説明

給水予熱ボイラ

【課題】エコノマイザにて給水の予熱を行っている給水予熱ボイラにおいて、エコノマイザ内で給水温度が過度に上昇することを防止する。
【解決手段】給水を予熱するエコノマイザ4と、エコノマイザ4で予熱した給水をさらに加熱して蒸気を発生するボイラ本体6を持っており、ボイラ内の水位を検出する水位検出装置5を持ち、ボイラへの給水は検出した水位に基づき、エコノマイザ4を通して間欠的に行うようにしている給水予熱ボイラにおいて、水位に基づく給水制御に加え、給水停止時間が設定時間Tに達した場合にも給水を開始するように設定しておき、水位が給水開始水位まで低下するよりも前に給水停止時間が設定時間Tに達した場合にはその時点で給水を開始する。また、設定時間Tの値は燃焼量に応じて個々に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水を予熱するエコノマイザと、エコノマイザで予熱した給水をさらに加熱して蒸気を発生するボイラ本体を持った給水予熱ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラの排気通路に給水を予熱するエコノマイザを設置しておき、ボイラから排出される排ガスと、ボイラへ供給する水との間で熱交換を行うことにより、給水温度を上昇させることが広く行われている。エコノマイザは排ガスを通す排ガス通路内に伝熱管を設置しておき、エコノマイザを通してボイラへの給水を行うことで、伝熱管内を流れる給水が伝熱管周囲を流れる排ガスの熱を回収するようにしている。排ガスは、ボイラ本体と熱交換することで温度は低下しているが、それでも給水温度に比べれば十分に温度が高い。そのために給水の予熱には利用することができ、排ガスで給水の予熱を行うことで熱の総合的な回収量を増加することができる。
【0003】
ボイラへの給水は、水位検出装置で缶体内の水位レベルを確認し、間欠的に給水を行う方式がよく用いられるが、この場合、エコノマイザ内部では給水が行われている時に伝熱管内の水が入れ替わり、給水が停止している時には伝熱管内に水が滞留するということが交互に繰り返される。給水を行っていない時間帯が長くなるとエコノマイザ内部の給水は加熱され続け、エコノマイザ内での予熱水温度が上昇し続けて飽和温度に近づくと、エコノマイザ内で水中に気泡が発生するようになる。この場合、エコノマイザを出た部分では予熱水がいったん冷却されるため、エコノマイザ内で発生した気泡が急激に縮小する現象が起こり、ウォーターハンマーが発生する問題があった。
【0004】
エコノマイザ内で給水が滞留する時間を短くするには、給水間隔を短くすればよい。給水開始水位まで水位が低下すると給水を開始し、給水停止水位まで水位が上昇すると給水を終了する制御を行っている場合、給水開始水位と給水停止水位の差を小さくすると給水間隔は短くなる。しかし、給水間隔を短くして給水ポンプの発停頻度を高くすると、給水ポンプの寿命低下を招くことが問題となる。
【0005】
そのため、特許4007545号公報に記載の発明では、燃焼量に応じて給水開始位置を異ならせるようにしている。この発明では、高燃焼時と低燃焼時で給水を開始する水位を異ならせておき、低燃焼時には水位が比較的高い状態で給水を開始し、高燃焼時には低燃焼時よりも低い位置まで水位が低下してから給水を開始するようにしている。水位低下速度が比較的遅い低燃焼時には水位が比較的高い状態で給水を開始し、水位低下速度が比較的速い高燃焼時には低燃焼時よりも低い位置まで水位が低下してから給水を開始することで、給水間隔が極端に長くなったり短くなることを防止することができる。ただし、燃焼量に応じて給水開始位置を異ならせる制御を行う場合、燃焼量を多位置で制御するならば水位検出位置が多数必要となり、装置が複雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4007545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、エコノマイザにて給水の予熱を行っている給水予熱ボイラにおいて、エコノマイザ内で給水温度が過度に上昇することを防止することのできるボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、給水を予熱するエコノマイザと、エコノマイザで予熱した給水をさらに加熱して蒸気を発生するボイラ本体を持っており、ボイラ内の水位を検出する水位検出装置を持ち、ボイラへの給水は検出した水位に基づき、エコノマイザを通して間欠的に行うようにしている給水予熱ボイラにおいて、水位に基づく給水制御に加え、給水停止時間が設定時間Tに達した場合にも給水を開始するように設定しておき、水位が給水開始水位まで低下するよりも前に給水停止時間が設定時間Tに達した場合にはその時点で給水を開始する制御を行うものであることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記の給水予熱ボイラにおいて、設定時間Tの値は燃焼量に応じて個々に設定するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することで、エコノマイザ内で給水温度が過度に上昇することがなくなり、ウォーターハンマーの発生や、蒸気圧力変動が発生するということを防ぐことができる。また、時間要素に基づいて給水を開始するものであるため、水位検出位置を多数設定する必要はなく、装置が複雑化することも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施しているボイラのフロー図
【図2】本発明の一実施例における水位変動状況説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施しているボイラのフロー図、図2は本発明の一実施例における水位変動状況説明図である。ボイラ本体6は、多数の伝熱管を並列に設置し、上下を管寄せで接続している。エコノマイザ4は、多数の伝熱管で一続きの流路を形成するように連結したものであり、ボイラ本体6から排出された排ガスを通す排ガス通路1の途中に設置している。エコノマイザ4の予熱水出口とボイラ本体6の給水入口との間は予熱水管10で接続しており、エコノマイザ4の他端側に接続した給水管3の途中にある給水ポンプ2を作動すると、給水はエコノマイザ4を通ってボイラ本体6へ達する。
【0013】
ボイラ本体の下部に還水管に予熱水管10を接続しており、下部から給水を行う。ボイラ水の加熱は垂直な伝熱管部分で行い、ボイラ水の加熱によって発生した蒸気は上部管寄せに集合させる。ボイラ本体6の上部管寄せには、蒸気とともに沸き上がってきたボイラ水を気水分離器9へ送る蒸気取り出し管11を接続しており、蒸気は気水分離器9へ送る。気水分離器9は蒸気とボイラ水を分離するものであり、分離した蒸気は蒸気使用部へ供給し、ボイラ水は気水分離器9の下部とボイラ本体の下部管寄せをつなぐ還水管を通してボイラ本体内へ還流させる。ボイラ本体6の上部には、バーナや送風機などからなる燃焼装置12を設置しておき、燃焼装置12で燃焼を行うことによってボイラ水を加熱し、蒸気を発生させる。
【0014】
ボイラ本体6には蒸気圧力を検出する蒸気圧力検出装置7を設置しておき、蒸気圧力検出装置7で検出した蒸気圧力値は運転制御装置8へ出力する。運転制御装置8には、蒸気圧力値が低い場合には燃焼装置12での燃焼量は大きくし、蒸気圧力値が高くなると燃焼装置12での燃焼量を小さくするように、蒸気圧力値に対応させて燃焼量を設定しておく。運転制御装置8は、蒸気圧力検出装置7からの蒸気圧力値に基づいて燃焼必要量を決定し、燃焼装置12での燃焼量を調節する。例えば、燃焼装置12での燃焼量は、高燃焼・中燃焼・低燃焼と燃焼停止の4位置で制御する場合、蒸気圧力値が圧力調節範囲の下限より低ければ最大の燃焼量である高燃焼、圧力調節範囲内であっても低い値であれば中間の燃焼量である中燃焼、圧力調節範囲内での高い値であれば燃焼状態としては最も小さな燃焼量である低燃焼、圧力調節範囲の上限より高くなれば燃焼停止とする。
【0015】
また、ボイラには内部の水位を検出する水位検出装置5を設置しておき、水位検出装置5で検出した水位の情報も、ボイラの運転を制御する運転制御装置8へ出力する。運転制御装置8は給水ポンプ2とも接続しており、給水ポンプ2を作動させることで給水を行う。水位検出装置5では、長さの異なる電極棒である電極棒E1と電極棒E2を設置しておき、ボイラ水による通電の有無によって電極棒の位置まで水があるか否かを判定する。運転制御装置8では、低い位置で水位の有無を検出する電極棒E2の下端位置より水位が低いことを検出すると給水ポンプ2へ給水指令を出力し、高い位置で水位の有無を検出する電極棒E1の下端位置以上に水位が上昇したことを検出すると給水指令を停止する。
【0016】
また運転制御装置8では、電極棒E1位置よりも水位が低下してからの経過時間に基づいても給水を行う設定としておく。水位が電極棒E1位置未満となってからの経過時間を計測しておき、経過時間が設定時間Tに達すると、水位が給水開始水位である電極棒E2位置未満になっていなくても給水を開始する。この場合も、給水の停止はボイラ内の水位が給水停止水位まで上昇したことを検出して行う。そのため、給水ポンプ2の作動は、水位検出装置5で水位が給水開始水位まで低下したことを検出した場合、又は給水停止水位未満となってから設定時間Tが経過した場合に開始し、水位検出装置5で水位が給水停止水位まで上昇したことを検出した場合に給水ポンプ2の作動を停止する。
【0017】
ボイラ本体6との熱交換を行った後の排ガスは、排ガス通路1を通して戸外へ排出する。排ガス通路1を通している排ガスは、ボイラ本体6に熱を与えたことによって温度は低下しているが、より温度の低い給水の予熱には利用することができる。排ガス通路1を流れてエコノマイザ4部分に達した排ガスは、エコノマイザ4でさらに熱交換する。エコノマイザ4は、多数の伝熱管を連結することで一続きの給水流路としたものであって、エコノマイザ4内を流れる給水は排ガスより温度の低い水であり、排ガスの熱によってエコノマイザ内の給水を加熱する。排ガスはエコノマイザ4の伝熱管を加熱することで更に温度が低下し、その後は戸外へ排出される。
【0018】
エコノマイザ4は一続きの流路としているため、給水ポンプ2を作動させるとエコノマイザ4内を給水が流れ、給水ポンプ2の作動を停止すると給水の流れは止まることになる。給水ポンプ2を作動している場合にはエコノマイザ4内の給水はすぐに入れ替わるため、エコノマイザ4で予熱後の予熱水温度はある程度までしか高くならない。しかし、給水ポンプ2を停止している場合には、エコノマイザ4内の給水は入れ替わらないために予熱水温度は上昇し続けることになる。エコノマイザ4とボイラ本体6はつながっているため、エコノマイザ4内の圧力はボイラ本体6の圧力と同じになり、圧力上昇によって沸点も上昇しているが、給水温度がその沸点まで上昇すると、エコノマイザ4の伝熱管内で気泡が発生する。そして予熱水はエコノマイザ4を出たところで一時的に冷やされるため、予熱水管10部分で気泡が収縮することでウォーターハンマーが発生する可能性があった。
【0019】
水位が所定位置まで低下すると給水を行うとした場合、燃焼量が小さくなると水位低下に要する時間が長くなるため、エコノマイザ4の中で水が長い時間加熱されることになる。しかし、給水開始の判断を時間によっても行うようにしておき、停止時間を制限するようにしておくと、水位低下速度が遅い場合でも予熱水の温度が高くなりすぎることがなくなり、エコノマイザ内での気泡発生を防止できる。そのため、エコノマイザを出た予熱水管10の部分で予熱水が放熱によって冷却されても、その部分でのウォーターハンマーの発生や圧力の変動を招くことがなくなる。
【0020】
図2の実施例は、高燃焼・中燃焼・低燃焼・燃焼停止の4位置燃焼制御を行っているボイラにおける給水ポンプ作動状況と水位の変化を模式的に示している。ここでは、給水停止水位(E1)と給水開始水位(E2)の水量差を10L、高燃焼時の水使用量は50L/分、中燃焼時の水使用量は25L/分、低燃焼の水使用量は10L/分、給水ポンプの給水量は60L/分としている。実際にはこのような直線的な変化はしないのであるが、分かりやすくするために直線的に記載している。
【0021】
高燃焼の場合、給水停止中は−50L/分で水位が変化するため給水停止時間は12秒、給水実施中は+10L/分で水位が変化するため給水実施時間が60秒となる。同様に、中燃焼時では給水停止中は−25L/分のため給水停止時間は24秒、給水実施中は+35L/分のため給水実施時間は17秒、低燃焼時では給水停止中は−10L/分のため給水停止時間は60秒、給水実施中は+50L/分のため給水実施時間は12秒となっている。
【0022】
給水停止時間が長くなると、エコノマイザ4内で給水の予熱が行われる時間が長くなり、給水の温度が高くなる。そのため、水位低下に要する時間が長くなる低燃焼の場合には、給水を停止してからの経過時間が設定時間Tに達した時点で給水するようにしており、水位がE2まで低下するよりも前の段階で給水を開始している。
【0023】
なお、設定時間Tはボイラの燃焼量によって異なる値に設定しておく方がよい。給水が停止してエコノマイザ内で給水が滞留している場合、給水の滞留時間が長くなるほど排ガスによる温度上昇が大きくなるが、燃焼量が大きくなれば排ガス温度も高くなるために燃焼量によっても給水の加熱量が異なることになる。燃焼量が大きい場合には、給水の滞留時間が同じであっても給水の温度上昇量が大きくなるため、設定時間Tの値は小さくしておく。
【0024】
ここでは、エコノマイザ内で給水が滞留していても気泡が発生することはないという時間が、高燃焼では20秒、中燃焼では25秒、低燃焼では30秒であって、設定時間Tは高燃焼時20秒、中燃焼時25秒、低燃焼時30秒と設定していたとする。この場合、図2から分かるように、高燃焼と中燃焼では給水停止時点から水位が給水開始水位まで低下する時間が設定時間Tよりも短いため、エコノマイザ内で給水が過度に加熱されることはない。しかし低燃焼の場合、給水開始水位に低下するまでには設定時間(30秒)よりもはるかに長い時間(60秒)が掛かることになっており、このままではエコノマイザ内部で気泡が発生するおそれがある。
【0025】
水位に基づく給水では給水停止時間が長くなる低燃焼の場合、設定時間Tの30秒で給水を開始するようにすると、給水停止時間は最大でも30秒となる。そのため、エコノマイザ内で給水が過度に加熱される前に給水が開始され、予熱水はエコノマイザから出ていくことになるため、予熱水がそれ以上に加熱されることはなくなり、エコノマイザ内で水が加熱されて気泡を発生するということはなくなる。この制御では、水位検出装置5による検出水位を多くしなくてもエコノマイザ内で給水温度が過度に上昇することがなくなり、エコノマイザ4を出たところでのウォーターハンマーの発生を防ぐことができる。
【0026】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 排ガス通路
2 給水ポンプ
3 給水管
4 エコノマイザ
5 水位検出装置
6 ボイラ本体
7 蒸気圧力検出装置
8 運転制御装置
9 気水分離器
10 予熱水管
11 蒸気取り出し管
12 燃焼装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を予熱するエコノマイザと、エコノマイザで予熱した給水をさらに加熱して蒸気を発生するボイラ本体を持っており、ボイラ内の水位を検出する水位検出装置を持ち、ボイラへの給水は検出した水位に基づき、エコノマイザを通して間欠的に行うようにしている給水予熱ボイラにおいて、水位に基づく給水制御に加え、給水停止時間が設定時間Tに達した場合にも給水を開始するように設定しておき、水位が給水開始水位まで低下するよりも前に給水停止時間が設定時間Tに達した場合にはその時点で給水を開始する制御を行うものであることを特徴とする給水予熱ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の給水予熱ボイラにおいて、設定時間Tの値は燃焼量に応じて個々に設定するものであることを特徴とする給水予熱ボイラ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72563(P2013−72563A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210022(P2011−210022)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000130651)株式会社サムソン (164)