説明

結束機

【課題】被結束物の太さに応じた長さのテープをスムースに引き出し、良好な結束作業を効率的に行うことができる結束機を提供する。
【解決手段】結束テープ20の自由端22を保持するガイド板38及びテープ押さえ42とカッター40が設けられたスライダ36を、操作レバー68の握り動作に連動してホルダ32内で進退させることで、前記操作レバー68の握り動作に連動して回動するテープ引出アーム70により前記自由端22をテープガイド部30から引き出すとともに、引き出された結束テープ20に被結束物を押し当ててから、テープ引出アーム70の回動によって結束テープ20を切断する。その際、自由端22の引き出し開始前と、被結束物の押し当て前(結束テープ20の引き出し完了後)に、弛み形成機構によって、ケース12内部に結束テープ20の弛みを形成することで、スムースな引き出しが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の枝や蔓などを網,支柱,棚などに結束するための結束機に関し、更に具体的には、接着面を有するテープを利用した結束機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、葡萄の蔓を網などに結束する園芸用の結束機では、ステープラ機構を利用したものがあるが、使用後に処分する際には、環境汚染を防止するためにステープラを分別する手間がかかる。このような問題を改善するために接着テープ(ないし粘着テープ)の利用が着目され、手作業による結束のほか、下記特許文献1及び2に示す技術が開示されている。前記特許文献1には、紙粘着テープ収納部のテープ出口部から、テープ引出アームにより紙粘着テープの先端を引き出すとともに、引き出された紙粘着テープに弛みをもたせる結束機が開示されている。また、前記特許文献2には、非接着面に被結束物が接するようにフレームからテープを引き出し、アームが閉じるときにテープの自由端にひねりを加え、テープの中間部と接着面同士が対向する交差状態にして接着させる構成の結束機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−284115号公報
【特許文献2】特開2008−72928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、外側に引き出された部分に弛みがあるため、被結束物の太さによってはテープに余分が生じて良好な結束ができなかったり、テープが無駄になったりするという不都合がある。また、前記特許文献2に記載の技術では、テープの非接着面に被結束物が接した状態で束ねられるため、結束が十分ではなかったり、テープの接着面が表になっている部分に不要なものが付着したりするという不都合がある。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、被結束物の太さに応じて必要な長さのテープをスムースに引き出すとともに、効率的に良好な結束作業を行うことができる結束機を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の結束機は、片面に接着面を有するロール状の結束テープを回転可能かつ交換可能に保持するロール保持部,作業者が握る握り部,該握り部を挟んで前記ロール保持部の反対側に形成された開放部を有するケースと、前記開放部からケース外側へ延設され、先端側上方に開口部を有するホルダ,該ホルダ内を延設方向に進退し、底面裏側と前記ホルダの間に隙間を有するスライダ,該スライダの先端に設けられ、結束テープの自由端を保持するテープ保持手段,該テープ保持手段から所定の間隔をおいてスライダに固定され、前記開口部側に刃を有する切断手段,前記スライダの後端側に回動可能に設けられた第1のガイドローラ,を有しており、前記ロール保持部から引き出された結束テープが、接着面が第1のガイドローラに接し、非接着面がスライダ裏面側に沿うように、テープ保持手段へガイドされるテープガイド手段と、前記ケースの開放部から、前記テープガイド手段と握り部の間に延設されており、前記ケースに対して回動可能な操作レバーと、前記ケースの開放部から前記テープガイド手段の上方に延設され、前記操作レバーと連動してケースに対して回動し、前記結束テープの自由端をその接着面が被結束物側を向くように把持して引き出す把持手段を先端に有するとともに、前記先端が前記テープガイド手段から離れる方向に全体が付勢されるテープ引出手段と、前記テープ引出手段による結束テープの自由端の引き出し開始前と完了後に、前記ロール保持部と第1のガイドローラの間に結束テープの弛みを形成する弛み形成機構と、初期停止位置にある操作レバーの初回の握り動作によって、前記把持手段が前記テープ保持手段に保持された結束テープの自由端を把持して引き出し、前記操作レバーの2回目の握り動作によって、引き出し部分に被結束物が押し当てられた結束テープが前記切断手段で切断されるように、操作レバーの握り動作に連動して前記スライダを進退させるスライド機構と、を備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テープ保持部と切断手段を有するスライダを備えておりケースに取り付けられたテープガイド手段から、操作レバーの操作に連動して回動するテープ引出手段によって結束テープの自由端を把持して引き出し、引き出された結束テープに被結束物を押し当ててから、前記テープ引出手段の回動によって結束テープを切断する。その際、前記操作レバーの握り動作に応じて、ケース内部における結束テープの弛みの形成と前記スライダの進退を行うこととしたので、被結束物の太さに応じて必要な長さのテープをスムースに引き出すとともに、良好な結束作業を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1の結束機の使用状態を示す外観斜視図である。
【図2】前記実施例1の結束機を図1の矢印F1方向から見た内部構造を示す図である。
【図3】前記図2の一部拡大図である。
【図4】前記実施例1の結束機による結束動作を示す図である。
【図5】前記実施例1の結束機による結束動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
最初に、図1〜図5を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の結束機の使用状態を示す外観斜視図,図2は、本実施例の結束機を図1の矢印F1方向から見た内部構造を示す図,図3は、前記図2の一部拡大図,図4及び図5は、本実施例の結束機による結束動作を示す図である。本発明の結束機は、片面に接着面を有する結束テープを利用して被結束物を束ねるものであって、前記結束テープとしては、公知の接着テープや粘着テープが利用可能である。前記被結束物の一例として、本実施例では、図1(A)に網192と葡萄の蔓194を図示し、これらをまとめて被結束物Wとして示している。本実施例の結束機10は、図1及び図2に示すように、ケース12と、テープガイド部30と、操作レバー68と、該操作レバー68と連動して回動するテープ引出アーム70と、前記ケース12の内部に設けられた弛み形成機構やスライド機構によって構成されている。以下、前記各部について順に説明する。
【0011】
前記ケース12は、ロール状の結束テープ20を回転可能かつ交換可能に保持する軸18を備えたロール保持部16と、作業者が握る握り部26と、該握り部26を挟んで前記ロール保持部16の反対側に形成された開放部24を有するとともに、ケース本体部12Aに対してケースカバー12Bが蝶番14によって開閉可能に連結されている。ロール状の結束テープ20を交換する際には、前記ケースカバー12Bを開いて、結束テープ20を交換し、その自由端22を後述するテープガイド部30に沿って引き出して初期状態にセットする。前記開放部24は、図2に示すように、前記テープガイド部30を境にして上側の開放部24Aと下側の開放部24Bに区切られている。
【0012】
次に、前記テープガイド部30は、前記開放部24から前記握り部26と略直交するように、前記ケース12の外側へ向けて延設されており、先端側上方に開口部34を有するホルダ32の内部に、該ホルダ32内を延設方向(図2の左右方向)に往復可能なスライダ36が設けられた構成となっている。前記スライダ36は、底面36Aの裏側が前記ホルダ32との間に隙間を形成するように配置されている。また、前記スライダ36の先端側には、スライダ底面36Aに対して略垂直なガイド板38とテープ押さえ42が設けられている。前記テープ押さえ42は、図示しない付勢手段によって上方が前記ガイド板38側へ付勢されており、該ガイド板38との間に、前記結束テープ20の自由端22を把持することが可能となっている。また、前記開口部34側に刃を有するカッター40が、前記ガイド板38から前記ロール保持部16側へ所定の間隔をおいて、前記スライダ底面36Aに固定されている。前記ガイド板38,カッター40,テープ押さえ42は、前記ホルダ32の開口部34と対応する位置に配置されている。
【0013】
更に、前記スライダ36の後端側には、軸58によって回動可能に支持されたガイドローラ56が設けられており、前記ロール保持部16から引き出された結束テープ20が、その接着面20Aが前記ガイドローラ56に接し、非接着面20Bがスライダ底面36Aの裏側に沿うようにして、前記ガイド板38とテープ押さえ42の間にガイドされる。このほか、前記スライダ36の側面36Bには、該スライダ36の往復方向に沿って長穴状に形成された溝44,46が適宜間隔で設けられている。このうち、先端側の溝44には、前記ホルダ32の側面32Aに対して略直交するように固定されたピン48が収納され、後端側の溝46には、前記ホルダ側面32Aに対して略直交するように固定されたピン50が収納されている。また、前記溝44,46の間には、スプリング52が配置されており、該スプリング52の一方のフック状の端部52Aが前記ピン48に掛けられ、他方のフック状の端部52Bが、前記スライダ底面36Aに設けられた固定部54の穴に掛けられている(図3参照)。前記溝44,ピン48,スプリング52,固定部54は、後述するスライド機構の一部を構成している。また、前記溝46及びピン50は、スライダ36の往復範囲を規定している。
【0014】
このほか、前記スライダ36には、前記溝46と前記ガイドローラ56との間に、ストッパ60の下端側が固定されている。該ストッパ60は、下端側が前記スライダ36に対して略垂直であって、上端側には、フック62が形成されている。前記フック62は、ケース本体部12Aの内側の開放部24A近傍に設けられたプッシャ104の底面部107に係合することでスライダ36の前進範囲を規定する。プッシャ104については後述する。なお、前記フック62の上端部の高さは、前記底面部107に係合したときに、若干の隙間(図2参照)を形成するように予め設定されている。これは、前記プッシャ104の端部106Bが、後述するテープ引出アーム70に設けられた固定板92の溝94と係合して傾いたときでも、フック62との係合を可能にするためである(図5(A)参照)。
【0015】
次に、操作レバー68とテープ引出アーム70について説明する。前記ケース本体部12Aの内側には、回動板64が軸66を支点として回動可能に支持されており、前記回動板64の下方には、前記開放部24Bから前記テープガイド部30と握り部26の間に、前記操作レバー68が延長形成されている。すなわち、操作レバー68は、前記ケース12に対して回動可能となっている。一方、前記回動板64の上方には、前記テープ引出アーム70が、前記開放部24Aから、前記テープガイド部30の上方に延長形成されている。このため、前記テープ引出アーム70は、前記回動板64を介して前記操作レバー68と連動してケース12に対して回動可能となっている。前記テープ引出アーム70は、前記結束テープ20の自由端22を、その接着面20Aが被結束物W側を向くように(図4(C)参照)把持して引き出す手段を先端に有するとともに、前記先端が前記テープガイド部30から離れようとする方向に全体が付勢されている。
【0016】
前記テープ引出アーム70についてより詳細に説明すると、該テープ引出アーム70は、フレーム72,スプリング100,爪板80,プレート82のほか、前記爪板80の付勢機構を含んでいる。前記フレーム72は、前記開放部24Aからテープガイド部30の上方に突出しており、上面72Aと側面72Bを有するとともに、前記回動板64を介し、前記操作レバー68の握り動作に連動してケース12に対して回動する。前記上面72Aの後端側(ロール保持部16側)には、穴98が形成されており、前記スプリング100の一方の端部100Aが掛けられている。前記スプリング100の他方の端部100Bは、前記ケース本体部12Aの内面に対して垂直に設けられたピン102に掛けられている。このため、操作レバー68の握り動作に連動し、先端73が前記テープガイド部30に近づくように回動するテープ引出アーム70は、前記スプリング100により、前記先端73がテープガイド部70から離れようとする方向に付勢される。
【0017】
また、前記フレーム72の側面72Bの先端には、前記上面72Aの先端73の面と略平行に配置されたプレート82が固定されている。該プレート82と前記先端73の間には、前記操作レバー68の握り動作がない初期状態(図2及び図4(A)に示す状態)において、先端が前記プレート82と接触し、前記操作レバー68の握り動作に伴って前記先端73側に移動する爪板80が配置されている。該爪板80は、前記初期状態にある操作レバー68の初回の握り動作によって、前記プレート82との間に結束テープ20の自由端22を把持し、前記操作レバー68の2回目の握り動作によって、前記フレーム上面72Aの先端73との間に、前記テープガイド部30のカッター40を挟むためのものである。
【0018】
前記爪板80を前記プレート82側に付勢する爪板付勢機構は、前記フレーム72に沿ってスライド可能であって、前記フレーム72の先端側へ付勢されるアーム74と、一端側が軸76によって前記アーム74に対して回動可能に取り付けられ、他端側に前記爪板80が固定されるアーム78と、前記アーム74をフレーム72内で先端側(前進方向)に付勢するスプリング90と、前記アーム74をフレーム72内で後退方向に押圧するプッシャ104などを含んでいる。前記アーム78は、前記軸76と爪板80の中間位置において、前記フレーム側面72Bに対して軸79を支点として回動可能に支持されている。
【0019】
一方のアーム74の後端側には、略弧状の溝94を備えた固定部92が連続形成されており、該固定部92の後端側の端面96に設けられた穴に、前記スプリング90の一方の端部90Bが固定されている。また、前記アーム74には、前記固定部92よりも先端寄りの位置にスリット84が形成されている。該スリット84には、前記フレーム側面72Bに固定されており、鍔部88を有するピン86が、前記スリット84に沿ってスライド可能に収納されている。前記スプリング90の他方の端部90Aは、前記ピン86に掛けられている。このため、前記アーム74がフレーム72内で後退すると、該フレーム74を前進させる方向に付勢力が作用する。
【0020】
前記プッシャ104は、図示の例では略T字状となっており、上辺の両方の端部106A,106Bが略弧状に形成されており、一方の端部106Aが、前記ケース本体部12Aの内面に対して略直交する軸108を支点として回動可能に支持されている。前記軸108には、スプリング109が巻回されており、該スプリング109の一方の端部109Aは、前記プッシャ104の上縁に掛けられている。他方の端部109Bは、前記軸108の下方に設けられており、前記ケース本体部12Aの内面に対して略直交するピン110に掛けられる。これにより、前記底部107が下を向くように付勢されている。また、前記プッシャ104の端部106Bは、操作レバー68の握り動作に伴ってテープ引出アーム70が回動し、該回動によって固定部92が接近すると、前記溝94の下部分に当接する。その結果、前記固定部92を介して前記アーム74がフレーム72内で後退する。
【0021】
前記プッシャ104でアーム74を後方へ押圧すると、該アーム74に一端が回動可能に連結されたアーム78は、前記軸79を支点として回動するため、先端の爪板80が、フレーム上面72Aの先端73側へ移動する。前記プッシャ104の端部106Bの一部が、前記固定部92の溝94に掛かるまで、前記爪板80の移動が行われる。このとき、前記アーム74のスリット84内をスライドするピン86に一方の端部90Aが固定されているスプリング90が伸びるため、フレーム72内を後退するアーム74を前進させる付勢力が発生する。そのため、前記操作レバー68の握り動作を解除すると、前記スプリング90の付勢力によりアーム74が前進し、それにともなって爪板80が再び前記プレート82と接触するまで回動する。
【0022】
次に、ケース12の内部に結束テープ20の弛みを形成するための弛み形成機構について説明する。弛み形成機構は、前記ケース本体部12Aの内面に沿って回動可能となるように軸118を支点として回動可能に支持されるカム板120のほか、前記操作レバー68に設けられた凸部132や、ガイドローラ128により構成されている。前記カム板120は、カム板本体120A(カム板120の操作レバー68側)にカム溝122を有するとともに、前記カム板本体120Aから前記ロール保持部16へ向けて延びるアーム120Bを備えている。該アーム120Bの先端には、前記ガイドローラ128が軸126に対して回動可能に支持されており、前記ガイドローラ128には、結束テープ20の非接着面20Bが接するように掛けられている。前記操作レバー68の凸部132が、前記カム溝122に沿ってスライドすることで、結束テープ20が掛けられたガイドローラ128が上下するため、ロール保持部16から引き出した結束テープ20に、ケース12内で弛みを設けることができる。
【0023】
本実施例では、前記カム溝122は、端部122Aと122Bの間に、谷状の曲部124Aと山状の曲部124Bを有する形状となっている。このため、前記凸部132がカム溝端部122Aに位置する握り動作開始前や、カム溝端部122Bに位置する握り動作完了時点より、凸部132が前記曲部124Bに位置する握り動作の完了前後の時点において、前記ガイドローラ128の位置が、図4(B)に点線で示した最下位置まで下がり、ロール保持部16から引き出される結束テープ20が最長となる。このような構成とすることで、前記テープ引出アーム70による結束テープ20の自由端22の引き出し開始前と、引き出し完了後(すなわち、引き出した結束テープ20への被結束物Wの押し当て前)に、前記ロール保持部16とガイドローラ56の間に、結束テープ20の弛みを形成することができ、スムースな引き出しが可能となる。なお、図示の例では、前記ガイドローラ128の近傍に、ロール保持部16からの結束テープ20の引き出し操作をスムースに行うために、他のガイドローラ130が配置されている。
【0024】
次に、前記スライダ36をホルダ32内で進退させるためのスライド機構140について説明する。前記スライド機構140は、プレート142,スライド体146,ロック部材160,スプリング172及び52と、リンク機構により構成される。前記プレート142は、前記スライダ36の後端側から、該スライダ36と略直交する下方向に延設されており、該延設方向に延びるスリット144を有している。前記スライド体146は、前記スリット144よりも全長が短く、該スリット144に沿ってスライド可能であって、前記スリット144内に収納される本体部148と、該本体部148の両面に設けられており、前記スリット144よりも幅が広いガイドプレート150,152を含んでおり、これら本体部148とガイドプレート150,152は一体にスライドする。そして、一方のガイドプレート150の下端側には、前記操作レバー68側へ突出形成された凸部156が設けられ、上端側には、後述するリンク182の先端を受けて下方にガイドするための斜面ないし曲面を備えたガイド部154が設けられている。他方のガイドプレート152の下端側には、ロール保持部16側へ突出した凸部158が設けられている。
【0025】
前記ロック部材160は、プレート162の上端側に、前記スライド体146の上方において前記スリット144内に収納可能な爪部164を設けるとともに、下端側に、前記スライド体146の凸部158に対し、軸168を支点として回動可能な連結部166を設けた構成となっている。前記スプリング172は、一方の端部172Aが、前記連結部166の後端側上方に設けられた穴170に固定され、他方の端部172Bが前記スライダ36の後端に固定されており、前記ロック部材160の下端側を引き上げ方向に付勢する。一方、前記スプリング52は、前記スライダ36を先端側に付勢するためのものであって、上述した通りの構成となっており、前記スライダ36がホルダ32の先端側に位置するときには縮んでおり、スプリング端部52Aが係合するピン48は、前記溝44の後端側に位置する。そして、後述するリンク機構によりスライダ36が後退すると、前記溝44,46内におけるピン48,50の位置が前端寄りになるとともに、スプリング52が伸びてスライダ36を先端側に引き戻す付勢力が生じる。
【0026】
前記リンク機構は、前記ケース12の内部において、前記操作レバー68に固定された軸176に対して回動可能なリンク174と、該リンク174に対して軸184によって回動可能に連結されるリンク182を含んでいる。前記軸176にはスプリング178が巻回されており、その一方の端部178Aは前記リンク174に掛けられ、他方の端部178Bは、前記操作レバー68に固定されたピン180に掛けられている。また、前記軸184には他のスプリング186が巻回されており、その一方の端部186Aは前記リンク174に掛けられ、他方の端部186Bは前記リンク182に掛けられている。なお、前記スプリング186は、前記スプリング178よりも巻き方向に戻る力が強く、前記リンク174に対するリンク182の回動よりも、前記操作レバー68に対するリンク174の回動の方が、弱い力で起こりやすくなっている。
【0027】
以上のようなリンク機構は、初期停止位置にある操作レバー68の初回の握り動作によって、前記リンク182の先端が、前記スリット144内の爪部164の大部分を押し出して前記プレート142に当接し(図4(B)参照)、前記初回握り動作の完了まで、前記プレート142を介して、前記スライダ36をロール保持部16側へ後退させる。前記初回握り動作の完了後には、リンク182の先端とプレート142の当接は解除される(図4(C)参照)。このとき、リンク182とプレート142の当接の解除により、スプリング52の付勢力によってスライダ36及びプレート142が前進して、図4(A)に示す初期位置に戻るため、爪部146が完全にスリット144から外れるとともに、スプリング172の付勢力によって、連結部166を介してスライド体146全体が、スリット144の上端まで引き上げられる。その後、前記操作レバー68の2回目の握り動作を行い、前記リンク182の先端がガイド部154によって下方に案内されて凸部156に当接し、該凸部156を介してスライド体146が押し下げられると、スライド体146の上方に隙間が生じ、再び爪部164が前記隙間に収納される。この2回目の握り動作のときは、前記リンク機構は、プレート142を後退させることはなく、スリット144に沿ってスライド体146を押し下げるのみである。
【0028】
次に、図4及び図5も参照しながら本実施例の作用を説明する。まず、ケースカバー12Bを開き、ロール保持部16の軸18にロール状の結束テープ20をセットし、その自由端22を引き出して、ガイドローラ128,56の順に掛け、更に、スライダ底面36Aの裏側に沿ってテープガイド部30の先端側までガイドし、ガイド板38とテープ押さえ42の間を通して保持させ、ケースカバー12Bを閉じる。このとき、自由端22は、接着面20Aが外側を向いている。結束作業を行うときには、以上のように結束テープ20をセットした初期状態(図1(A),図2,図4(A)参照)から、まず、操作レバー68を握り部26側へ向けて引く。この操作レバー68の初回の握り動作に連動し、上述した各部の作用によって、前記スライド機構140によるスライダ36の後退,テープ引出アーム70の回動,ガイドローラ128による弛みの形成が行われる。
【0029】
これに加え、前記操作レバー68の握り動作完了付近になると、テープ引出アーム70内の固定部92が前記プッシャ104に接近し、プッシャ104の端部106Bが前記溝94に掛かるまで、該プッシャ104により後方に押される(当接状態は図示せず)。このため、前記アーム74に対して回動するアーム78の先端の爪板80が、フレーム上面72Aの先端73側に開き、初回握り動作完了時点では、図4(B)に示すように、前記爪板80とプレート82の間に、ガイド板38及び自由端22を把持する。この時点では、上述したように、前記ガイドローラ128は、図4(B)に点線で示す最下位置を経てから上昇した状態にあるため、ロール保持部16とガイドローラ56の間に弛みが形成されている。
【0030】
次に、前記操作レバー68の握り動作を解除すると、まず、テープ引出アーム70の回動に伴い、プッシャ端部106Bが溝94から外れて固定部92との接触が解除されるため、前記スプリング90の付勢力により前記爪板80がプレート82側に引き寄せられ、該爪板80とプレート82により前記自由端22が把持される。更に、前記テープ引出アーム70が回動すると、結束テープ20が図4(C)に示すように引き出される。このとき、あらかじめケース12の内部に結束テープ20の弛みを形成しているため、引き出しがスムースに行われる。また、握り動作の解除により、リンク182とプレート142との当接が解除するため、スプリング52の付勢力によってスライダ36が前進して図4(C)に示す初期位置に戻るとともに、ロック部材160の爪部164がスリット144から外れ、スプリング172の付勢力によりスライド体146がスリット144の上端まで引き上げられる。なお、前記結束テープ20の引き出し中に、前記ガイドローラ128が再度、最下位置を通過するため、図4(C)に示す状態(引出完了後,いいかれば、被結束物Wを押し当てる前)には、ケース12の内部に、再び結束テープ20の弛みが形成されている。
【0031】
次に、図4(C)に示す状態で、引き出された結束テープ20の接着面20Aに、被結束物Wを押し当て、前記テープ引出アーム70とテープガイド部30の間に形成される作業部190(図1(B)参照)に、被結束物Wを押し込む。このとき、ケース12の内部に結束テープ20の弛みが形成されているため、スムースに被結束物Wを押し込むことができる。なお、被結束物Wの太さによっては、ケース12の内部に設けられた弛みでは足りない場合があるが、前記ガイドローラ56,128,130の回転により、不足分の結束テープ20をロール保持部16からスムースに引き出すことができる。
【0032】
前記被結束物Wを、前記作業部190に完全に押し込んだら、前記操作レバー68の2回目の握り動作を行う。このとき、上述したように、リンク182の先端は、前記スライド体146のガイド部154によって下方に案内され、凸部156に当接してスライド体146を押し下げるため、スライダ36は後退することなく、握り動作前の位置を保つ。また、前記スライド体146の下降により、前記ロック部材160の爪部164が、スライド体146の上方においてスリット144内に収納される。一方、前記操作レバー68の2回目の握り動作に連動してテープ引出アーム70が回動し、該操作レバー68の握り動作完了付近になると、テープ引出アーム70内の固定部92が前記プッシャ104に接近して固定部92を後方へ押すため、前記爪板80がフレーム先端73側へ開く。
【0033】
このとき、前記スライダ36が後退せずに、図4(A)及び図4(C)に示す初期位置を維持しているため、爪板80と前記先端73の間には、カッター40が挟まれるようになる。そして、前記2回目の握り動作の完了時点で、前記カッター40の刃の上に掛かっている結束テープ20が切断され、被結束物Wが結束される(図1(B)及び図5(A)参照)。被結束物Wは、2回目の握り動作の解除によってテープ引出アーム70を開いてから、図5(B)に示すように作業部190から取り外される。なお、図5(A)に示す状態から、図5(B)に示す状態への変化は、スライダ36の位置変化がないほかは、前記図4(B)から図4(C)に示す場合と基本的に同様である。
【0034】
このように、実施例1の結束機10によれば、ガイド板38,テープ押さえ42,カッター40を有するスライダ36を備えており、ケース12に取り付けられたテープガイド部30から、操作レバー68の操作に連動して回動するテープ引出アーム70によって、結束テープ20の自由端22を把持して引き出し、引き出された結束テープ20の接着面20Aに被結束物Wを押し当ててから、前記テープ引出アーム70の回動によって結束テープ20を切断する。その際、前記操作レバー68の握り動作に応じて、ケース12の内部における結束テープ20の弛みの形成と、前記スライダ36の進退を行うこととしたので、被結束物Wの太さに応じて必要な長さの結束テープ20をスムースに引き出すとともに、良好な結束を効率的に行うことができるという効果がある。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法,材質は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例では、カム板120を、カム板本体部120Aとアーム120Bで構成したが、同様の効果を奏するように、その形状は適宜変更可能である。
(2)前記リンク174,182を利用したリンク機構も一例であり、同様の効果を奏するように、適宜設計変更してよい。スプリング52,90,100,172を利用した付勢機構や、プッシャ104によって固定部92を後退させる機構についても一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。
(3)結束テープ20としては、公知の各種の接着テープや粘着テープの利用が可能であるが、一定時間(例えば、一年間程度)の経過により光で溶けるようなテープを利用すると、焼却処分のみならず、処分する農植物などとともに堆肥にすることも可能となる。
(4)前記実施例では、被結束物Wとして、網192や葡萄などの蔓194を例に挙げたが、枝を支柱などに結束する場合や、各種配線(電気コードなど)の結束や仮結束に利用するなど、本発明の結束機は、公知の各種の被結束物に対して適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、テープ保持部と切断手段を有するスライダを備えておりケースに取り付けられたテープガイド手段から、操作レバーの握り動作に連動して回動するテープ引出手段によって結束テープの自由端を把持して引き出し、引き出された結束テープに被結束物を押し当ててから、前記テープ引出手段の回動によって結束テープを切断する。その際、前記操作レバーの握り動作に応じて、ケース内部における結束テープの弛みの形成と前記スライダの進退を行うことで、被結束物の太さに応じて必要な長さのテープをスムースに引き出すとともに、効率的で良好な結束が可能となるため、結束機の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
10:結束機
12:ケース
12A:ケース本体部
12B:ケースカバー
14:蝶番
16:ロール保持部
18:軸
20:結束テープ
20A:接着面
20B:非接着面
22:自由端
24,24A,24B:開放部
26:握り部
30:テープガイド部
32:ホルダ
32A:側面
34:開口部
36:スライダ
36A:底面
36B:側面
38:ガイド板
40:カッター
42:テープ押さえ
44,46:溝
48,50:ピン
52:スプリング
52A,52B:端部
54:固定部
56:ガイドローラ
58:軸
60:ストッパ
62:フック
64:回動板
66:軸
68:操作レバー
70:テープ引出アーム
72:フレーム
72A:上面
72B:側面
73:先端
74,78:アーム
76,79:軸
80:爪板
82:プレート
84:スリット
86:ピン
88:鍔部
90:スプリング
90A,90B:端部
92:固定部
94:溝
96:端面
98:穴
100:スプリング
100A,100B:端部
102:ピン
104:プッシャ
106A,106B:端部
107:底面部
108:軸
190:スプリング
109A,109B:端部
110:ピン
118:軸
120:カム板
120A:カム板本体
120B:アーム
122:カム溝
122A,122B:端部
124A,124B:曲部
126:軸
128,130:ガイドローラ
132:凸部
140:スライド機構
142:プレート
144:スリット
146:スライド体
148:本体部
150,152:ガイドプレート
154:ガイド部
156,158:凸部
160:ロック部材
162:プレート
164:爪部
166:連結部
168:軸
170:穴
172:スプリング
172A,172B:端部
174,182:リンク
176,184:軸
178,186:スプリング
178A,178B,186A,186B:端部
180:ピン
190:作業部
192:網
194:蔓
W:被結束物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に接着面を有するロール状の結束テープを回転可能かつ交換可能に保持するロール保持部,作業者が握る握り部,該握り部を挟んで前記ロール保持部の反対側に形成された開放部を有するケースと、
前記開放部からケース外側へ延設され、先端側上方に開口部を有するホルダ,該ホルダ内を延設方向に進退し、底面裏側と前記ホルダの間に隙間を有するスライダ,該スライダの先端に設けられ、結束テープの自由端を保持するテープ保持手段,該テープ保持手段から所定の間隔をおいてスライダに固定され、前記開口部側に刃を有する切断手段,前記スライダの後端側に回動可能に設けられた第1のガイドローラ,を有しており、前記ロール保持部から引き出された結束テープが、接着面が第1のガイドローラに接し、非接着面がスライダ裏面側に沿うように、テープ保持手段へガイドされるテープガイド手段と、
前記ケースの開放部から、前記テープガイド手段と握り部の間に延設されており、前記ケースに対して回動可能な操作レバーと、
前記ケースの開放部から前記テープガイド手段の上方に延設され、前記操作レバーと連動してケースに対して回動し、前記結束テープの自由端をその接着面が被結束物側を向くように把持して引き出す把持手段を先端に有するとともに、前記先端が前記テープガイド手段から離れる方向に全体が付勢されるテープ引出手段と、
前記テープ引出手段による結束テープの自由端の引き出し開始前と完了後に、前記ロール保持部と第1のガイドローラの間に結束テープの弛みを形成する弛み形成機構と、
初期停止位置にある操作レバーの初回の握り動作によって、前記把持手段が前記テープ保持手段に保持された結束テープの自由端を把持して引き出し、前記操作レバーの2回目の握り動作によって、引き出し部分に被結束物が押し当てられた結束テープが前記切断手段で切断されるように、操作レバーの握り動作に連動して前記スライダを進退させるスライド機構と、
を備えたことを特徴とする結束機。
【請求項2】
前記弛み形成機構が、
前記ケース内面に沿って回動可能となるように該ケース内面に支持されるとともに、前記操作レバー側にカム溝を有するカム板と、
前記操作レバーに設けられており、前記カム溝に沿って移動可能な凸部と、
前記カム板のロール保持部側に回動可能に設けられており、該ロール保持部から結束テープを引き出すとともに、前記第1のガイドローラへ案内する第2のガイドローラと、
を含むとともに、
前記操作レバーの握り動作の開始前及び完了時点よりも、握り動作完了前後の時点において、前記第2のガイドローラによってロール保持部から引き出される結束テープが最長となるように、前記カム溝の形状を設定したことを特徴とする請求項1記載の結束機。
【請求項3】
前記スライド機構が、
前記スライダの後端側から、該スライダと略直交する下方向に延設されており、該延設方向に延びるスリットを有するプレートと、
前記スリットよりも全長が短く、該スリットに沿ってスライド可能であって、下端側に前記操作レバー側へ突出形成された凸部を有するスライド体と、
上端側に前記スライド体の上方において前記スリット内に収納可能な爪部を有し、下端側が前記スライド体のロール保持部側の下端側に回動可能に取り付けられたロック部材と、
一端が前記ロック部材の下端側に固定され、他端が前記スライダの後端に固定されており、前記ロック部材の下端側を引き上げ方向に付勢する第1の付勢手段と、
前記スライダを先端側に付勢する第2の付勢手段と、
前記操作レバーに対して回動可能に取り付けられており、初期停止位置にある操作レバーの初回握り動作によって、前記スリット内の爪部の大部分を押し出して前記プレートに当設し、前記初回握り動作の完了まで前記プレートをロール保持部側へ後退させ、初回握り動作の完了後にプレートとの当接が解除され、操作レバーの2回目の握り動作によってスライド体の凸部に当接して押し下げるリンク機構と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の結束機。
【請求項4】
前記テープ引出手段は、
前記ケースの開放部から前記テープガイド手段の上方に突出しており、前記操作レバーと連動してケースに対して回動するフレームと、
該フレームの先端側が、前記テープガイド手段から離れる方向に前記フレームを付勢するフレーム付勢手段と、
前記フレームの先端に略平行に配置された一対のプレートと、
該一対のプレート間に配置されており、前記操作レバーの握り動作がない状態において、先端が前記一対のプレートの一方と接触し、前記操作レバーの握り動作に伴って、他方のプレート側に移動する爪板と、
該爪板を前記一方のプレート側に付勢する爪板付勢機構と、
を含むとともに、
前記爪板は、初期停止位置にある操作レバーの初回握り動作によって、前記一方のプレートとの間に結束テープの自由端を把持し、前記操作レバーの2回目の握り動作によって、前記他方のプレートとの間に前記切断手段を挟むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の結束機。
【請求項5】
前記爪板付勢機構は、
前記フレームに沿って進退可能であって、該フレーム内で前進方向に付勢される第1のアームと、
一端側が前記第1のアームに対して回動可能に取り付けられ、他端側に前記爪板が固定されるとともに、両端の中間部において、前記フレームに対して回動可能に支持される第2のアームと、
前記第1のアームを、前記フレームに対して後退させる押圧手段と、
を含むことを特徴とする請求項4記載の結束機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274937(P2010−274937A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127084(P2009−127084)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(505345392)株式会社エム・アンド・シー (2)
【Fターム(参考)】