説明

結露抑制装置およびそれを備えた環境試験装置

【課題】閉空間内の圧力を調整する圧力調整部の破損を回避でき、圧力調整部の寿命を向上させることが可能な結露抑制装置を提供する。
【解決手段】結露抑制装置3は、内部圧が上昇、低下し得る閉空間5内で結露が発生するのを抑制するものであって、内部圧の上昇に伴い、閉空間5内から空気を流入させることにより、かつ内部圧の低下に伴い、閉空間5内に空気を流出することにより、閉空間5の内部圧の変動を緩和する圧力調整部18と、閉空間5と圧力調整部18とを連通するダクト20とを備えている。ダクト20は、圧力調整部18を構成する材料の耐熱温度を超える温度の空気が閉空間5から流入したときに、空気の温度を耐熱温度よりも低くなるように放熱可能な形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部圧が上昇、低下し得る閉空間内で結露が発生するのを抑制する結露抑制装置、およびそれを備えた環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料の熱的強度等を試験する目的で、高温雰囲気および低温雰囲気を生成して、試料に熱負荷を与える試験装置が知られている。このような試験装置では、試験室の雰囲気が高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられたとき、試験室の内部圧が低下する。その結果、試験室内に外気が吸い込まれるため、試験装置内での結露の発生原因となり得る。結露が発生すると、試験装置の冷凍機の冷凍能力が低下したり、除霜のために試験が中断したりするといった問題が生じる。
【0003】
結露の発生を抑制することが可能な結露抑制装置を備えた試験装置として、例えば特許文献1のものが知られている。特許文献1に開示される結露抑制装置は、変形自在な袋体と、袋体および試験装置の試験室を連通する管継手とを有している。袋体は、低温雰囲気から高温雰囲気に切り換えられた試験室内の高温空気を、管継手を介して流入させることにより、試験室の内部圧の上昇を緩和する。また、袋体は、該袋体内の空気を、高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられた試験室内に管継手を介して流出することにより、試験室の内部圧の低下を緩和する。このように、袋体は、試験室の内部圧の変動を緩和することが可能な圧力調整部として用いられている。この袋体によって、試験室の内部圧は、高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられても大きく低下しないので、外気が試験室内に吸い込まれるのを抑制できる。これにより、結露の発生を抑制している。
【特許文献1】特開2002−48705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記結露抑制装置では、袋体および試験室を連通する管継手は、試験室から袋体に流入する高温空気を、袋体の耐熱温度よりも低くなるように放熱させることができないので、高温空気は、温度を維持した状態で袋体に流入する。そのため、袋体は、高温空気に曝されて劣化し易くなる。しかも、高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数が増加すると、袋体の劣化速度は上昇するため、その場合には、袋体が破損する可能性が出てくる。袋体を十分な耐熱性を備えた材料で構成することもできるが、そのような場合には、材料選択の幅が狭くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、閉空間内の圧力を調整する圧力調整部の破損を回避でき、圧力調整部の寿命を向上させることが可能な結露抑制装置、およびそれを備えた環境試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る結露抑制装置は、内部圧が上昇、低下し得る閉空間内で結露が発生するのを抑制する結露抑制装置であり、前記内部圧の上昇に伴い、前記閉空間内から空気を流入させることにより、かつ前記内部圧の低下に伴い、前記閉空間内に空気を流出することにより、前記閉空間の前記内部圧の変動を緩和する圧力調整部と、前記閉空間と前記圧力調整部とを連通するダクトとを備えている。前記ダクトは、前記圧力調整部を構成する材料の耐熱温度を超える温度の空気が前記閉空間から流入したときに、前記空気の温度を前記耐熱温度よりも低くなるように放熱可能な形状を有している。
【0007】
本発明に係る結露抑制装置が取り付けられた前記閉空間は、結露抑制装置の圧力調整部によって該閉空間の内部圧の変動が緩和されるので、外気が侵入し難く、その結果、結露の発生を抑制することが可能な空間である。具体的には、閉空間の内部圧が低下しても、圧力調整部から閉空間内に空気が流入するので、前記内部圧の低下が緩和され、外気が閉空間内に吸い込まれ難くなる。その結果、閉空間内で結露が発生するのを抑制できる。また、閉空間の内部圧が上昇しても、閉空間内の空気は圧力調整部に流入するので、閉空間の内部圧の上昇が緩和される。
【0008】
また、前記結露抑制装置は、閉空間と圧力調整部とを連通するダクトによって、内部圧変動緩和の機能を維持することが可能である。具体的には、ダクトは、圧力調整部を構成する材料の耐熱温度を超える温度の空気が、閉空間から圧力調整部に流入するのを防止するので、圧力調整部の破損を回避でき、ひいては圧力調整部の寿命を向上させることができる。また、前記空気は、圧力調整部に流入する前にその温度が下げられるので、圧力調整部を、従来と比較して耐熱性の低い材料から構成することができる。これにより、圧力調整部を構成する材料の選択の幅が広がると共に、材料のコストを低減することが可能となる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、前記圧力調整部は、変形自在な袋体であり、前記袋体は、前記内部圧の上昇に伴い、前記閉空間から空気を流入させて膨らみ、かつ前記内部圧の下降に伴い、前記閉空間に空気を流出させて縮む。
【0010】
この構成によれば、袋体は、閉空間内での圧力変動に容易に追従して変形するので、閉空間内の圧力変動が小さい場合でも対応可能である。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記ダクトは蛇腹状に形成されている。また、前記ダクトの外周面に、環状のフィンを複数形成してもよい。これらの構成により、ダクトの表面積が大きくなるので、ダクトと外気との熱交換面積を大きくすることができる。その結果、閉空間から圧力調整部に流入する前記空気の放熱が促進される。また、ダクトを蛇腹状に形成した場合、ダクトに屈曲性および伸縮性を付与することができる。これにより、ダクトの設置の自由度が高くなる。
【0012】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、結露抑制装置は、さらに、前記ダクトに送風することが可能な送風機を備えている。この構成によれば、閉空間からダクトに流入する前記空気の放熱を一層促進できる。
【0013】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記ダクトは、第1ダクトと第2ダクトとを含み、前記第1ダクトおよび第2ダクトの各一端部は前記閉空間に接続されると共に、各他端部は前記圧力調整部に接続されている。この構成によれば、1本のダクトを用いる構成と比較して、ダクトの表面積が大きくなるので、ダクトと外気との熱交換面積を大きくすることができる。これにより、閉空間からダクトに流入する前記空気の放熱が容易となる。
【0014】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記圧力調整部は、前記第1ダクトに連通される第1圧力調整室と、前記第2ダクトに連通される第2圧力調整室とを含む。
【0015】
閉空間から圧力調整部に流入する前記空気の放熱促進の観点からは、第1ダクトおよび第2ダクトを単一の圧力調整部に接続する構成を採用してもよい。しかしながら、この構成では、前記空気は、2本のダクトから単一の圧力調整部に流入するため、第1ダクト、圧力調整部、第2ダクト、閉空間の順に流れる循環流が発生する可能性がある。このような循環流が発生すると、圧力調整部を構成する材料の耐熱温度を超える前記空気が圧力調整部内に流入する可能性があり、その場合、圧力調整部が破損することを回避することは難しい。そこで、第1ダクトに第1圧力調整部を、第2ダクトに第2圧力調整部を連通させることで、前記循環流が発生するのを防止している。
【0016】
前記閉空間は、例えば、閉空間内の温度を変えることによって該閉空間内に載置された試料に熱負荷を与える試験室である。この試験室に、本発明に係る結露抑制装置を取り付けてもよい。これにより、試験室内で結露が発生するのを抑制できる。
【0017】
また、前記閉空間は、例えば、試料に熱負荷を与える試験室を構成する断熱パネル壁である。この断熱パネルに、本発明に係る結露抑制装置を取り付ければ、断熱パネル壁内で結露が発生するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る結露抑制装置によれば、圧力調整部の破損を回避でき、圧力調整部の寿命を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る結露抑制装置を備えた試験装置の構成を概略的に示す断面図である。試験装置1は、試料Wを試験する試験装置本体2と、試験装置本体2に取り付けられて、試験装置本体2内で結露が発生するのを抑制する結露抑制装置3とを含む。試験装置1は、試料Wに熱負荷を与えて試料Wの熱的強度等を試験する、例えば環境試験装置である。この環境試験装置は、試料を低温と高温に交互に曝して試料に熱負荷を与える熱衝撃試験装置、あるいは試料を所定条件の雰囲気に曝し続けて試料に熱負荷を与える恒温槽や恒温恒湿槽として構成されている。また、試料Wとして、例えば半導体チップが実装されたプリント基板が挙げられる。本実施形態では、試験装置1は熱衝撃試験装置として説明を続ける。
【0021】
試験装置本体2は、試験される対象である試料Wが載置される試験室5と、図略の加熱手段により空気を加熱して熱風を試験室5に送出する高温室7と、図略の冷凍機により空気を冷却して冷風を試験室5に送出する低温室9とを含む。試験室5、高温室7および低温室9のそれぞれは、断熱材(断熱層)を内部に有する断熱パネル壁11によって囲まれた閉空間であり、互いに熱的に遮断されている。試験室5には、試料Wを出し入れするための試験室扉6が設けられている。
【0022】
高温室7および試験室5間の断熱パネル壁11には、高温室7から試験室5に熱風を供給するための熱風供給口13と、前記熱風を試験室5から高温室7に戻すための熱風排出口14とが形成されている。熱風は、熱風供給口13から試験室5内に流入し、試験室5内を循環した後、熱風排出口14を通って高温室7に戻る。これにより、試験室5内は高温雰囲気となる。このとき、試験室5内の温度は、例えば150℃に設定される。
【0023】
また、低温室9および試験室5間の断熱パネル壁11には、低温室9から試験室5に冷風を供給するための冷風供給口15と、前記冷風を試験室5から低温室9に戻すための冷風排出口16とが形成されている。冷風は、冷風供給口15から試験室5内に流入し、試験室5内を循環した後、冷風排出口16を通って低温室9に戻る。これにより、試験室5内は低温雰囲気となる。このとき、試験室5内の温度は、例えば−60℃に設定される。なお、熱風供給口13および熱風排出口14には、熱風切換ダンパ17が配置されており、冷風供給口15および冷風排出口16には、冷風切換ダンパ19が配置されている。図1では、熱風切換ダンパ17が開状態、冷風切換ダンパ19が閉状態のときを示している。
【0024】
試験装置1の稼働中、試料Wは、高温雰囲気および低温雰囲気に交互に曝されて、熱負荷が与えられる。これにより、試料Wの、例えば熱強度、熱ストレス特性、耐久性等が試験される。高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数は、試料Wに応じて任意である。
【0025】
結露抑制装置3は、試験室5内の圧力の変動を緩和する圧力調整部18と、外気に曝された状態で試験装置本体2の外部に配置されて、試験室5を圧力調整部18に連通させるダクト20とを含む。圧力調整部18は、第1実施形態では、変形自在な袋体である。袋体18の材料として、例えばポリエチレン、ビニル樹脂、シリコンが挙げられる。袋体18は、例えば80〜90℃の耐熱温度を有する。袋体18は、箱体22内に収容されている。箱体22の面のうちの1つには、開口が形成されており、この開口には、例えばステンレスからなる接続管24が嵌め込まれている。接続管24の一端部25は、箱体22内に延在しており、一方、他端部26は、外部に突出している。接続管24の一端部25に、袋体18の開口部が図略の締付部材、例えばホースバンドによって取り付けられている。
【0026】
試験室5の一側面には、断熱パネル壁11を貫通する開口が形成されており、この開口には、例えばステンレスからなる接続管29が嵌め込まれている。接続管29の一端部30は、断熱パネル壁11の内面に当接するように折り曲げられて前記内面に固定されており、一方、他端部31は、断熱パネル壁11から外部に突出している。ダクト20は、一端部が、試験室5側の接続管29の他端部31に締付部材、例えばホースバンドによって取り付けられていると共に、他端部が、袋体18側の接続管24の他端部26に締付部材、例えばホースバンドによって取り付けられることによって、試験室5と袋体18を連通している。
【0027】
ダクト20は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、所定長さを有する蛇腹状の部材である。ダクト20は蛇腹状に形成されているので、ダクト20の表面積は大きい。これにより、ダクト20と外気との熱交換面積を大きくすることができる。その結果、後述するように、試験室5内の高温空気がダクト20を通る際に、高温空気の温度が袋体18の前記耐熱温度よりも低くなるように高温空気を放熱させることが可能である。また、ダクト20を蛇腹状に形成することで、ダクト20に屈曲性および伸縮性を付与することができる。
【0028】
次に、試験装置本体2に取り付けられた結露抑制装置3の作用について説明する。試験室5内に載置された試料Wに熱的負荷を与えて試料Wの熱的強度等を試験するに当たり、まず試験室5内の雰囲気を、例えば高温雰囲気にする。高温雰囲気は、熱風切換ダンパ17を開状態にし、冷風切換ダンパ19を閉状態にすることにより、高温室7から熱風を試験室5内に導入し、循環させることで生成される。試験室5内の高温空気は、矢印Eで示すように、試験室5の開口を介してダクト20を通り、袋体18に流れ込む。袋体18は、高温空気の流入により、実線L1で示すように膨らむ。このようにして、袋体18は、試験室5の内部圧が上昇するのを緩和する。
【0029】
試料Wを高温雰囲気に所定時間曝した後、試験室5内の雰囲気は、高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられる。低温雰囲気は、熱風切換ダンパ17を閉じ、冷風切換ダンパ19を開けることにより、低温室9から冷風を試験室5内に導入し、循環させることで生成される。低温雰囲気が生成されると、試験室5の内部圧は低下するので、外気が試験室5内に吸い込まれて侵入しようとする。しかしながら、このとき、袋体18内に存在する空気が、矢印Sで示すようにダクト20を通り開口を介して試験室5内に流れ込む。袋体18は、2点鎖線L2で示すように縮む。このようにして、袋体18は、試験室5の内部圧が低下するのを緩和する。
【0030】
上述のように、袋体18によって試験室5の内部圧の変動、特に内部圧の低下を緩和することができるので、試験室扉6の隙間等を通って試験室5内に外気が吸い込まれ難い。その結果、吸い込まれた外気が冷却されて発生し得る結露を抑制することが可能である。なお、高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数は、試料Wに応じて任意のサイクル数行われる。
【0031】
ところで、試験室5内の高温空気がその温度を維持した状態で、特に、高温空気が袋体18の耐熱温度を超える温度を維持した状態で袋体18に流入すると、袋体18は劣化し易くなる。しかも、高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数が増加すると、袋体18の劣化速度は上昇するので、袋体18が破損する可能性が出てくる。
【0032】
しかしながら、第1実施形態では、高温空気が袋体18に流入する前に通るダクト20を、所定長さを有する蛇腹状の部材として形成することにより、ダクト20と外気との熱交換面積を大きくしているので、高温空気は、ダクト20を通過する際に外気との熱交換によって冷却され、その温度は、袋体18の耐熱温度よりも低下する。これにより、袋体18に、袋体18の耐熱温度を超える温度の高温空気が流入するのを防止することができる。その結果、袋体18の劣化、破損を回避できるので、袋体18の寿命を向上させることができる。袋体18の寿命の向上により、高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数の増加に対応可能となる。したがって、環境試験装置1の連続運転性を向上させることが可能である。
【0033】
また、高温空気は、袋体18に流入する前にその温度が下げられるので、袋体18を、従来と比較して耐熱性の低い材料から構成することができる。これにより、袋体18を構成する材料の選択の幅が広がると共に、材料のコストを低減することが可能となる。
【0034】
ダクト20は、図1に示す実施形態では、蛇腹状に形成しているが、その代わりに、ダクト20の外周面に環状のフィン(図略)を複数設けてもよい。この構成によっても、ダクト20の表面積は大きくなる。これにより、ダクト20と外気との熱交換面積を大きくすることができるので、高温空気の温度が袋体18の耐熱温度よりも低くなるように高温空気を放熱させることが可能である。
【0035】
高温空気の放熱を促進する手段として、図1に示すように、ダクト20の近傍に送風機35を配置してダクト20に外気Aを送風してもよい。また、送風機35に、外気を取り入れて外気を冷却する冷却器(図略)を搭載し、冷却風をダクト20に送風してもよい。送風機35または冷却器搭載の送風機35を、ダクト20を蛇腹状に形成する構成や、ダクト20の外表面にフィンを設ける構成と組み合わせれば、高温空気の放熱の効率を向上させることが可能である。
【0036】
さらに、ダクト20は屈曲性および伸縮性を備えているので、ダクト20の設置の自由度が高い。これにより、本実施形態に係る結露抑制装置3は、試験装置本体2、特に既設の試験装置本体2に取り付けるときに、該試験装置本体2の既存の周辺装置を避けて設置することができる。結露抑制装置3は、図2に示すように、袋体18を収容する箱体22を、例えば試験装置本体2の頂部(高温室7の上方部分)11aに載置すると共に、ダクト20を、試験室5の一側面から断熱パネル壁11に沿って頂部11aにかけて延びるように配置することで、試験装置本体2に取り付けてもよい。
【0037】
この場合、ダクト20は断熱パネル壁11に沿って上下方向に直線状に延びるように配置されているので、ダクト20内を通る高温空気は、煙突効果により上昇流となり、その結果、高温空気の放熱が促進される。また、ダクト20を覆うダクトカバー21を採用してもよい。ダクト20内を通る高温空気によりダクト20が加熱された場合、作業者がダクト20に触れると火傷を負う危険性があるが、ダクトカバー21によりそのような危険性を排除することが可能である。ダクトカバー21は、例えば断熱パネル壁11に取り付けられる。また、ダクトカバー21は、パンチング加工が施されたパンチング板とするのが好ましい。これにより、ダクトカバー21の通気性を確保することができる。さらに、図示は省略するが、ダクトカバー21に送風機35を取り付ければ、ダクト20内を通る高温空気の放熱を一層促進させることができる。
【0038】
図3は、本発明の第2実施形態に係る結露抑制装置を備えた試験装置の構成を概略的に示す断面図である。第2実施形態は、結露抑制装置3と試験装置本体2とを2本のダクト20で連通している点において、図1の第1実施形態と異なる。具体的には、第2実施形態の結露抑制装置3は、互いに独立した第1ダクト40および第2ダクト41と、第1ダクト40に連通される第1袋体43(第1圧力調整室)と、第2ダクト41に連通される第2袋体44(第2圧力調整室)とを含む。第1袋体43および第2袋体44は、別個の箱体46,47内に収容されている。第1袋体43および第2袋体44のそれぞれは、図1に示す袋体18と同一の構成を有しているので、説明を省略する。
【0039】
試験室5の一側面には、断熱パネル壁11を貫通する第1開口50および第2開口51が形成されており、第1開口50には、第1接続管52が、第2開口51には、第2接続管53が嵌め込まれている。第1ダクト40は、第1接続管52に取り付けられて試験室5と連通され、第2ダクト41は、第2接続管53に取り付けられて試験室5と連通される。第1ダクト40および第2ダクト41は、図1の第1実施形態と同様に、外気に曝された状態で試験装置本体2の外部に配置されている。
【0040】
第2実施形態は、試験室5内の雰囲気が高温雰囲気とされたときに試験室5内の高温空気が、矢印Eで示すように、第1ダクト40および第2ダクト41の2本のダクトを通って第1袋体43および第2袋体44に流入するように構成されている。この構成によれば、1本のダクトを採用する構成と比較して、ダクトと外気との熱交換面積を大きくすることができるので、高温空気の温度を、第1袋体43および第2袋体44の耐熱温度よりも容易に低下させることができる。
【0041】
また、第2実施形態では、袋体を、第1袋体43および第2袋体44の2つで構成しているので、第1実施形態と比較して、各袋体43,44を小型化できる。これにより、第2実施形態の結露抑制装置3は、試験装置本体2、特に既設の試験装置本体2に取り付けられるとき、該試験装置本体2の既存の周辺装置を避けて配置することが可能である。このように、第2実施形態の結露抑制装置3は、設置の自由度が高い。
【0042】
第2実施形態では、上述のように、第1ダクト40および第2ダクト41の2本のダクトを用い、それらの第1ダクト40および第2ダクト41を対応する第1袋体43および第2袋体44に接続する構成を採用しているが、代わりに、図4の第3実施形態に示すように、単一の袋体18に、第1ダクト40および第2ダクト41の2本のダクトを接続する構成を採用してもよい。この構成も、ダクト40,41の2本のダクトを用いているので、外気との熱交換面積を大きくできる。その結果、高温空気の温度を、袋体18の耐熱温度よりも容易に低下させることができる。しかも、袋体として、単一の袋体18のみを採用しているので、図3の第2実施形態の構成と比較して結露抑制装置3の構造を簡単化できる。
【0043】
第3実施形態では、高温空気は、第1および第2ダクト40,41の2本のダクトから単一の袋体18内に流入するため、例えば、第1ダクト40、袋体18、第2ダクト41、試験室5の順に流れる循環流が発生する可能性がある。このような循環流が発生すると、袋体18を構成する材料の耐熱温度を超える高温空気が袋体18内に流入する可能性があり、その場合、袋体18が破損することを回避することは難しい。袋体18の破損を回避するためには、袋体18内に2点鎖線で示す仕切り壁55を配置して、第1ダクト40から流入する空気と、第2ダクト41から流入する空気とが接触しないようにすればよい。これにより、前記循環流の発生を防止することができる。
【0044】
以上、本発明の第1〜第3実施形態に係る結露抑制装置3を、環境試験装置1内で結露が発生するのを抑制するために用いた場合につき説明してきたが、結露抑制装置3は、環境試験装置1の断熱パネル壁11内で結露が発生するのを抑制するために用いてもよい。この例を図5に示している。
【0045】
図5に示す結露抑制装置は、試験室5の断熱パネル壁11に取り付けられて断熱パネル壁11内で結露が発生するのを抑制する。具体的には、試験室5の断熱パネル壁11は、板金により成形された外壁11aおよび内壁11bを有しており、外壁11aおよび内壁11bに囲まれた閉空間Cに断熱材を配置して断熱層60を形成したものである。断熱材は、例えば綿状積層体のグラスウールやロックウールである。外壁11aには、開口が形成されており、この開口には、接続管62が嵌め込まれている。この接続管62に、結露抑制装置3のダクト20の一端部が、締付部材、例えばホースバンドを用いて取り付けられている。これにより、結露抑制装置3の袋体18と断熱パネル壁11の断熱層60とが連通される。結露抑制装置3の構成は、第1実施形態に示すものと同一であるので、説明を省略する。
【0046】
試験室5内に載置された試料Wに熱的負荷を与えるために、試験室5内で高温雰囲気が生成されると、高温空気によって断熱パネル壁11の内壁11bが加熱される。内壁11bが加熱されると、断熱層60中の空気が加熱されて膨張する。膨張した高温空気は、矢印Eで示すように、結露抑制装置3のダクト20を通って袋体18に流入し、袋体18が膨らむ。これにより、断熱パネル壁11の内部圧が上昇するのを緩和する。
【0047】
また、試験室5内が高温雰囲気から低温雰囲気に移行されると、低温空気によって断熱パネル壁11の内壁11bが冷却される。内壁11bが冷却されると、断熱層60中の空気は冷却されて収縮する。このため、断熱パネル壁11の内部圧は低下するので、外気が、外壁11aの板金接続部の隙間等から断熱層60に吸い込まれて侵入しようとする。しかしながら、このとき、袋体18内に存在する空気が、矢印Sで示すようにダクト20を通り断熱層60内に流れ込む。これにより、断熱パネル壁11の内部圧が低下するのを緩和する。
【0048】
上述のように、袋体18によって断熱パネル壁11の内部圧の変動、特に内部圧の低下を緩和することができるので、断熱パネル壁11内に外気が吸い込まれ難い。その結果、侵入した外気が冷却されて発生し得る結露を抑制することが可能である。特に、綿状積層体の断熱材や、連続気泡を有する断熱材を用いている場合、そのような断熱材は、気体および液体を通過させ易いので、図5の構成は、結露抑制の観点から有利である。なお、ダクト20は、第1実施形態と同様に、蛇腹状に形成してもよいし、外周面に環状のフィンを複数形成してもよい。また、ダクト20の近傍に、送風機35を配置してもよい。
【0049】
以上、本発明の結露抑制装置3を環境試験装置1に適用した場合につき説明したが、結露抑制装置3は、外気が流入することに起因して結露が発生する可能性のある閉空間を備えた他の試験装置にも適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る結露抑制装置を備えた試験装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】結露抑制装置を試験装置本体の頂部に配置した構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る結露防止装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る結露防止装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の結露抑制装置を、環境試験装置の試験装置本体の断熱パネル壁に取り付けた構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 環境試験装置
2 試験装置本体
3 結露抑制装置
5 試験室
7 高温室
9 低温室
11 断熱パネル壁
18 袋体
20 ダクト
35 送風機
W 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部圧が上昇、低下し得る閉空間内で結露が発生するのを抑制する結露抑制装置であって、
前記内部圧の上昇に伴い、前記閉空間内から空気を流入させることにより、かつ前記内部圧の低下に伴い、前記閉空間内に空気を流出することにより、前記閉空間の前記内部圧の変動を緩和する圧力調整部と、
前記閉空間と前記圧力調整部とを連通するダクトと、
を備え、
前記ダクトは、前記圧力調整部を構成する材料の耐熱温度を超える温度の空気が前記閉空間から流入したときに、前記空気の温度を前記耐熱温度よりも低くなるように放熱可能な形状を有する結露抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結露抑制装置において、前記圧力調整部は、変形自在な袋体であり、
前記袋体は、前記内部圧の上昇に伴い、前記閉空間から空気を流入させて膨らみ、かつ前記内部圧の下降に伴い、前記閉空間に空気を流出させて縮む結露抑制装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の結露抑制装置おいて、前記ダクトが蛇腹状に形成されている結露抑制装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の結露抑制装置おいて、前記ダクトの外周面に、環状のフィンが複数形成されている結露抑制装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の結露抑制装置おいて、さらに、前記ダクトに送風することが可能な送風機を備えた結露抑制装置。
【請求項6】
請求項1に記載の結露抑制装置において、前記ダクトは、第1ダクトと第2ダクトとを含み、
前記第1ダクトおよび第2ダクトの各一端部は前記閉空間に接続されると共に、各他端部は前記圧力調整部に接続されている結露抑制装置。
【請求項7】
請求項6の結露抑制装置において、前記圧力調整部は、前記第1ダクトに連通される第1圧力調整室と、前記第2ダクトに連通される第2圧力調整室とを含む結露抑制装置。
【請求項8】
所定の壁体に囲まれた閉空間を有しており、該閉空間内の温度を変えることによって前記閉空間内に載置された試料に熱負荷を与える試験室と、
前記試験室に取り付けられて、該試験室内で結露が発生するのを抑制する請求項1〜7のいずれか一項に記載の結露抑制装置と、
を備えた環境試験装置。
【請求項9】
内部に閉空間を有する断熱パネル壁と、
前記断熱パネル壁に囲まれており、雰囲気温度を変えることによって試料に熱負荷を与える試験室と、
前記断熱パネル壁に取り付けられて、前記閉空間内で結露が発生するのを抑制する請求項1〜7に記載の結露抑制装置と、
を備えた環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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