説明

結露防止シート

【課題】 断熱効果、結露防止効果を有し、窓ガラス等への取り付け時に接着剤等を使用する必要はなく、構成も単純な結露防止シートを提供すること。
【解決手段】 被貼着面に貼着される結露防止シートであって、貼着面側には開口部が設けられ且つ他方の面側は密閉されてなる複数のセルを有し、前記複数のセルによる吸盤作用によって、前記被貼着面に貼着することを特徴とする結露防止シートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内壁面及び/又はガラス窓等に生じる結露を防止するシートに関し、より詳しくは室内壁面及び/又はガラス窓表面の断熱性能を高め、さらにシートの剥離後の糊残りが無く着脱自在であり、寒冷期または雨季における室温の低下、結露を防止する結露防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅等の建造物において、寒冷期や雨季等の季節には、室内壁面や窓ガラスの表面に結露が生じる場合がある。特に寒冷期には室内にて暖房器具等を使用することにより、外気と室内温度との温度差が大きくなる。室内外の温度差が大きくなると、室内の水蒸気を含んだ暖かい空気が窓ガラス表面にて冷却され、飽和水蒸気量を超えると窓ガラス表面等に結露が生ずる。
窓ガラスやアルミサッシ表面等に生じた結露が窓の木枠に流れた場合は、カビ等の発生により部材の劣化が生じ、水滴がカーテンに付着した場合は、しみやカビの原因になる等、結露によって多くの問題が生じている。
【0003】
その対策として二重サッシや、ペアガラス等の建材が利用されてきた。特に北海道、東北地方等の寒冷地においては寒さの厳しい冬場において、当該建材が好適に利用されている。
しかしながら、関東地方、関西地方等の比較的温暖な地域では、結露による問題への関心は比較的低く、これら建材が高価であることからも二重サッシやペアガラスが普及しにくいのが現状である。また、居住後に結露の問題に悩まされたとしても、これら二重サッシやペアガラスの後付施工を行うことは、技術的にもコスト面においても困難なものとなっている。
【0004】
この問題を解決するため、既存の窓ガラスに対して使用することができる結露防止シートが提案されている。例えば、特開2000−154600号公報では、空気の封入領域が複数箇所に細分配列されている空気封入用シートを窓ガラス面に接着剤によって密着させ、空気層を含むことによって結露防止を図る気泡緩衝材(エアキャップ)状の結露防止シートが提案されている。
【0005】
ところが、前記空気封入用シートには、窓ガラスとの間の密着性を目的として形成される粘着層に接着剤等が使用されており、夏場等シートが不必要となりシートを剥がした際に、接着剤等が窓ガラスに残存する場合がある。また、接着剤等を使用することから、シートをガラス面に貼着する際にはガラス面又はシートの貼着面を水で濡らして貼着後にシートを微調整する必要があった。さらにシートをガラス面から剥離した際にはガラス面に接着剤の糊跡が残るために着脱が容易ではなく、またシートの着脱が複数回行われると、接着剤の接着力が低下するという問題が生じている。上述したようにシートを貼着する際に水を使用することから壁面への貼着はカビ、シミ等の問題が生じる恐れがある。またさらに、北海道、東北地方等の寒冷地において、外気の温度が零下になり、さらに室内での加湿器等による加湿を行うような過酷な条件では結露を十分に防止できない場合がある。
【0006】
この問題を解決するために、例えば、特開2004−92145号公報では、合成樹脂製の板状体からなり、該板状体の周縁部には該板状体の一方の側に突出した側壁部が形成されるとともに、該側壁部の端部にはガラス表面と接着される平坦部が形成され、該平坦部には接着層が設けられることを特徴とするガラス用被覆用具が提案されている。
しかしながら、平坦部には接着剤が使用されているため、当該ガラス用被覆用具を脱着する場合は平坦部の接着剤が窓ガラスに残存するという問題や、平坦部で結露が発生するという問題は解決されていない。また、当該ガラス用被覆用具は、樹脂製の板状体、側壁部、平坦部、接着層から構成されており、構成が複雑となるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2000−154600号公報
【特許文献2】特開2004−92145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、断熱効果及び結露防止効果を有し、窓ガラス等への取り付け時に水及び接着剤等を使用する必要はなく、構成も単純な結露防止シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、被貼着面に貼着される結露防止シートであって、貼着面側には開口部が設けられ且つ他方の面側は密閉されてなる複数のセルを有し、前記複数のセルによる吸盤作用によって、前記被貼着面に貼着することを特徴とする結露防止シートに関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、樹脂板とカバーシートとからなり、前記複数のセルは、複数の貫通孔が設けられた樹脂板の一方の面に該貫通孔を覆うカバーシートを着脱可能に貼着することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の結露防止シートに関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、樹脂で一体成型されていることを特徴とする請求項1に記載の結露防止シートに関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記樹脂は、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが20以上90以下、又は、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプCでの硬さが20以上90以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の結露防止シートに関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記複数のセルの全容積が、前記結露防止シートの全体積の50〜95%であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の結露防止シートに関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記貼着面側において、セルの開口部の総開口面積と結露防止シートの貼着面の総面積の比率が、50:50〜95:5であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の結露防止シートに関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記貼着面側に、弱粘着性の粘着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の結露防止シートに関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、貼着面側には開口部が設けられ且つ他方の面側は密閉されてなる複数のセルを有することから、複数のセルが吸盤効果と断熱効果を有し、特に水及び接着剤等の使用を必要とすることがなく、構成も単純な結露防止シートとすることができる。結露防止シート自体が吸盤効果により窓ガラスや壁面等に貼着することから、壁面等への貼着が可能となり、当該結露防止シートは着脱自在であって、剥離しても窓ガラス等に接着剤が残存することがない結露防止シートとすることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、樹脂板とカバーシートとからなり、前記複数のセルは、複数の貫通孔が設けられた樹脂板の一方の面に該貫通孔を覆うカバーシートを着脱可能に貼着することによって形成されていることから、吸盤効果及び断熱効果を発揮させつつ、カバーシートを適宜取り替えることができるため、機能性、意匠性に優れた結露防止シートとすることができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、結露防止シートが樹脂で一体成型されていることから、セルの密閉性が高まり吸盤効果をより発揮させることができ、コストを下げ、部品点数が少なく、より構成が単純な結露防止シートとすることができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、前記樹脂板は、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが20以上90以下、又は、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプCでの硬さが20以上90以下であることから、結露防止シートの貼着面が柔らかいため、より効果的に吸盤効果を発揮させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、前記複数のセルの全容積が、前記結露防止シートの全体積の50〜95%であることから、より効率的に吸盤効果と断熱効果を発揮させることができる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、前記貼着面側において、セルの開口部の総開口面積と結露防止シートの貼着面の総面積の比率が、50:50〜95:5であることから、より効果的に吸盤効果を発揮させることができる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、前記貼着面側に、弱粘着性の粘着剤が塗布されていることから、貼着面とガラス面との密着性を高めることができ、より効果的に吸盤効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る結露防止シートの好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、便宜上結露防止シートを窓ガラス等のガラスに貼着する実施の形態について説明しているが、本発明に係る結露防止シートが貼着されるのは、窓ガラス等のガラスには限定されず、室内の壁面等にも使用することが可能である。
図1は、本発明に係る結露防止シートの図であって、(a)は斜視図、(b)はガラスに貼着した状態の断面図である。
【0024】
本発明に係る結露防止シート1は、樹脂板9とカバーシート10とからなり、樹脂板9に複数の貫通穴を設け、他方の面4側に、カバーシート10を貼り合わせることによってセル5が形成されている。複数のセル5は、貼着面2側に開口部3を有し、他方の面4は密閉されている構造となっている。結露防止シート1の貼着面2をセル底部8を押さえながら窓ガラス等のガラス6に密着させることによって、セル5内が減圧され吸盤効果が発生することにより結露防止シート1はガラス6面に固定される。ガラス6面に貼り付けられた状態において、結露防止シート1はセル5内に空気層を有することにより、断熱効果を奏し、結露防止効果が生じる。
【0025】
樹脂板9の材質は、一般に使用される天然ゴム等の天然樹脂や合成樹脂を使用することができる。軟質樹脂であっても硬質樹脂であっても良く、また熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良く、本発明で使用可能であれば、特に制限はされない。合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、EVA樹脂、ポリウレタン、ポリスチレンゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ABS樹脂、EVOH樹脂、MBS樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、PTT樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂は、単独であってもよく、2種以上を混合して用いても良い。特に軟質樹脂を使用することが好ましい。軟質樹脂を使用すると、硬質樹脂を使用する場合と比べて後述するセル5の吸盤効果を発揮させやすくなるからである。尚、好ましい軟質樹脂としては、入手が容易であり加工がし易いという点から、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ABS樹脂、PET樹脂、ポリスチレン、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。
【0026】
樹脂板9の硬さは、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが20以上90以下またはJIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプCでの硬さが20以上90以下であることが好ましく、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが20以上90以下であることがより好ましく、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが40以上90以下であることがさらに好ましい。JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプCでの硬さが20以下であると、結露防止シート1が柔らかすぎるため、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが90以上であると硬すぎるため、セル内が十分に減圧できないことにより後述するセル5の吸盤効果を十分に発揮させることができず、いずれの場合も好ましくないからである。
【0027】
カバーシート10の材質としては、当業者が用いるものであれば特に限定されないが、一般に使用される天然ゴム等の天然樹脂や合成樹脂を使用することができる。上述の合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、EVA樹脂、ポリウレタン、ポリスチレンゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ABS樹脂、EVOH樹脂、MBS樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、PTT樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂は、単独であってもよく、2種以上を混合して用いても良い。樹脂に限定されず、ガラス、金属等を使用することもできる。これらの材料は単独で用いても良いし、2種以上を複合してもよい。例えば、合成樹脂と金属を複合した塩ビ鋼板等や、合成樹脂とガラスの複合したFRP等が挙げられる。
【0028】
複数の貫通穴を設けた樹脂板9とカバーシート10とを貼り合わせる際には、粘着剤を用いて貼り合せても良い。貼り合わせる場合に用いる粘着剤としては、例えばアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、EVA樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、SBS樹脂等が挙げられる。また、粘着剤を用いず貼り合わせる場合には、例えばグリスやワセリン等を密閉性を高めるために使用することもできる。
【0029】
カバーシート10を着脱可能にすることによって、カバーシート10の材質等を適宜変更することが可能となる。例えば、室内装飾の観点から、カバーシート10の色彩を緑色透明、青色透明等、日によって適宜変更することが可能であり、又、夏場は黒、茶等の有色透明のカバーシート10を使用し、厳寒期は無色透明のカバーシート10を使用する等、季節によって適宜変更することも可能である。また、加工が一体成型に比べて簡単で、一体成型に要する金型が要らないので安価で作ることが可能である。
また、太陽光の熱線を遮蔽するために、カバーシート10にアルミ蒸着層を積層させたもの、カバーシート10に遮熱剤を含有させたもの等を使用することもできる。用いられる遮熱剤としては、当業者が一般的に用いるものであれば、特に限定されない。
さらに、紫外線の屋内への侵入を防止するために、カバーシート10に紫外線防止剤を含有させたものを使用することもできる。用いられる紫外線防止剤としては、紫外線を化学的に吸収して遮断する紫外線吸収剤、紫外線を物理的に散乱して遮断する紫外線散乱剤などを例示することができるが、特に限定はされない。紫外線防止剤は、カバーシート10を形成する合成樹脂中に配合することができる。
【0030】
結露防止シート1の厚みは、3mm〜15mm程度が好ましく、4mm〜12mmがより好ましく、5mm〜11mmがさらに好ましい。結露防止シート1の厚みが3mm未満であると後述するセル5の容積が少ないことにより断熱効果に乏しく結露防止効果が十分に発揮されないため、一方15mmを超えると断熱効果は高まるが、引き違い窓の開閉が困難となるため、何れの場合も好ましくないからである。もっとも、結露防止シート1が片開きや両開き窓、はめ殺し窓や、窓以外の室内の壁面に使用される場合は、結露防止シートの厚みは、3mm以上であって、窓等に貼着することができれば、特に15mm以下に限定されることはない。
【0031】
図2は、本発明に係る結露防止シートの他の実施形態(以下第二実施形態と称し、上述の実施形態を第一実施形態と称す)の図であって、(a)は斜視図、(b)はガラスに貼着した状態の断面図である。第二実施形態では、第一実施形態における樹脂板9とカバーシート10とが一体成型されている。特に樹脂板9とカバーシート10とが同じ材質である場合には、第二実施形態の如く一体成型されていることが好ましい。一体成型することにより、セル5の密閉性をより高めることができ、部品点数も少なく、構成も単純となるからである。前記一体成型の方法としては、当業者が一般的に用いる方法であれば特に制限はないが直圧成型、射出成型、押出成型、真空成型、吹込成型、光成型、ディンピング成型等が挙げられる。
【0032】
第二実施形態において、結露防止シート1の色彩は、特に限定されないが、厳寒期において窓ガラス等ガラスに使用されることが一般的であると考えると、採光性の観点から無色透明のものを採用するのが好ましい。もっとも、本発明に係る結露防止シート1が断熱効果を奏する点を考慮すると、夏場の冷房効率向上のために使用することも可能である。この場合、部屋に差し込む太陽光線をある程度カットすべく、黒、茶等の有色透明とすることも可能である。また、室内装飾等、意匠性の観点から緑、青等有色透明とすることも可能である。さらに、プライバシーの保護の観点から、外部から見えないようにすべく不透明とすることも可能である。
また、太陽光の熱線を遮蔽するために、結露防止シート1にアルミ蒸着層を積層させたもの、結露防止シート1に遮熱剤を含有させたもの等を使用することもできる。用いられる遮熱剤としては、当業者が一般的に用いるものであれば、特に限定されない。
さらに、結露防止シート1には、紫外線の屋内への侵入を防止するために、紫外線防止剤を含有させることもできる。用いられる紫外線防止剤としては、紫外線を化学的に吸収して遮断する紫外線吸収剤、紫外線を物理的に散乱して遮断する紫外線散乱剤などを例示することができるが、特に限定はされない。紫外線防止剤は、結露防止シート1を形成する合成樹脂中に配合することができる。
【0033】
貼着面2は、結露防止シート1を壁面、窓ガラス等のガラス6に貼着させる貼着面であり、後述するセル5の密閉性を高め吸盤効果を得るため、通常は平滑に形成される。第一実施形態においては、一体成型によって穴を開けた状態で樹脂板9を作成するが、一体成型の際に穴が設けられておらず後から複数の貫通穴を設けて樹脂板9を作成した場合は、貼着面2と、樹脂板9とカバーシート10が貼着するカバーシート貼着面11に生じるバリ等を除去し、やすりがけ等を行うことにより平滑にすることが好ましい。第二実施形態において、シート状に合成樹脂を成型した後から複数のセル5を設けた場合にも上記貼着面2にバリ等が発生する。従って、当該場合においても、バリ等を除去し、場合によってはやすりがけ等を行うことにより、貼着面を平滑にすることが好ましい。
【0034】
図3の通り、貼着面2には、さらに結露防止シート1と窓ガラス等のガラス6との貼着面の隙間を埋め密着性を向上させ、ガラス6と貼着面2とを貼着する際にタックを持たせるため微粘着性の粘着剤7が塗布されていることがより好ましい。微粘着性の粘着剤7を塗布することにより、セル5をより窓ガラス等のガラス6に密閉することが可能となり、セル5による吸盤効果、断熱効果をより向上させることができるからである。塗布する微粘着の粘着剤の粘着力は1〜10gf/25mmが好ましい。粘着力が10gf/25mmを超えると剥離した際に糊跡が残る可能性があり、1gf/25mm未満であると適当なタックを持たせることが出来ないからである。尚、粘着力はJIS A 5759に準じて測定することが出来る。微粘着性の粘着剤には、窓ガラス等のガラス6に糊残りが生じないような粘着力が弱い粘着剤、例えばアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、EVA樹脂等を使用することができる。これらの合成樹脂は、単独であってもよく、2種以上を混合して用いても良い。
また、窓ガラス等のガラス6と貼着面との隙間を埋めることができれば、粘着性を有していなくても吸盤効果を向上させることができるため、微粘着性の粘着剤に代えて、粘着性を有しないが窓ガラス等のガラス6との密着性を向上させる物質、例えばグリスやワセリン等も使用することができる。
【0035】
カバーシート10には室内装飾等意匠性の観点から、凹凸の成形を施してもよく、印刷を施してもよい。第二実施形態においては、結露防止シート1の他方の面4に、凹凸の成形を施してもよく、印刷を施しても良い。
また、上述した紫外線防止効果、意匠性等を同時に付与させるため、結露防止シート1に異種材料を積層させることによって成形することもできる。
【0036】
セル5は、結露防止シート1において、貼着面2側に開口部3を有し、他方の面4側は密閉されてなる構造となっている。
【0037】
セル5の開口部3の形状は、特に限定はされず、例えば図1(a)、図2(a)では円形であるが、図4(a)(b)の通り四角形等多角形状でもよい。セル5の開口部3の形状は、最も吸盤効果が向上することから、図1(a)、図2(a)の通り円形がより好ましい。開口部3の形状は、室内装飾等意匠性の観点から、ハート形、星形、動物形(犬、猫、馬等の動物の一部又は全体を模倣した形)、植物形(花、草、木等の植物の一部又は全体を模倣した形)等であってもよい。また、これら1種の形状のみで開口部3の形状を形成することには限定されず、例えばハート形と円形を混在させることもできる。
【0038】
セル5の配置形態は、特に限定されることなく、例えば図1(a)、図2(a)、図4(a)(b)では格子状に配置されている。セル5の配置形態は、格子状に限定されず、図5の通り千鳥状に配置してもよく、また、ランダムに配置してもよい。
セル5の1単位当たりの開口部3の開口面積は、特に限定はされないが、0.01〜100cm程度であることが好ましく、0.05〜50cmであることがより好ましく、0.1cm〜10cmであることがさらに好ましい。0.01cm未満、及び100cmを超えるとセル5の吸盤効果が十分に発揮されないため、いずれの場合も経時的に剥がれ、捲れ等の可能性があるからである。
セル5の配置数については、セル1単位当たりの開口部3の面積によって適宜設定されるが、セル5の開口部3の総開口面積と結露防止シート1の貼着面の総面積との比率が、50:50〜95:5となるように配置されるのが好ましく、60:40〜90:10となることがより好ましく、70:30〜90:10であることがさらに好ましい。開口部3の総開口面積の比率が95:5を超えると粘着面2の面積が狭すぎ、50:50を下回る場合は、粘着面2の面積が広すぎるためセル5による吸盤効果を十分に発揮させることができず、いずれの場合も経時的に剥がれ、捲れ等の可能性があるからである。
【0039】
セル5の1単位当たりの容積は、特に限定はされないが、0.001cm〜200cm程度であることが好ましく、0.01cm〜100cmであることがより好ましく、0.1cm〜50cmであることがさらに好ましい。0.001cm未満の場合は、セル5内が十分に減圧されないためセル5の吸盤効果が十分に発揮されず、また、容積が少なすぎることにより断熱効果も十分に発揮されない。また、200cmを超えると断熱効果は発揮されるが、セル5の容積が大きすぎることにより結露防止シート1を窓ガラス等のガラス6に貼着した場合に結露防止シート1の形態安定性が損なわれるため、いずれの場合も経時的に剥がれ、捲れ等の可能性があるからである。
【0040】
本発明の範囲内において樹脂板9の硬さを軟らかくした場合には、1つ当たりのセルの体積を小さくし、セルの個数を増やすことによって充分な吸盤効果が得られる。また樹脂板9を硬くした場合には、1つ当たりのセルの体積を大きくし、セルの個数を減らしセルとセルとの間に形成されるセル壁を減らすことで充分な吸盤効果が得られる。
【0041】
セル5の全容積が、結露防止シート1の全体積の50〜95%となるように、セル5が配置されるのが好ましく、60〜90%となることがより好ましく、70〜90%となることがさらに好ましい。セル5の全容積が結露防止シート1の全体積の50%未満の場合は、セル5の容積が少なすぎることにより断熱効果及び吸盤効果が十分に発揮されず、95%を超える場合は、結露防止シート1の樹脂成型部分が少なすぎることにより結露防止シート1の形態安定性が損なわれるため、いずれの場合も経時的に剥がれ、捲れ等の可能性があるからである。
上述の結露防止シート1の全体積とは、例えば結露防止シート1が直方体形状である場合は、結露防止シート1の外径の横手方向と長手方向の長さと厚みを乗じて求める。尚、上述のセルの全容積は、セルの開口部の面積およびセルの深さから求めた1個あたりのセルの体積に、全セル数の個数を乗じて求める。形状の異なるセルを設ける場合には個々の体積を求め、加算して求める。
【0042】
セル5の深さは、樹脂板9の厚みによって適宜設定することができる。セル底部8の厚みについては、カバーシート10の厚みによって適宜設定することができ、通常は1mm前後である。樹脂板9、カバーシート10の厚みについては、選択される材質によって適宜設定される。例えば、カバーシート10の硬さが硬いものを選択した場合は、カバーシート10の厚みを薄くすることができ、樹脂板9の厚みを増すことができるため、セル5の容積を増加させることができる。
セル5の断面形状は、図1(b)では開口部3とセル底部8が同一の長さの長方形状であるが、図6(a)の通り、開口部3側が長く、セル底部8側が短い台形状でもよい。また、セル5自体が半球状に形成されることにより、図6(b)の通りセル5の断面形状は、半円状でもよい。一方、セル5の断面形状が、図6(a)とは逆の形状、開口部3側が短く、セル底部8側が長い台形状の場合は、セル5による吸盤効果に劣るため、好ましくない。
【0043】
本発明の結露防止シート1は、ガラス面に対して一部または全面に貼着する。本発明の結露防止シート1に比べてガラス面が大きい場合には複数の結露防止シート1を突き付けて貼着すればよく、逆に本発明の結露防止シート1に比べてガラス面が小さい場合には適宜カットすればよい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【0045】
(結露防止シートの作製)
樹脂体としてJIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが70である厚さ5mmのポリ塩化ビニルのシートを使用した。セルの全容積がシートの全体積の約60%になるよう且つセル開口部の総面積と結露防止シートの貼着面の総面積の比率が60:40になるように、当該ポリ塩化ビニルのシートに直径10mmの電動ドリルで孔を開けた。孔を開けた際に発生したバリ等を除去した後、カバーシートとして厚さ0.1mmのポリエステルシートを貼着して作製された結露防止シートを実施例1とした。
【0046】
(結露防止試験)
本発明の結露防止シート(実施例1)を使用し、結露防止比較試験を行った。比較例1として、市販されている気泡緩衝材(エアキャップ)状の結露防止シートを使用した。比較例2としては、特開2004−92145号公報に記載通り、ポリエチレンテレフタレートを真空成型により側壁部と、平坦部を有した板状体と、平坦部にアクリル樹脂系接着剤を塗布し、ガラス用被覆用具を調製した。尚、側壁部の高さは7mmに、平坦部の幅は5mm〜10mm程度に設定した。
実施例1、比較例1、比較例2を恒温機の扉と庫内の境に予め設置したガラス板に貼着させ、恒温機を開放した状態で庫内の温度を0℃、庫外の温度を27℃に調整し、その時にシート表面に生じる結露の有無を評価した。尚、比較例1については、市販品に記載されていた通常の使用方法に従い、水をガラス面にスプレーしてから貼着した。加えて、上述のシートを剥離した際の糊跡についても評価した。評価結果について表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から、本発明の結露防止シート(実施例1)については、結露はしなかったため、結露を防止する効果を有することが確認された。また、本発明の結露防止シート(実施例1)をガラス面から剥離した場合であっても糊跡が見られなかったことが確認できた。
一方、比較例1については、気泡緩衝材(エアキャップ)状のシートをガラスに貼着する際に、接着剤によって接着するため水をガラス面にスプレーする必要があり、結露が生じやすいことがわかった。また、比較例1については接着剤によって貼着しているため、ガラス面からシートを剥離した場合に全体に糊跡が生じるのが確認できた。
比較例2については、板状体では結露は生じていないが、平坦部での結露が見られた。また、ガラス面から剥離した場合に平坦部で糊跡がみられることがわかった。
このことから、本発明の結露防止シートは、吸盤効果と断熱効果を有することにより、窓ガラス等への貼着が簡単で従来の結露防止シートに比べて高い結露防止効果を有し、ガラス面等から剥離を行ったとしても糊跡が見られないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、特に厳寒期において、窓ガラス等のガラスに付着する結露を防止するために好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る結露防止シートの図であって、(a)は斜視図、(b)はガラスに貼着した状態の断面図である。
【図2】本発明に係る結露防止シートの他の実施形態の図であって、(a)は斜視図、(b)はガラスに貼着した状態の断面図である。
【図3】本発明に係る結露防止シートにおいて、貼着面に弱粘着性の粘着剤を使用した図である。
【図4】本発明に係る結露防止シートにおいて、セルの開口部の形状を四角形状とした図であって、(a)は第一実施形態の図、(b)は第二実施形態の図である。
【図5】本発明に係る結露防止シートにおいて、セルを千鳥に配置した図である。
【図6】本発明に係る結露防止シートの他の変更例における断面図であり、(a)はセルの断面が台形状に、(b)はセルの断面が半円状に形成された図である。
【符号の説明】
【0051】
1 結露防止シート
2 貼着面
3 開口部
4 他方の面
5 セル
6 ガラス
7 弱粘着性の粘着剤
8 セル底部
9 樹脂板
10 カバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼着面に貼着される結露防止シートであって、貼着面側には開口部が設けられ且つ他方の面側は密閉されてなる複数のセルを有し、前記複数のセルによる吸盤作用によって、前記被貼着面に貼着することを特徴とする結露防止シート。
【請求項2】
樹脂板とカバーシートとからなり、
前記複数のセルは、複数の貫通孔が設けられた樹脂板の一方の面に該貫通孔を覆うカバーシートを着脱可能に貼着することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の結露防止シート。
【請求項3】
樹脂で一体成型されていることを特徴とする請求項1に記載の結露防止シート。
【請求項4】
前記樹脂は、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプAでの硬さが20以上90以下、又は、JIS K 7312に規定するデュロメータ硬さ試験タイプCでの硬さが20以上90以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の結露防止シート。
【請求項5】
前記複数のセルの全容積が、前記結露防止シートの全体積の50〜95%であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の結露防止シート。
【請求項6】
前記貼着面側において、セルの開口部の総開口面積と結露防止シートの貼着面の総面積の比率が、50:50〜95:5であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の結露防止シート。
【請求項7】
前記貼着面側に、弱粘着性の粘着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の結露防止シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−144376(P2009−144376A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321540(P2007−321540)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000126528)株式会社アサヒペン (14)
【Fターム(参考)】