説明

結束具

例えば、ケーブル結束具として用いられる結束具は、ヘッド(10)と、このヘッドの内部に拘束状態で取り付けられたロック部材(12)と、このヘッドに取り付けられた細長い可撓性ストラップ(11)とから成っている。可撓性ストラップの自由端は、ロック部材によってヘッドから引き抜かれるのが防止されるようにヘッド内に挿入され固定される。ストラップの自由端は、所定の方法でロック部材を通るようにストラップの自由端を案内する接近形成部を備えている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルや他の物体にめぐらせてループを形成する結束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブル等をめぐらせてループを形成する結束具は、よく知られている。このような結束具は、孔付きヘッドから延びる細長いストラップ(平紐)から成っている。使用時には、この結束具は、孔付のヘッドにストラップの自由端を通すことによってループを形成することができる。ヘッドの内部にある可撓性の爪がストラップの上で鋸歯状の切り込みに係合してストラップが緩むのを防止している。
【0003】
このような結束具の利点は、一片のプラスチック成型物として便宜に形成することができることである。しかし、プラスチック結束具の欠点は、特に一旦プラスチックが脆くなると、荷重を受けて比較的容易に壊れることである。プラスチック結束具の他の欠点は、それらがある環境、例えば、極端な温度が存在する場合には、使用するのに適さないことである。
【0004】
また、金属から形成された結束具も知られている。このような結束具は、一般に一層強靭であり、環境によっては使用に一層適している。金属結束具の欠点は、一体物成形として形成することができないことである。
【0005】
WO82/02035と米国特許第5291637号は、それそれ、孔付きのヘッドと第1の端部がこのヘッドに取付けられた細長い可撓性のストラップと、ヘッドの内部の空洞内に設けられたボールの形態であってストラップの第2の端部がヘッドの孔に通されると、ストラップに係合するようになっているロック部材とから成る結束具を開示している。細長い可撓性のストラップは、その第1の端部をほぼ180°折り畳んでU字形部分を形成することによりヘッドに取り付けられており、このU字形部分は、ヘッドの底壁上に係合する。ストラップのU字形部分の末端のとげがヘッドの底壁位置に係合する。
【0006】
ボールは、結束具の組立て中にヘッドの開放端壁を通してヘッドの空洞内に挿入される。その後、ヘッドのタブを折り畳んで開放端壁を閉じ、またヘッドの空洞内のボールを拘束状態で保持する。この組立作業は困難であり、また時間を浪費する。
【0007】
ボールの形態のロック部材を用いた結束具の変形例が欧州特許第0758616号に開示され、この結束具は、WO82/02035号に開示された形式のものよりも組み立てが困難ではなく、また時間を浪費しない。この結束具は、ヘッドに開口が形成され、結束具の組み立て中、この開口を通してロック部材のボールが挿入され、ストラップの第1の端部ヘッドの開口を越えて延び、ロック部材をヘッドの空洞に拘束状態で取り付けられることを特徴としている。この結束具は、ヘッドにストラップを取り付ける前にヘッドの開口を通してロック部材を挿入することにより組み立てられる。
【0008】
使用時において、この種の結束具は、結束具がケーブル又は他の物体をめぐってループを形成し、ストラップの自由端をヘッド孔に通して挿入することによって作動する。ロック部材(典型的には、上記したボールである)は、ストラップが締まる方向にヘッド孔を通して引っ張られると、ストラップに係合する。また、ストラップが十分に締められると、ストラップは、解放されるので、ヘッドから僅かに引き戻すことができる。この引き戻し運動によって、ロック部材のボールは、ロック位置に移動せしめられ、このロック位置で、ロック部材は、ストラップをヘッドに確実にロックするように、ヘッドの壁とストラップとの間に楔状に押し込まれる。
【0009】
時には、ヘッドの孔にストラップの自由端を挿入すると、その最先端は、ボールの赤道部分に向けて高すぎる位置でボールに突き当たるので、ストラップは、その自由端で曲げられてヘッドに送り込まれる際に引っ掛かって動きが取れなくなる。これは、結束具が適切に使用するのを妨げることになる。この問題は、特に、ストラップの自由端が使用前に損傷している(よれるか曲がるかする)場合に生じることがある。
【発明の概要】
【0010】
そこで、本発明の改善された装置が考案された。
【0011】
本発明の第1の面によれば、本発明は、
ヘッドと;
このヘッドの内部に拘束するように取り付けられたロック部材と;
前記ヘッドに取り付けられ、前記ヘッドから引っ込むことが前記ロック部材によって防止されるように、前記ヘッド内に挿入され固定されて配置された自由端を有する細長い可撓性のストラップと;
から成り;
前記ストラップの自由端は、所定の方法でロック部材を通すように前記ストラップの自由端を案内する接近形成部(アプローチ形成部)(approachment formation)を備えている
結束具を提供するものである。
【0012】
この接近形成部は、種々の係合の向きでロック部材に係合し、且つヘッド内に更に挿入されると、ロック部材と協働してストラップをロック部材に通して偏向するようになっているのが好ましい。
【0013】
有益には、接近形成部は、ロック部材の高さ又は深さを横切って種々の係合位置でロック部材に係合するようになっており、且つ、ヘッド内に更に挿入すると、ロック部材と協働してロック部材の底部を通ってストラップを偏向する。
【0014】
接近形成部は、ストラップの自由端がロック部材に対して整列していない場合に、ストラップが側方及び又は下向きに偏向してロック部材の下側を滑らかに通過するようになっているので有利である。
【0015】
好ましい実施例では、接近形成部は、ストラップの縦方向に延びる案内チャンネル(通路)又はスロットから成っている。
【0016】
1つの実施例では、1対の舌片が案内チャンネル又はスロットのいずれの側にも1個ずつ設けられている。
【0017】
接近形成部は、ストラップの自由端の広口から頂点まで狭くなるようにテーパ状であるのが好ましい。
【0018】
好ましくは、ロック部材は、回転可能なボール又はローラーから成っている。
【0019】
好ましくは、ロック部材は、ヘッドの内部で非ロック位置とロック位置との間を移動可能であり、開口は、ロック位置に隣接して配置されている。
【0020】
ストラップは、その一端(自由端から離れた端部)でヘッドに取り付けられているのが好ましい。
【0021】
ロック部材は、ストラップをヘッドから引っ込むことがなくストラップを固定するようにヘッドとストラップに対して作用するのが好ましい。
【0022】
好ましくは、結束具は、金属から形成される。
【0023】
本発明の実施例は、例としてのみ添付図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】幾つかの部分を断面で示した本発明による金属結束具の断片的な平面図である。
【図2】結束具が固定された時の図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】結束具が固定された時の図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】結束具を含む先行技術のストラップの自由端の平面図である。
【図5】本発明による結束具を含むストラップの自由端の平面図である。
【図6】本発明による結束具の他の実施例を含むストラップの自由端の平面図である。
【0025】
図面を参照すると、ステンレス鋼から形成され、ヘッド10とこのヘッドに取付けられた細長い可撓性のストラップ11とヘッド内に拘束して取り付けられたロックボール12とを含む三つ組の結束具が示されている。
【0026】
ヘッド10は、傾斜した頂壁13と、水平な底壁14と、相対する側壁15,15と、後端壁16とから成り、これらの壁は、ヘッド内部に細長い内部空洞17を形成している。頂壁13と底壁14は、ヘッ10の前端に向けて互いに近づいている。ヘッドは、その頂壁13、底壁14、側壁15及び端壁16で限界する中空部を形成するように予め形造られた金属シートを型押しすることによって形成されるのが好ましい。その後、ヘッドの底壁14は、相対する側壁15、15のそれぞれの縦方向の下方縁から延びる2つのタブを内側に折り畳むことによって形成される。
【0027】
2つの半円形部分は、底壁14の開口部を形成するようにタブの相対する側縁から切り抜かれており、底壁の開口部は、結束具の後部付近の空洞17と連通している。
【0028】
細長いストラップ受け入れ通路21は、ヘッド10を経て前部から後部に延びて空洞17を通っている。
【0029】
ストラップ11は、ストラップの端部付近の一側から外方に突出する2つのとげ22、23を形成するように型押しされる細長い平坦な金属片から成っている。これらのとげ22、23は、ストラップ11の中心に沿って延びる縦線上に配置されている。これらのとげ22、23は、それぞれ、ストラップ11の相対する端部に向けられている。ストラップは、2つのとげ22、23の中間点でその軸線に直角にストラップを折り重ねることにより形成されるU字形のヘッド係合部分24を含む。とげ22、23が相互に向けて突出するが、係合することがないように、ストラップは、ほぼ120°畳まれる。
【0030】
結束具を組み立てるために、ロックボール12は、底壁14の開口を通して空洞17に挿入される。次いで、ストラップのU字形ヘッド係合部分24が結束具の底壁14に係合するまで、ストラップ11は、通路21を通して正面から後方へ送給される。その後、ストラップのヘッド係合部分24の突出アームが更に60°程度曲げられて、ヘッドの底壁14に寄り掛かるようにする。従って、2つのとげ22、23が開口19を介して相互に係合せしめられる。ヘッドがストラップから容易に抜け出すことができないように、ストラップ11は、ヘッドの底壁の一部のまわりのループに確実に固定されることは認識されることであろう。ストラップ11は、ボール12が空洞17に拘束状態で保持されるように、ヘッドの開口19を閉じる。
【0031】
使用時には、ストラップの自由端11aの先端縁11bは、へッドの前端25からストラップ受入れ通路21に挿入される前に、固定されるべきケーブル束及び他の物体の周りを廻る。ストラップ11は、ボール12と空洞17の床との間を通る。ストラップの挿入中、ボールは、空洞17の後部(図2位置U)に押される。従って、ストラップは、ヘッドを介して自由に引っ張ることができる。
【0032】
ストラップがヘッド10から僅かに後退せしめるように、ストラップを一旦十分に締め付けると、ストラップ11が解放される。このため、ロックボール12は、空洞17の後部の非ロック位置Uから空洞の前部のロック位置Lに移動せしめられる。このロック位置Lでは、ボール12は、ストラップ11とヘッドの上壁13との間に嵌まり込む。このようにしてボール12は、ストラップに係合し、通路21から引き戻すことによってストラップがヘッドから外れるのを防止する。通路21からストラップを引き戻すように継続的に緊張させると、ロックボール12は、ヘッドの相互に接近する上下の壁13、14と係合するように、一層強固に固定せしめられる。図4は、従来技術の自由端先端縁11bの平面図である。この先端縁は、前方の鼻部分11cとこの鼻部分11cから相互に離れるように傾斜するテーパ縁1 Id、11eとを有するように形成されており、このような形状を用いると、ヘッド10の前方端部25でスロット21に最初に挿入するのを容易にするのに役立つ。
【0033】
時には、ストラップの自由端11aの挿入中、その先端縁11bは、ボール12の下側を滑らかに通過するのではなく、赤道部分に向けてボールの上方の一層高い位置でロックボール12の表面に突き当たることがある。これは、ストラップによじれ又はねじれを不正に起してその完全で適切な挿入を妨げるという望ましくない結果を有する。これは、スロット21への不注意な挿入の結果生じるので、ストラップは、スロットに対して上向きに傾斜するか、スロット21への挿入前に、先端縁11bが、損傷し、例えば、変形したり、よじれたり、ねじれたりしている場合に生ずる。
【0034】
本発明は、ストラップの自由端が所定の方法でボールに接近することを確実にし、またストラップの自由端がボールの下側を滑らかに通過するように案内してボールがストラップの表面に乗るのを確実にすることによって少なくともこの問題を改善するように努めるものである。便利なことには、これは、図5に示される実施例においては、案内チャンネル又はスロット111fの形態のアプローチ案内形成部(接近形成部)(approachment guide formation)を提供することによって達成される。図示の案内チャンネル又はスロット111fは、ストラップの自由端111aの先端縁111bの比較的広い口部分から閉じた頂部111gまでテーパ状となっている。このようにすると、案内チャンネル111fの両側に1個ずつ1対の舌片111h、111jが形成されることになる。これらの舌片111h、111jは、ボールの両側に位置するように作用し、ストラップの先端縁がボールの赤道に一層向った位置でボールに接近する場合でも、ストラップ111がボールの下側を滑らかに通過するように案内されるのを確実にする。チャンネル又はスロット111fは、ボールに対して整列していない場合に、ストラップ111の自由端111bを側方及び/又は下向きに偏向してロックボールの下側に滑らかに通過するのを確実にする。このチャンネル又はスロット111fは、種々の係合向きで(ボール12の赤道より下方の異なる高さ位置で)ロックボールに係合し、且つヘッド10内に更に挿入されるとき、ロックボール13と協働してストラップをロック部材を通して偏向するようになっている。
【0035】
ストラップの自由端が損傷していない場合でも、自由端を注意深く挿入した場合でも、チャンネル又はスロット111fの形態の接近形成部を設けると、安心して確実な接触触感の効果を有する。
【0036】
テーパ状の縁111d、111eは、ヘッドの前端25のスロット21中への当初の挿入を容易にするのに役立つ。
【0037】
図6に示される実施例は、結束ヘッド(図示せず)が側面同士の関係で1対のロックボールを備えている一層強力な結束具に使用するのに好適である。この場合、結束具の自由端211aは、中央の鼻状岬部211mの両側に間隔あけて設けられたチャンネル又はスロット211fの形態の1対の接近案内形成部を備えている。
【0038】
上記の実施例において、ロック部材は、ロックボール12の形態である。ボールの形態以外のロック部材を備えることも本発明の範囲に含まれる。半球状、楕円形状、カム状あるいは他の幾何学的形状のロック部材も同様の効果に使用することができる。更に、ロック部材を結束具に対して固定する特定の手段を述べたが、ヘッドに対してロック部材を固定する他の手段を採用した他の実施例も発明の範囲に入ることは理解されるであろう。更に、本発明は金属結束具について述べたが、本発明の利点は、例えば、プラスチック等の他の材料の結束具でも実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドと;
前記ヘッドの内部に拘束状態で取り付けられたロック部材と;
前記ヘッドに取り付けられ、前記ヘッドから引き抜くことが前記ロック部材によって防止されるように、前記ヘッド内に挿入され固定されて配置された自由端を有する細長い可撓性のストラップと;
から成り;
前記ストラップの自由端は、所定の方法でロック部材を通すように前記ストラップの自由端を案内する接近形成部を備えている
結束具。
【請求項2】
請求項1に記載の結束具であって、前記接近形成部は、種々の係合の向きで前記ロック部材に係合し、且つ前記ヘッド内に更に挿入すると、前記ロック部材と協働して前記ストラップを前記ロック部材を通して偏向するようにする結束具。
【請求項3】
請求項2に記載の結束具であって、前記接近形成部は、前記ロック部材の高さ又は深さを横切って種々の係合位置で前記ロック部材に係合するようになっており、且つ前記ヘッド内に更に挿入すると、前記ロック部材と協働して前記ロック部材の底部を通って前記ストラップを偏向するにようになっている結束具。
【請求項4】
請求項2又は4に記載の結束具であって、前記接近形成部は、前記ストラップの自由端が前記ロック部材に対して整列しない場合に前記ストラップが側方及び/又は下向きに偏向して前記ロック部材の下側に滑らかに通過するようになっている結束具。
【請求項5】
任意の先行する請求項に記載の結束具であって、前記接近形成部は、前記ストラップの縦方向に延びる案内チャンネル又はスロットから成っている結束具。
【請求項6】
請求項5に記載の結束具であって、1対の舌片が前記 案内チャンネル又はスロットのいずれの側にも1つずつ設けられている結束具。
【請求項7】
任意の先行する請求項に記載の結束具であって、前記接近形成部は、前記ストラップの自由端の広い口から頂点へ狭くなるようにテーパ状である結束具。
【請求項8】
任意の先行する請求項に記載の結束具であって、前記ロック部材は、回転可能なボール又はローラーから成っている結束具。
【請求項9】
任意の先行する請求項に記載の結束具であって、前記ロック部材は、前記ヘッドの内部で非ロック位置とロック位置との間を移動可能である結束具。
【請求項10】
任意の先行する請求項に記載の結束具であって、前記ストラップは、その一端で前記ヘッドに取り付けられている結束具。
【請求項11】
任意の先行する請求項に記載の結束具であって、前記 ロック部材は、前記ヘッドから引っ込むことがなく前記ストラップを固定するように前記ヘッドと前記ストラップに対して作用する結束具。
【請求項12】
任意の先行する請求項に記載の結束具であって、金属から形成されている結束具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−516368(P2013−516368A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547542(P2012−547542)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052107
【国際公開番号】WO2011/080511
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512176602)ヘラマンタイトン リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HellermannTyton Limited
【住所又は居所原語表記】Stoner House, London Road, Crawley Sussex RF10 8LJ, Great Britain
【Fターム(参考)】