説明

結晶EGFR−マツズマブ複合体、及び、得られたそれらのマツズマブ模倣物

本発明は、EGF受容体(EGFR)の細胞外ドメイン、及び、抗−EGFR抗体のマツズマブ(EMD 72000)のFab断片によって形成された結晶複合体に関する。特に、本発明は、抗体マツズマブが抗原として認識し、かつ、特異的に結合する前記EGFRにおけるエピトープ領域の同定に関する。本発明は、更に、EGFRにおけるそのエピトープ領域へのマツズマブの結合を模倣するタンパク質、ペプチド、及び、抗体構造に関し、従って、マツズマブと比較して同様の、又は改良された性質を有するEGFRアンタゴニストとして用いられうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGF受容体(EGFR)の細胞外ドメイン、及び、抗−EGFR抗体のマツズマブ(EMD 72000)のFab断片によって形成された結晶複合体に関する。特に、本発明は、抗体マツズマブが抗原として認識し、かつ、特異的に結合する前記EGFRにおけるエピトープ領域の同定に関する。本発明は、更に、EGFRにおけるそのエピトープ領域へのマツズマブの結合を模倣するタンパク質、ペプチド、及び、抗体構造に関し、従って、マツズマブと比較して同様の、又は改良された性質を有するEGFRアンタゴニストとして用いられうる。
【背景技術】
【0002】
シグナル変換経路中の関連性ある構成要素の医薬的標的を介したこれらのシグナル変換経路の破壊は、様々なタイプの癌の治療のために効果的な治療上の選択肢になっている。癌細胞における膜チロシンキナーゼ受容体は、特に、興味深い標的であり、膜受容体の表皮成長因子(EGF)ファミリーは、最も有望な標的の一つである。
EGFファミリーは、表皮成長因子受容体(EGFR、ErbB1、HER1)からなる。EGFRは、170kDの膜貫通糖タンパク質であって、(1)621アミノ酸残基からなるアミノ末端細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインを含む);(2)安定化に寄与しうるシグナル23アミノ酸膜貫通固定領域;及び(3)細胞質標的を活性化するチロシンキナーゼ活性を有する542アミノ酸C末端細胞内ドメインを含む。EGFRを刺激するリガンドの例は、表皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子−cc(TGF−a)、ヘパリン結合成長因子(HBGF)、3−セルリン(cellulin)、及び、クリプト(Cripto)−1を含む。特異的リガンドの結合は、EGFR自己リン酸化、レセプターの細胞質チロシンキナーゼドメインの活性化、及び、腫瘍成長及び腫瘍生存を制御する多様なシグナル変換経路の開始を引き起こす。
【0003】
EGFファミリー由来の受容体の機能の変化、特にEGFRの制御解除は、自己制御細胞成長、侵入、血管形成能、及び、転移の進行に関連することが分かっている。
EGF様成長因子のようなリガンドは、多様な成長制御シグナル伝達経路を開始する細胞外ドメインへの結合を介してEGFRを活性化する。2つの最も関連する経路は、MAPK(細胞外シグナル伝達制御キナーゼ[ERK]としても知られるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)マイトジェン経路、及び、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/Akt(タンパク質キナーゼB[PKB]としても知られる)経路である。
MAPK経路は、細胞質基質、核、及び、細胞膜における多くの基質分子の活性化を介して、遺伝子転写及び増殖を制御する。細胞膜へのAktの漸増が、抗アポトーシスのシグナルの発現増加、プロアポトーシスのシグナルの発現減少、及びmRNA転写の活性化に起因して、生存促進性のシグナル伝達を引き起こす点で、PI3K/Aktシグナル伝達経路は、細胞生存を仲介する。
【0004】
異常型のEGFRシグナリングによる原癌遺伝子形質転換は、様々な異なるメカニズムの結果であり、受容体過発現;活性化変異;細胞内チロシンキナーゼ部分及び受容体自己リン酸化を活性化するEGFRの立体配座の改変を誘導するために必要な二量化プロセスの変化;自己分泌成長因子のループの活性化;及び特異的ホスファターゼの欠陥を含む。細胞外ドメインの変異を有する様々なEGFR形態は、同定されており、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)は、様々なタイプの癌に関連する。
受容体タンパク質チロシンキナーゼ、例えばEGFRキナーゼは、ホモ二量化及びヘテロ二量化の双方を受けることができ、ホモ二量化受容体の組合せは、対応するヘテロ二量化受容体の組合せよりも分裂促進と形質転換とが起こりにくい(シグナル伝達が開始しないか、あまり起こらない)ことに注目するべきである(Yarden及びSliwkowski,2001,Nature Reviews,Molecular cell Biology,volume 2,127 -137;Tzahar及び Yarden,1998,BBA 1377,M25-M37)。
表皮成長因子受容体(EGFR)は、様々な表皮性癌中で異常に活性化され、抗癌治療の治療標的として多くの関心が向けられている。EGFRは、増殖、分化、及び、アポトーシスのような重要な細胞プロセスに関与する4つの受容体チロシンキナーゼのファミリー(まとめてErbB受容体として知られている)のひとつである(Hubbard及びMiller,2007)。過発現又は変異を介したEGFRの誤制御は、常時活動又は受容体ダウンレギュレーション障害をもたらし、そして、細胞の悪性転換を引き起こしうる(Mendelsohn及びBaselga,2006)。
【0005】
EGFRの細胞外領域のこれまでの5年間の構造研究に基づいて、あるモデルが、EGFRのリガンド依存的二量化及び活性化のために提案された。EGFRの細胞外領域の二量化は、EGFRのドメインIIによってもたらされる主要な相互作用による完全な受容体媒介性である。EGF−EGFRの細胞外ドメイン複合体の結晶構造(受容体ドメインが二量体型で存在する)は、Ogiso,H.等,2002,Cell 110,775-787によって提供されている。低い、非生理的pHで結晶化して得られたEGF−EGFR細胞外ドメイン複合体の構造(該受容体は、単量体型で存在する)も、提供されている(Ferguson,K.M.等,2003,Mol Cell 11,507-517)。二量形態の形質転換成長因子α(TGF−a)−EGFR細胞外ドメイン複合体の構造も決定されている(Garrett,T.P.等,2002,Cell 110,763−773)。リガンドが存在しない状況において、受容体は、ドメインIVとの分子内相互作用、又は、結合におけるほとんどの二量化接触部分をふさぐ非常に様々な配座を選択できる。リガンド結合により、EGFRの細胞外ドメインは、劇的なドメイン再構成を受ける。さらなるリガンド誘導配座の変化は、二量化に必要なドメインIIの正確な配座を安定化させる。受容体二量化は、細胞内のチロシンキナーゼドメインを、それらのアロステリックな活性を促進する、閉じた近傍に至らしめる。このメカニズムは、受容体X線構造の細胞外領域との相互作用を介してEGFR活性を阻害する多くの方法を提案し、そして、受容体−抗体複合体の生化学的分析は、ErbB受容体シグナル伝達の効果的な阻害をもたらす結合の様々な様式を示す。
【0006】
薬理学的標的EGFRへの様々な可能なストラテジーには、例えば、細胞外ドメインに結合するための活性化EGFRリガンドと競合するためのモノクローナル抗体(MAb);受容体の細胞内のチロシンキナーゼドメインの小分子阻害剤;腫瘍細胞に毒素を送達するためのEGFRリガンド共役毒素;EGFRレベルを低減するためのアンチセンスのヌクレオチド;及び、EGFRシグナル伝達経路の下流エフェクターの阻害剤がある。
悪性細胞における異常なEGFRシグナル伝達を標的にするために臨床上用いられる第一のストラテジーは、MAbの使用である。抗EGFR抗体は、受容体/リガンド相互作用、異常なシグナル伝達並びに腫瘍細胞増殖及び腫瘍細胞増大のブロックを破壊するだけでなく、該抗体は、抗体依存性細胞障害(ADCC)を介して抗腫瘍エフェクターを調整することもできる。ナチュラルキラー(NK)細胞は、IgGへの低親和性受容体FcyRIIIA/CD16を介して、抗体分子の炭素末端側終端を認識することによって、ADCCを仲介する。NK細胞は、従って、抗体-被覆腫瘍細胞と密接に相互作用でき、ネクローシス及びアポトーシスを介して細胞を破壊することができる。
【0007】
開発された第一のマウス抗EGFR MAbは、動物モデルにおいて優れた抗-腫瘍活性を示した。しかしながら、それらの臨床使用は、患者におけるヒトの抗マウス抗体の高発生率に起因して制限され、薬効が弱まった。この欠点に応じて、研究者は、抗-EGFR MAbのキメラのヒト化形態を開発した。
セツキシマブ(IMC-C225,Erbitux)キラル抗EGFR抗体は、好結果で臨床試験を終えて、様々な癌の治療として2003年に用いられ始めたこのタイプの第一のMabだった。癌の治療の活発な臨床開発下において、多くの他の抗EGFR抗体が存在する。それらの一つがマツズマブである。
【0008】
マツズマブ(EMD-72000)は、EGFRに高い特異性及び親和性で結合するヒト化lgG1 MAbである。動物腫瘍異種移植モデルにおいて、ヒトの癌、例えば頭頸癌、胃癌、膵臓癌、及び肺癌に対する強力な阻害活性を有することが分かっている。マツズマブは、EGFRへのEGFの結合をブロックすることが分かっており、それによって、下流シグナル伝達経路を阻害し、そしてそれは免疫細胞においてFcR結合を介したADCCを経て作用することもできる。マツズマブは、癌の治療としての更に開発を進めるために選択された。マツズマブは、EGFR発現ヒト肺腺癌(LXFA629)及び胃腺癌(GXF251)及び膵臓腺扁平上皮癌(PAXF546)の外科標本に対して抗腫瘍活性を示し、該外科標本は、化学療法薬(ブレオマイシン、シスプラチン、ビンデシン、パクリタキセル、イホスファミド)に反応しにくく、ヌードマウスに皮下注射されたものである。マツズマブでの治療(腫瘍が70−120mm3に達したときに開始し、2週間の間、週に一回、腹腔内で0.5又は0.5mg/マウスで投与)は、全ての3つの腫瘍タイプに対して良好な許容性及び効果があった。高い投与量で治療された胃癌及び肺癌を患った動物で、それぞれ83%及び87%で完全寛解が観察された。膵臓腫瘍において著しい減少が観察され、コントロールと比較して31%の平均腫瘍容積として観察された(27)。同所性のヒトL3.6pl膵臓腫瘍を有するマウスにおけるマツズマブ(週に2回(biweekly)100mg/kg)の抗腫瘍の効能は、同時にゲムシタビン(週に2回100mg/kg)で治療することによって、促進されることが分かった。いずれかの薬剤の単独の治療は、腫瘍の大きさ、並びに、リンパ節及び肝臓の転移を減少させた。これらの効果は、併用治療によって著しく促進された。マツズマブ単独の治療、又はゲムシタビンとの併用の治療は、微小血管密度及び増殖指数も著しく減少させた。治療は、腫瘍細胞注入の後に早く投与された場合に、最も有効であった(28)。インビトロ及びインビボでの研究からの結果は更に、マツズマブの抗腫瘍効果はADCCを関与させることが提案されている。
【0009】
マツズマブ(IMC−h425としても知られるEMD 72000)の様々な領域のアミノ酸シークエンス及びその抗腫瘍効能は、US 5,558,864及びEP 0531 472 B1にも記載されており、これら文献は参照により組み込まれる。
マツズマブの完全な軽鎖のペプチドシークエンスは、以下の通りである:(VLは下線部であり、CDRはボールド体の二重下線部である。):
【0010】
【化1】

マツズマブの完全な重鎖のペプチドシークエンスは、以下の通りである:(VHは下線部であり、CDRはボールド体の二重下線部である。):
【0011】
【化2】

【0012】
WO 2006/009694では、このようにセツキシマブによって認識されるEGFR上のエピトープドメインを同定するセツキシマブのFab断片と一緒にEGFRの可溶性細胞外ドメインによって形成される結晶複合体を開示している。
セツキシマブとマツズマブの併用が、インビトロモデルにおいて相乗効果を生み出すことを証明できたので(WO 2004/032960参照)、これら2つの抗体がEGFR上で異なるエピトープに結合することを推定することができた。
従って、マツズマブの模倣物であるペプチド、タンパク質、及び、抗体分子であって、マツズマブの同じエピトープに結合でき、EGFRの天然リガンドのアンタゴニストとして作用できるものを同定し、開発するためにマツズマブのエピトープを同定することは、特別に興味深い。
【0013】
したがって、本発明は、マツズマブの可能性のある模倣物を同定する方法であって、それぞれの結晶複合体から得られる座標の少なくともサブセットに対してスクリーニングすることで同定する方法を提供する。マツズマブに対する模倣物について、EGFR依存の病状又は疾病の治療に有用なEGFRアンタゴニストを得るために、生物学的活性のアッセイを行うことができる。EGFRアンタゴニストは、制限されないが、リガンド結合のブロック、受容体二量化の阻害、受容体基質リン酸化、遺伝子活性、及び、細胞増殖の最終的な阻害によって、EGFRチロシンキナーゼ活性を阻害するための受容体と相互作用する。好ましくは、アンタゴニストは、マツズマブと比較して、実質的に同様の又は改良された効果を有する。アンタゴニストは、EGFR発現と関連する病状の治療のために用いられる。このような疾病は、好ましくは、EGFRを発現、又は、過剰発現する腫瘍を含み、それは、EGFRのリガンドによって刺激されうる。また、EGFRのリガンドによって刺激される過剰増殖性の疾病も含まれる。
【0014】
本発明の更なる目的は、セツキシマブ、又はセツキシマブの公知のエピトープ(本発明の結果に従うとマツズマブのエピトープと異なる)に結合するセツキシマブ以外のペプチド、タンパク質、若しくは抗体分子と、上記マツズマブ模倣物を併用することである。これらの抗体(マツズマブ及びセツキシマブ)、又は、これらのエピトープに対する同様の若しくは改善された結合特性を有するように特異的に設計されたこれらの抗体の模倣物を用いて、これらの2つの抗体(マツズマブ及びセツキシマブ)によって認識されるEGFRにおけるエピトープを特異的にブロックすることによって、EGFR関連疾患及び疾病の治療の改善がなされるべきである。なぜならマツズマブ又はセツキシマブのような天然の抗体が好適な結合親和性を有することは、本来、推定することができないためである。従って、重要なエピトープ(リガンド結合をブロックし、チロシンキナーゼシグナル伝達をなくすか、減らす)を認識することは、マツズマブ(及び、場合によってはセツキシマブ)と比較して、同様か、又は好ましくは改善された特性を有する新規のエピトープ結合剤を設計し、開発することを可能にするために、特別重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、初めて、EGFRの細胞外領域の切断型に結合したマツズマブ(Fab72000)のFab断片の結晶構造を示す。この構造によって、マツズマブが、リガンド及びそのドメインにおけるセツキシマブ結合領域の双方と異なるEGFRのドメインIIIにおける新規のエピトープに結合することが分かった。この構造に基づいて、発明者は、二量化に必要な配座を取るためのEGFの立体障害によって決定されるEGFR活性の阻害の新規メカニズムを提案する。この新規のメカニズムは、現在の薬剤の応用及び新しい抗-EGFR治療の開発の双方に対して影響を及ぼす。
一つの局面において、本発明は、表皮成長因子受容体(EGFR)細胞外ドメイン及びセツキシマブのFabの受容体-抗体複合体を含む受容体−抗体複合体の結晶を提供し、該複合体において、結晶は、X線結晶学によって決定される約5.0オングストローム(Å)より良い分解能を有する。好ましくは、結晶は、X線結晶学によって決定される約4.0オングストロームより良い、更に好ましくは、約3.0オングストロームより良い分解能を有する。
【0016】
結晶は、空間群C2に属し、ユニットセル次元が、a=141Å(± 3Å)、b=205Å(±3Å)、c=81Å(±3Å)、及び、β=117°(±1°)である。好ましくは、結晶複合体は、以下のユニットセル次元を有する:a=141.1Å(±0.3Å)、b=205.0Å(±0.3Å、c=81.6Å(±0.3Å)、及びβ=117.5°(±0.5°)。
別の局面において、本発明は、マツズマブ、好ましくはマツズマブのFab断片が、特異的に結合するEGF受容体ドメインIIIにおけるエピトープ領域を提供する。このエピトープは、EGF受容体における位置433〜466の範囲中の位置、特に詳細にはSer433、Asp434、Ala448、Asn449、Asn452、Trp453、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463、Thr464、又は、Ile466に位置する1つ以上のアミノ酸残基を含む。好ましくは、位置Trp452からThr464の間の完全なシークエンストラックが、マツズマブの抗原領域として認識されるようであることを発見できた。このシークエンストラックは、EGFRのドメインIIIベータへリックスのループに対応する。それと対照的に、セツキシマブは、このシークエンストラックの外のアミノ酸Gln384、Gln408、Ser418、Ser440、Lys465、Ser468、及び、Asn469と相互作用する(WO2006/009694)。
【0017】
少なくとも、マツズマブのドメインのCDR領域又はCDR近接領域における以下のアミノ酸は、上記規定された受容体アミノ酸残基との相互作用/結合に関与する:
CDR1、軽鎖:Tyr31
CDR2、軽鎖:Asp49
CDR3、軽鎖:Trp90、His93
CDR1、重鎖:(Thr30)、Ser31、Trp33、His35
CDR2、重鎖:Asn52、Ser54、Glu50、Asn55、Asn59
CDR3、重鎖:Tyr103、Tyr101、Asp100
受容体の位置Lys454は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Ser54、Ser31、Asp100、Tyr101、Asn52、Ser54、Asn55 (全て重鎖)。
受容体の位置Lys455は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Ser54、Asn55 (全て重鎖)。
受容体の位置Leu456 は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Asn55 (重鎖)。
受容体の位置Phe457は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Trp33、Asn52、Asn55 (全て重鎖)。
受容体の位置Gly458は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Trp33、Asn59 (全て重鎖)。
受容体の位置Thr459は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Trp33、Glu50 (全て重鎖)、Trp90、His93 (全て軽鎖)。
受容体の位置Ser460は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Trp33、His35、Glu50、Tyr101 (全て重鎖)。
受容体の位置Gly461は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Trp90、Tyr31 (全て軽鎖)。
受容体の位置Lys463は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Tyr31、Asp49 (全て軽鎖)、Tyr101 (重鎖)。
受容体の位置Thr464は、好ましくは、マツズマブの以下のアミノ酸と相互作用する: Tyr103 (重鎖)。
【0018】
他の局面において、本発明は、前記模倣物/類似体の3次元構造を、上記で規定された結晶複合体の決定された3次元構造と、比較することを含むマツズマブのペプチドの模倣物又は類似体を同定する方法を提供する。好ましくは、模倣物の3次元構造は、少なくともマツズマブの結晶座標のサブセットと比較される。
更なる局面において、本発明は、ドメインIIIを含む可容性細胞外EGFR、及び、マツズマブのFab断片又はマツズマブ模倣物によって形成される結晶複合体を提供し、ここで、受容体原子及びマツズマブ/マツズマブ-模倣物の間の結合-関連の原子-原子距離は、4Å未満であり、好ましくは3Å未満である。好適な態様において、マツズマブ/EGFR複合体の前記距離は、表2に規定されるようなそれぞれの値である。
一つの態様において、マツズマブのFabと結合するか、又は本質的に相互作用する、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のEGFRアミノ酸の座標に対して、模倣物/類似体の3次元構造を比較することで、模倣物/類似体が同定される。このようなEGFRアミノ酸は、Ser433、Asp434、Ala448、Asn449、Asn452、Trp453、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463、Thr464、及び、Ile466からなる群から、好ましくは、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463、及び、Thr464からなる群から選択される。
また、他の態様において、アミノ酸残基約448からアミノ酸残基約464からなる群から、好ましくはアミノ酸残基453又は454からアミノ酸残基約464からなる群から選択されるEGFRの領域の原子座標と、模倣物の3次元構造を比較することによって、スクリーニングが行われる。また、別の態様において、EGFRの更なるアミノ酸残基、例えばSer433〜Asn452が含まれる。
【0019】
EGF受容体における以下の位置と結合するか、又は相互作用するマツズマブの模倣物、又は、EGF受容体における少なくとも以下の位置で結合するか、又は相互作用するマツズマブの模倣物は、特に重要であり、価値がある:
(1) Lys454
(2) Lys454及びLys455
(3) Lys454及びLys455及びPhe457
(4) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458
(5) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459
(6) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及びSer460
(7) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及びSer460及びGly461
(8) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及びSer460及びGly461及びLys463
(9) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及びSer460及びGly461及びLys463及びThr464
(10) Phe457
(11) Phe457及びLys454
(12) Phe457及びLys454及びGly458
(13) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459
(14) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460
(15) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460及びGly461
(16) Thr459
(17) Thr459及びLys454
(18) Thr459及びLys454及びPhe457
(19) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458
(20) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460
(21) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460及びGly461
(22) Ser460及びLys454
(23) Ser460及びLys454及びPhe457
(24) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459
(25) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459及びGly461
(26) Lys454及びPhe457
(27) Lys454及びPhe457及びSer460
(28) Lys454及びPhe457及びGly461
(29) Lys454及びPhe457及びThr459
(30) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(31) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460及びGly461
(32) Phe457及びSer460
(33) Phe457及びThr459及びSer460
(34) Phe457及びThr459及びSer460及びGly461
(35) Ala448
(36) Ala448及びAsn449
(37) Ala448及びLys454
(38) Ala448及びLys454及びPhe457
(39) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459
(40) Ala448及びLys454及びPhe457及びSer460
(41) Ala448及びLys454及びPhe457及びGly461
(42) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(43) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及びGly461
(44) Asn449
(45) Asn449及びLys454
(46) Asn449及びLys454及びPhe457
(47) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459
(48) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(49) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及びGly461
(50) Asn449及びLys454及びPhe457及びSer460
(51) Ser433及び/又はAsp433を含むこれらの選択肢(1)-(50)のいずれか。
【0020】
本発明における模倣物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は、免疫グロブリン、又は、それらの断片でありうる。該模倣物は、場合によっては、小さな、非ペプチドの分子、又は、部分的なペプチドの分子であってもよい。どのような場合であっても、模倣物は、EGFRの天然リガンドに対するEGF受容体を阻害し、ブロックすること、及び、チロシンキナーゼ活性をなくすか、又は低減することについて、マツズマブの重要な生物学的特性を有する。
本発明の別の局面において、抗体又はその断片である模倣物は、少なくともマツズマブの単鎖CDR領域において、及び/又は、CDRと相互作用し、その配座に影響する抗体の非CDRアミノ酸で、1個以上の置換の導入によって同定される。ある態様において、多くても、単一置換が、各CDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)、又は、CDRの一つのみで起こる。他の態様において、置換は、単に、CDR3中で、又は、CDR3の配座に影響するアミノ酸で起こる。別の好適な態様において、置換は、CDR2及びCDR3中で行われ、抗体配座に影響する各CDRの環境の中で行われても良い。好ましくは、置換は重鎖CDR中で起こる。
改良された模倣物を得るために修飾されたマツズマブのCDR中の好適な位置は、Trp90及びHis93(それぞれ軽鎖のCDR3)、Asp100、Tyr101、及び、Tyr103(それぞれ重鎖のCDR3)、Glu50、Asn52、Ser54、及びAsn55(それぞれ重鎖のCDR2)、Ser31及びTrp33(それぞれ重鎖のCDR1)である。
【0021】
本発明の更なる局面において、WO 2006/009694(ここに、参照により組み込まれる)によって提供されるようなセツキシマブ、又は、セツキシマブの模倣物と治療学的に併用されうるマツズマブの模倣物を同定することを提供する。一つの態様において、薬学的併用は、本発明において同定されたマツズマブ模倣物、及び、セツキシマブ模倣物で行われる。マツズマブ模倣物は、リスト(1)〜(51)に示されるようなEGFRエピトープ残基とのその結合/相互作用活性によって特徴付けられ、そして、セツキシマブ模倣物は、EGFRエピトープ残基Gln384、Gln408、Ser418、Ser440、Lys465、Ser468、及びAsn469からの一つ以上とのその結合/相互作用活性によって特徴付けられる。従って、本発明の他の局面は、マツズマブの模倣化合物、好ましくは抗体、及び
(i)EGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害し、
(ii)EGF受容体の二量化を阻害し、
(iii)EGF受容体へのEGFの結合をブロックし、そして、
(iv)EGFRの以下のアミノ酸残基、又は、少なくとも4個のアミノ酸のサブセットと結合するか、又は相互作用する第2の化合物を含む化合物の組成物である:
Gln 384、Gln 408、Ser 418、Ser 440、Lys 465、Ser 468、及び、Asn 469。
【0022】
本発明は、さらに、記載されたような模倣物を合成し、その結合又は生理学的活性をアッセイすることで、EGFR機能を阻害し、かつ、EGFR関連疾病又は病状を治療するために有用なEGFRアンタゴニストを選択する方法を提供する。本発明のある局面において、受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する模倣物が提供される。本発明の別の局面において、模倣物は、細胞で発現するEGFRの二量化を阻害する。好ましくは、模倣物は、EGFRへのEGFの結合をブロックする。本発明の模倣物は、EGFRに結合し、EGFRの機能活性を阻害し(好ましくは、マツズマブと同様か、より高い程度で)、セツキシマブと併用することもできる。
詳しくは、本発明は、更にマツズマブの模倣物候補、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は免疫グロブリン、更に好ましくは、標的抗体若しくは抗体断片であって、マツズマブと類似の、又は同様の生物学的活性を有するものを同定し、選択する方法を提供する;前記方法は、(a)模倣物-EGFR複合体の結晶構造の中のEGFRに結合した模倣化合物、又は、その断片の結合座標を、
(b)請求項1又は請求項4に規定されたマツズマブ−EGFR複合体の結晶構造の中でEGFRに結合するマツズマブのFab断片の結合座標と、
比較することを含み、
前記結合座標が、以下の(i)〜(iii)によって定義される。
【0023】
(i)マツズマブのFab断片と結合するか、又は相互作用するEGFRのアミノ酸残基の位置;該位置は、以下のアミノ酸又は少なくとも3個、4個、5個、及び6個のアミノ酸残基の群から選択される:
Ser433、Asp434、Ala448、Asn449、Asn452、Trp453、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463、Thr464及びIle466、より具体的に言うと:
(a1) Lys454
(a2) Lys454及びLys455
(a3) Lys454及びLys455及びPhe457
(a4) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458
(a5) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459
(a6) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460
(a7) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461
(a8) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461及びLys463
(a9) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461及びLys463及びThr464
(a10) Phe457
(a11) Phe457及びLys454
(a12) Phe457及びLys454及びGly458
(a13) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459
(a14) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460
(a15) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a16) Thr459
(a17) Thr459及びLys454
(a18) Thr459及びLys454及びPhe457
(a19) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458
(a20) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460
(a21) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460及び
Gly461
(a22) Ser460及びLys454
(a23) Ser460及びLys454及びPhe457
(a24) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459
(a25) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459及びGly461
(a26) Lys454及びPhe457
(a27) Lys454及びPhe457及びSer460
(a28) Lys454及びPhe457及びGly461
(a29) Lys454及びPhe457及びThr459
(a30) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a31) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460及びGly461
(a32) Phe457及びSer460
(a33) Phe457及びThr459及びSer460
(a34) Phe457及びThr459及びSer460及びGly461
(a35) Ala448
(a36) Ala448及びAsn449
(a37) Ala448及びLys454
(a38) Ala448及びLys454及びPhe457
(a39) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459
(a40) Ala448及びLys454及びPhe457及びSer460
(a41) Ala448及びLys454及びPhe457及びGly461
(a42) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a43) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a44) Asn449
(a45) Asn449及びLys454
(a46) Asn449及びLys454及びPhe457
(a47) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459
(a48) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a49) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a50) Asn449及びLys454及びPhe457及びSer460
(a51) Ser433及び/又はAsp433を含む選択肢(a1)−(a50)のいずれか、
【0024】
(ii)これらの位置のEGFRアミノ酸の中の特定の原子と、これらの位置のEGFRの前記アミノ酸残基と結合するか、又は相互作用する模倣化合物の中での特定の原子との間の距離、及び、
(iii)参照として、これらの位置のEGFRアミノ酸の中の特定の原子と、マツズマブのFab断片の中の特定の原子との間の距離(ここで、前記位置のEGFRのアミノ酸残基の原子と、前記結晶複合体中でそれらと結合するか、又は相互作用する模倣化合物の原子との間の距離が、4Å未満であり、好ましくは3Å未満であり、場合によって2Å未満である)。
【0025】
他の局面において、本発明は、マツズマブ(EMD72000)ではない化合物、又はマツズマブの模倣化合物を提供し、該化合物は、
(i)EGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害し、
(ii)EGF受容体の二量化を阻害し、
(iii)EGF受容体へのEGFの結合をブロックし、そして、
(iv)EGFRの位置448と464との間の、好ましくは、EGFRの位置454と459との間のシークエンストラックの少なくとも3個のアミノ酸残基と、結合するか又は相互作用する。より好ましくは、化合物は全てのEGFRのアミノ酸:Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463及びThr464と結合するか、又は相互作用し、特に:Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458及びThr459と結合するか、又は相互作用する。
【0026】
本発明の別の局面において、
・EGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害し、
・EGF受容体の二量化を阻害し、
・EGF受容体へのEGFの結合をブロックし、そして、
・マツズマブ(EMD 72000)に由来する、
抗EGFR抗体を設計する方法であって、
(i) マツズマブの重鎖及び/又は軽鎖のCDR領域中の、又は、CDRに隣接したフレームワーク領域(FR)中の、少なくとも1個のアミノ酸を、他のアミノ酸で置換し、
(ii) 前記修飾されたマツズマブのFab断片及びEGFRの可溶細胞外ドメインIII(sEGFRd3)によって形成される結晶複合体を調製し、
(iii) 上記で規定されたEGFRドメイン(例えばシークエンスa1−a50)中の特定のアミノ酸残基の位置に対する上記のように形成される結晶複合体の原子座標を、sEGFRd3と一緒に非修飾のマツズマブによって形成される参照用の結晶複合体の対応する座標と比較し、
(iv) EGFRドメインにおける前記特定のアミノ酸残基の位置に対してより密接な相互作用をとらせる原子座標を有する修飾されたマツズマブを選択し、
(v) 標準方法でその結合親和性及び生物学的活性をアッセイし、そして、
(vi) 工程(i)〜(v)を繰り返しても良い、方法を提供する。
【0027】
他の局面において、本発明は、この出願書類に記載された方法によって同定されたマツズマブ模倣物を提供する。
他の局面において、本発明は、同定された模倣分子を投与することを含むEGFRを阻害する医薬組成物及び方法を提供する。
他の局面において、本発明は、同定された模倣物を投与することを含むEGFR発現に関連する疾病又は病状を治療する医薬組成物及び方法を提供する。
ある非限定的な態様において、本発明は、同定された模倣物を投与することを含むEGFRを発現した腫瘍細胞の成長を阻害する方法を提供する。
別の態様において、本発明は、マツズマブ模倣物でEGFRのリガンドによって刺激された過剰増殖性疾病を治療する医薬組成物及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】マツズマブは、EGFRのドメインIIIに結合する。 A.左側のパネルは、固定化Fab72000に結合したsEGFR及びsEGFRd3の表面プラズモン共鳴(SPR)分析結果を示す。バイオセンサー表面にFab断片を共有結合させ示された濃度で一連のサンプルをバイオセンサー表面に通過させた。sEGFR(黒いしるし)及びsEGFRd3(赤いしるし)で表示したデータを示す。それぞれの濃度での平衡SPR反応値を、最大結合量の割合として表す。曲線は、これらのデータを示された単純な1サイトのラングミュア結合式に適合させたものである。KD値(少なくとも3回の独立した結合実験に基づく)は、sEGFRで103.2±4.0nMであり、sEGFRd3で50.1±1.3nMである。 右側のパネルは、固定化EGFへのsEGFRの結合に競合するFab72000の能力を示す。600nMのsEGFRのサンプルへのFabの示された過剰量の添加で得られた平衡SPR反応を示し、Fabを添加しないで得られた反応と比較して規格化した。比較のために、Fabを添加しない場合のsEGFRの結合、及び、セツキシマブ(FabC225)由来のFab断片の2倍モル過剰量添加による予め報告されている値を示した(Li等、2005)。各データの点は、少なくとも3回の独立した測定の平均値である。
【図1B】B.左側において、Fab72000:sEGFRd3複合体の模型図を示す。参照のために、同じ配向でドメインIIIと連結されたsEGFRの模型図を、その左に示す。ドメインIは赤色に着色され、ドメインIIは緑色に着色され、そして、ドメインIII及びIVは、灰色の中にそれぞれ赤色及び緑色で強調された第2の構造要素を含む。Fab72000は、VL鎖がシアンに着色され、VHが黄色に着色されている。図中のボックス(□)は、図1Cで示されるFab72000:sEGFRd3複合体の領域を示す。矢印は、図1C中で詳細に表す目的で行われる回転を示す。
【図1C】C.sEGFRのドメインIIIにおけるFab72000結合サイトの拡大図である。VL及びVH鎖は、灰色の中でそれぞれシアン及び黄色で強調されて表される。相互作用するCDRは、VL鎖のL2及びL3がシアンで示され、H2及びH3が黄色で示される。主要な相互作用に関与するアミノ酸の側鎖を示す。アミノ酸は、Fab72000のVH由来のアミノ酸が黄色背景で、VL由来がシアン背景で、sEGFRd3由来が黒で標識されている。水素結合は、緑色の破線で示される。
【図2】ドメインIIIにおけるマツズマブ結合サイトは、EGF/TGFa結合サイトをふさがない。 A.sEGFRにおけるマツズマブエピトープの変異の分析結果である。固定化EGFへの変異sEGFRの結合が黒色で示され、Fab72000表面への変異sEGFRの結合が赤色で示される。データは、図1Aにおいて記載されたように表される。SPR反応は、野生型sEGFRの反応の結合の%割合として表す。 B.図1Bと同じ配向におけるドメインIIIの表面図を示す。左側において、表面はマツズマブの結合サイト(赤色)及びEGFの結合サイト(緑色)で着色されて示される。Aにおける結合の実験での変異残基は標識されている。右側に、ドメインIIIの同じ配向で、セツキシマブの結合サイト(黄色)、EGFの結合サイト(緑色)、及び、それらの重複(青色)を示す。
【図3A】マツズマブによるEGFRの阻害のメカニズムに対する影響 A.右側にFab72000/sEGFRd3の複合体、左側にEGF結合sEGFR二量体の模型図を示す。Fab7200/sEGFRd3の複合体中のドメインIIは、二量体の右のプロモーター中のドメインIIIと同じ配向である。ドメインIIIは赤色/灰色で示され、Fab軽鎖がシアン、及び重鎖が黄色で示される。二量体において、リガンドは、紫色に着色され、ドメインI及びIIIは赤色に着色され、ドメインIIは緑色に着色されている。ドメインIIIにおける第2の構造要素は灰色で陰影を付けられている。矢印は、図3B中の該配向への回転を示す。
【図3B】B.拡大された受容体配座のFab72000モデルの概略図である。Fabは、軽鎖がシアンに着色され、重鎖が黄色に着色された表面図で示される。受容体ドメインは、模型図のように示され、ドメインIが赤色に着色され、ドメインIIが緑色に着色され、ドメインIIIが赤色/灰色に着色されている。ドメインIのN-末端は、ボックス1で示されたように軽鎖と衝突する。ボックス2は、図3Cでより詳細に示される領域を示す。
【図3C】C.二量化構成要素受容体配座でのドメインII/III相互作用を安定化する二量体に近接したFab72000の拡大図である。sEGFRドメインIIは緑色に着色された球体で示され、ドメインIIIは赤色/灰色に着色された模式図で示される。ドメインII及びIIIにおける二量化安定性に関与する極めて重要なアミノ酸は、黒で着色されている。ドメインII/III相互作用を介して二量体接触部分に曝されたドメインIIループ(残基D279及びH280)は、アスタリスクの印がつけられている。Fab72000 VLは、表面図にて灰色で示される。結合は、破線の黒い線で示される。ドメインI、IV、及びVHは、相互作用を明確に示すために記載されていない。
【図3D】マツズマブ及びセツキシマブによるEGFR二量化の阻害の異なるメカニズム 模型図の中心は、リガンド誘導EGFR二量体を示し、ドメインIが赤色、ドメインIIが緑色、ドメインIIIが赤色の縁で囲まれた灰色、ドメインIVが緑色の縁で囲まれた灰色で示され、そして、リガンド(E)が紫色で示され、1つのプロモーターの色が対比的に強調される。Fab72000がsEGFRのドメインIIIに結合し、受容体が立体的に二量化を必要とする配座を取れないようにする。重要なことは、Fab72000は、高い親和性で引き起こされる二量体の構成で重要なドメインIIの局所的な配座変化をブロックすることである。阻害は、非競合的である;ドメインIIIにおけるリガンド結合サイトは、ブロックされない。これとは対照的にFabC225(セツキシマブ)は、ドメインIIIにおけるリガンド結合サイトをブロックし、かくしてリガンド誘導受容体二量化及び活性化を抑制する競合阻害剤である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本発明は、EGFR細胞外ドメイン、特に、ドメインIIIの共結晶を提供する。該結晶は、好ましくは、空間群C2及び以下のユニットのセル次元を有する:
a=141.1Å(±0.3Å)、b=205.0Å(±0.3Å)、c =81.6Å(±0.3Å)、及び、β=117.5°(±0.5°)。
EGFR−マツズマブのFab複合体の結晶化は、マツズマブのFab及びEGFRの溶液から、様々な技術、例えば、マイクロバッチ、水滴法、シッティングドロップ(sitting drop)、サンドウィッチドロップ(sandwich drop)、播種、及び、透析を用いて行われうる。溶液は、好適なバッファー中で、EGFR細胞外ドメインをマツズマブのFabと結合させることで調製される。標準的なバッファー剤は、例えば、ヘペス、トリス、MES、及び、酢酸が用いられうる。バッファー系は、特に、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸ナトリウム/カリウム、酢酸アンモニウムのような塩の添加によって処理されてもよい。イミダゾールは、バッファーとして用いてもよい。塩の濃度は、好ましくは約10mM〜約500mMであり、より好ましくは、約25mM〜約100mMであり、最も好ましくは、約50mMである。バッファーのpHは、好ましくは約6〜約8であり、より好ましくは約6〜約7である。溶液中のタンパク質の濃度は、好ましくは、沈殿が生じるほどの過飽和濃度である。溶液は、タンパク質安定剤を含んでもよい。
【0030】
一つの態様において、沈殿剤、すなわち沈殿を誘導する試薬の存在によってタンパク質の可溶性を減少させる貯蔵器と該溶液との接触で、結晶を沈殿させる。このような接触は、蒸気拡散で行われうる。沈殿剤の例は、硫酸アンモニウム、エタノール、3−エチル−2,4ペンタンジオール、及び、グリコールを含み、特に、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。利用されるPEGは、好ましくは、約400〜約20,000Da、より好ましくは約3000Daの分子量を有し、であって、約10%〜約20%の濃度、より好ましくは、約15%(w/v)の濃度を有する。いくつかの沈殿剤は、タンパク質溶解性に好ましくないバッファーpHにすることによって作用しうる。
結晶化の間の温度は、好ましくは約0℃〜約30℃であり、より好ましくは約20℃〜約30℃であり、最も好ましくは約25℃である。構造の生成に加えて、本発明の結晶化技術は、タンパク質の純度を増加させることにも用いられうる。
【0031】
ある態様において、EGFRと接触するマツズマブの模倣化合物の少なくともいくつかの原子の位置は、EGFRと接触するマツズマブの原子の位置と対応する。好ましくは、1〜4Å、好ましくは1〜3Åの距離範囲内で対応する。この原子は、通常、マツズマブのFabの対応する原子と同様の様式(すなわち、極性、塩基性、酸性、疎水性)でEGFRと相互作用する。模倣物は、様々な数の上記の対応する原子を含むことができ、EGFRへの模倣物の結合は、上記の対応する相互作用に、完全に又は部分的にのみ依存しうる。ある態様において、このようなEGFRとの原子相互作用は、EGFRと相互作用する模倣物の他の原子の相互作用によっても補完されうる。模倣物の結合能は、本分野で公知の様々なコンピューター法及びプログラムによって評価されうる。
本発明における模倣物は、EGFRに結合し、そして、インビボ及びインビトロの双方においてマツズマブの効果、好ましくは、EGFRアンタゴニストとしての効能を模倣する。模倣化合物は、EGFRとの親和性、好ましい効能及び/又は好ましい選択性のような基準に基づいて設計されうる。これらの模倣物は、少なくともマツズマブの独自の生物学的活性又は結合活性を有する。生物学的活性及び/又は結合活性を決定するための方法及びアッセイは、本分野において公知である。
【0032】
ここで用いられる用語「模倣物」又は「模倣化合物」は、EGFRへの特異性を模倣した化合物を含む。特に、模倣化合物は、マツズマブと同等にEGFRをブロックすることによってチロシンキナーゼ活性を阻害する。好ましくは、本発明における模倣化合物は、ペプチド又はポリペプチドであり、又は、より好ましくは、抗体又はその標的CDR含有断片である。最も厳密な意味において「模倣物」は、マツズマブと異なる抗体(例えば修飾されたマツズマブ)であるが、マツズマブと比較したときに、EGFRに関する生物活性が同様であるか又はまったく同じである抗体である。
好適な模倣化合物のスクリーニング及び選択の後に、選択された模倣物を合成でき、そして、模倣物の生物学的活性又は生理学的活性を測定するために行われる様々なアッセイでEGFRアンタゴニストが選択される。好適なEGFRアンタゴニストは、以下の特性の1つ以上を有する:EGFRチロシンキナーゼ活性を阻害すること;EGFRへのリガンド結合をブロックすること;EGFR二量化(EGFRのホモ二量体又は他のEGFRファミリー受容体サブユニットとのヘテロ二量体)を阻害すること;EGFR基質リン酸化を阻害すること;EGFR仲介遺伝子活性化を阻害すること;EGFRを発現する細胞の成長又は増殖を阻害すること。好ましくは、アンタゴニストは、マツズマブと比較してEGFRアンタゴニストとして実質的に同様の又は改良された有効性を有する。
【0033】
チロシンキナーゼ阻害は、公知の方法を用いて決定されうる;例えば、組換えキナーゼ受容体の自己リン酸化レベル、及び/又は、天然の若しくは合成の基質のリン酸化を測定することによって決定されうる。従って、リン酸化アッセイは、本発明のEGFRアンタゴニストを決定するのに有用である。リン酸化は、例えば、ELISAアッセイ又はウエスタンブロットにおいてリン酸化チロシンに特異的な抗体を用いて検出されうる。チロシンキナーゼ活性のためのいくらかのアッセイは、Panek等, J. Pharmacol. Exp. Thera. (1997) 283: 1433-44及び Batley等, Life Sei. (1998) 62: 143-50に記載されている。
リガンド結合をブロックするための模倣物の能力は、例えば、インビトロ競合アッセイによって測定されうる。ここで、EGFのようなEGFRのリガンドを固定して、固定化リガンドへのEGFRの結合を競合的に阻害するための模倣物の有効性を決定するために結合アッセイを行う。
インビトロアッセイは、EGFRアンタゴニストを決定するためにも利用されうる。例えば、受容体チロシンキナーゼ阻害は、阻害剤が存在するときと存在しないときにおいて受容体リガンドで刺激された細胞ラインを用いてマイトジェンのアッセイによって観測されうる。
【0034】
別の局面において、本発明は、マツズマブの模倣物の治療的な有効量を投与することで、哺乳類、好ましくはヒトにおける、EGFR依存疾病、疾患、及び、病状を治療する方法を提供する。
本発明のマツズマブ模倣物は、EGFRを発現、又は、過剰発現する腫瘍を治療するために特に有用である。EGFR(過剰)発現腫瘍は、この状態においてEGF存在に特に敏感であり、さらに、腫瘍生成EGF又はTGF−aによって刺激されうる。
EGFRを発現し、EGFRのリガンドによって刺激される腫瘍の例は、癌腫、グリオーマ、肉腫、腺癌、腺肉腫、及び、腺腫を含む。このような腫瘍は、実際には、体の全ての部分、例えば胸部、心臓、肺、小腸、大腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、睾丸、頸部、又は、肝臓で生じうる。
【0035】
本発明の他の形態において、マツズマブ模倣物、好ましくはマツズマブのペプチド模倣物又は抗体模倣物は、1つ以上の他の抗腫瘍薬又は細胞毒性薬、例えば化学療法剤(放射能を含んでもよい)と併用投与されうる。このような治療は、本分野では公知である。好適な抗腫瘍薬は、例えばアルカリ化剤又は抗代謝剤であり得る。アルカリ化剤の例は、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、及び、ダカルバジンを含む。抗代謝薬の例は、例えばドキソルビシン(doxorabicin)、ダウノルビシン(daunorabicin)、パクタキセル、及び、イリノテカン(CPT−11)を含む。さらに、細胞毒性薬は、IL−2のような好適なサイトカインである。化学療法薬又は細胞毒性薬は、マツズマブの模倣化合物にも結合でき、又は、細胞毒性薬がペプチド又はポリペプチドである場合に、融合タンパク質を形成する抗体又はペプチド模倣物、好ましくは免疫サイトカインと融合できる。
【0036】
<マツズマブが、EGFRのドメインIIIに結合する>
EGFRへのマツズマブの結合の様式を決定するために、そして、この治療抗体によるEGFEの阻害のメカニズムを解明するために、この抗体のFab断片及びEGFRの細胞外領域間の複合体のX線結晶構造を決定した。まず、表面プラズモン共鳴(SPR/Biacore)を用いて、CM5バイオセンサーチップ上に固定化されたFab72000へのsEGFRの結合を実験した(実施例参照)。セツキシマブのエピトープは、sEGFRのドメインIII上にのみ存在することが予め分かっている(Li等、2005)。
これがマツズマブでも変わらないのかどうか示すために、この同じ固定化Fab72000への単離ドメインIII(sEGFRd3;成熟EGFRのアミノ酸310-514)の結合を分析した。図1Aに示されるように、sEGFR及びsEGFRd3は、それぞれKD-値が103.2±4.0nM及び50.1±1.3nMで固定化Fabに結合する。セツキシマブに似たマツズマブは、より強固にsEGFRd3に結合し、これは、おそらくsEGFRの他のドメインからの立体障害がないことに起因する。SPR/Biacoreを用いることで、我々は、次に、固定化EGFへのsEGFRの結合と競合するマツズマブの能力を試験した(図1A)。Fab72000の2倍モル過剰の存在下で、EGFBiacore表面上を通ったsEGFRの600nMのサンプルの平衡SPR応答は、Fabを添加しないそれと比較して45%減少した。さらに50倍過剰まで添加しても、この結合はさらに減少することは無かった。このことは、Fabの2倍過剰の添加が、ベースラインに対するsEGFR結合を減少させる、セツキシマブ由来のFab断片における我々の予めの観察と対照的である(Li等,2005)。
sEGFRへのマツズマブの結合をさらに洞察するために、Fab72000の構造を、単独及びsEGFR3との複合体において(実験手順及び表1参照のこと)、結晶化した。
【0037】
<Fab72000/sEGFRd3結合サイト>
ドメインIIIにおけるFab72000結合サイトは、ドメインIIIベータへリックス(アミノ酸454-464;図1B)の最もC末端のストランドの前にあるループにおいて集中している。このループがFabのVL鎖及びVH鎖の間の裂け目の中を貫く。このループの先端は、タイプIのβターンを形成する。T459及びS460は裂け目の中に最も深くターンから突き出している。EGFRへのセツキシマブの結合で観察されたように、エピトープが抗原上に大きな平面を構成することがより一般的である高分子のタンパク質抗原の認識においては、この様式の結合は珍しい。
Fabによって形成される全ての主要な相互作用は、相補性決定領域(CDR)由来である。各CDRは、ドメインIIIとの結合に寄与し、接触を決定する重要な特異性の多くは、CDR H2、H3、及び、L3でもたらされる。全てのCDRが抗原結合に寄与することは、比較的珍しい(Sundberg及びMariuzza,2002)。
【0038】
sEGFRの埋め込まれたループは、CDRの重鎖及び軽鎖の双方と相互作用をする(図1C)。エピトープの中心において、T459の副鎖は、Fab軽鎖由来のW90及びH93の副鎖と相互作用する。この領域から重鎖への直接の相互作用は、それぞれCDR H2由来のN59及びE50の副鎖と相互作用するT459の骨格カルボニル及びS460の副鎖から生じる。このsEGFRd3ループのいずれかの末端のリジン残基は、Fabにおけるアスパラギン酸との塩橋相互作用をする(重鎖におけるD100とK454及び軽鎖におけるD49とK463)。CDR H2及びH3の双方からのsEGFRd3のこのループの主鎖への更なる接触が、Fab7200/sEGFRd3接触部分の中心で、水素結合の大規模なネットワークを完成する。
2つの重大な相互作用が、アミノ酸454−463のループを越えた領域に生じる。CDR L3(H93)由来のヒスチジンは、sEGFRd3のD434と相互作用し、一方で、結合サイトの別の側において、CDR H3の頂点由来のY103が下方に伸びて、N499と相互作用する。
【0039】
合計2個の塩橋及び15個の水素結合は、ドメインIIIにおける758Å2の溶媒接触可能表面を埋め込んだ接触部分中でのFab72000及びsEGFRd3の相互作用に関与する(計1516Å2の表面が複合体中の溶媒の接触をさえぎる)。多くのこの埋め込まれた表面は無極性であり(74.1%)、結合接触部分から溶媒が除かれることによって高い結合自由エネルギーを示す(Sundberg等、2000)。
Fab72000/sEGFRd3複合体の接触部分の形状の相補性(sc)パラメーターは、0.61である。これは、典型的に観察される抗原-抗体接触部分より低く(0.64〜0.68)(Lawrence及びColman、1993)、そして、0.70〜0.75の範囲のパーツズマブ、セツキシマブ、及び、トラスズマブのsc値よりも低い(Franklin等、2004;Li等、2005;Cho等、2003)。ここに追加すること:結合エネルギー又は親和性についてのコメント。
Fab72000の配座は、受容体結合を著しくは変化させない。Cα位置のrmsdは、VLで0.56Åであり、VHで0.96Åである。また、Fab72000の結合配座において、L字型の角度(elbow angle)は、4°のみ増加し、このことは、動的なL字型の柔軟性の範囲内である(Stanfield等,2006)。
【0040】
<受容体結合サイトにおける変異は、Fab72000との結合を消失させるが、EGF結合には影響しない>
溶液中の結晶構造によって明らかにされたようなマツズマブのエピトープを確認するために、抗体-受容体の接触部分における主要な残基の受容体変異体が生成された。これらは、Fab72000チップと同様にEGFに結合する能力についてSPR/Biacoreアッセイで試験された(図2A)。受容体結合サイトにおける3つの組のアラニン変異体では、Fab72000へのsEGFRの結合が完全になくなったが、EGFへの結合はほんのわずかに影響を受けただけである。これは、抗体結合サイトの変異がリガンドへの結合も著しく減らしたセツキシマブに関する観察結果と対照的である(Li等,2005)。
【0041】
<マツズマブ、セツキシマブ及びEGF/TGFαのsEGFR結合サイトの比較>
図2Bにおいて、sEGFRのドメインIIIにおけるマツズマブ、EGF、及び、セツキシマブのエピトープが示された。マツズマブのエピトープは、EGFのエピトープと重ならない。実際には、sEGFR:EGF複合体(PDB id 1IVO)由来のドメインIIIにオーバーレイされたFab72000/sEGFRd3複合体由来のドメインIIIと、Fab72000及びEGFは、重ならず;Fab及びEGFの最接近距離は、9Åである。これは、セツキシマブ結合の場合と明らかに対照的である。ドメインIIIにおけるセツキシマブ及びEGF結合サイトの間では高い度合いで重なる。リガンド結合の立体障害は、EGFRのリガンド誘導二量化及び活性化のセツキシマブ仲介阻害の重要なメカニズムである(Li等、2005)。マツズマブによるEGFR活性化の阻害のメカニズムは明確に相違しているに違いない。
【0042】
<マツズマブによるEGFR活性化の阻害のメカニズムの関係性>
マツズマブが、どのようにしてEGFRのリガンド誘導二量化及び活性化を阻害することができるかを理解するために、我々は、受容体のリガンド誘導-二量型の形態におけるFab72000の結合の効果を検討する。Fab72000/sEGFRd3複合体由来のドメインIIIが、その伸長(extended)二量化構成要素配座における受容体(PDB id 1MOX)由来のドメインIIIとオーバーレイされたとき、Fabと伸長受容体のドメインI及びドメインIIの双方との間で不一致が生じる(Ogiso等,2002;Garrett等,2002)(図3A)。EGFRのドメインIIIに結合したマツズマブのために、受容体は、二量化に必要とされるドメイン再編成をうけることができない。更に、以下で詳述するように、Fab72000の結合はまた、引き起こされる二量体の形成に重要なドメインIIの局所配座変化をブロックする。
伸長受容体配座におけるドメインIのN末端領域は、ドメインIが高い親和性のリガンド結合を要する位置に達するのを妨げるFab72000の軽鎖と衝突する(図3B)。これは、その抗体によるEGFR二量化の阻害のメカニズムの一部として予め組み込まれたセツキシマブ及びドメインIの間での衝突を、天然型及び伸長型(in nature and extent)において暗示している(Li等,2005)。その場合において、ドメインIIIにおけるFabの異なる配向は、受容体二量体におけるその必要とされる位置由来のドメインIのN末端部分をふさぐように重鎖を配置する。
【0043】
伸長受容体のドメインII及びFab72000の間の衝突は、新規の発見であり、意義深い。EGFRのドメインIIIに結合したFab72000のために、ドメインIIのC末端部分が、受容体のリガンド結合二量体形態において観察される配座を選択することはできない。図3Cに示されるように、伸長配座中のsEGFR分子におけるそのドメインIII結合サイトに、Fabがドッキングした場合に、ドメインIIのC半末端に沿って、支配的にFabのVL鎖との衝突がおこる。ドメインIIのこのC半末端は、受容体二量体中の他の分子からの二量化のアームのための結合ポケットを形成する。ドメインIIにおけるC末端ループからの二量体接触部分を通した更なる相互作用は、実質的にEGFR二量化の安定性に寄与する。この領域中のドメインIIの配座は、EGFR二量化及び活性化に重要であることが示されているドメインIIIとの相互作用によって安定化される(Dawson等,2005)。ドメインIIIへのFab72000の結合は、これら全ての相互作用を妨害する。
EGFRのドメインIIIへ結合するFab72000は、ドメインIIにおけるドメイン再編成及び局所的配座変化をブロックする。従って、引き起こされるEGFR二量体の形成におけるこれらの主要な要素の双方をブロックすることは、マツズマブによるEGFR活性化の効果的な阻害に重要であることが示された。
【0044】
<結論>
EGFR二量化は、ドメインI及びIIIに結合するリガンドによって促進される受容体細胞外領域の配座再編成を必要とする(図3D)。セツキシマブは、競合阻害剤として作用し、ドメインIIIリガンド結合サイトに対するリガンドのアクセスを直接的にブロックしてリガンド誘導二量化を抑制する。それに反して、マツズマブは、ドメインIIIにおけるリガンド結合サイトをふさがない。寧ろ、マツズマブは、sEGFR二量化及び活性化を阻害する新規の非競合メカニズムを利用し、該メカニズムは、高い親和性リガンド結合及び二量化を必要とする配座を、受容体が選択するのを立体的にブロックすることに完全に依存している。
このことは、がん治療においてそれぞれの潜在力を利用し、相乗効果を与える様々な阻害メカニズムを有する治療的抗体の併用に照らして、興味深い。
【0045】
[実施例]
<実施例1>タンパク質発現及び精製
sEGFR及びsEGFRd3を、バキュロウイルス-感染Sf9細胞中で発現させ、記載(Ferguson等,2000;Li等,2005)されているように精製し、そして、それらのグリコシル化修飾をせずに用いた。
マツズマブ(EMD72000)は、Merck Serono KGaA(USA/ドイツ)によって提供された。Fab断片(Fab72000)を、ImmunoPure Fab Preparation Kit(Pierce)を用いてパパイン開裂によって生成し、更に精製することなく用いた。Fab72000/sEGFR複合体を記載されたように(Li等,2005)正確に生成した。sEGFRd3との複合体を生成するために、Fabを1.2倍のモル過剰のsEGFRd3と混合して、Bio-Silect SEC250カラム(バイオラッド)を用いたサイズ排出クロマトグラフィー(SEC)によって、過剰なsEGFRd3を複合体から分離し、20mMのHEPES、100mMのNaCl(pH 7.5)で平衡化した。
【0046】
<実施例2>結晶化及びデータ収集
タンパク質を濃縮し、バッファーを10mMのHEPES、50mMのNaCl(pH 7.5)に変えて、水滴蒸気拡散法を用いて結晶化した。Fab72000の大きな単結晶は、等容量(1μl)のFab(13mg/ml)を、1.8Mの硫酸アンモニウム、0.1MのMES(pH 6.5)を含有する溶液と混合して、20℃で、このバッファーを含む貯蔵器で平衡にして得られた。結晶は、9%スクロース、2%グルコース、8%グリセロール、8%エチレングリコールを含む貯蔵器の中で急速冷凍された。ADSCQuantum−210 CCD検出器を用いて、Cornell High Energy Synchrotron Source(CHESS) ビームライン F1でデータを収集した。1MのNaCl、16%のPEG3350、50mMのMES(pH 6.0)と、当量部(1μl)の複合体(14mg/ml)を混合して、20℃で同じバッファーを含む貯蔵器で平衡化することによって、Fab72000/sEGFRd3を、結晶化した。ストリークシーディング法を用いて大きな単結晶(0.5 x 0.1 x 0.15mm)を製造し、高濃度のエチレングリコール(最終濃度15%)を含む貯蔵器の中の溶液へシリアル転送して該単結晶を結晶安定化させ、液体窒素中で急速冷凍した。xxx検出器を用いて、Swiss Light Source (SLS)ビームラインX06SAで、データを収集した。全てのデータは、HKL2000(Otwinowski及びMinor、1997)にて処理された。データ収集統計は、表1の中に要約されている。
【0047】
<実施例3>構造決定及び精密化
Fab72000及びFab72000/sEGFRd3の構造を、プログラムPHASER(CCP4、1994)を用いた分子置換(MR)法によって解き明かした。Fab構造を解き明かすために、Fab2C4(PDB id 1L7I)の座標(Vajdos等、2002)を、このFab及びFab72000の間のシークエンス同一性に基づいた初期探索モデルとして選択した。Fab72000/sEGFRd3構造を解き明かすために、探索モデルとして精密化されたFab72000座標を用いて、まずFabの位置を決定した。非対称ユニットにおける2つのFabコピーの一つの位置を決定した。この解決結果を利用して、sEGFRのドメインIII(PDB id 1YY9由来のアミノ酸 310-500)の座標を用いた第2の探索によって、1つのsEGFRd3分子の位置を決定した。その後に、非対称ユニットにおける第2のFab72000/sEGFRd3複合体が、見つかった。座標を手動でCOOTにおいて再構築し(Emsley及びCowtan、2004)、CNS(BRUNGER等、1998)及びRefmac(CCP4、1998)を用いて精密化した。新しいマップは、精密化のすべての繰り返しの後に計算され、CCP4プログラムDMで計算された最小化されたモデルバイアスを有する溶媒平滑化マップ含む。
【0048】
<実施例4>結合実験
表面プラズモン共鳴(SPR)/Biacore実験を、BIAcore 3000計器を用いて25℃で、10mMのTris(pH 8.0)、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.005%のTween−20の中で行った。Fab72000を、以下のようにしてBiacore CM5バイオセンサーチップ上に固定した:CM-デキストランマトリクスを、N-エチル-N’-(ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド ヒドロクロリド(EDC)、及び、N-ヒドロキシスクシンイミドで活性化した。10mMの酢酸ナトリウム(pH5.0)の中で、500ngのFab断片を5μg/mlで活性化表面の上に流した。残留反応サイトは、1Mのエタノールアミン-HCl(pH8.5)でブロックされた。固定化Fab断片は、1436応答ユニット(RU)のシグナルを与えた。2つの5μlのインジェクション(10mMのグリシン(pH2.5)、1MのNaCl)を用い、残留受容体を除くために、sEGFR接触間で表面を再生した。EGF固定化及びsEGFR結合分析を、上述のように正確に行った(Ferguson等,2000)。データをプリズム4で分析した(GraphPad Software, Inc.)。
【0049】
<実施例5>sEGFRエピトープ変異の生成
部位特異的突然変異誘発法を利用して、pFastBacベクターの中の適当なDNAにアラニン又は欠失変異体を導入した。以下の変異体を作製した:K454A、K463A、△S460、T459A/S460A、K454A/T459A/S460A、T459A/S460A/K463A。組換えバキュロウイルスの生成、Sf9細胞における過剰発現及びタンパク質精製を、野生型sEGFR用として前に記載されたように正確に行った(Ferguson等, 2000)。
Fab72000及びFab72000/sEGFRd3構造体の座標は、RCSBタンパク質データバンクに蓄積されている(それぞれのpdb idコード xxxx及びxxxx)。
【0050】
【表1】

【0051】
表2:残基-受容体/残基-マツズマブのFab結合/相互作用のリスト:
原子源 標的原子 距離 角度
Ser 433D O ... His 93L CE1 ... 3.35
... His 93L NE2 ... 3.91 *
Asp 434D CB ... His 93L NE2 ... 3.69
Asp 434D CG ... His 93L CE1 ... 3.72
... His 93L NE2 ... 3.02
Asp 434D OD1 ... His 93L CD2 ... 3.77
... His 93L CE1 ... 3.18
... His 93L NE2 ... 2.74 ***
Asp 434D OD2 ... His 93L NE2 ... 3.47 *
Asp 436D OD2 ... Tyr 31L OH ... 3.91 *
Asn 449D N ... Tyr 103H OH ... 3.86 *
Asn 449D CA ... Tyr 103H OH ... 3.49
Asn 449D CG ... Tyr 103H OH ... 3.82
Asn 449D ND2 ... Tyr 103H CZ ... 3.67
... Tyr 103H OH ... 2.76 ***
Asn 452D ND2 ... Ser 54H CB ... 3.92
... Thr 30H O ... 3.60 *
Trp 453D CD1 ... Tyr 103H CE1 ... 3.84
Lys 454D C ... Ser 54H OG ... 3.93
... Asn 52H ND2 ... 3.79
Lys 454D O ... Asn 52H ND2 ... 2.95 ***
... Asn 55H ND2 ... 3.70 *
Lys 454D CG ... Ser 31H O ... 3.47
Lys 454D CD ... Ser 31H O ... 3.53
... Asp 100H OD2 ... 3.76
Lys 454D CE ... Asp 100H CG ... 3.49
... Asp 100H OD1 ... 3.80
... Ser 31H O ... 3.20
... Asp 100H OD2 ... 2.64
... Tyr 101H O ... 3.50
Lys 454D NZ ... Asp 100H OD2 ... 3.48 *
... Tyr 101H C ... 3.68
... Tyr 101H O ... 2.46 ***
Lys 455D N ... Ser 54H OG ... 3.48 *
Lys 455D CA ... Ser 54H OG ... 3.24
... Asn 55H ND2 ... 3.92
Lys 455D C ... Asn 55H ND2 ... 3.44
Lys 455D O ... Asn 55H CB ... 3.55
... Asn 55H CG ... 3.77
... Asn 55H ND2 ... 3.01 ***
Lys 455D CB ... Ser 54H OG ... 3.64
Leu 456D C ... Arg 57H NH1 ... 3.90
Leu 456D O ... Arg 57H NH1 ... 3.97 *
Phe 457D N ... Arg 57H NH1 ... 3.95 *
... Asn 55H ND2 ... 3.89 *
Phe 457D C ... Arg 57H NH1 ... 3.93
Phe 457D O ... Arg 57H CD ... 3.59
... Arg 57H NH1 ... 3.52 *
... Asn 52H ND2 ... 3.50 *
... Asn 55H ND2 ... 3.28 ***
... Trp 33H CZ2 ... 3.63
Gly 458D C ... Trp 33H CH2 ... 3.49
... Trp 33H CZ2 ... 3.40
Gly 458D O ... Trp 33H CH2 ... 3.06
... Asn 59H CG ... 3.97
... Asn 59H ND2 ... 3.16 ***
... Trp 33H CZ2 ... 3.45
Thr 459D N ... Trp 33H CH2 ... 3.94
... Trp 33H CZ2 ... 3.49
Thr 459D CA ... Trp 33H CH2 ... 3.95
... Trp 33H CZ2 ... 3.57
Thr 459D C ... Trp 33H NE1 ... 3.51
... Trp 33H CE2 ... 3.46
... Trp 33H CZ2 ... 3.53
Thr 459D O ... Trp 33H NE1 ... 2.98 ***
... Trp 33H CD1 ... 3.86
... Trp 33H CE2 ... 3.33
... Trp 33H CZ2 ... 3.49
Thr 459D CB ... Trp 90L CZ2 ... 3.63
... His 93L ND1 ... 3.81
Thr 459D OG1 ... Trp 90L CZ2 ... 3.59
... His 93L ND1 ... 3.33 *
... His 93L CE1 ... 3.37
Thr 459D CG2 ... Glu 50H OE1 ... 3.19
... His 93L O ... 3.98
... Trp 90L CZ2 ... 3.61
... His 93L CA ... 3.57
... His 93L CB ... 3.80
... His 93L CG ... 3.75
... His 93L ND1 ... 3.12
... Trp 90L NE1 ... 3.76
Ser 460D N ... Trp 33H NE1 ... 3.88 *
... Glu 50H OE1 ... 3.97 *
... Glu 50H OE2 ... 3.35 *
... Trp 33H CE2 ... 3.86
Ser 460D CA ... Glu 50H OE2 ... 3.96
Ser 460D O ... Tyr 101H CD2 ... 3.31
Ser 460D CB ... Glu 50H OE2 ... 3.53
Ser 460D OG ... Glu 50H CD ... 3.58
... Glu 50H OE2 ... 2.39 ***
... His 35H CE1 ... 3.26
... His 35H NE2 ... 3.29 ***
... Arg 99H O ... 3.65 *
... Phe 95L CE1 ... 3.94
... Phe 95L CZ ... 3.98
Gly 461D N ... Trp 90L CZ2 ... 3.97
Gly 461D CA ... Trp 90L CZ2 ... 3.80
... Trp 90L CZ3 ... 3.80
... Trp 90L CH2 ... 3.62
Gly 461D O ... Tyr 31L CE2 ... 3.62
... Tyr 31L OH ... 3.69 *
Lys 463D CD ... Tyr 101H CG ... 3.80
... Tyr 101H CD1 ... 3.56
... Tyr 101H CE1 ... 3.73
Lys 463D CE ... Tyr 31L CZ ... 3.87
... Tyr 31L OH ... 3.15
Lys 463D NZ ... Tyr 101H CD1 ... 3.97
... Tyr 101H CE1 ... 3.34
... Tyr 101H CZ ... 3.74
... Asp 49L OD2 ... 3.42 *
... Tyr 101H OH ... 3.89 *
... Tyr 31L CZ ... 3.99
... Tyr 31L OH ... 3.75 *
Thr 464D O ... Tyr 103H O ... 3.74 *
Thr 464D OG1 ... Tyr 103H O ... 3.79 *
Ile 466D CB ... Tyr 103H OH ... 3.73
【0052】
以下の文献引用は、上記記載に挙げられ、そして、参照により組み込まれる:
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外ドメイン、及び、マツズマブ(EMD 72000)のFabの受容体−抗体複合体を含む、受容体−抗体複合体の結晶であって、
空間群C2に属し、以下のセル座標を有する結晶:
a=141Å(±3Å)、b=205Å(±3Å)、c=81Å(±3Å)、及びβ=117°(±1°)。
【請求項2】
以下のセル座標を有する、請求項1に記載の結晶:
a=141.1Å(±0.3Å)、b=205.0Å(±0.3Å)、c =81.6Å(±0.3Å)、及び、β=117.5°(±0.5°)。
【請求項3】
抗体全体のパパイン開裂で生じたマツズマブのFab断片を、
1MのNaCl、16%のPEG3350、50mMのMESを含み、pHが6.0〜7.0である、EGFRの可溶性細胞外ドメイン(sEGFR)の溶液と混合し、
約20℃で、同じバッファーを含む貯蔵器で平衡にして得られうる、請求項1に記載の結晶。
【請求項4】
可溶性細胞外EGFRドメインIII(sEGFRd3)を使用することによって得られうる、請求項3に記載の結晶。
【請求項5】
EGFRの細胞外ドメイン及びマツズマブのFabの複合体の結晶を調製する方法であって、
EGFRのドメイン及びマツズマブのFab断片を含み、pHが6.0〜7.0であるバッファー溶液を調製して、結晶を成長させることによって結晶を調製する方法。
【請求項6】
可溶性細胞外EGFRドメインIII(sEGFRd3)を使用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
バッファー溶液が、沈降剤を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
バッファー溶液が、沈降剤としてのポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
類似の、又は同様の生物活性を有するマツズマブの模倣物候補を同定して選択する方法であって、
(a)模倣物-EGFR複合体の結晶構造の中のEGFRに結合した模倣化合物の結合座標、又は、その断片の結合座標を、
(b)請求項1又は請求項4に規定されたマツズマブ−EGFR複合体の結晶構造の中でEGFRに結合するマツズマブのFab断片の結合座標と、
比較することを含み、
前記結合座標が、
(i) マツズマブのFab断片と結合するか、又は相互作用するEGFRのアミノ酸残基の位置、
(ii)これらの位置のEGFRのアミノ酸の中の特定の原子と、これらの位置のEGFRの前記アミノ酸残基と結合するか、又は相互作用する模倣化合物の中での特定の原子との間の距離、及び、
(iii)参照として、これらの位置のEGFRのアミノ酸の中の特定の原子と、マツズマブのFab断片の中の特定の原子との間の距離、
によって定義される方法。
【請求項10】
前記位置のEGFRのアミノ酸残基の原子と、
前記結晶複合体中でそれらと結合するか、又は相互作用する模倣化合物の原子との間の距離が、4Å未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記位置のEGFRのアミノ酸残基の原子と、
前記結晶複合体中でそれらと結合するか、又は相互作用する模倣化合物の原子との間の距離が、3Å未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
模倣物−EGFR複合体の結晶構造が、マツズマブ/EGFRの結晶複合体で使用される同様の又は類似の方法に従って調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
模倣物候補及びマツズマブのFabそれぞれと結合するか、又は相互作用するEGFRのアミノ酸残基が、Ser433、Asp434、Ala448、Asn449、Asn452、Trp453、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463、Thr464及びIle466からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
模倣物候補及びマツズマブのFabそれぞれと結合するか、又は相互作用するEGFRのアミノ酸残基が、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463及びThr464からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
模倣物候補及びマツズマブのFabそれぞれと結合するか、又は相互作用するEGFRのアミノ酸残基が、以下からなる群から選択される、請求項9に記載の方法:
(a1) Lys454
(a2) Lys454及びLys455
(a3) Lys454及びLys455及びPhe457
(a4) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458
(a5) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459
(a6) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460
(a7) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461
(a8) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461及びLys463
(a9) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461及びLys463及びThr464
(a10) Phe457
(a11) Phe457及びLys454
(a12) Phe457及びLys454及びGly458
(a13) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459
(a14) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460
(a15) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a16) Thr459
(a17) Thr459及びLys454
(a18) Thr459及びLys454及びPhe457
(a19) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458
(a20) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460
(a21) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460及び
Gly461
(a22) Ser460及びLys454
(a23) Ser460及びLys454及びPhe457
(a24) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459
(a25) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459及びGly461
(a26) Lys454及びPhe457
(a27) Lys454及びPhe457及びSer460
(a28) Lys454及びPhe457及びGly461
(a29) Lys454及びPhe457及びThr459
(a30) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a31) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460及びGly461
(a32) Phe457及びSer460
(a33) Phe457及びThr459及びSer460
(a34) Phe457及びThr459及びSer460及びGly461
(a35) Ala448
(a36) Ala448及びAsn449
(a37) Ala448及びLys454
(a38) Ala448及びLys454及びPhe457
(a39) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459
(a40) Ala448及びLys454及びPhe457及びSer460
(a41) Ala448及びLys454及びPhe457及びGly461
(a42) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a43) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a44) Asn449
(a45) Asn449及びLys454
(a46) Asn449及びLys454及びPhe457
(a47) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459
(a48) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a49) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a50) Asn449及びLys454及びPhe457及びSer460
(a51) Ser433及び/又はAsp433を含む選択肢(a1)−(a50)のいずれか。
【請求項16】
模倣化合物が、ペプチド、ポリペプチド、又は、タンパク質である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
模倣化合物が、抗体、又は、それらのCDR含有断片である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
模倣化合物が、マツズマブのFab断片と類似の、又は改良された親和性でEGFRに結合する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
模倣化合物が、以下の性質の少なくとも1つを有する請求項9に記載の方法:
(i) EGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害すること、
(ii) EGF受容体の二量化を阻害すること、
(iii) EGF受容体へのEGFの結合をブロックすること。
【請求項20】
模倣化合物が、抗体、又は、そのCDR含有断片である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
EGFRとの結晶複合体を形成する前に模倣物候補を修飾し、結合座標を決定し、そして、結晶構造における前記位置の1つ以上のEGFRのアミノ酸残基との改良された結合特性を有する模倣物候補を選択する、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
模倣物候補が、請求項20に規定されるようなEGFRのアンタゴニストの生物学的活性を維持しているか、又は獲得している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
模倣物候補が、抗体又はその断片であり、
修飾が、抗体又はその断片の少なくとも1つのCDR領域の中で少なくとも1つのアミノ酸の置換によって行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
マツズマブ(EMD 72000)の模倣物であり、
(i) EGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害し、
(ii) EGF受容体の二量化を阻害し、
(iii) EGF受容体へのEGFの結合をブロックし、そして、
(iv) EGFRの位置448と464との間のシークエンストラックの少なくとも3個のアミノ酸残基と結合するか、又は相互作用する、化合物。
【請求項25】
EGFRの位置454及び459の間のシークエンストラックの少なくとも3個のアミノ酸残基と結合するか、又は相互作用する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
少なくともEGFRの以下の残基と結合するか、又は相互作用する、請求項24に記載の化合物:
Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463及びThr464。
【請求項27】
少なくともEGFRの以下の残基と結合するか、又は相互作用する、請求項24に記載の化合物:
Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458及びThr459。
【請求項28】
少なくとも請求項27の化合物、及び、
(i) EGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害し、
(ii) EGF受容体の二量化を阻害し、
(iii) EGF受容体へのEGFの結合をブロックし、そして、
(iv) EGFRの以下のアミノ酸残基、又は、少なくとも4個のアミノ酸のサブセットと結合するか、又は相互作用する、第2の化合物を含む、化合物の組成物:
Gln 384、Gln 408、Ser 418、Ser 440、Lys 465、Ser 468、及び、Asn 469。
【請求項29】
第2の化合物が、少なくとも同じEGFRのアミノ酸残基と結合するか、又は相互作用する、セツキシマブ又はセツキシマブ模倣化合物である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
・EGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害し、
・EGF受容体の二量化を阻害し、
・EGF受容体へのEGFの結合をブロックし、そして、
・マツズマブ(EMD 72000)に由来する、
抗EGFR抗体を設計する方法であって、
(i) 少なくともマツズマブの重鎖及び/又は軽鎖のCDR領域中の、又は、CDRに隣接したフレームワーク領域(FR)中の、1個のアミノ酸を、他のアミノ酸で置換し、
(ii) 修飾されたマツズマブのFab断片及びEGFRの可溶細胞外ドメインIII(sEGFRd3)によって形成される結晶複合体を調製し、
(iii) EGFRドメイン中の特定のアミノ酸残基の位置に対する上記のように形成される結晶複合体の原子座標を、sEGFRd3と一緒に非修飾のマツズマブによって形成される参照用の結晶複合体の対応する座標と比較し、
(iv) EGFRドメインにおける前記特定のアミノ酸残基の位置に対してより密接な相互作用をとらせる原子座標を有する修飾されたマツズマブを選択し、
(v) 標準方法によってその結合親和性及び生物学的活性をアッセイし、そして、
(vi) 工程(i)〜(v)を繰り返しても良い、方法。
【請求項31】
前記それぞれの結晶複合体を得るための方法であって、
前記それぞれの抗体全体のパパイン開裂によって生じた、修飾された又は非修飾のマツズマブのFab断片を、
1MのNaCl、16%のPEG3350、50mMのMESを含み、pHが6.0〜7.0である、EGFR可溶細胞外ドメイン(sEGFR)のバッファー溶液と混合し、
約20℃で、同じバッファーを含む貯蔵器で平衡にして、
バッファー溶液が、沈降剤としてポリエチレングリコール(PEG)を含む、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
EGFRドメインに中の特異的アミノ酸残基の位置の少なくとも4個が、
Ser433、Asp434、Ala448、Asn449、Asn452、Trp453、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463、Thr464及びIle466からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
EGFRドメインの中の特異的アミノ酸残基の位置の少なくとも4個が、
Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463及びThr464からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
EGFRドメインの中の特異的アミノ酸残基の位置が、少なくとも以下からなる群から選択される請求項30に記載の方法:
(a1) Lys454
(a2) Lys454 及びLys455
(a3) Lys454及びLys455及びPhe457
(a4) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458
(a5) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459
(a6) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460
(a7) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461
(a8) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461及びLys463
(a9) Lys454及びLys455及びPhe457及びGly458及びThr459及び
Ser460及びGly461及びLys463及びThr464
(a10) Phe457
(a11) Phe457及びLys454
(a12) Phe457及びLys454及びGly458
(a13) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459
(a14) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460
(a15) Phe457及びLys454及びGly458及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a16) Thr459
(a17) Thr459及びLys454
(a18) Thr459及びLys454及びPhe457
(a19) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458
(a20) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460
(a21) Thr459及びLys454及びPhe457及びGly458及びSer460及び
Gly461
(a22) Ser460及びLys454
(a23) Ser460及びLys454及びPhe457
(a24) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459
(a25) Ser460及びLys454及びPhe457及びThr459及びGly461
(a26) Lys454及びPhe457
(a27) Lys454及びPhe457及びSer460
(a28) Lys454及びPhe457及びGly461
(a29) Lys454及びPhe457及びThr459
(a30) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a31) Lys454及びPhe457及びThr459及びSer460及びGly461
(a32) Phe457及びSer460
(a33) Phe457及びThr459及びSer460
(a34) Phe457及びThr459及びSer460及びGly461
(a35) Ala448
(a36) Ala448及びAsn449
(a37) Ala448及びLys454
(a38) Ala448及びLys454及びPhe457
(a39) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459
(a40) Ala448及びLys454及びPhe457及びSer460
(a41) Ala448及びLys454及びPhe457及びGly461
(a42) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a43) Ala448及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a44) Asn449
(a45) Asn449及びLys454
(a46) Asn449及びLys454及びPhe457
(a47) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459
(a48) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460
(a49) Asn449及びLys454及びPhe457及びThr459及びSer460及び
Gly461
(a50) Asn449及びLys454及びPhe457及びSer460
(a51) Ser433及びAsp433を含む選択肢(a1)−(a50)のいずれか。
【請求項35】
修飾されたマツズマブのFab及びsEGFRd3によって形成される結晶複合体の原子座標において、
相互作用又は結合に関与するアミノ酸残基の間の原子距離が、
非修飾の、又は、修飾が少ないマツズマブによって形成される参照用の結晶複合体の原子座標によって与えられるそれぞれの距離より小さくなるようにした、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
原子座標によって与えられるそれぞれの距離が、4Å未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
原子座標によって与えられるそれぞれの距離が、3Å未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
原子座標によって与えられるそれぞれの距離が、2Å未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
置換が、マツズマブの重鎖のCDR又はFRで行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
置換が、マツズマブの重鎖又は軽鎖のCDR3で行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
請求項30又は34の方法によって得られる抗EGFR抗体。
【請求項42】
患者に、請求項24の化合物、又は、請求項28の組成物、又は、請求項41の抗体を投与することを含むEGFRの阻害によって、EGFR関連疾病又は疾患を治療する方法。
【請求項43】
EGFR関連疾病又は疾患が癌である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
マツズマブ(EMD 72000)に由来する抗EGFR抗体を設計及び製造するためのEGFR抗体結晶複合体中のSer433、Asp434、Ala448、Asn449、Asn452、Trp453、Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460、Gly461、Lys463、Thr464及びIle466から選択される少なくとも3個のアミノ酸残基の使用。
【請求項45】
マツズマブ(EMD 72000)に由来する抗EGFR抗体を設計及び製造するためのEGFR抗体結晶複合体中のアミノ酸残基Lys454、Lys455、Leu456、Phe457、Gly458、Thr459、Ser460及びGly461の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2010−540578(P2010−540578A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527348(P2010−527348)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007889
【国際公開番号】WO2009/043490
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【出願人】(510090689)ザ トラスティーズ オヴ ザ ユニヴァーシティー オヴ ペンシルバニア (1)
【Fターム(参考)】