、癌に関係のあるVEGF受容体、腎臓癌に関係のあるリボヌクレオチド還元酵素、CMV性網膜炎に関係のあるCMV IE2、前立腺癌に関係のあるMMP−9、悪性グリオーマに関係のあるTGFβ2、多発性硬化症に関係のあるCD49d、糖尿病に関係のあるPTP−1B、癌に関係のあるc−myb、乳癌等に関係のあるEGFR、癌に関係のあるmdr1、autotaxin及びGLUT−1の遺伝子を挙げることができる。アンチセンス核酸も当該術分野で公知ものまたはそれらと同様の機能または作用を有するすべてのものを本発明に従いPICを形成する対象とすることができる。
【0030】
式(1)で表されるポリ(アミノ酸)は、例えば、それ自体公知のアスパラギン酸エステルまたはグルタミン酸エステル由来のN−カルボン酸無水物の重合により製造したポリアミノ酸エステルを、R4aおよびR4bの基のポリアミン残基に対応するポリアミンを用いてアミノリシスを行うことによりポリ(アミノ酸)の側鎖にポリアミン残基を導入することにより、製造することができる(例えば、K.Miyata et al.,J.Am.Chem.Soc.2008,130,16287−16294、WO 2006/085664 A(特許文献3)、WO 2007/099660 A、参照)。式(2)のブロックコポリマーは、上記のように製造したポリ(アミノ酸)と、それ自体公知のポリエチレンセグメントの連結方法に従い製造できる(例えば、上記特許文献3参照)。
【0031】
本発明の微粒子は、上記の好ましいカチオン性ポリアミノ酸をはじめとするいずれかのカチオン性ポリマーと結晶性ポリオールの共存する水性溶液を凍結乾燥することにより、効率よく調製できる。このような共存する水性溶液は、カチオン性ポリマーと結晶性ポリオールの水性溶液を個別に調製したものを併せるか、単一の水性媒体にカチオン性ポリマーと結晶性ポリオールを相前後して、または同時に加えて調製してもよい。
【0032】
凍結乾燥は、凍結状態のままで減圧して試料から水や昇華性のものを除き、乾燥する手段であり、それ自体公知の凍結乾燥操作またはその改良した操作によって実施することができる。したがって、上記のカチオン性ポリマーと結晶性ポリオールの共存する水性溶液を適当な凍結器で凍結し、減圧器を備えた脱気装置で凍結状態のままで減圧乾燥すればよ
い。凍結速度及び/または水性溶液中の溶質濃度の変化により、生成する微粒子の平均粒径をある程度調節できるが、微細な微粒子を形成するには、きわめて低い温度、例えば、液体窒素温度下で急速凍結するのがよい。凍結乾燥操作は、水性媒体を吸引除去するのに適する減圧下で実施する。限定されるものでないが、このような操作は、凍結乾燥装置(DRC−1000・FDU1100(棚型)もしくはFDU−2100(枝型);それぞれ、EYELA製)を使用して実施するのが便利である。
【0033】
結晶性ポリオールとカチオン性ポリマーの共存する水性溶液は、濃度、一般に、0.1〜10w/v%、好ましくは0.25〜5w/v%の結晶性ポリオール水性溶液と濃度、一般に、1〜1000μg/mL、好ましくは10〜500μg/mLのカチオン性ポリマーの水性溶液となるように調製すればよい。こうして調製した水性溶液を上記凍結乾燥操作に供した後、再水和させることにより本発明の従う微粒子を含有する水性分散溶液が得られる。
【0034】
このような水性分散溶液にそのまま、適当であるときは、フィルターや沈殿処理等を介して精製した後、アニオン荷電性化合物または薬剤を当該水溶液に加え温和な撹拌を行った後、インキュベート(または静置)すると、微粒子表面に該アニオン荷電性化合物を担持または吸着させることができる。このような担持または吸着が生じたことは、例えば、降述する実施例に示すごとく微粒子の表面電位を測定して確認することができる。通常、最終的な該微粒子の表面電位がプラスの状態に維持される状態にあるときは、得られる微粒子の水性溶液中での良好な分散状態が維持できる。
【0035】
別法として、アニオン荷電性化合物が表面に担持または吸着した微粒子は、カチオン性ポリマーと結晶性ポリオールに加え、アニオン荷電性化合物の共存する水性溶液を調製した後、上記凍結乾燥操作に供して調製することもできる。
【0036】
<発明の具体的な態様>
本発明を説明するのに煩雑になることを避けるために、以下では、特定の結晶性ポリオール、カチオン性ポリマー及び核酸分子を使用し、そして特定の操作を実施した例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこれらに限定されることを意図するものでない。
【0037】
<製造例1>
ポリ(N−(2−アミノエチル)−アミノエチルアスパルタミド)の製造
n−ブチルアミンを開始剤として、β−ベンジル−L−アスパルテート−N−カルボン酸無水物(BLA−NCA)を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とジクロロメタンの混合溶媒に溶解し、開裂重合することによって、ポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)(PBLA)(重合度約100)を合成した。次に、PBLA(513mg)をベンゼン凍結乾燥後、25mLのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、ベンジルエステルに対して50倍当量のジエチレントリアミン(DET)を同量のNMPと混合した後、0℃、アルゴン下で、PBLA溶液をDET溶液に加え、1時間反応させた。その後、冷却した5N HCl水溶液に加え、4℃で0.01N HCl、純水の順に透析精製を行い、凍結乾燥によって回収した。こうして、標題のポリ(N−(2−アミノエチル)−アミノエチルアスパルタミド)〔以下、PAsp(DET)と略記する〕白色粉末を得た。
【0038】
<製造例2>
ポリエチレングリコール−block−PAsp(DET)コポリマーの製造
片末端がメトキシで、もう一方の末端がアミノプロピルであり、平均分子量が12,000のポリエチレングリコールをジクロロメタンに溶解し、BLA−NCAをDMFとジクロロメタンの混合溶媒に溶解して加え、40℃で2日間反応させ、ポリエチレングリコ
ール−block−PAsp(DET)コポリマー(PEG−PBLA)を得た。NMRによる解析からPBLA部分の重合度は約68であった。こうして得られたPEG−PBLAをベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行った後、アルゴン雰囲気下でNMPに溶解させ、ベンジルエステルに対して50倍当量のジエチレントリアミン(DET)を同量のNMPと混合した後、10℃、アルゴン下で、PEG−PBLA溶液をDET溶液に加え、1時間反応させた。その後、冷却した5N HCl水溶液に加え、4℃で0.01N HCl、純水の順に透析精製を行い、凍結乾燥によって回収することにより標題のブロックコポリマー(以下、PEG−PAsp(DET)と略記する)を得た。
【実施例1】
【0039】
カチオン性ポリマーで被覆されたマンニトールナノ粒子の調製とアニオン荷電性物質のナノ粒子表面への担持
この実施例では、マンニトールとカチオン性ポリマーPAsp(DET)の混合溶液に対して凍結乾燥処理を施すことにより表面がPAsp(DET)で被覆されたナノ粒子が調製されることと、そのカチオン性ナノ粒子はアニオン性薬剤siRNAを表面に担持できることを確認する。
【0040】
<材料及び方法>
(1)20w/v%のマンニトールストック溶液と5mg/mLのPAsp(DET)(重合度約100)ストック溶液をそれぞれ10mM Hepes緩衝液(pH7.3)中で調製した。それらの溶液を種々の濃度で混合することにより、マンニトール/PAsp(DET)混合溶液を得た。具体的には、マンニトール濃度を5w/v%とし、PAsp(DET)濃度を0、40、80μg/mLの3種類の混合溶液を調製した。それらの溶液をサンプル管に入れ、液体窒素に浸漬させて急速凍結処理を施した。さらにそれらを凍結乾燥装置(DRC−1000・FDU1100(棚型)もしくはFDU−2100(枝型)、EYELA製)にセットし、2〜3日間の乾燥処理を行った。乾燥物に対して純水を添加し、再水和処理を施した後、ZetaSizer(Malvern製)にて粒子径と表面電位の測定を行った。結果を図1に示す。図1(a)に示されるように、凍結乾燥処理を施したマンニトールは、PAsp(DET)の有無に関わらず約120nm前後の粒子径を有することが確認された。一方、図1(b)に示されるように粒子の表面電位は、PAsp(DET)添加なしのとき負の値(約−30mV)であったのに対し、PAsp(DET)の添加により正の値(約+35mV)となることが確認された。これより、マンニトールコアをPAsp(DET)が覆うカチオン性ナノ粒子が調製されたと考えられる。
(2)次に、得られたカチオン性ナノ粒子がアニオン性薬剤siRNAを担持できるかどうかを確認するために、PAsp(DET)濃度40μg/mLで調製したナノ粒子に対して種々の濃度(0、10、20、30、35、40μg/mL)のsiRNA溶液を添加した。そしてそれらの混合溶液に対して再び粒子径と表面電位の測定を行った。結果を図2に示す。図2−aに粒子径、図2−bに表面電位の結果を示す。図2(a)に見られるように、siRNA濃度の増加とともに粒子径はわずかに増加していき、35μg/mL以上では大きな粒子の存在が確認された。一方、図2(b)の表面電位については、siRNA濃度の増加とともに値が徐々に減少していることから、カチオン性ナノ粒子表面へのsiRNAの吸着が生じたものと考えられる。また粒子径が大幅に増加したsiRNA濃度(35、40μg/mL)ではナノ粒子の表面電位が中性に近いことから、分散安定性が低下しているものと考えられる。
【実施例2】
【0041】
マンニトール、カチオン性ポリマーPAsp(DET)、アニオン性薬剤siRNAのワンステップナノ粒子調製と培養細胞へのsiRNA導入
この実施例では、マンニトール、カチオン性ポリマーPAsp(DET)とsiRNA
の混合溶液に対して凍結乾燥処理を施すことにより、マンニトールをコアとし、表面がPAsp(DET)とsiRNAで被覆されたナノ粒子が調製されることを確認し、さらに培養細胞へのsiRNA導入を評価した。
【0042】
<材料及び方法>
(1)20w/v%のマンニトールストック溶液、5mg/mLのPAsp(DET)(重合度約100)ストック溶液、15μMのsiRNAストック溶液をそれぞれ10mM
Hepes緩衝液(pH7.3)中で調製した。それらの溶液を種々の濃度で混合することにより、マンニトール/PAsp(DET)/siRNA混合溶液を得た。具体的には、マンニトール濃度を5w/v%、siRNA濃度を0.75μMとし、PAsp(DET)濃度を80、240、320μg/mLの3種類の混合溶液を調製した。それらの溶液をサンプル管に入れ、液体窒素に浸漬させて急速凍結処理を施した。さらにそれらを凍結乾燥装置(DRC−1000・FDU1100(棚型)もしくはFDU−2100(枝型)、EYELA製)にセットし、2〜3日間の乾燥処理を行った。乾燥物に対して純水を添加し、再水和処理を施した後、ZetaSizer(Malvern製)にて粒子径と表面電位の測定を行った。結果を図3に示す。図3(a)に示されるように、凍結乾燥処理を施したサンプルは、約110nm前後の粒子径を有することが確認された。一方、図3(b)に示されるように粒子の表面電位は、約40mVとなることが確認された。(2)次に、培養細胞(GL3−ルシフェラーゼ発現マウスメラノーマB16F10)に対し、100nM siRNAとなる濃度で得られたナノ粒子を播いた。この際、siRNAの配列として、GL3−ルシフェラーゼ遺伝子に対応する配列と対応しない配列(EGFP配列)の2種類を使用した。48時間後、GL3−ルシフェラーゼたんぱく質の発現量をルシフェラーゼアッセイキット(Promega製)により定量した。結果を図4に示す。図4に示されるように、GL3−siRNAを用いた場合、PAsp(DET)量依存的にGL3−ルシフェラーゼ量が減少することが確認された。一方、EGFP−siRNAを用いた場合、GL3−ルシフェラーゼの減少が見られなかったことから、siRNA配列依存的な遺伝子抑制効果と同時にマンニトール/PAsp(DET)/siRNAナノ粒子自体の毒性は非常に低いことが確認された。
【実施例3】
【0043】
実施例2におけるマンニトールに代え、トレハロースを0、0.25、0.5、1、2.5、5、10w/v%で、PAsp(DET)を80μg/mLで用いたこと以外、実施例2(1)と同様な操作を繰り返して微粒子を得、散乱光強度(a)と粒子径(b)を測定した結果を図5に、それぞれマンニトールを用いた場合の結果とともに示す。
【0044】
図5(a)の結果より、トレハロースを用いた場合であっても、1w/v%以上では有意な散乱光強度が得られており、ナノ粒子が調製されることが確認された。一方、ナノ粒子の粒子径については、図5(b)より120〜180nmであることが確認された。マンニトールを使用した場合と比べると、ナノ粒子調製に必要とされる濃度が高く、またナノ粒子の会合数が低かった(ナノ粒子の会合数(分子量)は、散乱光強度の2乗根に比例する)。
【実施例4】
【0045】
実施例2におけるマンニトールに代え、ポリエチレングリコール(分子量6000)を用い、またPAsp(DET)を60、80μg/mLで用いたこと以外、実施例2(1)と同様な操作を繰り返して微粒子を得、粒子径(a)および表面電位(b)を測定した結果を図6に、それぞれマンニトールを用いた場合の結果とともに示す。
【0046】
図6(a)より、ポリエチレングリコールを用いた場合、300nmのナノ粒子が調製されることが確認された。一方、調製されたナノ粒子のζ電位は、PAsp(DET)な
しでは約−5mVとわずかに負に帯電していたが、PAsp(DET)の添加により約+20mVへと増加したことから、ナノ粒子表面へのPAsp(DET)の担持が確認された。マンニトールを用いた場合と比べると、粒子径が大きく、ζ電位は低いことが分かった。
【実施例5】
【0047】
実施例2におけるPAsp(DET)に代え、ポリエチレンイミン(分子量:5000、PEI)を50μg/mLで、またはポリリシン(分子量:18000、PLys)を130μg/mLで用いたこと以外、実施例2と同様な操作を繰り返して微粒子を得、散乱光強度(a)および粒子径(b)を測定した結果を図7に、それぞれPAsp(DET)を80μg/mLで用いた場合の結果とともに示す。
【0048】
図7(a)より、マンニトール濃度0.5w/v%以上で有意な散乱光強度が得られたことより、PEIまたはPLysを用いた場合であっても、PAsp(DET)と同様にナノ粒子が調製されることが確認された。一方、図7(b)より、調製されたナノ粒子の粒子径は、120〜230nmであることも確認された。
【実施例6】
【0049】
実施例2におけるPAsp(DET)に代え、PEG−PAsp(DET)を用いたこと以外、実施例2と同様な操作を繰り返して微粒子を得、粒子径(a)および表面電位(b)を測定した結果を図8に、それぞれPAsp(DET)を用いた場合の結果とともに示す。
【0050】
図8(a)から、PEG−PAsp(DET)を用いた場合であっても、PAsp(DET)と同様に、粒子径80〜130nmのナノ粒子が調製されることが確認された。また、ζ電位についても同様に、+30〜40mVであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリオールとカチオン性ポリマーの共存する水性溶液を凍結乾燥する工程を含んでなる表面にカチオン性ポリマーの固定された結晶性ポリオール微粒子の調製方法。
【請求項2】
結晶性ポリオール微粒子中の結晶性ポリオールが結晶状態にある請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
結晶性ポリオールがマンニトール、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、ガラクトース、スクロース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、デキストリン及びオキシエチレン単位が10〜2500のポリエチレングリコールからなる群より選ばれ、そしてカチオン性ポリマーがポリリシン、ポリアルギニン、スペルミン、スペルミジン、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ(ポリアミン修飾アスパルタイド)及びポリ(ポリアミン修飾グルタメート)、並びにこれらに由来するポリマー鎖のブロックとポリエチレングリコールに由来するポリマー鎖のブロックを含む共重合体からなる群より選ばれる、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
結晶性ポリオールとカチオン性ポリマーの共存する水性溶液が、濃度0.1〜10w/v%の結晶性ポリオール水性溶液と濃度1〜1000μg/mLのカチオン性ポリマーの水性溶液の混合液である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
得られる微粒子を純水中で測定すると微粒子の平均粒子径が10〜1000nmであり、表面のζ電位がプラスである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
表面のζ電位が+5〜+100mVである、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
結晶性ポリオールの微粒子であって、該結晶表面にカチオン性ポリマーが固定化されている、上記微粒子。
【請求項8】
結晶性ポリオールが結晶状態にある、請求項7に記載の微粒子。
【請求項9】
結晶性ポリオールがマンニトール、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、ガラクトース、スクロース、マンノース、フルクトース、リポース、キシロース、デキストリン及びオキシエチレン単位が10〜2500のポリエチレングリコールからなる群より選ばれ、そしてカチオン性ポリマーがポリリシン、ポリアルギニン、スペルミン、スペルミジン、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリ(ポリアミン修飾アスパルタイド)及びポリ(ポリアミン修飾グルタメート)、並びにこれらに由来するポリマー鎖のブロックとポリエチレングリコールに由来するポリマー鎖のブロックを含むブロックコポリマーからなる群より選ばれる、請求項8に記載の微粒子。
【請求項10】
カチオン性ポリマーが、下記式(1)で表される請求項7〜9のいずれかに記載の微粒子:
【化1】

式中、
は、ヒドロキシル基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルケニルオキシ基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキニルオキシ基または炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキル置換イミノ基を表し、
は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキル基または炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝状のアルキルカルボニル基を表し、
3a及びR3bは、相互に独立して、メチレン基またはエチレン基を表し、
4a及びR4bは、相互に独立して、下記の基:
−NH−(CHp1−〔NH−(CHq1−〕r1NH (i);
−NH−(CHp2−N〔−(CHq2−NH (ii);
−NH−(CHp3−N{〔−(CHq3−NH〕〔−(CHq4−NH〕r2H} (iii);及び
−NH−(CHp4−N{〔−(CHq5−N〔−(CHq6−NH} (iv)
よりなる群の同一もしくは異なる基から選ばれ、
ここで、p1〜p4、q1〜6、およびr1〜2は、それぞれ相互に独立して、1〜20の整数であり、
nは、0〜5、000の整数であり、
yは、0〜5,000の整数であり、
但し、R3a及びR3bがメチレン基の場合には、nは5以上であり、yはnより小さい整数である。
【請求項11】
カチオン性ポリマーが、下記式(2)で表されるブロックコポリマーである、請求項7〜9のいずれかに記載の微粒子:
【化2】

式中、R、R3a、R3b、R4a、R4b、n及びyは、請求項10の式(1)について定義したのと同義であり、
は−S−S−または原子価結合であり、
は−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CH
−L2b−であり、ここで、p1およびq1は、相互に独立して、1〜20の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOであり、
は、水素原子、または未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、そして
mは、30〜20,000の整数を表す。
【請求項12】
純水中で測定した場合に微粒子の平均粒子径が10〜1000nmであり、表面のζ電位がプラスである、請求項7〜11のいずれかに記載の微粒子。
【請求項13】
表面のζ電位が+5〜+100mVである、請求項12に記載の微粒子。
【請求項14】
結晶性ポリオールがマンニトールであり、カチオン性ポリマーが式(1)で表され、かつ、純水中で測定した場合に微粒子の平均粒子径が10〜1000nmであり、表面のζ電位がプラスである、請求項10に記載の微粒子。
【請求項15】
微粒子の表面に核酸分子が結合している請求項7〜14のいずれかに記載の微粒子。
【請求項16】
核酸分子がsiRNA、アンチセンス核酸、mRNA、プラスミドDNAである、請求項15に記載の微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−285460(P2010−285460A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123322(P2009−123322)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】