説明

結晶成長炉本体用の冷却構造

【課題】結晶成長炉本体用の冷却構造に関し、冷却に大量の純水を必要とせず、クーラ、冷却塔、清浄機などの設備およびその保守に関連するコストを低減できる結晶成長炉本体用の冷却構造を提供する。
【解決手段】結晶成長炉本体用の冷却構造は、上側本体1および下側本体2を備える。上側本体は外側上シェル11および内側上シェル12を含み、上側密封空間13は、外側上シェルと内側上シェルの間に形成される。下側本体2は外側下シェル21および内側下シェル22を含み、下側密封空間23は外側下シェルと内側下シェルの間に形成される。複数の給水管はそれぞれ上側および下側密封空間の周囲に配置され、複数の噴霧孔が各給水管に設けられる。ポンプの助けを借りて、外部水源からの水が、結晶成長炉本体を冷却するように給水管の噴霧孔を通ってくみ出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却構造、特に、結晶成長炉本体用に適合された冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、従来の結晶成長炉用の冷却構造を示す概略図であって、炉は上側本体91および下側本体92を備え、上側本体91は外側上シェル911および内側上シェル912を含み、下側本体92は外側下シェル921および内側下シェル922を含む。
【0003】
上側本体91では、上側密封空間910は外側上シェル911と内側上シェル912の間に形成され、下側本体92では、下側密封空間920が外側下シェル921と内側下シェル922の間に形成される。
【0004】
図1に示されるように、ポンプ94は、給水管941を介してタンク96から上側および下側密封空間910、920へと純水をくみ出し、結晶成長炉本体から生じた熱を冷却する。その後、加熱された純水が、水フィードバック管942を介してタンク96に戻され、そこでクーラ95および冷却塔951がタンク96内の純水を冷却するために使用される。さらに、水を浄化するために水清浄機97が必要とされる。そのため、従来の結晶成長炉用の冷却構造の設備および保守のためのコストが非常に高い。
さらに、上側および下側密封空間910、920は大量の冷却純水で満たされ、予期しない亀裂が、長期使用、欠陥製造、または炉の動作不良のために内側上シェル912と内側下シェル922で生じる場合があるため、純水は継続的に結晶成長炉の内部空間90に流れ込み、内部空間90は高温状態下にある。その結果、グラファイト製の設備は水と激しく反応して、大量の水素(H2)、一酸化炭素(CO)、および水蒸気が放出されて、公共の安全性に関わる事故、たとえば結晶成長炉全体の爆発などを引き起こしかねない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上側本体および下側本体を備える結晶成長炉本体用の冷却構造を提供することで、下側本体は、密閉炉室を形成するように、上側本体の下に上向きに装着される。炉室には、シリコンの多結晶を成長させる構造に関連する、加熱室、るつぼ、ヒータなどが設けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上側本体は外側上シェルおよび内側上シェルを含み、外側上シェルと内側上シェルはどちらも円柱状である。外側上シェルは内側上シェルを覆い、上側密封空間は外側上シェルと内側上シェルの間に形成される。
【0007】
さらに、下側本体は外側下シェルおよび内側下シェルを含み、外側下シェルと内側下シェルはどちらもそれぞれ椀状形状である。外側下シェルは内側下シェルを覆い、下側密封空間は外側下シェルと内側下シェルの間に形成される。
少なくとも1つの給水管および少なくとも1つの水入口管はそれぞれ、上側および下側密封空間の周囲に設けられ、複数の噴霧孔が少なくとも1つの給水管および少なくとも1つの水入口管のそれぞれに設けられる。
【0008】
ポンプが、少なくとも1つの給水管および少なくとも1つの水入口管とそれぞれ連通するために設けられる。ポンプの助けを借りて、外部水源からの水が、水噴霧によって結晶成長炉本体の温度を低下させるように、少なくとも1つの給水管および少なくとも1つの水入口管の噴霧孔を通ってくみ出される。
したがって、上記の水噴霧の方法で、冷却効果を実現することができる。さらに、大量の純水が必要とされ、公共の安全性に関わる重大な事故が生じるという従来技術に内在する欠陥を克服することができる。
【0009】
さらに、本発明によると、外側上シェルには、下部の周囲に吸気口として複数のネット孔と、上部に排気口とが設けられるため、冷気を吸気口から外側上シェルに入れ、暖気を外側上シェルの上部から排気口へと排出することができる。
【0010】
上側本体には、外側上シェルの排気口に配置される換気扇を設けることができる。この換気扇は、上側密封空間内の暖気を引き出し外側上シェルから排出させることができる。これによって、結晶成長炉の冷却が確実に促進される。複数の斜めのフィンが外側上シェルの周囲に設けられる。フィンは、雨風を遮断し、周囲空気を誘導して上方向に、排気口に向かう方向に流れさせるために吸気口の上縁に配置されるため、上側密封空間で乱気流が発生せずに熱の堆積が回避される。
【0011】
外側上シェルはネット孔を伴って配置されるため、たとえ換気扇がない場合でも、上側本体を外気に直接触れさせて、冷却効果を達成することができる。
【0012】
さらに、本発明によると、上側本体に少なくとも1つの第1の水フィードバック管を、下側本体に少なくとも1つの第2の水フィードバック管を設けることができ、第1の水フィードバック管は、上側密封空間の下に位置する一端と、結晶成長炉の外側のタンクに流れるように水を誘導する他端とを有する。第2の水フィードバック管は、下側密封空間の下に位置する一端と、結晶成長炉から外へタンクに水を誘導する他端とを有するため、蒸発しなかった水はリサイクルし再利用することができる。
【0013】
さらに、上側本体および下側本体はそれぞれ、上側および下側密封空間の周囲に配置される少なくとも1つの緊急水入口管を含むことができ、複数のシャワー孔が緊急送水管に設けられる。
【0014】
本発明によると、ポンプは、緊急送水管とポンプ間に接続される制御バルブを含むことができる。緊急時、制御信号Cが制御バルブを開放するように入力されて、ポンプで追加の水を外部水源から引き出し、緊急送水管の複数のシャワー孔を介して内側上シェルと内側下シェルに水を浴びせることで、結晶成長炉本体を急速に冷却させ、さらなる事故を回避することができる。
【0015】
本発明では、冷却を実行するのに大量の純水を使用する必要はない。これは、クーラ、冷却塔、清浄機などの設備およびその保守に関連するコストを低減するだけでなく、電気エネルギーの消費量を大幅に低減する。
本発明の他の目的、利点、および新規な特徴は、添付の図面と組み合わせて解釈したとき以下の詳細な説明から自明になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す断面図であって、冷却構造は上側本体1および下側本体2を備え、下側本体2は密閉炉室10を形成するように、上側本体1の下に上向きに装着される。炉室10には、シリコンの多結晶を成長させるための構造に関連する、加熱室、るつぼ、ヒータなどが設けられる。
【0017】
本発明によると、上側本体1は外側上シェル11および内側上シェル12を含み、外側上シェル11と内側上シェル12はどちらも円柱状である。外側上シェル11は内側上シェル12を覆い、上側密封空間13が外側上シェル11と内側上シェル12の間に形成される。
【0018】
さらに、下側本体2は外側下シェル21および内側下シェル22を含み、外側下シェル21と内側下シェル22はそれぞれ椀状形状を有する。外側下シェル21は内側下シェル22を覆い、下側密封空間23は外側下シェル21と内側下シェル22の間に形成される。
【0019】
次に図3を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す概略図であって、図4は冷却構造を示す上面図、図5は冷却構造を示す底面図で、複数の給水管14が上側密封空間13の周りに配置され、複数の噴霧孔141が給水管14に設けられる。複数の水入口管24が下側密封空間23の周りに配置され、複数の噴霧孔241が水入口管24に設けられる。本実施形態では、3つの給水管14と3つの水入口管24が存在し、原則的に、給水管14と水入口管24の数は、内側上シェル12および内側下シェル22に均一に冷却水を噴霧できるようにすべきである。
【0020】
図3に示されるように、ポンプ3は上側本体1および下側本体2の外部に設けられ、給水管14および水入口管24とそれぞれ連通される。ポンプ3の助けを借りて、外部水源、たとえば、タンクからの水が、水入口管24の噴霧孔241を介して内側上シェル12上に水を噴霧し、内側上シェル12および内側下シェル22の外部表面に水を噴霧して結晶成長炉本体の温度を下げるように、給水管14の噴霧孔141を介してくみ出される。
【0021】
したがって、このような水噴霧で、冷却効果を達成することができる。さらに、大量の純水が必要とされ、公共の安全性に対する深刻な事故が引き起こされるという従来の技術に内在する欠点を克服することができる。
【0022】
図3に示されるように、外側上シェル11にはその下部の外周に吸気口111として複数のネット孔115が、上部に排気口112が設けられるため、冷気が吸気口111から外側上シェル11に入り、暖気が外側上シェル11の上部から排出されて排気口112から外に出ることができることに着目すべきである。
【0023】
さらに、上側本体1には、外側上シェル11の排気口112に配置される換気扇113を設けることができる。この換気扇113は、上側密封空間13内の暖気を引き出し、外側上シェル11の外に排出させる。このため、結晶成長炉の冷却が確実に促進される。加えて、外側上シェル11にはネット孔115を設けることができるため、たとえ換気扇113がなくても、上側本体1を直接外気にさらして、冷却効果を実現させることができる。
【0024】
図3、4、および5を参照すると、上側本体1は、上側密封空間13の周囲に配置される緊急送水管15を含み、複数のシャワー孔151が緊急送水管15に設けられる。さらに、下側本体2は、下側密封空間23の周囲に配置される2つの緊急送水管25を含み、 複数のシャワー孔251が緊急送水管25に設けられる。
ポンプ3は、緊急送水管15、25とポンプ3間に接続される制御バルブ31を含むことができる。緊急時、制御信号Cが制御バルブ31を開放するように入力されて、追加の水を外部水源からポンプで引き出し、緊急送水管の複数のシャワー孔151、251を介して内側上シェル12と内側下シェル22に水を浴びせることで、結晶成長炉本体を急速に冷却させ、さらなる事故を回避することができる。
【0025】
上側本体1には、上側密封空間13の下に配置される一端161と、結晶成長炉から外へ流れるように水を誘導する他端162とを有する第1の水フィードバック管16を設けることができる。下側本体2には、下側密封空間23下に配置される一端261と、結晶成長炉からタンクへ流れるように水を誘導する他端262とを有する第2の水フィードバック管26を設けて、蒸発しなかった水をリサイクルし再利用することができる。
【0026】
本発明によると、冷却を実行するために大量の純水を使用する必要がない。これにより、クーラ、冷却塔、清浄機などの設備およびその保守に関連するコストを節減するだけでなく、電気エネルギーの消費量を大幅に低減することができる。
【0027】
図6を参照すると、本発明の第2の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す断面図であって、本発明の第2の実施形態は、外側上シェル20の周囲に複数の斜めのフィン114が設けられることを除き、第1の実施形態と類似の構造を有する。フィン114は、雨風を遮断し、排気口117の方向に流れるように周囲空気を誘導するために、吸気口116の上縁に配置されるため、熱の堆積を防止するように、上側密封空間17で乱気流が発生し得ない。
【0028】
本発明は好適な実施形態に関して説明したが、本発明の範囲を逸脱せずに他の変更や変形も可能であると了解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の結晶成長炉用の冷却構造を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す上面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す底面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る結晶成長炉用の冷却構造を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側本体および下側本体を備え、密閉炉室を形成するように前記下側本体が前記上側本体の底部に装着される結晶成長炉本体用の冷却構造であって、前記上側本体は外側上シェルおよび内側上シェルを含み、前記外側上シェルと前記内側上シェルはどちらも円柱状であり、前記外側上シェルは前記内側上シェルを覆い、上側密封空間は前記外側上シェルと前記内側上シェルの間に形成され、少なくとも1つの給水管が前記上側密封空間の周囲に配置され、複数の噴霧孔が前記少なくとも1つの給水管に設けられ、ポンプが前記少なくとも1つの給水管に連通し、前記ポンプの助けを借りて、外部水源からの水が、前記内側上シェル上に水を噴霧するように前記少なくとも1つの給水管の前記噴霧孔を通じてくみ出されることを特徴とする冷却構造。
【請求項2】
前記外側上シェルがその周囲に吸気口として複数のネット孔を、その上部に排気口を設けられる請求項1に記載の結晶成長炉本体用の冷却構造。
【請求項3】
前記上側本体に、前記外側上シェルの排気口に配置される換気扇が設けられる請求項2に記載の結晶成長炉本体用の冷却構造。
【請求項4】
前記外側上シェルには外周に、前記複数の吸気口の上縁に配置される複数の斜めのフィンが設けられる請求項2に記載の結晶成長炉本体用の冷却構造。
【請求項5】
前記上側本体には、前記上側密封空間の下に配置される一端と、水を前記結晶成長炉の外に流れるように誘導する他端とを有する少なくとも1つの第1の水フィードバック管が設けられる請求項1に記載の結晶成長炉本体用の冷却構造。
【請求項6】
前記上側本体は前記上側密封空間の周囲に配置される少なくとも1つの緊急送水管をさらに含み、複数のシャワー孔が前記少なくとも1つの緊急送水管に設けられ、前記ポンプは前記少なくとも1つの緊急送水管と前記ポンプの間に接続される制御バルブを含み、前記制御バルブを開放することによって、前記ポンプは外部水源から追加の水を引き出し、前記少なくとも1つの緊急送水管の複数のシャワー孔を介して、緊急時に前記内側上シェルの表面に水を浴びせる請求項1に記載の結晶成長炉本体用の冷却構造。
【請求項7】
上側本体および下側本体を備え、密閉炉室を形成するように前記下側本体が前記上側本体の底部に装着される結晶成長炉本体用の冷却構造であって、前記下側本体は外側下シェルおよび内側下シェルを含み、前記外側下シェルと前記内側下シェルはどちらも椀状形状であり、前記外側下シェルは前記内側下シェルを覆い、前記下側密封空間は前記外側下シェルと前記内側下シェルの間に形成され、少なくとも1つの水入口管が前記下側密封空間の周囲に配置され、前記複数の噴霧孔が前記少なくとも1つの水入口管に設けられ、ポンプが前記少なくとも1つの水入口管に連通し、前記ポンプの助けを借りて、外部水源からの水が、前記内側下シェル上に水を噴霧するように少なくとも1つの水入口管の前記噴霧孔を通じてくみ出されることを特徴とする冷却構造。
【請求項8】
前記下側本体には、前記下側密封空間の下に配置される一端と、水を前記結晶成長炉の外に流れるように誘導する他端とを有する少なくとも1つの第2の水フィードバック管が設けられる請求項7に記載の結晶成長炉本体用の冷却構造。
【請求項9】
前記下側本体は前記下側密封空間の周囲に配置される少なくとも1つの緊急送水管をさらに含み、複数のシャワー孔が前記少なくとも1つの緊急送水管に設けられ、前記ポンプは前記少なくとも1つの緊急送水管と前記ポンプの間に接続される制御バルブを含み、前記制御バルブを開放することによって、前記ポンプは外部水源から追加の水を引き出し、前記少なくとも1つの緊急送水管の複数のシャワー孔を介して、緊急時に前記内側上シェルの表面に水を浴びせる請求項7に記載の結晶成長炉本体用の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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