説明

結晶薄膜偏光子を用いた超ねじれネマティック液晶表示装置

シンプルで信頼性があり費用対効果が高い超ねじれネマティック液晶表示装置を開示する。前記液晶表示装置は、結晶薄膜偏光子を用いた信頼性が高くシンプルなデザインのため、すべてのポータブル電子装置の用途に適しており、特に、その環境に対する高い堅牢性のため、屋外用表示装置の用途に適している。また、前記結晶薄膜偏光子は、液晶表示装置の視特性を向上させ、さらなる利点をもたらす。本発明の液晶表示装置は、フロントおよびリヤの偏光子と超ねじれネマティック液晶層を含み、前記液晶層は、約230°〜約250°のねじれ角を有する。前記フロント偏光子および前記リヤ偏光子の透過軸は、互いに対して約70°〜約86°の角度でずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は多くの層からなり、それらの層は、前記表示装置に組み込まれた光源または外部光源のいずれかから出射された光の強度および色特性を調節する。照明システムが視認者と反対の表示装置の側に配置される場合、それはバックライトシステムと呼ばれる。液晶表示装置は、反射型または透過型のいずれかとすることができる。反射型液晶表示装置は反射層を有している。反射型LCDに入った光は、反射層で反射され、同じ側(フロント)から出る。従って、反射型LCDは周囲の光源を利用することができる。
【0003】
透過型液晶表示装置において、バックライトシステムからの光は、リヤ側から前記装置の層に入り、視認者の側の前記装置から出る。透過と反射を合わせた特性を得るために、半透明の反射層を用いる場合もあり、これにより、半透過型液晶表示装置が得られる。
【0004】
既存の液晶表示装置の技術は、屋外での利用に対して多くの欠点がある。まず、従来の液晶表示装置に使用される偏光子は、通常、セルの外側に配置される外部偏光子である。外部偏光子の配置は、湿度、紫外線照射、引っかき傷などの環境因子に対して、偏光子を不安定にしている。従って、外部偏光子を有し屋外で使用される液晶表示装置は、しばしば、さらに保護層を用いることが必要となり、これは、コストを高くし、製造工程を複雑にしている。
【0005】
中程度から高度までの情報量を扱う低コスト液晶表示装置の多くは、超ねじれネマティック(STN)型である。STN液晶のねじれ角は200°〜270°、好ましくは230°〜250°の範囲にある。このようにねじれ角が大きくなると、液晶表示装置の光反射(または光透過)の印加電圧に対する依存性は非常に高くなる。その結果、STNLCD全体は、オンとオフの状態の切り替えにおいて非常に高い感度を示すことができる。その結果、超ねじれネマティック液晶表示装置のオフ状態からオン状態への切り替えに必要な印加電圧の変化は相対的に小さくなる。この性質により、表示装置は高い多重化速度が得られる可能性がある。
【0006】
従来の超ねじれネマティック液晶表示装置の欠点には、液晶のオン状態における残留複屈折および狭い視野角がある。残留複屈折によって、表示装置のコントラストが低くなり、また、表示装置バックグランドに色(緑−黄)が付くようになる。
【0007】
超ねじれネマティック液晶表示装置について、コントラストおよび輝度を向上させるため、視野角を広げるため、そして、色特性を向上させるため、多くの場合、種々の位相差層(位相差板)が用いられる。位相差板は表示装置の画質を高めることができるが、その使用は、製造工程や表示装置のデザインを複雑にし、コストを増加させることから、低コストの単色表示装置にとって望ましくはない。従って、シンプルで信頼性が高くかつ費用対効果の高い単色表示装置は、画像を形成するのに必要な層の数が最小限であるものが望ましい。液晶表示装置の基本的なパラメーター、例えば、偏光子の透過軸間の角度、配向層のラビング方向間の角度、液晶のねじれ角および複屈折などを的確に選ぶことによって、適切な視特性を得ることが必要である。また、屋外用途のシンプルな表示装置に必要なことについては、典型的に、並外れた画質や美しさよりも、単純さ、環境に対する堅牢性、および低コストの方に重点が置かれる。
【0008】
米国特許第5,550,660号は、液晶装置を開示する。しかし、偏光子の透過軸と液晶配向層のラビング方向との間の角度を注意深く選択しても、そこに開示された装置は、ニュートラルカラーバックライトシステムとスペクトル偏光手段を用いる必要がある。この不利な点により、装置の製造技術およびデザインは複雑になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い多重化速度ならびに相対的に高いコントラスト比および輝度で画像を表示するのに適した単色液晶表示装置を提供するものである。また、本発明は、費用対効果が高く、信頼性があり、かつシンプルな液晶表示装置であって、屋外での用途に適し、湿度、紫外線、および物理的傷等の品質を低下させる可能性のある環境因子に対して安定な液晶表示装置を提供するものである。さらに本発明は、簡単に利用できる材料から、従来の方法および技術を用いて製造される液晶表示装置を提供するものである。また、本発明は、結晶薄膜からなる完全な偏光子を有する液晶表示装置を提供する。
【0010】
一実施態様において、本発明の液晶表示装置は、フロント偏光子およびリヤ偏光子を含む。前記フロント偏光子の透過軸は、2°〜10°の角度で、所定の基準軸からずれており、かつ、前記リヤ偏光子の透過軸は、80°〜88°の角度で、前記所定の基準軸からずれている。前記フロント偏光子と前記リヤ偏光子との間には、ダイレクター(director)のねじれ角が230°〜250°の範囲にあることを特徴とする超ねじれネマティック液晶層が配置されている。前記超ねじれネマティック液晶を配向させるため、フロント配向層およびリヤ配向層が設けられている。前記フロント配向層の配向方向は、前記所定の基準軸から140°〜160°の角度でずれており、かつ、前記リヤ配向層の配向方向は、前記所定の基準軸から-140°〜-160°の角度でずれている。少なくとも一つの偏光子は、負の複屈折の結晶薄膜偏光子である。
【0011】
他の実施態様において、本発明の液晶表示装置は、フロント偏光子およびリヤ偏光子を含む。前記フロント偏光子の透過軸は、92°〜100°の角度で、所定の基準軸からずれており、かつ、前記リヤ偏光子の透過軸は、80°〜88°の角度で、前記所定の基準軸からずれている。前記偏光子の間には、ダイレクターのねじれ角が230°〜250°の範囲にあることを特徴とする超ねじれネマティック液晶層が配置されている。前記超ねじれネマティック液晶を配向させるため、フロント配向層およびリヤ配向層が設けられている。前記フロント配向層の配向方向は、前記所定の基準軸から140°〜160°の角度でずれており、かつ、前記リヤ配向層の配向方向は、前記所定の基準軸から-140°〜-160°の角度でずれている。少なくとも一つの偏光子は、負の複屈折の結晶薄膜偏光子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の他の目的および効果は、以下に説明する図面を参照して、発明の詳細な説明および添付の請求の範囲を読むことにより、明らかとなる。
【0013】
本発明の液晶表示装置は、フロント基板、フロント偏光子、リヤ偏光子、およびリヤ基板を有する。フロントおよびリヤ配向層ならびにフロントおよびリヤ電極を有する液晶層は、フロントおよびリヤ偏光子との間、および、フロントおよびリヤ基板との間にはさまれて配置されている。前記液晶層のねじれ角は約230°から約250°までである。
【0014】
補償位相差板を用いていない、超ねじれネマティック液晶表示装置の典型的な望ましくない特性には、液晶の残留複屈折によって生じる、低いコントラスト比と画像の色収差が補正されていない性質とがある。位相差および偏光の両方の機能を有する補償位相差フィルムまたは複屈折性偏光子は、これらの問題を克服するのに役立つ。さらに、複屈折性偏光子を使用することで、表示装置のデザインをシンプルにすることができ、表示装置のコストを下げることができる。利用できる液晶材料の多くは正の複屈折性であるため、負の複屈折性を有する位相差層は、通常、液晶の残留複屈折を補償することができる。かくして、上述した要件を満たすため、複屈折が負である偏光子を本発明において用いられる。
【0015】
そのような偏光子と位相差板を兼ねるものを使用するには、表示装置の特定のデザインが必要であり、特に、偏光子の透過軸と、液晶と配向層との境界における液晶光軸の配向方向との間の相互の配向について、特定のデザインが必要である。一実施態様において、フロント偏光子はフロント基板と液晶層との間に配置される。前記フロント偏光子は、ある固定した基準軸に対して2°〜10°の角度でずれている透過軸を有する。リヤ偏光子は、前記基準軸に対して80°〜88°の角度でずれている透過軸を有する。前記フロント配向層は、液晶分子の表面接触ダイレクターの配向方向が前記基準軸に対して140°〜160°の角度でずれるよう、調整されている。そして、前記リヤ配向層は、液晶分子の表面接触ダイレクターの配向方向が前記基準軸に対して-140°〜-160°の角度でずれるよう、調整されている。以降、配向層に起因する配向方向は、液晶分子の表面接触ダイレクターの配向方向を意味する。このデザインは、ノーマリ・ホワイト表示装置、すなわち印加電圧がゼロのとき明るいバックグランドを有する表示装置をもたらす。フロント偏光子およびリヤ偏光子の少なくとも一つは、結晶薄膜材料からなり、かつ負の複屈折性を有する。
【0016】
他の実施態様において、ノーマリ・ブラック表示装置が提供される。前記ノーマリ・ブラック表示装置におけるフロント偏光子は、ある固定した基準軸に対して92°〜100°の角度でずれている透過軸を有する。リヤ偏光子は、前記基準軸に対して80°〜88°の角度でずれている透過軸を有する。超ねじれネマティック液晶層は、偏光子の間に配置され、かつ230°〜250°の範囲にあるダイレクターねじれ角を特徴とする。フロント配向層は、液晶分子の表面接触ダイレクターの配向方向が前記基準軸に対して140°〜160°の角度でずれるよう、調整されている。そして、リヤ配向層は、液晶分子の表面接触ダイレクターの配向方向が前記基準軸に対して-140°〜-160°の角度でずれるよう、調整されている。フロント偏光子およびリヤ偏光子の少なくとも一つは、結晶薄膜材料からなり、かつ負の複屈折性を有する。
【0017】
約230°から約250°までのねじれ角を有する超ねじれネマティック液晶層は、高い多重化レベルを有する液晶表示装置を得るのに最も一般的な手段である。多くの低コスト液晶表示装置は、超ねじれネマティック型であり、その最も広く用いられるねじれ角は240°である。フロント基板と液晶層との間に配置されるフロント偏光子は、簡単で安価な態様で、大気中の水分、引っかき傷などから守られている。好ましい態様において、リヤ偏光子は、リヤ基板と液晶層との間に配置され、例えば、フロント層により、環境因子および機械的損傷から守られる。
【0018】
偏光子材料として結晶薄膜を用いることは、本発明の液晶表示装置にとって重要である。前記結晶薄膜は、ガラス、透明プラスチック、インジウムスズ酸化物電極材料などを含む多くの種類の表面に容易にコーティングすることができる。ここで、結晶薄膜偏光子は、複数の基板の間に容易に配置することができる。この結晶薄膜は、薄く(1ミクロン未満)かつ視野角が広い特徴を有するため、本発明の液晶表示装置の角度コントラスト性能を向上させる。さらに、前記結晶薄膜は負の複屈折性を有するものであり、これは、本発明において非常に望ましいことである。また、前記結晶薄膜偏光子は、屋外用の表示装置の用途に重要な高温安定性および紫外線安定性を有する。良好な二色比とともに、特定の用途に対して偏光子コーティングの厚みを容易に調節できる能力を併せ持つ前記結晶薄膜偏光子は、液晶表示装置の高いコントラスト比を得るのに役立つ。
【0019】
この結晶薄膜偏光子(例えば、Y. Bobrov他, Thin Film Polarizers for Liquid Crystal Displays, Proceeding of SPIE, vol. 4511, 2001, pp.133-140参照)のひときわすぐれた特性、すなわち、薄いこと、前記フィルムの熱安定性および光学特性の熱安定性、種々の表面に付着させることができること、高い二色比等は、結晶薄膜の製造技術と関係がある。この技術は、Optiva Inc., South San Francisco, カリフォルニア州, 米国により開発された。米国特許第6,399,166号は、結晶薄膜を開示しており、その開示内容は、この引用により、そっくり本明細書に記載されたものとする。
【0020】
前記結晶薄膜は、二色性染料材料または複数の二色性染料の混合物をベースとする。使用される少なくとも一つの有機化合物の化学式は、極性溶媒に対する溶解性を付与する少なくとも一つのイオノゲン基、および/または非極性溶媒に対する溶解性を付与する少なくとも一つの非イオノゲン基、および/または少なくとも一つの対イオンを含む。前記対イオンは、前記材料の調製時、分子の構造中に保持されてもよいし保持されなくともよい。適当な溶媒に当該有機化合物を溶解させると、コロイド系が形成され(リオトロピック液晶)、そこにおいて分子は結合して、前記系の動力学的単位である超分子複合体となっている(WO 01/63346)。液晶相は、前記系の前駆的な配向状態であり、それは、前記材料の初期異方性を決定している。超分子を配向させる工程およびその後の溶媒を除去する過程において、光学的異方性(特に二色性)を有する固体結晶フィルムが形成される。
【0021】
中間的な光学特性を有する結晶性フィルムが得られるように、複数のコロイド系を混合することも可能である(この場合、混合超分子は溶液中で形成される)。コロイド溶液の混合物から得られる光学的に異方性の二色性結晶フィルムにおいて、吸収および屈折は、最初の成分によって決まる範囲内において種々の値を特徴とすることができる。混合超分子を形成する異なるコロイド系の混合は、種々の有機化合物の分子レベルでの寸法(格子面間隔)が一致すること(3.4±0.3Å)により、可能である。
【0022】
前記結晶性フィルムが付着される表面は、均一な濡れ性が得られるよう(表面の親水性を付与するよう)、さらに処理を施してもよい。これは、機械的処理、アニーリング、およびメカノケミカル処理とすることができる。また、同様の処理は、フィルムの厚みを減らし、また、分子秩序の程度を高めるのに、役に立ちうる。さらに、基板の表面においてフィルム内の秩序を高めるため、基板表面を機械的に処理して異方性の配向構造を形成することができる。
【0023】
本発明の液晶表示装置において高いコントラストおよび高い輝度が得られるのは、偏光子の透過軸と配向層の配向方向とを相互に配向させ、かつ、偏光子を負の複屈折性としたためである。超ねじれネマティック液晶層の残留複屈折から生じる偏光の楕円率(楕円性)は、偏光子の負の複屈折により補正される。偏光子の透過軸と液晶配向層との上述した相互配向によって、画像のコントラストを向上させることができ、反射モードおよび透過モードの両方で機能する能力を有する表示装置をもたらすことができる。
【0024】
従って、上述した液晶表示装置は、バックライトシステムを有することができる。バックライトシステムを装置に組み込むことにより、透過型液晶表示装置が得られる。装置のリヤ側に反射層を付加すれば、反射型液晶表示装置が得られる。装置のリヤ側に取り付けた半透明の反射層を用いれば、半透過型液晶表示装置が得られる。
【0025】
液晶表示装置の層中でおこる光干渉は、通常、コントラスト比を下げ、バックグランドの望ましくない着色を生じさせる。拡散反射層の利用は、視認方向に沿った多重反射(繰り返し反射)の作用を減らし、それによりコントラスト比を上げる一つの手段である。鏡面反射層を用いることにより、高い反射輝度の液晶表示装置を得ることができる。本発明の一実施態様において、液晶表示装置の任意の層に、拡散光分散材料が導入される。
【0026】
図6に示し以下に述べる構造を用いて、本発明のモデルを作った。このモデルの構造は、第一のガラス基板、第一のインジウムスズ酸化物(ITO)電極、平坦化層、第一の結晶薄膜(TCF)偏光子層、第一の配向層、液晶層、第二の配向層、第二のTCF偏光子層、第二の平坦化層、第二のITO電極、第二のガラス基板、および反射層を含んだ。従って、このモデルの構造は反射型であった。両方の偏光子層は、結晶薄膜からなるものとした。液晶層におけるダイレクターの左回りねじれ角は240°であった。平坦化層は、ITO層とTCF層との間に障壁を設けるため、そして、TCF層のコーティングに対して滑らかで平坦な界面を用意するため、設けられた。使用した材料の詳細なパラメーターを表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
このデザインの主要な性能特性を図7および図8に示す。駆動電圧の振幅は約5.7Vである。コントラスト比は約4であり、これは、鏡面反射(正反射)に基づいているから、コントラスト性能において、閾値より下の値に相当する。拡散反射を用いれば、コントラスト比を実質的により高くすることができる。
【0029】
本発明を添付の図面を参照してより詳細に説明していく。
【0030】
図1に示すように、本発明の液晶表示装置は、以下の層を有する。フロント偏光子101、フロント基板層102、フロント103およびリヤ105透明電極、フロント108およびリヤ109配向層、リヤ基板106、リヤ偏光子107、ならびに液晶層104。フロント基板層102は、フロント偏光子101の後ろに配置されている。フロント透明電極103は、インジウムスズ酸化物(ITO)からなることが好ましく、基板層102の後ろに設けられている。フロント配向層108は、透明電極103の後ろにある。フロント108とリヤ109配向層は、液晶層104をはさんでいる。リヤ透明電極105はリヤ配向層109の後ろに配置され、リヤ基板106は透明電極105の後ろに配置され、リヤ偏光子107はリヤ基板106の後ろに配置されている。この図において、偏光子層101および107は、透明基板102および106の外側表面に設けられている。
【0031】
図2は、本発明のノーマリ・ホワイト液晶表示装置における偏光子の光軸と配向層との相互の配向性を示す。図2において、本発明の実施態様は、表示装置の前面から見た状態として示されている。偏光子層および配向層の軸の配向性は、X軸201に対して規定している。対応するY軸の方向は図2に示すとおりであり、そして、Z軸の方向は、視認者に向かう方向、すなわち、表示装置のリヤ側からフロント側に向かう方向である。フロント偏光子の透過軸202は、基準軸201に対して2°〜10°の角度207をなす。リヤ偏光子の透過軸203は、基準軸201に対して80°〜88°の角度206をなす。フロント配向層のラビング方向205は、基準軸201に対して150°の角度207をなす。そして、第二の偏光子に最も近いリヤ配向層のラビング方向204は、基準軸201に対して-150°の角度208をなす。配向方向の軸は、図2において矢印で示されている。液晶のダイレクターは、150°の表示装置前面から-150°の表示装置背面まで、反時計回りの方向に240°回転210させられている。
【0032】
図2aは、本発明のノーマリ・ブラック液晶表示装置における偏光子の光軸と配向層との相互の配向性を示す。図2aにおいて、本発明の実施態様は、表示装置の前面から見た状態として示されている。偏光子層および配向層の軸の方向は、X軸201に対して規定している。フロント偏光子の透過軸202は、基準軸201に対して92°〜100°の角度207をなす。リヤ偏光子の透過軸203は、基準軸201に対して80°〜88°の角度206をなす。フロント配向層のラビング方向205は、基準軸201に対して150°の角度209をなす。そして、第二の偏光子に最も近いリヤ配向層のラビング方向204は、基準軸201に対して-150°の角度208をなす。配向方向の軸は、図2aにおいて矢印で示されている。液晶のダイレクターは、150°の表示装置前面から-150°の表示装置背面まで、反時計回りの方向に240°回転210させられている。
【0033】
図3は、バックライトシステム301を有する本発明の液晶表示装置の一実施態様を示す。バックライトシステム301のモジュールは、表示装置のリヤ側に固定されている。バックライトシステムを用いれば、周囲の光源がなくとも、透過型液晶表示装置は画像を形成できる。
【0034】
図4は、反射層401を有する本発明の液晶表示装置の一実施態様を示す。従って、これは反射型の液晶表示装置である。反射層401は、鏡面反射層または拡散反射層のいずれかとすることができる。前者は、より明るい画像をもたらすのに有用であり、一方、後者は、視認方向での静的反射の低下作用を最小限にすることができ、従って、より高いコントラストをもたらすことができる。
【0035】
図5は、内部偏光子501を有する本発明の液晶表示装置の一実施態様を示す。このデザインは、ITO電極105と配向層109との間に配置されるただ一つの内部偏光子層501を用いる。表示装置の第二の偏光子は、通常の外部偏光子101である。両方の偏光子を内部偏光子としてもよい。
【0036】
図6は、本発明の一実施態様を示す。この液晶表示装置は、第一の透明ガラス基板601、第一のITO電極602、第一の平坦化層603、第一のTCF偏光子604、第一の配向層605、液晶層606、第二の配向層607、第二のTCF偏光子608、第二の平坦化層609、第二の電極610、第二の透明ガラス基板611、および反射層612を含む。前記TCF偏光子層604および608の透過軸ならびに配向層605および607のラビング方向は、図2に示すように向きが調整されている。特に、第一(フロント)偏光子の透過軸の角度は2°〜10°であり、かつ第二(リヤ)偏光子の透過軸の角度は80°〜88°である。
【0037】
図7は、本発明の一実施態様を示す。このCIE1976色度図は、本発明による液晶表示装置の当該モデルについて得られたものである。点701は、暗状態での液晶表示装置の色度点であり、また、点702は明状態での液晶表示装置の色度点である。D65標準白色点を評価の基準として示している。
【0038】
図8は、本発明の一実施態様を示す。このイソ−コントラスト極座標図は、本発明による液晶表示装置の当該モデルについて得られたものである。本発明の液晶表示装置は、広い範囲の極角および方位角において良好なコントラスト比を示している。図8のデータは、フロント側からの鏡面反射を用いているため、閾値より下の値に相当するものであることが分かる。拡散表面または安価な反射防止被覆を用いれば、コントラスト比を顕著に増加させることができる。
【0039】
本発明の特定の実施態様について以上に示してきたものは、例示と説明を目的とするものであり、本発明を完全に網羅するものでもなく、また、本発明を開示したそのものずばりの形態に限定しようとするものでもない。上述した教示に照らして多くの変更・修飾、具体例および変形例が可能であることは明らかである。本発明の技術的範囲は、添付した請求の範囲およびその均等の範囲によって規定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の液晶表示装置の層を示す模式図である。
【図2】本発明のノーマリ・ホワイト液晶表示装置における偏光子の光軸と配向層との相互の配向性を示す図である。
【図2a】本発明のノーマリ・ブラック液晶表示装置における偏光子の光軸と配向層との相互の配向性を示す図である。
【図3】バックライトシステムを有する本発明の液晶表示装置の模式図である。
【図4】反射層を有する本発明の液晶表示装置の模式図である。
【図5】一つの内部偏光子が結晶薄膜からなる超ねじれネマティック液晶表示装置の模式図である。
【図6】本発明の一実施態様による本発明の液晶表示装置の層を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施態様による本発明の液晶表示装置についてのCIE1976色度図である。
【図8】本発明の一実施態様による本発明の液晶表示装置についてのイソ−コントラスト極座標図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過軸が、所定の基準軸に対して2°〜10°の角度でずれている、フロント偏光子層、
透過軸が、前記所定の基準軸に対して80°〜88°の角度でずれている、リヤ偏光子層、
前記フロント偏光子と前記リヤ偏光子との間に配置され、かつ230°〜250°の範囲にあるダイレクターねじれ角を特徴とする超ねじれネマティック液晶層、
配向方向が、前記所定の基準軸に対して140°〜160°の角度でずれている、フロント配向層、
配向方向が、前記所定の基準軸に対して-140°〜-160°の角度でずれている、リヤ配向層を有し、
少なくとも一つの偏光子が、負の複屈折の結晶薄膜偏光子である、液晶表示装置。
【請求項2】
さらに、前記表示装置のリヤ側に配置されたバックライトシステムを有する、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
さらに、前記表示装置のリヤ側に反射層を有する、請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記反射層は鏡面反射性である、請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記反射層は拡散反射性である、請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
さらに、前記表示装置のリヤ側に半透過層を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記半透過層は鏡面反射性である、請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記半透過層は拡散反射性である、請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記結晶薄膜偏光子は芳香環を含む少なくとも一つの二色性染料材料から作られたものであり、かつ、前記透過軸に沿う格子面間隔が3.4±0.3Åである、請求項1〜8のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記二色性染料材料は複素環式である、請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記二色性染料は安定なリオトロピック液晶を形成することができるものである、請求項9または10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
さらに、反射防止または防眩コーティングを有する、請求項1〜11のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項13】
少なくとも一つの層に拡散光散乱材料が組み込まれている、請求項1〜12のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項14】
530nm〜580nmの波長範囲内の光に対し、前記表示装置のフロント側において最大の干渉強度が得られるよう、層の厚みが選択されている、請求項1〜13のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項15】
少なくとも一つの偏光子層が前記液晶表示装置の内部に配置されている、請求項1〜14のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記結晶薄膜偏光子は、カラーフィルターとしても機能する、請求項1〜15のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項17】
透過軸が、所定の基準軸に対して92°〜100°の角度でずれている、フロント偏光子、
透過軸が、前記所定の基準軸に対して80°〜88°の角度でずれているリヤ偏光子、
前記偏光子の間に配置され、かつ230°〜250°の範囲にあるダイレクターねじれ角を特徴とする超ねじれネマティック液晶層、
配向方向が、前記所定の基準軸に対して140°〜160°の角度でずれているフロント配向層、および
配向方向が、前記所定の基準軸に対して-140°〜-160°の角度でずれているリヤ配向層を有し、
少なくとも一つの偏光子が、負の複屈折の結晶薄膜偏光子である、液晶表示装置。
【請求項18】
さらに、前記表示装置のリヤ側に配置されたバックライトシステムを有する、請求項17に記載の液晶表示装置。
【請求項19】
さらに、前記表示装置のリヤ側に追加の反射層を有する、請求項17または18に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
前記反射層は鏡面反射特性を有する、請求項19に記載の液晶表示装置。
【請求項21】
前記反射層は拡散反射性である、請求項19に記載の液晶表示装置。
【請求項22】
さらに、前記表示装置のリヤ側に半透過層を有する、請求項17〜21のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項23】
前記半透過層は鏡面反射性である、請求項22に記載の液晶表示装置。
【請求項24】
前記半透過層は拡散反射性である、請求項22に記載の液晶表示装置。
【請求項25】
前記結晶薄膜偏光子は芳香環を含む少なくとも一つの二色性染料材料から作られたものであり、かつ、前記透過軸に沿う格子面間隔が3.4±0.3Åである、請求項17〜24のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項26】
前記二色性染料材料は複素環式である、請求項25に記載の液晶表示装置。
【請求項27】
前記二色性染料は安定なリオトロピック液晶を形成することができるものである、請求項25または26に記載の液晶表示装置。
【請求項28】
さらに、反射防止または防眩コーティングを前記表示装置の前面に有する、請求項17〜27のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項29】
少なくとも一つの層に拡散光散乱材料が組み込まれている、請求項17〜28のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項30】
530nm〜580nmの波長範囲内の光に対し、前記表示装置のフロント側において最大の干渉強度が得られるよう、層の厚みが選択されている、請求項17〜29のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項31】
少なくとも一つの偏光子層が前記液晶表示装置の内部に配置されている、請求項17〜30のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項32】
前記結晶薄膜偏光子は、カラーフィルターとしても機能する、請求項17〜31のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−534971(P2007−534971A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517334(P2006−517334)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/019276
【国際公開番号】WO2004/114007
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】