説明

結露抑制装置およびそれを備えた環境試験装置

【課題】結露発生の抑制機能を向上させることが可能な結露抑制装置、およびそれを備えた環境試験装置を提供する。
【解決手段】結露抑制装置3は、試験室5の内部圧の上昇に伴い、試験室5内から流入する空気によって膨らむ一方、試験室5の内部圧の低下に伴い、試験室5内に空気を流出させて縮むことにより、試験室5の内部圧の変動を緩和するエアバッグ18を有する圧力調整部と、エアバッグ18を強制的に縮ませることが可能な変形強制部50とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部圧が上昇、低下し得る閉空間内に外気が侵入することに起因して結露が発生するのを抑制する結露抑制装置、およびそれを備えた環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料の熱的強度等を試験する目的で、高温雰囲気および低温雰囲気を生成して、試料に熱負荷を与える試験装置が知られている。このような試験装置では、試験室の雰囲気が高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられたとき、試験室の内部圧が低下する。その結果、試験室内に外気が吸い込まれるため、試験装置内で結露が発生し得る。結露が発生すると、試験装置の冷凍機の冷凍能力が低下したり、除霜のために試験が中断したりするといった問題が生じる。
【0003】
結露の発生を抑制することが可能な結露抑制装置を備えた試験装置として、例えば特許文献1のものが知られている。特許文献1に開示される結露抑制装置は、試験室に取り付けられた変形自在なエアバッグを有している。エアバッグは、低温雰囲気から高温雰囲気に切り換えられた試験室内の高温空気を流入させて膨らむことにより、試験室の内部圧の上昇を緩和する。また、エアバッグは、該エアバッグ内の空気を、高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられた試験室内に流出して縮むことにより、試験室の内部圧の低下を緩和する。このように、エアバッグは、試験室の内部圧の変動を緩和することが可能な圧力調整部として用いられている。このエアバッグによって、試験室の内部圧は、高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられても大きく低下しないので、外気が試験室内に吸い込まれるのを抑制できる。これにより、結露の発生を抑制している。
【特許文献1】特開2002−48705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記結露抑制装置では、エアバッグ内の空気が迅速に試験室内に流入しないこと等に起因して、エアバッグが内部圧低下を緩和することが可能な程度に縮まない場合があり、その場合、試験室内に外気が吸い込まれてしまうので、試験装置内で結露が発生するのを抑制できない。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、結露発生の抑制機能を向上させることが可能な結露抑制装置、およびそれを備えた環境試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る結露抑制装置は、内部圧が上昇、低下し得る閉空間内に外気が侵入することに起因して結露が発生するのを抑制する結露抑制装置であり、前記内部圧の上昇に伴い、前記閉空間内から流入する空気によって膨らむ一方、前記内部圧の低下に伴い、前記閉空間内に空気を流出させて縮むことにより、前記閉空間の前記内部圧の変動を緩和するエアバッグを有する圧力調整部と、前記エアバッグを強制的に縮ませることが可能な変形強制部とを備えている。
【0007】
本発明に係る結露抑制装置によれば、エアバッグによって閉空間の内部圧の変動が緩和されるので、閉空間内に外気が侵入し難く、その結果、結露の発生を抑制することが可能である。具体的には、閉空間の内部圧が低下しても、エアバッグから閉空間内に空気が流入するので、前記内部圧の低下が緩和され、外気が閉空間内に吸い込まれ難くなる。その結果、結露が発生するのを抑制できる。また、閉空間の内部圧が上昇しても、閉空間内の空気はエアバッグに流入するので、閉空間の内部圧の上昇が緩和される。
【0008】
さらに、本発明の結露抑制装置では、変形強制部がエアバッグを強制的に縮ませるので、エアバッグ内の空気を閉空間内に積極的に流入させることができる。その結果、閉空間の内部圧低下が急速に起こる場合等においても外気が閉空間内に一層吸い込まれ難くなる。このように、本発明の結露抑制装置は、結露発生の抑制機能が高い。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、前記圧力調整部は、さらに、前記変形強制部による前記エアバッグの縮み方を規制して、前記エアバッグから前記閉空間への空気の流通を確保することが可能な空気流通確保手段を含む。
【0010】
変形強制部によってエアバッグを一方的に縮めると、エアバッグは、縮み方によっては、エアバッグから閉空間への空気の流通を阻害してしまう場合があるが、この構成では、空気流通確保手段によって、変形強制部によるエアバッグの縮み方を規制することができるので、エアバッグが該エアバッグから閉空間への空気の流通を阻害することを回避でき、これにより、エアバッグから閉空間への空気の流通を確保できる。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記空気流通確保手段は、前記閉空間および前記エアバッグ間に配設された板部材を有しており、前記板部材には、複数の開口が形成されている。前記複数の開口は、好ましくは前記板部材の全面にわたって形成されている。
【0012】
この構成では、板部材によって、変形強制部によるエアバッグの縮み方を規制している。また、板部材には、複数の開口が形成されているので、エアバッグから閉空間への空気の流通を円滑に行うことが可能である。
【0013】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記空気流通確保手段は、前記エアバッグ内に延在するように配設された筒状部材であり、前記筒状部材は、複数の開口が形成された周壁を有している。
【0014】
この構成では、筒状部材によって、変形強制部によるエアバッグの縮み方を規制している。また、筒状部材の周壁には、複数の開口が形成されているので、閉空間およびエアバッグ間の空気の流通を円滑に行うことが可能である。
【0015】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記圧力調整部は、さらに、前記エアバッグを収容する箱体を備え、前記変形強制部は、前記箱体内に連通されており、前記箱体と前記エアバッグとの間に形成される空間内に空気を供給することにより、前記エアバッグを強制的に縮ませるものである。
【0016】
この構成では、エアバッグを収容する箱体を利用し、箱体とエアバッグとの間の空間に空気を供給するだけで、空圧を利用してエアバッグを強制的に縮ませることができるので、結露抑制装置の構成を簡単化できる。
【0017】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記変形強制部は、前記箱体と前記エアバッグとの間に形成された前記空間内の空気を吸引することにより、前記エアバッグを強制的に膨らませる機能を有する。
【0018】
この構成によれば、変形強制部がエアバッグを強制的に膨らませるので、エアバッグ内に空気を積極的に溜めることができる。これにより、閉空間の内部圧が低下する前に予めエアバッグ内に空気を溜めておくことができる。
【0019】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記変形強制部は、前記エアバッグを押圧して該エアバッグを強制的に縮ませる可動部材と、前記可動部材を駆動する駆動部とを含む。この構成では、可動部材によってエアバッグを押圧することでエアバッグを強制的に縮めている。
【0020】
前記閉空間は、例えば、閉空間内の温度を変えることによって該閉空間内に載置された試料に熱負荷を与える試験室である。この試験室に、本発明に係る結露抑制装置を取り付けてもよい。これにより、試験室内で結露が発生するのを抑制できる。
【0021】
また、前記閉空間は、例えば、試料に熱負荷を与える試験室を構成する断熱パネル壁である。この断熱パネルに、本発明に係る結露抑制装置を取り付ければ、断熱パネル壁内で結露が発生するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る結露抑制装置によれば、結露発生の抑制機能を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態に係る結露抑制装置およびそれを備えた試験装置の構成を概略的に示す断面図である。試験装置1は、試料Wを試験する試験装置本体2と、試験装置本体2に取り付けられて、試験装置本体2内で結露が発生するのを抑制する結露抑制装置3とを含む。試験装置1は、試料Wに熱負荷を与えて試料Wの熱的強度等を試験する、例えば環境試験装置である。この環境試験装置1は、試料を低温と高温に交互に曝して試料に熱負荷を与える熱衝撃試験装置、あるいは試料を所定条件の雰囲気に曝し続けて試料に熱負荷を与える恒温槽や恒温恒湿槽として構成されている。また、試料Wとして、例えば半導体チップが実装されたプリント基板が挙げられる。本実施形態では、試験装置1は熱衝撃試験装置として説明を続ける。
【0025】
試験装置本体2は、試験される対象である試料Wが載置される試験室5と、図略の加熱手段により空気を加熱して熱風を試験室5に送出する高温室7と、図略の冷凍機により空気を冷却して冷風を試験室5に送出する低温室9とを含む。試験室5、高温室7および低温室9のそれぞれは、断熱材(断熱層)を内部に有する断熱パネル壁11によって囲まれた閉空間であり、互いに熱的に遮断されている。試験室5には、試料Wを出し入れするための試験室扉6が設けられている。また、試験室5には、該試験室5の内部圧を測定する圧力センサ58が配置されている。試験装置本体2は、さらに、圧力センサ58によって得た測定値に基づき、後述する変形強制部50を制御する制御部56を含む。
【0026】
高温室7および試験室5間の断熱パネル壁11には、高温室7から試験室5に熱風を供給するための熱風供給口13と、前記熱風を試験室5から高温室7に戻すための熱風排出口14とが形成されている。熱風は、熱風供給口13から試験室5内に流入し、試験室5内を循環した後、熱風排出口14を通って高温室7に戻る。これにより、試験室5内は高温雰囲気となる。
【0027】
また、低温室9および試験室5間の断熱パネル壁11には、低温室9から試験室5に冷風を供給するための冷風供給口15と、前記冷風を試験室5から低温室9に戻すための冷風排出口16とが形成されている。冷風は、冷風供給口15から試験室5内に流入し、試験室5内を循環した後、冷風排出口16を通って低温室9に戻る。これにより、試験室5内は低温雰囲気となる。なお、熱風供給口13および熱風排出口14には、熱風切換ダンパ17が配置されており、冷風供給口15および冷風排出口16には、冷風切換ダンパ19が配置されている。図1では、熱風切換ダンパ17が開状態、冷風切換ダンパ19が閉状態のときを示している。
【0028】
試験装置1の稼働中、試料Wは、高温雰囲気および低温雰囲気に交互に曝されて、熱負荷が与えられる。これにより、試料Wの、例えば熱強度、熱ストレス特性、耐久性が試験される。高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数は、試料Wに応じて任意である。
【0029】
結露抑制装置3は、試験室5内の圧力の変動を抑制するエアバッグ18、エアバッグ18を収容する箱体22、および箱体22内に配設される網状の板部材26を有する圧力調整部と、制御部56からの指示を受けて、エアバッグ18を強制的に縮ませ、かつ膨らませるように変形させることが可能な変形強制部50とを含む。エアバッグ18は、変形自在な部材であり、試験室5から高温空気が流入すると膨らむ一方、エアバッグ18内の空気が試験室5内に流出すると縮む。図1では、エアバッグ18が収容カバー23内で膨らんだ状態を実線L1で示すと共に、縮んだ状態を一点鎖線L2で示している。エアバッグ18の一般的な材料としては、例えばポリエチレン、ビニル樹脂、シリコン、ポリイミド、PTFEが挙げられる。
【0030】
箱体22は、エアバッグ18を収容する収容カバー23と、収容カバー23が組み付けられる底部材24とを含む。底部材24および収容カバー23間には、網状板部材26が配設されている。底部材24および収容カバー23の各開口部の開口縁部には、外方に突出する連結用フランジ24a,23aが形成されている。エアバッグ18は、その縁部を連結用フランジ23a,24a間に重ねて配置した後、連結用フランジ23a,24a同士を、図略の連結部材、例えばボルトおよびナットで連結することにより、箱体22内で支持される。このように箱体22に支持されるエアバッグ18は、連結用フランジ23a,24a間を気密にシールするシール部材としても機能する。箱体22は、底部材24に収容カバー23を組み付けた状態では断面矩形状であるが、箱体22の形状は、それに限定されるものではない。
【0031】
箱体22と試験室5とは、例えばステンレスからなる、筒状部材である接続管28により連通されている。具体的には、試験室5の一側面には、断熱パネル壁11を貫通する貫通孔30が形成されており、また、底部材24の底部には、その略中央部分に貫通孔31が形成されている。試験室5の貫通孔30に、接続管28の一端部32が気密に嵌入される一方、底部材24の貫通孔31に、接続管28の他端部33が気密に嵌入される。このように、箱体22と試験室5とを接続管28を介して連通することで、後述するように、試験室5内の高温空気が接続管28を通ってエアバッグ18内に流入可能となり、また、エアバッグ18内の空気が接続管28を通って試験室5内に流入可能となる。なお、箱体22および試験室5は、接続管28により連通されているが、接続管28を用いずに、互いに直接連結して連通させてもよい。
【0032】
底部材24および収容カバー23間に配設された網状板部材26は、その全面にわたって均一に多数の網目が形成された部材であり、網目を介してエアバッグ18内の空気の流通が行われる。エアバッグ18は、一点鎖線L2で示すように、網状板部材26によって縮み動作が遮られ、縮み方が規制される。特に、エアバッグ18は、後述する変形強制部50によって強制的に縮められても、網状板部材26によって縮み方が規制される。これにより、エアバッグ18が、変形強制部50によって一方的に縮められて底部材24の貫通孔31に吸い込まれるのを防止できるので、エアバッグ18から試験室5への空気の流通を確保することができる。このように、網状板部材26は、エアバッグ18の縮み方を規制してエアバッグ18から試験室5への空気の流通を確保する空気流通確保手段を構成している。なお、網状板部材26の網目の数および各網目の寸法は、試験室5およびエアバッグ18間の連通を良好に保つことが可能な範囲で設定されている。
【0033】
結露抑制装置3の変形強制部50は、エアバッグ18および収容カバー23間に形成される空間Gに空気を供給する空気供給部52と、空気供給部52によって導入管53を介して供給される空気の圧力を調整する空圧調整部51とを含む。空圧調整部51は、導出管54によって収容カバー23内、つまり空間Gに連通されている。空間Gは、エアバッグ18によって試験室5との連通が遮断された空間であり、空間Gに供給された空気と、試験室5内の空気とが接続管28を介して互いに混合することはない。空気供給部52は、空気を供給する、例えばエアコンプレッサ(図略)と、制御部56から指示を受けてエアコンプレッサを駆動する駆動部(図略)を含む。
【0034】
図2は、空圧調整部51の構成の一例を示す説明図である。空圧調整部51は、例えば、上流側から、第1フィルタ62、空圧調整弁63、空圧ゲージ64、第2フィルタ65および開閉バルブ66を含む。第1フィルタ62は、空気供給部52から導入管53を介して供給された空気に含有される油分を除去する。空圧調整弁63は、例えばバタフライ弁であり、空気の圧力(つまり、流量)を調整する。空圧ゲージ64は、空圧調整弁63によって調整された空気の圧力を測定する。第2フィルタ65は、空気中の塵等を除去する。開閉バルブ65は、制御部56から開動作の指示を受けると、空気を導出管54に導出する一方、閉動作の指示を受けると空気の流通を遮断する。
【0035】
制御部56は、試験室5の圧力センサ58によって得られた測定値に基づき、試験室5の内部圧が、試験装置1周囲の圧力(外気圧)よりも低い負圧であると判断すると、変形強制部50の空気供給部52の前記駆動部を作動させて、エアコンプレッサから空気を空圧調整部51に向けて導出させる。空気供給部52から供給された空気は、空圧調整部51によって圧力が調整された後、制御部56からの指示を受けて開状態とされた開閉バルブ66を通り、次に、矢印A(図1)で示すように導出管54を通って空間G内に導出される。空間G内に導出された空気は、矢印Fで示すように、エアバッグ18を外側から加圧して強制的に縮ませる。エアバッグ18の強制的な縮み動作に伴い、エアバッグ18内の空気は、網状板部材26の網目を通過し、接続管28を介して試験室5内に流入する。このように、変形強制部50は、エアバッグ18を強制的に縮ませてエアバッグ18内の空気を積極的に試験室5内に流入させるものである。制御部56は、エアバッグ18が縮むと、空気供給部52の前記駆動部に対してエアコンプレッサの駆動を停止させる指示を出すと共に、空圧調整部51の開閉バルブ66に対して閉状態となるように指示を出す。
【0036】
収容カバー23には、変形強制部50によって空間Gに導入された空気を外部に排出する排気ユニット80が設けられている。排気ユニット80は、図3に示すように、収容カバー23に形成された貫通孔74を外部から覆うように固定された第1スリット板82と、第1スリット板82に摺動可能に重ねられた第2スリット板83と、第2スリット板83を往復動させる駆動部84とを含む。駆動部84は、図3では、エアシリンダで構成している。第1スリット板82および第2スリット板83のそれぞれには、互いに所定の間隔をあけて複数のスリット86,88が形成されている。第1スリット板82のスリット86が第2スリット板83の摺動によって開放されると、変形強制部50によって空間G内に導入された空気は、スリット86,88を通って外部に放出される。
【0037】
排気ユニット80は、変形強制部50によって空間G内に空気が導入されてエアバッグ18が強制的に縮められているときは、第1スリット板82のスリット86を閉鎖している。このため、空間Gの内部圧が上昇する。次に、試験室5が低温雰囲気から高温雰囲気に切り換えられると、高温空気Hが試験室5から縮んでいるエアバッグ18内に流入し始める。このとき、制御部56は、駆動部84により第2スリット板83を摺動させて第1スリット板82のスリット86を開放する。これにより、変形強制部50によって空間Gに導入されていた空気は、矢印Tで示すように、スリット86,88から外部に放出される。この排気によって空間Gの内部圧が低下して外気圧と同じ圧力に戻るので、エアバッグ18は、高温空気Hの流入に従って膨らむことができる。その結果、試験室5の内部圧の上昇緩和を支障なく行うことができる。なお、空間Gに導入された空気は、試験室5が低温雰囲気から高温雰囲気に切り換えられる前に予め排出しておくこともできる。また、第1スリット板82および第2スリット板83に代えて、開閉式ダンパを用いてもよい。この場合、駆動部84によって、開閉式ダンパを開状態とすることで、空間G内の空気を外部に排出できる。
【0038】
次に、試験装置本体2に取り付けられた結露抑制装置3の作用について説明する。試験室5内に載置された試料Wに熱的負荷を与えて試料Wの熱的強度等を試験するに当たり、まず試験室5内の雰囲気を、例えば高温雰囲気にする。高温雰囲気は、熱風切換ダンパ17を開状態にし、冷風切換ダンパ19を閉状態にすることにより、高温室7から熱風を試験室5内に導入し、循環させることで生成される。このとき、試験室5内の空気は高温となって膨張し、試験室5の内部圧が高まることで、矢印Eで示すように、接続管28、次に網状板部材26の網目を通ってエアバッグ18内に流れ込む。エアバッグ18は、高温空気の流入により、実線L1で示すように膨らむ。このようにして、エアバッグ18は、試験室5の内部圧が上昇するのを緩和する。
【0039】
試料Wを高温雰囲気に所定時間曝した後、試験室5内の雰囲気は、高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられる。低温雰囲気は、熱風切換ダンパ17を閉じ、冷風切換ダンパ19を開けることにより、低温室9から冷風を試験室5内に導入し、循環させることで生成される。低温雰囲気が生成されると、試験室5内の空気が収縮して試験室5の内部圧は低下するので、外気が試験室5内に吸い込まれて侵入しようとする。しかしながら、このとき、エアバッグ18内に存在する空気が、矢印Sで示すように、網状板部材26の網目、次に接続管28を通って試験室5内に流れ込み、エアバッグ18は、2点鎖線L2で示すように縮む。このようにして、エアバッグ18は、試験室5の内部圧が低下するのを緩和する。
【0040】
上述のように、エアバッグ18によって試験室5の内部圧の変動、特に内部圧の低下を緩和することができるので、試験室扉6の隙間等を通って試験室5内に外気が吸い込まれ難い。その結果、吸い込まれた外気が冷却されて発生し得る結露を抑制することが可能である。なお、高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数は、試料Wに応じて任意のサイクル数行われる。
【0041】
ところで、従来の結露抑制装置では、試験室を高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えた際にエアバッグ内の空気が迅速に試験室内に流入しないこと等に起因して、エアバッグが内部圧低下を緩和することが可能な程度に縮まない場合があり、その場合、試験室内に外気が吸い込まれてしまうので、環境試験装置内で結露が発生するのを抑制できない。しかしながら、本実施形態の結露抑制装置3では、制御部56が、圧力センサ58によって得た測定値に基づき、試験室5の内部圧が大気圧よりも低い負圧であると判断すると、変形強制部50を制御してエアバッグ18を強制的に縮ませるので、エアバッグ18内の空気を試験室5内に積極的に流入させることができる。その結果、試験室5の内部圧低下が急激に起こる場合等においても外気が試験室5内に吸い込まれるのを抑制できる。このように、本実施形態の結露抑制装置は、結露発生の抑制機能が高い。
【0042】
以上、本発明の第1実施形態に係る結露抑制装置3を、環境試験装置1内で結露が発生するのを抑制するために用いた場合につき説明してきたが、結露抑制装置3は、環境試験装置1の断熱パネル壁11内で結露が発生するのを抑制するために用いてもよい。この例を、本発明の第2実施形態として図4に示している。
【0043】
(第2実施形態)
図4に示す結露抑制装置3は、試験室5の断熱パネル壁11に取り付けられて断熱パネル壁11内で結露が発生するのを抑制する。具体的には、試験室5の断熱パネル壁11は、板金により成形された外壁11aおよび内壁11bを有しており、外壁11aおよび内壁11b間に囲まれた閉空間Cに断熱材を配置して断熱層60を形成したものである。断熱材は、例えばグラスウールやロックウールである。外壁11aには、貫通口が形成されており、この貫通口には、接続管48の一端部が気密に嵌め込まれている。接続管48の他端部は、箱体22の底部材24の貫通孔31に気密に嵌め込まれている。これにより、結露抑制装置3のエアバッグ18と断熱パネル壁11の断熱層60とが連通されている。結露抑制装置3の構成は、第1実施形態に示すものと同一であるので、説明を省略する。
【0044】
試験室5内に載置された試料Wに熱的負荷を与えるために、試験室5内で高温雰囲気が生成されると、高温空気によって断熱パネル壁11の内壁11bが加熱される。内壁11bが加熱されると、断熱層60中の空気が加熱されて膨張する。膨張した高温空気は、矢印Eで示すように、接続管48を通ってエアバッグ18に流入し、エアバッグ18が膨らむ。これにより、断熱パネル壁11の内部圧が上昇するのを緩和する。
【0045】
また、試験室5内が高温雰囲気から低温雰囲気に切り換えられると、低温空気によって断熱パネル壁11の内壁11bが冷却される。内壁11bが冷却されると、断熱層60中の空気は冷却されて収縮する。このため、断熱パネル壁11の内部圧は低下するので、外気が、外壁11aの板金接続部の隙間等から断熱層60に吸い込まれて侵入しようとする。しかしながら、このとき、エアバッグ18内に存在する空気が、矢印Sで示すように接続管48を通り断熱層60内に流れ込む。これにより、断熱パネル壁11の内部圧が低下するのを緩和する。
【0046】
上述のように、エアバッグ18によって断熱パネル壁11の内部圧の変動、特に内部圧の低下を緩和することができるので、断熱パネル壁11内に外気が吸い込まれ難い。その結果、侵入した外気が冷却されて発生し得る結露を抑制することが可能である。
【0047】
以上、図1〜4を参照しながら、本発明の第1実施形態および第2実施形態につき説明してきたが、それらの第1実施形態および第2実施形態の構成要素には、以下に示すような種々の変形例が考えられる。
【0048】
例えば、変形強制部50は、第1実施形態および第2実施形態では、空気圧でエアバッグ18を押圧したが、可動部材でエアバッグ18を機械的に押圧してもよい。具体的には、変形強制部50は、図5に示すように、箱体22の収容カバー23およびエアバッグ18間の空間Gに配置されてエアバッグ18を押圧するように可動する可動部材70と、可動部材70を収容カバー23内において矢印Rで示すように往復動させる駆動部72と、可動部材70および駆動部72を連結して駆動部72の駆動力を可動部材70に伝達する連結棒71とを含む。可動部材70は、この変形例では、平板状部材である。連結棒71に連結される駆動部72は、例えば、モータで構成してもよいし、空気圧、油圧等の流体圧で可動部材70を駆動する構成のものでもよい。
【0049】
この変形例では、制御部56は、圧力センサ58によって得た測定値に基づき試験室5の内部圧が負圧であると判断すると、駆動部72を作動させる。駆動部72によって、可動部材70はエアバッグ18を押圧するように駆動される。これに伴い、エアバッグ18は、矢印Fで示すように、可動部材70により強制的に縮められ、エアバッグ18内の空気が試験室5に流入する。可動部材70は、エアバッグ18に対して固着されておらず、エアバッグ18を強制的に縮ませた後、駆動部72によってエアバッグ18から離間するように駆動され、エアバッグ18内に空気が流入する前に元の位置に戻る。これにより、可動部材70が、エアバッグ18の膨らみ動作を妨げることはない。なお、可動部材70は、エアバッグ18に固着させてもよい。
【0050】
また、変形強制部50は、空気を吸引および吐出可能な吸引加圧ポンプで構成してもよい。このようなポンプを用いれば、エアバッグ18を強制的に縮めることができるだけでなく、空間G内の空気を吸引してエアバッグ18を強制的に膨らませることもできるので、エアバッグ18内に空気を積極的に溜めることができる。これにより、試験室5の内部圧が低下する前に予めエアバッグ18内に空気を溜めておくことができる。
【0051】
さらに、変形強制部50は、空圧調整部51と空気供給部52とを有する構成に代えて、工場設備として設けられている高圧空気源に接続可能な配管と、この配管に設けられて前記高圧空気源からの空気の圧力を調整する圧力調整機構とで構成してもよい。
【0052】
さらに、変形強制部50の空圧調整部51は、開口面積の調整が可能なスライドダンパで構成してもよい。この場合、開口面積を調整することで、空気供給部52からの空気の圧力を調整する。
【0053】
さらに、図1では、網状板部材26により空気流通確保手段を構成していたが、図6(A)に示すように、箱体22内に延在させた接続管(筒状部材)28の他端部33により空気流通確保手段を構成してもよい。具体的には、接続管28は、他端部33が箱体22内に所定距離だけ延在するように配置されている。他端部33は、図6(B)に示すように、複数の壁孔35が均一に形成された周壁33aを有している。他端部33の端面33bは、図6(B)では、閉鎖されているが、周壁33aと同様に壁孔が形成されていてもよい。エアバッグ18は、全ての壁孔35がエアバッグ18内で開口することが可能な位置で、図略の締付部材、例えばホースバンドで他端部33の周壁33aに気密に取り付けられている。実線L1は、エアバッグ18が膨らんだ状態を示し、一点鎖線L2は、エアバッグ18が縮んだ状態を示している。
【0054】
この変形例においても、エアバッグ18から試験室5への空気の流通を確保することが可能である。具体的には、エアバッグ18は、変形強制部50によって強制的に縮められても、他端部33によって縮み方が規制される。これにより、エアバッグ18が、変形強制部50によって一方的に縮められて箱体22の貫通孔31に吸い込まれるのを防止できるので、エアバッグ18から試験室5への空気の流通を確保することができる。また、他端部33の壁孔35は、周壁33aに均一に形成されているので、エアバッグ18は、他端部33を偏りなく一様に包み込むように縮む。これにより、エアバッグ18内の空気を偏りなく試験室5内に流入させることができる。
【0055】
なお、図6(B)に示す変形例では、他端部33の周壁33aに多数の壁孔35を形成した場合につき説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、周壁33aに、図6(C)に示すように、端面33bから他端部33(接続管28)の長手方向に沿って延びるスリット状の開口34を複数形成してもよく、また、周壁33aの周方向に延びる円弧状の開口を複数形成してもよい。また、他端部33は、多数の網目を有する網状板部材を円筒状に変形させることで構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る結露抑制装置およびそれを備えた試験装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】結露抑制装置の変形強制部の構成の一例を示す説明図である。
【図3】結露抑制装置の箱体に取り付けられた排気ユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の結露抑制装置を、環境試験装置の試験装置本体の断熱パネル壁に取り付けた構成を概略的に示す断面図である。
【図5】結露抑制装置の変形強制部の変形例を示す断面図である。
【図6】(A)は、結露抑制装置の空気流通確保手段の変形例を示す断面図であり、(B)は、空気流通確保手段の斜視図であり、(C)は、空気流通確保手段の他の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 環境試験装置
2 試験装置本体
3 結露抑制装置
5 試験室
7 高温室
9 低温室
11 断熱パネル壁
18 袋体
22 箱体
23 収容カバー
24 底部材
26 網状板部材(空気流通確保手段)
28 接続管
50 変形強制部
51 空圧調整部
52 空気供給部
56 制御部
G 空間
W 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部圧が上昇、低下し得る閉空間内に外気が侵入することに起因して結露が発生するのを抑制する結露抑制装置であって、
前記内部圧の上昇に伴い、前記閉空間内から流入する空気によって膨らむ一方、前記内部圧の低下に伴い、前記閉空間内に空気を流出させて縮むことにより、前記閉空間の前記内部圧の変動を緩和するエアバッグを有する圧力調整部と、
前記エアバッグを強制的に縮ませることが可能な変形強制部と、
を備えた結露抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結露抑制装置において、前記圧力調整部は、さらに、前記変形強制部による前記エアバッグの縮み方を規制して、前記エアバッグから前記閉空間への空気の流通を確保することが可能な空気流通確保手段を含む結露抑制装置。
【請求項3】
請求項2に記載の結露抑制装置において、前記空気流通確保手段は、前記閉空間および前記エアバッグ間に配設された板部材を有しており、
前記板部材には、複数の開口が形成されている結露抑制装置。
【請求項4】
請求項3に記載の結露抑制装置において、前記複数の開口は、前記板部材の全面にわたって形成されている結露抑制装置。
【請求項5】
請求項2に記載の結露抑制装置において、前記空気流通確保手段は、前記エアバッグ内に延在するように配設された筒状部材であり、
前記筒状部材は、複数の開口が形成された周壁を有している結露抑制装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の結露抑制装置において、前記圧力調整部は、さらに、前記エアバッグを収容する箱体を備え、
前記変形強制部は、前記箱体内に連通されており、前記箱体と前記エアバッグとの間に形成される空間内に空気を供給することにより、前記エアバッグを強制的に縮ませる結露抑制装置。
【請求項7】
請求項6に記載の結露抑制装置において、前記変形強制部は、前記箱体と前記エアバッグとの間に形成された前記空間内の空気を吸引することにより、前記エアバッグを強制的に膨らませる機能を有する結露抑制装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の結露抑制装置において、前記変形強制部は、前記エアバッグを押圧して該エアバッグを強制的に縮ませる可動部材と、前記可動部材を駆動する駆動部とを含む結露抑制装置。
【請求項9】
所定の壁体に囲まれた閉空間を有しており、該閉空間内の温度を変えることによって前記閉空間内に載置された試料に熱負荷を与える試験室と、
前記試験室に取り付けられて、該試験室の前記閉空間内で結露が発生するのを抑制する請求項1〜8のいずれか一項に記載の結露抑制装置と、
を備えた環境試験装置。
【請求項10】
内外壁間に閉空間が形成された断熱パネル壁に囲まれており、雰囲気温度を変えることによって試料に熱負荷を与える試験室と、
前記断熱パネル壁の前記閉空間に取り付けられて、該閉空間内で結露が発生するのを抑制する請求項1〜8のいずれか一項に記載の結露抑制装置と、
を備えた環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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