給水栓
【課題】製造コストの低減に寄与する上、流量調整部材と他の部材との干渉を容易に回避することができる給水栓を提供すること。
【解決手段】水栓本体7と、該水栓本体7内に螺合する状態で挿入される挿入部11を有し、自身の軸まわりの回動に伴って該水栓本体7内に進退する筒状部材9と、該筒状部材9において前記水栓本体7内に挿入されない部分の外周側に、該筒状部材9に対するトルク伝達及び該筒状部材9の軸方向への移動が可能な状態で嵌合する流量調整部材3とを備え、前記挿入部11の先端側に設けられた略環状の弁体部14は、前記水栓本体7内への前記筒状部材9の進退により、前記水栓本体7内に設けられた弁座部12に当接し該弁座部12によって前記挿入部11の先端側が閉塞される閉弁状態と、前記弁座部12から離間した開弁状態とになる。
【解決手段】水栓本体7と、該水栓本体7内に螺合する状態で挿入される挿入部11を有し、自身の軸まわりの回動に伴って該水栓本体7内に進退する筒状部材9と、該筒状部材9において前記水栓本体7内に挿入されない部分の外周側に、該筒状部材9に対するトルク伝達及び該筒状部材9の軸方向への移動が可能な状態で嵌合する流量調整部材3とを備え、前記挿入部11の先端側に設けられた略環状の弁体部14は、前記水栓本体7内への前記筒状部材9の進退により、前記水栓本体7内に設けられた弁座部12に当接し該弁座部12によって前記挿入部11の先端側が閉塞される閉弁状態と、前記弁座部12から離間した開弁状態とになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、洗濯機、浄水器、食器洗い機、湯沸器などの機器の給水ホースへ給水可能な埋め込み水栓として用いることができる給水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
壁に埋め込まれた状態で使用される埋め込み水栓に関して、特許文献1には、流量調整部材(レバーハンドル)を操作すると、この操作力は、伝達機構を介して弁体に伝達され、弁体ではこれを構成するセラミック製の可動ディスクと固定ディスクとの相対回転に変換され、これにより弁の開閉が行われるようにした技術が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−113626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術では、伝達機構の構造は複雑でコストアップ要因となり、また、水栓の設置に際しては、水栓取付け用の取付け孔を覆うカバー(カバープレート)と流量調整部材とが干渉しないように注意を払う必要がある。
【0005】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、製造コストの低減に寄与する上、流量調整部材と他の部材との干渉を容易に回避することができる給水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る給水栓は、
水栓本体と、
該水栓本体内に螺合する状態で挿入される挿入部を有し、自身の軸まわりの回動に伴って該水栓本体内に進退する筒状部材と、
該筒状部材において前記水栓本体内に挿入されない部分の外周側に、該筒状部材に対するトルク伝達及び該筒状部材の軸方向への移動が可能な状態で嵌合する流量調整部材とを備え、
前記挿入部の先端側に設けられた略環状の弁体部は、前記水栓本体内への前記筒状部材の進退により、前記水栓本体内に設けられた弁座部に当接し該弁座部によって前記挿入部の先端側が閉塞される閉弁状態と、前記弁座部から離間した開弁状態とになることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
また、上記給水栓において、前記水栓本体は壁に埋め込まれた状態となるように配置され、また、前記壁において前記水栓本体の前側に設けられた水栓取付け用の取付け孔を覆うカバーを備え、該カバーは前記水栓本体に固定されるようにしてあってもよい(請求項2)。
【0008】
上記給水栓において、前記流量調整部材は前記カバーに保持されるようにしてあってもよい(請求項3)。
【0009】
さらに、上記給水栓が、前記壁から前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びる継手部を備えていてもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
各請求項に係る発明では、製造コストの低減に寄与する上、流量調整部材と他の部材との干渉を容易に回避することができる給水栓が得られる。
【0011】
すなわち、各請求項に係る発明の給水栓では、流量調整部材に対する操作力(回動力)を弁(弁体部)に伝達するための構造がシンプルであり、このことは製造コストの低減に繋がる。
【0012】
また、各請求項に係る発明の給水栓では、筒状部材の内外に継手部と流量調整部材とを装着して両者を一体化することが容易であり、このように構成すれば、これらが別体である場合よりもカバーの面積が小さくて済み、故にカバーの小型化を図れるという効果が得られる。
【0013】
請求項2に係る発明の給水栓では、従来の埋め込み水栓でよく見られる壁の裏側に固定配置されるハウジングにカバーを直接取り付けるのではなく、通常、スペーサによって壁の表面に対して位置調整される水栓本体にカバーを保持させるようにしてあるので、壁の厚みに関係無くカバーひいては給水栓の良好な設置を容易に行うことが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明の給水栓では、流量調整部材をカバーに保持させるので、流量調整部材がカバー等の他の部材と干渉することを容易かつ確実に防止することができる。
【0015】
請求項4に係る発明の給水栓では、継手部は、壁から前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びるので、継手部に対してその下方から接続することの多い継手部材の接続作業を行い易く、また、接続後の継手部材の壁からの突出量も小さく抑えることができ、省スペース化にも資する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る給水栓の使用例を概略的に示す斜視図である。
【図2】前記給水栓の構成を概略的に示す正面図である。
【図3】(A)及び(B)は給水ホースが接続されていない状態及び接続された状態の前記給水栓の構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】前記給水栓の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図5】(A)及び(B)は厚みが9.5mm及び12.5mmである壁に取り付けた状態の前記給水栓の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図6】(A)及び(B)は厚みが9.5mm及び12.5mmである壁に取り付けた状態の前記給水栓の構成を概略的に示す平面図である。
【図7】開弁状態の前記給水栓の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図8】前記給水栓のカバーの構成を概略的に示す斜視図である。
【図9】(A)〜(G)は、前記給水栓の保持具の構成を概略的に示す平面図、斜視図、左側面図、正面図、右側面図、背面図及び底面図である。
【図10】(A)〜(G)は、図19(A)〜(G)に示す保持具の変形例の構成を概略的に示す平面図、斜視図、左側面図、正面図、右側面図、背面図及び底面図である。
【図11】(A)及び(B)は上記給水栓の水栓本体の変形例の構成を概略的に示す平面図及び正面図である。
【図12】抜け止め片が装着された状態の上記水栓本体の構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】(A)及び(B)は、前記水栓本体の構成を概略的に示す正面図及び側面図、(C)は(A)のA−A線断面図である。
【図14】前記抜け止め片の構成を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る給水栓1は、例えば埋め込み水栓として用いられるものであり、継手部2及び流量調整部材(例えばハンドル)3が、正面視略矩形状のカバー4の表側(外側)に露出(突出)した状態で設けられる。
【0019】
継手部2には、例えば、図1に示す給水対象(図示例は洗濯機)Tに繋がった給水ホースHの上流端に設けられた継手部材Cが着脱自在に接続される。ここで、継手部材Cには、継手部2のフランジ部材5に係脱自在に係止する係止部C1が設けられている(図3(A)及び(B)参照)。そして、継手部2に継手部材Cを接続すると、継手部2のストップ弁(緊急止水弁)6が継手部材Cに押されて上流側に移動し、開弁状態となって継手部2から給水ホースH側への給水が可能となり、継手部2に対する継手部材Cの接続が解除されると、ストップ弁6が元の位置に戻り、閉弁状態となる。このような機能を持つストップ弁6の構成は公知であり、そのより詳しい説明は省略する。
【0020】
流量調整部材3は、水栓本体7の下流側に設けられる継手部2から給水ホースH側への給水流量を調整するためにカバー4の表側から操作されるものである。本形態の流量調整部材3は、図3(A)及び(B)、図4に示すように、水栓本体7の開口部8に装着されて水栓本体7に接続される筒状部材9に取り付けられる(接続される)。
【0021】
ここで、水栓本体7の接続部7a (図5(A)参照)には、水栓本体7を介して給水ホースH側へ給水するための給水管(図示していない)が接続されるが、この接続は図4に示すようなストレート状の配管接続部材10を介して行われてもよいし、水栓本体7(接続部7a)に対して軸回りに360°回転自在に構成されたエルボである配管接続部材(図示していない)を介して行われてもよい。後者の場合には、給水管が接続される配管接続部材が水栓本体7に対して回転自在となるので、斯かる給水管が床下から配管された場合のみならず、例えば天井から配管された場合にも対応が容易となる。
【0022】
一方、筒状部材9は、水栓本体7内に螺合する状態で挿入される挿入部11を有し、筒状部材9自身の軸まわりの回動に伴って水栓本体7内に進退し、水栓本体7の内壁に設けられた弁座部12に対して近接及び離間するように、水栓本体7(開口部8)内に設けられた雌ねじと挿入部11に設けられた雄ねじとからなる螺合部13が設けられている(図5(A)参照)。
【0023】
挿入部11の一端(先端)側には弁座部12に密着当接可能な環状の弁体部(本実施形態ではパッキン)14(図5(A)参照)が装着されている。この弁体部14は、水栓本体7内への筒状部材9の進退により、弁座部12に当接し弁座部12によって挿入部11の先端側が閉塞される閉弁状態と、弁座部12から離間した開弁状態とになる。すなわち、挿入部11が開弁状態にあるとき(図7参照)には、接続部7aから水栓本体7内に至った水を、弁座部12と弁体部14との隙間から挿入部11(弁体部14)内、さらには継手部2側へと向かわせる給水が可能となるが、弁体部14が弁座部12に密着当接する閉弁状態では(図5(A)参照)、斯かる給水が不可能となる。
【0024】
図5(A)に示すように、挿入部11内における逆止弁15の上流側には、挿入部11内に形成される流路を狭め、水圧を下げるための減圧板16が設けられている。尚、減圧板16は、中央部に貫通孔が形成された板状の部材である。
【0025】
ここで、挿入部11が水栓本体7の開口部8から抜けてしまうことは、水栓本体7の開口部8の周縁に固定される抜け止め片17によって防止される(図12〜図14参照)。図示例では、抜け止め片17はねじ18により水栓本体7に固定される。
【0026】
また、挿入部11と水栓本体7の内壁との間からの水漏れは、挿入部11の外周面に設けられたシール部材(図示例はOリング)19により防止される。
【0027】
そして、図5(A)に示すように、筒状部材9の他端(前端)側の内外に継手部2及び流量調整部材3が接続される。本実施形態では、筒状部材9に対する継手部2の接続は螺着により行われる。また、筒状部材9に対する流量調整部材3の接続は、筒状部材9において水栓本体7内に挿入されない部分の外周側に設けられたアウターセレーション20aと、流量調整部材3に設けられたインナーセレーション20bとからなるセレーション嵌合部20により行われる。
【0028】
従って、筒状部材9は流量調整部材3の回動操作に伴って回動するのであり、流量調整部材3が図2に示す位置にあるときには、筒状部材9は閉弁状態(図5(A)参照)となっており、この位置にある流量調整部材3を図2の矢印イ方向に回動操作するにつれて、筒状部材9の弁体部14と弁座部12とで構成される弁の開度は大きくなり、継手部2から給水ホースH側への給水流量も大となる。
【0029】
そして、水栓本体7は、図4、図6(A)に示すように、壁(ボード)Wの裏側に設置(固定配置)された略鉛直方向に延びる間柱Mに対して、その前端が間柱Mの前面(あるいは壁Wの背面)に沿うように位置決めされた状態で取り付けられる金属製(例えば鉄製)の保持具21によって保持される。
【0030】
保持具21は、図4、図5(A)、図6(A)、図9(A)〜(G)に示すように、略鉛直方向かつ壁Wと略直交する方向に延びる第1取付け面部22と、この第1取付け面部22の上部に連設され略水平方向に延びる第2取付け面部23と、第1取付け面部22の前部に連設され略鉛直方向かつ壁Wと略平行に延びる保持面部24とを有し、例えば冷間圧延鋼板(SPCC)パンチや曲げ加工に適した構成となっている。また、第1取付け面部22と第2取付け面部23との境界となる曲げ部分と、第1取付け面部22と保持面部24との境界となる曲げ部分とには、それぞれビード加工が施されている。
【0031】
そして、第1、第2取付け面部22,23にはそれぞれ、ねじ25によるねじ止め用の長孔22a,23aが例えば複数(図示例では二つずつ)設けられ、保持面部24には、接続具26に挿通される雌ねじ部分24aが例えば複数(図示例では二つ)設けられている。さらに、第1、第2取付け面部22,23の前部にはそれぞれ、保持面部24よりも前側に突出する位置決め用の突出部分27が設けられている。
【0032】
接続具26は、水栓本体7に設けられた挿通孔7b(図4参照)と保持具21の保持面部24の雌ねじ部分24aとにわたって差し込まれ(螺着し)両者7,21を接続するように構成されている。尚、本形態の接続具26は座金組み込みねじ(所謂セムスねじ)であるが、図4では、接続具26の座金の図示を省略してある。
【0033】
さらに、図4に示すように、接続具26における水栓本体7に差し込まれる部分と保持具21に差し込まれる部分との間の部分に挿通された状態となるように合成樹脂(例えばPOM)製のスペーサ28が装着される。そして、このスペーサ28は着脱自在であって、図6(B)に示すように装着した状態にも、図6(A)に示すように外した状態にもすることができる。
【0034】
ここで、本形態では、相互に長さL(図6(B)参照)が異なる複数種(例えば4種)のスペーサ28から任意の長さLを有するスペーサ28が選択されて用いられ、このようにして装着されるスペーサ28の長さ(保持具21に当接する部位から水栓本体7に当接する部位までの長さ)が変更されたり、斯かるスペーサ28が着脱されたりすることによって、接続具26において保持具21に差し込まれる部分から水栓本体7に差し込まれる部分までの距離が変更され、水栓本体7の位置が壁Wの表裏方向に移動する(壁Wから水栓本体7までの距離も変更される)ことになる。
【0035】
尚、本形態では、長さが同一あるいは相互に異なる複数のスペーサ28を適宜に組み合わせて用いるのであり、長さLの範囲が3.0mm〜9.5mmである4種類(3.0mm,4.0mm,7.0mm,9.5mm)のスペーサ28が用意されている。すなわち、本形態では、壁Wの厚みが9.5mmである場合(図5(A)、図7参照)には図6(A)に示すようにスペーサ28を接続具26に装着せず、壁Wの厚みが12.5mmである場合(図5(B)参照)には長さLが3.0mmのスペーサ25を一つのみ接続具26に装着する(図6(B)参照)。また、例えば、壁Wの厚みが25mmである場合には、長さLが3.0mmのスペーサ28を二つと長さLが9.5mmのスペーサ28を一つとを組み合わせて接続具26に装着する。
【0036】
本実施形態の保持具21は、第1,第2取付け面部22,23の前部に設けられた突出部分27の前縁が間柱Mの前面(あるいは壁Wの背面)に沿うように設置され、保持面部24の前側(壁Wに近い側)に水栓本体7が接続されるので、保持面部24は突出部分27の前縁よりも所定間隔だけ壁Wから遠のくように構成されている。
【0037】
上記のように保持具21、接続具26を用い、さらに必要に応じてスペーサ28を用いて間柱Mに固定される水栓本体7に対して、水栓本体7の開口部8に装着される筒状部材9の前部は、壁Wに設けられた例えば縦100mm×横50mmの大きさを有する水栓取付け用の取付け孔Waを抜けて壁Wの表側に突出する(図4参照)。そして、本形態では、カバー4は、カバー4に設けられた二つの挿通孔4a(図8参照)を挿通する二つの固定ねじ29(図4参照)により水栓本体7に取り付けられ、これにより、カバー4は壁Wの表側において固定された状態となる。また、カバー4には、二つの固定ねじ29を覆うようにキャップ30(図4参照)が着脱自在に装着される。
【0038】
そして、このカバー4の固定後に、カバー4に設けられ前方斜め下側に向いた筒状部4bから壁Wの表側に突出する筒状部材9のアウターセレーション20aに対して流量調整部材3のインナーセレーション20bが嵌合され、流量調整部材3はカバー4によって保持される状態となる。すなわち、流量調整部材3の後部にはOリング3a(図5(A)参照)が装着され、このOリング3aは、カバー4の筒状部4bに設けられた複数(例えば8個)の爪4cにより挟持される(図4、図8参照)。尚、複数の爪4cは、全てが同一円周上にあるのではなく、図8に示すように、前側にずれた爪4cと後側にずれた爪4cとが周方向に交互に並ぶようにしてあり、前側に位置する複数の爪4cと後側に位置する複数の爪4cとでOリング3aを挟持可能としてある。
【0039】
このように、流量調整部材3はカバー4によって保持された状態で筒状部材9にセレーション嵌合するように構成されているので、流量調整部材3を回動操作したときに、筒状部材9は継手部2と共に軸方向に移動するが、流量調整部材3は回動のみして移動しないので、流量調整部材3の操作性は優れたものとなる。
【0040】
一方、上述したカバー4の固定後に、壁Wの表側に突出する継手部2には、図1〜図3、図5(A)に示すように、フランジ部材5が装着される。本形態のフランジ部材5には、その中央部から周縁部にかけて切り欠き孔(図示していない)が設けられ、この切り欠き孔において、フランジ部材5の中央部に位置する孔部分より周縁部に位置する孔部分の方が大きくなっている。そして、フランジ部材5の周縁部寄りの孔部分に継手部2を通した後、フランジ部材5をスライドさせ、フランジ部材5の中央部寄りの孔部分の内側に継手部2を移動させることにより、継手部2に対するフランジ部材5の装着が完了し、継手部2に対する給水ホースHの接続が可能な状態となる。
【0041】
上述のようにカバー4に流量調整部材3を保持させた後、カバー4の筒状部4b(図4参照)から壁Wの表側に突出する継手部2にはフランジ部材5が装着され、これにより、継手部2に対する給水ホースHの接続が可能となる。
【0042】
上記のように構成した本実施の形態では、流量調整部材3に対する操作力(回動力)を弁(弁体部14)に伝達するための構造がシンプルであり、このことは製造コストの低減に繋がる上、流量調整部材3をカバー4に保持させるので、流量調整部材3がカバー4等の他の部材と干渉することを容易かつ確実に防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、カバー4の表側に露出する継手部2と流量調整部材3とを一体化してあるため、カバー4の小型化を図れるという効果が得られる。
【0044】
さらに、本実施形態の継手部2は、図1に示すように、壁Wから前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びるので、継手部2に対してその下方から接続することの多い継手部材Cの接続作業を行い易く、また、接続後の継手部材Cの壁Wからの突出量も小さく抑えることができ、省スペース化にも資する。
【0045】
本形態では、施工現場により間柱Mと壁Wとの間隔や壁Wの厚みにばらつきがある場合でも、スペーサ28の長さを変更することにより、流量調整部材3の壁Wの表側への迫り出し量(突出量)の一律化を図ることができ、これにより、設置後の埋め込み水栓の状態を容易に良好にすることができる上、スペーサ28の長さを変更する(適宜の長さのスペーサ28を選択する)のみでよいので施工性の向上をも図ることができる。加えて、本形態の埋め込み水栓では、流量調整部材3及びカバー4の両方が筒状部材9(水栓本体7)に固定(装着)されるので、壁Wの厚みに関係無くカバー4から流量調整部材3までの間隔が必然的に一定になり、これによっても埋め込み水栓の良好な設置を容易に行うことが可能となる。
【0046】
さらに、本形態の給水栓は、従来の埋め込み水栓で用いられるハウジングを不要とすることができるので、この点でもコストダウンに資するものとなり、設置スペースのコンパクト化の点でも優れている。
【0047】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0048】
給水対象Tは洗濯機に限られず、浄水器、食器洗い機、湯沸器などの他の機器であってもよい。
【0049】
流量調整部材3は、筒状部材9において水栓本体7内に挿入されない部分の外周側に、筒状部材9に対するトルク伝達及び筒状部材9の軸方向への移動が可能な状態で嵌合されればよい。そのような嵌合を可能とするには、例えば、セレーション、スプライン又はキーのうちから選択されるトルク伝達用の凹凸噛合構造を流量調整部材3と筒状部材9との嵌合部に設ければよく、上記実施の形態では、セレーションを選択した例を示したに過ぎない(上記実施の形態のセレーション嵌合部20を参照)。
【0050】
上記実施形態では、流量調整部材3がカバー4に保持されているが、これに限らず、例えば、流量調整部材3が筒状部材9に保持されてもよい。また、流量調整部材3においてインナーセレーション20bが設けられる部分は、筒状になっておらず、例えば縦断面視C字形状となっていてもよい。
【0051】
上記実施形態の挿通孔7bを、接続具26が螺合する雌ねじ部分としてもよい。
【0052】
上記実施形態では、弁体部14は筒状部材9の先端に別部材として装着されているが、このような別部材を用いず、筒状部材9の先端部を弁体部14として用いることができるようにしてもよい。
【0053】
逆止弁15が、例えば継手部2の下流側において発生する水撃(上記実施形態では給水対象Tである洗濯機の電磁弁の開閉操作の際に生じる水撃)を吸収、緩和するダンパー部を有するものであってもよい。
【0054】
上記実施形態では、減圧板16は弁体部14とは別部材として設けられているが、これに限らず、例えば弁体部14が減圧板16の機能を兼ね備えるように構成し、弁体部14と減圧板16との一体化を図ってもよい。
【0055】
壁Wの厚みに関係無くカバー4ひいては給水栓1の良好な設置を容易に行うことを可能とするためには、壁Wの裏側に固定配置される保持具21にカバー4を直接取り付けるのではなく、スペーサ28によって位置調整される水栓本体7やこの水栓本体7に接続される部材(例えば筒状部材9や継手部2)への係止または固定によってカバー4を保持させるようにしてあればよい。従って、上記実施の形態では、カバー4を水栓本体7に対してねじ29によって固定することにより、カバー4を保持するようにしてあるが、カバー4の保持方法はこれに限られない。
【0056】
尚、例えば、図9に示す保持具21を、図10(A)〜(G)に示すように第2取付け面部23の無い形状となるように変形してもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、壁Wの外側からみて取付孔Waの左側にある間柱Mに保持具21を取り付けているが、間柱Mが逆側(右側)にある場合にも保持具21を取り付けることができるようにしてもよい。そのためには、例えば、水栓本体7において接続具26が差し込まれる部分(挿通孔7b)を水栓本体7の左側ではなく右側に(あるいは左右両側に)設ければよく、また、この場合、保持具21は図4に示す向きでは用いることができないので、保持面部24を前側に向けたまま保持具21をそれぞれ上下逆にした状態で用いるようにすればよい。
【0058】
尚、水栓本体7において接続具26が差し込まれる部分(挿通孔7b)は、水栓本体7の左右に限られず、例えば上側に設けることもできる。
【0059】
ここで、図11(A)及び(B)に示すように、水栓本体7の左側のみではなく上側にも接続具21が差し込まれる部分(雌ねじ部分7c)を設ければ以下の効果が得られる。すなわち、図10(A)〜(G)に示すような第2取付け面部23の無い保持具21を用いる場合でも、保持面部24を前側に向けた状態で第1取付け面部22を上側に向けることにより、この図10(A)〜(G)に示す保持具21を用いて水栓本体7を略水平に延びる当木の下面にも取り付けることが可能となる。また、図9(A)〜(G)に示す保持具21を用いる場合には、さらに、保持面部24を前側に向けた状態で第2取付け面部23を右側に向けることにより、この図9(A)〜(G)に示す保持具21を用いて水栓本体7を右側の間柱Mにも取り付けることが可能となる。
【0060】
また、図9(A)〜(G)あるいは図10(A)〜(G)に示す保持具21の鏡像となる形状(左右を逆にした形状)を有する保持具を用いることもでき、この場合には、接続具26が差し込まれる部分(挿通孔7b)を水栓本体7の左側ではなく右側に設ければよい。
【0061】
接続具26は座金組み込みねじに限られず、座金が組み込まれていないノーマルなタイプのねじの他、例えば、ボルトとナットであってもよい。
【0062】
スペーサ28の長さを変更する方法としては、相互に長さの異なる複数のスペーサ28から任意の長さを有するスペーサ28を選択し着脱する上述の方法の他に、例えば、長めに成形したスペーサ28を任意長さに切断する方法や、長さが同一あるいは相互に異なる複数のスペーサを適宜に組み合わせて用いる方法が挙げられる。
【0063】
挿通孔7a、スペーサ28、保持面部24を前側からこの順に並べる構成に限られず、例えば、 挿通孔7a、スペーサ28、保持面部24を後側からこの順に並べてもよい。すなわち、上記実施の形態では、接続具26を、水栓本体7において壁Wに対して保持面部24よりも近くに位置する部分に差し込んであるが、水栓本体7において壁Wに対して保持面部24よりも遠くに位置する部分に差し込むようにしてもよい。
【0064】
上記各変形を、適宜に組み合わせて行ってもよいことはいうまでもない。
【0065】
なお、図2と対比すれば明らかなように、図5(A)及び(B)、図7では調整部材3は図示されない位置にあるが、わかり易さのために図示してある。
【符号の説明】
【0066】
1 給水栓
3 流量調整部材
7 水栓本体
9 筒状部材
11 挿入部
12 弁座部
14 弁体部
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、洗濯機、浄水器、食器洗い機、湯沸器などの機器の給水ホースへ給水可能な埋め込み水栓として用いることができる給水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
壁に埋め込まれた状態で使用される埋め込み水栓に関して、特許文献1には、流量調整部材(レバーハンドル)を操作すると、この操作力は、伝達機構を介して弁体に伝達され、弁体ではこれを構成するセラミック製の可動ディスクと固定ディスクとの相対回転に変換され、これにより弁の開閉が行われるようにした技術が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−113626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術では、伝達機構の構造は複雑でコストアップ要因となり、また、水栓の設置に際しては、水栓取付け用の取付け孔を覆うカバー(カバープレート)と流量調整部材とが干渉しないように注意を払う必要がある。
【0005】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、製造コストの低減に寄与する上、流量調整部材と他の部材との干渉を容易に回避することができる給水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る給水栓は、
水栓本体と、
該水栓本体内に螺合する状態で挿入される挿入部を有し、自身の軸まわりの回動に伴って該水栓本体内に進退する筒状部材と、
該筒状部材において前記水栓本体内に挿入されない部分の外周側に、該筒状部材に対するトルク伝達及び該筒状部材の軸方向への移動が可能な状態で嵌合する流量調整部材とを備え、
前記挿入部の先端側に設けられた略環状の弁体部は、前記水栓本体内への前記筒状部材の進退により、前記水栓本体内に設けられた弁座部に当接し該弁座部によって前記挿入部の先端側が閉塞される閉弁状態と、前記弁座部から離間した開弁状態とになることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
また、上記給水栓において、前記水栓本体は壁に埋め込まれた状態となるように配置され、また、前記壁において前記水栓本体の前側に設けられた水栓取付け用の取付け孔を覆うカバーを備え、該カバーは前記水栓本体に固定されるようにしてあってもよい(請求項2)。
【0008】
上記給水栓において、前記流量調整部材は前記カバーに保持されるようにしてあってもよい(請求項3)。
【0009】
さらに、上記給水栓が、前記壁から前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びる継手部を備えていてもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
各請求項に係る発明では、製造コストの低減に寄与する上、流量調整部材と他の部材との干渉を容易に回避することができる給水栓が得られる。
【0011】
すなわち、各請求項に係る発明の給水栓では、流量調整部材に対する操作力(回動力)を弁(弁体部)に伝達するための構造がシンプルであり、このことは製造コストの低減に繋がる。
【0012】
また、各請求項に係る発明の給水栓では、筒状部材の内外に継手部と流量調整部材とを装着して両者を一体化することが容易であり、このように構成すれば、これらが別体である場合よりもカバーの面積が小さくて済み、故にカバーの小型化を図れるという効果が得られる。
【0013】
請求項2に係る発明の給水栓では、従来の埋め込み水栓でよく見られる壁の裏側に固定配置されるハウジングにカバーを直接取り付けるのではなく、通常、スペーサによって壁の表面に対して位置調整される水栓本体にカバーを保持させるようにしてあるので、壁の厚みに関係無くカバーひいては給水栓の良好な設置を容易に行うことが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明の給水栓では、流量調整部材をカバーに保持させるので、流量調整部材がカバー等の他の部材と干渉することを容易かつ確実に防止することができる。
【0015】
請求項4に係る発明の給水栓では、継手部は、壁から前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びるので、継手部に対してその下方から接続することの多い継手部材の接続作業を行い易く、また、接続後の継手部材の壁からの突出量も小さく抑えることができ、省スペース化にも資する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る給水栓の使用例を概略的に示す斜視図である。
【図2】前記給水栓の構成を概略的に示す正面図である。
【図3】(A)及び(B)は給水ホースが接続されていない状態及び接続された状態の前記給水栓の構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】前記給水栓の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図5】(A)及び(B)は厚みが9.5mm及び12.5mmである壁に取り付けた状態の前記給水栓の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図6】(A)及び(B)は厚みが9.5mm及び12.5mmである壁に取り付けた状態の前記給水栓の構成を概略的に示す平面図である。
【図7】開弁状態の前記給水栓の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図8】前記給水栓のカバーの構成を概略的に示す斜視図である。
【図9】(A)〜(G)は、前記給水栓の保持具の構成を概略的に示す平面図、斜視図、左側面図、正面図、右側面図、背面図及び底面図である。
【図10】(A)〜(G)は、図19(A)〜(G)に示す保持具の変形例の構成を概略的に示す平面図、斜視図、左側面図、正面図、右側面図、背面図及び底面図である。
【図11】(A)及び(B)は上記給水栓の水栓本体の変形例の構成を概略的に示す平面図及び正面図である。
【図12】抜け止め片が装着された状態の上記水栓本体の構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】(A)及び(B)は、前記水栓本体の構成を概略的に示す正面図及び側面図、(C)は(A)のA−A線断面図である。
【図14】前記抜け止め片の構成を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る給水栓1は、例えば埋め込み水栓として用いられるものであり、継手部2及び流量調整部材(例えばハンドル)3が、正面視略矩形状のカバー4の表側(外側)に露出(突出)した状態で設けられる。
【0019】
継手部2には、例えば、図1に示す給水対象(図示例は洗濯機)Tに繋がった給水ホースHの上流端に設けられた継手部材Cが着脱自在に接続される。ここで、継手部材Cには、継手部2のフランジ部材5に係脱自在に係止する係止部C1が設けられている(図3(A)及び(B)参照)。そして、継手部2に継手部材Cを接続すると、継手部2のストップ弁(緊急止水弁)6が継手部材Cに押されて上流側に移動し、開弁状態となって継手部2から給水ホースH側への給水が可能となり、継手部2に対する継手部材Cの接続が解除されると、ストップ弁6が元の位置に戻り、閉弁状態となる。このような機能を持つストップ弁6の構成は公知であり、そのより詳しい説明は省略する。
【0020】
流量調整部材3は、水栓本体7の下流側に設けられる継手部2から給水ホースH側への給水流量を調整するためにカバー4の表側から操作されるものである。本形態の流量調整部材3は、図3(A)及び(B)、図4に示すように、水栓本体7の開口部8に装着されて水栓本体7に接続される筒状部材9に取り付けられる(接続される)。
【0021】
ここで、水栓本体7の接続部7a (図5(A)参照)には、水栓本体7を介して給水ホースH側へ給水するための給水管(図示していない)が接続されるが、この接続は図4に示すようなストレート状の配管接続部材10を介して行われてもよいし、水栓本体7(接続部7a)に対して軸回りに360°回転自在に構成されたエルボである配管接続部材(図示していない)を介して行われてもよい。後者の場合には、給水管が接続される配管接続部材が水栓本体7に対して回転自在となるので、斯かる給水管が床下から配管された場合のみならず、例えば天井から配管された場合にも対応が容易となる。
【0022】
一方、筒状部材9は、水栓本体7内に螺合する状態で挿入される挿入部11を有し、筒状部材9自身の軸まわりの回動に伴って水栓本体7内に進退し、水栓本体7の内壁に設けられた弁座部12に対して近接及び離間するように、水栓本体7(開口部8)内に設けられた雌ねじと挿入部11に設けられた雄ねじとからなる螺合部13が設けられている(図5(A)参照)。
【0023】
挿入部11の一端(先端)側には弁座部12に密着当接可能な環状の弁体部(本実施形態ではパッキン)14(図5(A)参照)が装着されている。この弁体部14は、水栓本体7内への筒状部材9の進退により、弁座部12に当接し弁座部12によって挿入部11の先端側が閉塞される閉弁状態と、弁座部12から離間した開弁状態とになる。すなわち、挿入部11が開弁状態にあるとき(図7参照)には、接続部7aから水栓本体7内に至った水を、弁座部12と弁体部14との隙間から挿入部11(弁体部14)内、さらには継手部2側へと向かわせる給水が可能となるが、弁体部14が弁座部12に密着当接する閉弁状態では(図5(A)参照)、斯かる給水が不可能となる。
【0024】
図5(A)に示すように、挿入部11内における逆止弁15の上流側には、挿入部11内に形成される流路を狭め、水圧を下げるための減圧板16が設けられている。尚、減圧板16は、中央部に貫通孔が形成された板状の部材である。
【0025】
ここで、挿入部11が水栓本体7の開口部8から抜けてしまうことは、水栓本体7の開口部8の周縁に固定される抜け止め片17によって防止される(図12〜図14参照)。図示例では、抜け止め片17はねじ18により水栓本体7に固定される。
【0026】
また、挿入部11と水栓本体7の内壁との間からの水漏れは、挿入部11の外周面に設けられたシール部材(図示例はOリング)19により防止される。
【0027】
そして、図5(A)に示すように、筒状部材9の他端(前端)側の内外に継手部2及び流量調整部材3が接続される。本実施形態では、筒状部材9に対する継手部2の接続は螺着により行われる。また、筒状部材9に対する流量調整部材3の接続は、筒状部材9において水栓本体7内に挿入されない部分の外周側に設けられたアウターセレーション20aと、流量調整部材3に設けられたインナーセレーション20bとからなるセレーション嵌合部20により行われる。
【0028】
従って、筒状部材9は流量調整部材3の回動操作に伴って回動するのであり、流量調整部材3が図2に示す位置にあるときには、筒状部材9は閉弁状態(図5(A)参照)となっており、この位置にある流量調整部材3を図2の矢印イ方向に回動操作するにつれて、筒状部材9の弁体部14と弁座部12とで構成される弁の開度は大きくなり、継手部2から給水ホースH側への給水流量も大となる。
【0029】
そして、水栓本体7は、図4、図6(A)に示すように、壁(ボード)Wの裏側に設置(固定配置)された略鉛直方向に延びる間柱Mに対して、その前端が間柱Mの前面(あるいは壁Wの背面)に沿うように位置決めされた状態で取り付けられる金属製(例えば鉄製)の保持具21によって保持される。
【0030】
保持具21は、図4、図5(A)、図6(A)、図9(A)〜(G)に示すように、略鉛直方向かつ壁Wと略直交する方向に延びる第1取付け面部22と、この第1取付け面部22の上部に連設され略水平方向に延びる第2取付け面部23と、第1取付け面部22の前部に連設され略鉛直方向かつ壁Wと略平行に延びる保持面部24とを有し、例えば冷間圧延鋼板(SPCC)パンチや曲げ加工に適した構成となっている。また、第1取付け面部22と第2取付け面部23との境界となる曲げ部分と、第1取付け面部22と保持面部24との境界となる曲げ部分とには、それぞれビード加工が施されている。
【0031】
そして、第1、第2取付け面部22,23にはそれぞれ、ねじ25によるねじ止め用の長孔22a,23aが例えば複数(図示例では二つずつ)設けられ、保持面部24には、接続具26に挿通される雌ねじ部分24aが例えば複数(図示例では二つ)設けられている。さらに、第1、第2取付け面部22,23の前部にはそれぞれ、保持面部24よりも前側に突出する位置決め用の突出部分27が設けられている。
【0032】
接続具26は、水栓本体7に設けられた挿通孔7b(図4参照)と保持具21の保持面部24の雌ねじ部分24aとにわたって差し込まれ(螺着し)両者7,21を接続するように構成されている。尚、本形態の接続具26は座金組み込みねじ(所謂セムスねじ)であるが、図4では、接続具26の座金の図示を省略してある。
【0033】
さらに、図4に示すように、接続具26における水栓本体7に差し込まれる部分と保持具21に差し込まれる部分との間の部分に挿通された状態となるように合成樹脂(例えばPOM)製のスペーサ28が装着される。そして、このスペーサ28は着脱自在であって、図6(B)に示すように装着した状態にも、図6(A)に示すように外した状態にもすることができる。
【0034】
ここで、本形態では、相互に長さL(図6(B)参照)が異なる複数種(例えば4種)のスペーサ28から任意の長さLを有するスペーサ28が選択されて用いられ、このようにして装着されるスペーサ28の長さ(保持具21に当接する部位から水栓本体7に当接する部位までの長さ)が変更されたり、斯かるスペーサ28が着脱されたりすることによって、接続具26において保持具21に差し込まれる部分から水栓本体7に差し込まれる部分までの距離が変更され、水栓本体7の位置が壁Wの表裏方向に移動する(壁Wから水栓本体7までの距離も変更される)ことになる。
【0035】
尚、本形態では、長さが同一あるいは相互に異なる複数のスペーサ28を適宜に組み合わせて用いるのであり、長さLの範囲が3.0mm〜9.5mmである4種類(3.0mm,4.0mm,7.0mm,9.5mm)のスペーサ28が用意されている。すなわち、本形態では、壁Wの厚みが9.5mmである場合(図5(A)、図7参照)には図6(A)に示すようにスペーサ28を接続具26に装着せず、壁Wの厚みが12.5mmである場合(図5(B)参照)には長さLが3.0mmのスペーサ25を一つのみ接続具26に装着する(図6(B)参照)。また、例えば、壁Wの厚みが25mmである場合には、長さLが3.0mmのスペーサ28を二つと長さLが9.5mmのスペーサ28を一つとを組み合わせて接続具26に装着する。
【0036】
本実施形態の保持具21は、第1,第2取付け面部22,23の前部に設けられた突出部分27の前縁が間柱Mの前面(あるいは壁Wの背面)に沿うように設置され、保持面部24の前側(壁Wに近い側)に水栓本体7が接続されるので、保持面部24は突出部分27の前縁よりも所定間隔だけ壁Wから遠のくように構成されている。
【0037】
上記のように保持具21、接続具26を用い、さらに必要に応じてスペーサ28を用いて間柱Mに固定される水栓本体7に対して、水栓本体7の開口部8に装着される筒状部材9の前部は、壁Wに設けられた例えば縦100mm×横50mmの大きさを有する水栓取付け用の取付け孔Waを抜けて壁Wの表側に突出する(図4参照)。そして、本形態では、カバー4は、カバー4に設けられた二つの挿通孔4a(図8参照)を挿通する二つの固定ねじ29(図4参照)により水栓本体7に取り付けられ、これにより、カバー4は壁Wの表側において固定された状態となる。また、カバー4には、二つの固定ねじ29を覆うようにキャップ30(図4参照)が着脱自在に装着される。
【0038】
そして、このカバー4の固定後に、カバー4に設けられ前方斜め下側に向いた筒状部4bから壁Wの表側に突出する筒状部材9のアウターセレーション20aに対して流量調整部材3のインナーセレーション20bが嵌合され、流量調整部材3はカバー4によって保持される状態となる。すなわち、流量調整部材3の後部にはOリング3a(図5(A)参照)が装着され、このOリング3aは、カバー4の筒状部4bに設けられた複数(例えば8個)の爪4cにより挟持される(図4、図8参照)。尚、複数の爪4cは、全てが同一円周上にあるのではなく、図8に示すように、前側にずれた爪4cと後側にずれた爪4cとが周方向に交互に並ぶようにしてあり、前側に位置する複数の爪4cと後側に位置する複数の爪4cとでOリング3aを挟持可能としてある。
【0039】
このように、流量調整部材3はカバー4によって保持された状態で筒状部材9にセレーション嵌合するように構成されているので、流量調整部材3を回動操作したときに、筒状部材9は継手部2と共に軸方向に移動するが、流量調整部材3は回動のみして移動しないので、流量調整部材3の操作性は優れたものとなる。
【0040】
一方、上述したカバー4の固定後に、壁Wの表側に突出する継手部2には、図1〜図3、図5(A)に示すように、フランジ部材5が装着される。本形態のフランジ部材5には、その中央部から周縁部にかけて切り欠き孔(図示していない)が設けられ、この切り欠き孔において、フランジ部材5の中央部に位置する孔部分より周縁部に位置する孔部分の方が大きくなっている。そして、フランジ部材5の周縁部寄りの孔部分に継手部2を通した後、フランジ部材5をスライドさせ、フランジ部材5の中央部寄りの孔部分の内側に継手部2を移動させることにより、継手部2に対するフランジ部材5の装着が完了し、継手部2に対する給水ホースHの接続が可能な状態となる。
【0041】
上述のようにカバー4に流量調整部材3を保持させた後、カバー4の筒状部4b(図4参照)から壁Wの表側に突出する継手部2にはフランジ部材5が装着され、これにより、継手部2に対する給水ホースHの接続が可能となる。
【0042】
上記のように構成した本実施の形態では、流量調整部材3に対する操作力(回動力)を弁(弁体部14)に伝達するための構造がシンプルであり、このことは製造コストの低減に繋がる上、流量調整部材3をカバー4に保持させるので、流量調整部材3がカバー4等の他の部材と干渉することを容易かつ確実に防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、カバー4の表側に露出する継手部2と流量調整部材3とを一体化してあるため、カバー4の小型化を図れるという効果が得られる。
【0044】
さらに、本実施形態の継手部2は、図1に示すように、壁Wから前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びるので、継手部2に対してその下方から接続することの多い継手部材Cの接続作業を行い易く、また、接続後の継手部材Cの壁Wからの突出量も小さく抑えることができ、省スペース化にも資する。
【0045】
本形態では、施工現場により間柱Mと壁Wとの間隔や壁Wの厚みにばらつきがある場合でも、スペーサ28の長さを変更することにより、流量調整部材3の壁Wの表側への迫り出し量(突出量)の一律化を図ることができ、これにより、設置後の埋め込み水栓の状態を容易に良好にすることができる上、スペーサ28の長さを変更する(適宜の長さのスペーサ28を選択する)のみでよいので施工性の向上をも図ることができる。加えて、本形態の埋め込み水栓では、流量調整部材3及びカバー4の両方が筒状部材9(水栓本体7)に固定(装着)されるので、壁Wの厚みに関係無くカバー4から流量調整部材3までの間隔が必然的に一定になり、これによっても埋め込み水栓の良好な設置を容易に行うことが可能となる。
【0046】
さらに、本形態の給水栓は、従来の埋め込み水栓で用いられるハウジングを不要とすることができるので、この点でもコストダウンに資するものとなり、設置スペースのコンパクト化の点でも優れている。
【0047】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0048】
給水対象Tは洗濯機に限られず、浄水器、食器洗い機、湯沸器などの他の機器であってもよい。
【0049】
流量調整部材3は、筒状部材9において水栓本体7内に挿入されない部分の外周側に、筒状部材9に対するトルク伝達及び筒状部材9の軸方向への移動が可能な状態で嵌合されればよい。そのような嵌合を可能とするには、例えば、セレーション、スプライン又はキーのうちから選択されるトルク伝達用の凹凸噛合構造を流量調整部材3と筒状部材9との嵌合部に設ければよく、上記実施の形態では、セレーションを選択した例を示したに過ぎない(上記実施の形態のセレーション嵌合部20を参照)。
【0050】
上記実施形態では、流量調整部材3がカバー4に保持されているが、これに限らず、例えば、流量調整部材3が筒状部材9に保持されてもよい。また、流量調整部材3においてインナーセレーション20bが設けられる部分は、筒状になっておらず、例えば縦断面視C字形状となっていてもよい。
【0051】
上記実施形態の挿通孔7bを、接続具26が螺合する雌ねじ部分としてもよい。
【0052】
上記実施形態では、弁体部14は筒状部材9の先端に別部材として装着されているが、このような別部材を用いず、筒状部材9の先端部を弁体部14として用いることができるようにしてもよい。
【0053】
逆止弁15が、例えば継手部2の下流側において発生する水撃(上記実施形態では給水対象Tである洗濯機の電磁弁の開閉操作の際に生じる水撃)を吸収、緩和するダンパー部を有するものであってもよい。
【0054】
上記実施形態では、減圧板16は弁体部14とは別部材として設けられているが、これに限らず、例えば弁体部14が減圧板16の機能を兼ね備えるように構成し、弁体部14と減圧板16との一体化を図ってもよい。
【0055】
壁Wの厚みに関係無くカバー4ひいては給水栓1の良好な設置を容易に行うことを可能とするためには、壁Wの裏側に固定配置される保持具21にカバー4を直接取り付けるのではなく、スペーサ28によって位置調整される水栓本体7やこの水栓本体7に接続される部材(例えば筒状部材9や継手部2)への係止または固定によってカバー4を保持させるようにしてあればよい。従って、上記実施の形態では、カバー4を水栓本体7に対してねじ29によって固定することにより、カバー4を保持するようにしてあるが、カバー4の保持方法はこれに限られない。
【0056】
尚、例えば、図9に示す保持具21を、図10(A)〜(G)に示すように第2取付け面部23の無い形状となるように変形してもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、壁Wの外側からみて取付孔Waの左側にある間柱Mに保持具21を取り付けているが、間柱Mが逆側(右側)にある場合にも保持具21を取り付けることができるようにしてもよい。そのためには、例えば、水栓本体7において接続具26が差し込まれる部分(挿通孔7b)を水栓本体7の左側ではなく右側に(あるいは左右両側に)設ければよく、また、この場合、保持具21は図4に示す向きでは用いることができないので、保持面部24を前側に向けたまま保持具21をそれぞれ上下逆にした状態で用いるようにすればよい。
【0058】
尚、水栓本体7において接続具26が差し込まれる部分(挿通孔7b)は、水栓本体7の左右に限られず、例えば上側に設けることもできる。
【0059】
ここで、図11(A)及び(B)に示すように、水栓本体7の左側のみではなく上側にも接続具21が差し込まれる部分(雌ねじ部分7c)を設ければ以下の効果が得られる。すなわち、図10(A)〜(G)に示すような第2取付け面部23の無い保持具21を用いる場合でも、保持面部24を前側に向けた状態で第1取付け面部22を上側に向けることにより、この図10(A)〜(G)に示す保持具21を用いて水栓本体7を略水平に延びる当木の下面にも取り付けることが可能となる。また、図9(A)〜(G)に示す保持具21を用いる場合には、さらに、保持面部24を前側に向けた状態で第2取付け面部23を右側に向けることにより、この図9(A)〜(G)に示す保持具21を用いて水栓本体7を右側の間柱Mにも取り付けることが可能となる。
【0060】
また、図9(A)〜(G)あるいは図10(A)〜(G)に示す保持具21の鏡像となる形状(左右を逆にした形状)を有する保持具を用いることもでき、この場合には、接続具26が差し込まれる部分(挿通孔7b)を水栓本体7の左側ではなく右側に設ければよい。
【0061】
接続具26は座金組み込みねじに限られず、座金が組み込まれていないノーマルなタイプのねじの他、例えば、ボルトとナットであってもよい。
【0062】
スペーサ28の長さを変更する方法としては、相互に長さの異なる複数のスペーサ28から任意の長さを有するスペーサ28を選択し着脱する上述の方法の他に、例えば、長めに成形したスペーサ28を任意長さに切断する方法や、長さが同一あるいは相互に異なる複数のスペーサを適宜に組み合わせて用いる方法が挙げられる。
【0063】
挿通孔7a、スペーサ28、保持面部24を前側からこの順に並べる構成に限られず、例えば、 挿通孔7a、スペーサ28、保持面部24を後側からこの順に並べてもよい。すなわち、上記実施の形態では、接続具26を、水栓本体7において壁Wに対して保持面部24よりも近くに位置する部分に差し込んであるが、水栓本体7において壁Wに対して保持面部24よりも遠くに位置する部分に差し込むようにしてもよい。
【0064】
上記各変形を、適宜に組み合わせて行ってもよいことはいうまでもない。
【0065】
なお、図2と対比すれば明らかなように、図5(A)及び(B)、図7では調整部材3は図示されない位置にあるが、わかり易さのために図示してある。
【符号の説明】
【0066】
1 給水栓
3 流量調整部材
7 水栓本体
9 筒状部材
11 挿入部
12 弁座部
14 弁体部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体と、
該水栓本体内に螺合する状態で挿入される挿入部を有し、自身の軸まわりの回動に伴って該水栓本体内に進退する筒状部材と、
該筒状部材において前記水栓本体内に挿入されない部分の外周側に、該筒状部材に対するトルク伝達及び該筒状部材の軸方向への移動が可能な状態で嵌合する流量調整部材とを備え、
前記挿入部の先端側に設けられた略環状の弁体部は、前記水栓本体内への前記筒状部材の進退により、前記水栓本体内に設けられた弁座部に当接し該弁座部によって前記挿入部の先端側が閉塞される閉弁状態と、前記弁座部から離間した開弁状態とになることを特徴とする給水栓。
【請求項2】
前記水栓本体は壁に埋め込まれた状態となるように配置され、また、前記壁において前記水栓本体の前側に設けられた水栓取付け用の取付け孔を覆うカバーを備え、該カバーは前記水栓本体に固定される請求項1に記載の給水栓。
【請求項3】
前記流量調整部材は前記カバーに保持される請求項2に記載の給水栓。
【請求項4】
前記壁から前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びる継手部を備えた請求項2または3に記載の給水栓。
【請求項1】
水栓本体と、
該水栓本体内に螺合する状態で挿入される挿入部を有し、自身の軸まわりの回動に伴って該水栓本体内に進退する筒状部材と、
該筒状部材において前記水栓本体内に挿入されない部分の外周側に、該筒状部材に対するトルク伝達及び該筒状部材の軸方向への移動が可能な状態で嵌合する流量調整部材とを備え、
前記挿入部の先端側に設けられた略環状の弁体部は、前記水栓本体内への前記筒状部材の進退により、前記水栓本体内に設けられた弁座部に当接し該弁座部によって前記挿入部の先端側が閉塞される閉弁状態と、前記弁座部から離間した開弁状態とになることを特徴とする給水栓。
【請求項2】
前記水栓本体は壁に埋め込まれた状態となるように配置され、また、前記壁において前記水栓本体の前側に設けられた水栓取付け用の取付け孔を覆うカバーを備え、該カバーは前記水栓本体に固定される請求項1に記載の給水栓。
【請求項3】
前記流量調整部材は前記カバーに保持される請求項2に記載の給水栓。
【請求項4】
前記壁から前方に向けて水平となる角度よりも下方に傾斜するように延びる継手部を備えた請求項2または3に記載の給水栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−188821(P2012−188821A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51481(P2011−51481)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
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